JP3666988B2 - 耐熱性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性に優れ、かつ有機溶剤に可溶で成形加工性に優れた耐熱性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリイミド樹脂は、耐熱性が高く難燃性で電気絶縁性に優れていることからフィルムとしてフレキシブル印刷配線板や耐熱性接着テープの基材に、樹脂ワニスとして半導体の層間絶縁膜、表面保護膜に広く使用されている。しかし、従来のポリイミド樹脂は吸湿性が高く、耐熱性に優れている反面不溶不融であったり融点が極めて高く、加工性の点で決して使いやすい材料とはいえなかった。また半導体の実装材料として層間絶縁膜、表面保護膜などに使用されているが、これらは有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂の前駆体ポリアミック酸を半導体表面に塗布し、加熱処理によって溶剤を除去すると共にイミド化して用いている。この時、イミド化を完全に進めるために、また高沸点のアミド系溶剤を揮散させるために300℃以上の高温乾燥工程を必要とする。このため高温にさらされ、他に使用する部材の熱損傷や素子の劣化を招きアセンブリ工程の収率を劣化させる。また、皮膜の吸湿性が高いため、高温時に吸収した水分が一気に蒸発して膨れやクラックの原因となるなどの問題があった。
【0003】
前記の欠点を改良する方法として、有機溶剤に可溶で既にイミド化されたポリイミド樹脂組成物からフィルム状接着剤を形成し、これを被着体に熱圧着する方法等が提案されている。(特開平5−105850、112760、112761を参照)。また、低温加工性を向上させるために可塑剤的役割として、エポキシ樹脂化合物やその他の化合物を添加する方法等も提案されている。しかしながら、ポリイミド樹脂をホットメルト型の接着剤として使用するこの様な場合、ポリイミド樹脂のガラス転移温度が高いと加工に非常な高温を要し被着材に熱損傷を与える恐れが大きい。一方、低温加工性を付与するためポリイミド樹脂のガラス転移温度を下げたり、エポキシ樹脂を多量に添加するとポリイミド樹脂の耐熱性という特徴を十分に生かすことができないという問題点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐熱性に優れ、かつ成形加工性の優れた耐熱性樹脂を得るべく鋭意研究を重ねた結果、特定構造のポリイミド樹脂にエポキシ化合物、該エポキシ化合物と反応可能な活性水素基を有する化合物、およびカップリング剤を添加すると、上記課題が解決できることを見出し、本発明に到達したものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の耐熱性樹脂組成物は、ガラス転移温度が350℃以下の有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂100重量部に対して、1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物0.5〜5重量部未満、該エポキシ化合物と反応可能な活性水素基を有する化合物0.1〜20重量部、カップリング剤1〜50重量部を主たる成分として含有されていることを特徴とする耐熱性樹脂組成物である。
【0006】
本発明のポリイミド樹脂は、主たる酸成分が3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物及び1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物である。主たるアミン成分は、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼンとジメチルフェニレンジアミンの群から選ばれた1種類または2種類以上のジアミンと一般式(1)で表されるジアミノシロキサン化合物である。
【0007】
【化1】
(式中、R1,R2:二価の、炭素数1〜4の脂肪族基または芳香族基
R3,R4,R5,R6:一価の脂肪族基または芳香族基
k:1〜20の整数)
【0008】
その量比については、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物aモル、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物bモル及び1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物cモルを酸成分とし、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパンdモルと、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼンとジメチルフェニレンジアミンの群から選ばれた1種類または2種類のジアミンeモルと、一般式(1)で表されるジアミノシロキサン化合物fモルとをアミン成分とし、a、b、c、d、e、fのモル比が 0.5 ≦ a/(a+b+c)≦ 0.8、0.1 ≦ b/(a+b+c)≦ 0.5、0.05 ≦ c/(a+b+c)≦ 0.25、かつ 0.05 ≦ f/(d+e+f)≦ 0.5 の割合であることが好ましい。
【0009】
酸成分として、上記3種、特に1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物を用いることにより、耐熱性を向上させることができる。1,2,4,5,-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物は酸成分の総量の5モル%より少ないと耐熱性を向上させる効果が少なく、25モル%を越えると溶解性が低下するので好ましくない。また、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物により耐熱性が向上することにより、アミン成分の選択の幅が広がり、接着性や溶解性等の特性が向上することが期待できる。他の酸成分として、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、エチレングリコールビストリメリット酸二無水物、および無水フタル酸、無水マレイン酸などの多重結合を構造上に持つ酸無水物からなる群より選ばれた1種または2種のテトラカルボン酸二無水物を特性を損なわない範囲で併用することもできる。他のアミン成分として、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘキサフルオロプロパン、ビス−4−(4−アミノフェノキシ)フェニルスルフォン、ビス−4−(3−アミノフェノキシ)フェニルスルフォン、1,3−ビス(2−(4−アミノフェニル)−2−プロピル)ベンゼンなどを特性を損なわない範囲で、それらを単独、あるいは併用して使用することができる。
【0010】
さらに該ジアミノシロキサン化合物はジアミン成分総量の5〜50モル%用いることがより好ましい。ジアミン成分の総量の5モル%より少ないと有機溶剤への溶解性が低下し、50モル%を越えるとガラス転移温度が著しく低下し耐熱性に問題が生じる。一般式(1)で表されるジアミノシロキサン化合物として具体的には、下記一般式(2)で表されるα,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(APPS)が好ましく、特にkの値が4〜10の範囲が、ガラス転移温度、接着性、耐熱性の点から好ましい。これらのジアミノシロキサン化合物は単独で用いることは勿論、2種類以上を併用することもできる。特にk=1と上記k=4〜10のものをブレンドして用いることは接着性を重視する用途では好ましい。
【0011】
【化2】
(式中、k:1〜20の整数)
【0012】
重縮合反応における酸成分とアミン成分の当量比は、得られるポリアミック酸の分子量を決定する重要な因子である。ポリマの分子量と物性、特に数平均分子量と機械的性質の間に相関があることは良く知られている。数平均分子量が大きいほど機械的性質が優れている。従って、実用的に優れた強度を得るためには、ある程度高分子量であることが必要である。本発明では、酸成分とアミン成分の当量比rが
0.900 ≦ r ≦ 1.06
より好ましくは、
0.975 ≦ r ≦ 1.025
の範囲にあることが好ましい。ただし、r=[全酸成分の当量数]/[全アミン成分の当量数]である。rが0.900未満では、分子量が低くて脆くなるため接着力が弱くなる。また1.06を越えると、未反応のカルボン酸が加熱時に脱炭酸してガス発生、発泡の原因となり好ましくないことがある。
【0013】
本発明においてポリイミド樹脂の分子量制御のためジカルボン酸無水物あるいはモノアミンを添加することは、上述の酸/アミンモル比の範囲であれば特にこれを妨げない。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応は、非プロトン性極性溶媒中で公知の方法で行われる。非プロトン性極性溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、ジグライム、シクロヘキサノン、1,4−ジオキサン(1,4−DO)などである。非プロトン性極性溶媒は、一種類のみ用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。この時、上記非プロトン性極性溶媒と相溶性がある非極性溶媒を混合して使用しても良い。トルエン、キシレン、ソルベントナフサなどの芳香族炭化水素が良く使用される。混合溶媒における非極性溶媒の割合は、30重量%以下であることが好ましい。これは非極性溶媒が30重量%以上では溶媒の溶解力が低下しポリアミック酸が析出する恐れがあるためである。テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応は、良く乾燥したジアミン成分を脱水精製した前述反応溶媒に溶解し、これに閉環率98%、より好ましくは99%以上の良く乾燥したテトラカルボン酸二無水物を添加して反応を進める。
【0014】
このようにして得たポリアミック酸溶液を続いて有機溶剤中で加熱脱水環化してイミド化しポリイミドにする。イミド化反応によって生じた水は閉環反応を妨害するため、水と相溶しない有機溶剤を系中に加えて共沸させてディーン・スターク(Dean−Stark)管などの装置を使用して系外に排出する。水と相溶しない有機溶剤としてはジクロルベンゼンが知られているが、エレクトロニクス用としては塩素成分が混入する恐れがあるので、好ましくは前記芳香族炭化水素を使用する。また、イミド化反応の触媒として無水酢酸、β-ピコリン、ピリジンなどの化合物を使用することは妨げない。
本発明において、イミド閉環は程度が高いほど良く、イミド化率が低いと使用時の熱でイミド化が起こり水が発生して好ましくないため、95%以上、より好ましくは98%以上のイミド化率が達成されていることが望ましい。
本発明の耐熱性樹脂組成物において使用する成分(B)エポキシ化合物は、少なくとも1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、成分(A)のポリイミド樹脂との相溶性を有するものであれば特に限定されるものではないが、ポリイミド樹脂の溶媒への溶解性が良好なものが好ましい。例えば、ビスフェノールA型のジグリシジルエーテル、ビスフェノールF型のジグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ化合物等が挙げられる。また、ポリイミド樹脂との相溶性を損なわない程度あるいは接着性を損なわない程度に、予め反応させた硬化物を使用してもかまわない。
【0015】
前記エポキシ化合物の量比は成分(A)ポリイミド樹脂100重量部に対して0.5〜5重量部未満の範囲であることが好ましい。この範囲では、加工時における熱履歴によって発生する未反応物、反応物および分解物等の量が非常に少ない。0.5重量部未満では、発生ガス量は更に少ないが、被着材との密着性を向上させる効果が現れない。5重量部を越えると、低温加工性、被着材との密着性をより向上させることは可能だが、エポキシに由来する成分がガスとして大量に発生し、作業性等を損なうため、好ましくない。
また本発明の耐熱性樹脂組成物において使用する成分(C)エポキシ化合物と反応可能な活性水素基を有する化合物は、成分(A)のポリイミド樹脂や成分(B)のエポキシ化合物との相溶性、ポリイミド樹脂の溶媒への溶解性が良好なものが好ましい。例えばレゾール、ノボラック、アミノ化合物等が挙げられる。成分(C)の配合割合は成分(A)のポリイミド樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部である。0.1重量部未満では、未硬化のエポキシ化合物の反応率が極端に低くなり、本発明にて望まれる効果があらわれない。また高温時の樹脂の弾性率が低下している時の樹脂のフローの制御が困難である。20重量部をこえると樹脂溶液状態でゲルが生じやすくなり、加工性が損なわれ、また樹脂組成物の耐熱性を損ない、好ましくない。
また本発明の耐熱性樹脂組成物において使用する成分(D)カップリング剤は、成分(A)のポリイミド樹脂や成分(B)のエポキシ化合物との相溶性、ポリイミド樹脂の溶媒への溶解性が良好なものが好ましい。例えばシラン系のカップリング剤やチタン系、ジルコン系のカップリング剤等が挙げられる。特にシラン系カップリング剤が相溶性や溶解性の点で好ましい。カップリング剤の配合割合は成分(A)のポリイミド樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部、より好ましくは0.5〜30重量部である。0.1重量部未満では、当該樹脂組成物を接着用途に用いる場合、被着材との密着性を向上させる効果が現れない。50重量部をこえると樹脂組成物の耐熱性を損ない、好ましくない。
本発明の耐熱性樹脂組成物にはその加工性、耐熱性を損なわない範囲で微細な無機充填材が配合されていても良い。
【0016】
本発明では得られたポリイミド溶液にそのまま成分(B)エポキシ化合物やその他の成分(C)、(D)を添加し耐熱性樹脂組成物溶液とすることができる。また該ポリイミド溶液を貧溶媒中に投入してポリイミド樹脂を再沈析出させて未反応モノマを取り除いて精製し、乾燥して固形のポリイミド樹脂として使用することもできる。高温工程を嫌う用途や特に不純物や異物が問題になる用途では、再び有機溶剤に溶解して濾過精製ワニスとすることが好ましい。この時使用する溶剤は加工作業性を考え、沸点の低い溶剤を選択することが可能である。
本発明のポリイミド樹脂では、ケトン系溶剤として、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンを、エーテル系溶剤として、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライムを沸点200℃以下の低沸点溶剤として使用することができる。これらの溶剤は単独で使用しても良いし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0017】
本発明のポリイミド樹脂に、エポキシ化合物、該エポキシ化合物と反応可能な活性水素基を有する化合物およびカップリング剤を添加した耐熱性樹脂組成物は、見かけ上のガラス転移温度が該ポリイミド樹脂のガラス転移温度より低下し低温加工性が向上する。一方、ガラス転移温度より高温域での接着力は該ポリイミド樹脂より向上し、IRリフローなどの熱衝撃を与えても剥離が認められないなどの高温域での物性が向上する。この特異な現象に対する詳細な機構は未だ明らかではない部分もあるが、エポキシ化合物と活性水素基を有する化合物あるいはカップリング剤が反応した低分子量の生成物は、特定構造のポリイミド樹脂に対して可塑剤として作用し該ポリイミド樹脂のガラス転移温度より低温域での弾性率を低下せしめ、よって接着性、加工性など低温での作業性の向上をもたらす。一方、ガラス転移温度より高温域ではその与えられた熱によって三次元網目構造が形成され、ポリイミド樹脂の流動性を低下せしめ、よって該ポリイミド樹脂の耐熱性を維持、あるいは向上せしめるものと考えられる。以上の機構によって低温加工性と高温時の耐熱信頼性の両立がはかられる。以下実施例により本発明を詳細に説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。
【0018】
【実施例】
(ポリイミド樹脂PI−1の合成)
乾燥窒素ガス導入管、冷却器、温度計、撹拌機を備えた四口フラスコに、脱水精製したNMP764gを入れ、窒素ガスを流しながら10分間激しくかき混ぜる。次に2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン(BAPP)82.10g(0.200モル)、2,5-ジメチル-p-フェニレンジアミン(DPX)18.16g(0.133モル)、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(APPS、式(2))93.00g(平均分子量837、0.111モル)を投入し、系を60℃に加熱し、均一になるまでかき混ぜる。均一に溶解後、系を氷水浴で5℃に冷却し、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)89.70g(0.305モル)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)21.05g(0.065モル)、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(PMDA)14.25g(0.065モル)を粉末状のまま15分間かけて添加し、その後3時間撹拌を続けた。この間フラスコは5℃に保った。
【0019】
その後、窒素ガス導入管と冷却器を外し、キシレンを満たしたディーン・スターク管をフラスコに装着し、系にキシレン179gを添加した。油浴に代えて系を175℃に加熱し発生する水を系外に除いた。4時間加熱したところ、系からの水の発生は認められなくなった。冷却後この反応溶液を大量のメタノール中に投入し、ポリイミド樹脂を析出させた。固形分を濾過後、80℃で12時間減圧乾燥し溶剤を除き、291.22g(収率91.5%)の固形樹脂を得た。KBr錠剤法で赤外吸収スペクトルを測定したところ、環状イミド結合に由来する5.6μmの吸収を認めたが、アミド結合に由来する6.06μmの吸収を認めることはできず、この樹脂はほぼ100%イミド化していることが確かめられた。このようにして得たポリイミド樹脂は、ガラス転移温度が190℃、引張り弾性率が210kgf/mm2、ジメチルホルムアミド(DMF)、1,4−ジオキサン(1,4−DO)に良く溶解することが確かめられた。
【0020】
(ポリイミド樹脂PI-2の合成)
前記のポリイミド樹脂の合成と同様にして、NMP712gにジアミン成分として、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)87.701g(0.300モル)、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(APPS、式(2))77.004g(平均分子量837、0.092モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジメチルシロキサン(APDS,式(2)においてk=1)1.988g(0.008モル)を投入し、酸性分を3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)77.674g(0.264モル)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)42.534g(0.132モル)、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(PMDA)9.597g(0.044モル)として加え、その後3時間撹拌を続けた。
その後、系を加熱イミド化を行い、275.74g(収率93.0%)の固形樹脂を得た。得られたポリイミド樹脂は、ガラス転移温度が135℃、引張り弾性率が170kgf/mm2、ジメチルホルムアミド(DMF)、1,4−ジオキサン(1,4−DO)に良く溶解することが確かめられた。第1表にポリイミド樹脂PI−1、およびPI−2の物性を示した。
【0021】
【表1】
【0022】
溶解性の欄のSは該当する溶媒に溶解することを示す。ガラス転移温度はDSC測定により求めた。引張り試験は室温、引張り速度5mm/minにて測定した。ヤング率は粘弾性スペクトロメーターにより求めた。熱分解温度はTGA測定により、5%減量温度として求めた。
【0023】
(実施例1)
ガラス製フラスコにポリイミド樹脂PI−1、100gとDMF330gを入れ、室温で充分に撹拌しポリイミドを完全に溶解させる。均一に溶解した後、ビフェニル型エポキシ化合物(エピコートYXー4000H、油化シェルエポキシ(株)製)4.5gを加え室温にて2時間撹拌した。その後均一に溶解していることを確認して、シランカップリング剤(トリスメトキシエトキシビニルシラン、KBC1003、信越化学(株)製)1gを加え室温にて1時間撹拌した。均一に溶解していることを確認してレゾール樹脂(PR−175、住友デュレズ(株)製)10gを系を撹拌しながら徐々に加えた。引き続き2時間撹拌し耐熱性樹脂溶液を調製した。この溶液組成物は、室温にて5日間放置してもゲル化せず均一な溶液の状態のままであった。
このようにして得た樹脂溶液をドクターブレードで鏡面研磨ステンレス鋼板に塗布し、厚み50μmのフィルムを得た。乾燥温度は最高195℃で乾燥時間20分であった。溶解性、ガラス転移温度、引張り特性、ヤング率を第2表に示す。
このワニスをリバースロールコーターでポリイミドフィルム(商品名ユーピレックスSGA、厚み50μm、宇部興産株式会社製)の片面に塗布し、接着剤層の厚みが30μmの接着テープを得た。乾燥温度は最高200℃で乾燥時間15分であった。この接着テープを42アロイのプレートに熱圧着して試験片を作製し(250℃2秒間熱圧着し、圧を開放後250℃で30秒間アニールした。接着面にかかる圧力はゲージ圧力と接着面積から計算の結果4kgf/cm2であった。)、引張り試験機にて180度ピール強度を測定した結果を第2表に示す。接着強度は常態およびプレッシャークッカー(125℃、48時間、飽和100%)で処理した後の室温、および240℃での180度ピール強度を測定したものである(引張り速度50mm/min)。試験片の破断面は接着樹脂層が凝集破壊し、発泡は全く認められなかった。
【0024】
(実施例2〜4)
実施例1と同様にして第2表に示す配合にて樹脂溶液を調製し、フィルム、接着テープを得た。得られた評価結果を第2表に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
溶解性の欄のSは該当する溶媒に溶解することを示す。ガラス転移温度はDSC測定により求めた。引張り試験は室温、引張り速度5mm/minにて測定した。熱分解温度はTGA測定により5%減量温度として求めた。使用する成分(B)エポキシ化合物について、YX−4000Hはビフェニル型エポキシ化合物エピコートYX−4000H、油化シェルエポキシ(株)製、エピコート1009、828はビスフェノールA型エポキシ化合物、油化シェルエポキシ(株)製をそれぞれ示している。使用する成分(C)について、PR−175、22193、53647は住友デュレズ(株)製。使用する成分(D)はKBC1003(トリスメトキシエトキシビニルシラン)、KBE1003(トリエトキシビニルシラン)、KBM573(N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)信越化学(株)製を使用した。
【0027】
(比較例1〜5)
ポリイミド樹脂のみの樹脂組成物あるいは成分(B)〜(D)のうちで一種または2種加えた樹脂組成物を調整した。次に実施例と同様にして、接着テープを作製し、42アロイプレートとの接着強度を測定した。その結果を第3表に示した。
【0028】
【表3】
【0029】
第2、3表の結果から、実施例の樹脂フィルムの接着強度は吸湿後でもその強度はわずかしか低下していない。また吸湿後熱時の接着強度は、常態と比べて低下するものの、比較例のそれと比べて強度が大きく低下することを防ぐことが可能である。さらに、第3表の比較例2、3のように、エポキシ化合物の量が増加することにより、熱分解温度が下がり、加工時の耐熱性が低下する。
以上の実施例から本発明により、吸湿熱時の接着強度が大きく低下することを防ぐことができ、耐熱性と成形加工性に優れたフィルム接着剤を得られることが示される。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、耐熱性と成形加工性を両立させた信頼性の高いフィルム接着剤を提供することが可能である。低沸点溶媒に可溶であるため残留溶媒をほぼ完璧になくすことが可能で、また既にイミド化されているため、加工時にイミド化のための高温過程が不要で水分の発生も無い。またタックのないフィルムとして使用することができるので連続作業性やクリーンな環境を必要とする場合に非常に有効である。このため高信頼性と耐熱性を要求するエレクトロニクス用材料として工業的に極めて利用価値が高い。
本発明の樹脂組成物の使用方法は特に限定されるものではないが、樹脂構成成分の全てが有機溶剤に均一に溶解されている樹脂ワニスとして、コーティングやディッピングに、流延成形によってフィルムに、耐熱性と加工性の両立した絶縁材料、接着フィルム等として使用することができる。
Claims (3)
- (A)主たる酸成分が3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物及び1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物であり、主たるアミン成分が、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼンとジメチルフェニレンジアミンの群から選ばれた1種類または2種類以上のジアミンと一般式(1)で表されるジアミノシロキサン化合物からなる有機溶剤に可溶なガラス転移温度が350℃以下のポリイミド樹脂100重量部と、(B)1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物0.5〜5重量部未満と、(C)該エポキシ化合物と反応可能な活性水素基を有する化合物0.1〜20重量部と、(D)カップリング剤0.1〜50重量部とを主たる成分として含有していることを特徴とする耐熱性樹脂組成物。
R3,R4,R5,R6:一価の脂肪族基または芳香族基
k:1〜20の整数) - 成分(A)が3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物aモル、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物bモル及び1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物cモルを酸成分とし、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパンdモルと、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼンとジメチルフェニレンジアミンの群から選ばれた1種類または2種類のジアミンeモルと、一般式(1)で表されるジアミノシロキサン化合物fモルとをアミン成分とし、a、b、c、d、e、fのモル比が 0.5 ≦ a/(a+b+c)≦ 0.8、0.1≦ b/(a+b+c)≦ 0.5、0.05 ≦ c/(a+b+c)≦ 0.25、かつ 0.05 ≦ f/(d+e+f)≦ 0.5 の割合で両成分を反応させてイミド閉環せしめたポリイミド樹脂である請求項1記載の耐熱性樹脂組成物。
- 成分(D)がシランカップリング剤である請求項1又は請求項2記載の耐熱性樹脂組成物。
Priority Applications (1)
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JP11223996A JP3666988B2 (ja) | 1996-05-07 | 1996-05-07 | 耐熱性樹脂組成物 |
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