JP3663643B2 - 光学活性1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミンの製造法 - Google Patents

光学活性1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミンの製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は光学活性な植物病害防除剤の製造中間体(特開平2−76846号公報にラセミ体が記載されている)や光学分割剤等として有用な光学活性1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミンの製造法に関するものである。
【従来の技術】
従来、(RS)−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミンの光学分割法としては特開平2−306942号公報に光学活性N−ホルミルフェニルアラニンを分割剤として用いる方法が記載されている。
【発明が解決しようとする課題】
しかし前記の方法では、比較的高価な光学活性フェニルアラニンをホルミル化して分割剤を調製する必要があるという点で分割剤の入手性に問題があり、前記方法も工業的には必ずしも常に有利とは言えない。
【0002】
【課題を解決するための手段】
このような状況に鑑み、本発明者らは光学活性な1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミンの工業的にも有利な製造法につき鋭意検討した結果、工業的規模で比較的安価に入手可能な光学活性アスパラギン酸を分割剤として用いることにより、容易に光学活性1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミンが得られることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、(RS)−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミンを光学活性アスパラギン酸で光学分割することを特徴とする、光学活性1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミンの製造法を提供する。
【0003】
本発明に係わる光学分割は、通常、(工程a)光学活性アスパラギン酸と(RS)−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミンとを混合して塩を生成させたのち、(工程b)溶媒中で光学活性なジアステレオマー塩を晶出させ、該塩をろ過等して単離し、(工程c)該塩を塩基で処理することにより行う。以下、工程a,bおよびcについてさらに詳しく説明する。
(工程a)
光学活性(L−またはD−)アスパラギン酸は工業的規模で入手可能であり、通常光学純度90%ee以上のものを使用する。(RS)−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミンは、例えば、2,4−ジクロロアセトフェノンを原料としてOrganic Reaction Vol 5,301〜330(1949) に記載されるLeuckert反応を行うことにより製造することができる。用いる反応剤の量は、(RS)−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミン1モルに対して光学活性アスパラギン酸は通常0.1から1.2モルの割合、好ましくは0.3モルから1モルの割合である。混合は溶媒中で行ってもよく、必要に応じて用いられる溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール等の低級アルコール類またはそれらの混合液等があげられる。
(工程b)
得られた塩を溶媒中通常50〜120℃の範囲の温度で加熱して溶解し、その溶液を通常0〜40℃の範囲の温度まで冷却することにより光学活性なジアステレオマー塩を析出させる。溶媒としては通常水、メタノール、エタノール等の低級アルコール類またはそれらの混合液が用いられる。
析出した塩はろ過等により単離するが、必要に応じ水、メタノール、エタノール等の低級アルコール類またはそれらの混合液等から再結晶して、さらに精製することもできる。
(工程c)
該塩を通常0〜40℃の範囲の温度で該塩1モルに対し通常1〜10モルの割合の水酸化ナトリウム等の塩基を用いてアルカリ性にして、遊離したアミンをトルエン等の有機溶媒で抽出後濃縮する等の操作により、目的とする光学活性1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミンを単離することができる。
【0004】
本発明の製造法により得られる光学活性1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミンの立体配置−旋光性は、分割剤としてL−アスパラギン酸を用いた場合にはR−(+)であり、分割剤としてD−アスパラギン酸を用いた場合にはS−(−)である。
尚、本発明の製造法において、未反応の(RS)−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミンは塩を濾過した後のろ液から回収することができ、また、使用した光学活性アスパラギン酸はこのろ液およびアミン抽出後の水層から容易に回収することができ、さらに回収された光学活性アスパラギン酸は再使用が可能である。
【0005】
本発明の製造法により得られる光学活性(特にR−(+)−)1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミンは、例えば、特開平2−76846号公報に記載の方法等により、該公報等に記載される、優れた植物病害防除効力を有するN−〔1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル〕−2−シアノ−3,3−ジメチルブタンアミドの光学活性体等に導くことができる。
【0006】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例のみに限定されない。
尚、以下、%はすべて重量%を表す。
また、1−(2,4−ジクロルフェニル)エチルアミンの光学純度(ee:enantiomeric excess)は、光学活性カラムを用いた下記条件による高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法で求めた。
HPLC条件;
カラム;SUMICHIRAL OA-4100 (5マイクロ) 直径4.6mm×長さ25cm
展開溶媒;ヘキサン:エタノール:トリフルオロ酢酸=240:10:1(容量比)
検出;UV254nm
尚、光学活性1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミンの絶対配置(RまたはS)は、本発明の方法によって得られたR−(+)−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミン(99.9%ee) と(RS)−α−シアノ−tert −ブチル酢酸とを特開平2−76846号公報に記載の方法で反応させて得られたジアステレオマー混合物を分離して得た一方の立体異性体((R)−N−〔1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル〕−(R)−2−シアノ−3,3−ジメチルブタンアミド〕)のX線構造解析により決定した。
【0007】
実施例1
L−アスパラギン酸(和光純薬工業株式会社製の試薬特級品;化学純度>99.0%、〔α〕D =+24.9〜+25.8°)53.24gおよび(RS)−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミン76.5gを水1.2リットルおよび95%エタノール2.8リットルの混合液の中に加え、1時間攪拌下加熱還流した。その溶液を攪拌しながら40℃まで空冷し、20℃まで水冷した。20℃で30分攪拌し、生じた結晶をろ取し、冷エタノール100mlで洗浄した。得られた結晶を乾燥して27.8gの白色の(+)−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミン・L−アスパラギン酸塩を得た。この結晶を20%NaOH水100mlに溶解し、遊離したアミンをトルエン100mlで抽出した。得られたトルエン層を無水硫酸マグネシウムで乾燥したのちエバポレーターで濃縮し、求める(R)−(+)−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミン19.2gを得た。光学純度は87%eeであった。
実施例2
L−アスパラギン酸(和光純薬工業株式会社製の試薬特級品;化学純度>99.0%、〔α〕D =+24.9〜+25.8°)13.31gおよび(RS)−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミン38.14gを水150mlおよび95%エタノール200mlの混合液の中に加え、1時間攪拌下加熱還流した。その溶液を攪拌しながら40℃まで空冷し、20℃まで水冷した。20℃で30分攪拌し、生じた結晶をろ取し、冷エタノール50mlで洗浄した。得られた結晶を乾燥して14.2gの白色の(+)−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミン・L−アスパラギン酸塩を得た。この結晶を20%NaOH水50mlに溶解し、遊離したアミンをトルエン100mlで抽出した。得られたトルエン層を無水硫酸マグネシウムで乾燥したのちエバポレーターで濃縮し、求める(R)−(+)−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミン8.3gを得た。光学純度は91%eeであった。
実施例3
L−アスパラギン酸(和光純薬工業株式会社製の試薬特級品;化学純度>99.0%、〔α〕D =+24.9〜+25.8°)66.6gおよび(RS)−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミン190.07gを水1リットルおよびメタノール1リットルの混合液の中に加え、1時間攪拌下加熱還流した。その溶液を攪拌しながら40℃まで空冷し、20℃まで水冷した。20℃で30分攪拌し、生じた結晶をろ取し、冷メタノール100mlで洗浄した。得られた結晶を乾燥して67.35gの白色の(+)−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミン・L−アスパラギン酸塩を得た。この結晶を20%NaOH水200mlに溶解し、遊離したアミンをトルエン200mlで抽出した。得られたトルエン層を無水硫酸マグネシウムで乾燥したのちエバポレーターで濃縮し、求める(R)−(+)−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミン39.6gを得た。光学純度は92%eeであった。
【0008】
実施例4
L−アスパラギン酸(和光純薬工業株式会社製の試薬特級品;化学純度>99.0%、〔α〕D =+24.9〜+25.8°)10.7gおよび(RS)−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミン15.0gを水200mlの中に加え、1時間攪拌下加熱還流した。その溶液を攪拌しながら45℃まで空冷し、5℃まで3時間かけてほぼ均等に冷却した。生じた結晶をろ取し、冷水30mlで2回洗浄した。得られた結晶を乾燥して3.7gの白色の(+)−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミン・L−アスパラギン酸塩を得た。この結晶を20%NaOH水10mlに溶解し、遊離したアミンをトルエン50mlで抽出した。得られたトルエン層を無水硫酸マグネシウムで乾燥したのちエバポレーターで濃縮し、求める(R)−(+)−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミン2.15gを得た。光学純度は87%eeであった。
実施例5
L−アスパラギン酸(和光純薬工業株式会社製の試薬特級品;化学純度>99.0%、〔α〕D =+24.9〜+25.8°)53.24gおよび(RS)−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミン76.5gを水1.2リットルおよび95%エタノール2.8リットルの混合液の中に加え、1時間攪拌下加熱還流した。その溶液を攪拌しながら40℃まで空冷し、20℃まで水冷した。23℃で30分攪拌し、生じた結晶をろ取し、冷エタノール100mlで洗浄した。得られた結晶を乾燥して25.6gの白色の(+)−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミン・L−アスパラギン酸塩を得た。この結晶を50%エタノール水200mlで再結晶することにより20.4gの(+)−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミン・L−アスパラギン酸塩を得た。この結晶を20%NaOH水100mlに溶解し、遊離したアミンをトルエン100mlで抽出した。得られたトルエン層を無水硫酸マグネシウムで乾燥したのちエバポレーターで濃縮し、求める(R)−(+)−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミン11.9gを得た。光学純度は99.9%eeであった。比旋光度は〔α〕D 25=+44.86°(C=1.114)であった。
実施例6
D−アスパラギン酸(和光純薬工業株式会社製の試薬特級品;化学純度>99.0%、〔α〕D =−24.0〜−26.0°)53.24gおよび(RS)−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミン76.5gを水1.2リットルおよび95%エタノール2.8リットルの混合液の中に加え、1時間攪拌下加熱還流した。その溶液を攪拌しながら40℃まで空冷し、20℃まで水冷した。20℃で30分攪拌し、生じた結晶をろ取し、冷エタノール100mlで洗浄した。得られた結晶を乾燥して27.1gの白色の(−)−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミン・D−アスパラギン酸塩を得た。この結晶を50%エタノール水200mlで再結晶することにより22.1gの(−)−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミン・L−アスパラギン酸塩を得た。この結晶を20%NaOH水100mlに溶解し、遊離したアミンをトルエン100mlで抽出した。得られたトルエン層を無水硫酸マグネシウムで乾燥したのちエバポレーターで濃縮し、求める(S)−(−)−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミン11.9gを得た。光学純度は99.6%eeであった。比旋光度は〔α〕D 24=−43.87°(C=1.082)であった。
【0009】
【発明の効果】
本発明により光学活性な1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミンを工業的にも有利に製造することができる。

Claims (1)

  1. (RS)−1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミンを光学活性アスパラギン酸で光学分割することを特徴とする、光学活性1−(2,4−ジクロロフェニル)エチルアミンの製造法。
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