JP3663195B2 - 非可逆回路素子及びそれを用いた通信機装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、携帯電話等の通信機装置に使用されるアイソレータ、サーキュレータ等の非可逆回路素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の非可逆回路素子は、例えば図8に示す構造の磁性組立体50が備えられている(特許文献1参照)。この磁性組立体50は、矩形板状のフェライトからなる磁性体55と、その下面に添わせて設けられた金属板からなる共通電極54と、この共通電極54から放射状に3方向に延出形成されて磁性体55の表面側に巻き掛けられた第1の中心導体51と第2の中心導体52と第3の中心導体53とから構成されている。
前記第1の中心導体51と第2の中心導体52と第3の中心導体53は互いに磁性体55に沿って折り曲げられ、磁性体55の表面側において互いに略120゜の交差角度でもって重ねられている。なお、図面では省略されているが、中心導体51、52、53どうしは絶縁シートにより磁性体55の表面側において個々に絶縁されている。
また、先の3つの中心導体51、52、53の先端部側は磁性体55の側方に突出するように配置されて各ポート部P1、P2、P3とされている。そして、各ポート部P1〜P3に図示略の整合用のコンデンサを接続し、ポート部の1つに先のコンデンサを介して終端抵抗を接続し、これらを永久磁石とともに磁気回路を構成する磁性体ヨーク内に収納し、磁性組立体50に別途配置した永久磁石で直流磁界を印加できる構成とすることで非可逆回路素子が構成される。
前述の各中心導体51〜53は、図9の展開図で示すようにアース部となる共通電極54において連設一体化され、共通電極54から3方向に突出形成されていて、これらの中心導体51〜53は磁性体55に対して所定の角度で精度良く組み付けられるように図9の折曲部Xの位置において屈曲されるように構成されている。
【0003】
【特許文献1】
特許第3106392号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この種の非可逆回路素子は、通信機装置、例えば携帯電話等の携帯用電子機器に備えられるが、近年の携帯用電子機器の小型化に伴い、全体として4〜5mm角の大きさに形成されるようになってきているが、さらに小型化の要望が強まっている。
しかしながらこの可逆回路素子を0.8GHz〜0.9GHz程度の比較的低周波で使用する携帯用電子機器に備えられる場合、インダクタンスを大きくする必要があり、そのために上記従来構成の磁性組立体50の中心導体に接続するコンデンサとして容量値が大きいものが必要となり、これによって必然的にコンデンサの占有面積も大きいものとなってしまうため、非可逆回路素子をさらに小型化するのが難しい状況になってきている。
【0005】
本発明は以上の背景に基づいてなされたもので、コンデンサの容量値を小さくできる非可逆回路素子を提供することを目的の1つとする。
更に本発明は、コンデンサの容量値を小さくできる非可逆回路素子を用いることで、コンデンサの占有面積が小さくでき、小型化された非可逆回路素子を提供することを目的の1つとする。
また、本発明は、コンデンサの専有面積を小さくして小型化するとともに、挿入損失の低減効果とアイソレーションの向上効果も備えた非可逆回路素子を提供することを目的の1つとする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、磁性体基板と、前記磁性体基板の一面側に配置された板状の共通電極と、前記共通電極と一体に設けられ、前記磁性体基板に沿って屈曲された第1の線路導体と第2の線路導体と第3の線路導体と、前記第1の線路導体に設けられて前記磁性体基板の他面側に沿わされた第1の中心導体と、前記第2の線路導体に設けられて前記磁性体基板の他面側に沿わされた第2の中心導体と、前記第3の線路導体に設けられて前記磁性体基板の他面側に沿わされた第3の中心導体とが具備されてなり、前記第1の中心導体と第2の中心導体とが前記磁性体基板の他面上で交差するように前記磁性体基板の他面側に折曲され、かつ前記第1の中心導体と前記第2の中心導体とが重複した交差部の一部分が互いに平行であることを前記課題の解決手段とした。
なお、前記磁性体基板と第1の線路導体と第2の線路導体と第3の線路導体との間には各々に絶縁シート等の絶縁体が介在されて各線路導体は個々に電気的に絶縁されている。
【0007】
上記構成の本発明の非可逆回路素子においては、第1と第2の中心導体の交差部の両中心導体の重複部分の長さが長くなるにしたがって、第1と第2の中心導体の重複部分で確保される容量値が大きくなるので、その分、各線路導体に接続するコンデンサの容量値が小さくでき、従って、同じインダクタンスを確保するならば用いるコンデンサの占有面積を小さくできる。
【0008】
本発明の非可逆回路素子においては、前記両中心導体の重複部分の長さが前記磁性体基板の他面に重なる中心導体部分の長さの20%以上であることが好ましい。
かかる非可逆回路素子によれば、第1と第2の中心導体の交差部の両中心導体の重複部分の長さがさらに長くなり、第1と第2の中心導体の重複部分で確保される容量値がさらに大きくできる。
前記両中心導体の重複部分の長さの上限としては、前記磁性体基板の他面に重なる中心導体部分の長さの100%まで可能である。
【0009】
また、本発明の非可逆回路素子においては、前記両中心導体の重複部分の交差角度が30度以下であることが好ましく、さらに好ましくは15度以下である。さらに、本発明の非可逆回路素子においては、前記両中心導体の重複部分の第1と第2の中心導体は略平行であることが好ましい。
【0010】
また、本発明の非可逆回路素子においては、前記両中心導体の重複部分の第1と第2の中心導体は平行であってもよく、あるいは、平行である部分(平行部)以外に非平行部分があってもよい。上記両中心導体の重複部分の第1と第2の中心導体の平行部の長さが長くなるほど、非可逆回路素子の挿入損失の低減効果を増大できる。
上記両中心導体の重複部分に第1と第2の中心導体の非平行部があると、アイソレーションの帯域を広くすることができる(アイソレーションを向上できる)。従って、上記両中心導体の重複部分に上記平行部以外に上記非平行部があると、非可逆回路素子の挿入損失の低減効果とアイソレーションの向上効果がある。
【0011】
上記第1の中心導体は、基部導体側端部と先端部導体側端部とこれらの間の中央部の3つの部分からなる。上記第2の中心導体も基部導体側端部と先端部導体側端部とこれらの間の中央部の3つの部分からなる。上記磁性体基板の他面上で上記第1の中心導体の中央部と第2の中心導体の中央部が交差し、重複しているものであってもよい。
上記磁性体基板の他面上で交差する各中心導体の中央部の形状は、後述する第1の実施形態のように平面視略真っ直ぐな形状、後述する第3の実施形態のように平面視略く字状、ジグザグ状、波状のいずれかであってもよい。
【0012】
また、本発明の非可逆回路素子においては、前記第1の線路導体の幅方向中央部と前記第2の線路導体の幅方向中央部と前記第3の線路導体の幅方向中央部にそれらの長さ方向に沿うスリット部が形成されて前記第1の線路導体と前記第2の線路導体と第3の線路導体が個々に2本の分割導体に分割されていてもよい。このように各線路導体が2本の分割導体に分割されていると、相互インダクタンスが発生し、線路導体として同じ導体長でも、分割した構成の方がより大きなインダクタンスが得られる。
【0013】
このように前記第1の線路導体と前記第2の線路導体がそれぞれ2本の分割導体に分割されている場合、第1と第2の中心導体の交差部の両中心導体の重複部分の長さとは、第1の中心導体の一方(又は他方)の分割導体と第2の中心導体の一方(又は他方)の分割導体の重複部分の長さであってもよい。
また、前記第1の線路導体と前記第2の線路導体がそれぞれ2本の分割導体に分割されている場合、両中心導体の重複部分の交差角度とは、第1の中心導体の一方(又は他方)の分割導体と第2の中心導体の一方(又は他方)の分割導体の交差角度であってもよい、その場合の交差角度は30度以下であることが好ましい。
【0014】
上記のように第3の線路導体が2本の分割導体に分割されている場合、これら分割導体の間隔は広い方がアイソレーションの帯域を広くできる点で好ましい。また、第3の線路導体の2本の分割導体はそれぞれ平面視略直線状であれば(2本の分割導体は平行であれば)、第3の線路導体を磁性体基板に巻き付けて非可逆回路素子を組みたてる際に第3の線路導体の位置ずれが起こりにくい点で好ましい。
また、第3の線路導体が2本の分割導体に分割されている場合、一方の分割導体が他方の分割導体より幅広に形成して、強度(剛性)を向上させることが、第3の線路導体を磁性体基板に巻き付けて非可逆回路素子を組みたてる際に、第3の線路導体の変形を防止できる点で好ましい。
【0015】
また、本発明の非可逆回路素子においては、前記第3の線路導体が前記磁性体基板の他面側において平面視前記第1の中心導体と第2の中心導体と交差するように折曲られて重ねられ、前記第3の線路導体の2本の分割導体に非平行部分もしくは湾曲部が含まれていてもよい。
低周波化するためには各線路導体を長くしてインダクタンスを大きくする必要があるが、本発明においては、第3の中心導体において、第3の線路導体が長さ方向中央部側において折曲(屈曲)もしくは湾曲されてなるが、このようにすることで第3の線路導体の長さが実質的に長くなって、インダクタンスが大きくなり、低周波化と小型化を両立することができる。
【0016】
また、本発明の非可逆回路素子においては、前記線路導体に接続されるコンデンサ基板が複数備えられていてもよい。
本発明の非可逆回路素子は、先に述べたようにコンデンサの容量値を小さくできるので、これによってコンデンサ基板の占有面積を小さくできる結果、小型化された非可逆回路素子とすることができる。
【0017】
さらに、本発明の非可逆回路素子においては、前記コンデンサ基板のうち一方が前記複数の線路導体に接続された共通のコンデンサ基板とされていてもよい。このように共通のコンデンサ基板とすることで必要とする容量を小さなコンデンサ占有面積で稼ぐことができる。
【0018】
また、本発明は、前記のいずれかの構成の本発明の非可逆回路素子を備えたことを特徴とする通信機装置を前記課題の解決手段とした。
【0019】
本発明の通信機装置は、コンデンサの容量値を小さくできる本発明の非可逆回路素子が備えられたことで、通信機装置に占める非可逆回路素子の大きさを小さくすることができ、通信機装置全体の小型化に寄与することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を更に詳細に説明する。
(非可逆回路素子の第1の実施の形態)
図1〜図3は本発明に係る非可逆回路素子をアイソレータとして適用した第1の実施の形態を示すものである。
この実施形態のアイソレータ1は、上ヨーク2と下ヨーク3とで構成される磁気閉回路内に、永久磁石などからなる磁石部材4と強磁性体からなる磁性体基板5と線路導体6、7、8とこれら線路導体6、7、8を接続した共通電極10と磁性体基板5の周囲に配置されたコンデンサ基板11、12と終端抵抗13とを備えて構成されている。
【0021】
前記上ヨーク2と下ヨーク3は軟鉄などの強磁性体からなり、4角形状の箱型に形成されている。なお、それらヨークの表裏面にはAgメッキなどの導電層が被覆形成されていることが好ましい。また、側面コ字型の上ヨーク2は側面コ字型の下ヨーク3に嵌め込み自在の大きさとされており、上ヨーク2と下ヨーク3の互いの開口部分を嵌め合わせることで両者を一体として箱型の磁気閉回路を構成することができるように構成されている。
なお、これらのヨーク2、3の形状はこの実施形態の如くコ字型に限るものではなく、複数のヨークで箱型の閉磁器回路を構成するものであれば、任意の形状で差し支えない。
【0022】
前記の如く嵌め合わされた下ヨーク3と上ヨーク2が囲む空間には、換言すると下ヨーク3と上ヨーク2からなる閉磁気回路内には、先の磁性体基板5と3本の線路導体6、7、8とこれら線路導体6、7、8を接続した共通電極10とからなる磁性組立体15が収納されている。従って、本実施形態のアイソレータは磁性組立体15を有している。
磁性体基板5は、フェライト等の強磁性体からなり、図2に示すように平面視横長の略長方形板状とされている。より詳細には、相対向する横長の2つの長辺5a、5aと、これらの長辺5a、5aに直角向きの短辺5b、5bと、長辺5a、5aの両端部側に位置して各長辺5aに対して150゜の角度で傾斜し(長辺5aの延長線に対しては30°の傾斜角度で傾斜し)、個々に先の短辺5bに接続する4つの傾斜辺5dとから構成される平面視横長の略長方形状とされている。従って磁性体基板5の平面視4つのコーナ部には、それぞれ長辺5aに対する150°傾斜(短辺5bに対して130°傾斜)の傾斜面(受面)5dが形成されている。
【0023】
また、この磁性体基板5においては、その横方向、即ち長手方向の幅と、その縦方向、即ち長手方向に直交する方向の幅との比、即ち縦横比が25%(1:4)以上、80%(4:5)以下の範囲、即ち平面視横長であることが好ましい。なお、ここで、図1に示すものは平面視横長の磁性体基板5であるが、図1を90゜回転させた横方向から見ると、磁性体基板5は縦長形状となる。よって本発明では、磁性体基板5は横長形状でも縦長形状でも全く等価のものと考える。
【0024】
先の3本の線路導体6、7、8と共通電極10は図3の展開図に示すように一体化されてなり、3本の線路導体6、7、8と共通電極10とを主体として電極部16が構成されている。この共通電極10は、平面視先の磁性体基板5とほぼ相似形状の金属板からなる本体部10Aから構成されている。即ち、本体部10Aは相対向する2つの長辺部10a、10aと、これらの長辺部10a、10aに直角向きの短辺部10b、10bと、長辺部10a、10aの両端部側に位置して各長辺部10aに対して150°の角度で傾斜し、先の短辺部10bに対しては130°の傾斜角度で接続する4つの傾斜部10dとから構成される平面視略長方形(矩形状)とされている。
【0025】
そして、先の共通電極10の4つのコーナ部の傾斜部10dのうち、一方の長辺部側の2つの傾斜部10dから第1の線路導体6と第2の線路導体7が延出形成されている。まず、先の2つの傾斜部10dの一方から、第1の基部導体6aと第1の中心導体6bと第1の先端部導体6cからなる第1の線路導体6が延出形成される一方、先の傾斜部10dの他方から、第2の基部導体7aと第2の中心導体7bと第2の先端部導体7cとからなる第2の線路導体7が延出形成されている。
基部導体6a、7aはいずれも傾斜部10dを延長するように傾斜部10dと同じ幅に形成されていて、基部導体6a、7aはそれらの中心軸線A、Aどうしがなす角度θ1が図3に示すように60°程度とされている。
【0026】
第1の中心導体6bは、平面視波形あるいはジクザグ状のものであり、基部導体側端部6Dと、先端部導体側端部6Fと、これらの間の中央部6Eの3つの部分からなる。第2の中心導体7bも第1の中心導体6bと同様の形状であり、基部導体側端部7Dと、先端部導体側端部7Fと、これらの間の中央部7Eの3つの部分からなる。第1と第2の中心導体6b、7bを上記のような形状とすることで、線路導体の実質的な導体長を長くして第1と第2の中心導体6b、7bのインダクタンスを大きくし、非可逆回路素子としての低周波化と小型化を両立させることができる。
基部導体側端部6D、7Dは、図3に示すようにそれらの中心軸線B、Bどうしがなす角度θ3が上記角度θ1と同程度の角度以上とされており、即ち、基部導体側端部6D、7Dが徐々に外側に広がるような角度とされている。
中央部6E、7Eは、図3に示すようにそれらの中心軸線B、Bどうしが徐々に近接するように形成されている。
先端部導体側端部6F、7Fは、図3に示すようにそれらの中心軸線B、Bどうしがなす角度θ3が上記角度θ1より大きい角度とされており、即ち、先端部導体側端部6F、7Fが徐々に外側に広がるような角度とされている。
更に先端部導体6c、7cは、図3に示すようにそれらの中心軸線C、Cどうしがなす角度θ2が150゜程度の角度以上とされており、即ち、先端部導体6c、7cが徐々に外側に広がるような角度とされている。
【0027】
次に、第1の線路導体6の幅方向中央部には、共通電極10の外周部から基部導体6aと中心導体6bを通過し先端部導体6cの基端部まで到達するスリット部18が形成され、このスリット部18を形成することにより中央部導体6bが2本の分割導体6b1、6b2に分割され、基部導体6aも2本の分割導体6a1、6a2に分割されている。
第2の線路導体7の幅方向中央部にも上記スリット部18と同様のスリット部19が形成され、このスリット部19を形成することにより中央部導体7bが2本の分割導体7b1、7b2に分割され、基部導体7aも2本の分割導体7a1、7a2に分割されている。
スリット部18の共通電極10側の端部は、接続導体6aを通過して共通電極10の外周部から若干深い位置まで到達することで凹部18aを形成し、第1の線路導体6の線路長を若干長くしているとともに、スリット部19の共通電極10側の端部も接続導体7aを通過して共通電極10の外周部まで到達することで凹部19aを形成し、第2の線路導体7の線路長を若干長くしている。なお、凹部18a、凹部19aは必要に応じて設ければ良く、なくても良い。
【0028】
一方、共通電極10の他方の長辺部10a側の中央部に第3の線路導体8が延設されている。この第3の線路導体8は共通電極10から突出形成された第3の基部導体8aと第3の中心導体8bと第3の先端部導体8cとから構成されている。第3の基部導体8aは、共通電極10の長辺側中央部からほぼ直角に延出形成された2本の短冊状の分割導体8a1、8a2からなり、2本の分割導体8a1、8a2の間にはスリット20が形成されている。
第3の中心導体8bは、平面視L字型に湾曲して形成されており、先の分割導体8a1に接続する平面視L字状の分割導体8b1と先の分割導体8a2に接続する平面視L字状の分割導体8b2とからなり、第3の中心導体8bをこのように湾曲して形成することにより線路導体の実質的な導体長を長くしてインダクタンスを大きくし、非可逆回路素子としての低周波化と小型化を両立させることができる。
【0029】
更に、これらの分割導体8b1、8b2の先端側はL字型の第3の先端部導体8cに一体化されている。この第3の先端部導体8cは、先の分割導体8b1、8b2を一体化して先の分割導体8a1、8a2と同じ方向に向けて延出形成された接続部8c1とこの接続部8c1に対してほぼ直角方向に延出形成された接続部8c2とから構成されている。
次に、共通電極10の一方の長辺部10a側において、第3の線路導体8の分割導体8a1、8a2の間の部分には、共通電極10の長辺部10aを一部切り欠く形で凹部10eが形成され、この凹部10eを形成することで第3の線路導体8の線路長が若干長くされている。なお、この凹部10eも、先の凹部18a、19aと同じく、必要に応じて設ければ良い。
【0030】
前記の如く構成された電極部16は、その共通電極10の本体部10Aを磁性体基板5の裏面側(一面側)に添わせ、第1の線路導体6と第2の線路導体7と第3の線路導体8とを磁性体基板5の表面側(他面側)に折り曲げて磁性体基板5に装着され、磁性体基板5とともに磁性組立体15を構成している。
即ち、第1の線路導体6の分割導体6a1、6a2を磁性体基板5の1つの傾斜面5dの縁に沿って折り曲げ、第2の線路導体7の分割導体7a1、7a2を磁性体基板5の他の1つの傾斜面5dの縁に沿って折り曲げ、第3の線路導体8の分割導体8a1、8a2を磁性体基板5の長辺5aの縁に沿って折り曲げ、第1の線路導体6の中心導体6bを磁性体基板5の表面(他面)に沿って添わせ、第2の線路導体7の中心導体7bを磁性体基板5の表面(他面)に沿って添わせ、更に第3の線路導体8の中心導体8bを磁性体基板5の表面部の中央部分に沿って添わせることで電極部16が磁性体基板5に装着されて磁性組立体15とされている。
【0031】
第1と第2の中心導体6b、7bは上記構成とされているので、上記のように磁性体基板5の表面(他面)に沿って添わせると、該磁性体基板5の表面上で第1と第2の中心導体6b、7bが交差している。図1には、中央部6E、7Eが重複している場合を図示した。
第1と第2の中心導体6b、7bの交差部35の両中心導体の重複部分の長さL3は、磁性体基板5の表面(他面)に重なる中心導体部分の長さL4の10%以上、好ましくは20%以上とされている。図1には、交差部35の両中心導体の重複部分の長さL3が磁性体基板5の表面に重なる中心導体部分の長さL4の約75%である場合を図示した。
なお、第1と第2の中心導体6b、7bの重複部分の長さL3の上限としては、第1と第2の線路導体6、7の形状等を変更、例えば、第1と第2の基部導体6a、7aの中心軸線A、Aどうしがなす角度θ1や第1と第2の中心導体6b、7bの各部分の中心軸線B、Bどうしがなす角度θ3を変更することにより、磁性体基板5の表面に重なる中心導体部分の長さL4の100%まで可能である。
【0032】
また、第1と第2の中心導体6b、7bの重複部分が交差する場合、その交差角度が30度以下であることが好ましく、さらに好ましくは15度以下である。また、第1と第2の中心導体6b、7bの重複部分の第1と第2の中心導体6b、7bは交差せず、略平行であることがさらに好ましい。
図1には、中央部6E、7Eの中心軸線B、Bが平行である場合を図示した。なお、図1(A)では略したが、磁性体基板5と第1の線路導体6と第2の線路導体7と第3の線路導体8との間には各々に絶縁シートZが介在されて各線路導体6、7、8は個々に電気的に絶縁されている。
【0033】
上記磁性組立体15においては、第1と第2の中心導体6b、7bの交差部35の両中心導体の重複部分の長さL3が、磁性体基板5の表面(他面)に重なる中心導体部分の長さL4の10%以上としたことにより、上記重複部分の長さL3が長くなるにしたがって、第1と第2の中心導体6b、7bの重複部分で確保される容量値が大きくなり、また、中心導体6b、7bの実質的な長さも大きくなるので、その分、各線路導体に接続するコンデンサの容量値が小さくできる。
【0034】
なお、第1と第2の線路導体6、7が上記のようにそれぞれ2本の分割導体に分割されている場合、第1と第2の中心導体6b、7bの交差部35の両中心導体の重複部分の長さとは、図10に示すように第1の中心導体6bの一方の分割導体6b1と第2の中心導体7bの一方の分割導体7b1の重複部分の長さL6あるいは第1の中心導体6bの他方の分割導体6b2と第2の中心導体7bの他方の分割導体7b2の重複部分の長さL5としてもよく、その場合、両分割導体の重複部分の長さL5、L6は、それぞれ磁性体基板5の表面(他面)に重なる中心導体部分の長さL4の10%以上とすることが先に述べた理由により好ましい。
また、第1と第2の線路導体6、7が上記のようにそれぞれ2本の分割導体に分割されている場合、第1と第2の中心導体6b、7bの交差部35の両中心導体の重複部分の交差角度とは、第1の中心導体6bの一方の分割導体6b1と第2の中心導体7bの一方の分割導体7b1の重複部分の交差角度であってもよいあるいは第1の中心導体6bの他方の分割導体6b2と第2の中心導体7bの他方の分割導体7b2の重複部分の交差角度であってもよく、その場合の交差角度は30度以下であることが先に述べた理由により好ましい。
【0035】
次に、磁性組立体15は下ヨーク3の底部中央側に配置され、下ヨーク3の底部側の磁性組立体15の両側部分には平面視細長で先の磁性体基板5の半分程度の厚さの板状のコンデンサ基板11、12が収納され、コンデンサ基板12の一側部側には終端抵抗13が収納されている。
そして、先の第1の線路導体6の先端部導体6cを先のコンデンサ基板11の一側端部に形成されている電極部11aに電気的に接続し、先の第2の線路導体7の先端部導体7cを先のコンデンサ基板11の他側端部に形成されている電極部11bに電気的に接続し、先の第3の中心導体8の先端部導体8cをコンデンサ基板12と終端抵抗13に電気的に接続して磁性組立体15にコンデンサ基板11、12と終端抵抗13とが接続されている。なお、終端抵抗13を接続しなければ、サーキュレータとして作用する。
【0036】
前記先端部導体7cの部分が接続されたコンデンサ基板11の端部側に非可逆回路素子1としての第1ポートP1が形成され、先端部導体6cの部分が接続されたコンデンサ基板11の端部側に非可逆回路素子1としての第2ポートP2が形成され、先端部導体8cの部分が接続された終端抵抗13の端部側がアイソレータ1としての第3ポートP3とされている。
【0037】
また、下ヨーク3と上ヨーク2との間の空間部において磁性組立体15はその空間部の厚さの半分程を占有する厚さに形成されているので、磁性組立体15よりも上ヨーク2側の空間部分には、図1Bに示すスペーサ部材30が収納され、該スペーサ部材30に磁石部材4が設置されている。
先のスペーサ部材30は、上ヨーク2の内部に収納可能な大きさの平面視矩形板状の基板部31と、この基板部31の底部側の4隅の各コーナ部分に形成された脚部31aとからなり、基板部31において脚部31a…が形成されていない側の面(上面)に円型の収納凹部31bが形成され、該収納凹部31bの底面側には基板部31を貫通する矩形型の透孔(図示略)が形成されている。
【0038】
そして、先の収納凹部31bに円盤状の永久磁石からなる磁石部材4が嵌め込まれ、この磁石部材4を備えた状態のスペーサ部材30がそれらの4つの脚部30aで先のコンデンサ基板11、12とこれらに接続されている第1の先端部導体6c、7c、並びに、終端抵抗13とこれに接続されている先端部導体8cの先端部を下ヨーク3の底部側に押さえ付け、スペーサ部材30の底部により磁性組立体15を下ヨーク3の底面側に押さえ付けた状態でヨーク2、3の間に収納されている。
【0039】
図1〜図3に示す本実施の形態のアイソレータ1は、上記のようにして第1の線路導体6と第2の線路導体7がいずれも磁性体基板5の表面側に折り畳まれたので、入力側の線路導体から磁性体基板5に入力された信号を出力側に効果的に伝搬させることができ、低損失でしかも広帯域な通過特性を発揮できる。従って磁性組立体15の磁気特性として好適なものが確実に得られるようになる。
本実施の形態のアイソレータ1を0.8GHz〜0.9GHz程度の比較的低周波で使用する携帯電話に備えられる場合、インダクタンスを大きくする必要があるが、本実施形態では各線路導体にスリット部を形成することによりそれぞれ2本の分割導体に分割することにより、相互インダクタンスが発生し、線路導体として同じ導体長でも、分割した構成の方がより大きなインダクタンスが得られるようにしており、また、各スリット部の共通電極10側の端部に凹部を形成することにより、各線路導体の線路長を若干長くすることにより、大きなインダクタンスが得られるようにしている。
このように大きなインダクタンスが得られるようにしたアイソレータ1では、コンデンサとして容量値が大きいものが必要となるが、上記ような磁性組立体15が備えられているので、上記交差部35の第1と第2の中心導体6b、7bの重複部分で確保される容量値が大きくなるので、その分、各線路導体に接続するコンデンサの容量値が小さくでき、同じインダクタンスを確保するならば線路導体に接続されたコンデンサ基板の占有面積が小さくできる結果、小型化されたアイソレータとすることができる。
【0040】
図4Aは、先の実施の形態のアイソレータ1が組み込まれる携帯電話装置(通信機装置)の回路構成の一例を示すもので、この例の回路構成においては、アンテナ40にアンテナ共用器(ディプレクサ)41が接続され、アンテ共用器41の出力側にローノイズアンプ(増幅器)42と段間フィルタ48と選択回路(混合回路)43を介して受信回路(IF回路)44が接続され、アンテナ共用器41の入力側に先の実施の形態のアイソレータ1とパワーアンプ(増幅器)45と選択回路(混合回路)46を介して送信回路(IF回路)47が接続され、選択回路43、46に分配トランス49を介して局部発振器49aに接続されて構成されている。
先の構成のアイソレータ1は図4Aに示すような携帯電話装置の回路に組み込まれて使用され、アイソレータ1からアンテナ共振器41側への信号は低損失で通過させるが、その逆方向の信号は損失を大きくして遮断するように作用する。これにより、増幅器45側のノイズ等の不要な信号を増幅器45側に逆入力させないという作用を奏する。
【0041】
図4Bは図1から図3に示した構成のアイソレータ1の動作原理を示すものである。図4Bに示す回路に組み込まれているアイソレータ1は、符号▲1▼で示す第1ポートP1側から符号▲2▼で示す第2ポートP2方向への信号は伝えるが、符号▲2▼の第2ポートP2側から符号▲3▼の第3ポートP3側への信号は終端抵抗13により減衰させて吸収し、終端抵抗13側の符号▲3▼で示す第3ポートP3側から符号▲1▼で示す第1ポートP1側への信号は遮断する。
従って図4Aに示す回路に組み込んだ場合に先に説明した効果を奏することができる。
【0042】
なお、上記実施形態のアイソレータにおいては、磁性組立体15に備える電極部16の第3の線路導体8が図3に示すような形状である場合について説明したが図5又は図6に示すような形状であってもよい。
図5の第3の線路導体80が図3の第3の線路導体8と異なるところは、分割導体80a1、80a2が非平行であり、詳しくは、互いの中央部を離間するようにして分割導体80a1、80a2から延設され、分割導体80b1と80b2とから菱形の中心導体80bが構成されている。
【0043】
図6の第3の線路導体180が図3の第3の線路導体8と異なるところは、分割導体180a1、180a2が平面視直線状であり、これら分割導体180b1と180b2とから中心導体180bが構成されている。この場合、第3の線路導体180の磁性体基板5への折り曲げ加工がし易くなる。
【0044】
(非可逆回路素子の第2の実施の形態)
図7は本発明に係る非可逆回路素子をアイソレータとして適用した第2の実施の形態を示すもので、この実施形態のアイソレータ70は、上ヨーク71と下ヨーク72とからなる閉磁気回路の内部に、換言すると、上ヨーク71と下ヨーク72の間に、4角板状の永久磁石からなる磁石部材75とスペーサ部材76と磁性組立体195とコンデンサ基板58、59、60と終端抵抗61とこれらを収容する樹脂ケース62とを収容して構成されている。
磁性組立体95は先の第1の実施の形態と同等の電極部16が平面視略長方形状の磁性体基板65に巻き付けられて構成されている。この磁性体基板65は先の形態の横長の磁性体基板5とほぼ同じ形状であるが若干正方形状に近い長方形板状とされている。
磁性体基板65に巻き付けられた電極部16は、第1の線路導体6の先端部導体を先のコンデンサ基板59の一側端部に形成されている電極部(図示略)に電気的に接続し、第2の線路導体7の先端部導体を先のコンデンサ基板58の他側端部に形成されている電極部(図示略)に電気的に接続し、第3の中心導体8の先端部導体をコンデンサ基板60と終端抵抗61に電気的に接続して磁性組立体65にコンデンサ基板58、59、60と終端抵抗61とが接続されている。
図7に示す構造のアイソレータ70においても先の実施の形態のアイソレータ1と同等の効果を得ることができる。
【0045】
(非可逆回路素子の第3の実施の形態)
図11は本発明に係る非可逆回路素子をアイソレータとして適用した第3の実施の形態を示す平面図である。
第3の実施形態のアイソレータ101が図1乃至図3に示した第1の実施形態のアイソレータ1と特に異なるところは、磁性組立体に備える電極部の形状と、第1と第2の線路導体は異なるコンデンサ基板に接続されている点である。
図12は、本実施形態のアイソレータ101に備えられる磁性組立体15aの電極部116の展開図である。
この電極部116は、3本の線路導体106、107、108と、共通電極110が一体化されてなるものである。
【0046】
この共通電極110は、平面視先の磁性体基板5とほぼ相似形状の金属板からなる本体部110Aから構成されている。即ち、本体部110Aは、相対向する2つの長辺部110a、110aと、これらの長辺部110a、110aに直角向きの短辺部110b、110bと、長辺部110a、110aの両端部側に位置して各長辺部110aに対して150°の角度で傾斜し、先の短辺部110bに対しては130°の傾斜角度で接続する4つの傾斜部110dとから構成される平面視略長方形とされている。
【0047】
そして、先の共通電極110の4つのコーナ部の傾斜部110dのうち、一方の長辺部側の2つの傾斜部110dから第1の線路導体106と第2の線路導体107が延出形成されている。
まず、先の2つの傾斜部110dの一方から、第1の基部導体106aと第1の中心導体106bと第1の先端部導体106cからなる第1の線路導体106が延出形成される一方、先の傾斜部110dの他方から、第2の基部導体107aと第2の中心導体107bと第2の先端部導体107cとからなる第2の線路導体107が延出形成されている。
【0048】
第1の中心導体106bは、平面視波形あるいはジクザグ状のものであり、基部導体側端部106Dと、先端部導体側端部106Fと、これらの間の中央部106Eの3つの部分からなる。この第1の中心導体106bが第1の実施形態の第1の中心導体6bと特に異なるところは、中央部106Eの形状が平面視略く字状である点である。
第2の中心導体107bも第1の中心導体106bと同様の形状であり、基部導体側端部107Dと、先端部導体側端部107Fと、これらの間の平面視略く字状の中央部107Eの3つの部分からなる。
【0049】
次に、第1の線路導体106の幅方向中央部には、第1の実施形態と同様にスリット部118が形成され、このスリット部118を形成することにより中央部導体106bが2本の分割導体106b1、106b2に分割され、基部導体106aも2本の分割導体106a1、106a2に分割されている。
第2の線路導体107の幅方向中央部にも上記スリット部118と同様のスリット部119が形成され、このスリット部119を形成することにより中央部導体107bが2本の分割導体107b1、107b2に分割され、基部導体107aも2本の分割導体107a1、107a2に分割されている。
【0050】
スリット部118、119の幅は、第1、第2の中心導体106b、107bの基部導体側端部106D、107Dにおける幅よりも中央部106E、107E、先端部導体側端部106F、107Fにおける幅の方が大きく形成される。すなわち第1、第2の中心導体106b、107bの交差部分のスリット部118、119の幅が交差部分以外の同幅よりも広く形成されている。このようなスリット幅の大小関係とすることで、アイソレータの特性を損なうことなく、パワーアンプ45とのインピーダンスのマッチングを適切に設定することが可能となる。
また、第1の中心導体106bの分割導体106b1、106b2の幅は、第2の中心導体107bの分割導体107b1、107b2の幅より狭く形成されている。このようにすることで第1の中心導体106bが第2の中心導体107bよりも磁性体基板5に近接して巻付けられることによるパワーアンプ45とのインピーダンスのマッチング不良を防止し、適切なインピーダンスのマッチングを取ることが可能となる。
【0051】
一方、共通電極110の他方の長辺部110a側の中央部に第3の線路導体108が延設されている。この第3の線路導体108は共通電極110から突出形成された第3の基部導体108aと第3の中心導体108bと第3の先端部導体108cとから構成されている。第3の基部導体108aは、共通電極110の長辺側中央部からほぼ直角に延出形成された2本の短冊状の分割導体108a1、108a2からなり、2本の分割導体108a1、108a2の間にはスリット120が形成されている。一方の分割導体108a2は他方の分割導体108a1より幅広に形成されている。
【0052】
第3の中心導体108bが第1の実施形態の第3の中心導体8bと特に異なるところは、先の分割導体108a1に接続する平面視略直線状の分割導体108b1と先の分割導体108a2に接続する平面視略直線状の分割導体108b2とから第3の中心導体108bから構成されており、これら分割導体108b1、108b2の間にはスリット120が形成されている。また、一方の分割導体108b2は他方の分割導体108b1より幅広に形成されている。
更に、これらの分割導体108b1、108b2の先端側はL字型の第3の先端部導体108cに一体化されている。この第3の先端部導体108cは、先の分割導体108b1、108b2を一体化して先の分割導体108a1、108a2と同じ方向に向けて延出形成された接続部108c1とこの接続部108c1に対してほぼ直角方向に延出形成された接続部108c2とから構成されている。
【0053】
上記のように第3の中心導体108bの2本の分割導体がそれぞれ平面視略直線状であれば、第3の線路導体108を磁性体基板5に巻き付けて磁性組立体15aを組み立てる際に第3の線路導体108の位置ずれが起こりにくい。
また、上記のように第3の中心導体108bが2本の分割導体に分割されている場合、これら分割導体108b1、108b2の間隔W5は広い方がアイソレーションの帯域を広くすることができる。
また、本実施形態では第3の中心導体108bの2本の分割導体108b1、108b2のうち一方を他方より幅広にして剛性を高めているので、第3の線路導体108を磁性体基板5に巻き付けて磁性組立体15aを組み立てる際に、第3の線路導体108の変形を防止できる。また、分割導体108b1、108b2のうち一方を幅狭とすることにより、挿入損失を低く維持できる。従って、本実施形態のように一方の分割導体108b2の幅を広くし、他方の分割導体108b1を狭くすることで、第3の中心導体108bの剛性を高め、なおかつ、挿入損失を低くすることが可能となる。
【0054】
前記の如く構成された電極部116は、その共通電極110の本体部110Aを磁性体基板5の裏面側(一面側)に添わせ、第1の線路導体106と第2の線路導体107と第3の線路導体108とを磁性体基板5の表面側(他面側)に折り曲げて(巻き付けて)磁性体基板5に装着され、磁性体基板5とともに磁性組立体15aを構成している。
【0055】
第1と第2の中心導体106b、107bは上記構成とされているので、上記のように磁性体基板5の表面(他面)に沿って添わせると、該磁性体基板5の表面上で第1と第2の中心導体106b、107bが交差している。図11には、中央部106E、107Eが重複している場合を図示した。
【0056】
本実施形態で第1と第2の中心導体106b、107bの交差部35aの両中心導体の重複部分の長さとは、図11に示すように中央部106Eの一方の分割導体106b1と中央部107Eの一方の分割導体107b1の重複部分の長さL7あるいは中央部106Eの他方の分割導体106b2と中央部107Eの他方の分割導体107b2の重複部分の長さL8であり、その場合、両分割導体の重複部分の長さL7、L8は、それぞれ磁性体基板5の表面(他面)に重なる中心導体部分の長さL4の10%以上とすることが先に述べた理由により好ましい。また、上記重複部分の長さL7、L8は、それぞれ磁性体基板5の表面(他面)に重なる中心導体部分の長さL4の20%以上とされていることが先に述べた理由によりさらに好ましい。
分割導体106b1と分割導体107b1の重複部分は平行である部分(平行部36a)以外に非平行部分を有しており、また、分割導体106b2と分割導体107b2の重複部分も平行である部分(平行部36b)以外に非平行部分を有している。平行部36aの長さは、分割導体の重複部分の長さL7の20%程度〜100%程度であることが好ましく、平行部36bの長さは、分割導体の重複部分の長さL8の20%程度〜100%程度であることが好ましい。
【0057】
平行部36aの長さが分割導体の重複部分の長さL7の20%未満であると(L7と平行部36aの長さの比が20%未満であると)、挿入損失が増大し、好ましくない。また、平行部36bの長さが分割導体の重複部分の長さL8の20%未満であると(L8と平行部36bの長さの比が20%未満であると)、挿入損失が増大し、好ましくない。
【0058】
本実施形態での第1と第2の中心導体106b、107bの交差部35aの両中心導体の重複部分の交差角度とは、中央部106Eの一方の分割導体106b1と中央部107Eの一方の分割導体107b1の重複部分の交差角度あるいは中央部106Eの他方の分割導体106b2と中央部107Eの他方の分割導体107b2の重複部分の交差角度であり、その場合の交差角度は30度以下であることが好ましく、さらに好ましくは15度以下である。本実施形態のように両分割導体の重複部分が平行部36aを有している場合、この平行部36aでの両分割導体の交差角度は0度あるいは略0度であり、非平行部での両分割導体の交差角度は30度以下であることが好ましい。非平行部での両分割導体の交差角度が30度よりも大きくなると、挿入損失が増大し好ましくない。
【0059】
次に、磁性組立体15aは下ヨーク3の底部中央側に配置され、下ヨーク3の底部側の磁性組立体15aの一方の側にコンデンサ基板12、他方の側にコンデンサ基板111a、111bが収納され、コンデンサ基板12の一側部側には終端抵抗13が収納されている。
そして、先の第1の線路導体106の先端部導体106cを先のコンデンサ基板111aに形成されている電極部に電気的に接続し、先の第2の線路導体107の先端部導体107cを先のコンデンサ基板111bに形成されている電極部に電気的に接続し、先の第3の中心導体108の先端部導体108cをコンデンサ基板12と終端抵抗13に電気的に接続して磁性組立体15aにコンデンサ基板111a、111b、12と終端抵抗13とが接続されている。なお、終端抵抗13を接続しなければ、サーキュレータとして作用する。
【0060】
前記先端部導体107cの部分が接続されたコンデンサ基板111bの端部側に非可逆回路素子101としての第1ポートP1が形成され、先端部導体106cの部分が接続されたコンデンサ基板111aの端部側に非可逆回路素子101としての第2ポートP2が形成され、先端部導体108cの部分が接続された終端抵抗13の端部側がアイソレータ101としての第3ポートP3とされている。
【0061】
本実施形態のアイソレータ101によれば、両分割導体の重複部分に上記平行部以外に上記非平行部があるので、非可逆回路素子の挿入損失の低減効果とアイソレーションの向上効果があり、特に、アイソレーションの帯域を広くすることができる。
【0062】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。ただし、以下の実施例は本発明を限定するものではない。
(実験例1)
第1の中心導体6bの中央部6Eと、第2の中心導体7bの中央部7Eの導体幅W1、スリット幅W2と、両中央部の中心軸線B、Bどうしがなす角度θ3(ここでの角度θ3は第1と第2の中心導体を磁性体基板の表面側に折り曲げる前の両中央部の中心軸線B、Bどうしがなす角度)を変更することにより、第1と第2の中心導体6b、7bの交差部35の両中心導体の重なり合う電極面積を変更する以外は図1〜図3と同様にして各種のアイソレータ(No.1〜4)を作製し、第1の先端導体6cが接続されたコンデンサ基板11の電極11aの容量C1、第2の先端導体7cが接続されたコンデンサ基板11の電極11aの容量C2、第3の先端導体8cが接続されたコンデンサ基板12の容量C3と、第3の先端導体8cが接続された終端抵抗13の抵抗Rをそれぞれ測定した。その結果を下記表1に示す。第3の線路導体としては、第3の中心導体の形状が図6と同様の直線形状のものを使用した。第3の中心導体180bの導体幅W3は600μm、スリット幅W4は200μmとした。表1中の重複割合は、磁性体基板5の表面に重なる中心導体部分の長さL4に対する交差部35の両中心導体の重複部分の長さL3の割合であり、θ3は第1と第2の中心導体を磁性体基板の表面に沿って添わせたときの両中央部の中心軸線B、Bどうしがなす角度である。
【0063】
【表1】
【0064】
表1の結果からNo.1とNo.3のアイソレータでは、θ3と導体幅W1が同じ大きさでも、スリットW2が小さいNo.3のアイソレータの方が各容量が小さく、No.1とNo.4のアイソレータでは導体幅W1とスリットW2が同じ大きさでもθ3がなく、平行なNo.1のアイソレータの方がC1、C2の値が小さくなっており、従って、第1と第2の中心導体6b、7bの交差部35の両中心導体の重なり合う電極面積が広くなる程、コンデンサ容量を小さくできることがわかる。
【0065】
(実験例2)
図11乃至図12に示した構成のアイソレータ(実施例)を作製し、第1ポートP1から第2ポートP2へ(入力から出力へ)信号を流した場合のS21の中心周波数(動作周波数)を調べた。その結果を下記表2及び図13に示す。
実施例のアイソレータの第1の線路導体106としては、スリット幅330μm、実質的な線路幅590μm(各分割導体の幅130μm)、厚さ50μmの銅箔を用い、また、第2の線路導体107としては、スリット幅300μm、実質的な線路幅500μm(各分割導体の幅100μm)、厚さ50μmの銅箔を用い、第3の線路導体108としては、スリット幅1200μm、実質的な線路幅1500μm(分割導体108b1の幅100μm、分割導体108b2の幅200μm)、厚さ50μmの銅箔を用い、また、共通電極110は縦約2000μm、横幅約3550μm、厚さ50μmの銅箔を用いた。
【0066】
また、平面視略く字状の中央部106Eの分割導体106b1と、平面視略く字状の中央部107Eの分割導体107b1の重複部分の長さL7は、磁性体基板5の表面(他面)に重なる中心導体部分の長さL4の28%、また、平行部36aの長さは分割導体の重複部分の長さL7の46%とした。また、平面視略く字状の中央部106Eの分割導体106b2と平面視略く字状の中央部107Eの分割導体107b2の重複部分の長さL8は磁性体基板5の表面(他面)に重なる中心導体部分の長さL4の28%、平行部36bの長さは分割導体の重複部分の長さL8の23%とした。また、磁性体基板5としては、縦約2mm、横幅約3.55mm、厚さ0.35mmの図11に示すような形状のイットリウム鉄ガーネットフェライト(YIG)からなるものを用いた。
また、第1の先端導体106cが接続されたコンデンサ基板111aの電極の容量C1を13.0pF、第2の先端導体107cが接続されたコンデンサ基板111bの電極の容量C2を13.2pF、第3の先端導体108cが接続されたコンデンサ基板12の容量C3を18.0pF、第3の先端導体108cが接続された終端抵抗13の抵抗Rを39Ω、バイアス磁石(永久磁石4)の厚さは0.75mmとした。
【0067】
また、比較のために第1及び第2の線路導体の形状を平面視直線状(但しスリット幅は実施例と同じ大きさ)とした以外は実施例と同様のアイソレータ(比較例)を作製し、第1ポートP1から第2ポートP2へ(入力から出力へ)信号を流した場合のS21の中心周波数(動作周波数)を調べた。その結果を下記表2及び図14に示す。この比較例のアイソレータの第1と第2の中心導体の重複部分は、平行部を有しておらず、交差角度は60度としたものである。
【0068】
【表2】
【0069】
表2及び図13乃至図14に示した結果から平面視略く字状の分割導体とこれに対応する平面視略く字状の分割導体を重複させたことにより、第1と第2の中心導体の重複部分に平行部以外に非平行部を形成した実施例のアイソレータは、平面視直線状の分割導体とこれに対応する平面視直線状の分割導体を重複させた比較例のアイソレータに比べて中心周波数が68MHz小さくなっており、インサーションロスの低減効果があることがわかる。
また、比較例のものは、低周波化のために68MHz小さくするためにはコンデンサの容量C1、C2をそれぞれ2pF(15%)程度大きくしなくてはならず、その分コンデンサが大型化してしまう。なお、インダクタンスLの値は、中心周波数を同じ値に調整した後のコンデンサの容量に大体比例し、実施例のもののLの値はやはり15%程大きくなっている。実施例のように第1と第2の中心導体の重複部分に逆平行部を設けることで中心導体のLが大きくなり、コンデンサの容量を結果として小さくできるため、低周波数化する際の小型化に寄与する。
従って、中心周波数を同じ値のものを作製した場合、実施例のものの方がコンデンサの容量を小さくでき、コンデンサの面積も小さくでき、小型化が可能であり、しかもアイソレーションの向上効果があることがわかる。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の非可逆回路素子においては、磁性体基板に沿って屈曲されて磁性体基板に沿わせられた第1の中心導体と第2の中心導体とを重複させた交差部の一部分が互いに平行にされているので、重複した交差部により第1の中心導体と第2の中心導体間に確保される容量値を大きくすることができ、各線路導体に接続するコンデンサの容量値が小さくでき、同じインダクタンスを確保するならば用いるコンデンサの占有面積を小さくできる。また、第1の中心導体と第2の中心導体の重複部分の平行部の長さが長くなるほど、非可逆回路素子の挿入損失の低減効果を増大できる。
本発明において第1の中心導体と第2の中心導体とが重複した交差部の他の一部分が互いに非平行であるならば、アイソレーションの帯域を広くすることができる、アイソレーションを向上できる効果がある。従って、第1の中心導体と第2の中心導体の重複部分に平行部以外に非平行部があると、非可逆回路素子の挿入損失の低減効果とアイソレーションの向上効果がある。
本発明において、線路導体の幅方向中央部にそれらの長さ方向に沿うスリット部を形成して線路導体を2本の分割導体に分割していると、相互インダクタンスが発生し、線路導体として同じ導体長でも、分割した構成の方がより大きなインダクタンスが得られる効果がある。
本発明は、先に述べたようにコンデンサの容量値を小さくできるので、これによってコンデンサ基板の占有面積を小さくできる結果、小型化された非可逆回路素子とすることができる。
本発明において、共通のコンデンサ基板とすることで必要とする容量を小さなコンデンサ占有面積で稼ぐことができる。
また、本発明の通信機装置は、本発明の非可逆回路素子が備えられたことにより、非可逆回路素子の挿入損失の低減効果を有する小型化された通信機装置とすることができる。
更に本発明の通信機装置は、本発明の非可逆回路素子が備えられたことにより、非可逆回路素子の挿入損失の低減効果とアイソレーションの向上効果があり、小型化された通信機装置を提供することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1Aは本発明の第1の実施の形態に係るアイソレータの一部分を取り除いた状態を示す平面図、図1Bは同アイソレータの断面図である。
【図2】 図2は本発明に係るアイソレータに用いられる磁性体基板の一例を示す平面図。
【図3】 図3は本発明に係るアイソレータに用いられる電極部の展開図である。
【図4】 図4Aはこの種のアイソレータが備えられる電気回路の一例を示す図、図4Bはアイソレータの動作原理を示す図である。
【図5】 図5は本発明に係るアイソレータの電極部の第2の例を示す図である。
【図6】 図6は本発明に係るアイソレータの電極部の第3の例を示す図である。
【図7】 図7は本発明に係るアイソレータの他の実施の形態を示す分解斜視図である。
【図8】 図8は従来の磁性組立体の一例を示す斜視図である。
【図9】 図9は従来の磁性組立体に適用されている電極部の展開図である。
【図10】 本発明の第1の実施の形態に係るアイソレータの一部分を取り除いた状態を示す平面図である。
【図11】 本発明の第3の実施の形態に係るアイソレータの一部分を取り除いた状態を示す平面図である。
【図12】 第3の実施形態のアイソレータに備えられる磁性組立体の電極部の展開図である。
【図13】 実施例のアイソレータの中心周波数を示す図である。
【図14】 比較例のアイソレータの中心周波数を示す図である。
【符号の説明】
1,70,101…アイソレータ(非可逆回路素子)、4,75…磁石部材、5,65…磁性体基板、6,106…第1の線路導体、6b,106b…第1の中心導体、6E、106E…中央部、6b1,6b2,106b1,106b2…分割導体、7,107…第2の線路導体、7b、107b…第2の中心導体、7E、107E…中央部、7b1,7b2,107b1,107b2…分割導体、8,108…第3の線路導体、8b,108…第3の中心導体、8b1,8b2,108b1,108b2…分割導体、10,110…共通電極、11,12,58,59,60、111a、111b…コンデンサ基板、13,61…終端抵抗、15,95,15a…磁性組立体、16、116…電極部、18,19,20,118,119,120…スリット部、35,35a…交差部、36a,36b…平行部、L3…両中心導体の重複部分の長さ、L4…磁性体基板の他面に重なる中心導体部分の中心導体部分の長さ、L5,L6,L7、L8…分割導体の重複部分の長さ、W5…第3の線路導体の分割導体の間隔。
Claims (6)
- 磁性体基板と、前記磁性体基板の一面側に配置された板状の共通電極と、前記共通電極と一体に設けられ、前記磁性体基板に沿って屈曲された第1の線路導体と第2の線路導体と第3の線路導体と、前記第1の線路導体に設けられて前記磁性体基板の他面側に沿わされた第1の中心導体と、前記第2の線路導体に設けられて前記磁性体基板の他面側に沿わされた第2の中心導体と、前記第3の線路導体に設けられて前記磁性体基板の他面側に沿わされた第3の中心導体とが具備されてなり、
前記第1の中心導体と第2の中心導体とが前記磁性体基板の他面上で交差するように前記磁性体基板の他面側に折曲され、かつ前記第1の中心導体と前記第2の中心導体とが重複した交差部の一部分が互いに平行であることを特徴とする非可逆回路素子。 - 前記第1の中心導体と前記第2の中心導体とが重複した交差部の他の一部分が互いに非平行であることを特徴とする請求項1に記載の非可逆回路素子。
- 前記第1の線路導体の幅方向中央部と前記第2の線路導体の幅方向中央部と前記第3の線路導体の幅方向中央部にそれらの長さ方向に沿うスリット部が形成されて前記第1の線路導体と前記第2の線路導体と第3の線路導体が個々に2本の分割導体に分割されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の非可逆回路素子。
- 前記線路導体に接続されるコンデンサ基板が複数備えられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の非可逆回路素子。
- 前記コンデンサ基板のうち一方が前記複数の線路導体に接続された共通のコンデンサ基板とされたことを特徴とする請求項4に記載の非可逆回路素子。
- 前記請求項1〜5のいずれかに記載の非可逆回路素子を備えたことを特徴とする通信機装置。
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