JP3665416B2 - 避雷器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は避雷器に関し、詳しくは、雷サージ等による異常電圧の発生時、送配電線の周辺設備を雷サージ等から保護するために碍子に取り付けられた避雷器に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、高圧や特高の送配電線に設けられた碍子付近への落雷時、雷サージ等による異常電圧が発生した際、送配電線の周辺設備を雷サージ等から保護するため、前述した碍子の接地側と電線側との間に避雷器を取り付けている。
【0003】
この避雷器は、図3に示すようにサージ電圧に対しては低抵抗、送配電線の通常の対地電圧に対しては高抵抗を示す非直線性の電流電圧特性を有するZnO等からなる限流素子1を具えた構造を具備する。具体的には、FRP製の絶縁筒2の軸方向(上下方向)両端部に、接地側端子及び電線側端子となる一対の金属ブロック状電極3,4を嵌合させてピン5により固定し、この絶縁筒2内の両電極3,4間に前述した限流素子1を収納配置する。また、前述した絶縁筒2及び両電極3,4の外周面に、弾性を有するポリマーやEPDM等の絶縁外被体6を被着する。
【0004】
尚、限流素子1と電線側端子である電極4との間に圧縮ばね7を挿入配置し、この圧縮ばね7の弾性力により、限流素子1に対して押圧力を作用させてその限流素子1と両電極3,4とを所定の加圧力でもって密着状態に接合して良好な接合状態を得ると共に、限流素子1と両電極3,4との電気的な接続を確実なものにしている。
【0005】
この避雷器では、雷サージ等による異常電圧が発生すると、限流素子1が低抵抗値となってこれを瞬時に大地に逃がし、その異常電圧が消滅すれば、限流素子1が高抵抗値となって通常の対地電圧を遮断する。この弁作用により、送配電線の周辺設備を雷サージ等から保護している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、直撃雷などの定格を超えるサージ電圧が発生すると、限流素子1が故障することがあり、その場合、絶縁筒2内の両電極3,4により挟まれた密閉空間においてアーク熱でもって大量のガスが発生して内部圧力が急激に上昇する。この急激な内部圧力の上昇により、絶縁筒2が絶縁外被体6と共に爆発的に破壊してその破片が周囲へ飛散する。このような避雷器の爆発的な破壊が発生してその破片が飛散すると、人身事故の原因にもなって非常に危険であり、重大問題となっている。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、避雷器の爆発的な破壊を緩和して破片が飛散することがないようにすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための技術的手段として、本発明は、非直線性の電圧電流特性を有する限流素子と一対の金属ブロック状電極とを同軸上に配置し、非導電性繊維を軸方向に沿う縦糸とその軸方向とほぼ直交する方向に沿う横糸として横方向強度を縦方向強度より低くした絶縁布に熱硬化樹脂を含浸させたプリプレグシートを、高強度の非導電性繊維の縦糸を軸方向に、かつ、低強度の非導電性繊維の横糸を軸方向とほぼ直交する径方向にそれぞれ沿わせ、軸方向両端部が一対の電極まで達するように配置し、前記限流素子及び電極の外周面に巻き付けて熱収縮により被着させたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、非直線性の電圧電流特性を有する限流素子と一対の金属ブロック状電極とを同軸上に配置し、高強度の非導電性繊維を軸方向に沿う縦糸とし低強度の非導電性繊維を軸方向とほぼ直交する方向に沿う横糸とした絶縁布に熱硬化樹脂を含浸させたプリプレグシートを、高強度の非導電性繊維の縦糸を軸方向に、かつ、低強度の非導電性繊維の横糸を軸方向とほぼ直交する径方向にそれぞれ沿わせ、軸方向両端部が一対の電極まで達するように配置し、前記限流素子及び電極の外周面に巻き付けて熱収縮により被着させたことを特徴とする。
【0010】
更に、前述した本発明では、前記プリプレグシートを、限流素子及び電極の外周面に巻き付けて熱収縮により前記電極の表面に形成された凹部に食い込ませた状態で被着させたり、或いは、プリプレグシートを、限流素子及び電極の外周面に巻き付けて熱収縮により前記電極に形成された縮径部まで延在した状態で被着させたりすることが、限流素子に対して電極の接合状態を良好なものとする点で好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に係る避雷器の実施形態を図1及び図2に示して説明する。
【0012】
図1(a)(b)の実施形態における避雷器は、同図に示すようにサージ電圧に対しては低抵抗、送配電線の通常の対地電圧に対しては高抵抗を示す非直線性の電流電圧特性を有するZnO等からなる限流素子11を具え、その限流素子11の両側(図では上下)に接地側端子及び電線側端子である一対の金属ブロック状電極12,13を配置した構造を具備する。
【0013】
尚、図示の避雷器では、従来と同様、限流素子11と電極12又は13との間に圧縮ばね(図3参照)を挿入配置することも可能である。また、前述の限流素子11は一つであるが、複数の限流素子11を軸方向に配列させた構造のものも可能で、更に、それら複数の限流素子11の接合面の相互間に冷却用金属ブロック(図示せず)を介在させた構造とすることも可能である。
【0014】
本発明の特徴は、前述した限流素子11及びその両側に接合された電極12,13の外周面に後述のプリプレグシート14を巻き付けたことにある。
【0015】
具体的に、プリプレグシート14は、例えばガラス繊維などからなる高強度の非導電性繊維を軸方向に沿う縦糸15とし、且つ、例えばポリエステル繊維などからなる低強度の非導電性繊維を軸方向とほぼ直交する径方向に沿う横糸16とした絶縁布に、エポキシ樹脂やポリエステル樹脂などの絶縁性の熱硬化樹脂(図示せず)を含浸させた構成を有する。このプリプレグシート14は、製作が容易でコスト面でも良好なものである。
【0016】
尚、この実施形態は、高強度の縦糸15と低強度の横糸16とで構成した絶縁布を使用した場合であるが、これ以外にも、例えば縦糸と横糸とで太さの異なる非導電性繊維を使用したり、或いは、縦糸と横糸との配列関係に粗密状態を形成したりすることにより、横方向強度を縦方向強度より低くした絶縁布とすることが可能である。また、縦糸の非導電性繊維と横糸の非導電性繊維とは同一種類の繊維又は異なる種類の繊維のいずれであってもよい。
【0017】
前述した高強度の非導電性繊維の縦糸15及び低強度の非導電性繊維の横糸16からなる絶縁布に熱硬化樹脂を含浸させた硬化前のプリプレグシート14を、限流素子11及びその両側に位置する電極12,13の外周面に巻き付ける。この時、限流素子11を挾み込んだ電極12,13に対して軸方向に所定の加圧力を作用させた状態で、高強度の非導電性繊維の縦糸15を軸方向に沿わせ、低強度の非導電性繊維の横糸16を軸方向とほぼ直交する径方向に沿わせながら、硬化前のプリプレグシート14を例えば2〜3回程度巻き付ける。
【0018】
この状態で、限流素子11及び電極12,13の外周面にプリプレグシート14を巻き付けた限流素子ユニット17を加熱処理すると、プリプレグシート14を構成する横糸16(ポリエステル繊維)が熱収縮することによりそのプリプレグシート14が限流素子11及び電極12,13の外周面に密着した状態で被着する。
【0019】
このようにプリプレグシート14が限流素子11及び電極12,13の外周面に密着した状態が得られると、そのプリプレグシート14を組成する絶縁材料でもって限流素子11及び電極12,13の外周面をコーティングすることになる。これにより、湿気が侵入しにくく、且つ、限流素子11の周囲に空気層が形成されにくいため、限流素子11の表面での沿面閃絡を防止する効果を発揮させることができ、電気的な性能が向上する。
【0020】
また、前述した電極12,13は、限流素子側に大径部12a,13a、電極引き出し側に小径部12b,13b、その大径部12a,13aと小径部12b,13bとの間に縮径部12c,13cをそれぞれ有する形状をなす。この実施形態では、プリプレグシート14の軸方向両端部を電極12,13の大径部12a,13aまで達するように配置する。
【0021】
一方、前述した電極12,13の大径部12a,13aの外周面に凹部を形成する。この凹部は、例えば、大径部12a,13aの外周面にその径方向に沿って刻設された2条の凹溝18とする。このようにすれば、熱硬化後のプリプレグシート14は、その熱収縮により電極12,13の凹溝18に食い込むことになり、軸方向に沿って中央部分へ向かう力を現出させ、その作用力により、限流素子11に対して電極12,13を所定の加圧力でもって押し付けて両者の接合状態を良好なものとする。
【0022】
尚、電極12,13の外周面に形成する凹部は、前述の凹溝18以外にも、例えば、あや目状のローレット等により形成することが可能であり、また、溝状に連続的に形成する以外にも、電極12,13の外周面に部分的に形成するようにしてもよい。
【0023】
このようにして限流素子11及び電極12,13の外周面にプリプレグシート14を被着させた限流素子ユニット17の外周に、弾性を有するポリマーやEPDM等からなる絶縁外被体19を被着する。この絶縁外被体19は、それ自体を拡張させながら限流素子ユニット17の外周に嵌め込んだ上で熱収縮により密着させる。この時、絶縁外被体19の内周面と限流素子ユニット17の外周面との間に充填材又は接着材(図示せず)を介在させることにより、微小な空気層が形成されることなく良好な密着状態を確保でき、前述したように沿面閃絡を防止する効果を発揮させることが実現容易となる。
【0024】
尚、絶縁外被体19は、前述したようにそれ自体を拡張させながら限流素子ユニット17に嵌め込んで熱収縮により被着させる以外にも、例えば、限流素子ユニット17を金型にセッティングし、その金型に絶縁性を有するエポキシ樹脂等の熱硬化樹脂を注入してモールド成形することによっても製作することが可能である。
【0025】
尚、前述した図1(a)(b)の実施形態では、プリプレグシート14の軸方向端部を電極12,13の大径部12a,13aまでとし、その電極12,13に刻設された凹溝18にプリプレグシート14を熱収縮で食い込ませることにより、軸方向に沿って中央部分へ向かう作用力でもって限流素子11に電極12,13を押し付けて良好な接合状態を得るようにしたが、本発明はこれに限定されることなく、図2(a)(b)に示す実施形態のような構造とすることも可能である。
【0026】
即ち、図1(a)(b)の実施形態のように電極12,13の外周面に凹溝18を刻設することなく、図2(a)(b)に示すようにプリプレグシート14の軸方向端部を電極12,13の大径部12a,13aから縮径部12c,13cを介して小径部12b,13bまで達する部位へ延在させる。このようにしてプリプレグシート14を縮径部12c,13cまで延在させて被着させることにより、軸方向に沿って中央部分へ向かう力を現出させ、その作用力により限流素子11に対して電極12,13を所定の加圧力でもって押し付けて両者の接合状態を良好なものとする。
【0027】
以上、二つの実施形態で示す避雷器では、従来の場合と同様、雷サージ等による異常電圧が発生すると、限流素子11が低抵抗値となってこれを瞬時に大地に逃がし、その異常電圧が消滅すれば、限流素子11が高抵抗値となって通常の対地電圧を遮断する。この弁作用により、送配電線の周辺設備を雷サージ等から保護する。
【0028】
一方、本発明の避雷器では、直撃雷などの定格を超えるサージ電圧が発生すると、限流素子11が故障することがあり、その場合、限流素子11及び電極12,13とプリプレグシート14との間にアーク熱でもって大量のガスが発生して内部圧力が急激に上昇しようとする。
【0029】
しかしながら、限流素子11及び電極12,13の外周面に巻き付けられたプリプレグシート14が、ガラス繊維などの高強度の非導電性繊維を縦糸15とし、且つ、ポリエステル樹脂などの低強度の非導電性繊維を横糸16とした絶縁布で構成されているため、絶縁外被体19の内部で急激な圧力上昇が発生する前に、低強度の非導電性繊維からなる横糸16が局部的に破断する。この横糸16の局部的な破断によりプリプレグシート14が開口してその箇所で絶縁外被体19が速やかに破損する。これによって絶縁外被体19の内部での急激な圧力上昇を緩和して絶縁外被体19の局部的で小規模な破損だけで済み、内部の限流素子11などまで破壊されて破片が飛散することはない。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、非導電性繊維の縦糸及び横糸で構成して横方向強度を縦方向強度より低くしたプリプレグシート、具体的には、高強度の非導電性繊維を縦糸とし低強度の非導電性繊維を横糸としたプリプレグシートを、前記限流素子及び電極の外周面に巻き付けて熱収縮により被着させたことにより、直撃雷などの定格を超えるサージ電圧が発生して限流素子が故障しても、絶縁外被体内部での急激な圧力上昇による爆発を緩和することができ、絶縁外被体の局部的で小規模な破損だけで済み、人身事故を未然に防止できて安全性が飛躍的に向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明に係る避雷器の実施形態を示す一部断面部分を含む正面図
(b)は(a)の避雷器を構成する限流素子ユニットを示す一部断面部分を含む正面図
【図2】(a)は本発明の他の実施形態を示す一部断面部分を含む正面図
(b)は(a)の避雷器を構成する限流素子ユニットを示す一部断面部分を含む正面図
【図3】従来の避雷器の一例を示す一部断面部分を含む正面図
【符号の説明】
11 限流素子
12 電極
13 電極
14 プリプレグシート
15 縦糸
16 横糸
18 凹部(凹溝)

Claims (4)

  1. 非直線性の電圧電流特性を有する限流素子と一対の金属ブロック状電極とを同軸上に配置し、非導電性繊維を軸方向に沿う縦糸とその軸方向とほぼ直交する方向に沿う横糸として横方向強度を縦方向強度より低くした絶縁布に熱硬化樹脂を含浸させたプリプレグシートを、高強度の非導電性繊維の縦糸を軸方向に、かつ、低強度の非導電性繊維の横糸を軸方向とほぼ直交する径方向にそれぞれ沿わせ、軸方向両端部が一対の電極まで達するように配置し、前記限流素子及び電極の外周面に巻き付けて熱収縮により被着させたことを特徴とする避雷器。
  2. 非直線性の電圧電流特性を有する限流素子と一対の金属ブロック状電極とを同軸上に配置し、高強度の非導電性繊維を軸方向に沿う縦糸とし低強度の非導電性繊維を軸方向とほぼ直交する方向に沿う横糸とした絶縁布に熱硬化樹脂を含浸させたプリプレグシートを、高強度の非導電性繊維の縦糸を軸方向に、かつ、低強度の非導電性繊維の横糸を軸方向とほぼ直交する径方向にそれぞれ沿わせ、軸方向両端部が一対の電極まで達するように配置し、前記限流素子及び電極の外周面に巻き付けて熱収縮により被着させたことを特徴とする避雷器。
  3. 前記プリプレグシートを、前記限流素子及び電極の外周面に巻き付けて熱収縮により前記電極の表面に形成された凹部に食い込ませた状態で被着させたことを特徴とする請求項1又は2記載の避雷器。
  4. 前記プリプレグシートを、前記限流素子及び電極の外周面に巻き付けて熱収縮により前記電極に形成された縮径部まで延在した状態で被着させたことを特徴とする請求項1又は2記載の避雷器。
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