JP3664069B2 - 有機電界発光素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種の表示装置として広範囲に利用される発光素子であって、高効率かつ安定性に優れた有機電界発光素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電界発光素子は、自己発光のために液晶素子にくらべて明るく、鮮明な表示が可能であるため、古くから多くの研究者によって研究されてきた。現在実用レベルに達した電界発光素子としては、無機材料のZnSを用いた素子がある。しかし、この様な無機の電界発光素子は、発光のための駆動電圧として200V以上が必要であるため、広く使用されるには至っていない。
【0003】
これに対して有機材料を用いた電界発光素子である有機電界発光素子は、従来実用的なレベルからはほど遠いものであったが、1987年にイーストマン・コダック社のシー・ダブリュ・タン(C.W.Tang)らによって開発された積層構造素子によりその特性が飛躍的に進歩した。彼らは蒸着膜の構造が安定で電子を輸送することのできる蛍光体からなる層(電子輸送性発光層)と、正孔を輸送することのできる有機物からなる層(正孔輸送層)とを積層し、両方のキャリヤーを蛍光体中に注入して発光させることに成功した。これによって有機電界発光素子の発光効率が向上し、10V以下の電圧で1000cd/m2以上の発光が得られる様になった。その後多くの研究者によってその特性向上のための研究が行われ、現在では10000cd/m2以上の発光特性が得られている。
【0004】
この様な有機電界発光素子においては、素子の有機層と電極を構成する有機材料と金属材料によって特性が大きく変化する。特に有機層は、電荷の注入・輸送・再結合・発光といった重要な機能を果たしており、特性の優れた素子を実現するには、それぞれの層の機能に適した材料を選択することが重要である。また、耐久性に優れた素子を得るためには、有機層に凝集を起こさない安定性に優れた膜を用いることが重要である。
【0005】
電荷注入輸送層は、正孔注入輸送層と電子注入輸送層に大別される。それぞれ、電極からの電荷の注入を容易にし、注入された電荷を発光領域まで輸送するという働きをする。電荷注入層と電荷輸送層を一つの材料で兼ねる場合と別々の材料を用いる場合とがある。正孔注入層のための材料としては、陽極からの正孔の注入を容易にするため、HOMOレベルの小さい材料が使用される。具体的には銅フタロシアニン(CuPc)、トリス{4−[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]フェニル}アミン(m−MTDATA)などが挙げられる。また、正孔輸送材料としてはトリフェニルアミン誘導体が一般的に用いられている。特許2826381号公報によれば、正孔注入層あるいは正孔注入輸送層としての有機半導体域を形成する材料として、導電性高分子のオリゴマー、特にチオフェンオリゴマーを含むものが好ましいとされている。一方、電子輸送材料としては、オキサジアゾール誘導体やトリス(8−ヒドロキシキノリラト)アルミニウム(Alq)などに代表されるキノリノール金属錯体などが検討されている。
【0006】
しかしこれらの材料の中には、チオフェンオリゴマー、オキサジアゾール誘導体などのように、電荷の注入輸送機能には優れていても、薄膜の安定性にかけるものも多い。
【0007】
発光層用の材料としては数多くの化合物群が検討されている。また、製膜性に優れた材料の中に蛍光性の色素を少量分散させた膜を発光層として用いることにより、素子の高効率化、長寿命化および発光色の調整をすることも検討されている。この手法は、単独では結晶化しやすい、あるいは濃度消光を起こしやすい蛍光色素に対して非常に有効である。しかし、発光効率・駆動耐久性ともに、実用化するためには十分な特性を満たすものは得られていなかった。
【0008】
連続駆動時の輝度低下を抑制するためには、発光材料以外にも様々な検討がされている。たとえば、発光層と電荷輸送層との間に両者の構成材料の混合物からなる層を設ける、あるいは電荷輸送層の高耐熱化などが行われている。しかし、これらの手法は必ずしも有効であるとは限らない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、有機電界発光素子に用いる有機材料およびその使用法を改良することによって、発光効率が高く駆動耐久性に優れた有機電界発光素子を実現することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の有機電界発光素子は、一対の電極とその間に挟まれた少なくとも一層以上の有機層を有しており、その有機層の一つである発光層が置換または無置換のチオフェンオリゴマーを含む複数の材料で構成されていることを特徴としたものである。あるいは素子を構成する発光層と電極の間に蛍光材料が混合された領域を有し、その領域が発光層から離れていることを特徴としたものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、一対の電極と、前記一対の電極の間に設けられた発光層とを有し、前記発光層が置換または無置換のチオフェンオリゴマーとトリス(8−ヒドロキシキノリラト)アルミニウムとを含む有機電界発光素子あり、発光色を変化させ、かつ効率を向上させるという作用を有する。
【0012】
請求項2に記載の発明は、チオフェンオリゴマーが4つ以上のチオフェン環を有する請求項1記載の有機電界発光素子であり、このようなオリゴマーを用いることにより、より効率よい安定した発光を得ることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は発光層がチオフェンオリゴマーを10mol%以下含む請求項1または2に記載の有機電界発光素子である。
【0019】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を用いて具体的に説明する。
【0020】
(実施の形態1)
図1に本発明第1の実施の形態における有機電界発光素子の構成の断面図を示す。ガラス基板1上に陽極2を形成し、その上に正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層6、電子注入層7、陰極8を形成したものである。正孔注入層と正孔輸送層、電子輸送層と電子注入層はそれぞれ一つの層で兼ねることもできる。さらに発光層と正孔注入輸送層、発光層と電子注入輸送層を兼ねることもできる。
【0021】
陽極2には透明電極としてインジウム錫酸化物(ITO)や半透明電極として金薄膜を用いることができる。
【0022】
正孔注入層7、正孔輸送層8としては、従来の技術の項であげた、銅フタロシアニン(CuPc)やトリス{4−[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]フェニル}アミン(m−MTDATA)、トリフェニルアミン誘導体などのほか、本発明によるオリゴマー材料を含む混合物を用いることができる。さらにオリゴマー材料として、トリフェニルアミンオリゴマーやチオフェンオリゴマーなど、正孔輸送性の強い材料を用いることにより、特性を向上させることができる。また、発光層はチオフェンオリゴマーを含む複数の材料で構成されているが、チオフェンオリゴマーの割合としては10mol%以下が望ましい。
【0023】
電子輸送層6、電子注入層7を構成する材料としては従来の技術の項であげた、オキサジアゾール誘導体やトリス(8−ヒドロキシキノリラト)アルミニウム(Alq)などに代表されるキノリノール金属錯体を用いることができる。
【0024】
陰極8には有機膜に電子が注入でき、かつた耐環境安定性に優れていることが必要であり、具体的にはアルミニウム、マグネシウム、あるいはこれらの金属の合金を用いることができる。
【0025】
さらに、本発明によれば、正孔輸送層4または電子輸送層6に発光層から発せられる光のピーク波長よりも短波長に吸収ピーク波長を有する蛍光材料を混合させて用いることにより、素子の駆動耐久性を向上させることが可能となる。
【0026】
(実施の形態2)
図2に本発明第2の実施の形態における有機電界発光素子の構成の断面図を示す。ガラス基板1上に陽極2を形成し、その上に正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層6、電子注入層7、陰極8を形成したものであり、正孔輸送層4の一部に蛍光材料を混合した混合層9を設ける。陽極2、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層6、電子注入層7、陰極8は実施の形態1に記載したものと同様なものを使用することができる。混合層9は発光層5と離して設ければ、どこでも良い。混合層に用いる蛍光材料としては、有機電界発光素子に用いられる有機材料を用いることができる。また、実施の形態1の場合と同様に、正孔注入層と正孔輸送層、電子輸送層と電子注入層はそれぞれ一つの層で兼ねることができる。
【0027】
なお、ここでは正孔輸送層に混合層を設けた場合について説明したが、電子輸送層に混合層を設ける場合も同様に実施することができる。
【0028】
【実施例】
次に、本発明の実施例を説明する。
【0029】
(実施例1)
以下、本発明第1の実施例を説明する。基板にはガラス上に透明な陽極としてインジウム錫酸化膜(ITO)をあらかじめ形成し、電極の形にパターニングしたもの用いた。この基板を充分に洗浄した後、蒸着する材料と一緒に真空装置内にセットし、10-4Paまで排気した。その後、正孔注入輸送層としてN,N'-ビス[4'-(N,N-ジフェニルアミノ)-4-ビフェニリル]-N,N'-ジフェニルベンジジン(TPT)を50nm製膜した。その後、発光層としてAlqと(化1)に示すチオフェン誘導体(1)の混合膜を25nm製膜した。
【0030】
【化1】
【0031】
製膜は2つの材料を別々の蒸着源から蒸発させる共蒸着法により行い、Alqに対する化合物(1)の混合比は1mol%とした。さらに、電子注入輸送層としてAlqを25nm製膜した後、陰極としてAlLi合金を150nmの厚さで製膜し、素子を作成した。これらの製膜は一度も真空を破ることなく、連続して行った。なお、膜厚は水晶振動子によってモニターした。素子作製後、直ちに乾燥窒素中で電極の取り出しを行い、引き続き特性測定を行った。得られた素子に電圧を印加したところ、均一な黄色の発光が得られた。100mA/cm2の電流を印加した場合の駆動電圧ならびに発光輝度を測定したところ、駆動電圧5.5V、発光輝度は3850cd/m2であった。
【0032】
この素子を乾燥窒素中において、初期輝度1000cd/m2で連続駆動(定電流)したところ、輝度が初期の半分である500cd/m2になるのに要する時間(輝度半減期)は850hであった。また、500h駆動後の電圧上昇分は0.8Vであった。
【0033】
(実施例2)
以下、本発明第2の実施例を説明する。第2の実施例では、発光層としてAlqと(化2)に示すチオフェン誘導体(2)との混合膜を用いたこと以外は第1の実施例と同様に素子を作製した。
【0034】
【化2】
【0035】
Alqに対するチオフェン誘導体(2)の混合比は1mol%とした。得られた素子に電圧を印加したところ、均一な橙色の発光が得られた。100mA/cm2の電流を印加した場合の駆動電圧ならびに発光輝度を測定したところ、駆動電圧5.4V、発光輝度は4200cd/m2であった。この素子を乾燥窒素中において、初期輝度1000cd/m2で連続駆動(定電流)したところ、輝度半減期は900hであった。また、500h駆動後の電圧上昇分は0.6Vであった。
【0036】
(実施例3)
以下、本発明第3の実施例を説明する。第3の実施例では、基板にはガラス上に透明な陽極としてインジウム錫酸化膜(ITO)をあらかじめ形成し、電極の形にパターニングしたもの用いた。この基板を充分に洗浄した後、蒸着する材料と一緒に真空装置内にセットし、10-4Paまで排気した。その後、正孔注入層として(化1)に示すチオフェン誘導体(1)とTPTの混合膜を25nm製膜した。 混合膜は2つの材料を別々の蒸着源から蒸発させて作製し、混合比はモル比で1:1とした。それから、正孔輸送層としてTPTを25nm製膜した。その後、発光層兼電子注入輸送層としてAlqを50nm製膜した。
【0037】
さらに、陰極としてAlLi合金を150nmの厚さで製膜し、素子を作成した。これらの製膜は一度も真空を破ることなく、連続して行った。なお、膜厚は水晶振動子によってモニターした。素子作製後、直ちに乾燥窒素中で電極の取り出しを行い、引き続き特性測定を行った。得られた素子に電圧を印加したところ、均一な黄緑色の発光が得られた。100mA/cm2の電流を印加した場合の駆動電圧ならびに発光輝度を測定したところ、駆動電圧5.1V、発光輝度は2350cd/m2であった。この素子を乾燥窒素中において、初期輝度1000cd/m2で連続駆動(定電流)したところ、輝度半減期は540hであった。また、500h駆動後の電圧上昇分は0.5Vであった。
【0038】
(実施例4)
以下、本発明第4の実施例を説明する。第4の実施例では、正孔注入層に(化1)に示すチオフェン誘導体(1)と(化3)に示すチオフェン誘導体(3)の混合膜を用いたこと以外は第3の実施例と同様に素子を作成した。
【0039】
【化3】
【0040】
得られた素子に電圧を印加したところ、均一な黄緑色の発光が得られた。100mA/cm2の電流を印加した場合の駆動電圧ならびに発光輝度を測定したところ、駆動電圧5.8V、発光輝度は2440cd/m2であった。この素子を乾燥窒素中において、初期輝度1000cd/m2で連続駆動(定電流)したところ、輝度半減期は620hであった。また、500h駆動後の電圧上昇分は0.7Vであった。
【0041】
(実施例5)
以下、本発明第5の実施例を説明する。第5の実施例では、基板にはガラス上に透明な陽極としてインジウム錫酸化膜(ITO)をあらかじめ形成し、電極の形にパターニングしたもの用いた。この基板を充分に洗浄した後、蒸着する材料と一緒に真空装置内にセットし、10-4Paまで排気した。その後、正孔注入層としてTPTを25nm製膜した。さらに正孔輸送層として、TPTとペリレン(吸収ピーク波長438nm)の混合膜を25nm製膜した。
【0042】
製膜は2つの材料を別々の蒸着源から蒸発させる共蒸着法により行い、TPTに対するペリレンの混合比は1mol%とした。さらに、発光層兼電子注入輸送層としてAlq(蛍光ピーク波長525nm)を50nm製膜した後、陰極としてAlLi合金を150nmの厚さで製膜し、素子を作成した。得られた素子に電圧を印加したところ、均一な黄緑色の発光が得られた。ELスペクトルを測定したところ、ペリレンからの発光は観測されなかった。100mA/cm2の電流を印加した場合の駆動電圧ならびに発光輝度を測定したところ、駆動電圧5.9V、発光輝度は2300cd/m2であった。この素子を乾燥窒素中において、初期輝度1000cd/m2で連続駆動(定電流)したところ、輝度半減期は610hであった。また、500h駆動後の電圧上昇分は1.5Vであった。
【0043】
(実施例6)
以下、本発明第6の実施例を説明する。第6の実施例では、ペリレンの代わりに9,10-ジフェニルアントラセン(吸収ピーク波長277nm)を用いたこと以外は第5の実施例と同様にして素子を作成した。
【0044】
得られた素子に電圧を印加したところ、均一な黄緑色の発光が得られた。発光スペクトルを測定したところ、9,10-ジフェニルアントラセンからの発光は観測されなかった。100mA/cm2の電流を印加した場合の駆動電圧ならびに発光輝度を測定したところ、駆動電圧6.1V、発光輝度は2210cd/m2であった。この素子を乾燥窒素中において、初期輝度1000cd/m2で連続駆動(定電流)したところ、輝度半減期は420hであった。また、500h駆動後の電圧上昇分は1.7Vであった。
【0045】
(実施例7)
以下、本発明第7の実施例を説明する。第7の実施例では、ペリレンの代わりにクマリン515(Exciton社製、吸収ピーク波長410nm)を用いたこと以外は第5の実施例と同様にして素子を作成した。
【0046】
得られた素子に電圧を印加したところ、均一な黄緑色の発光が得られた。発光スペクトルを測定したところ、クマリン515からの発光は観測されなかった。100mA/cm2の電流を印加した場合の駆動電圧ならびに発光輝度を測定したところ、駆動電圧6.3V、発光輝度2380cd/m2であった。この素子を乾燥窒素中において初期輝度1000cd/m2で連続駆動(定電流)したところ、輝度半減期は500hであった。また500h駆動後の電圧上昇分は1.2Vであった。
【0047】
(実施例8)
以下、本発明第8の実施例を説明する。第8の実施例では、基板にはガラス上に透明な陽極としてインジウム錫酸化膜(ITO)をあらかじめ形成し、電極の形にパターニングしたもの用いた。この基板を充分に洗浄した後、蒸着する材料と一緒に真空装置内にセットし、10-4Paまで排気した。その後、TPTと9、10―ジフェニルアントラセンの混合膜を25nm製膜した。
【0048】
製膜は2つの材料を別々の蒸着源から蒸発させる共蒸着法により行い、TPTに対する9、10―ジフェニルアントラセンの混合比は1mol%とした。さらに、その上にTPTを25nm製膜した。その後、発光層兼電子注入輸送層としてAlqを50nm製膜した後、陰極としてAlLi合金を150nmの厚さで製膜し、素子を作成した。
【0049】
得られた素子に電圧を印加したところ、均一な黄緑色の発光が得られた。ELスペクトルを測定したところ、9、10―ジフェニルアントラセンからの発光は観測されなかった。100mA/cm2の電流を印加した場合の駆動電圧ならびに発光輝度を測定したところ、駆動電圧6.7V、発光輝度は2590cd/m2であった。この素子を乾燥窒素中において、初期輝度1000cd/m2で連続駆動(定電流)したところ、輝度半減期は380hであった。また、500h駆動後の電圧上昇分は1.8Vであった。
【0050】
(実施例9)
以下、本発明第9の実施例を説明する。第9の実施例では、9、10―ジフェニルアントラセンの代わりにクマリン515(Exciton社製)を用いたこと以外は第8の実施例と同様にして素子を作成した。
【0051】
得られた素子に電圧を印加したところ、均一な黄緑色の発光が得られた。発光スペクトルを測定したところ、クマリン515からの発光は観測されなかった。100mA/cm2の電流を印加した場合の駆動電圧ならびに発光輝度を測定したところ、駆動電圧6.2V、発光輝度2460cd/m2であった。この素子を乾燥窒素中において初期輝度1000cd/m2で連続駆動(定電流)したところ、輝度半減期は500hであった。また500h駆動後の電圧上昇分は1.0Vであった。
【0052】
(実施例10)
以下、本発明第10の実施例を説明する。第10の実施例では、9、10―ジフェニルアントラセンの代わりにDCM(Exciton社製)を用いたこと以外は第8の実施例と同様にして素子を作成した。
【0053】
得られた素子に電圧を印加したところ、均一な黄緑色の発光が得られた。発光スペクトルを測定したところ、DCMからの発光は観測されなかった。100mA/cm2の電流を印加した場合の駆動電圧ならびに発光輝度を測定したところ、駆動電圧6.5V、発光輝度2480cd/m2であった。この素子を乾燥窒素中において初期輝度1000cd/m2で連続駆動(定電流)したところ、輝度半減期は300hであった。また500h駆動後の電圧上昇分は1.5Vであった。
【0054】
(実施例11)
以下、本発明第11の実施例を説明する。第11の実施例では、基板にはガラス上に透明な陽極としてインジウム錫酸化膜(ITO)をあらかじめ形成し、電極の形にパターニングしたもの用いた。この基板を充分に洗浄した後、蒸着する材料と一緒に真空装置内にセットし、10-4Paまで排気した。TPTを10nm製膜した後、TPTと9、10―ジフェニルアントラセンの混合膜を25nm製膜した。
【0055】
製膜は2つの材料を別々の蒸着源から蒸発させる共蒸着法により行い、TPTに対する9、10―ジフェニルアントラセンの混合比は1mol%とした。さらに、その上にTPTを15nm製膜した。その後、発光層兼電子注入輸送層としてAlqを50nm製膜した後、陰極としてAlLi合金を150nmの厚さで製膜し、素子を作成した。
【0056】
得られた素子に電圧を印加したところ、均一な黄緑色の発光が得られた。ELスペクトルを測定したところ、9、10―ジフェニルアントラセンからの発光は観測されなかった。100mA/cm2の電流を印加した場合の駆動電圧ならびに発光輝度を測定したところ、駆動電圧6.5V、発光輝度は2530cd/m2であった。この素子を乾燥窒素中において、初期輝度1000cd/m2で連続駆動(定電流)したところ、輝度半減期は370hであった。また、500h駆動後の電圧上昇分は1.6Vであった。
【0057】
(実施例12)
以下、本発明第12の実施例を説明する。第12の実施例では、9、10―ジフェニルアントラセンの代わりにクマリン515(Exciton社製)を用いたこと以外は第11の実施例と同様にして素子を作成した。
【0058】
得られた素子に電圧を印加したところ、均一な黄緑色の発光が得られた。発光スペクトルを測定したところ、DCMからの発光は観測されなかった。100mA/cm2の電流を印加した場合の駆動電圧ならびに発光輝度を測定したところ、駆動電圧6.8V、発光輝度2570cd/m2であった。この素子を乾燥窒素中において初期輝度1000cd/m2で連続駆動(定電流)したところ、輝度半減期は420hであった。また500h駆動後の電圧上昇分は1.3Vであった。
【0059】
(比較例1)
比較例1として、発光層と電荷注入輸送層の代りに発光層兼電子注入輸送層としてAlqを用いたこと以外は第1の実施例と同様に素子を作製した。この素子に電圧を印加したところ、均一な黄緑色の発光が得られた。100mA/cm2印加時の駆動電圧は6.2V、発光輝度は2310cd/m2であった。また、初期輝度1000cd/m2で連続駆動(定電流)したときの輝度半減期は300h、500h駆動後の電圧上昇分は2.0Vであった。
【0060】
(比較例2)
比較例2として、正孔注入層に(化1)に示すチオフェン誘導体(1)を用いたこと以外は第3の実施例と同様に素子を作製した。この素子に電圧を印加したところ、均一な黄緑色の発光が得られた。100mA/cm2印加時の駆動電圧は5.7V、発光輝度は2080cd/m2であった。また、初期輝度1000cd/m2で連続駆動(定電流)したところ、輝度が半減する前に電極間が短絡し、素子として機能しなくなった。
【0061】
実施例1から12および比較例1、2に示した結果より、本実施例で得られた素子は比較例で得られた素子よりも発光効率や駆動耐久性に優れていることが明らかになった。
【0062】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、発光効率が高く、駆動耐久性に優れた有機電界発光素子が得られるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明第1の実施の形態における有機電界発光素子の構成の断面図
【図2】本発明第2の実施の形態における有機電界発光素子の構成の断面図
【符号の説明】
1 ガラス基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 電子注入層
8 陰極
9 混合層
Claims (3)
- 一対の電極と、前記一対の電極の間に設けられた発光層とを有し、前記発光層が置換または無置換のチオフェンオリゴマーとトリス(8−ヒドロキシキノリラト)アルミニウムとを含む有機電界発光素子。
- チオフェンオリゴマーが4つ以上のチオフェン環を有する請求項1記載の有機電界発光素子。
- 発光層がチオフェンオリゴマーを10mol%以下含む請求項1または2に記載の有機電界発光素子。
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