JP3665024B2 - 焼却炉若しくはボイラとその表面温度低減方法 - Google Patents

焼却炉若しくはボイラとその表面温度低減方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術の分野】
本発明は焼却炉、ボイラにおいて、炉壁外表面温度を低減したり、断熱材などの使用量を削減する発明に関する。
【0002】
【従来の技術】
棄物などを焼却する焼却炉では、燃焼している炉内部の温度が800℃を超える高温であり、加えて、近年紙やプラスチックスなどの含有率が増え高くなり、高発熱量の廃棄物を焼却するので、燃焼温度は益々従来に比べ高目になっている。更に、ダイオキシン排出防止対策などのため、意識的な高温燃焼が解決手段にもなっている。またボイラでも、高温燃焼で熱効率向上することが求められている。そのため焼却炉やボイラの構成でも、耐火材質の検討がなされてきたが、装置表面温度を適切に保つためには、高品質で高価な耐火材を使用せざるを得ない状況下にある。
【0003】
却炉の炉壁33の構造は、図4に示すように内側から耐火材としての耐火レンガ1、断熱材としての断熱キャスタブル2、断熱ボード3で構成し、最外側の断熱ボード3は被覆材32で覆われ、前記被覆材32の外側表面には耐熱塗料で保護塗膜34が形成施されている。被覆材32の外側表面は、表面保護と同時に、人が触れたとき火傷を負わない程度の温度以下に保つ必要がある。このため、断熱材を厚くして熱伝導を抑えて温度上昇を防いでいた。そして、耐熱塗料による保護塗膜は、ほとんどの場合、アルミニウム粉末顔料を含有するアルミニウムペイントを使用し、銀色の塗膜であった。これは、塗膜の耐熱性が良好であり安価であることから選択されていた。したがって、炉等の内部が高温状態にあるものの壁外側表面温度の低減には専ら高価な断熱材を多量に使用して行っているため、炉等の内部が高温状態にあるものの建設では炉等の本体が大きくなり、更には補修のコストがかかるという不利益が伴った。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、焼却炉、ボイラ、加熱炉、電気炉、工業炉、高温ダクト、煙道等において、炉壁や配管などの外表面温度を低減したり、断熱材の使用量を断熱材の使用を削減し、コストダウンを図る方法の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、焼却炉若しくはボイラの炉壁を、内側から耐火材、断熱材及び被覆材で覆われた断熱ボードで構成するとともに、断熱材の外表面又は前記被覆材の外側表面に、色相が緑色〜黄色の範囲で且つ乾燥塗膜輻射率が0.8以上の耐熱塗料を塗布して塗膜を形成するとともに、前記被覆材で覆われた断熱ボードの厚みを耐火材及び断熱材の厚みより小 にしたことを特徴とする。具体的には、炉壁の表面温度を低減した焼却炉の場合、内側から耐火レンガ、断熱キャスタブルもしくは断熱タイルを配設し、その外側に断熱ボードを配してなる焼却炉の炉壁の被覆材表面に、輻射率が0.8以上の耐熱塗料を塗布して塗膜を形成させる。
又本発明は、焼却炉若しくはボイラの炉壁を、内側から耐火材、断熱材及び被覆材で覆われた断熱ボードで構成するとともに、前記、断熱材の外表面又は被覆材の外側表面に、塗膜の色相が銀色の耐熱塗料が塗布されている既設炉に色相が緑色〜黄色で且つ乾燥塗膜輻射率が0.8以上の耐熱塗料を塗布して塗膜を形成し、前記焼却炉若しくはボイラの表面温度を低減する方法にある。
【0006】
熱の伝播の現象には、伝導、対流、輻射(放射)の三つの現象がある。内部が高温状態にあるもの例えば、焼却炉やボイラ焼却炉の置かれる環境を考察すると、対流現象は、設置場所の自然条件で決まり、強制空冷法や水冷却法などの強制冷却では、設備費やランニングコスト上の問題がある。そのため通常では、断熱材を使用し、伝導現象の断熱を利用している。輻射現象では、外部から熱輻射を受けないことに着眼してきたが、実際上、近距離に熱放射源がある場合をのぞき、せいぜい太陽光の熱放射を受けない程度の配慮しかなされてこなかった。
【0007】
そこで、本発明者は焼却炉、ボイラ等の表面に耐熱性で輻射率が0.8以上のあるいは輻射率が0.3以上の塗装皮膜を形成する方法で、内部が高温状態にあるものの表面温度を低下させる方法を提案することにした。
【0008】
輻射率(放射率)とは、ある温度の固体表面から射出される全放射能(放射エネルギ)Eと、同じ温度の黒体表面から射出される全放射能Eとの比、ε(=E/E)であり、1に近いほど黒体に近く、放射されるエネルギが大きい。
【0009】
焼却炉やボイラー等の炉壁の表面温度は、好ましくは40℃〜80℃の範囲である。輻射率が0.8以上とは経験的、経済的に見出した数値である。既設装置の表面に塗布する場合には、輻射率が0.8以上の耐熱塗料塗膜の形成で既設装置の表面温度を顕著に低減できる。この値未満では少ないながらの効果は現れるが、経済的に有利ではない。然し新設装置では、断熱材量を装置の強度保持が可能な範囲で減らし、新設装置表面に輻射率が0.3以上の耐熱塗料塗膜形成で目的が達成できる。更には、断熱材を必要としない高温配管などでは輻射率が0.3以上、例えば0.5程度の耐熱塗料塗膜形成で目的達成が可能となることも在る。これらの耐熱塗料の塗装塗膜の輻射率は任意に利用可能ではなく、製造販売上から限定されているため、利用上の制約、経済的負担の大きな要因である。
【0010】
本発明の趣旨は、焼却炉、ボイラにおいて、炉壁や配管などの外表面温度を低減したり、断熱材の使用量を低減する方法は、断熱材の外表面または前記断熱材の被覆材表面に色相が緑色〜黄色で且つ乾燥塗膜輻射率が0.8以上の耐熱塗料を塗布して塗膜を形成すればよいのであるが、ここで耐熱塗料による塗膜で本発明の特性を付与した理由は、この方法が最も工業的に実用的簡便で、しかも、もう一つの別の目的である表面の保護コートを兼ねるからである。
【0011】
更に、本発明の表面温度低減方法は、前記耐熱塗料が、コバルト、鉄、マンガン、銅、チタニウムから選ばれる少なくとも一種の元素もしくは化合物を顔料として含むことを特徴とする。
【0012】
本発明に関わる耐熱塗料の成分で、輻射率に大きく影響し、かつ耐熱性にも影響するのが、塗料が含有する顔料であり、前記元素もしくは化合物の効果が特に著しく、成分として好ましいことを見出した。なお、化合物としてはこれらの元素の種々な酸化物が特に好ましい。
【0013】
更に、本発明の表面温度低減方法は、前記耐熱塗料が、シリコーン樹脂を展色剤(ビヒクル)の成分として含有することを特徴とする。
【0014】
前記耐熱塗料のビヒクルとして用いられる有機高分子化合物は、多くは無色透明な物質であって、輻射率に直接関係しないが、その耐熱性や、輻射率に関与する他の成分の効果を阻害しない点で前記シリコーン樹脂が適する。
【0015】
前記輻射率の限定範囲の塗料を調整すると、多くはグリーン〜黄色を呈することを見出した。これは、表面塗装としての美観を損なうものでなく、工業デザインの観点からも好ましい色彩である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。但し本実施の形態に記載される製品の寸法、形状、材質、その相対配置等は特に特定的な記載が無い限りは本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0017】
図1は本実施の形態における実施例および比較例に用いた炉壁の表面温度を低減した焼却炉の概念図である。本例の焼却炉は円筒縦型焼却炉12で、燃料は下部の供給口から矢印Aのように空気ととも供給され、炉12内部で燃焼し、およそ900℃近辺に保たれる。燃焼後の排ガスは、炉頂上部排出口より矢印Bのように排出される。該焼却炉の炉壁13は左側断面図に示すように、内側から耐火材としての耐火レンガ1、断熱材としての断熱キャスタブル2を配設し、その外側に断熱ボード3、被覆材4を配し、該被覆材4表面上には耐熱塗料11もしくは31を塗布する。
【0018】
(比較例)
図1における炉壁の表面塗装に従来の耐熱アルミニウムペイントを用い塗膜31を形成し、図2の下段に示す炉壁材の寸法で炉壁を構成した。すなわち、耐火レンガ厚150mm、断熱キャスタブル125mm、断熱ボード150mmとし、該断熱ボード外の被覆材4上に供試塗料を塗布した。塗布は乾燥後の膜厚を30μm近辺になるよう調整した。炉内の温度をおよそ900℃に保ち、定常状態で、炉壁表面の温度を測定したところ、表1の結果を得た。
【0019】
【表1】
Figure 0003665024
【0020】
(実施例1)
図1における炉壁の表面塗装に本発明で定義した供試塗料を用い塗膜11を形成し、図2の上段に示す炉壁材の寸法で炉壁を構成した。断熱ボードは比較例の1/2の厚みとした。すなわち、耐火レンガ厚150mm、断熱キャスタブル125mm、断熱ボード75mmとし、該断熱ボード外の被覆材4上に供試塗料を塗布した。乾燥後の膜厚を30μm近辺になるよう調整した。炉内の温度をおよそ900℃に保ち、定常状態で、炉壁表面の温度を測定したところ、表2の結果を得た。
【0021】
【表2】
Figure 0003665024
【0022】
比較例と実施例でえられた結果とを比べて解かるように、本発明定義の塗料を用いれば、断熱材としての断熱ボードの厚みを半減しても、従来の耐熱アルミニウムペイントと同等以下の表面温度が得られた。
【0023】
(実施例2)
図1に示す炉壁の表面塗装として、本発明で定義した供試塗料を用い塗膜11を形成し、図3の上段に示す炉壁材の寸法で炉壁を構成した。すなわち、耐火レンガ厚150mm、断熱キャスタブル125mm、断熱ボード150mmとし、該断熱ボード外の被覆材4上に供試塗料を塗布した。塗布は乾燥後の膜厚を30μm近辺になるよう調整した。炉内の温度をおよそ900℃に保ち、定常状態で、炉壁表面の温度を測定したところ、表2に示す塗料の状態で、約65℃程度になった(図3下段は従来例を示す。)。
【0024】
(実施例3)
高温配管の外表面に表3に示す供試塗料を塗布した。塗布は乾燥後の膜厚を30μm近辺になるよう調整した。高温配管内部温度が200℃のとき、高温配管の外表面温度は、従来の耐熱アルミニウムペイントでは75℃であったのが、69℃程度に低下した。
【0025】
【表3】
Figure 0003665024
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明により炉壁の表面温度を低減したり、断熱材の使用を削減し、コストダウンを図ることが可能となった。これは、内部が高温状態にある焼却炉、ボイラ等の断熱材の外表面に、または前記断熱材の被覆材表面に、あるいは断熱材を配していないか被覆材を配していないか更には断熱材と被覆材とを共に配していない高温ダクトなどの外表面温度を低減したり、断熱材使用量を削減したり、あるいは断熱材使用量を削減しながら外表面温度を低減する方法として、広く適応が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 表面温度を低減した焼却炉の概念図
【図2】 本発明の第1実施例を示す炉壁と従来の炉壁の断面図
【図3】 本発明の第2実施例を示す炉壁と従来の炉壁の断面図
【図4】 従来の炉壁を説明する概念図
【符号の説明】
1 耐火レンガ
2 断熱キャスタブル
3 断熱ボード
4 被覆材
11 高輻射率塗膜
12 円筒縦型焼却炉
13 炉壁
31 低輻射率塗膜

Claims (2)

  1. 焼却炉若しくはボイラの炉壁を、内側から耐火材、断熱材及び被覆材で覆われた断熱ボードで構成するとともに、前記被覆材の外側表面に、色相が緑色〜黄色の範囲で且つ乾燥塗膜輻射率が0.8以上の耐熱塗料を塗布して塗膜を形成するとともに、前記被覆材で覆われた断熱ボードの厚みを耐火材及び断熱材の厚みより小にしたことを特徴とする焼却炉若しくはボイラ。
  2. 焼却炉若しくはボイラの炉壁を、内側から耐火材、断熱材及び被覆材で覆われた断熱ボードで構成するとともに、前記被覆材の外側表面に、塗膜の色相が銀色の耐熱塗料が塗布されている既設炉に色相が緑色〜黄色で且つ乾燥塗膜輻射率が0.8以上の耐熱塗料を塗布して塗膜を形成し、前記焼却炉若しくはボイラの表面温度を低減する方法。
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