JP3662237B2 - キノコ栽培用培地、キノコ栽培用培地の製造方法、菌床、及び、キノコ生産方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、キノコ栽培用培地に関する。
【0002】
【従来の技術】
シルバースキン(銀皮)とは、コーヒー豆を包み込んでいる薄皮のことをいう。コーヒーの果実は植物学的には核果であり、図1に示すように、コーヒー果実100は、外側から中心に向かって、外皮101、果肉102、内果皮(パーチメント)103、シルバースキン104、種子105の順に配置されている。前記種子105は、胚と前記胚を包囲している胚乳とを有しており、1つコーヒー果実100の中に互いに向き合うようにして配置されている。コーヒー果実100が成熟するにつれて、前記胚乳の互いに向かい合う側の平面部が窪んで胚乳内部側に折り込まれてゆき、この平面部の中央にセンターカット106と呼ばれる溝が形成される。
前記コーヒー果実100の、果肉102と内果皮103との間、内果皮103とシルバースキン104との間、シルバースキン104と胚乳との間、及び、センターカット106の隙間には、粘質物が詰まっている。
これらの種子の外側の部分を取り除いたものが生豆であり、コーヒー果実から生豆を取り出す操作を精製という。
【0003】
前記精製の方法には、主に2種の方法が知られていて、一方は乾式法と呼ばれ、他方は湿式法と呼ばれる。
前記乾式法では、収穫したコーヒー果実100を乾燥場で平らに広げて天日乾燥又は機械乾燥させる。乾燥したコーヒー果実100は脱穀機で磨かれて、外皮101、果肉102、内果皮103及びシルバースキン104を含む殻が除かれ、生豆が得られる。
前記湿式法では、収穫したコーヒー果実100を水槽に浸漬して、沈んだ完熟果100を選別する。前記完熟果100は、果肉除去機で外皮101と果肉102とが除かれた後、発酵層で発酵させて残った果肉102や粘質物を分解する。発酵が終了した後、数回水を替えながら完熟果を洗浄し、天日乾燥又は機械乾燥させる。このようにしてまだ内果皮103が付着しているパーチメントコーヒーが得られる。このパーチメントコーヒーを脱穀機で磨くと生豆が得られる。
【0004】
上述したような精製を経て、前記生豆の外側を包んでいるシルバースキン104の大部分は除去される。しかしながら、前記センターカット106の部分に入り込んだシルバースキン104は、精製で除かれることなく生豆に付着したままであることが多い。
生豆を焙煎すると、豆の体積が膨張し、又、水分も減ずるため、生豆に付着したシルバースキン104は豆から剥離する。剥離したシルバースキン104は、焙煎機から送り出される熱風に吹き飛ばされて、一箇所に留められて回収される。
【0005】
このようにして回収されたシルバースキン104は、再生紙の原料(例えば、非特許文献1、2参照。)、家畜の敷き藁の代替品や堆肥(例えば、非特許文献2〜4参照。)、土壌改良剤として利用されている。
【0006】
【非特許文献1】
“2001年キーコーヒー環境報告書 9.その他の環境保全活動”、[online]、キーコーヒー株式会社、[平成14年11月18日検索]、インターネット<URL:http://www.keycoffee.co.jp/annai/en2001/en_9.html>
【非特許文献2】
“2000年キーコーヒー環境報告書 7.環境保全活動”、[online]、キーコーヒー株式会社、[平成14年11月18日検索]、インターネット<URL:http://www.keycoffee.co.jp/annai/en2000/en_7.html>
【非特許文献3】
“2000年キーコーヒー環境報告書 6.工場の活動実績”、[online]、キーコーヒー株式会社、[平成14年11月18日検索]、インターネット<URL:http://www.keycoffee.co.jp/annai/en2000/en_6.html>
【非特許文献4】
“まきばからこんにちは”、[online]、磯沼ミルクファーム、[平成14年11月18日検索]、インターネット<URL:http://www.ruralnet.or.jp/asunaro/makiba/konnichiwa/konback010.html>
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前掲したような用途で利用されるシルバースキンは、回収されたものの一部に過ぎない。シルバースキンのほとんどは、産業廃棄物として処分されているのが現状である。
【0008】
従って、本発明の目的は、上記問題点に鑑み、シルバースキンを有効利用するための技術を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するための本発明に係るキノコ栽培用培地の第1特徴構成は、請求項1に記載してあるように、基材にシルバースキンを含む点にある。
又、この目的を達成するための本発明に係るシルバースキンを含むキノコ栽培用培地の製造方法の特徴手段は、請求項2に記載してあるように、シルバースキンに含まれる可溶性固形分の少なくとも一部を水抽出する洗浄処理を施す洗浄工程を有する点にある。
更に、上記特徴手段において、請求項3に記載してあるように、前記可溶性固形分の少なくとも一部がポリフェノールであることが好ましい。
更に、上記特徴手段において、請求項4に記載してあるように、下記数2に示す関係式を使用して前記可溶性固形分量を算定する算定工程を有していてもよい。
【0010】
【数2】
y = 8.2257 × x − 0.4916
x:洗浄工程で発生した洗浄廃液の420nmにおける吸光度
y:前記洗浄廃液中の可溶性固形分濃度(重量%)
【0011】
又、この目的を達成するための本発明に係るキノコ栽培用培地の第2特徴構成は、請求項5に記載されているように、請求項2〜4の何れか1項に記載されたキノコ栽培用培地の製造方法を用いて製造され、前記可溶性固形分の少なくとも一部が抽出されている点にある。
更に、上記第1又は第2特徴構成において、請求項6に記載されているように、前記シルバースキン由来の可溶性固形分が培地全体の0.6%以下であることが好ましく、更に好ましくは、請求項7に記載されているように、前記シルバースキン由来の可溶性固形分が培地全体の0.2%以下である。
又、この目的を達成するための本発明に係る菌床の特徴構成は、請求項8に記載してあるように、その水分含有率が60〜70%であり、請求項1又は5〜7の何れか1項に記載のキノコ栽培用培地を含む点にある。
又、この目的を達成するための本発明に係るキノコ生産方法の特徴手段は、請求項9に記載してあるように、請求項1又は5〜7の何れか1項に記載のキノコ栽培用培地又は請求項8に記載の菌床を用いる点にある。
更に、請求項10に記載されているように、上記特徴手段において、前記キノコがヒラタケ属のキノコであることが好ましい。
そして、これらの作用効果は、以下の通りである。
【0012】
本願発明者らは、鋭意研究を行なった結果、シルバースキンの含水率及び保水率が非常に高いことを見出した。そして、発明者らは、このようなシルバースキンの性質が適した用途について検討した結果、キノコ栽培用培地(菌床)という新たな用途に非常に適していることを見出し、本願発明に想到するに至った。
即ち、請求項1に記載してあるように、キノコ栽培用培地の基材にシルバースキンを含ませると、前記キノコ栽培用培地を含んで形成される菌床の保水性が良くなるので給水頻度や給水量を減らすことができ、キノコの栽培労力やコストを削減することができる。又、従来基材として用いられてきたおが屑は、近年、供給が不足しており、価格が高い。請求項1に係るキノコ栽培用培地を用いることによって、キノコ栽培用培地を安価に、且つ、安定して供給することができる。更に、このシルバースキンはレギュラーコーヒー豆製造時に得られる廃棄物であるので、再利用することによって廃棄物削減に貢献する。
加えて、例えば、ビン等の容器に基材や栄養分等となる材料(内容物)を入れて作製するタイプの菌床では、前記容器の壁面と前記内容物との間には実質的に子実体が発生するような隙間ができないようにし、前記容器の開口部側からキノコの子実体が生長するように形成される。しかしながら、このように形成した菌床が乾燥すると、前記容器の壁面と前記内容物との間に空間が生じ、更にここにキノコの子実体が形成されることがある。このようになったキノコの株は、商品として出荷することが難しくなる。ここで、請求項1に記載してあるように、キノコ栽培用培地の基材にシルバースキンを含ませると、前記キノコ栽培用培地を含んで形成される菌床の保水性が良くなり、容器の中の内容物の形状が乾燥によって変形するのを防ぐことができる。これによって、前記菌床の管理が容易になり、且つ、商品として出荷されるキノコ子実体の歩留まりが良くなる。
【0013】
ところが、シルバースキンを含んだキノコ栽培用培地では、菌床のメンテナンスは容易になるが、キノコの種類によっては若干生育が遅くなることがあるのがわかった。発明者らは、その原因について鋭意研究した結果、シルバースキンの可溶性固形分に発育阻害活性があることを見出した。そこで、シルバースキンを含むキノコ栽培用培地の製造するにあたって、請求項2に記載してあるように、洗浄工程を設けて、シルバースキンに含まれる可溶性固形分の少なくとも一部を水抽出する洗浄処理を施すと、単位容積(又は重量)のシルバースキン当たりのキノコ生長阻害活性を低減することができ、子実体収量を増加させたり栽培日数を短縮したりすることができる。又、キノコ栽培用の培地にシルバースキンを高比率で配合することができるので、前記シルバースキンを有効に、特に大量に、利用することができる。
【0014】
更に、発明者らは、前記可溶性固形分に含まれる成分のうち、どの成分がキノコ菌糸の伸長や子実体形成の阻害に関与するか検討した。その結果、シルバースキンにポリフェノールが含まれることを見出した(表1参照)。タンニン等のポリフェノールは、一般的に抗菌作用を有すると考えられており、キノコの生育をも阻害する可能性がある。図12(b),(c)に示すように、前記洗浄処理を施す際に得られる洗浄廃液中の可溶性固形分濃度とポリフェノール濃度との間に明らかに相関性があり、前記可溶性固形分によるキノコ発育阻害の一因として、ポリフェノールの存在が関わっている可能性がある。
従って、請求項3に記載してあるように、前記可溶性固形分の少なくとも一部としてポリフェノールが抽出除去されることによって、単位容積(又は重量)のシルバースキン当たりのキノコ生長阻害活性を低減することができると考えられる。これによって、キノコ栽培用の培地にシルバースキンを高比率で配合することができる。従って、前記シルバースキンを有効に、特に大量に、利用することができる。
【0015】
ここで、本願発明者らは、下記数3に示すように、前記洗浄工程においてシルバースキンの洗浄に使用した洗浄廃液の420nmにおける吸光度が、前記シルバースキンから抽出されて前記洗浄廃液に移行した前記可溶性固形分の濃度と非常高い相関関係にあることを見出した(図12(a)参照)。
【0016】
【数3】
y = 8.2257 × x − 0.4916
x:洗浄工程で発生した洗浄廃液の420nmにおける吸光度
y:前記洗浄廃液中の可溶性固形分濃度(重量%)
【0017】
よって、請求項4に記載してあるように、前記添加工程より先に算定工程を設けて、この算定工程において、前記数3に示す関係式を使用すること、前記可溶性固形分量を算定することができる。この方法で前記可溶性固形分を定量すると、わざわざ洗浄廃液を乾燥させて抽出された前記可溶性固形分の重量を測定する等の必要が無くなる。従って、容易に且つ迅速に前記シルバースキンの可溶性固形分除去を行うことができる。
【0018】
従って、請求項5に記載してあるように、請求項2〜4の何れか1項に記載されたキノコ栽培用培地の製造方法を用いて製造される、前記可溶性固形分の少なくとも一部が抽出されたシルバースキンを含むキノコ栽培用培地は、菌床の保水性・形状保持やキノコ子実体形成を確保し、且つ、シルバースキンを高比率で配合することができるものである。
【0019】
更に、請求項6に記載してあるように、前記シルバースキン由来の可溶性固形分が培地全体の0.6%以下であるキノコ栽培用培地を用いることによって、多くの種のキノコにおいて、菌糸の伸長や子実体の収量が良好であり、少なくとも従来のおが屑を用いた培地と同程度となる。
尚、「培地」とは、基材のみからなるもの、前記基材に固形分(例えば、基材、栄養分等)を混合したもの、前記基材に前記固形分を混合し更に水を添加して菌床形成の前段階まで調製したものをも含み、水を添加した後の培地で0.6%以下となるようにする。
【0020】
又、請求項7に記載してあるように、前記シルバースキン由来の可溶性固形分が培地全体の0.2%以下とすることによって、更に多くの種のキノコにおいて、菌糸の伸長や子実体の収量が良好であり、少なくとも、従来のおが屑を用いた培地と同程度となる。
【0021】
又、請求項8に記載してあるように、その水分含有率が60〜70%である請求項1又は5〜7の何れか1項に記載のキノコ栽培用培地を含む菌床は、キノコ子実体の形成に適した培地(環境)を提供することができる。
ここで、キノコの人工栽培の際には、培地を固めて成形し、又は、培地を容器に詰めた後に、滅菌して「菌床」を作成するので、本発明の「培地」の一形態の組成と「菌床」の組成とは、ほぼ等しいと解する。
【0022】
更に、請求項9に記載されているように、請求項1又は5〜7の何れか1項に記載のキノコ栽培用培地又は請求項8に記載の菌床を用いてキノコを生産すると、高価で貴重なおが屑を基材とした従来の培地と比べて、非常に低いコストで得られ、且つ、資源(おが屑)利用を抑制することができる。
【0023】
更に、請求項10に記載されているように、前記キノコがヒラタケ属のキノコであると、例えば、図16に示すヒラタケや図17に示すエリンギように、未洗浄のシルバースキンを用いた場合であっても、おが屑を用いた場合よりキノコ子実体収量を増加させることができる。さらには、前記シルバースキンに洗浄処理を施すことによって、おが屑を用いた場合と比べて、キノコ子実体収量を大幅に増加させることができる。
【0024】
尚、請求項1、5〜7のキノコ栽培用培地や請求項8の菌床を用いて栽培したキノコ子実体は、いずれの場合においても、味、香り、肉質等の食感は、従来のキノコ栽培用培地(基材としておが屑を使用)と変わるところはなく(実施例参照。)、従来のキノコ培養用培地と同じ品質を保持することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図2は、シルバースキンを用いたキノコ栽培のフローを示す。本発明は、例えば、非限定的に、ヒラタケ、ブナシメジ、タモギタケ、エリンギ、マイタケ、シイタケ、エノキタケ、ナメタケ等の人工栽培が可能な食用キノコの栽培に適しているが、その適用範囲は食用キノコの栽培に限定されない。好ましくは、おが屑を基材として生育可能なキノコの栽培において、前記おが屑の少なくとも一部と置換して利用する。特に、ヒラタケの栽培に使用することによって、栽培期間の短縮、収量(培地重量ベース)の増加をもたらすので好ましい。
【0026】
シルバースキンは、レギュラーコーヒーの製造の際に回収されたものを使用することができ、コーヒー焙煎工場でのコーヒー豆焙煎作業にて排出される、例えば、チャフプッシャーに回収されるシルバースキンを使用することができる。
【0027】
前記シルバースキンは、洗浄によって、可溶性固形分の少なくとも一部を除去したものを使用することができる。この洗浄によって、可溶性固形分の中でも、特に、ポリフェノールを除去することが好ましい。洗浄方法(ポリフェノールを含む可溶性固形分の除去方法)としては、これに限定されるものではないが、例えば、図3に示すように、シルバースキンに水(ここでは熱水であるが、常温水でもよい。)を添加し(S1)、更に一定時間(例えば、10分〜24時間であるが、これに限定されるものではない)、このシルバースキンを前記熱水に浸漬し(S2)、前記シルバースキンに含まれる可溶性固形分を抽出することができる。この後、前記熱水(洗浄廃液)を排出して、必要に応じて脱水する(S3)。これらの工程(S1〜S3)は、前記シルバースキンに残存する前記可溶性固形分が所定量(例えば、水分含量2.5%の前記シルバースキンに対して重量比で2.0%以下であるが、これに限定されるものではない)に減少するまで繰り返され、洗浄処理済のシルバースキンが得られる。
【0028】
ここで、下記数4に示す式を用いて、前記洗浄廃液に含まれる可溶性固形分含有率を、簡単に算定することができる。
【0029】
【数4】
y = 8.2257 × x − 0.4916
x:洗浄廃液の420nmにおける吸光度
y:洗浄廃液中の可溶性固形分濃度(重量%)
【0030】
そして、下記数5に示す式を用いると、前記シルバースキンから除去された可溶性固形分の比率を算出することができる。
【0031】
【数5】
f=y÷100×b÷e×100
f:洗浄によってシルバースキンから除去された可溶性固形分(シルバースキンに対する重量%)
e:洗浄したシルバースキンの重量(kg)
b:洗浄に使用した熱水量(kg)
【0032】
又、別途、洗浄廃液から褐色が観察されなくなるまで洗浄を繰り返して(例えば、20倍量の熱水で1時間還流抽出であるが、これに限定されるものではない)、前記シルバースキンに含まれる全可容積固形分濃度(d)を算出する。そして、a%のシルバースキンと水分と、必要に応じて栄養分とを含む培地を想定した場合、下記数6に示す式を満たすと、培地全体に対する可溶性固形分の存在比をA%以下にすることができる。
【0033】
【数6】
a÷100×(d−f) ≦ A
a:培地中のシルバースキンの存在比率(重量%)
A:培地全体に対する可溶性固形分の存在比率(重量%)
【0034】
ここで、培地全体に対する可溶性固形分の存在比率Aを0.6(%)とする場合を想定すると、上記数4〜6に示す式に基づいて、プールした洗浄廃液の吸光度が下記数7に示す関係を満たすとき、培地全体に対する可溶性固形分の存在比を0.6%以下にすることができる。
【0035】
【数7】
【0036】
尚、前記吸光度を用いた可溶性固形分濃度の算定は、洗浄廃液を交換するごとに行ってもよく、或いは、すべての洗浄廃液を一旦プールしてこのプールした液の吸光度を測定して行ってもよい。
【0037】
洗浄処理を施していないシルバースキン又は前記洗浄済シルバースキン(以下、両者の何れか又は双方を指す場合、「シルバースキン材料」という。)を、水分とそれ自身、又は、必要に応じて更に他の培地材料と組み合わせることによって培地を形成する(S4)。培地は、主に、水分、基材、栄養分からなる。但し、販売形態においては、実質的に基材のみからなるもの又は基材と栄養分との混合物が「培地」と称される場合もあるであろう。水分は、キノコ(菌糸体及び子実体)の形成に重要な要因である。前記基材は、菌床の形状維持、保水などのために要する。通常は、おが屑を使用するが、これに代えて、本発明においては、前記シルバースキン材料単独、又は、おが屑等の他の材料と前記シルバースキン材料とを混合して用いる。栄養分は、前記菌糸体や子実体の伸長のために必要である。米ぬかが用いられることが多い。他にも、これらに限定されるものではないが、フスマ、おから、コーンブラン、ビートパルプ、又はモルトフィード等を用いることができる。キノコ栽培用培地は、例えば、pH5〜7、水分を60〜70%、前記栄養分を0〜20%、前記基材を40〜10%含む様に構成することができる。
【0038】
ここで、前記基材となる成分を分解し栄養分とするキノコもあるので、前記基材と前記栄養分とはその機能によって区別されるものであって、成分によって区別されるものではない。よって、キノコの種類によっては、前記米ぬか等の一般的な栄養分を添加しないで、前記シルバースキン材料を栄養分及び基材とする培地を調製することができる。
【0039】
前記培地中(或いは菌床中)の前記可溶性固形分比率(重量%)は、特に規制されるものではないが、例えば、0.6%以下とすることで、多くの種のキノコにおいて、菌糸生長と子実体収量とを、少なくともおが屑を用いた場合と同程度にまで維持することができる。更に、好ましくは、前記培地中(或いは菌床中)の前記可溶性固形分比率(重量%)を、0.2%以下とすることで、更に多くの種のキノコにおいて、菌糸生長と子実体収量とを、少なくともおが屑を用いた場合と同程度にまで維持することができる。
【0040】
このようにして調製した培地は、それ自身を固めて、或いは、ビン等の容器に詰められ、菌床を形成する。そして、殺菌される(S5)。前記容器としては、例えば、ガラス、ポリプロピレン等を用いて、オートクレーブ殺菌(約121℃)することができる。殺菌後冷まして、前記菌床に、食用キノコの種菌を接種する(S6)。
【0041】
種菌を接種した菌床内で菌糸が伸長しビン内に菌糸が張り巡らされたら(菌回り、S7)、菌糸に栄養を吸収させるために熟成させる(S8)。熟成後、菌床表面の菌糸膜を掻きとり(菌掻き)、温度を低温側に移行して子実体発芽を促す(S9)。子実体が生育し(S10)、所定の大きさになったら、採取し(S11)、梱包等をした後に出荷する(S12)。
【0042】
尚、おが屑に代えて前記シルバースキン材料を使用する以外には、原則的には、通常のキノコ栽培方法の操作手順と異なるところはない。従って、各ステップにおける水分・湿度・温度管理等は、通常のキノコ栽培の条件を使用することができ、栽培対象菌によって、適宜改変することができる。これらの条件の具体例は、下記実験例に示されている。
【0043】
【実施例】
ユーシーシー上島珈琲株式会社の工場において、レギュラーコーヒーを製造した際に排出されたシルバースキンを、以下の試験に供した。
尚、レギュラーコーヒー製造ラインから排出された直後の状態の前記シルバースキンは、2.5%程度の水分を含んでいた。
【0044】
〔保水性試験〕
このシルバースキンの保水性について、他の素材と比較検討した。前記他の素材として、焙煎コーヒー豆を熱水抽出して残ったコーヒー抽出残渣(UCC上島珈琲株式会社兵庫総合工場から排出されたコーヒー抽出残渣、広葉樹おが屑(市販品のブナおが屑)、針葉樹おが屑(市販品のスギおが屑)、及び、ふすまを用いた。試験方法は、「鳥取木工研」(26、1997年、4〜12頁、高畠幸司)を参考にした。具体的には、上記素材を所定の含水率(水を含んだ状態での各素材の重量に対する、含有される水分重量の比で表される)に調整し、遠心処理(2500rpm(3000×g)、10分)を施し、前記遠心処理前に素材が保持していた水分量に対する前記遠心処理後に素材が保持していた水分量(%)の比率を保水率とした。
【0045】
図4は、前述した夫々の素材における、前記保水率と前記含水率とを示すグラフである。従来のキノコ培養用培地に用いられていたコーヒー抽出残渣、広葉樹おが屑、針葉樹おが屑、及び、ふすまと比較して、シルバースキンは高い含水率にまで水分を含ませることができた。しかも、高含水率において、前述した他の素材と比べて、シルバースキンは非常に高い保水率を保っていた。
【0046】
シルバースキンの高い保水性がキノコ栽培用培地として利用する際に影響を与えるか否かについて、菌床モデルを作製して試験した。具体的な手順は,以下の通りである。
未洗浄シルバースキン:米ぬか(栄養源)=7:3(重量比)で、水分含有率が70%の培地を作成した。この培地を200ml容耐熱ガラス瓶に100g充填し、薬包紙で前記耐熱ガラス瓶の口を覆って、121℃で15分間オートクレーブ殺菌して、菌床(pH5.5)を作製した。恒温恒湿器(LH−20 11M、ナガノ科学)内で、この菌床を温度25.0℃、湿度65.0%の条件で、24、48、72、96、168、192、及び、216時間保存した。夫々の時点における菌床重量を測定することによって、水分減少率を算定した。
尚、対照として、シルバースキンの代わりに、従来菌床作製に用いられていたブナおが屑を使用した菌床を作成し、シルバースキンを使用した菌床と同様に水分減少率を算定した。
【0047】
図5に示すように、ブナおが屑を用いた菌床では、重量減少率(水分減少率)は、シルバースキンを用いた菌床と比べて高かった。従って、菌床としてキノコ栽培に供される条件下においても、シルバースキンはその保水力を発揮し得ることがわかる。キノコ子実体が収穫されるまでには菌床形成から数ヶ月を要する場合もあり、シルバースキンの高い保水性は、菌床のメンテナンス(水分含有率調整、容器側面・底面への子実体形成防止等)に有利に働くと考えられる。
【0048】
〔シルバースキン抽出液の成分〕
表1に、使用した未洗浄シルバースキンの可溶性成分の組成を示す。前記未洗浄シルバースキン(水分約2.5%)に20倍量(重量比)の水を加え、50℃で5時間攪拌して抽出した液を試料とし、この試料に含まれる可溶性成分(以下10種の項目)について試験した。尚、水分は常温常圧加熱法(食品衛生検査指針 理化学編、厚生省生活衛生局監修(1991年)準拠)、全糖はフェノール硫酸法(還元糖の定量法 福井作蔵著、学会出版センター(1990年)準拠)、還元糖はソモジ−ネルソン(Somogyi−Nelson)法(還元糖の定量法 福井作蔵著、学会出版センター(1990年)準拠)、タンパク質はケルダール法(係数 6.25)(食品衛生検査指針 理化学編、厚生省生活衛生局監修(1991年)準拠)、灰分は直接灰化法(食品衛生検査指針 理化学編、厚生省生活衛生局監修(1991年)準拠)、カフェインは「加工食品の栄養成分分析方法(日本健康・栄養食品協会編集(1986年))」による方法(HPLC)、クロロゲン酸類はHPLC(G.H.D.van der stegen、and J.van Duizn:ASIC、9th colloque、London,1980、p107−112を参考)、総ポリフェノールは「加工食品の栄養成分分析方法(日本健康・栄養食品協会編集(1986年))」による方法(フォーリン−デニス(Folin−Denis)法(タンニン酸標準))、脂質はエーテル抽出(食品衛生検査指針 理化学編、厚生省生活衛生局監修(1991年)準拠)、可溶性固形分は常温常圧加熱法(食品衛生検査指針 理化学編、厚生省生活衛生局監修(1991年)準拠)によって測定した。
【0049】
【表1】
【0050】
表1は、気乾状態のシルバースキンにおける、上記試験項目に該当する成分の含有量を示す(尚、「総ポリフェノール」は、「可溶性固形分」の一部をなす成分である。)。
【0051】
尚、前記可溶性固形分は、コーヒー豆の品種や焙煎度に関わらず、ほぼ一定であると考えられる(表2)。表2中のL値は焙煎コーヒー豆の明度であり、焙煎度合の目安を表す。
【0052】
【表2】
【0053】
〔シルバースキン成分とキノコ生長との関連〕
未洗浄シルバースキン(気乾状態:水分含有率約2.5%)と、重量比で20倍の水とを混合し、これを室温で攪拌しながら1時間保持し、未洗浄シルバースキンの可溶性成分を抽出した抽出液を得た。前記抽出液は、シルバースキンから濾別され、更に室温で減圧濃縮した。得られた濃縮液を、更に100℃の乾熱器で乾燥させて、未洗浄シルバースキン由来の可溶性固形分(粉末状)を得た。
ポテトデキストロース寒天培地(PDA培地/日水製)を、キノコ栽培用の培地に用いた。直径90mmの15ml容シャーレに、前記可溶性固形分を加えた前記PDA培地を入れて平板培地を準備し、ここに、下記4種の代表的な食用キノコを夫々接種した。前記可溶性固形分の添加量は、重量/容積比で、0.04,0.08,0.12、0.2,0.4,0.6,1.0,2.0又は4.0%とした。尚、酵母エキス・麦芽エキス寒天培地(MYA培地)で24℃、10日間平板培養したものをコルクボーラ(直径5mm)で打ち抜いた菌糸体を接種源とした。
【0054】
(1)供試菌A
ヒラタケ(菌興1号(財団法人日本きのこセンター))
(Pleurotus ostreatus(Jacq.:Fr.)Kummer)
(2)供試菌B
ブナシメジ(UCC上島珈琲株式会社 R&Dセンター保存株)
(Hypsizigus marmoreus(Peck.)Bigelow)
(3)供試菌C
タモギタケ(有限会社大貫菌蕈)
(Pleurotus cornucopiae(Paulet)Rolland var.citrinopileatus(sing)Ohira)
(4)供試菌D
エリンギ(財団法人福島県きのこ振興センター)
(Pleurotus eryngii(DC.:Fr)Quel)
【0055】
夫々の供試菌毎に5検体(平板培地)を準備し、23℃、暗黒下で、10日間栽培した。夫々の検体のコロニーの直径を測定し、菌糸体伸長を算定した。
【0056】
夫々の供試菌毎に5検体(平板培地)を準備し、23℃、暗黒下で、10日間栽培した。夫々の検体となる培地を熱水で溶解し、菌糸体を濾別し、温水・冷水で順次洗浄後、菌糸体の乾燥重量を測定した。
【0057】
図6〜9に、前記可溶性固形分の添加量に対する、供試菌A〜Dの菌糸体伸長量及び菌糸体重量の変化を示す。
これらの結果から、可溶性固形分の添加量が増えるほど、即ち、培地中の可溶性固形分濃度が高まるほど、供試菌のコロニー直径は小さくなり、又、菌糸体重量も減少する傾向にあることがわかった。又、発明者らの観察によって、前記可溶性固形分の濃度が上昇するに従って、上記4種の供試菌の菌糸が空気中に伸びていく傾向が強くなることがわかった。このことから、シルバースキンの可溶性固形分にキノコ菌糸体の生育を阻害する物質が含まれていることがわかる。
【0058】
ここで、前記4種の供試菌における前記可溶性固形分の添加許容量(寒天平板培地に対する重量/容積比)が、ヒラタケ(供試菌A)で1.0%未満、ブナシメジ(供試菌B)では0.4%未満、タモギタケ(供試菌C)では1.0%未満、エリンギ(供試菌D)では1.0%未満であったことから(図6〜9参照)、3種の供試菌で良好な生育を許容した添加許容量0.6%、より好ましくは4種すべての供試菌で良好な生育を許容した0.2%が、培地(菌床)へのシルバースキン材料の配合比率を決定するにあたって、一応の目安になると考えられる。
【0059】
これらの結果に基づいて、前記シルバースキンから可溶性固形分を除去することによって、キノコ栽培用の培地にシルバースキンを高比率で配合することができると考えた。よって、前記シルバースキンから前記可溶性固形分を除去する程度及びその処理方法について検討した。
【0060】
〔シルバースキン由来の可溶性固形分の濃度測定方法についての検討〕
シルバースキンが浸る程度に70℃の熱水(150g)を前記シルバースキン(水分2.5%)5gに加えてウォーターバスで10分間保持し、その後、前記シルバースキンと熱水とを濾別し(洗浄工程)、これを16回繰り返した。抽出された洗浄廃液中の可溶性固形分濃度は、前記常温常圧法(常圧で100℃に加熱し、恒量になるまで乾燥しその重量を測定)で測定した。この洗浄廃液の中のポリフェノール濃度は、前述したフォーリン−デニス法(タンニン酸標準)で測定した。また、前記洗浄廃液の420nmにおける吸光度も測定し、前記洗浄廃液中の可溶性固形分濃度、ポリフェノール濃度及び420nmにおける吸光度の間の相関を求めた。尚、これらのデータは、下記シルバースキンからの可溶性固形分除去方法の検討のデータにも利用している。
【0061】
図12(a)には、洗浄廃液の420nmにおける吸光度と、常温常圧法によって測定された前記洗浄廃液に含まれる可容性固形分濃度(重量%)との相関が示され、図12(c)には、洗浄廃液の420nmにおける吸光度と、フォーリン−デニス法により測定された前記洗浄廃液に含まれる総ポリフェノール濃度(重量%)との相関が示され、図12(b)には、前記洗浄廃液に含まれる可容性固形分濃度(重量%)と総ポリフェノール濃度(重量%)との相関が示されている。これら3者の間には非常に高い相関性が見られる。これらの結果から、洗浄廃液の420nmにおける吸光度に基づいて、前記洗浄廃液に含まれる可容性固形分濃度と総ポリフェノール濃度とを算出することができることがわかる。
【0062】
〔シルバースキンからの可溶性固形分除去方法の検討〕
シルバースキンが浸る程度に70℃の熱水(150g)を前記シルバースキン(水分2.5%)5gに加えてウォーターバスで10分間保持し、その後、前記シルバースキンと熱水とを濾別し(洗浄工程)、これを16回繰り返して洗浄済シルバースキンを得る実験を行なった。抽出された洗浄廃液中の可溶性固形分は、上述したように、420nmの吸光度に基づいて算定した。
洗浄回数0回で残存している可溶性固形分、即ち、全可溶性固形分は、シルバースキンを20倍量の熱水で1時間還流抽出(洗浄)を行い、この洗浄廃液を適宜アルミ皿にとり、常圧で100℃に加熱し、恒量になるまで乾燥しその重量を測定し、シルバースキンの重量(気乾状態)に対する比で表わした。
【0063】
【表3】
【0064】
図10(a)及び(b)は、前記シルバースキンからの前記可溶性固形分の抽出・残存比率(重量比)と総ポリフェノールの抽出・残存比率(重量比)とを示し、表3は、キノコ栽培用菌床を構成する培地の代表的な組成(重量比で、基材約25%、栄養分(米ぬか)約10%、水分65%)における前記可溶性固形分の存在比を示す。これらの結果によれば、4回洗浄することによって、前記シルバースキンに残存している可溶性固形分を前記シルバースキン全体に対して約0.6%にまで低減することができる(表3参照)。又、前記可溶性固形分の抽出パーターンと総ポリフェノールの抽出パターンとはほぼ同じであり、この方法によって、両者を効率よく抽出することができるのがわかる(図10参照)。
【0065】
尚、上記条件で、シルバースキンの浸漬時間と可溶性固形分及びポリフェノールの抽出度合いについての検討も行った。この結果、10分以上シルバースキンを浸漬して得た抽出液に含まれる可溶性固形分量及びポリフェノール量は、ほぼ一定であった。従って、抽出に要する時間は、それほど長くなくてよいことがわかった。
【0066】
〔シルバースキン洗浄が保水性に与える影響〕
尚、前掲の保水性試験の項で使用した条件と同じ条件で、洗浄前後におけるシルバースキンの保水性の変化の有無について検討した。
洗浄済シルバースキン(水分含有率2.5%、可溶性固形分2.0%)は、気乾状態(水分含有率約2.5%)のシルバースキンに、重量比で50倍量の熱水を加えて、室温で攪拌しながら1時間抽出し、洗浄液をデカンテーションで分別し、更に固体部分を100℃の乾熱器で乾燥して得た。
図11に示すように、洗浄の有無は、シルバースキンの保水性にほとんど影響を与えなかった。従って、洗浄処理を施してキノコの伸長を阻害する成分を除去したシルバースキンを用いたキノコ培養用培地でも、高い保水性を示すことがわかる。
【0067】
〔キノコの栽培例〕
以下、実験例1〜4に示すように、おが屑を含む従来のキノコ培養用培地を用いた場合と、シルバースキンを含む本発明に係るキノコ培養用培地を用いた場合と、更には、前記シルバースキンに洗浄処理を施した場合とにおけるキノコの菌糸体生長と子実体形成について検討した。
何れの実験例においても、図12(a)に示す式を用いてシルバースキン由来の可溶性固形分の濃度を算定した。ここで、図12(b)及び(c)に示す式を用いて、シルバースキン由来のポリフェノール濃度も算定することができたので、以下の実験例において、可溶性固形分濃度から総ポリフェノール濃度を導き出すことができる(データ省略。)。
【0068】
〔実験例1〕
前記供試菌A(ヒラタケ)の菌糸体伸長を検討した。
気乾状態(水分含有率約2.5%)のシルバースキンに、重量比で50倍量の熱水を加えて、室温で攪拌しながら1時間抽出した。洗浄液をデカンテーションで分別し、更に固体部分を100℃の乾熱器で乾燥し洗浄済シルバースキン(水分含有率2.5%、可溶性固形分2.0%)を得た。
対照区(ブナおが屑)、シルバースキン(未洗浄)、シルバースキン(洗浄済)の3種の培地基材を準備した。シルバースキン(未洗浄)、シルバースキン(洗浄済)は、最終的に水分が65重量%になるように水を添加した培地を作成した(基材:水=35:65)。又、対照区(ブナおが屑)、シルバースキン(洗浄済)の夫々の培地基材に対して米ぬかを20重量%添加し、最終的に水分が65重量%になるように水を添加した培地を作成した(基材:米ぬか:水=28:7:65)。このようにして調製した培地を120gとり、250ml容ガラスビン(直径6.3cm、高さ15cm)に充填した。これを、121℃で40分加熱し殺菌した。これを、一晩放置して冷却して得た菌床(pH5.5)(高さ12.5cm)に、前記供試菌Aを1白金耳接種した。
上述したように作成した4種の試験区の菌床(試験区毎に10検体)を、23℃、湿度65%、暗黒下で栽培し、栽培開始から23日目のヒラタケ菌糸の伸長距離を測定した。
【0069】
図13に示すように、対照区(ブナおが屑+米ぬか)では、ヒラタケ菌糸は11.7cm伸びていた。シルバースキン(未洗浄)区では、ヒラタケ菌糸は5.94cm伸びていた。シルバースキン(洗浄済)区では、ヒラタケ菌糸は9.55cm伸びていた。シルバースキン(洗浄済+米ぬか)区では、ヒラタケ菌糸は10.9cm伸びていた。
【0070】
これらの結果から、米ぬかを添加していない未洗浄のシルバースキンを用いた菌床(シルバースキン由来の可溶性固形分8.133%)では、対照区には及ばないが、ヒラタケの菌糸が伸長することがわかった。又、シルバースキンに洗浄処理を施した洗浄済区(菌床中のシルバースキン由来の可溶性固形分0.7%)では、未洗浄区と比べてヒラタケ菌糸はよく延びることがわかった。そして、おが屑に代えて洗浄済シルバースキンを使用した米ぬか入り菌床(シルバースキン由来の可溶性固形分0.56%)においては、おが屑を用いた場合と同程度の菌糸体伸長が得られることがわかった。
【0071】
〔実験例2〕
前記供試菌A(ヒラタケ)の菌糸体伸長を検討した。
気乾状態(水分含有率約2.5%)のシルバースキンに、重量比で20倍量の熱水を加えて、室温で攪拌しながら1時間抽出した。洗浄液をデカンテーションで分別し、更に固体部分を100℃の乾熱器で乾燥し洗浄済シルバースキン(水分含有率2.5%、可溶性固形分2.0%)を得た。
対照区(ブナおが屑)、シルバースキン(未洗浄)、シルバースキン(洗浄済)の3種の培地基材を準備し、夫々の培地基材に対して米ぬかを20重量%添加し、最終的に水分が65重量%になるように水を添加した培地を作成した(基材:米ぬか:水=28:7:65)。このようにして調製した培地を120gとり、250ml容ガラスビン(直径6.3cm、高さ15cm)に充填した。これを、121℃で40分加熱し殺菌した。これを、一晩放置して冷却して得た菌床(pH5.5)(高さ12.5cm)に、前記供試菌Aを1白金耳接種した。
上述したように作成した3種の試験区の菌床(試験区毎に10検体)を、23℃、湿度65%、暗黒下で栽培し、菌糸が菌床全体に蔓延した時点で伸長速度を測定した。
【0072】
図14に示すように、対照区(ブナおが屑+米ぬか)では、ヒラタケ菌糸は平均して1.08cm/日(標準偏差±0.071)伸びていた。シルバースキン(未洗浄+米ぬか)区では、ヒラタケ菌糸は平均して0.83cm/日(標準偏差±0.064)伸びていた。シルバースキン(洗浄済+米ぬか)区では、ヒラタケ菌糸は平均して1.05cm/日(標準偏差±0.103)伸びていた。
【0073】
これらの結果から、未洗浄のシルバースキンを用いた菌床(シルバースキン由来の可溶性固形分6.524%)であっても、おが屑を用いた場合と同程度にヒラタケの菌糸が伸長することがわかった。又、おが屑に代えて洗浄済シルバースキンを使用した菌床(シルバースキン由来の可溶性固形分0.56%)においては、更にヒラタケ菌糸体が伸長することがわかった。
【0074】
〔実験例3〕
前記供試菌B(ブナシメジ)の菌糸体伸長を検討した。
ブナシメジを用いた以外は、実験2と同様にして、菌糸体の伸長速度を測定した。
【0075】
図15に示すように、対照区(ブナおが屑+米ぬか)では、ブナシメジ菌糸は平均して0.50cm/日(標準偏差±0.026)伸びていた。シルバースキン(未洗浄+米ぬか)区では、ブナシメジ菌糸は平均して0.38cm/日(標準偏差±0.035)伸びていた。シルバースキン(洗浄済+米ぬか)区では、ブナシメジ菌糸は平均して0.50cm/日(標準偏差±0.018)伸びていた。
【0076】
これらの結果から、未洗浄のシルバースキンを用いた菌床であっても、おが屑を用いた場合と同程度にブナシメジの菌糸が伸長することがわかった。又、おが屑に代えて洗浄済シルバースキンを使用した菌床においては、更に菌糸体が伸長することがわかった。
【0077】
〔実験例4〕
前記供試菌A(ヒラタケ)の子実体収量について検討した。
対照区(クヌギおが屑)、シルバースキン(未洗浄)、シルバースキン(実験例2と同様に洗浄済)の3種の培地基材を準備した。夫々の培地基材に対して米ぬかを30重量%添加し、最終的に水分が65重量%になるように水を添加した(基材:米ぬか:水=24.5:10.5:65)。このようにして調製した培地を約120gとり、250ml容ガラスビンに充填した。これを、121℃で40分加熱し殺菌した。これを、一晩放置して冷却して得た菌床(pH5.5)(高さ12.5cm)に、前記供試菌Aを接種した。接種源として、1ビン当り2g用いた。
上述したように作成した検体(試験区毎に10検体)を、24℃、湿度65%、暗黒下で栽培した。菌回り終了後、菌掻きを行い、2時間冠水処理を施した。この後、14℃±2℃、湿度90%以上に保ってヒラタケの子実体形成を促した。カサの最大直径が3cmになった株を採取し、子実体生重量を測定した。
【0078】
図16に示すように、対照区(おが屑+米ぬか)では、培地重量あたりのヒラタケ子実体収率(重量%)は15.05%(標準偏差±2.54)であった。シルバースキン(未洗浄+米ぬか)では、培地重量あたりのエリンギ子実体収率は16.53(標準偏差±3.00)であった。シルバースキン(洗浄済+米ぬか)では、培地重量あたりのエリンギ子実体収率は17.88%(標準偏差±4.89)であった。
【0079】
未洗浄のシルバースキンが含まれる培地(シルバースキン由来の可溶性固形分5.7%)であっても、対照区と比べて子実体収率が良かった。そして、洗浄済シルバースキンを含む培地(シルバースキン由来の可溶性固形分0.47%)では、培地重量あたりの子実体収量は、対照区及び未洗浄のシルバースキンが含まれる培地と比べて、更に増加した。
このように、おが屑に代えてシルバースキン材料を使用することによって、ヒラタケ子実体を増産することができることができた。尚、シルバースキンを用いて栽培したヒラタケ子実体は、味、香り、肉質等の点において、従来のキノコ栽培用培地(基材としておが屑を使用)と変わるところはなかった。
【0080】
〔実験例5〕
前記供試菌D(エリンギ)の子実体収量について検討した。
対照区(ブナおが屑:スギおが屑=1:1(重量比))、シルバースキン(実験例1と同様に洗浄済)の2種の培地基材を準備した。夫々の培地基材に対して米ぬかを30重量%添加し、最終的に水分が65重量%になるように水を添加した(基材:米ぬか:水=24.5:10.5:65)。このようにして調製した培地を約500gとり、750ml容ポリプロピレンビン(直径8.5cm、高さ13.0cm)に充填した。これを、121℃で60分加熱し殺菌した。これを、一晩放置して冷却して得た菌床(pH5.5)(高さ12.0cm)に、前記供試菌Dを接種した。尚、種菌として市販されているエリンギ(財団法人福島県きのこ振興センター)を接種源として、1ビン当り5g用いた。
上述したように作成した検体(試験区毎に25検体)を、22℃、湿度65%、暗黒下で栽培した。菌回り終了後、菌掻きを行なった。この後、16℃±2℃、湿度90%以上に保ってヒラタケの子実体形成を促した。カサの最大直径が5cmになった株を採取し、子実体生重量を測定した。
【0081】
図17に示すように、対照区(ブナ及びスギおが屑+米ぬか)では、培地重量あたりのエリンギ子実体収率(重量%)は101.67%(標準偏差±8.12)であった。シルバースキン(洗浄済+米ぬか)では、培地重量あたりのエリンギ子実体収率は146.73%(標準偏差±3.50)であった。
【0082】
洗浄処理によってシルバースキン由来の可溶性固形分を0.47%にまで低減した培地では、対照区と同等の栽培期間にもかかわらず、培地重量あたりの子実体収量は対照区と比べて約40%増加した。
このように、おが屑に代えて洗浄済シルバースキンを使用することによって、エリンギ子実体を増産することができた。尚、シルバースキンを用いて栽培したエリンギ子実体は、味、香り、肉質等の点において、従来のキノコ栽培用培地(基材としておが屑を使用)と変わるところはなかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】コーヒー果実の部分断面図
【図2】キノコ栽培方法を表わすフローチャート
【図3】シルバースキンの洗浄工程を表わすフローチャート
【図4】キノコ培養用培地を構成する各種成分の保水率と含水率とを示すグラフ
【図5】シルバースキンの保水性を示すグラフ
【図6】シルバースキン由来の可溶性固形分添加量に対する、ヒラタケ(供試菌A)の菌糸体伸長量及び菌糸体重量の変化を示すグラフ
【図7】シルバースキン由来の可溶性固形分添加量に対する、ブナシメジ(供試菌B)の菌糸体伸長量及び菌糸体重量の変化を示すグラフ
【図8】シルバースキン由来の可溶性固形分添加量に対する、タモギタケ(供試菌C)の菌糸体伸長量及び菌糸体重量の変化を示すグラフ
【図9】シルバースキン由来の可溶性固形分添加に対する、エリンギ(供試菌D)の菌糸体伸長量及び菌糸体重量の変化を示すグラフ
【図10】シルバースキンの熱水抽出と、可溶性固形分の除去量との相関関係を表わすグラフ
【図11】未洗浄及び洗浄済シルバースキンにおける保水率と含水率とを比較したグラフ
【図12】シルバースキンに含まれる可溶性固形分の濃度と420nmにおける吸光度と
【図13】種々の菌床で生育させたヒラタケ(供試菌A)の菌糸体伸長を示すグラフ
【図14】種々の菌床で生育させたヒラタケ(供試菌A)の菌糸体伸長を示すグラフ
【図15】種々の菌床で生育させたブナシメジ(供試菌B)の菌糸体伸長を示すグラフ
【図16】種々の菌床で生育させたヒラタケ(供試菌A)の子実体収量を示すグラフ
【図17】種々の菌床で生育させたエリンギ(供試菌D)の子実体収量を示すグラフの相関関係を表わすグラフ
【発明の属する技術分野】
本発明は、キノコ栽培用培地に関する。
【0002】
【従来の技術】
シルバースキン(銀皮)とは、コーヒー豆を包み込んでいる薄皮のことをいう。コーヒーの果実は植物学的には核果であり、図1に示すように、コーヒー果実100は、外側から中心に向かって、外皮101、果肉102、内果皮(パーチメント)103、シルバースキン104、種子105の順に配置されている。前記種子105は、胚と前記胚を包囲している胚乳とを有しており、1つコーヒー果実100の中に互いに向き合うようにして配置されている。コーヒー果実100が成熟するにつれて、前記胚乳の互いに向かい合う側の平面部が窪んで胚乳内部側に折り込まれてゆき、この平面部の中央にセンターカット106と呼ばれる溝が形成される。
前記コーヒー果実100の、果肉102と内果皮103との間、内果皮103とシルバースキン104との間、シルバースキン104と胚乳との間、及び、センターカット106の隙間には、粘質物が詰まっている。
これらの種子の外側の部分を取り除いたものが生豆であり、コーヒー果実から生豆を取り出す操作を精製という。
【0003】
前記精製の方法には、主に2種の方法が知られていて、一方は乾式法と呼ばれ、他方は湿式法と呼ばれる。
前記乾式法では、収穫したコーヒー果実100を乾燥場で平らに広げて天日乾燥又は機械乾燥させる。乾燥したコーヒー果実100は脱穀機で磨かれて、外皮101、果肉102、内果皮103及びシルバースキン104を含む殻が除かれ、生豆が得られる。
前記湿式法では、収穫したコーヒー果実100を水槽に浸漬して、沈んだ完熟果100を選別する。前記完熟果100は、果肉除去機で外皮101と果肉102とが除かれた後、発酵層で発酵させて残った果肉102や粘質物を分解する。発酵が終了した後、数回水を替えながら完熟果を洗浄し、天日乾燥又は機械乾燥させる。このようにしてまだ内果皮103が付着しているパーチメントコーヒーが得られる。このパーチメントコーヒーを脱穀機で磨くと生豆が得られる。
【0004】
上述したような精製を経て、前記生豆の外側を包んでいるシルバースキン104の大部分は除去される。しかしながら、前記センターカット106の部分に入り込んだシルバースキン104は、精製で除かれることなく生豆に付着したままであることが多い。
生豆を焙煎すると、豆の体積が膨張し、又、水分も減ずるため、生豆に付着したシルバースキン104は豆から剥離する。剥離したシルバースキン104は、焙煎機から送り出される熱風に吹き飛ばされて、一箇所に留められて回収される。
【0005】
このようにして回収されたシルバースキン104は、再生紙の原料(例えば、非特許文献1、2参照。)、家畜の敷き藁の代替品や堆肥(例えば、非特許文献2〜4参照。)、土壌改良剤として利用されている。
【0006】
【非特許文献1】
“2001年キーコーヒー環境報告書 9.その他の環境保全活動”、[online]、キーコーヒー株式会社、[平成14年11月18日検索]、インターネット<URL:http://www.keycoffee.co.jp/annai/en2001/en_9.html>
【非特許文献2】
“2000年キーコーヒー環境報告書 7.環境保全活動”、[online]、キーコーヒー株式会社、[平成14年11月18日検索]、インターネット<URL:http://www.keycoffee.co.jp/annai/en2000/en_7.html>
【非特許文献3】
“2000年キーコーヒー環境報告書 6.工場の活動実績”、[online]、キーコーヒー株式会社、[平成14年11月18日検索]、インターネット<URL:http://www.keycoffee.co.jp/annai/en2000/en_6.html>
【非特許文献4】
“まきばからこんにちは”、[online]、磯沼ミルクファーム、[平成14年11月18日検索]、インターネット<URL:http://www.ruralnet.or.jp/asunaro/makiba/konnichiwa/konback010.html>
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前掲したような用途で利用されるシルバースキンは、回収されたものの一部に過ぎない。シルバースキンのほとんどは、産業廃棄物として処分されているのが現状である。
【0008】
従って、本発明の目的は、上記問題点に鑑み、シルバースキンを有効利用するための技術を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するための本発明に係るキノコ栽培用培地の第1特徴構成は、請求項1に記載してあるように、基材にシルバースキンを含む点にある。
又、この目的を達成するための本発明に係るシルバースキンを含むキノコ栽培用培地の製造方法の特徴手段は、請求項2に記載してあるように、シルバースキンに含まれる可溶性固形分の少なくとも一部を水抽出する洗浄処理を施す洗浄工程を有する点にある。
更に、上記特徴手段において、請求項3に記載してあるように、前記可溶性固形分の少なくとも一部がポリフェノールであることが好ましい。
更に、上記特徴手段において、請求項4に記載してあるように、下記数2に示す関係式を使用して前記可溶性固形分量を算定する算定工程を有していてもよい。
【0010】
【数2】
y = 8.2257 × x − 0.4916
x:洗浄工程で発生した洗浄廃液の420nmにおける吸光度
y:前記洗浄廃液中の可溶性固形分濃度(重量%)
【0011】
又、この目的を達成するための本発明に係るキノコ栽培用培地の第2特徴構成は、請求項5に記載されているように、請求項2〜4の何れか1項に記載されたキノコ栽培用培地の製造方法を用いて製造され、前記可溶性固形分の少なくとも一部が抽出されている点にある。
更に、上記第1又は第2特徴構成において、請求項6に記載されているように、前記シルバースキン由来の可溶性固形分が培地全体の0.6%以下であることが好ましく、更に好ましくは、請求項7に記載されているように、前記シルバースキン由来の可溶性固形分が培地全体の0.2%以下である。
又、この目的を達成するための本発明に係る菌床の特徴構成は、請求項8に記載してあるように、その水分含有率が60〜70%であり、請求項1又は5〜7の何れか1項に記載のキノコ栽培用培地を含む点にある。
又、この目的を達成するための本発明に係るキノコ生産方法の特徴手段は、請求項9に記載してあるように、請求項1又は5〜7の何れか1項に記載のキノコ栽培用培地又は請求項8に記載の菌床を用いる点にある。
更に、請求項10に記載されているように、上記特徴手段において、前記キノコがヒラタケ属のキノコであることが好ましい。
そして、これらの作用効果は、以下の通りである。
【0012】
本願発明者らは、鋭意研究を行なった結果、シルバースキンの含水率及び保水率が非常に高いことを見出した。そして、発明者らは、このようなシルバースキンの性質が適した用途について検討した結果、キノコ栽培用培地(菌床)という新たな用途に非常に適していることを見出し、本願発明に想到するに至った。
即ち、請求項1に記載してあるように、キノコ栽培用培地の基材にシルバースキンを含ませると、前記キノコ栽培用培地を含んで形成される菌床の保水性が良くなるので給水頻度や給水量を減らすことができ、キノコの栽培労力やコストを削減することができる。又、従来基材として用いられてきたおが屑は、近年、供給が不足しており、価格が高い。請求項1に係るキノコ栽培用培地を用いることによって、キノコ栽培用培地を安価に、且つ、安定して供給することができる。更に、このシルバースキンはレギュラーコーヒー豆製造時に得られる廃棄物であるので、再利用することによって廃棄物削減に貢献する。
加えて、例えば、ビン等の容器に基材や栄養分等となる材料(内容物)を入れて作製するタイプの菌床では、前記容器の壁面と前記内容物との間には実質的に子実体が発生するような隙間ができないようにし、前記容器の開口部側からキノコの子実体が生長するように形成される。しかしながら、このように形成した菌床が乾燥すると、前記容器の壁面と前記内容物との間に空間が生じ、更にここにキノコの子実体が形成されることがある。このようになったキノコの株は、商品として出荷することが難しくなる。ここで、請求項1に記載してあるように、キノコ栽培用培地の基材にシルバースキンを含ませると、前記キノコ栽培用培地を含んで形成される菌床の保水性が良くなり、容器の中の内容物の形状が乾燥によって変形するのを防ぐことができる。これによって、前記菌床の管理が容易になり、且つ、商品として出荷されるキノコ子実体の歩留まりが良くなる。
【0013】
ところが、シルバースキンを含んだキノコ栽培用培地では、菌床のメンテナンスは容易になるが、キノコの種類によっては若干生育が遅くなることがあるのがわかった。発明者らは、その原因について鋭意研究した結果、シルバースキンの可溶性固形分に発育阻害活性があることを見出した。そこで、シルバースキンを含むキノコ栽培用培地の製造するにあたって、請求項2に記載してあるように、洗浄工程を設けて、シルバースキンに含まれる可溶性固形分の少なくとも一部を水抽出する洗浄処理を施すと、単位容積(又は重量)のシルバースキン当たりのキノコ生長阻害活性を低減することができ、子実体収量を増加させたり栽培日数を短縮したりすることができる。又、キノコ栽培用の培地にシルバースキンを高比率で配合することができるので、前記シルバースキンを有効に、特に大量に、利用することができる。
【0014】
更に、発明者らは、前記可溶性固形分に含まれる成分のうち、どの成分がキノコ菌糸の伸長や子実体形成の阻害に関与するか検討した。その結果、シルバースキンにポリフェノールが含まれることを見出した(表1参照)。タンニン等のポリフェノールは、一般的に抗菌作用を有すると考えられており、キノコの生育をも阻害する可能性がある。図12(b),(c)に示すように、前記洗浄処理を施す際に得られる洗浄廃液中の可溶性固形分濃度とポリフェノール濃度との間に明らかに相関性があり、前記可溶性固形分によるキノコ発育阻害の一因として、ポリフェノールの存在が関わっている可能性がある。
従って、請求項3に記載してあるように、前記可溶性固形分の少なくとも一部としてポリフェノールが抽出除去されることによって、単位容積(又は重量)のシルバースキン当たりのキノコ生長阻害活性を低減することができると考えられる。これによって、キノコ栽培用の培地にシルバースキンを高比率で配合することができる。従って、前記シルバースキンを有効に、特に大量に、利用することができる。
【0015】
ここで、本願発明者らは、下記数3に示すように、前記洗浄工程においてシルバースキンの洗浄に使用した洗浄廃液の420nmにおける吸光度が、前記シルバースキンから抽出されて前記洗浄廃液に移行した前記可溶性固形分の濃度と非常高い相関関係にあることを見出した(図12(a)参照)。
【0016】
【数3】
y = 8.2257 × x − 0.4916
x:洗浄工程で発生した洗浄廃液の420nmにおける吸光度
y:前記洗浄廃液中の可溶性固形分濃度(重量%)
【0017】
よって、請求項4に記載してあるように、前記添加工程より先に算定工程を設けて、この算定工程において、前記数3に示す関係式を使用すること、前記可溶性固形分量を算定することができる。この方法で前記可溶性固形分を定量すると、わざわざ洗浄廃液を乾燥させて抽出された前記可溶性固形分の重量を測定する等の必要が無くなる。従って、容易に且つ迅速に前記シルバースキンの可溶性固形分除去を行うことができる。
【0018】
従って、請求項5に記載してあるように、請求項2〜4の何れか1項に記載されたキノコ栽培用培地の製造方法を用いて製造される、前記可溶性固形分の少なくとも一部が抽出されたシルバースキンを含むキノコ栽培用培地は、菌床の保水性・形状保持やキノコ子実体形成を確保し、且つ、シルバースキンを高比率で配合することができるものである。
【0019】
更に、請求項6に記載してあるように、前記シルバースキン由来の可溶性固形分が培地全体の0.6%以下であるキノコ栽培用培地を用いることによって、多くの種のキノコにおいて、菌糸の伸長や子実体の収量が良好であり、少なくとも従来のおが屑を用いた培地と同程度となる。
尚、「培地」とは、基材のみからなるもの、前記基材に固形分(例えば、基材、栄養分等)を混合したもの、前記基材に前記固形分を混合し更に水を添加して菌床形成の前段階まで調製したものをも含み、水を添加した後の培地で0.6%以下となるようにする。
【0020】
又、請求項7に記載してあるように、前記シルバースキン由来の可溶性固形分が培地全体の0.2%以下とすることによって、更に多くの種のキノコにおいて、菌糸の伸長や子実体の収量が良好であり、少なくとも、従来のおが屑を用いた培地と同程度となる。
【0021】
又、請求項8に記載してあるように、その水分含有率が60〜70%である請求項1又は5〜7の何れか1項に記載のキノコ栽培用培地を含む菌床は、キノコ子実体の形成に適した培地(環境)を提供することができる。
ここで、キノコの人工栽培の際には、培地を固めて成形し、又は、培地を容器に詰めた後に、滅菌して「菌床」を作成するので、本発明の「培地」の一形態の組成と「菌床」の組成とは、ほぼ等しいと解する。
【0022】
更に、請求項9に記載されているように、請求項1又は5〜7の何れか1項に記載のキノコ栽培用培地又は請求項8に記載の菌床を用いてキノコを生産すると、高価で貴重なおが屑を基材とした従来の培地と比べて、非常に低いコストで得られ、且つ、資源(おが屑)利用を抑制することができる。
【0023】
更に、請求項10に記載されているように、前記キノコがヒラタケ属のキノコであると、例えば、図16に示すヒラタケや図17に示すエリンギように、未洗浄のシルバースキンを用いた場合であっても、おが屑を用いた場合よりキノコ子実体収量を増加させることができる。さらには、前記シルバースキンに洗浄処理を施すことによって、おが屑を用いた場合と比べて、キノコ子実体収量を大幅に増加させることができる。
【0024】
尚、請求項1、5〜7のキノコ栽培用培地や請求項8の菌床を用いて栽培したキノコ子実体は、いずれの場合においても、味、香り、肉質等の食感は、従来のキノコ栽培用培地(基材としておが屑を使用)と変わるところはなく(実施例参照。)、従来のキノコ培養用培地と同じ品質を保持することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図2は、シルバースキンを用いたキノコ栽培のフローを示す。本発明は、例えば、非限定的に、ヒラタケ、ブナシメジ、タモギタケ、エリンギ、マイタケ、シイタケ、エノキタケ、ナメタケ等の人工栽培が可能な食用キノコの栽培に適しているが、その適用範囲は食用キノコの栽培に限定されない。好ましくは、おが屑を基材として生育可能なキノコの栽培において、前記おが屑の少なくとも一部と置換して利用する。特に、ヒラタケの栽培に使用することによって、栽培期間の短縮、収量(培地重量ベース)の増加をもたらすので好ましい。
【0026】
シルバースキンは、レギュラーコーヒーの製造の際に回収されたものを使用することができ、コーヒー焙煎工場でのコーヒー豆焙煎作業にて排出される、例えば、チャフプッシャーに回収されるシルバースキンを使用することができる。
【0027】
前記シルバースキンは、洗浄によって、可溶性固形分の少なくとも一部を除去したものを使用することができる。この洗浄によって、可溶性固形分の中でも、特に、ポリフェノールを除去することが好ましい。洗浄方法(ポリフェノールを含む可溶性固形分の除去方法)としては、これに限定されるものではないが、例えば、図3に示すように、シルバースキンに水(ここでは熱水であるが、常温水でもよい。)を添加し(S1)、更に一定時間(例えば、10分〜24時間であるが、これに限定されるものではない)、このシルバースキンを前記熱水に浸漬し(S2)、前記シルバースキンに含まれる可溶性固形分を抽出することができる。この後、前記熱水(洗浄廃液)を排出して、必要に応じて脱水する(S3)。これらの工程(S1〜S3)は、前記シルバースキンに残存する前記可溶性固形分が所定量(例えば、水分含量2.5%の前記シルバースキンに対して重量比で2.0%以下であるが、これに限定されるものではない)に減少するまで繰り返され、洗浄処理済のシルバースキンが得られる。
【0028】
ここで、下記数4に示す式を用いて、前記洗浄廃液に含まれる可溶性固形分含有率を、簡単に算定することができる。
【0029】
【数4】
y = 8.2257 × x − 0.4916
x:洗浄廃液の420nmにおける吸光度
y:洗浄廃液中の可溶性固形分濃度(重量%)
【0030】
そして、下記数5に示す式を用いると、前記シルバースキンから除去された可溶性固形分の比率を算出することができる。
【0031】
【数5】
f=y÷100×b÷e×100
f:洗浄によってシルバースキンから除去された可溶性固形分(シルバースキンに対する重量%)
e:洗浄したシルバースキンの重量(kg)
b:洗浄に使用した熱水量(kg)
【0032】
又、別途、洗浄廃液から褐色が観察されなくなるまで洗浄を繰り返して(例えば、20倍量の熱水で1時間還流抽出であるが、これに限定されるものではない)、前記シルバースキンに含まれる全可容積固形分濃度(d)を算出する。そして、a%のシルバースキンと水分と、必要に応じて栄養分とを含む培地を想定した場合、下記数6に示す式を満たすと、培地全体に対する可溶性固形分の存在比をA%以下にすることができる。
【0033】
【数6】
a÷100×(d−f) ≦ A
a:培地中のシルバースキンの存在比率(重量%)
A:培地全体に対する可溶性固形分の存在比率(重量%)
【0034】
ここで、培地全体に対する可溶性固形分の存在比率Aを0.6(%)とする場合を想定すると、上記数4〜6に示す式に基づいて、プールした洗浄廃液の吸光度が下記数7に示す関係を満たすとき、培地全体に対する可溶性固形分の存在比を0.6%以下にすることができる。
【0035】
【数7】
【0036】
尚、前記吸光度を用いた可溶性固形分濃度の算定は、洗浄廃液を交換するごとに行ってもよく、或いは、すべての洗浄廃液を一旦プールしてこのプールした液の吸光度を測定して行ってもよい。
【0037】
洗浄処理を施していないシルバースキン又は前記洗浄済シルバースキン(以下、両者の何れか又は双方を指す場合、「シルバースキン材料」という。)を、水分とそれ自身、又は、必要に応じて更に他の培地材料と組み合わせることによって培地を形成する(S4)。培地は、主に、水分、基材、栄養分からなる。但し、販売形態においては、実質的に基材のみからなるもの又は基材と栄養分との混合物が「培地」と称される場合もあるであろう。水分は、キノコ(菌糸体及び子実体)の形成に重要な要因である。前記基材は、菌床の形状維持、保水などのために要する。通常は、おが屑を使用するが、これに代えて、本発明においては、前記シルバースキン材料単独、又は、おが屑等の他の材料と前記シルバースキン材料とを混合して用いる。栄養分は、前記菌糸体や子実体の伸長のために必要である。米ぬかが用いられることが多い。他にも、これらに限定されるものではないが、フスマ、おから、コーンブラン、ビートパルプ、又はモルトフィード等を用いることができる。キノコ栽培用培地は、例えば、pH5〜7、水分を60〜70%、前記栄養分を0〜20%、前記基材を40〜10%含む様に構成することができる。
【0038】
ここで、前記基材となる成分を分解し栄養分とするキノコもあるので、前記基材と前記栄養分とはその機能によって区別されるものであって、成分によって区別されるものではない。よって、キノコの種類によっては、前記米ぬか等の一般的な栄養分を添加しないで、前記シルバースキン材料を栄養分及び基材とする培地を調製することができる。
【0039】
前記培地中(或いは菌床中)の前記可溶性固形分比率(重量%)は、特に規制されるものではないが、例えば、0.6%以下とすることで、多くの種のキノコにおいて、菌糸生長と子実体収量とを、少なくともおが屑を用いた場合と同程度にまで維持することができる。更に、好ましくは、前記培地中(或いは菌床中)の前記可溶性固形分比率(重量%)を、0.2%以下とすることで、更に多くの種のキノコにおいて、菌糸生長と子実体収量とを、少なくともおが屑を用いた場合と同程度にまで維持することができる。
【0040】
このようにして調製した培地は、それ自身を固めて、或いは、ビン等の容器に詰められ、菌床を形成する。そして、殺菌される(S5)。前記容器としては、例えば、ガラス、ポリプロピレン等を用いて、オートクレーブ殺菌(約121℃)することができる。殺菌後冷まして、前記菌床に、食用キノコの種菌を接種する(S6)。
【0041】
種菌を接種した菌床内で菌糸が伸長しビン内に菌糸が張り巡らされたら(菌回り、S7)、菌糸に栄養を吸収させるために熟成させる(S8)。熟成後、菌床表面の菌糸膜を掻きとり(菌掻き)、温度を低温側に移行して子実体発芽を促す(S9)。子実体が生育し(S10)、所定の大きさになったら、採取し(S11)、梱包等をした後に出荷する(S12)。
【0042】
尚、おが屑に代えて前記シルバースキン材料を使用する以外には、原則的には、通常のキノコ栽培方法の操作手順と異なるところはない。従って、各ステップにおける水分・湿度・温度管理等は、通常のキノコ栽培の条件を使用することができ、栽培対象菌によって、適宜改変することができる。これらの条件の具体例は、下記実験例に示されている。
【0043】
【実施例】
ユーシーシー上島珈琲株式会社の工場において、レギュラーコーヒーを製造した際に排出されたシルバースキンを、以下の試験に供した。
尚、レギュラーコーヒー製造ラインから排出された直後の状態の前記シルバースキンは、2.5%程度の水分を含んでいた。
【0044】
〔保水性試験〕
このシルバースキンの保水性について、他の素材と比較検討した。前記他の素材として、焙煎コーヒー豆を熱水抽出して残ったコーヒー抽出残渣(UCC上島珈琲株式会社兵庫総合工場から排出されたコーヒー抽出残渣、広葉樹おが屑(市販品のブナおが屑)、針葉樹おが屑(市販品のスギおが屑)、及び、ふすまを用いた。試験方法は、「鳥取木工研」(26、1997年、4〜12頁、高畠幸司)を参考にした。具体的には、上記素材を所定の含水率(水を含んだ状態での各素材の重量に対する、含有される水分重量の比で表される)に調整し、遠心処理(2500rpm(3000×g)、10分)を施し、前記遠心処理前に素材が保持していた水分量に対する前記遠心処理後に素材が保持していた水分量(%)の比率を保水率とした。
【0045】
図4は、前述した夫々の素材における、前記保水率と前記含水率とを示すグラフである。従来のキノコ培養用培地に用いられていたコーヒー抽出残渣、広葉樹おが屑、針葉樹おが屑、及び、ふすまと比較して、シルバースキンは高い含水率にまで水分を含ませることができた。しかも、高含水率において、前述した他の素材と比べて、シルバースキンは非常に高い保水率を保っていた。
【0046】
シルバースキンの高い保水性がキノコ栽培用培地として利用する際に影響を与えるか否かについて、菌床モデルを作製して試験した。具体的な手順は,以下の通りである。
未洗浄シルバースキン:米ぬか(栄養源)=7:3(重量比)で、水分含有率が70%の培地を作成した。この培地を200ml容耐熱ガラス瓶に100g充填し、薬包紙で前記耐熱ガラス瓶の口を覆って、121℃で15分間オートクレーブ殺菌して、菌床(pH5.5)を作製した。恒温恒湿器(LH−20 11M、ナガノ科学)内で、この菌床を温度25.0℃、湿度65.0%の条件で、24、48、72、96、168、192、及び、216時間保存した。夫々の時点における菌床重量を測定することによって、水分減少率を算定した。
尚、対照として、シルバースキンの代わりに、従来菌床作製に用いられていたブナおが屑を使用した菌床を作成し、シルバースキンを使用した菌床と同様に水分減少率を算定した。
【0047】
図5に示すように、ブナおが屑を用いた菌床では、重量減少率(水分減少率)は、シルバースキンを用いた菌床と比べて高かった。従って、菌床としてキノコ栽培に供される条件下においても、シルバースキンはその保水力を発揮し得ることがわかる。キノコ子実体が収穫されるまでには菌床形成から数ヶ月を要する場合もあり、シルバースキンの高い保水性は、菌床のメンテナンス(水分含有率調整、容器側面・底面への子実体形成防止等)に有利に働くと考えられる。
【0048】
〔シルバースキン抽出液の成分〕
表1に、使用した未洗浄シルバースキンの可溶性成分の組成を示す。前記未洗浄シルバースキン(水分約2.5%)に20倍量(重量比)の水を加え、50℃で5時間攪拌して抽出した液を試料とし、この試料に含まれる可溶性成分(以下10種の項目)について試験した。尚、水分は常温常圧加熱法(食品衛生検査指針 理化学編、厚生省生活衛生局監修(1991年)準拠)、全糖はフェノール硫酸法(還元糖の定量法 福井作蔵著、学会出版センター(1990年)準拠)、還元糖はソモジ−ネルソン(Somogyi−Nelson)法(還元糖の定量法 福井作蔵著、学会出版センター(1990年)準拠)、タンパク質はケルダール法(係数 6.25)(食品衛生検査指針 理化学編、厚生省生活衛生局監修(1991年)準拠)、灰分は直接灰化法(食品衛生検査指針 理化学編、厚生省生活衛生局監修(1991年)準拠)、カフェインは「加工食品の栄養成分分析方法(日本健康・栄養食品協会編集(1986年))」による方法(HPLC)、クロロゲン酸類はHPLC(G.H.D.van der stegen、and J.van Duizn:ASIC、9th colloque、London,1980、p107−112を参考)、総ポリフェノールは「加工食品の栄養成分分析方法(日本健康・栄養食品協会編集(1986年))」による方法(フォーリン−デニス(Folin−Denis)法(タンニン酸標準))、脂質はエーテル抽出(食品衛生検査指針 理化学編、厚生省生活衛生局監修(1991年)準拠)、可溶性固形分は常温常圧加熱法(食品衛生検査指針 理化学編、厚生省生活衛生局監修(1991年)準拠)によって測定した。
【0049】
【表1】
【0050】
表1は、気乾状態のシルバースキンにおける、上記試験項目に該当する成分の含有量を示す(尚、「総ポリフェノール」は、「可溶性固形分」の一部をなす成分である。)。
【0051】
尚、前記可溶性固形分は、コーヒー豆の品種や焙煎度に関わらず、ほぼ一定であると考えられる(表2)。表2中のL値は焙煎コーヒー豆の明度であり、焙煎度合の目安を表す。
【0052】
【表2】
【0053】
〔シルバースキン成分とキノコ生長との関連〕
未洗浄シルバースキン(気乾状態:水分含有率約2.5%)と、重量比で20倍の水とを混合し、これを室温で攪拌しながら1時間保持し、未洗浄シルバースキンの可溶性成分を抽出した抽出液を得た。前記抽出液は、シルバースキンから濾別され、更に室温で減圧濃縮した。得られた濃縮液を、更に100℃の乾熱器で乾燥させて、未洗浄シルバースキン由来の可溶性固形分(粉末状)を得た。
ポテトデキストロース寒天培地(PDA培地/日水製)を、キノコ栽培用の培地に用いた。直径90mmの15ml容シャーレに、前記可溶性固形分を加えた前記PDA培地を入れて平板培地を準備し、ここに、下記4種の代表的な食用キノコを夫々接種した。前記可溶性固形分の添加量は、重量/容積比で、0.04,0.08,0.12、0.2,0.4,0.6,1.0,2.0又は4.0%とした。尚、酵母エキス・麦芽エキス寒天培地(MYA培地)で24℃、10日間平板培養したものをコルクボーラ(直径5mm)で打ち抜いた菌糸体を接種源とした。
【0054】
(1)供試菌A
ヒラタケ(菌興1号(財団法人日本きのこセンター))
(Pleurotus ostreatus(Jacq.:Fr.)Kummer)
(2)供試菌B
ブナシメジ(UCC上島珈琲株式会社 R&Dセンター保存株)
(Hypsizigus marmoreus(Peck.)Bigelow)
(3)供試菌C
タモギタケ(有限会社大貫菌蕈)
(Pleurotus cornucopiae(Paulet)Rolland var.citrinopileatus(sing)Ohira)
(4)供試菌D
エリンギ(財団法人福島県きのこ振興センター)
(Pleurotus eryngii(DC.:Fr)Quel)
【0055】
夫々の供試菌毎に5検体(平板培地)を準備し、23℃、暗黒下で、10日間栽培した。夫々の検体のコロニーの直径を測定し、菌糸体伸長を算定した。
【0056】
夫々の供試菌毎に5検体(平板培地)を準備し、23℃、暗黒下で、10日間栽培した。夫々の検体となる培地を熱水で溶解し、菌糸体を濾別し、温水・冷水で順次洗浄後、菌糸体の乾燥重量を測定した。
【0057】
図6〜9に、前記可溶性固形分の添加量に対する、供試菌A〜Dの菌糸体伸長量及び菌糸体重量の変化を示す。
これらの結果から、可溶性固形分の添加量が増えるほど、即ち、培地中の可溶性固形分濃度が高まるほど、供試菌のコロニー直径は小さくなり、又、菌糸体重量も減少する傾向にあることがわかった。又、発明者らの観察によって、前記可溶性固形分の濃度が上昇するに従って、上記4種の供試菌の菌糸が空気中に伸びていく傾向が強くなることがわかった。このことから、シルバースキンの可溶性固形分にキノコ菌糸体の生育を阻害する物質が含まれていることがわかる。
【0058】
ここで、前記4種の供試菌における前記可溶性固形分の添加許容量(寒天平板培地に対する重量/容積比)が、ヒラタケ(供試菌A)で1.0%未満、ブナシメジ(供試菌B)では0.4%未満、タモギタケ(供試菌C)では1.0%未満、エリンギ(供試菌D)では1.0%未満であったことから(図6〜9参照)、3種の供試菌で良好な生育を許容した添加許容量0.6%、より好ましくは4種すべての供試菌で良好な生育を許容した0.2%が、培地(菌床)へのシルバースキン材料の配合比率を決定するにあたって、一応の目安になると考えられる。
【0059】
これらの結果に基づいて、前記シルバースキンから可溶性固形分を除去することによって、キノコ栽培用の培地にシルバースキンを高比率で配合することができると考えた。よって、前記シルバースキンから前記可溶性固形分を除去する程度及びその処理方法について検討した。
【0060】
〔シルバースキン由来の可溶性固形分の濃度測定方法についての検討〕
シルバースキンが浸る程度に70℃の熱水(150g)を前記シルバースキン(水分2.5%)5gに加えてウォーターバスで10分間保持し、その後、前記シルバースキンと熱水とを濾別し(洗浄工程)、これを16回繰り返した。抽出された洗浄廃液中の可溶性固形分濃度は、前記常温常圧法(常圧で100℃に加熱し、恒量になるまで乾燥しその重量を測定)で測定した。この洗浄廃液の中のポリフェノール濃度は、前述したフォーリン−デニス法(タンニン酸標準)で測定した。また、前記洗浄廃液の420nmにおける吸光度も測定し、前記洗浄廃液中の可溶性固形分濃度、ポリフェノール濃度及び420nmにおける吸光度の間の相関を求めた。尚、これらのデータは、下記シルバースキンからの可溶性固形分除去方法の検討のデータにも利用している。
【0061】
図12(a)には、洗浄廃液の420nmにおける吸光度と、常温常圧法によって測定された前記洗浄廃液に含まれる可容性固形分濃度(重量%)との相関が示され、図12(c)には、洗浄廃液の420nmにおける吸光度と、フォーリン−デニス法により測定された前記洗浄廃液に含まれる総ポリフェノール濃度(重量%)との相関が示され、図12(b)には、前記洗浄廃液に含まれる可容性固形分濃度(重量%)と総ポリフェノール濃度(重量%)との相関が示されている。これら3者の間には非常に高い相関性が見られる。これらの結果から、洗浄廃液の420nmにおける吸光度に基づいて、前記洗浄廃液に含まれる可容性固形分濃度と総ポリフェノール濃度とを算出することができることがわかる。
【0062】
〔シルバースキンからの可溶性固形分除去方法の検討〕
シルバースキンが浸る程度に70℃の熱水(150g)を前記シルバースキン(水分2.5%)5gに加えてウォーターバスで10分間保持し、その後、前記シルバースキンと熱水とを濾別し(洗浄工程)、これを16回繰り返して洗浄済シルバースキンを得る実験を行なった。抽出された洗浄廃液中の可溶性固形分は、上述したように、420nmの吸光度に基づいて算定した。
洗浄回数0回で残存している可溶性固形分、即ち、全可溶性固形分は、シルバースキンを20倍量の熱水で1時間還流抽出(洗浄)を行い、この洗浄廃液を適宜アルミ皿にとり、常圧で100℃に加熱し、恒量になるまで乾燥しその重量を測定し、シルバースキンの重量(気乾状態)に対する比で表わした。
【0063】
【表3】
【0064】
図10(a)及び(b)は、前記シルバースキンからの前記可溶性固形分の抽出・残存比率(重量比)と総ポリフェノールの抽出・残存比率(重量比)とを示し、表3は、キノコ栽培用菌床を構成する培地の代表的な組成(重量比で、基材約25%、栄養分(米ぬか)約10%、水分65%)における前記可溶性固形分の存在比を示す。これらの結果によれば、4回洗浄することによって、前記シルバースキンに残存している可溶性固形分を前記シルバースキン全体に対して約0.6%にまで低減することができる(表3参照)。又、前記可溶性固形分の抽出パーターンと総ポリフェノールの抽出パターンとはほぼ同じであり、この方法によって、両者を効率よく抽出することができるのがわかる(図10参照)。
【0065】
尚、上記条件で、シルバースキンの浸漬時間と可溶性固形分及びポリフェノールの抽出度合いについての検討も行った。この結果、10分以上シルバースキンを浸漬して得た抽出液に含まれる可溶性固形分量及びポリフェノール量は、ほぼ一定であった。従って、抽出に要する時間は、それほど長くなくてよいことがわかった。
【0066】
〔シルバースキン洗浄が保水性に与える影響〕
尚、前掲の保水性試験の項で使用した条件と同じ条件で、洗浄前後におけるシルバースキンの保水性の変化の有無について検討した。
洗浄済シルバースキン(水分含有率2.5%、可溶性固形分2.0%)は、気乾状態(水分含有率約2.5%)のシルバースキンに、重量比で50倍量の熱水を加えて、室温で攪拌しながら1時間抽出し、洗浄液をデカンテーションで分別し、更に固体部分を100℃の乾熱器で乾燥して得た。
図11に示すように、洗浄の有無は、シルバースキンの保水性にほとんど影響を与えなかった。従って、洗浄処理を施してキノコの伸長を阻害する成分を除去したシルバースキンを用いたキノコ培養用培地でも、高い保水性を示すことがわかる。
【0067】
〔キノコの栽培例〕
以下、実験例1〜4に示すように、おが屑を含む従来のキノコ培養用培地を用いた場合と、シルバースキンを含む本発明に係るキノコ培養用培地を用いた場合と、更には、前記シルバースキンに洗浄処理を施した場合とにおけるキノコの菌糸体生長と子実体形成について検討した。
何れの実験例においても、図12(a)に示す式を用いてシルバースキン由来の可溶性固形分の濃度を算定した。ここで、図12(b)及び(c)に示す式を用いて、シルバースキン由来のポリフェノール濃度も算定することができたので、以下の実験例において、可溶性固形分濃度から総ポリフェノール濃度を導き出すことができる(データ省略。)。
【0068】
〔実験例1〕
前記供試菌A(ヒラタケ)の菌糸体伸長を検討した。
気乾状態(水分含有率約2.5%)のシルバースキンに、重量比で50倍量の熱水を加えて、室温で攪拌しながら1時間抽出した。洗浄液をデカンテーションで分別し、更に固体部分を100℃の乾熱器で乾燥し洗浄済シルバースキン(水分含有率2.5%、可溶性固形分2.0%)を得た。
対照区(ブナおが屑)、シルバースキン(未洗浄)、シルバースキン(洗浄済)の3種の培地基材を準備した。シルバースキン(未洗浄)、シルバースキン(洗浄済)は、最終的に水分が65重量%になるように水を添加した培地を作成した(基材:水=35:65)。又、対照区(ブナおが屑)、シルバースキン(洗浄済)の夫々の培地基材に対して米ぬかを20重量%添加し、最終的に水分が65重量%になるように水を添加した培地を作成した(基材:米ぬか:水=28:7:65)。このようにして調製した培地を120gとり、250ml容ガラスビン(直径6.3cm、高さ15cm)に充填した。これを、121℃で40分加熱し殺菌した。これを、一晩放置して冷却して得た菌床(pH5.5)(高さ12.5cm)に、前記供試菌Aを1白金耳接種した。
上述したように作成した4種の試験区の菌床(試験区毎に10検体)を、23℃、湿度65%、暗黒下で栽培し、栽培開始から23日目のヒラタケ菌糸の伸長距離を測定した。
【0069】
図13に示すように、対照区(ブナおが屑+米ぬか)では、ヒラタケ菌糸は11.7cm伸びていた。シルバースキン(未洗浄)区では、ヒラタケ菌糸は5.94cm伸びていた。シルバースキン(洗浄済)区では、ヒラタケ菌糸は9.55cm伸びていた。シルバースキン(洗浄済+米ぬか)区では、ヒラタケ菌糸は10.9cm伸びていた。
【0070】
これらの結果から、米ぬかを添加していない未洗浄のシルバースキンを用いた菌床(シルバースキン由来の可溶性固形分8.133%)では、対照区には及ばないが、ヒラタケの菌糸が伸長することがわかった。又、シルバースキンに洗浄処理を施した洗浄済区(菌床中のシルバースキン由来の可溶性固形分0.7%)では、未洗浄区と比べてヒラタケ菌糸はよく延びることがわかった。そして、おが屑に代えて洗浄済シルバースキンを使用した米ぬか入り菌床(シルバースキン由来の可溶性固形分0.56%)においては、おが屑を用いた場合と同程度の菌糸体伸長が得られることがわかった。
【0071】
〔実験例2〕
前記供試菌A(ヒラタケ)の菌糸体伸長を検討した。
気乾状態(水分含有率約2.5%)のシルバースキンに、重量比で20倍量の熱水を加えて、室温で攪拌しながら1時間抽出した。洗浄液をデカンテーションで分別し、更に固体部分を100℃の乾熱器で乾燥し洗浄済シルバースキン(水分含有率2.5%、可溶性固形分2.0%)を得た。
対照区(ブナおが屑)、シルバースキン(未洗浄)、シルバースキン(洗浄済)の3種の培地基材を準備し、夫々の培地基材に対して米ぬかを20重量%添加し、最終的に水分が65重量%になるように水を添加した培地を作成した(基材:米ぬか:水=28:7:65)。このようにして調製した培地を120gとり、250ml容ガラスビン(直径6.3cm、高さ15cm)に充填した。これを、121℃で40分加熱し殺菌した。これを、一晩放置して冷却して得た菌床(pH5.5)(高さ12.5cm)に、前記供試菌Aを1白金耳接種した。
上述したように作成した3種の試験区の菌床(試験区毎に10検体)を、23℃、湿度65%、暗黒下で栽培し、菌糸が菌床全体に蔓延した時点で伸長速度を測定した。
【0072】
図14に示すように、対照区(ブナおが屑+米ぬか)では、ヒラタケ菌糸は平均して1.08cm/日(標準偏差±0.071)伸びていた。シルバースキン(未洗浄+米ぬか)区では、ヒラタケ菌糸は平均して0.83cm/日(標準偏差±0.064)伸びていた。シルバースキン(洗浄済+米ぬか)区では、ヒラタケ菌糸は平均して1.05cm/日(標準偏差±0.103)伸びていた。
【0073】
これらの結果から、未洗浄のシルバースキンを用いた菌床(シルバースキン由来の可溶性固形分6.524%)であっても、おが屑を用いた場合と同程度にヒラタケの菌糸が伸長することがわかった。又、おが屑に代えて洗浄済シルバースキンを使用した菌床(シルバースキン由来の可溶性固形分0.56%)においては、更にヒラタケ菌糸体が伸長することがわかった。
【0074】
〔実験例3〕
前記供試菌B(ブナシメジ)の菌糸体伸長を検討した。
ブナシメジを用いた以外は、実験2と同様にして、菌糸体の伸長速度を測定した。
【0075】
図15に示すように、対照区(ブナおが屑+米ぬか)では、ブナシメジ菌糸は平均して0.50cm/日(標準偏差±0.026)伸びていた。シルバースキン(未洗浄+米ぬか)区では、ブナシメジ菌糸は平均して0.38cm/日(標準偏差±0.035)伸びていた。シルバースキン(洗浄済+米ぬか)区では、ブナシメジ菌糸は平均して0.50cm/日(標準偏差±0.018)伸びていた。
【0076】
これらの結果から、未洗浄のシルバースキンを用いた菌床であっても、おが屑を用いた場合と同程度にブナシメジの菌糸が伸長することがわかった。又、おが屑に代えて洗浄済シルバースキンを使用した菌床においては、更に菌糸体が伸長することがわかった。
【0077】
〔実験例4〕
前記供試菌A(ヒラタケ)の子実体収量について検討した。
対照区(クヌギおが屑)、シルバースキン(未洗浄)、シルバースキン(実験例2と同様に洗浄済)の3種の培地基材を準備した。夫々の培地基材に対して米ぬかを30重量%添加し、最終的に水分が65重量%になるように水を添加した(基材:米ぬか:水=24.5:10.5:65)。このようにして調製した培地を約120gとり、250ml容ガラスビンに充填した。これを、121℃で40分加熱し殺菌した。これを、一晩放置して冷却して得た菌床(pH5.5)(高さ12.5cm)に、前記供試菌Aを接種した。接種源として、1ビン当り2g用いた。
上述したように作成した検体(試験区毎に10検体)を、24℃、湿度65%、暗黒下で栽培した。菌回り終了後、菌掻きを行い、2時間冠水処理を施した。この後、14℃±2℃、湿度90%以上に保ってヒラタケの子実体形成を促した。カサの最大直径が3cmになった株を採取し、子実体生重量を測定した。
【0078】
図16に示すように、対照区(おが屑+米ぬか)では、培地重量あたりのヒラタケ子実体収率(重量%)は15.05%(標準偏差±2.54)であった。シルバースキン(未洗浄+米ぬか)では、培地重量あたりのエリンギ子実体収率は16.53(標準偏差±3.00)であった。シルバースキン(洗浄済+米ぬか)では、培地重量あたりのエリンギ子実体収率は17.88%(標準偏差±4.89)であった。
【0079】
未洗浄のシルバースキンが含まれる培地(シルバースキン由来の可溶性固形分5.7%)であっても、対照区と比べて子実体収率が良かった。そして、洗浄済シルバースキンを含む培地(シルバースキン由来の可溶性固形分0.47%)では、培地重量あたりの子実体収量は、対照区及び未洗浄のシルバースキンが含まれる培地と比べて、更に増加した。
このように、おが屑に代えてシルバースキン材料を使用することによって、ヒラタケ子実体を増産することができることができた。尚、シルバースキンを用いて栽培したヒラタケ子実体は、味、香り、肉質等の点において、従来のキノコ栽培用培地(基材としておが屑を使用)と変わるところはなかった。
【0080】
〔実験例5〕
前記供試菌D(エリンギ)の子実体収量について検討した。
対照区(ブナおが屑:スギおが屑=1:1(重量比))、シルバースキン(実験例1と同様に洗浄済)の2種の培地基材を準備した。夫々の培地基材に対して米ぬかを30重量%添加し、最終的に水分が65重量%になるように水を添加した(基材:米ぬか:水=24.5:10.5:65)。このようにして調製した培地を約500gとり、750ml容ポリプロピレンビン(直径8.5cm、高さ13.0cm)に充填した。これを、121℃で60分加熱し殺菌した。これを、一晩放置して冷却して得た菌床(pH5.5)(高さ12.0cm)に、前記供試菌Dを接種した。尚、種菌として市販されているエリンギ(財団法人福島県きのこ振興センター)を接種源として、1ビン当り5g用いた。
上述したように作成した検体(試験区毎に25検体)を、22℃、湿度65%、暗黒下で栽培した。菌回り終了後、菌掻きを行なった。この後、16℃±2℃、湿度90%以上に保ってヒラタケの子実体形成を促した。カサの最大直径が5cmになった株を採取し、子実体生重量を測定した。
【0081】
図17に示すように、対照区(ブナ及びスギおが屑+米ぬか)では、培地重量あたりのエリンギ子実体収率(重量%)は101.67%(標準偏差±8.12)であった。シルバースキン(洗浄済+米ぬか)では、培地重量あたりのエリンギ子実体収率は146.73%(標準偏差±3.50)であった。
【0082】
洗浄処理によってシルバースキン由来の可溶性固形分を0.47%にまで低減した培地では、対照区と同等の栽培期間にもかかわらず、培地重量あたりの子実体収量は対照区と比べて約40%増加した。
このように、おが屑に代えて洗浄済シルバースキンを使用することによって、エリンギ子実体を増産することができた。尚、シルバースキンを用いて栽培したエリンギ子実体は、味、香り、肉質等の点において、従来のキノコ栽培用培地(基材としておが屑を使用)と変わるところはなかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】コーヒー果実の部分断面図
【図2】キノコ栽培方法を表わすフローチャート
【図3】シルバースキンの洗浄工程を表わすフローチャート
【図4】キノコ培養用培地を構成する各種成分の保水率と含水率とを示すグラフ
【図5】シルバースキンの保水性を示すグラフ
【図6】シルバースキン由来の可溶性固形分添加量に対する、ヒラタケ(供試菌A)の菌糸体伸長量及び菌糸体重量の変化を示すグラフ
【図7】シルバースキン由来の可溶性固形分添加量に対する、ブナシメジ(供試菌B)の菌糸体伸長量及び菌糸体重量の変化を示すグラフ
【図8】シルバースキン由来の可溶性固形分添加量に対する、タモギタケ(供試菌C)の菌糸体伸長量及び菌糸体重量の変化を示すグラフ
【図9】シルバースキン由来の可溶性固形分添加に対する、エリンギ(供試菌D)の菌糸体伸長量及び菌糸体重量の変化を示すグラフ
【図10】シルバースキンの熱水抽出と、可溶性固形分の除去量との相関関係を表わすグラフ
【図11】未洗浄及び洗浄済シルバースキンにおける保水率と含水率とを比較したグラフ
【図12】シルバースキンに含まれる可溶性固形分の濃度と420nmにおける吸光度と
【図13】種々の菌床で生育させたヒラタケ(供試菌A)の菌糸体伸長を示すグラフ
【図14】種々の菌床で生育させたヒラタケ(供試菌A)の菌糸体伸長を示すグラフ
【図15】種々の菌床で生育させたブナシメジ(供試菌B)の菌糸体伸長を示すグラフ
【図16】種々の菌床で生育させたヒラタケ(供試菌A)の子実体収量を示すグラフ
【図17】種々の菌床で生育させたエリンギ(供試菌D)の子実体収量を示すグラフの相関関係を表わすグラフ
Claims (10)
- 基材にシルバースキンを含むキノコ栽培用培地。
- シルバースキンに含まれる可溶性固形分の少なくとも一部を水抽出する洗浄処理を施す洗浄工程を有する、シルバースキンを含むキノコ栽培用培地の製造方法。
- 前記可溶性固形分の少なくとも一部がポリフェノールである請求項2に記載のキノコ栽培用培地の製造方法。
- 請求項2〜4の何れか1項に記載されたキノコ栽培用培地の製造方法を用いて製造される、前記可溶性固形分の少なくとも一部が抽出されたシルバースキンを含むキノコ栽培用培地。
- 前記シルバースキン由来の可溶性固形分が培地全体の0.6%以下である請求項1又は5に記載のキノコ栽培用培地。
- 前記シルバースキン由来の可溶性固形分が培地全体の0.2%以下である請求項1又は5に記載のキノコ栽培用培地。
- その水分含有率が60〜70%である請求項1又は5〜7の何れか1項に記載のキノコ栽培用培地を含む菌床。
- 請求項1又は5〜7の何れか1項に記載のキノコ栽培用培地又は請求項8に記載の菌床を用いるキノコ生産方法。
- 前記キノコがヒラタケ属のキノコである請求項9に記載のキノコ生産方法。
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