JP3664037B2 - 車両交通システム及び車両の走行制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両交通システム及び車両の走行制御装置に係り、特に、車々間通信機を介して他の車両と無線通信を行う車両を所定の軌道において走行させる車両交通システム及び走行制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば、鉄道業務セミナNO.2「信号保安・鉄道通信入門」に開示される如く、鉄道のATC(Automatic Train Control)が知られている。このATCでは、鉄道車両間の通信が、軌道に沿って敷設されたレールを介して行われる。このため、ATCによれば、鉄道車両が軌道上のいかなる位置を走行していても、鉄道車両間の通信を継続することができる。
【0003】
ATCシステムでは、鉄道車両の軌道上に複数の閉塞区間が連続的に設定され、単一の閉塞区間内に複数の鉄道車両が併存しないように個々の鉄道車両が通信により制御される。具体的には、一の鉄道車両が一の閉塞区間に存在する場合は、その鉄道車両に後続する鉄道車両に対して、少なくとも上記一の閉塞区間に隣接する閉塞区間内で停止するようにレールを介した通信により指示が発せられる。このため、ATCシステムによれば、単一の閉塞区間に複数の鉄道車両が進入するのが確実に防止され、鉄道車両の安全な走行が確保される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述したATCシステムを、インフラ施設としてレールを有しない交通システムに適用する手法として、その交通システム内を走行する車両の軌道に沿って、車両と管制センタとの連続的な通信を可能とする通信手段を設置することが考えられる。しかし、かかる交通システムでは、管制センタや通信手段等のインフラ施設を設けるために多大な設備投資が必要となる。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、インフラ施設を用いることなく、簡素な構成で各車両を安全に走行させることが可能な車両交通システム及び車両の走行制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、請求項1に記載する如く、所定の軌道において複数台の車両が連結された車両隊列を、該車両隊列内で各車両に車々間通信機を介して他の車両と無線通信させつつ走行させる車両交通システムであって、
前記車々間通信機は、所定の通信可能領域を有すると共に、
前記車両隊列内の車両は、該車両隊列に先行する車両隊列内の車両が前記車々間通信機を介して送信する情報を受信した場合に、該車両隊列に先行する車両隊列内の車両の通信可能領域へ進入しないように減速制御されることを特徴とする車両交通システムにより達成される。
【0007】
請求項1記載の発明において、複数台の車両が連結された車両隊列は、所定の軌道において走行する。車両隊列内の各車両に搭載される車々間通信機は、該隊列内の他の車両と無線通信を行うのに最低限必要な所定の通信可能領域を有している。所定の軌道において2つの車両隊列が同方向に走行する状況下で該2つの車両隊列が互いに所定の距離まで接近すると、先行する車両隊列(以下、先行車両隊列と称す)内の車両が該先行車両隊列内の他の車両と無線通信を行うために送信した情報が、先行車両隊列に後続する車両隊列(以下、後続車両隊列と称す)内の車両に受信される。かかる場合は、後続車両隊列が先行車両隊列に接近しているとして、後続車両隊列の車両がその先行車両隊列内の車両の通信可能領域へ進入しないように減速制御される。従って、本発明によれば、インフラ施設を用いることなく、同方向に走行する車両隊列同士の接触を確実に回避させることができる。
【0008】
上記の目的は、請求項2に記載する如く、所定の軌道に設けられた複線部において複数台の車両が連結された車両隊列同士を互いに対向させてすれ違い走行させる車両交通システムであって、
各車両隊列内の車両はそれぞれ、
自己の車両隊列内の他の車両と無線通信するための所定の通信可能領域を有する車々間通信機を搭載すると共に、
前記複線部において、自己の車両隊列に対向する車両隊列内の車両が発する所定の情報を前記車々間通信機を介して受信したか否かを判別し、該所定の情報が受信されない場合は自己の車両隊列の該複線部からの走行を禁止し、一方、該所定の情報が受信された場合は自己の車両隊列の該複線部からの走行を許可する制御ユニットを有することを特徴とする車両交通システムにより達成される。
【0009】
請求項2記載の発明において、複数台の車両が連結された車両隊列は、所定の軌道に設けられた複線部において、対向する車両隊列と互いに対向してすれ違い走行する。各車両隊列内の各車両は、自己の隊列内の他の車両と無線通信を行うのに最低限必要な所定の所定の通信可能領域を有する車々間通信機を搭載する。2組の車両隊列同士が複線部において互いに対向する場合は、両車両隊列の車両は接近する。2組の車両隊列が接近すると、車両が車々間通信機を介して自己の車両隊列内の他の車両へ向けて送信した情報が他の車両隊列内の車両に受信される。2組の車両隊列のうち先に複線部に到達した車両隊列は、他方の車両隊列の車両が隊列内の他の車両と無線通信を行うために車々間通信機を介して送信する情報を受信しない場合は、該複線部からの走行を禁止される。そして、その後、他方の車両隊列が複線部に到達して、両車両隊列内の車両がそれぞれ自己の車両隊列内の他の車両と無線通信を行うために送信する情報を、他の車両隊列の車両が受信した場合に、両車両隊列はそれぞれ該複線部からの走行を許可される。このため、本発明によれば、インフラ施設を用いることなく、互いに対向してすれ違い走行し得る車両隊列同士の衝突を確実に回避させることができる。
【0010】
上記の目的は、請求項3に記載する如く、所定の軌道において複数台の車両が連結された車両隊列内の車両として走行すると共に、該車両隊列内の他の車両と無線通信するための車々間通信機を搭載する車両の走行制御装置であって、
前記車々間通信機が、所定の通信可能領域を有すると共に、
前記車々間通信機を介して受信された情報に、自車両の属する車両隊列に先行する車両隊列内の車両により送信された情報が含まれているか否かを判別する受信情報判別手段と、
前記受信情報判別手段により前記受信された情報に前記先行する車両隊列内の車両により送信された情報が含まれていると判別される場合に、前記先行する車両隊列内の車両の通信可能領域へ進入しないように自車両を減速制御する走行制御手段と、
を備えることを特徴とする車両の走行制御装置により達成される。
【0011】
請求項3記載の発明において、車両は、複数台の車両が連結された車両隊列内の車両として所定の軌道を走行すると共に、該車両隊列内の他の車両と無線通信を行うための所定の通信可能領域を有する車々間通信機を搭載している。車々間通信機を介して受信された情報に、自車両の属する車両隊列に先行する車両隊列内の車両から送信された情報が含まれている場合は、自車両の属する車両隊列が先行する車両隊列に接近しているとして、自車両が前記先行する車両隊列内の車両の通信可能領域へ進入しないように減速制御される。従って、本発明によれば、インフラ施設を用いることなく、先行する車両隊列に属する車両との接触を確実に回避させることができる。
【0012】
また、上記の目的は、請求項4に記載する如く、所定の軌道に設けられた複線部において複数台の車両が連結された車両隊列内の車両として、自己の車両隊列に対向する車両隊列とすれ違い走行する車両の走行制御装置であって、
自己の車両隊列内の他の車両と無線通信するための所定の通信可能領域を有する車々間通信機と、
自己の車両隊列が前記複線部に到達した際、自己の車両隊列に対向する車両隊列内の車両が発する所定の情報を前記車々間通信機を介して受信したか否かを判別し、該所定の情報が受信されない場合は自己の車両隊列の該複線部からの走行を禁止し、一方、該所定の情報が受信された場合は自己の車両隊列の該複線部からの走行を許可する走行制御手段と、を備えることを特徴とする車両の走行制御装置により達成される。
【0013】
請求項4記載の発明において、所定の軌道に設けられた複線部において複数台の車両が連結された車両隊列内の車両として、自己の車両隊列に対向する車両隊列とすれ違い走行する車両は、自己の車両隊列内の他の車両と無線通信するための所定の通信可能領域を有する車々間通信機を搭載している。また、この車両は、自己の車両隊列が複線部に到達した際、対向する車両隊列内の車両が発する情報を車々間通信機を介して受信したか否かを判別し、否定判定がなされる場合は、対向車両隊列が複線部に到達していないとして、自己の車両隊列の複線部からの走行を禁止し、一方、肯定判定がなされた場合は、対向車両隊列が複線部に到達したとして、自己の車両隊列の複線部からの走行を許可する走行制御手段を有する。このため、本発明によれば、インフラ施設を用いることなく、互いに対向してすれ違い走行し得る車両隊列との衝突を確実に回避させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の第1実施例である車両交通システムを実現するためのインフラ施設を模式的に表した図を示す。図1に示す如く、本実施例において、インフラ施設は、磁気ネイルにより構成されたレーンマーカ10を備えている。レーンマーカ10は、自動運転車両(以下、単に車両と称す)12が走行する走行レーン14に沿って所定間隔ごとに敷設されている。レーンマーカ10は、車両12の走行距離を算出するために用いられる。
【0015】
走行レーン14には、一定の間隔を空けて路車間通信機16が配設されている。路車間通信機16は、通信線17を介して管制センタ18に接続されている。路車間通信機16は、管制センタ18と個々の車両12との間で路車間通信を行うための送受信機である。
【0016】
本実施例において、車両12は、複数台の車両が機械的に連結されずに電子的に連結された車両群内の車両として、他の車両と隊列を組んで走行レーン14を走行する。以下、この隊列を車両隊列と称す。車両隊列は、図1において右側から左側に向けて走行レーン14を走行する。尚、図1には、車両隊列として、2台の車両12が連結された車両隊列(以下、先行車両隊列と称す)100、および、車両隊列100に後続する3台の車両12が連結された車両隊列(以下、後続車両隊列と称す)110が示されている。
【0017】
図2は、本実施例の車両交通システムの電気的な構造を表すブロック構成図を示す。図2に示す如く、車両12には、車両システム20が搭載されている。車両システム20は、車両制御用電子制御ユニット(以下、車両用ECUと称す)22を備えている。車両用ECU22には、ブレーキECU24及びスロットルECU26が接続されている。
【0018】
ブレーキECU24は、車両12に任意の制動力を発生させるブレーキアクチュエータ30に接続されており、車両用ECU22から供給されるブレーキ指示値に応じた制動力が生ずるようにブレーキアクチュエータ30を駆動する。また、スロットルECU26は、車両12の駆動源として機能するスロットルアクチュエータ32に接続されており、車両用ECU22から供給されるアクセル指示値に応じた駆動トルクが生ずるようにスロットルアクチュエータ32を駆動する。
【0019】
車両用ECU22には、磁気ネイルセンサ38が接続されている。磁気ネイルセンサ38は、例えば車体前部に設けられたバンパの下部中央に配設されており、該磁気ネイルセンサ38を流通する磁束の強度に応じた電気信号を出力する。磁気ネイルセンサ38には、車両12が走行レーン14に敷設されたレーンマーカ10上を通過する際に大きな磁束が流通する。車両用ECU22は、磁気ネイルセンサ38の出力信号に基づいて磁束を検出し、車両12がレーンマーカ10上を通過したか否かを判別する。
【0020】
車両用ECU22は、車両12が通過したレーンマーカ10の数を計数するカウンタ(図示せず)、および、レーンマーカ10の数と走行レーン14上の位置との関係を示すマップを備えている。車両用ECU22は、上記カウンタの計数値に基づいて上記マップを参照することにより車両12の走行レーン14上の位置を検出する。
【0021】
車両用ECU22には、また、車速センサ40が接続されている。車速センサ40は、車両12の車輪が所定回転角回転するごとにパルス信号を出力する。車両用ECU22は、車速センサ40の出力信号に基づいて車両12の車速SPDを検出すると共に、その車速SPDに基づいて車両12の加速度ACCを検出する。
【0022】
車両用ECU22には、また、レーザレーダセンサ42が接続されている。レーザレーダセンサ42は、車両前方の所定領域内にレーザ光を照射し、その反射光が受光されるまでの時間、および、反射光の入射角度に応じた信号を出力する。車両用ECU22は、レーザレーダセンサ42の出力信号に基づいて自車両の前方所定領域内に物体が存在するか否かを判別し、そして、自車両の前方に車両が存在する場合にその車両との車間距離および相対速度を検出する。
【0023】
車両システム20は、同一の車両隊列に属する他の車両12と車々間通信を行うための車々間通信機44を備えている。車々間通信機44は、車両用ECU22に接続されている。同一の車両隊列に属する複数の車両12は、それぞれ、車々間通信機44を用いて、先行車両および後続車両と通信を行う。車々間通信では、車両12のID情報、車両12の走行位置、車速SPD、加速度ACC等、所定の情報が通信される。車々間通信機44は、上記の情報を例えば2.4Ghz帯SS方式で伝送する送受信機であり、半径100〜200m程度の通信可能領域を有している。
【0024】
車両システム20は、また、管制センタ18に接続する路車間通信機16と路車間通信を行うための路車間通信機46を備えている。路車間通信機46は、車両用ECU22に接続されている。路車間通信機46は、車両12に異常が生じた場合に、広域通信を用いてその異常に応じた信号(以下、異常信号と称す)を管制センタ18へ向けて送信する。管制センタ18は、車両12から異常信号を受信した場合に、その異常を同一の車両隊列に属する車両12に知らせるべく、所定の信号(以下、異常通知信号と称す)を路車間通信機16を用いて送信する。車両12の車両用ECU22は、路車間通信機46が管制センタ18からの異常通知信号を受信すると、他の車両12に異常が生じたと判断し、その後の処理を継続する。
【0025】
次に、本実施例の車両交通システムの動作について説明する。
【0026】
上述の如く、車両12は、他の車両12と電子的に連結しつつ複数台で隊列を組んで走行する。車両隊列内の先頭車両は、走行レーン14上の現在位置に基づいて、走行位置と速度との関係を示す予め定められた運行計画を参照することにより走行制御される。車両12は、車々間通信機44を用いて同一の車両隊列に属する先行車両および後続車両と通信を行うことにより他の車両の状態を把握する。車両隊列内の先頭車両に後続する各車両は、それぞれ、自車両の直前を走行する車両に対して車速SPDに応じた車間距離が確保されるように走行制御される。かかる手法によれば、複数の車両12を機械的に連結することなく電子的に連結した車両隊列を適正に走行させることができる。
【0027】
ところで、同一の走行レーン14において複数の車両隊列を安全に走行させるためには、車両隊列同士の接触を防止すべく、先行車両隊列100の最後尾車両と後続車両隊列110の先頭車両との間に適当な車間距離を確保する必要がある。本実施例のシステムは、インフラ施設を用いることなく、後続車両隊列110が先行車両隊列100に不当に接近するのを防止する点に特徴を有している。
【0028】
図3は、本実施例の車両交通システムの特徴的部分を説明するための図を示す。上述の如く、車両12は、ID情報や走行位置等の情報を交換すべく、車々間通信機44を用いて同一の車両隊列に属する他の車両と通信を行う。この車々間通信機44は、車両12が同一の車両隊列に属する最も遠くに位置する車両と通信するのに必要な通信可能領域を有している。尚、この通信可能領域は、車両12が何らかの原因により走行レーン14上に停止している状況下で、後続の車両隊列の先頭車両が、所定の速度で走行している状態から停止を開始した場合でも、上記の停止している車両12に追突することなく、安全に停止することができる距離に設定される。
【0029】
先行車両隊列100と後続車両隊列110とが接近した場合は、図3に示す如く、先行車両隊列100の最後尾車両が搭載する車々間通信機44の通信可能領域に、後続車両隊列110の先頭車両が進入する。この場合、後続車両隊列110の先頭車両には、先行車両隊列100の最後尾車両が送信したID情報や走行位置等の所定の情報が、車々間通信機44を介して受信される。
【0030】
車両用ECU22は、先行する他の車両隊列内の車両12が搭載する車々間通信機44の通信可能領域を、自車両の属する車両隊列が進入すべきでない閉塞区間として認識している。車両用ECU22は、車々間通信機44を介して、先行する他の車両隊列内の車両12が発する所定の情報を受信するごとに、その車両隊列の最後尾車両との車間距離および相対速度に基づいて、自車両がその閉塞区間に進入しないための走行条件を演算する。
【0031】
そして、車両用ECU22は、上記の走行条件が演算された後、その条件が満たされるように車両12の走行状態を制御する。具体的には、車両12に制動力が発生するようにブレーキアクチュエータ30を駆動し、あるいは、車両12の駆動力が低下するようにスロットルアクチュエータ32を駆動する。
【0032】
上記の処理によれば、後続車両隊列110が先行車両隊列100に不当に接近するのを確実に防止することができる。このため、本実施例のシステムによれば、車両12がインフラ施設と通信を行うことなく、走行レーン14を同方向に走行する車両隊列同士の接触を確実に回避させることができ、その結果、車両隊列内の各車両を走行レーン14に沿って安全に走行させることができる。
【0033】
図4は、車両隊列が、自己の属する車両隊列に先行する車両隊列に不当に接近するのを防止すべく、本実施例において車両用ECU22が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。尚、図4に示すルーチンは、主に車両隊列の先頭車両において行われる。図4に示すルーチンは、所定時間ごとに繰り返し起動されるルーチンである。図4に示すルーチンが起動されると、まずステップ200の処理が実行される。
【0034】
ステップ200では、車々間通信機44を用いて、自車両と同一の車両隊列に属する他の車両12と車々間通信が行われているか否かが判別される。その結果、否定判定がなされた場合は、自車両の車々間通信機44に異常が生じていると判断できる。この場合は、その車両を速やかに減速・停止させることが適切である。従って、かかる判別がなされた場合は、次にステップ206の処理が実行される。一方、肯定判定がなされた場合は、次にステップ202の処理が実行される。
【0035】
ステップ202では、車々間通信機44を用いて、自車両の属する車両隊列に先行する車両隊列内の車両と車々間通信が行われているか否か、具体的には、車々間通信機44を介して受信した情報の中に、自車両の属する車両隊列と異なる車両隊列を表すID情報が含まれているか否かが判別される。その結果、否定判定がなされた場合は、今回のルーチンが終了される。一方、肯定判定がなされた場合は、自車両の属する車両隊列が、先行する車両隊列に接近していると判断できる。かかる判別がなされた場合は、次にステップ204の処理が実行される。
【0036】
ステップ204では、先行する車両隊列の最後尾車両との車間距離が、安全走行上支障のきたすことのない距離に確保されているか否かが判別される。その結果、肯定判定がなされた場合は、自車両がそのまま走行を継続しても何ら不都合は生じないと判断できる。従って、かかる判別がなされた場合は、今回のルーチンが終了される。一方、否定判定がなされた場合は、自車両を速やかに減速・停止させることが適切である。従って、かかる判別がなされた場合は、次にステップ206の処理が実行される。
【0037】
ステップ206では、自車両が減速・停止するように、ブレーキアクチュエータ30またはスロットルアクチュエータ32を駆動する処理が実行される。本ステップ206の処理が終了すると、今回のルーチンが終了される。
【0038】
上記の処理によれば、自車両が、自己の属する車両隊列に先行する車両隊列内の車両が搭載する車々間通信機44の通信可能領域に進入した場合に減速・停止されることで、自己の属する車両隊列が、先行する車両隊列に不当に接近する事態を確実に回避することができる。このため、本実施例によれば、インフラ施設を用いることなく、また、車両隊列同士の接触を回避させるための手段を別途設けることなく、車両12が搭載する車々間通信機44を用いて、先行する車両隊列内に属する車両との接触を確実に回避させることができる。
【0039】
このように、本実施例のシステムによれば、インフラ施設を用いることなく、また、車両隊列同士の接触を回避させる手段を別途設けることなく、車両12が搭載する車々間通信機44を用いて、走行レーン14を同方向に走行する車両隊列同士の接触を確実に回避させることができる。従って、本実施例のシステムによれば、簡素な構成で、同一の走行レーン14を走行する複数の車両隊列を安全に走行させることができる。
【0040】
また、上述の如く、本実施例においては、インフラ施設を用いることなく、車両12が搭載する車々間通信機44を用いて、車両隊列同士の接触が回避される。このため、本実施例のシステムによれば、車両隊列の安全走行を実現するうえで、多大な設備投資を行うことが不要となる。
【0041】
尚、上記の実施例においては、走行レーン14が特許請求の範囲に記載された「所定の軌道」に相当していると共に、車両用ECU22が、上記ステップ202の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載された「受信情報判別手段」が、上記ステップ206の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載された「走行制御手段」が、それぞれ実現されている。
【0042】
次に、図5乃至図7を参照して、本発明の第2実施例について説明する。
【0043】
図5は、本実施例の車両交通システムを実現するためのインフラ施設を模式的に表した図を示す。尚、図5において、上記図1および図2に示す構成と同様の構成を示す部分については同一の符号を付してその説明を省略する。図5に示す如く、本実施例において、インフラ施設が備えるレーンマーカ10は、車両12が走行する走行レーン60に沿って所定間隔毎に敷設されている。
【0044】
走行レーン60には、1組の車両隊列のみが通行可能な単線部62,64と、単線部62と単線部64との間に2組の車両隊列が互いに対向してすれ違うことが可能な複線部66とが設けられている。複線部66は、図5において右側から左側に向けて走行する車両隊列(以下、下り車両隊列120と称す)が通過する下り車線部68と、左側から右側に向けて走行する車両隊列(以下、上り車両隊列130と称す)が通過する上り車線部70と、を備えている。下り車線部68および上り車線部70は、共にその区間の全長が車両隊列の全長に比して長くなるように設計されている。
【0045】
ところで、単線部62,64と複線部66とを有する走行レーン60において車両12を安全に走行させるためには、2組の対向する車両隊列同士を互いに複線部66においてすれ違い走行させる必要がある。本実施例のシステムは、インフラ施設を用いることなく、2組の対向する車両隊列同士を複線部66において互いにすれ違い走行させる点に特徴を有している。以下、図6を参照して、本実施例の車両交通システムの運行規則について説明する。
【0046】
図6は、本実施例の車両交通システムの特徴的部分を説明するための図を示す。上述の如く、車両12は、ID情報や走行位置等の情報を交換すべく、車々間通信機44を用いて同一の車両隊列に属する他の車両と通信を行う。この車々間通信機44は、車両12が同一の車両隊列に属する最も遠くに位置する車両と通信するのに必要な通信可能領域を有している。尚、この通信可能領域は、車両隊列の先頭車両が一方の複線部66に停止している状況下で、他方の複線部66の全領域をカバーできる距離に設定される。
【0047】
上り車両隊列130は、単線部62を走行した後、複線部66の上り車線部70に到達する。上り車両隊列130が上り車線部70に到達している状況下で、下り車両隊列120が複線部66の下り車線部68に到達していない場合は、上り車両隊列130の、上り車線部70から単線部62への進入は禁止される。かかる状況下で下り車両隊列120が下り車線部68に到達した場合、図6に示す如く、まず、下り車両隊列120の先頭車両が、上り車両隊列130の先頭車両が搭載する車々間通信機44の通信可能領域に進入する。この場合、上り車両隊列130の先頭車両には、下り車両隊列120の先頭車両のID情報や走行位置等の所定の情報が、車々間通信機44を介して受信される。
【0048】
かかる状態で上り車両隊列130に上り車線部70から単線部62へ進入が許可されるものとすると、下り車両隊列120内の先頭車両に後続する車両が未だ下り車線部68に到達していない場合に車両隊列同士が衝突する事態が生ずる。そこで、下り車両隊列120内のすべての車両が、上り車両隊列130の先頭車両が搭載する車々間通信機44の通信可能領域に進入するまで、上り車両隊列130の上り車線部70から単線部62への進入は禁止される。そして、かかる条件が成立した場合に、その進入は許可される。
【0049】
下り車両隊列120内のすべての車両が、上り車両隊列130の先頭車両が搭載する車々間通信機44の通信可能領域に進入した場合は、下り車両隊列120の先頭車両が搭載する車々間通信機44の通信可能領域に、上り車両隊列130内のすべての車両が進入することとなる。かかる状態が実現された場合は、下り車両隊列120の、下り車線部68から単線部64への進入が許可される。
【0050】
一方、下り車両隊列120が下り車線部68に到達している状況下で、上り車両隊列130が上り車線部70に到達する場合も同様に、上り車両隊列130内のすべての車両が、下り車両隊列120の先頭車両が搭載する車々間通信機44の通信可能領域に進入するまで、下り車両隊列120の下り車線部68から単線部64への進入は禁止される。そして、上記の条件が成立した場合に、その進入は許可される。また、上り車両隊列130内のすべての車両が、下り車両隊列120の先頭車両が搭載する車々間通信機44の通信可能領域に進入した場合は、上り車両隊列130の先頭車両が搭載する車々間通信機44の通信可能領域に、下り車両隊列120内のすべての車両が進入することとなる。かかる状態が実現された場合は、上り車両隊列130の、上り車線部70から単線部62への進入が許可される。
【0051】
車両用ECU22は、自車両の属する車両隊列が複線部66ですれ違い走行すべき車両隊列(以下、対向車両隊列と称す)のID情報を予め把握している。車両用ECU22は、自車両が複線部66に到達した後、自車両が搭載する車々間通信機44の通信可能領域に対向車両隊列が進入したか否かに基づいて、その複線部66から単線部62,64への自車両の発進を制御する。車両用ECU22は、車々間通信機44を介して、対向車両隊列内の車両12が発する所定の情報を受信するごとに、対向車両隊列内のすべての車両12が複線部66に到達したか否かを判別する。
【0052】
そして、車両用ECU22は、かかる条件が成立すると判別された場合に、自車両が複線部66から単線部62,64へ進入するように車両12の走行状態を制御する。具体的には、車両12の制動力が解除され、かつ、適当な駆動力が発生するように、ブレーキアクチュエータ30およびスロットルアクチュエータ32を駆動する。
【0053】
上記の処理によれば、2組の車両隊列を複線部66において適正にすれ違い走行させることができる。このため、本実施例のシステムによれば、車両12がインフラ施設と通信を行うことなく、互いに対向してすれ違い走行し得る車両同士の衝突を確実に回避させることができ、その結果、車両隊列内の各車両を走行レーン60に沿って安全に走行させることができる。
【0054】
尚、本実施例において、車両12の搭載する車々間通信機44に異常が生じた場合は、複線部66から単線部62,64への発進は禁止される。このため、車々間通信機44に異常が生じても、確実に車両同士の衝突を回避することができる。
【0055】
図7は、複線部66からの車両12の発進を制御すべく、本実施例において車両用ECU22が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。図7に示すルーチンは、所定時間ごとに繰り返し起動されるルーチンである。尚、図7において、上記図4に示すルーチンと同様の処理を実行するステップについては同一の符号を付してその説明を省略する。すなわち、上記ステップ200において肯定判定がなされた後、次にステップ220の処理が実行される。
【0056】
ステップ240では、レーンマーカ10を用いて検出した自車両の走行レーン60上の位置、および、車々間通信機44を用いて受信した他の車両の走行位置に基づいて、自車両の属する車両隊列内のすべての車両が複線部66に到達したか否かが判別される。その結果、否定判定がなされた場合は、自己の属する車両隊列が複線部66で対向車両隊列とすれ違い走行する準備ができていないと判断できる。かかる判別がなされた場合は、今回のルーチンは終了される。一方、肯定判定がなされた場合は、次にステップ242の処理が実行される。
【0057】
ステップ242では、車々間通信機44を用いて、対向車両隊列内のすべての車両と車々間通信が行われているか否か、具体的には、車々間通信機44を介して受信した情報の中に、対向車両隊列内のすべての車両のID情報が含まれているか否かが判別される。その結果、否定判定がなされた場合は、次にステップ244の処理が実行される。
【0058】
ステップ244では、自車両が到達した複線部66からの発進が禁止されるように、ブレーキアクチュエータ30を駆動する処理が実行される。本ステップ244の処理が実行されると、以後、自車両の属する車両隊列は、複線部66に停止する。本ステップ244の処理が終了すると、今回のルーチンは終了される。
【0059】
一方、上記ステップ242において肯定判定がなされた場合は、次にステップ246の処理が実行される。
【0060】
ステップ246では、自車両が到達した複線部66からの発進が許可されるように、ブレーキアクチュエータ30の駆動を解除し、スロットルアクチュエータ32を駆動する処理が実行される。本ステップ246の処理が実行されると、自車両の属する車両隊列は、複線部66から単線部62,64へ進入を開始する。本ステップ246の処理が終了すると、今回のルーチンは終了される。
【0061】
上記の処理によれば、自車両の属する車両隊列が複線部66に到達している状況下で自車両の搭載する車々間通信機44の通信可能領域に対向車両隊列が進入した場合に、該対向車両隊列が該複線部66に到達したとして、自車両の属する車両隊列の、複線部66からの発進が許可される。このため、本実施例によれば、インフラ施設を用いることなく、また、複線部66において2組の車両隊列同士を適正にすれ違い走行させるための手段を別途設けることなく、複線部66において互いに対向してすれ違い走行し得る車両との衝突を確実に回避させることができる。
【0062】
このように、本実施例のシステムによれば、複線部66において互いに対向してすれ違い走行し得る車両隊列同士の衝突を確実に回避させることができる。従って、本実施例のシステムによれば、簡素な構成で、複線部66において互いに対向してすれ違い走行する2組の車両隊列を安全に走行させることができる。
【0063】
また、上述の如く、本実施例においては、インフラ施設を用いることなく、車両12が搭載する車々間通信機44を用いて、2組の車両隊列同士が互いにすれ違い走行する。このため、本実施例のシステムによれば、車両隊列の安全走行を実現するうえで、多大な設備投資を行うことが不要となる。
【0064】
尚、上記の実施例においては、走行レーン60が特許請求の範囲に記載された「所定の軌道」に相当していると共に、車両用ECU22が、上記ステップ242、244、および246の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載された「走行制御手段」が実現されている。
【0065】
【発明の効果】
上述の如く、請求項1記載の発明によれば、インフラ施設を用いることなく、簡素な構成で、同方向に走行する車両隊列同士の接触を確実に回避させることができる。
【0066】
請求項2記載の発明によれば、インフラ施設を用いることなく、簡素な構成で、互いに対向してすれ違い走行し得る車両同士の衝突を確実に回避させることができる。
【0067】
請求項3記載の発明によれば、インフラ施設を用いることなく、簡素な構成で、先行する車両隊列に属する車両との接触を確実に回避させることができる。
【0068】
また、請求項4記載の発明によれば、インフラ施設を用いることなく、簡素な構成で、互いに対向してすれ違い走行し得る車両との衝突を確実に回避させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例である車両交通システムを実現するためのインフラ施設を模式的に表した図である。
【図2】本実施例の車両交通システムの電気的な構造を表すブロック構成図である。
【図3】本実施例の車両交通システムの特徴的動作を説明するための図である。
【図4】本実施例において車両用ECUが実行する制御ルーチンの一例のフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施例である車両交通システムを実現するためのインフラ施設を模式的に表した図を示す。
【図6】本実施例の車両交通システムの特徴的動作を説明するための図である。
【図7】本実施例において車両用ECUが実行する制御ルーチンの一例のフローチャートである。
【符号の説明】
12 車両
14,60 走行レーン
22 車両制御用電子制御ユニット(車両用ECU)
30 ブレーキアクチュエータ
32 スロットルアクチュエータ
44 車々間通信機
66 複線部
100 先行車両隊列
110 後続車両隊列
120 下り車両
130 上り車両
Claims (4)
- 所定の軌道において複数台の車両が連結された車両隊列を、該車両隊列内で各車両に車々間通信機を介して他の車両と無線通信させつつ走行させる車両交通システムであって、
前記車々間通信機は、所定の通信可能領域を有すると共に、
前記車両隊列内の車両は、該車両隊列に先行する車両隊列内の車両が前記車々間通信機を介して送信する情報を受信した場合に、該車両隊列に先行する車両隊列内の車両の通信可能領域へ進入しないように減速制御されることを特徴とする車両交通システム。 - 所定の軌道に設けられた複線部において複数台の車両が連結された車両隊列同士を互いに対向させてすれ違い走行させる車両交通システムであって、
各車両隊列内の車両はそれぞれ、
自己の車両隊列内の他の車両と無線通信するための所定の通信可能領域を有する車々間通信機を搭載すると共に、
前記複線部において、自己の車両隊列に対向する車両隊列内の車両が発する所定の情報を前記車々間通信機を介して受信したか否かを判別し、該所定の情報が受信されない場合は自己の車両隊列の該複線部からの走行を禁止し、一方、該所定の情報が受信された場合は自己の車両隊列の該複線部からの走行を許可する制御ユニットを有することを特徴とする車両交通システム。 - 所定の軌道において複数台の車両が連結された車両隊列内の車両として走行すると共に、該車両隊列内の他の車両と無線通信するための車々間通信機を搭載する車両の走行制御装置であって、
前記車々間通信機が、所定の通信可能領域を有すると共に、
前記車々間通信機を介して受信された情報に、自車両の属する車両隊列に先行する車両隊列内の車両により送信された情報が含まれているか否かを判別する受信情報判別手段と、
前記受信情報判別手段により前記受信された情報に前記先行する車両隊列内の車両により送信された情報が含まれていると判別される場合に、前記先行する車両隊列内の車両の通信可能領域へ進入しないように自車両を減速制御する走行制御手段と、
を備えることを特徴とする車両の走行制御装置。 - 所定の軌道に設けられた複線部において複数台の車両が連結された車両隊列内の車両として、自己の車両隊列に対向する車両隊列とすれ違い走行する車両の走行制御装置であって、
自己の車両隊列内の他の車両と無線通信するための所定の通信可能領域を有する車々間通信機と、
自己の車両隊列が前記複線部に到達した際、自己の車両隊列に対向する車両隊列内の車両が発する所定の情報を前記車々間通信機を介して受信したか否かを判別し、該所定の情報が受信されない場合は自己の車両隊列の該複線部からの走行を禁止し、一方、該所定の情報が受信された場合は自己の車両隊列の該複線部からの走行を許可する走行制御手段と、を備えることを特徴とする車両の走行制御装置。
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