JP3662346B2 - 可変ドループ・エンジン速度制御システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般的には内燃エンジンにおいてエンジン速度を制御するシステムに関し、更に特定すれば、エンジン負荷の変化に応答してエンジン速度の変化を可能にするその種の制御システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にエンジン速度ガバナとして知られたエンジン速度制御システムは、自動車業界においてはよく知られている。乗客用車両において一般的に用いられているエンジン速度ガバナの1つのタイプでは、スロットル・ペダルの位置が大まかにエンジン・トルクに対応している。このようなガバナを用いて一定の車両速度を維持するためには、道路の上り勾配/下り勾配の変化に応答して、スロットル位置を変調させることによって、対応してエンジン・トルク出力を増減させなければならない。ディーゼル・トラック・エンジン上では、このタイプのスロットル入力は、最小及び最大のエンジン速度双方を制限するが、それら上下限間での速度調整はないという機能的特徴から、“最小―最大”ガバナとして知られている。
【0003】
ディーゼル・トラック・エンジンに一般に用いられている別のタイプのエンジン速度ガバナに、“全速度”ガバナとして知られているものがある。このガバナでは、スロットル位置は、エンジン・トルクではなく、エンジン速度に相等するものとしてある。このような“全速度”ガバナの一種に、一定のエンジン速度が一定のスロットル位置に対して与えられる、“等時性”全速度ガバナとして知られているものがある。この等時性ガバナでは、スロットルを一定に保持すれば、負荷には関係なく、エンジン(及び車両)速度を一定に保つ、という巡航制御機能が設けられている。
【0004】
図1を参照すると、これには、公知の等時性エンジン速度制御システム10の一例を示している。典型的には、ある所望のエンジン速度に対応する基準速度“REF SPEED”を、スロットル位置に応答して発生する。REF SPEEDを、加算ノード14の正入力に供給する。加算ノード14は、内燃エンジン30内部のエンジン速度センサ32の出力として、実速度“ACTUAL SPEED”を受ける負入力も有する。従って、加算ノード14の出力は、REF SPEEDとACTUAL SPEEDとの差に対応する、速度誤差信号“e”を発生する。速度誤差信号eを、等時エンジン速度制御器16への入力として供給する。次に、制御器16の出力26を燃料供給システム28に供給することによって、それに応じた燃料をエンジン30に供給させる。
【0005】
等時エンジン制御器16のP構成要素18は、速度誤差信号eに対して、“比例”利得関数を与えるので、小さな誤差に対しては燃料の変化は小さくなり、大きな誤差に対しては燃料の変化は大きくなる。I構成要素20はエンジン誤差速度eに対して“積分”関数を適用するので、燃料変化は時間的に遅くなる(そしてより円滑になる)。従って、エンジン速度制御器16によって与えられる速度誤差補正機能は、速度誤差量だけでなく、誤差が存在する時間にも比例する。最後に、D構成要素22は、エンジン誤差信号eに対して“微分”関数を与えるので、eの変化の方向及び率に関して、燃料変化の正確な予測が可能となる。これらP18、I20及びD22の出力は、加算ノード24で結合して、出力燃料供給信号26を発生する。
【0006】
ここで指摘すべきは、等時エンジン制御器16は、図1の例では、3つの別個構成要素P,I及びDとして図示することにより、その記述を容易にしていることである。実際には、構成要素P,I及びDは、1つの物理的な制御器16として、又は、例えばマイクロプロセッサによって実行可能な1つのソフトウエア機能として、機能的に1つの構成要素に融合してあることは理解すべきであろう。結果として得られるこの比例―積分―微分(PID)制御器16は、自動車業界では公知でる。
【0007】
次に、図2のA及びBを参照すると、これには、典型的な等時PID制御器16の周波数応答、即ち、ボード線図を示している。図2のAは各周波数における制御器16の利得を示す。制御器16の利得の大きさ36(dBで表示)は、大きさ=20*log10(g)という式で与えられる。同様に、図2のBは、各周波数における位相38を示す。通常、負の位相値は速度誤差信号eと制御器16の出力信号26との間の遅れを示し、正の位相値は、速度誤差信号eの出力信号26による進みを示す。当技術では公知のように、通常遅れが大きい程(負の位相が大きい程)、システムの制御が困難となる(即ち、システムの安定性を実現することがより困難になる)。
【0008】
図2のA及びBに示したようなボード線図では、大きさ36を、1組の直線及びコーナーとして近似することができる。制御器16の“極”と“ゼロ点”は、大きさ36が“コーナー”を有する周波数に対応し、大きさ36の最も左側の部分はコーナーと見なされるが、最も右側の部分はそう見なされない。一般的に、極は、グラフが下方向に折り曲がるコーナーに生じ、ゼロ点はグラフが上方向に折り曲がるコーナーに生じる。従って、図2のAから、制御器16は約0Hzと80Hzに極を有し、約1Hzと10Hzにゼロ点を有することがわかる。
【0009】
典型的に、PID制御器は、極とゼロ点とを有する1つの伝達関数として定義する。通常マイクロプロセッサ制御下の制御器と共に用いる離散時間系の公知のz平面表現を用いると、その伝達関数は、zの多項式の比となり、各多項式の次数は対応する極及びゼロ点の数に等しい。また、このような伝達関数の分母の平方根は、制御器の極に対応し、分子の平方根は制御器のゼロ点に対応する。通常、周波数領域とz領域との間の変換は、周波数=ln(z)/(2πTS)という式にしたがう。ここで、TSは制御器のサンプリング周期である。従って、サンプリング周期が約2ミリ秒の場合、図1及び図2に示したPID制御器の例の伝達関数H1は、以下の式で表わすことができる。
【0010】
【数1】
1=[4.5(z−0.988)(z−0.882)]/[(z−1)(z−0.366)]
システム10のような厳格に等時性の全速度ガバナは、運転性の問題により、高速道路での用途には通常用いられていない。具体的に説明すると、かかるシステムではスロットル位置の小さな変化が大きなエンジン・トルク変化に対応するので、このようなガバナを用いて車両を円滑に運転するのは困難である。この理由のために、等時ガバナには、典型的に、いわゆる“ドループ”機能が設けられている。ドループとは、エンジン負荷の増大に伴って定常状態エンジン速度を徐々に減速させる、というガバナの特性である。ドループの一般的な計量法では、パーセントという共通尺度で表わし、以下の式で定義する。
【0011】
【数2】
%ドループ=[(nlspeed−flspeed)/flspeed]*100
ここでnlspeedは無負荷時(即ち、ゼロ負荷時)のエンジン速度であり、flspeedは全負荷時のエンジン速度である。この計量法によれば、厳格に等時性のガバナは、ゼロ・パーセントのドループを有することになる。同様に、ドループが十分に増加すると、ガバナは最小−最大ガバナのように動作することになる。
【0012】
ドループは、定常状態の要件であり、これは、エンジンに定常負荷がかかっている場合、エンジン速度はそれに対応して減速することを意味する。これは、制御器16が低周波数では小さな利得を有してその所望のドループ機能に合わせなければならないこと、を意味するものである。ドループが減少して等時エンジン速度制御器の動作により近くなるにつれ、低周波数利得も同様に増加しなければならない。実際、理想的な等時動作(ゼロ・パーセント・ドループ)には、低周波数利得が無限大であることが必要となる。
【0013】
ここで図3を参照すると、これには、従来技術の変形型等時エンジン速度制御システム15を示している。これは、図1の等時エンジン速度制御システム10とある点において同一である。従って、同様の構成要素を表わすのに、同様の番号を用いている。ただし、このエンジン速度制御システム15は、PID制御器16の出力とREF SPEED入力との間に付加的なフィードバック経路を含んでいる。具体的には、利得ブロック40は、PID制御器16の出力信号26を受け、この信号に利得GDを乗算し、そして加算ノード42においてこの信号をREF SPEEDから減算する。従って、加算ノード14は、その正入力で、変更したREF' SPEED信号を受けることになる。利得ブロック40を含んだことによる動作的効果は、安定なシステムを保ちつつ、エンジン速度制御システム15にドループ機能を設けるという目的を達成することである。
【0014】
次に図4のA及びBを参照する。これは、エンジン制御システム15のボード線図を、エンジン速度制御システム10のボード線図と共に示す。図4のAに示すように、利得ブロック40を付加したことにより、低周波利得44を所望通りに減少させている。しかしながら、図4のAとB双方を参照すると、システムの安定性は維持される(振動の持続はない)ものの、高周波利得44と位相46の双方が、利得ブロック40の付加による影響を受けている。特に、位相46が高周波数においてより負になるため、システムの遅れが更に付加されるという影響があり、これにより利得ブロック40に帰すべき安定性問題が発生することになる。従って、利得ブロック40の利得GDを増加させることにより、より多くのドループをシステム15に導入すると、システムの安定性は増々低下することになる。
【0015】
フィードバック利得ブロック40を付加した結果、PID制御器16に帰され得る伝達関数H2は以下のようになる。
【0016】
【数3】
2=[4.5(z−0.988)(z−0.882)z]/[(z−0.9987)(z−0.670)(z+0.586)]
2における極及びゼロ点をH1における極及びゼロ点と比較すると、利得ブロック40を付加した効果を示すことができる。まず、H1におけるz=1の極は、H2ではz=0.9987にわずかに移動した。これは導入するドループ効果の増加を表わす。また、H1におけるz=0.366の極はz=0.670に移動した。これは高周波数における位相の損失の原因となる。最後に、利得ブロック40を付加したことにより、H2において別の極及びゼロ点が導入される。このz=−0.586に導入された極は、非常に高い周波数における大きな利得及び位相の変動の原因となる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
システム15内では、利得ブロック40の付加は、ドループ機能以上のものをエンジン速度制御システム15に対し導入することは明らかである。また、高周波変動も導入され、これにより、システム15を安定に維持するためには、PID制御器16内の利得を、GDの異なったレベルに対して調整することが必要となることがある。更に、システム15においては、得ることができるドループ量に制限がある。例えば、実験から、かかるシステム15は、ドループ・レベルが約24%を越えると不安定になることが判った。従って、必要とされているのは、エンジン速度制御システムにおいてドループを変化させる新たな技術であって、システムの安定性を維持しつつ、制限なくドループ・パーセントを変化可能とすることである。
【0018】
本発明の目的の1つは、エンジン速度制御器が対応的に可変なドループ量を与えるために内部可変ドループ利得を含む、内燃エンジンの速度を制御する制御システムを提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、内部ドループ利得の変更がエンジン速度制御器の動的補償に影響を与えない、上記のような制御システムを提供することである。
【0020】
本発明のこれらの目的並びにその他の目的は、以下の好適な実施形態の説明から、より明確となろう。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明は、従来技術のエンジン速度制御システムの欠点に対処するものである。本発明の1つの態様によれば、スロットル位置を感知するスロットル位置センサと、実エンジン速度を感知するエンジン速度センサと、燃料制御信号に応答してエンジンに燃料を供給する燃料供給システムと,を有する内燃エンジンのエンジン速度制御方法は、(1)スロットル位置を感知し、それから所望のエンジン速度を決定するステップと、(2)実エンジン速度を感知するステップと、(3)前記所望のエンジン速度と前記実エンジン速度との間の差として誤差速度を判定するステップと、(4)前記誤差信号の少なくとも大きさ、期間及び変化率の関数である燃料制御信号を、前記誤差速度から生成するステップであって、前記燃料制御信号は更にエンジン負荷に比例して、エンジン負荷の増加につれて前記実エンジン速度を減少させるようにする前記燃料制御信号を生成するステップと、及び(5)前記燃料制御信号に従って前記エンジンに燃料を供給することにより、前記実エンジン速度を制御するステップと、から成る。
【0022】
本発明の別の態様によれば、電子エンジン速度ガバナにおいて可変ドループを発生する方法であって、該ガバナは、これに関連する比例部分、積分部分及び微分部分を有し、かつ前記比例部分、積分部分及び微分部分の関数である伝達関数を有し、前記方法は、(1)前記ガバナの伝達関数が前記積分部分に関連する1つの極を有するように前記ガバナを構成するステップと、(2)前記積分部分に、前記積分部分の極に関連したドループ利得を与えるステップと、及び(3)前記ドループ利得の大きさを変化させることによって、前記積分部分の極の位置を変化させ、前記積分部分の極の位置によって前記エンジン速度ガバナのドループ量を決定するステップと、から成る。更に、前記ガバナは、これに関連する周波数応答を有し、この場合、前記方法は、(1)前記ガバナの定常状態の周波数応答のみの大きさが、前記積分部分に関連したドループ利得に依存するように、前記ガバナを構成するステップと、(2)前記ドループ利得の大きさを変化させることにより、前記定常状態周波数応答の大きさを変化させ、該定常状態周波数応答の大きさによって前記エンジン速度ガバナにおけるドループ量を決定するステップと、を含んでもよい。
【0023】
本発明の更に別の態様によれば、スロットルを有する内燃エンジンの速度を制御するための制御システムは、スロットル位置を感知してそれに対応するスロットル位置信号を発生するスロットル位置センサと、エンジン速度を感知してそれに対応するエンジン速度信号を発生するエンジン速度センサと、燃料制御信号に応答して前記エンジンに燃料を供給する燃料供給システムと、エンジン速度制御器と、から成る。前記エンジン速度制御器は、前記スロットル位置信号に応答して、それに対応する基準速度信号を発生する。また、前記エンジン速度制御器は、前記基準速度信号と前記エンジン速度信号とに応答して、それらの間の差に対応する誤差速度信号を決定する。最後に、前記エンジン速度制御器は、前記誤差速度信号に応答して、該誤差速度信号から前記燃料制御信号を発生し、この場合、前記燃料制御信号は、前記誤差速度信号の少なくとも大きさ、期間及び変化率の関数であり、更に、エンジン負荷に比例し、エンジン負荷が増加するにつれて前記エンジン速度が減少するようにしてある。
【0024】
本発明の更に別の態様によれば、内燃エンジンの速度を制御するための制御システムにおいて使用するための可変ドループ電子エンジン速度ガバナは、エンジン速度誤差信号を受ける誤差速度入力と、燃料制御信号を発生する燃料制御出力と、少なくとも1つの極を有する伝達関数を定めるエンジン速度誤差補正部分と、から成る。極の位置を可変とすることにより前記ガバナに可変範囲のドループを与えるようにする。前記エンジン速度ガバナは、前記エンジン速度誤差信号に応答して、前記伝達関数に従って前記燃料制御信号をエンジン燃料供給システムに供給する。更に、前記エンジン速度誤差補正部分は、関連する周波数応答を有し、前記周波数応答の定常状態部分のみの大きさを可変とすることにより、前記エンジン速度ガバナに、それに対応して可変の範囲のドループを与える。この場合、前記エンジン速度ガバナは、前記エンジン速度誤差信号に応答して、前記周波数応答に従って前記燃料制御信号を前記エンジン燃料供給システムに供給する。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の原理の理解を促進する目的で、図面に例示した実施形態を参照し、かつ具体的な記述を用いてこれについて説明する。しかしながら、これによって本発明の範囲を限定するということは意図しておらず、その例示する装置の変更や修正、及びここに例示する本発明の原理の更に別の応用は、本発明が関連する分野の当業者が通常思いつくものである、と考える。
【0026】
ここで図5を参照すると、これは、本発明によるエンジン速度制御システム50の一実施形態を示している。システム50内の構成要素のいくつかは、図1及び図3に関して記述したものと同一であるので、同様の参照番号を用いて同様の構成要素を識別することにする。
【0027】
システム50の中心に位置するのは、制御器52である。この制御器52は、自動車業界において典型的に実施されているタイプの電子制御モジュール(ECM)を代表するものとすることができる。あるいはまた、制御器52は、Intel80196のようなマイクロプロセッサに基ずく制御器、あるいは以下で論じるタイプのエンジン速度制御アルゴリズムを実行可能なプロセッサとしてもよい。いずれにしても、制御器52には電圧Vpwrを給電する。この電圧は、通常、約7.0ないし32.0ボルトの間のバッテリ電圧から直接、又は約3.0ないし7.0ボルトの間の調整電圧を有する電圧レギュレータを介して供給する。
【0028】
好ましくは、制御器52はメモリ部54を含み、これに外部補助メモリ56を補足することもできる。あるいはまた、制御器52にはメモリ部54を設けず、制御器52が必要とする情報を記憶するためには、補助メモリ56を必要とするようにしてもよい。このメモリ構成には関係なく、メモリ部54及び/又は補助メモリ56は、制御器52がアクセス可能なデータ、及び制御器52が実行可能なソフトウエア・アルゴリズムを記憶可能でなければならない。好ましくは、メモリ部54及び/又は補助メモリ56は、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、並びにプログラマブルROM(PROM)、消去可能PROM(EPROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)又はフラッシュPROMのようなリード・オンリ・メモリ(ROM)を含むが、磁気的又は光学的にアクセス可能のメモリのような他のメモリ・タイプも考慮できる。
【0029】
好ましくは、制御器52は更に、アナログ入力を受け、制御器52が用いるためにアナログ信号をデジタル信号に変換するためのアナログ/デジタル(A/D)変換部58を含む。あるいはまた、制御器52にはA/D変換部58を設けずに、制御器52が受ける前に、アナログ信号をデジタル信号に変換するために、外部のA/D変換器62を必要とするようにしてもよい。制御器52は、更に、スロットル位置センサ60からのスロットル位置信号を受けるためのスロットル位置入力(TPI)を有する。スロットル位置信号は、好ましくは、車両の加速ペダル(図示せず)の位置に対応するアナログ信号である。従って、スロットル位置信号は、制御器52による使用のために、A/D部58又は外部A/D変換器62のいずれかによってデジタル信号に変換する。しかしながら、本発明は、更に、スロットル位置センサ60が加速ペダルの位置に対応するデジタル信号を発生し、A/D部58及びA/D変換器62のいずれをも不要とすることも考慮に入れている。
【0030】
エンジン速度制御システム50内では、図1ないし図4に関して記述した、加算ノード14及びPID制御器16のようなエンジン速度ガバナの機能を、制御器52内に備えてある。以下でより詳しく説明するが、ガバナの機能を、制御器52内のソフトウエア・アルゴリズムとして実現して、PI'D機能を提供している。このような構成において、制御器52は、エンジン30内に配置したエンジン速度センサ32からの実際のエンジン速度に対応するエンジン速度信号をエンジン速度入力(ESI)で受ける。スロットル位置信号の場合と同様、エンジン速度信号は、エンジン速度センサ32が発生するアナログ信号である。従って、制御器52は、そのアナログ・エンジン速度信号を制御器52が使用するためのデジタル・エンジン速度信号に変換するためには、第2のA/D部59を必要とする。あるいは、制御器52にはA/D部59を設けずに、第2の補助A/D変換器61を制御器52外に設けてその機能を実行してもよい。最後に、スロットル位置センサ60の場合のように、本発明は、エンジン速度センサ32がデジタル・エンジン速度信号を発生することにより、A/D部59も補助A/D変換器61も不要とする、ということも考慮に入れている。最後に、制御器52は更に出力OUTを有し、調速されたエンジン速度に対応する燃料制御信号55を、エンジン30の燃料供給システム28に供給する。
【0031】
次に図6を参照する。これは、本発明によるエンジン速度制御システム70の別の実施形態を示す。システム70の構成要素の内いくつかは図1、図3及び図5に関して記述したものと同一であるので、同様の番号を用いて同様の構成要素を識別することにする。
【0032】
システム70は、加算ノード78及びPI'D制御器80が制御器72外の構成要素であることを除いて、図5のシステム50とほとんどの点において同一である。従って、制御器72は、入力ESIもA/D部59(又は補助A/D変換器61)も不要であり、加算ノード78に接続した出力OUTを有している。一方、加算ノード78は、PI'D制御器80に接続してあり、そしてこの制御器は、エンジン30の燃料供給システム28に燃料制御信号を供給する。PI'D制御器80(図6)と制御器52(図5)で実行可能なソフトウエア・アルゴリズム内に含むPI'D機能との双方は、以下に詳述するようにその積分部分を修正して全範囲のドループを与えるようにしたことを除いては、図1及び図3のPID制御器16と、多くの点で類似している。あるいはまた、システム70は、制御器72で制御するようにする必要はなく、スロットル位置センサ60からのアナログ出力を直接加算ノード78に供給してもよい。このように構成したシステム70では、純粋にアナログのPI'D制御システムを実現することができる。
【0033】
次に図7のフローチャートを参照して、本発明のエンジン速度制御システム50又は70の動作について、詳しく説明する。図7のフローチャートは、エンジン30のエンジン速度を制御する制御器52又は72のいずれかによって実行可能なソフトウエア・プログラム、即ち、アルゴリズムのフローを表わしている。プログラムの実行はステップ100から開始し、ステップ102で、スロットル位置センサ60が発生するスロットル位置信号を、入力TPIにおいて読み取る。スロットル位置信号がアナログ信号である場合、この信号を、スケーリングする、即ち、A/D部58(又はA/D変換器62)によってデジタル形式に変換する。スロットル位置信号がデジタル信号である場合、A/D部58(又は代わりに、A/D変換器62)を省略し、制御器52(又は72)が単にデジタル・スロットル位置信号を入力TPIにおいて読み取る。プログラムの実行は、ステップ102からステップ104に移行し、ここで、エンジン速度センサ32が発生するエンジン速度信号を読み取る。エンジン速度制御システム50(図5)では、ステップ104は、入力ESIにおけるエンジン速度信号の読み取りに対応する。このエンジン速度信号がアナログ信号である場合、この信号を、スケーリングする、即ち、A/D部59(あるいは代わりに、A/D変換器61)によってデジタル形式に変換する。エンジン速度信号がデジタル信号である場合、A/D部59(あるいは代わりのA/D変換器61)を省略し、制御器52は単に入力ESIにおいてデジタル・スロットル位置信号を読み取る。一方、エンジン速度制御システム70(図6)では、ステップ104は、エンジン速度センサ32からのエンジン速度信号を加算ノード78の負入力において受けることに対応する。
【0034】
プログラムの実行は、ステップ104からステップ106に移行し、ここで、制御器52(又は72)内において、スロットル位置信号を、ある所望エンジン速度に対応する基準速度信号に変換する。好ましくは、この変換を行うために、コンピュータ技術では公知のルックアップ・テーブルを用いる。本質的に、ルックアップ・テーブルは、各デジタル・スロットル位置値に対して、対応するエンジン速度値を収容した相互参照ツール(cross-reference tool)である。
【0035】
ステップ106から、プログラムの実行はステップ108に移行し、ここで、ステップ104からの実エンジン速度を、ステップ106で決定した基準速度から減算して、誤差速度を生成する。システム50(図5)では、実行可能なアルゴリズム動作として、制御器52内でこのステップ108を実行する。しかしながら、システム70(図6)内では、制御器72の出力OUTに基準エンジン速度を与えて、これを加算ノード78の正入力に供給する。従って、システム70では、ステップ108は加算ノード78が自動的に実行することになる。エンジン速度信号は好ましくはアナログ信号であるので、制御器72は、デジタル基準速度をアナログ速度に変換するために、デジタル/アナログ(D/A)変換部77を含む。図6には図示していないが、制御器72にD/A部77を設ける必要はなく、この機能は制御器72外の補助D/A変換器で設けるようにできることは理解されよう。また、この代わりとして、加算ノード78にかかるD/A変換器を含めても良い。
【0036】
プログラムの実行は、ステップ108からステップ110に移行し、ここで、PI'D制御器機能を実行して、誤差速度信号から燃料制御信号を生成する。システム50(図5)では、このPI'D制御器機能は、制御器52内の1つのソフトウエア機能として実行する。システム70(図6)では、PI'D制御器80がこのPI'D機能を実行する。好適なPI'D機能の形式、及びその好適実施形態については、後に更に詳細に説明することにする。
【0037】
次に、プログラムの実行は、ステップ110からステップ112に移行し、ここで、エンジン・トルク・コマンドの形式の燃料制御信号55を、PI'D制御器の出力に発生させる。システム50(図5)では、ステップ112は、出力OUTにおけるエンジン燃料供給システム28へのエンジン・トルク・コマンドの供給に対応している。好ましくは、エンジン・トルク・コマンドはアナログ信号であるので、制御器52は、制御器72と同様に、デジタル/アナログ(D/A)変換部57を含む。しかしながら、制御器52では、D/A変換部57がデジタル・エンジン・トルク・コマンドをアナログ信号に変換する。図5には図示していないが、制御器52にD/A部57を設ける必要はなく、この機能を制御器52外の補助D/A変換器で設けるようにしてもよいことは理解されよう。また、この代わりとして、燃料供給システム28にかかるD/A変換器を含ませて良い。システム70(図6)では、ステップ112は、PI'D80の出力における、エンジン燃料供給システム28への燃料制御信号55の供給に対応している。いずれの場合でも、燃料制御信号55は、燃料供給システム28内の燃料システム・アクチュエータ(図示せず)に指令を出して、PI'Dトルク・コマンドに従ってエンジン30に燃料供給し、これによって、実エンジン速度を制御するようにする。
【0038】
以上のアルゴリズムは、1秒当たり数回実行し、好適実施形態では、20ミリ秒毎に実行する。次に、プログラムの実行は、ステップ112からステップ114に移行し、ここで制御器52(又は72)は、ステップ102から20ミリ秒が経過したか否かを検査する。経過していない場合、アルゴリズムはステップ114に戻る。また、ステップ102以来20ミリ秒が経過したなら、アルゴリズムはループしてステップ102に戻り、そしてこのアルゴリズムを再開する。
【0039】
再び、図7のフローチャートのステップ110を参照して、制御器52(図5)によりソフトウエアとして実行可能あるいはPI'D制御器80(図6)により実行可能なPI'D関数について、これより詳細に説明する。図1及び図3に示したPID制御器のようなPID制御器を用いて全範囲のドループを与えるためには、それらの積分部分を修正して、PID制御器の積分部分に対応する伝達関数の極においてドループ利得を与えるようにする必要がある。こうすることにより、ドループ利得量を変化させるだけで、ドループを変化させることができるようになる。このようにPID制御器16を修正してPI'D制御器80(又は制御器52内で実行可能なPI'D関数)を得る例は、その結果として得られる伝達PI'D関数H3の検討によって、観察することができる。
【0040】
【数4】
3=[4.5(z−0.988)(z−0.882)]/[(z−0.9990)(z−0.366)]
従って、伝達関数H3は、元来z=1にあった極がz=0.9990に移動したことを除いて、伝達関数H1と同じである。PID制御器16を用いる場合のように、PI'D制御器が発生する燃料制御信号は、誤差速度の大きさ(比例)、誤差速度の期間(積分)、及び誤差速度の変化の方向及び率(微分)の関数である。しかしながら、このPI'D制御器は新たに導入したドループ利得を含むので、PI'D制御器が発生する燃料制御信号は、エンジン負荷にも比例し、従って実エンジン速度はエンジン負荷が増加するにつれて減速することになる。
【0041】
本発明のPI'D制御器の結果として得られる周波数応答を、PID制御器16(図1)の周波数応答と共に、図8のA及びBのボード線図に示す。図8のAを参照すると、周波数応答の定常状態部分の大きさ85は、ドループ利得をPID制御器16の積分部分に導入したことによって減少している。尚、“定常状態”とは、本明細書では、約1Hz未満の周波数として定義する。一方、動的周波数応答は、PID制御器16の動的応答36と同じである。ここで、“動的”とは、本明細書では、約1Hzより高い周波数として定義する。同様に、位相応答88(図8のB)も、定常状態においてのみ影響を受けており(正方向に移動)、動的周波数においては、PID制御器16の位相応答38と一致している。ドループ利得を増加させると、積分部分の極を1.0から減少方向に移動させる効果があり、これは更に、定常状態においてのみの周波数応答の大きさを減少させる効果もある。一方、ドループ利得を増加させると、積分部分の極を1.0に向かって移動させる効果があり、これは更に、定常状態においてのみ周波数応答の大きさを増加させる効果もある。従って、PID制御器16の積分部分を修正して、元来z=1にある積分部分の極に関連したドループ利得を与えることによって、新たなPI'D制御器(図6では80、そして図5では制御器52の内部)を形成することになる。その結果として得られたPI'D制御器は、図3の制御システム15(図4のA及びBのボード線図を参照のこと)に対して、付加的なドループ機能を有することになるが、先に述べた高周波数領域において観察されるシステム15の悪影響を受けることはない。PI'D制御器では、積分部分極の位置をz=1.0に近づけるように移動させる(これは、その新たに導入したドループ利得を増加させることに対応)ことにより、ゼロ・ドループを装備して厳格な等時挙動を達成することも可能となる。逆に、積分部分極を1.0から減少するように移動させる(これは、ドループ利得の減少に対応)ことにより、システムの安定性に影響を与えずに、エンジン速度減少のエンジン負荷増大に対する所望の比率を与えることもできる。このように、PI'D制御器を用いることによって、全範囲のドループを実現することができる。
【0042】
次に図9を参照して、PI'D制御器(図6では80、そして図5では制御器52の内部)の内部構造の一実施形態のブロック構成図を示す。PI'D制御器120内では、基準エンジン速度REF SPEEDを遅延ブロック122に供給し、その後加算ノード124の負入力に供給する。加えて、REF SPEEDを、加算ノード124の正入力に供給する。REF SPEEDは更に、利得ブロックKi126に供給する。Ki126は、PID制御器16に関して一般に公知の積分利得に対応する。加算ノード124の出力も同様に、利得ブロックKp128及びKd136に供給する。利得ブロックKp128及びKd136は、これもPID制御器16に関して一般的に公知の、比例利得及び微分利得にそれぞれ対応する。
【0043】
i126及びKp128からの信号は、加算ノード130の正入力に供給する。加算ノード130の出力は、式(K_DROOP+1)/2で定まる利得を有する、利得ブロック132に供給する。ここで、K_DROOPは上記の新たに導入したドループ利得である。ドループ利得ブロック132からの信号は、加算ノード134の正入力に供給する。加算ノード134の出力は、出力加算ノード152の正入力及び遅延ブロック150に供給する。遅延ブロック150の出力は、利得K_DROOPを有するドループ利得ブロック148に供給し、その後加算ノード134の別の正入力に供給する。
【0044】
d利得ブロック136の出力は、式(K_DROOP+1)/2で定まる利得を有する、ドループ利得ブロック138に供給する。このドループ利得ブロック138の出力は、加算ノード140の正入力に供給する。加算ノード140の出力は、出力加算ノード152の別の正入力と、遅延ブロック144とに供給する。遅延ブロック144の出力は、式(K_DROOP−1)で定まる利得を有するドループ利得ブロックに供給し、そしてその後加算ノード134の別の正入力に供給する。更に、遅延ブロック144の出力は、利得ブロック142に供給する。ここで、K_DFLTは、PI'D制御器の微分部分に関連する固定利得である。この利得ブロック142の出力は、加算ノード140の別の正入力に供給する。最後に、加算ノード152の出力は、このPI'D制御器の出力であり、これは、その燃料制御信号を供給して、エンジン30の燃料供給システム28を作動させる。
【0045】
上述のPI'D制御器120は、これまで説明したように、システム50(図5)の制御器52内におけるようなソフトウエア・アルゴリズムとして、又はシステム70(図6)におけるような構成要素のシステムとして、実現することができる。ここで指摘すべきは、利得変数K_DROOPが1.0に等しいとき、等時性PID制御器16の標準的な実装が生ずることである。同様に、利得変数K_DROOPが0と1の間にあるとき、本発明の可変ドループ・エンジン速度制御器が得られる。
【0046】
公知のシステム方程式及び技術を用いると、PI'D制御器120の伝達関数H4は、以下の式で与えることができる。
【0047】
【数5】
4=[(K_DROOP+1)/2][(Kp+Ki+Kd)z2+(−Kp(K_DFLT+1)−KiK_DFLT−2Kd)z+(KpK_DFLT+Kd)]/[(z−K_DFLT)(z−K_DROOP)]
この伝達関数H4において、新たに導入したドループ利得に対応する利得項K_DROOPは、分子の多項式内に現れないので、ゼロ点の位置付けには影響を与えないことを注記しておく。更に、2つの極がK_DFLT及びK_DROOPに位置するので、K_DROOPを変化させた場合、一方の極のみが変化する。2つのゼロ点は各々、Kp,Ki,Kd及びK_DFLTの関数である。図9に示したように、PI'D制御器120を実現することによって、残りの利得Kp,Ki,Kd及びK_DFLTによって得られる動的補償に影響を与えることなく、定常状態利得を可変にするという目的を達成することができる。
【0048】
本発明について、図面及び以上の記述によって図示し説明したが、これらは例示的であり限定的な性質ではないものと考えるべきであり、従って好適実施形態を単に示し説明したのであって、本発明の精神の範疇に入る変更や修正は全て保護されるよう希望していることは理解されよう。例えば、図9に示したPI'D制御器の実現例120は、本発明によるPI'D制御器の一実施形態を表わしたものであり、当業者は、上述の概念を実現することによって代替実施形態を容易に構成可能であることを認めよう。従って、PI'D制御器の実施形態120は単に本発明の概念を表わすに過ぎないものとして理解すべきである。また別の例として、ここに記述したPI'D制御器は、図面には示さなかったが、特定の車両及びエンジンの動作状態に基づいてドループを変化させるシステムにも使用可能である。このようなものも、本発明の精神に含まれるものと考える。更に別の例として、積分部分の極が1より大きくなるように(z>1)、ドループ利得K_DROOPを増加させることも可能である。従って、本発明のPI'D制御器によって“負”ドループを与え、エンジン負荷の増加に従って、定常状態エンジン速度を上昇させることも可能である。本発明のPI'D制御器を用いれば、正値及び負値の全範囲にわたるドループを与えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】PIDガバナを組み込んだ従来技術の等時性エンジン速度制御システムのブロック構成図である。
【図2】A及びBで構成され、これらは、図1のエンジン速度制御システムの周波数応答を示すプロットである。
【図3】図1のものに類似した従来技術の等時性エンジン速度制御システムに可変ドループ機能を付け加えたもののブロック構成図である。
【図4】A及びBで構成され、これらは、図3のエンジン速度制御システムの周波数応答を示すプロットである。
【図5】本発明による可変ドループ・エンジン速度制御システムの一実施形態のブロック構成図である。
【図6】本発明による可変ドループ・エンジン速度制御システムの別の実施形態のブロック構成図である。
【図7】図5又は図6のエンジン速度制御システムに従ってエンジン速度を制御するためのアルゴリズムを示すフロー・チャートである。
【図8】A及びBで構成され、これらは、図5又は図6のいずれかのエンジン速度制御システムの周波数応答を示すグラフである。
【図9】図5又は図6のいずれかのエンジン速度制御器の内部構造の一実施形態を示すブロック構成図。
【符号の説明】
14 加算ノード
16 PID制御器
28 燃料供給システム
30 エンジン
32 エンジン速度センサ
50 エンジン速度制御システム
52 制御器
54 メモリ部
56 外部補助メモリ
58,59 アナログ/デジタル(A/D)変換部
60 スロットル位置センサ
61 第2の補助A/D変換器
62 外部A/D変換器
70 エンジン速度制御システム
78 加算ノード
80 PI'D制御器
120 PI'D制御器
122 遅延ブロック
124,130,134,140 加算ノード
126 利得ブロックKi
128 利得ブロックKp
132 利得ブロック
136 利得ブロックKd
138 ドループ利得ブロック
142 利得ブロック
144,150 遅延ブロック
148 ドループ利得ブロック
152 出力加算ノード

Claims (19)

  1. スロットル位置を感知するスロットル位置センサと、実エンジン速度を感知するエンジン速度センサと、燃料制御信号に応答して前記エンジンに燃料を供給する燃料供給システムとを有する内燃エンジンのエンジン速度制御方法であって、
    (1)スロットル位置を感知し、該スロットル位置から所望のエンジン速度を決定するステップと、
    (2)実エンジン速度を感知するステップと、
    (3)前記所望のエンジン速度と前記実エンジン速度との間の差として誤差速度を判定するステップと、
    (4)前記誤差速度の少なくとも大きさ、期間及び変化率の関数である燃料制御信号を、前記誤差速度から生成するステップであって、前記燃料制御信号は更にエンジン負荷に比例して、エンジン負荷の増加につれて前記実エンジン速度が減少するようにする前記燃料制御信号を生成するステップと、及び
    (5)前記燃料制御信号に従って前記エンジンに燃料を供給することにより、前記実エンジン速度を制御するステップと、
    から成るエンジン速度制御方法。
  2. 請求項1記載の方法において、前記ステップ(4)は、
    (4)(a)少なくとも1つの極を有する速度誤差補正関数を与えるステップと、
    (4)(b)前記速度誤差補正関数を前記誤差速度に適用して、前記燃料制御信号を生成するステップと、及び
    (4)(c)前記速度誤差補正関数の極を、エンジン速度減少のエンジン負荷増加に対する所望の比を与える位置に配置するステップと、
    を含むこと、を特徴とするエンジン速度制御方法。
  3. 請求項記載の方法において、前記ステップ(4)は、
    (4)(a)所定の周波数応答を有する利得関数を与えるステップと、
    (4)(b)前記利得関数を前記誤差速度に適用して、前記燃料制御信号を生成するステップと、及び
    (4)(c)前記利得関数の定常状態利得のみを調節して、エンジン速度減少のエンジン負荷増加に対する所望の比率を与えるステップと、
    を含むこと、を特徴とするエンジン速度制御方法。
  4. 電子エンジン速度ガバナにおいて可変ドループを発生する方法であって、前記ガバナは、これに関連する比例部分、積分部分及び微分部分を有し、かつ該比例部分、積分部分及び微分部分の関数である伝達関数を有しており、前記方法が、
    (1)前記ガバナの伝達関数が前記積分部分に関連する1つの極を有するように前記ガバナを構成するステップと、
    (2)前記積分部分に、前記積分部分の極に関連したドループ利得を与えるステップと、及び
    (3)前記ドループ利得の大きさを変化させることによって、前記積分部分の極の位置を変化させ、前記積分部分の極の位置によって前記エンジン速度ガバナのドループ量を決定するステップと、
    から成る可変ドループ発生方法。
  5. 請求項4記載の方法において、前記ステップ(1)は、前記ガバナの伝達関数が前記微分部分に関連した別の極を有するように前記ガバナを構成すること、を含むこと、を特徴とする可変ドループ発生方法。
  6. 請求項5記載の方法において、前記ステップ(1)の後に、
    (1)(a)前記微分部分の極に関連する固定利得を前記微分部分に与えるステップを含むこと、を特徴とする可変ドループ発生方法。
  7. 請求項6記載の方法であって、前記ステップ(1)は、更に、前記ガバナの伝達関数が、前記比例部分、積分部分及び微分部分の組み合わせに関連する少なくとも2つのゼロ点を有するように、前記ガバナを構成すること、を含むこと、を特徴とする可変ドループ発生方法。
  8. 請求項7記載の方法であって、前記ステップ(1)(a)の後に、更に、
    (1)(b)前記比例部分に比例利得を与えるステップと、
    (1)(c)前記積分部分に積分利得を与えるステップと、
    (1)(d)前記微分部分に微分利得を与えるステップと、
    を含み、前記伝達関数のゼロ点は、各々、前記比例利得、積分利得、微分利得及び固定利得の関数であること、を特徴とする可変ドループ発生方法。
  9. 比例部分、積分部分及び微分部分を有する電子エンジン速度ガバナにおいて可変ドループを発生する方法であって、前記ガバナはこれに関連する周波数応答を有しており、前記方法が、
    (1)前記ガバナの定常状態周波数応答のみの大きさが、前記積分部分に関連したドループ利得に依存するように、前記ガバナを構成するステップと、
    (2)前記ドループ利得の大きさを変化させることにより、前記定常状態周波数応答の大きさを変化させ、該定常状態周波数応答の大きさによって前記エンジン速度ガバナにおけるドループ量を決定するステップと、
    から成る可変ドループ発生方法。
  10. 請求項9記載の方法において、前記ステップ(1)は、更に、動的周波数応答の大きさが、少なくとも、前記比例部分に関連する比例利得と、前記積分部分に関連する積分利得と、前記微分部分に関連する微分利得との関数となるように、前記ガバナを構成すること、を含むこと、を特徴とする可変ドループ発生方法。
  11. スロットルを有する内燃エンジンの速度を制御するための制御システムであって、
    スロットル位置を感知し、該スロットル位置に対応するスロットル位置信号を発生するスロットル位置センサと、
    エンジン速度を感知し、該エンジン速度に対応するエンジン速度信号を発生するエンジン速度センサと、
    燃料制御信号に応答して、前記エンジンに燃料を供給する燃料供給システムと、及び
    前記スロットル位置信号に応答して、該スロットル位置信号に対応する基準速度信号を発生するエンジン速度制御器であって、該制御器は、前記基準速度信号と前記エンジン速度信号とに応答して、これら速度信号間の差に対応する誤差速度信号を決定し、前記制御器は、更に前記誤差速度信号に応答して、該誤差速度信号から、前記燃料制御信号であって、前記誤差速度信号の少なくとも大きさ、期間及び変化率の関数であり、更に、エンジン負荷が増加するにつれて前記エンジン速度が減少するようにエンジン負荷に比例する前記の燃料制御信号を生成する、前記エンジン速度制御器と、
    から成る制御システム。
  12. 請求項11記載の制御システムにおいて、前記エンジン速度制御器は、比例部分と、積分部分と、微分部分とを含み、前記比例部分、積分部分及び微分部分がエンジン速度制御器の伝達関数を定めること、を特徴とする制御システム。
  13. 請求項12記載の制御システムにおいて、前記伝達関数は前記積分部分のみに対応する1つの極を有し、
    更に、前記積分部分は、前記積分部分の極に関連したドループ利得を含むこと、
    を特徴とする制御システム。
  14. 請求項13記載の制御システムにおいて、前記ドループ利得を可変とすることによって、前記積分部分の極の位置を変化させ、
    更に、前記積分部分の極の位置が、エンジン負荷の増加に対するエンジン速度の減少量を決定すること、
    を特徴とする制御システム。
  15. 請求項14記載の制御システムにおいて、前記エンジン負荷の増加に対するエンジン速度の減少量は、エンジン速度減少対エンジン負荷増加の比率を定め、
    更に、前記比率は、前記ドループ利得の減少につれて増加すること、
    を特徴とする制御システム。
  16. 内燃エンジンの速度を制御するための制御システムにおいて使用するための可変ドループ電子エンジン速度ガバナであって、
    エンジン速度誤差信号を受ける誤差速度入力と、
    燃料制御信号を発生する燃料制御出力と、及び
    少なくとも1つの極を有する伝達関数であって、該極の位置を可変とすることにより前記ガバナに可変範囲のドループを与える前記の伝達関数を定めるエンジン速度誤差補正部分と、
    から成り、
    前記エンジン速度ガバナは、前記エンジン速度誤差信号に応答して、前記伝達関数に従って前記燃料制御信号をエンジン燃料供給システムに供給すること、
    を特徴とする可変ドループ電子エンジン速度ガバナ。
  17. 請求項16記載の可変ドループ電子エンジン速度ガバナにおいて、前記エンジン速度誤差補正部分は、
    比例利得を有する比例部分と、
    積分利得とドループ利得とを有する積分部分と、
    微分利得と補助利得とを有する微分部分と、
    を含み、
    前記伝達関数の極を前記ドループ利得にのみ関連させて、前記ドループ利得の大きさを変化させることによって前記極の位置を変化させるようにしたこと、
    を特徴とする可変ドループ電子エンジン速度ガバナ。
  18. 内燃エンジンの速度を制御するための制御システムにおいて使用するための可変ドループ電子エンジン速度ガバナであって、
    エンジン速度誤差信号を受ける誤差速度入力と、
    燃料制御信号を発生する燃料制御出力と、
    周波数応答を有するエンジン速度誤差補正部分であって、前記周波数応答の定常状態部分のみの大きさを可変とすることにより、前記エンジン速度ガバナに、それに対応して可変の範囲のドループを与える、前記エンジン速度誤差補正部分と、
    から成り、
    前記エンジン速度ガバナは、前記エンジン速度誤差信号に応答して、前記周波数応答に従って前記燃料制御信号をエンジン燃料供給システムに供給すること、
    を特徴とする可変ドループ電子エンジン速度ガバナ。
  19. 請求項18記載の可変ドループ電子エンジン速度ガバナにおいて、前記エンジン速度誤差補正部分は、
    比例利得を有する比例部分と、
    積分利得とドループ利得とを有する積分部分と、
    微分利得と補助利得とを有する微分部分と、
    を含み、
    前記周波数応答の前記定常状態部分前記ドループ利得とのみ関連させて、前記ドループ利得の大きさを変化させることによって前記定常状態周波数応答を変化させること、
    を特徴とする可変ドループ電子エンジン速度ガバナ。
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