JP3667695B2 - タイヤ成形用金型の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイヤ成形用金型の製造方法に関する。さらに詳しくは、タイヤ成形用金型を精密鋳造法を用いて製造する方法において、部分鋳型を組み合わせて全体鋳型を形成するに際し、タイヤの表面形状の一部を構成する形状(基本形状)に非基本形状を加えた(基本形状の一部を非基本形状に変形した)形状をその表面形状として有するタイヤを成形するための金型を、簡易かつ効率的に低コストで製造することができるタイヤ成形用金型の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
タイヤ成形用金型は、タイヤのデザイン(表面形状)がシャープなコーナー部やブレードと称する薄肉の突起物を数多く有する複雑な形状であることに対応して、複雑な形状の形成に適した鋳造によって製造される場合が多い。
【0003】
このような鋳造によって製造されるタイヤ成形用金型は、通常、部分金型に分割され、タイヤ成形時にこれらの部分金型を全体的に組み合わせて全体金型として用いられている。このような金型の分割方法としては、円周に沿って、中心軸方向に切断して7〜11個程度の部分金型に分割する方法(上下一体型)、及び中心軸に垂直な方向(タイヤの径方向)に切断して、2個の部分金型に分割する方法(上下分割型)があるが、製造条件等に応じて適宜選択することができる。
【0004】
また、このような部分金型は、タイヤ走行時のデザインの共振等による騒音発生を防止するために、部分金型を円周方向に数十分割した大きさの基本形状(ピッチデザイン)をS、M、L等の複数種類の幅寸法に拡大、縮小した形状の原型(マスターモデル)を作製し、これらをランダムに組み合わせて360°のデザインを構成するが、製造コストを削減するために、デザインの必要最小限のみを原型(マスターモデル)として作成し、ゴム型反転を介して、必要個数の部分鋳型を作成し、これを組み立てることで1リング分の全体鋳型を形成し、これを用いて、タイヤ成形用金型を製造することがある。
【0005】
例えば、図16に示すように、上下分割型の方法を用いた場合、従来のタイヤ成形用金型の製造方法では、所望のタイヤ形状を円周方向に数分割した大きさの基本形状であるマスターモデル101を形成し(図16(a))、マスターモデル101の反転形状であるゴム型102を形成し(図16(b))、ゴム型102を用いて、その反転形状である基本部分鋳型103を必要個数形成し(図16(c))、各基本部分鋳型103を乾燥(焼成)させ、これを組み立てることができるように端面を切断する角度加工を行い(図16(d))、各基本部分鋳型103を組み立てることで1リング分の全体鋳型104を形成する(図16(e))。このようにして形成された全体鋳型104を、定盤108上に設置し、鋳枠105で囲い、全体鋳型104と鋳枠105との間隙に合金溶湯106を流し込み(図16(f))、合金溶湯106を硬化させることによって、所望のタイヤ形状の反転形状を有するタイヤ成形用金型107を製造していた(図16(g)及び(h))。
【0006】
このように構成された製造方法において、マスターモデルの大きさの決定は、基本形状(ピッチデザイン)を基準にして決定されるのが通常である。すなわち、マスターモデルの製造工程数と、部分鋳型における反転の繰り返し及び組み立てに関する工程数のバランスで最も効率のよい大きさのマスターモデルを作製することになる。例えば、S、M及びLの三種類のピッチバリエーションで、Sピッチ16個、Mピッチ23個及びLピッチ15個の計54ピッチからなるタイヤ金型を製造するのに必要最低限のマスターモデルは、S、M及びLピッチ各1個分ずつであるが、これだと各マスターモデルから反転作成したゴム型から、Sピッチで16個、Mピッチで23個、Lピッチで15個の部分鋳型を反転しなければならず、また、部分鋳型を組み立てる工程においても、合計54個もの部分鋳型を組み立てなければならないことから、鋳型工程における効率の悪化を招来してしまうことになる。逆に、マスターモデルを54分割された部分鋳型全てについて作製するとなると、マスターモデルの作製工程の効率の悪化を招来してしまうことになる。
【0007】
また、タイヤのデザインには、その一部に基本形状(ピッチデザイン)とは異なった形状(非基本形状)が要請される場合があり、この非基本形状は基本形状(ピッチデザイン)とは異なったパターンで配置される。この非基本形状は、例えば、スリップサインの位置を示す目印や、スリップサインそのもの、又は溝側面や、溝底面に設置する石噛み防止用のデザイン、タイヤの外観品質を向上させるために局部的に配置されるデザイン等のようなものであり、これらの配置も合わせて考慮してマスターモデルを作製しようとすると、マスターモデルは大型化せざるを得ず、場合によっては360°全周分のマスターモデルを作製しなければならないこととなる。
【0008】
このため、従来、タイヤ成形用金型の作製コストを削減するために、基本形状(ピッチデザイン)と配置パターン等の異なる非基本形状は、鋳型の段階で手加工により形成されることが多かった。しかし、近年のタイヤ意匠の複雑化に伴って、手加工で対処することが困難になっているという問題があった。
【0009】
また、タイヤには「サイプ」と呼ばれる、0.1〜0.7mm程度の細い溝を形成することが行われている。このような細い「サイプ」の形成を鋳造法等により行うと、鋳物における「サイプ」部分の強度が不十分なものとなることから、「ブレード」と呼ばれる薄い高強度材(通常、鋼材)を鋳物に鋳包みさせることが多い。
【0010】
図17に示すように、従来のタイヤ成形用金型の製造方法では、モデル用ブレード205をマスターモデル201に設置し、又は貼り付け(図17(a))、マスターモデル201を反転してゴム型202を形成し(図17(b))、ゴム型202にサイプブレード209を設置し(図17(c))、ゴム型202を部分鋳型203に反転するとともに、サイプブレード209を部分鋳型203に移動し(図17(d))、部分鋳型203から鋳造により金型207を形成するとともに、サイプブレード209を金型207に移動する(図17(e))ことによって金型を製造している。この場合、部分鋳型203を形成する鋳型材としては、石膏、セラミックス及び金属等を挙げることができる。
【0011】
しかし、このような鋳造製法によるタイヤ成形用金型の製造方法において、部分鋳型203の切断、接合面部に掛かって埋設されるサイプブレード209が存在する場合には、部分鋳型203の端面を切断する前にサイプブレード209を部分鋳型203から抜き取っておき、部分鋳型203を切断し、組み立てが終わった後に、手作業により埋設し直すという方法が採用されている。
【0012】
しかしながら、このサイプブレード209の形状が、部分鋳型203への植え込み部で抜け勾配が逆の、所謂、アンダーカット形状となる場合には、この対応が困難であり、サイプブレード209の周辺の部分鋳型203の表面を、予め、えぐりとってアンダーカット形状がなくなるまで彫り込み、サイプブレード209を抜き取り、部分鋳型203の端面を切断し、組み立て、サイプブレード209の植え込みを行った後、部分鋳型203のえぐりとった箇所を鋳型材で充填し直した後、手作業で表面形状を復旧しなければならず、多大な作業工数を必要とするという問題があった。
【0013】
また、部分鋳型の端面切断の工程において、部分鋳型の切断位置に基本形状の一部として微小な突起形状等が存在する場合、部分鋳型の切断時に、これらの突起形状等が欠損することがあり、部分鋳型を組み立てた後に、手作業でその部位の復旧作業を行わなければならないという問題があった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、タイヤ成形用金型を精密鋳造法を用いて製造する方法において、部分鋳型を組み合わせて全体鋳型を形成するに際し、タイヤの表面形状の一部を構成する形状(基本形状)に非基本形状を加えた(基本形状の一部を非基本形状に変形した)形状をその表面形状として有するタイヤを成形するための金型を、簡易かつ効率的に低コストで製造することができるタイヤ成形用金型の製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、本発明は、以下のタイヤ成形用金型を提供するものである。
【0016】
[1] タイヤの表面形状の一部を構成する形状をその表面形状として有する複数の部分鋳型を形成し、複数の前記部分鋳型を前記タイヤの形状となるように組み合わせて全体鋳型を形成し、前記全体鋳型を鋳枠で囲い前記全体鋳型と前記鋳枠との間隙に溶湯を流し込み硬化させることによって前記タイヤの反転型であるタイヤ成形用金型を製造する方法であって、前記部分鋳型を組み合わせて前記全体鋳型を形成するに際し、前記タイヤの表面形状の一部を構成する形状(基本形状)をその表面形状として有する複数の基本部分鋳型を形成し、複数の前記基本部分鋳型のうちの、一以上の前記基本部分鋳型の表面の少なくとも一部に凹部を形成し、前記基本形状とは異なった非基本形状を反転させた表面形状を有する反転部材を、前記基本部分鋳型の前記凹部に近接させて、前記基本部分鋳型の前記凹部と、前記反転部材の前記非基本形状の反転形状を有する表面との間に間隙を形成し、前記間隙に未硬化の鋳型材を充填して硬化させ、前記基本部分鋳型の表面形状の少なくとも一部を、前記基本形状から前記非基本形状に変形させることによって前記非基本形状をその表面形状として有する非基本部分鋳型を形成し、前記基本形状をその表面形状として有する前記基本部分鋳型と、前記非基本形状をその表面形状として有する前記非基本部分鋳型とを組み合わせて、前記基本形状に前記非基本形状を加えた形状をその表面形状として有する前記全体鋳型を形成することを含むことを特徴とするタイヤ成形用金型の製造方法。
【0017】
[2] 前記基本部分鋳型を自己硬化性の鋳型材から形成する前記[1]に記載のタイヤ成形用金型の製造方法。
【0018】
[3] 複数の前記基本部分鋳型のうちの、一以上の前記基本部分鋳型の表面の少なくとも一部に形成した前記凹部の底面から、前記基本部分鋳型の背面に貫通する貫通孔を形成し、前記貫通孔の前記基本部分鋳型の背面側の開口部から、前記貫通孔を経由して、前記基本部分鋳型の前記凹部と前記反転部材の前記非基本形状の反転形状を有する表面との間隙に未硬化の前記鋳型材を充填する前記[1]又は[2]に記載のタイヤ成形用金型の製造方法。
【0019】
[4] 未硬化の前記鋳型材に、それを軟化させるための溶媒を加えるとともに、前記溶媒を浸透させない材質からなる中空円筒体を、前記貫通孔の前記基本部分鋳型の背面側の開口部から着脱自在に挿入し、前記中空円筒体を経由して、前記溶媒を含んだ未硬化の前記鋳型材を前記間隙に充填する前記[3]に記載のタイヤ成形用金型の製造方法。
【0020】
[5] 前記中空円筒体を経由して前記間隙に、前記溶媒を含んだ未硬化の前記鋳型材を充填した後、前記中空円筒体内を前記基本部分鋳型の背面側の端部側から加圧して、前記溶媒を含んだ未硬化の前記鋳型材を前記間隙に隙間なく充填する前記[4]に記載のタイヤ成形用金型の製造方法。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0022】
本発明のタイヤ成形用金型の製造方法は、タイヤの表面形状の一部を構成する形状をその表面形状として有する複数の部分鋳型を形成し、複数の前記部分鋳型を前記タイヤの形状となるように組み合わせて全体鋳型を形成し、前記全体鋳型を鋳枠で囲い前記全体鋳型と前記鋳枠との間隙に溶湯を流し込み硬化させることによって前記タイヤの反転型であるタイヤ成形用金型を製造する方法であって、前記部分鋳型を組み合わせて前記全体鋳型を形成するに際し、前記タイヤの表面形状の一部を構成する形状(基本形状)をその表面形状として有する複数の基本部分鋳型を形成し、複数の前記基本部分鋳型のうちの、一以上の前記基本部分鋳型の表面の少なくとも一部に凹部を形成し、前記基本形状とは異なった非基本形状を反転させた表面形状を有する反転部材を、前記基本部分鋳型の前記凹部に近接させて、前記基本部分鋳型の前記凹部と、前記反転部材の前記非基本形状の反転形状を有する表面との間に間隙を形成し、前記間隙に未硬化の鋳型材を充填して硬化させ、前記基本部分鋳型の表面形状の少なくとも一部を、前記基本形状から前記非基本形状に変形させることによって前記非基本形状をその表面形状として有する非基本部分鋳型を形成し、前記基本形状をその表面形状として有する前記基本部分鋳型と、前記非基本形状をその表面形状として有する前記非基本部分鋳型とを組み合わせて、前記基本形状に前記非基本形状を加えた形状をその表面形状として有する前記全体鋳型を形成することを含むことを特徴とする。
【0023】
本発明のタイヤ成形用金型の製造方法によれば、例えば、図1(a)に示すように、その表面にタイヤの表面形状の一部を構成する形状(基本形状)を有する基本部分鋳型1を必要個数形成し、図1(b)に示すような基本部分鋳型1のリブ(主溝)10における所望部分(非基本形状形成部分)20に、基本形状とは異なった非基本形状、例えば、図1(c)に示すようなグルーブフェンス(突起)2を局所的に基本形状とは異なった規則性をもってその表面形状として有する非基本部分鋳型(図示せず)を、容易に形成することができる。
【0024】
すなわち、まず、図示はしないが、その表面に基本形状を有するマスターモデルを形成し、マスターモデルの反転型であるゴム型を形成し、そのゴム型を用いて、マスターモデルと同一形状の基本部分鋳型1(図1(a)参照)を形成する。
【0025】
次に、図2(a)に示すように、基本部分鋳型1(図1(a)参照)のリブ10(図1(a)参照)の側面形状、及び付与したい非基本形状のグルーブフェンス2(図1(c)参照)を反転させた表面形状を有する反転部材3を形成する。この反転部材3は、付与したい非基本形状よりも一回り大きく形成することが好ましい。また、反転部材3を形成する材料としては、例えば、樹脂、金属、ゴムを挙げることができる。中でも、アンダーカット形状を有する場合にはゴムが好ましい。
【0026】
次に、図2(b)に示すように、基本部分鋳型の表面に、その表面形状を非基本形状に変形させる部分(図2(b)においては基本部分鋳型の非基本形状形成部分20)に対向させて反転部材3を仮置きする。
【0027】
次に、図2(c)に示すように、基本部分鋳型の非基本形状形成部分20に反転部材3(図2(b)参照)を配置する位置及びグルーブフェンス2(図1(c)参照)を形成する位置を決定し、ケガキ線8等によって目印を付ける。
【0028】
次に、図2(d)に示すように、基本部分鋳型の非基本形状形成部分20にグルーブフェンス2(図1(c)参照)が十分な強度で形成されるように、グルーブフェンス2(図1(c)参照)を形成する基本部分鋳型の非基本形状形成部分20の基本形状を有する表面の少なくとも一部を掘削して凹部7を形成する。
【0029】
次に、図2(e)に示すように、基本部分鋳型の非基本形状形成部分20に反転部材3を再び配設する。この場合、これ以降の工程において、反転部材3が基本部分鋳型の非基本形状形成部分20からズレないように重り等を用いて固定してもよい。
【0030】
次に、図2(f)に示すように、基本部分鋳型の非基本形状形成部分20と反転部材3との間隙に、スラリー(未硬化の鋳型材)4を注入する。この際、気泡等を巻き込まないように、例えば、筆等で注入されたスラリー(未硬化の鋳型材)4の表面をなぞるようにして脱泡させることが好ましい。
【0031】
次に、図2(g)に示すように、スラリー(未硬化の鋳型材)4が硬化した後、反転部材3を取り除く。
【0032】
次に、図2(h)硬化したスラリー4(図2(g)参照)の余剰部分9が基本部分鋳型の非基本形状形成部分20からはみ出しているようであれば、余剰部分9をスクレイパー6等で除去し、その後、必要に応じてグルーブフェンス2及び基本部分鋳型の非基本形状形成部分20の形状を整える。
【0033】
このように構成することによって、図2(i)に示すような基本部分鋳型の非基本形状形成部分20に非基本形状としてのグルーブフェンス2を容易に作製することができ、非基本形状としてのグルーブフェンス2をその表面形状として有する非基本部分鋳型(図示せず)を容易に作製することができる。この後、図示はしないが、基本部分鋳型と非基本部分鋳型とを組み合わせて全体鋳型を形成し、全体鋳型を鋳枠で囲い、全体鋳型と鋳枠との間隙に溶湯を流し込み硬化させることによって、所望のタイヤ形状の反転形状を有するタイヤ成形用金型を製造することができる。
【0034】
なお、基本部分鋳型の非基本形状形成部分20に形成する凹部7の形成位置は、図3(a)に示すように、各グルーブフェンスに対応するように形成してもよく、また、図3(b)に示すように、隣接する二以上のグルーブフェンスを同時に形成することができるように大きく形成してもよい。
【0035】
従来、基本部分鋳型の表面に非基本形状を形成する際は手作業等によって行われていたが、本発明によれば、タイヤ成形用金型を精密鋳造法を用いて製造する工程において、部分鋳型を組み合わせて全体鋳型を形成するに際し、部分鋳型の、タイヤの表面形状の一部を構成する基本形状(基本デザイン)を有する表面の一部を、基本形状とは異なるに非基本形状に変形し、基本形状をその表面に有する基本部分鋳型と、非基本形状をその表面に有する非基本部分鋳型とを組み合わせることによって全体鋳型を形成し、基本形状(基本デザイン)の一部を非基本形状(所定のデザイン)に変形したタイヤを成形するための金型を、簡易かつ効率的に低コストで製造することができる。
【0036】
また、図2に示したタイヤ成形用金型の製造方法は、基本部分鋳型1(非基本形状形成部分20)の表面側からスラリー(未硬化の鋳型材)4を流し込むことができる場合、すなわち、反転部材3が基本部分鋳型1(非基本形状形成部分20)の凹部7を完全には覆い隠さない場合においては、容易にスラリーを流し込むことができるため特に有効である。
【0037】
また、本発明のタイヤ成形用金型の製造方法は、図2に示した製造方法において、基本部分鋳型1(非基本形状形成部分20)の表面の少なくとも一部に形成した凹部7の底面から、部分鋳型の背面に貫通する貫通孔を形成し、貫通孔の基本部分鋳型1の背面側の開口部から、貫通孔を経由して、基本部分鋳型1の凹部7と反転部材3の反転形状との間隙にスラリー4(未硬化鋳型材)を充填してもよい。
【0038】
例えば、図4(a)〜(c)に示すように、基本部分鋳型11の一部に、タイヤ成形用金型内に配置される部位毎に異なる位置で(円周方向に配置を変えて)、手加工では対応困難な、R形状を有するスリップサイン等の非基本形状12を付与して非基本部分鋳型16を形成したい場合は、次のようにして形成することができる。
【0039】
図5は、基本部分鋳型の表面の基本形状の一部に、スリップサイン等の非基本形状を付与して非基本部分鋳型を形成する工程を示す説明図である。まず、図示はしないが、所望の表面形状を有するタイヤを少なくとも二以上の部分に分割した形状のマスターモデルを形成し、次いで、マスターモデルの反転形状であるゴム型を形成し、ゴム型を用いて、その反転形状であるマスターモデルと同一形状の基本部分鋳型を複数形成する。
【0040】
次に、図5(a)に示すように、付与したい非基本形状12(図4(a)参照)の反転形状を表面に有する反転部材13を形成する。このとき、反転部材13は、非基本形状12(図4(a)参照)よりも一回り大きくなるように形成することが好ましい。また、反転部材13を形成する材料としては、例えば、樹脂、金属、ゴムを挙げることができる。中でも、アンダーカット形状有する場合にはゴムが好ましい。
【0041】
次に、図5(b)に示すように、基本部分鋳型11に非基本形状12(図4(a)参照)を形成する位置を決定し、非基本形状を付与する領域に反転部材13を仮置きする。
【0042】
次に、図5(c)に示すように、反転部材13が配置された位置が再びわかるように、ケガキ線18等で目印を付ける。
【0043】
次に、図5(d)に示すように、一旦、反転部材13を取り外し、基本部分鋳型11の表面の所定形状12(図4(a)参照)を付与する領域を掘削して凹部17を形成する。この凹部17は、非基本形状12(図4(a)参照)より大きく、かつ反転部材13より小さく形成することが好ましい。
【0044】
次に、図5(e)に示すように、基本部分鋳型11の表面に形成した凹部17の底面から、基本部分鋳型11の背面に貫通する貫通孔19を、ドリル15等を用いて形成する。この貫通孔19は、基本部分鋳型11の凹部17の底面より小さな直径で開口する。
【0045】
次に、図5(f)に示すように、基本部分鋳型11に反転部材13を再び配設する。この場合、反転部材13によって基本部分鋳型11の凹部17は完全に覆い隠されることになる。
【0046】
次に、図5(g)に示すように、基本部分鋳型11に配設した反転部材13にズレが生じないように、着脱自在に、例えば、ゴムバンド15’等を用いて固定する。
【0047】
次に、図5(h)に示すように、貫通孔19の基本部分鋳型11の背面側の開口部が上を向くように、基本部分鋳型11及び反転部材13の向きを変え、開口部から貫通孔19を経由して、スラリー(未硬化の鋳型材)14を気泡等を巻き込まないように注意しながら流し込む。
【0048】
次に、図5(i)に示すように、スラリー14を充填した後、スラリー14が硬化するまでその状態で基本部分鋳型11を保持し、スラリー14が硬化した後、基本部分鋳型11を元の位置に戻し、反転部材13を取り除く。
【0049】
次に、図5(k)に示すように、必要に応じて、基本部分鋳型11の表面に形成したスリップサイン等の非基本形状12を手作業等により仕上げを施す。このようにして、図5(j)に示すように、非基本部分鋳型16が完成する。
【0050】
この後、図示はしないが、基本部分鋳型と非基本部分鋳型とを組み合わせて全体鋳型を形成し、全体鋳型を鋳枠で囲い、全体鋳型と鋳枠との間隙に溶湯を流し込み硬化させることによって、所望のタイヤ形状の反転形状を有するタイヤ成形用金型を製造する。
【0051】
このように構成することによって、基本デザインの一部である基本形状を所定のデザインの非基本形状に変形したタイヤを成形するための金型を、簡易かつ効率的に低コストで製造することができる。
【0052】
図5に示す製造方法は、基本的に基本部分鋳型11が生状態、すなわち、初期(一時)乾燥又は初期(一時)焼成される前に行うことが好ましいが、乾燥、焼成後であってもよい。
【0053】
また、このように構成された製造方法によれば、部分鋳型の切断、接合面に対して、サイプブレードを埋設する工程や、部分鋳型の欠損部の補修作業にも応用することができる。
【0054】
例えば、図6に示すように、基本部分鋳型21内部に埋設するサイプブレード22がアンダーカット形状を有する場合や、基本部分鋳型21の切断、接合面26に渡って埋設するような場合には、本発明を用いることによって容易にサイプブレード22を基本部分鋳型21の切断、接合面26に埋設することができ、非基本部分鋳型(図示せず)を形成することができる。
【0055】
図7(a)〜(j)は、部分鋳型の切断、接合面部にサイプブレードが掛かる場合に対応した本発明のタイヤ成形用金型の製造方法を工程順に示す説明図である。
【0056】
まず、図7(a)に示すように、所望の表面形状を有するタイヤを少なくとも二以上の部分に分割した形状のマスターモデルを形成し、次いで、マスターモデルの反転形状であるゴム型を形成し、ゴム型を用いて、その反転形状であるマスターモデルと同一形状の基本部分鋳型21を複数形成する。このとき、基本部分鋳型21の切断、接合面26にサイプブレード22が存在する場合は、その領域に存在するサイプブレード22を除いた状態で基本部分鋳型21を形成する。
【0057】
次に、図7(b)に示すように、基本部分鋳型21の切断、接合面26のサイプブレード22を埋設する領域を、サイプブレード22の埋設深さよりも深くなるように掘削して凹部27を形成する。
【0058】
次に、図7(c)に示すように、隣接する基本部分鋳型21を組み立てる。この工程は、図7(b)に示した基本部分鋳型21を掘削して凹部27を形成する工程の前に行ってもよい。
【0059】
次に、図7(d)に示すように、凹部27の底面から、基本部分鋳型21の背面に貫通する貫通孔29を、ドリル25等を用いて形成する。この貫通孔29は、基本部分鋳型21の凹部27の底面より小さい直径で開口する。
【0060】
次に、図7(d)〜(e)に示すように、本来、基本部分鋳型21の凹部27を形成した領域に形成すべき非基本形状の反転形状を表面に有する反転部材23を形成する。この反転部材23は、切断、接合面26以外のサイプブレード22が形成された領域を反転させることにより、容易に形成することができる。また、サイプブレード22はアンダーカット形状を有するため、反転部材23は、可撓性のゴム等から形成することが好ましい。
【0061】
次に、図7(f)に示すように、反転部材23に形成したサイプブレードの反転形状22’に、基本部分鋳型21(図7(a)参照)に形成するサイプブレード22を挿入する。
【0062】
次に、図7(g)に示すように、サイプブレード22を挿入した反転部材23を、基本部分鋳型21の凹部27を形成した領域を覆うように配設し、固定する。このとき、ゴムバンド(図示せず)等を用いることによって容易に固定することができる。
【0063】
次に、図7(h)に示すように、基本部分鋳型21の背面側の貫通孔29の開口部が上を向くように基本部分鋳型21の位置を変え、貫通孔29の基本部分鋳型21の背面側の開口部から、貫通孔29を経由して、スラリー(未硬化の鋳型材)24を流し込む。
【0064】
次に、図7(i)に示すように、スラリー24が硬化したした後、反転部材23を取り外す。このとき、反転部材23に挿入しておいたサイプブレード22は、硬化したスラリー24とともに基本部分鋳型21に埋設されている。
【0065】
次に、図7(j)に示すように、必要に応じて、基本部分鋳型21の表面を手作業等により仕上げを施す。このようにして非基本部分鋳型16が完成する。
【0066】
この後、図示はしないが、基本部分鋳型と非基本部分鋳型とを組み合わせて全体鋳型を形成し、全体鋳型を鋳枠で囲い、全体鋳型と鋳枠との間隙に合金溶湯を流し込み硬化させることによって、所望のタイヤ形状の反転形状を有するタイヤ成形用金型を製造する。
【0067】
このように構成することによって、部分鋳型の切断、接合面に対して、サイプブレード等を容易に埋設することができる。また、これと同様な工程を経ることによって、ゴム型から脱型する際に生じた部分鋳型の欠損や、部分鋳型の切断時に生じた基本形状の破損部分も容易に修復することができる。
【0068】
また、前述した、図7(h)に示した工程において、スラリー24が、反転部材23の内部に十分に行き渡らない場合は、図8(a)に示すように、予め反転部材23の内部にスラリー28(未硬化の鋳型材)を流し込み、図8(b)に示すように、スラリー28を硬化させて、この後の工程において硬化したスラリー28が、後述する他のスラリー24(図8(d)参照)と接合し易くなるように、その表面を粗くしておく。例えば、反転部材23の内部のスラリー28の表面がアンダーカット形状になるようにすることが好ましい。
【0069】
次に、図8(c)〜(d)に示すように、反転部材23を基本部分鋳型21に固定し、鋳型材21の背面に形成された開口部から、スラリー24を貫通孔29に流し込む。
【0070】
次に、図8(e)に示すように、スラリー24が硬化したした後、反転部材23を取り外す。このとき、反転部材23に挿入しておいたサイプブレード22は、硬化したスラリー24及びスラリー28とともに基本部分鋳型21に埋設されている。
【0071】
このように構成することによって、単にスラリー(未硬化の鋳型材)を流し込むだけでは、十分にスラリーが行き渡らないような形状の反転部材を用いた場合であっても、容易に所望の形状の鋳型を形成することができる。
【0072】
また、本発明のタイヤ成形用金型の製造方法は、前述した貫通孔に、スラリー(未硬化の鋳型材)を軟化させるための溶媒を浸透させない材質からなる中空円筒体を嵌挿し、中空円筒体を経由してスラリー(未硬化の鋳型材)を充填することが好ましい。
【0073】
このような構成のタイヤ成形用金型の製造方法は、例えば、図5(h)及び(i)に示した、スラリー(未硬化の鋳型材)を充填する工程を、図9(a)〜(f)に示す工程に変更することによって実現することができる。
【0074】
まず、図9(a)に示すように、基本部分鋳型11と反転部材13とを、貫通孔19の基本部分鋳型11の背面側に形成された開口部が上になるような位置に回転させる。
【0075】
次に、図9(b)に示すように、基本部分鋳型11に形成された貫通孔19に、スラリー14(図5(h)参照)を軟化させるための溶媒を浸透させない材質、例えば、樹脂又は金属からなる中空円筒体35を挿入する。
【0076】
次に、図9(c)に示すように、中空円筒体35を反転部材13の直近部まで挿入し、中空円筒体35を経由してスラリー14を基本部分鋳型11と反転部材13との間隙に流し込む。この際、漏斗37等を用いることによって、容易にスラリー14を中空円筒体35に流し込むことができる。
【0077】
次に、図9(d)に示すように、中空円筒体35内にスラリー14を充填させた後、スラリー14が硬化を開始する直前まで中空円筒体35を貫通孔19に放置する。この際、中空円筒体35に微振動を与え、スラリー14が基本部分鋳型11と反転部材13との間隙に行き渡るようにすることが好ましい。
【0078】
次に、図9(e)〜(f)に示すように、スラリー14の硬化直前に、基本部分鋳型11から中空円筒体35を取り除く。この際、中空円筒体35に微振動を与えながら、静かに抜き取り、中空円筒体35の内にスラリー14(未硬化鋳型材)が残らないようにすることが好ましい。これ以降の工程は、図5(i)以降の工程と同様である。
【0079】
このように構成することによって、スラリー(未硬化の鋳型材)の流動性を充填が終了するまで確保することができ、容易にスラリー(未硬化の鋳型材)を充填することができる。また、細い径の貫通孔であっても中空円筒体を経由して充填することができ、スラリー(未硬化の鋳型材)の量を削減することができる。
【0080】
また、本発明のタイヤ成形用金型の製造方法においては、スラリーを間隙に隙間なく充填するため、中空円筒体を経由して間隙にスラリー(未硬化の鋳型材)を充填した後、中空円筒体内を部分鋳型の背面側の端部側から加圧することが好ましい。
【0081】
例えば、図10(a)に示すように、基本部分鋳型11に形成された貫通孔19に中空円筒体35を挿入し、中空円筒体35を経由して基本部分鋳型11と反転部材13との間隙にスラリー(未硬化の鋳型材)14を充填した後、図10(b)に示すように、シリンダ36等を用いて、スラリー14(未硬化の鋳型材)が硬化を開始する直前まで中空円筒体35内を加圧することによって、基本部分鋳型11と反転部材13との間隙にスラリー(未硬化の鋳型材)14を隙間なく充填することができる。この場合、加える圧力としては、基本部分鋳型11から反転部材13が外れることがなく、寸法公差を逸脱するような変形を反転部材13に与えない程度であることが好ましく、具体的には、0.1MPa〜5MPa程度であることが好ましい。
【0082】
また、図10(c)に示すように、長い中空円筒体35を利用することによって、スラリー14の自重によって生じる圧力(ヘッド圧)を利用してもよい。このヘッド圧は、中空円筒体35にスラリー14が充填されている部分の高さをHとし、基本部分鋳型11内に充填される部分のスラリー14の高さをhとした場合、H−hの高さに相当する分が圧力となる。
【0083】
このように構成することによって、スラリー14は、基本部分鋳型11と反転部材13との間隙に十分に行き渡り、さらに高い精度で反転部材13が有する非基本形状を基本部分鋳型に形成して非基本部分鋳型とすることができる。
【0084】
また、スラリー14を加圧すると、中空円筒体35と貫通孔19との隙間からスラリー14が漏れ出てくることがあるが、貫通孔19の直径と、中空円筒体35の直径とを略同一としておけば、中空円筒体35から貫通孔19に漏れ出た微量のスラリー14は速やかに基本部分鋳型11に溶媒を吸い取られ流動性が低下し、それ自体が目止め材として作用することによって、これ以上のスラリー14の漏れ出しを防止することができる。
【0085】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によっていかなる制限を受けるものではない。
【0086】
実施例1
図11(a)〜(b)に示すような、表面に基本形状のみが形成されている基本部分鋳型1に、図2に示した本発明のタイヤ成形用金型の製造方法を用いて、図11(c)〜(e)に示すようなグルーブフェンスを形成した。図11(a)は基本形状のみが表面に形成された基本部分鋳型の斜視図であり、(b)は(a)の一部拡大図、(c)はグルーブフェンスを形成した非基本部分鋳型の一部拡大図、(d)は(c)の側面図、(e)は(c)の平面図である。基本部分鋳型1は、高さ140mm、外周はR516であり、表面に、幅12mm、深さ15mmのリブ10(主溝)を二本有し、この基本部分鋳型1を15個組み合わせることによりタイヤ成形用金型の反転形状である全体鋳型を形成する。本実施例においては、この全体鋳型の表面に、非基本形状であるグルーブフェンス2を基本形状とは異なる配置周期で25箇所に配設した。基本部分鋳型1及びスラリー4(図2参照)としては、非発泡石膏(ノリタケカンパニーリミテド(株)製 商品名:G−6)を用いた。基本部分鋳型1を形成する場合の調合条件は、非発泡石膏:水=100:60(重量比)とし、スラリーを形成する場合の調合条件は、非発泡石膏:水=100:80(重量比)とした。また、反転部材3(図2参照)の材料としては、シリコーンゴム(東芝シリコーン(株)製 商品名:TSE350)を用いた。
【0087】
図11(e)に示すように、本実施例で形成されたグルーブフェンス2の断面形状は、上底が2mm、下底が3mmの略台形であり、2個の突起形状が一対となって構成されている。一対のグルーブフェンス2の下底に相当する部分が隣接するように対向配置し、また、対向するグルーブフェンス2の上底(先端)が1mmの間隔を開けるように形成した。
【0088】
図2に示した本発明のタイヤ成形用金型の製造方法を用いることによって、基本部分鋳型に非基本形状(グルーブフェンス形状)を容易にかつ高精度に形成することができ、これにより、基本形状を有する基本部分鋳型と、非基本形状を有する非基本部分鋳型とを組み合わせることによって、基本形状(基本デザイン)の一部を基本形状とは異なる非基本形状(所定のデザイン)に変形したタイヤを成形するための金型を、簡易かつ効率的に低コストで製造することができた。
【0089】
実施例2
図12(a)に示すような基本部分鋳型11に、図5に示した本発明のタイヤ成形用金型の製造方法を用いて、図12(d)に示すような非基本形状としてのスリップマーク12を基本部分鋳型11に形成した。図12(a)は基本形状のみが表面に形成された基本部分鋳型の斜視図であり、(b)は(a)のV−V部の断面図、(c)は表面にスリップマークが形成された非基本部分鋳型を示す斜視図、(d)は(c)のV−V部の断面図、(e)は(d)の一部拡大図、(f)はスリップマークの正面図である。
【0090】
基本部分鋳型11は、高さ100mm、外周がR315であり、表面にリブ(主溝)30を二本有し、この基本部分鋳型11を16個組み合わせることによりタイヤ成形用金型の反転形状である全体鋳型を形成する。本実施例においては、スリップマーク12を、この全体鋳型の表面に、基本形状とは異なる配置周期で6箇所に配設した。スリップマーク12の断面形状は、上底2mm、下底8mm、高さ10mmの略逆台形の形状である。また、図13に示すように、反転部材12は、外周寸法は16×16×10mmとした。また、図14に示すように、基本部分鋳型11には、直径10mmのドリル15を用いて貫通孔19を開口した。
【0091】
基本部分鋳型11、スラリー14(図5参照)及び反転部材13の材料は実施例1と同様の材料を用いてそれぞれを形成した。
【0092】
図5に示した本発明のタイヤ成形用金型の製造方法によって、基本部分鋳型11にスリップマーク12を容易に形成することができ、基本形状を有する基本部分鋳型11と、非基本形状(スリップマーク)を有する非基本部分鋳型16(図12(c)参照)とを組み合わせることによって、基本形状(基本デザイン)の一部を非基本形状(所定のデザイン)に変形したタイヤを成形するための金型を、簡易かつ効率的に低コストで製造することができた。
【0093】
実施例3
実施例2の製造方法における基本部分鋳型11の貫通孔19の直径を4.5mmとなるように形成し、図9に示した本発明のタイヤ成形用金型の製造方法を用いて、外形4mmの中空円筒体35を経由して、漏斗37を用いてスラリー(未硬化の鋳型材)14を充填した。本実施例においては、中空円筒体35として樹脂製のストローを用いた。
【0094】
このように、貫通孔19の直径を小さくし、それと同程度の直径の中空円筒体35を用いることによって、スラリー14の量を削減することができた。また、貫通孔19の直径を小さくすることによって、基本部分鋳型11の表面に形成する凹部も小さなものとすることができるため、基本部分鋳型の表面の微小部分のみを非基本形状に変形する場合に有効である。
【0095】
実施例4
図15に示すような基本部分鋳型21の断面、接合面26に、図7(a)〜(g)に示した工程に準じてサイプブレード22を形成し、それ以降の工程においては、図10(b)に示したようなスラリー充填用の中空円筒体35を経由してスラリーを充填した。基本部分鋳型21、スラリー24(図7参照)及び反転部材23は実施例1と同様の材料を用いて形成し、また、基本部分鋳型21は、高さ106mm、外周がR320であり、貫通孔14の直径を10mmとし、直径9.5mmの中空円筒体(ストロー)を経由してスラリー24(図7参照)を充填した。その後、中空円筒体(ストロー)35内を0.122MPaの圧力の圧力エアーによって15分間加圧した。スラリー24(図7参照)の硬化直前、中空円筒体35(ストロー)を抜き取り、サイプブレード22が断面、接合面26に埋設された非基本部分鋳型16を形成した。
【0096】
このような製造方法によって、基本部分鋳型21にサイプブレード22を容易に形成することができ、基本形状を有する基本部分鋳型21と、非基本形状(サイプブレード)を有する非基本部分鋳型16とを組み合わせることによって、基本形状の一部を非基本形状に変形したタイヤを成形するための金型を、簡易かつ効率的に低コストで製造することができた。
【0097】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によって、タイヤ成形用金型を精密鋳造法を用いて製造する方法において、部分鋳型を組み合わせて全体鋳型を形成するに際し、タイヤの表面形状の一部を構成する形状(基本形状)に非基本形状を加えた(基本形状の一部を非基本形状に変形した)形状をその表面形状として有するタイヤを成形するための金型を、簡易かつ効率的に低コストで製造することができるタイヤ成形用金型の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のタイヤ成形用金型の製造方法の一の実施の形態に用いられる基本部分鋳型を模式的に示す説明図で、(a)は基本形状のみが表面に形成された基本部分鋳型を示す斜視図、(b)は(a)の一部拡大図、(c)は表面にグルーブフェンスが形成された非基本部分鋳型の一部拡大図である。
【図2】 本発明のタイヤ成形用金型の製造方法の一の実施の形態を工程順に示す説明図である。
【図3】 本発明のタイヤ成形用金型の製造方法の一の実施の形態に用いられる基本部分鋳型の所望部分に形成する凹部の形成位置を示す斜視図であり、(a)は各非基本形状に対応するように形成する場合、(b)は隣接する二以上の非基本形状を同時に形成する場合をそれぞれ示す。
【図4】 本発明のタイヤ成形用金型の製造方法の他の実施の形態に用いられる非基本形状が形成された非基本部分鋳型を模式的に示す説明図で、(a)は斜視図、(b)は(a)のX−X線における断面図、(c)は(b)の一部拡大図である。
【図5】 本発明のタイヤ成形用金型の製造方法の他の実施の形態を工程順に示す説明図で、基本部分鋳型の表面の基本形状の一部に、スリップサイン等の非基本形状を付与して非基本部分鋳型を形成する工程を工程順に示す説明図である。
【図6】 本発明のタイヤ成形用金型の製造方法の他の実施の形態に用いられるサイプブレードを埋設した非基本部分鋳型を模式的に示す説明図である。
【図7】 本発明のタイヤ成形用金型の製造方法の他の実施の形態を工程順に示す説明図である。
【図8】 図7(e)〜(i)に示す実施の形態の変形例を示す説明図である。
【図9】 本発明のタイヤ成形用金型の製造方法の他の実施の形態を工程順に示す説明図である。
【図10】 本発明のタイヤ成形用金型の製造方法の他の実施の形態において、中空円筒体内を加圧する方法を示す説明図で、(a)〜(b)は、シリンダを用いる場合、(c)は長い中空円筒体を用いる場合をそれぞれ示す。
【図11】 本発明のタイヤ成形用金型の製造方法の実施例1に用いられる部分鋳型を模式的に示す説明図で、(a)は基本形状のみが表面に形成された基本部分鋳型を示す斜視図、(b)は(a)の一部拡大図、(c)は表面にグルーブフェンスが形成された非基本部分鋳型の一部拡大図、(d)は(c)の断面図、(e)は(c)の平面図である。
【図12】 本発明のタイヤ成形用金型の製造方法の実施例2に用いられる部分鋳型を模式的に示す説明図で、(a)は基本形状のみが表面に形成された基本部分鋳型を示す斜視図、(b)は(a)のV−V線における断面図、(c)は表面にスリップマークが形成された非基本部分鋳型を示す斜視図、(d)は(c)のV−V線における断面図、(e)は(d)の一部拡大図、(f)はスリップマークの寸法を示す平面図である。
【図13】 本発明のタイヤ成形用金型の製造方法の実施例2に用いられる反転部材を模式的に示す説明図である。
【図14】 本発明のタイヤ成形用金型の製造方法の実施例2における、基本部分鋳型に貫通孔を形成する工程を示す斜視図である。
【図15】 本発明のタイヤ成形用金型の製造方法の実施例4に用いられる非基本部分鋳型を模式的に示す説明図である。
【図16】 従来のタイヤ成形用金型の製造方法を工程順に示す説明図である。
【図17】 従来のタイヤ成形用金型の製造方法を用いて部分鋳型にサイプブレードを埋設する工程を工程順に示す説明図である。
【符号の説明】
1…部分鋳型、2…グルーブフェンス、3…反転部材、4…スラリー(未硬化の鋳型材)、6…スクレイパー、7…凹部、8…ケガキ線、9…余剰部分、10…リブ(主溝)、11…基本部分鋳型、12…非基本形状、13…反転部材、14…スラリー(未硬化の鋳型材)、15…ドリル、15’…ゴムバンド、16…非基本部分鋳型、17…凹部、19…貫通孔、20…基本部分鋳型の非基本形状形成部分、21…基本部分鋳型、22…サイプブレード、22’…サイプブレードの反転形状、23…反転型、24…スラリー(未硬化鋳型材)、25…ドリル、26…接合面、27…凹部、28…スラリー(未硬化の鋳型材)、29…貫通孔、30…リブ(主溝)、35…中空円筒体、36…シリンダ、37…漏斗。

Claims (5)

  1. タイヤの表面形状の一部を構成する形状をその表面形状として有する複数の部分鋳型を形成し、複数の前記部分鋳型を前記タイヤの形状となるように組み合わせて全体鋳型を形成し、前記全体鋳型を鋳枠で囲い前記全体鋳型と前記鋳枠との間隙に溶湯を流し込み硬化させることによって前記タイヤの反転型であるタイヤ成形用金型を製造する方法であって、
    前記タイヤの表面形状の一部を構成する形状(基本形状)をその表面形状として有する複数の基本部分鋳型を形成し、
    複数の前記基本部分鋳型のうちの、一以上の前記基本部分鋳型の表面の少なくとも一部に凹部を形成し、前記基本形状とは異なった非基本形状を反転させた表面形状を有する反転部材を、前記基本部分鋳型の前記凹部に近接させて、前記基本部分鋳型の前記凹部と、前記反転部材の前記非基本形状の反転形状を有する表面との間に間隙を形成し、前記間隙に未硬化の鋳型材を充填して硬化させ、前記基本部分鋳型の表面形状の少なくとも一部を、前記基本形状から前記非基本形状に変形させることによって前記非基本形状をその表面形状として有する非基本部分鋳型を形成し、
    前記基本形状をその表面形状として有する前記基本部分鋳型と、前記非基本形状をその表面形状として有する前記非基本部分鋳型とを組み合わせて、前記基本形状に前記非基本形状を加えた形状をその表面形状として有する前記全体鋳型を形成することを含むことを特徴とするタイヤ成形用金型の製造方法。
  2. 前記基本部分鋳型を自己硬化性の鋳型材から形成する請求項1に記載のタイヤ成形用金型の製造方法。
  3. 複数の前記基本部分鋳型のうちの、一以上の前記基本部分鋳型の表面の少なくとも一部に形成した前記凹部の底面から、前記基本部分鋳型の背面に貫通する貫通孔を形成し、前記貫通孔の前記基本部分鋳型の背面側の開口部から、前記貫通孔を経由して、前記基本部分鋳型の前記凹部と前記反転部材の前記非基本形状の反転形状を有する表面との間隙に未硬化の前記鋳型材を充填する請求項1又は2に記載のタイヤ成形用金型の製造方法。
  4. 未硬化の前記鋳型材に、それを軟化させるための溶媒を加えるとともに、前記溶媒を浸透させない材質からなる中空円筒体を、前記貫通孔の前記基本部分鋳型の背面側の開口部から着脱自在に挿入し、前記中空円筒体を経由して、前記溶媒を含んだ未硬化の前記鋳型材を前記間隙に充填する請求項3に記載のタイヤ成形用金型の製造方法。
  5. 前記中空円筒体を経由して前記間隙に、前記溶媒を含んだ未硬化の前記鋳型材を充填した後、前記中空円筒体内を前記基本部分鋳型の背面側の端部側から加圧して、前記溶媒を含んだ未硬化の前記鋳型材を前記間隙に隙間なく充填する請求項4に記載のタイヤ成形用金型の製造方法。
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