JP3661885B2 - スクリュー真空ポンプ及びねじ歯車 - Google Patents

スクリュー真空ポンプ及びねじ歯車 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スクリュー真空ポンプ及びスクリュー真空ポンプに適したねじ歯車に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、低・中真空領域では油回転ポンプ、ル−ツポンプ、拡散ポンプなど種々形式の真空ポンプが用いられてきた。
例えば、半導体の製造分野では、真空状態にした容器内にウエハを収納して所定の処理が行われるが、この処理では、容器内にN2 ガス等の不活性ガスを供給しつつ真空ポンプで吸引し、容器内の不純物(O2 、CO2 等)を除去し、数Torrから10-4Torrレベルの真空状態としている。
このような半導体製造工程において使用される真空ポンプとしては、油回転ポンプ、ルーツ式のメカニカルブースタポンプ等が用いられている。
【0003】
しかし、油回転ポンプでは、使用している潤滑用油が半導体製造過程で用いる各種ガス(例えば、ヒ素、ガリウム、塩素、Poly−Si、フッ素等)と接触して、潤滑油としての寿命を短くするという問題があり、また油分子が半導体製造容器内を汚染して半導体製造工程上好ましくないという問題があった。
【0004】
また、上記ポンプでは、正常動作する圧力範囲が狭いため、所定圧力に到達するまでに数種のポンプを切換えて使用しなければならず、大気圧から10-4Torrレベルまで一台の真空ポンプで排気することができないという問題があった。
【0005】
これら問題を解決するものとして、特開昭60−216089号公報に示されるオイルフリ−スクリュ−真空ポンプが既に提案されている。
前記公報に示されたスクリュ−真空ポンプは無潤滑式で、上記圧力範囲を一台でカバーできるスクリュ−真空ポンプである。
【0006】
このスクリュ−式真空ポンプの概略を図1、2に基づいて説明する。
図に示すように、雄ロータ10と雌ロータ11は主ケーシング12と吸入ケーシング13内の軸受14、15、16、17により回転自在に支えられている。
前記雄ロータ10と雌ロータ11はねじ歯車からなり、この歯車は歯すじねじれ角は常に一定の角度であって、回転軸方向ピッチ及び軸直角面ピッチも一定であって、前記ロータ10、11の回転角の変化に伴って変化はするものではない。
【0007】
また、ロータの吸入側10aは10-4Torrレベルの低圧であり吐出側10bは大気圧になるため、ロータに作用するラジアル荷重は吸入側の方がはるかに小さい。そのため、吸入側の軸受14、15には深みぞ玉受軸を用いてラジアル荷重とスラスト荷重を支え、吐出側の軸受16、17には円筒ころ軸受を用いてラジアル荷重のみを支えている。
前記ロータの軸端にはタイミングギヤ18、19が取り付けられ、雄、雌ロータ10、11が互いに接触しないよう両ロータ間の隙間が調整される。
また軸受け14、15の潤滑は飛沫給油により行い、吸入カバ−20内に溜った潤滑油21をタイミングギヤによって跳ねかけるようになされている。
【0008】
一方軸受16、17の潤滑のため雄ロータ軸には円盤22が取り付けられ、吐出カバ−23内の潤滑油24を円板22により跳ねかけるようになされている。
また、シャフトシール25、26、27、28は軸受やタイミングギヤの潤滑油が作動室内へ侵入するのを防いでいる。
【0009】
ロータの吐出側作動室10bと吐出カバ−23内はほぼ大気圧になるので吐出側のシャフトシール27、28に作用する差圧は比較的小さいが、吸入側作動室10aは10-4Torrレベルの圧力となるため吸入カバ−20内を大気に開放すると吸入側シャフトシール25、26に作用する差圧が大きくなりシールが難しくなる。
そのため、吸入カバ−20内を排圧管29、30によって低圧の作動室10cと連通させ、吸入カバ−20内の圧力を下げてシャフトシール25、26に作用する差圧を小さくしてシール効果を高めている。
【0010】
前記吸入カバ−20内は油の飛沫が充満しているので、この油の排圧管29、30を通って作動室へ入るのを防ぐため、吸入カバ−には飛沫分離室31が設けられ、また排圧管にはオイルトラップ32が取り付けられている。
また万一排圧管を通って油が作動室へ入った場合でも、この油が吸入ポート33側へ逆流しないようにするため、主ケーシング12の排圧口34はロータの作動室10cが吸入口33から完全に閉じられた後の位置に開口されている。
【0011】
雄ロータ10の作動室10cは、この作動室が吸入口33を通過後吐出口35と連通するまでの間に雌ロータ11と2ケ所の噛み合い部36、37を有し、同様に雌ロータの作動室11cは雄ロータと2ケ所の噛み合い部38、37を有する。
ロータの回転に伴い気体は吸入口33からロータ歯溝とケーシングによって形成される作動室に吸い込まれ、吐出口35から吐出される。
作動室10c、11cはロータの回転に伴い容積一定のまま気体を移送するが、さらにロータが回転した位置にある作動室39、40はロータの回転に伴いその容積を減少させ気体を圧縮する。
【0012】
更に、雄ロータ10と雌ロータ11が噛み合っている状態をロータの周方向に展開した模式図である図3に基づいて説明する。
図に示すように、ロータを覆うケーシング12はその軸方向の一端が気体の吸入口33として大きく開口しており、反対側には吐出口35が設けられている。
この両口以外ではケーシング12は微少な隙間をもってロータ10、11を覆い、ロータとケーシングによりV字形の作動室が形成されている。
【0013】
ロータが回転すると両ロータの噛み合い部は吸入口33から吐出口35へ向かって移動するが、この際作動室41はその容積を減少させ作動室内の気体を圧縮する。
一方、作動室42は容積一定であるので気体の圧縮作用はなく、移送作用をなす。
【0014】
即ち、前記雄ロータ10と雌ロータ11は、歯すじねじれ角は常に一定の角度であって、回転軸方向ピッチ及び軸直角面ピッチも一定のねじ歯車で構成されるため、ロータとケーシングにより形成されるV字形の作動室42の容積は一定である。
しかし、ロータが回転し、両ロータの噛み合い部は吸入口33から吐出口35へ向かって移動すると、ケーシング12の端板12aによって作動室41の容積は減少する。
したがって、作動室41は容積を減少させ作動室内の気体を圧縮移送するように作用し、一方作動室42は容積が一定であるので気体の圧縮作用はなく、単に移送をなすように作用する。
【0015】
尚、図中、作動室43は吐出口35を通して気体の吐出中であり、また吸入口33と連通している各作動室は、ロータの回転とともにその容積を増大させ気体の吸入作用をなしている。また、上述したようなスクリュー流体機構は、圧縮ポンプとしても利用されており、更に、モータとしても利用できるものである。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
以上、詳述したように真空ポンプとして利用される従来のスクリュ−流体機械は、作動室の容積を減少させ流体を圧縮する作動室と、作動室の容積を一定とし、流体に圧縮作用を及ぼすことなく、単に移送作用をなす作動室とを有している。
【0017】
そのため、従来のスクリュ−真空ポンプでは局部的(圧縮作用がなされる部分)な圧力上昇に起因して、真空ポンプのローター及びケ−シングの一部が異常に温度上昇する。即ち、図6の点線に示すように、作動室の容積を減少させ気体を圧縮する作動室が位置する吐出側の温度が異常に高くなるという傾向にあった。
その結果、局部的温度上昇によって、スクリュ−真空ポンプを構成する部材の熱膨張が不均一となり、ケーシングとローター、雄ローターと、雌ローターのかみ合い間の寸法精度等を良好なものにすることができない等の技術的課題があった。
【0018】
本発明の目的はこのような課題を解決するためになされたものであり、局部的な温度上昇のないスクリュー真空ポンプを提供せんとするものである。また、そのようなスクリュー真空ポンプに適したねじ歯車を提供せんとするものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明にかかるスクリュー真空ポンプは、互に噛み合う雄ロータ及び雌ロータと、両ロータを収納するケ−シングと、雄雌ロータとケーシングとにより形成される流体作動室と、該作動室の一端部および他端部に連通しうるようケーシングに設けられた流体の流入口および流出口とを備えたスクリュー真空ポンプにおいて、前記雄雌ロータを構成するねじ歯車は、その歯車のピッチ円筒上での歯すじ転がり曲線が一つの曲線であって単調増加関数で表され、かつ前記曲線の微分係数も単調増加関数で表され、該ねじ歯車のねじれ角が当該ねじれの進行に伴って連続的に増加する歯車であって、更に、前記各ねじ歯車は、そのねじ山の回転軸方向ピッチは連続的に変化するが、軸直角ピッチが円周方向において一定な歯車であって、該軸直角ピッチはピッチ円筒半径と歯数との比と、2πとの積に等しい歯車であり、前記流体作動室の容積が、流入口から流出口に進行するにつれて連続的に減少し、前記流体作動室は吸引作用、連続圧縮移送作用、吐出作用を有するように構成されていることを基本的構成としている。
【0020】
このように構成された真空ポンプにあっては、前記雄雌ロータを構成するねじ歯車は、その歯車のピッチ円筒上での歯すじ転がり曲線が一つの曲線であって単調増加関数で表され、かつ前記曲線の微分係数も単調増加関数で表され、該ねじ歯車のねじれ角が当該ねじれの進行に伴って連続的に増加する歯車であって、更に、前記各ねじ歯車は、そのねじ山の回転軸方向ピッチは連続的に変化するが、軸直角ピッチが円周方向において一定な歯車であって、該軸直角ピッチはピッチ円筒半径と歯数との比と、2πとの積に等しい歯車であり、前記流体作動室の容積が、流入口から流出口に進行するにつれて連続的に減少し、前記流体作動室は吸引作用、連続圧縮移送作用、吐出作用を有するように構成されている
したがって、前記雄雌ロータとケーシングとにより形成される作動室は、吸入、連続圧縮、吐出作用を有し、作動室の容積を一定とした単なる移送作用を有しないため、局部的な圧力上昇による異常な温度上昇を防止することができる。
しかも、回転軸直角シール性が高くなり流体作動室の気密性を良好とすることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
先ず、本発明にかかるスクリュー流体機械においてスクリューに連続的に変化するねじれ角を持たせる場合における真空ポンプとしての一実施例を本発明にかかるねじ歯車(スクリュー)の実施例の説明も兼ねて図4乃至図5に基づいて説明する。
本発明者らは、吸引した気体に圧縮作用を及ぼすことなく、単に移送作用をなす容積一定の作動室を廃し、すべての作動室の容積を連続的に減少させ、気体を圧縮する作動室とすることに着目した。
そして、作動室の容積を連続的に減少させるために、スクリュー真空ポンプの雄ロータと雌ロータを構成する歯車の歯すじねじれ角をロータの回転角にしたがって変化させ、ロータとケーシングにより形成されるV字形の作動室容積を変化させようとしたものである。
したがって、ここでの重要点は雄ロータと雌ロータを構成するねじ歯車の形状にあるため、以下に説明する一実施例ではスクリュー真空ポンプのねじ歯車の形状について説明することとし、スクリュ−真空ポンプの他の構造は従来と同様でもあり説明を省略する。
【0022】
本実施例にかかるスクリュ一真空ポンプに用いられるねじ歯車を図4及び図5に基づいて説明する。
ここで、図4はねじ歯車の平面図であり、図5は横軸にピッチ円筒上の雄雌歯車の転がり周長xM 及びxF を、縦軸に回転軸方向の進行量yをとり、このxM −y面に雄歯車、xF −y面上に雌歯車の歯すじ転がり曲線の展開図を示す。
尚、この図の左側半分は雌歯車についてのものでxはxF を表し、右側半分はは雄歯車についてのものでxはxM を表す。xの符号は、正の方向に歯車の歯すじをたどった時に歯すじが吸入側から吐出側に移動するものとする。即ち、雄歯車では右方向に正の向き、雌歯車では、左方向に正の向きとする。雄歯車は雄ロータに用いられる歯車であり、雌歯車は雌ロータに用いられる歯車である。
図5ではロータの吸入口の位置y=0とし、吐出口の位置をy=Lとする。又雄雌ロータは、吸引口(y=0)でピッチ円筒上の雄雌の歯すじが一致しているものとし、その点をxM =xF =0とする。
またここで歯すじ転がり曲線とは、一般的にはつる巻線とも呼ばれているものである。
【0023】
又、図5のx,yの有効な範囲については、制限はない。即ち、xについては、
M ≧0、xF ≧0
が有効な範囲であり、
yについては、ロータの長さLで決まり、yの範囲は
0≦y≦L
で与えられる。
【0024】
吸入口(y=0)において、ピッチ円筒上で雄雌ロータが接触一致している点(すなわちxM =0及びxF =0)から伸びている雄雌ロータの歯すじ転がり曲線の展開図は、図5において原点から発し、共にxの増加に伴ってyも増加する。即ち、雄ロータについては、yはxM の単調増加関数であり、雌ロータについては、yはxF の単調増加関数である。
このことは、xとyを交換してyを独立変数とみなし、xがyの関数であると考えても変わらない。即ち、
雄ロータについては
M =FM (y) …(1)
はyの単調増加関数であり、
雌ロータについては
F =FF (y) …(2)
はyの単調増加関数である。
また、共に原点を通るので、
M (0)=FF (0)=0 …(3)
である。
【0025】
ここで、βMg、βFg、θM 、θF によって
βMg;ピッチ円筒上での雄ロータのねじれ角
βFg;ピッチ円筒上での雌ロータのねじれ角
θM ;雄ロータ回転角
θF ;雌ロータ回転角
を表すことにする。ねじれ角βMg、βFgは図5に示す角度である。又、回転角θM 、θF は雄雌のピッチ円筒の半径をRM 、RF とすれば、
θM =xM /RM …(4)
θF =xF /RF …(5)
で表される。
【0026】
(1)、(2)式を用いれば、雄雌ロータのねじれ角βMg、βFg
tanβMg=dxM /dy=dFM /dy …(6)
tanβFg=dxF /dy=dFF /dy …(7)
で与えられる。
【0027】
雄雌ねじロ−タのねじの噛み合いにより画成される各流体作動室が、それらロ−タの回転に伴い、容積を連続的に減少しつつ真空ポンプ吐出方向に移動するよう、ロータねじれ角を連続的に増加させる。このことは、(6)、(7)式からdFM /dy、dFF /dyを連続的に増加させることと、等価である。即ち、(1)、(2)式で与えられるFM (y)、FF (y)は、共に原点を通り、yに関して単調増加関数であり、かつそれらの微分係数も単調増加関数である。即ち、関数FM (y)、FF (y)は、yの変域0≦y≦Lにおいて、
M (0)=0、FF (0)=0 …(8)
dFM (y)/dy>0、dFF (y)/dy>0 …(9)
2M (y)/dy2 >0、d2F (y)/dy2 >0 …(10)
を満足しなければならない。即ち(8)、(9)、(10)式を満足する任意の関数
M =FM (y)、xF =FF (y)
は、雄雌のロータ歯すじ転がり曲線の展開図として採用することができる。
【0028】
雄雌ロータの噛み合いの条件として、ピッチ円筒上における雄歯ねじれ角と雌歯ねじれ角は大きさ等しく、逆向きでなければならない。しかし、これまでの解析では、ピッチ円筒上での雄雌ロータの転がり周長xM 、xF の正の方向は互いに逆向きであるから、雄雌ロータの噛み合いの条件は全てのyの値で、
βMg=βFg …(11)
を満たさなければならない。この条件から、
tanβMg=tanβFg …(12)
即ち、(6)、(7)式から、変域内の全てのyの値で
dxM /dy=dxF /dy …(13)
の条件が得られる。
【0029】
(12)、(13)式から、xM =FM (y)とxF =FF (y)の関数は、全く同一のものであることが結論される。即ち、図5において示されている曲線は、y軸に対して左右対称であることが結論される。即ち、ねじれ角変化型ロータの設計に当たっては、
F(0)=0、dF/dy>0、d2 F/dy2 >0 …(14)
を満たす任意の関数、F(y)を選択し、これによって
M =FM (y)、xF =FF (y) …(15)
とする。
【0030】
ピッチ円筒上の軸直角面ピッチTは等しく、雄歯車の歯数をNM 、雌歯車の歯数をNF とすれば、
T=2πRM /NM =2πRF /NF …(16)
で与えられるが、他の歯型に対応するロータの歯すじ転がり曲線の展開図は、x=F(y)をx軸方向にmTだけ並行移動したものである。ただし、mは正又は負の整数である。図5にはこれらの曲線を点線で示してある。
【0031】
最も簡単な例として、F(y)として次のような二次関数、
F(y)=Ay2 +By (A>0、B>0) …(17)
を選択することができる。図5に示した曲線はこのような二次曲線の例である。
【0032】
以上のように特定されたねじれ角変化型歯車にあっては、ピッチ円筒上での歯すじ転がり曲線の展開図が、前記(14)式を満たす任意の関数で与えられるものとして、この曲線の勾配変化を基礎として、ピッチ円筒上での歯すじねじれ角を歯車の回転に対応して変化させると共に、これを基準として歯形形状部を既知のはすば歯車やねじ歯車の歯すじねじれ角の基礎的な考え方に基づき、回転軸直角平面上の軸直角ピッチTをピッチ円筒上で一致させることでかみ合いを実施し、回転軸方向ピッチts が、回転角の変化に伴い刻々変化しつつも回転軸直角平面上のかみ合い状態、歯形状況が保持されつつ、ねじれが回転軸方向(y方向)に進んでいく。
【0033】
即ち、ピッチ円筒上での転がり周長とねじれ進行方向量は、雄雌ロータで等しいことから、雄雌ロータのピッチ円筒上でのつる巻線の長さも等しい。即ち任意のyの変域[yi 、yj ]において、
【0034】
Figure 0003661885
【0035】
より、両方の歯車の噛み合いに対応して、変域[yi 、yj ]のピッチ円筒上でのつる巻線の長さは等しい。
また、歯すじ転がり曲線は回転角の関数としても表され、回転角と歯すじ転がり量は比例関係にある。雄雌歯形形状部のピッチ円径以外の径、RM ’、RF ’におけるつる巻線の長さは、(4)、(5)式を用い、(A)式におけるxM 、xF
x’M =xMM ’/RM x’F =xFF ’/RF
で置き換えることによって得られる。したがって、(A)に対応する式は、ピッチ円筒以外の径の接触部では成り立たず、滑りによって調整が取られている。即ち、
【0036】
Figure 0003661885
となる。
【0037】
雄雌ロータの噛み合いが行われるためには、回転角θM 、θF の間には
θMF =θFM …(18)
の関係が必要である。ここでNM 、NF はそれぞれ雄、雌ロータの歯数である。またピッチ円筒の半径RM 、RF は、ピッチ円筒の性質上
MF =RFM …(19)
の関係がある。(18)式を保ちつつθM 、θF が変化すれば、常に
M (θM )=yF (θF ) …(20)
が成り立つ。
【0038】
また、雄雌歯すじの軸方向進行量yM (θM )、yF (θF )から、回転軸方向ピッチts をθ(θは(20)式から、θM でもθF でも構わない)の関数として与えることができる。ts はθの増加とともに変化するが、y(θ)の位置の前後のピッチtV-、tV+は、
Figure 0003661885
で与えられる。
【0039】
従って図5におけるピッチtsg、ts (=tsg)は両ロータの噛み合い部におけるピッチを示すもので、tsg(n、n+1)、ts (n、n+1)は
Figure 0003661885
である。y(θ)の増加率dy/dθは
dy/dθ=Rdy/dx=R/(dx/dy)=R/(dF/dy)
であるから、y(θ)の増加率はdF/dyに反比例、即ち、yの増加とともに次第に増加率は減少していく。このことは、回転軸方向ピッチはyの増加と共に、次第に減少し、ts (n−1、n)>ts (n、n+1)、tsg(n−1、n)>tsg(n、n+1)と変化する。一方軸直角面ピッチは変化しないため、回転に伴っては、常に同一の歯形が現れる。
即ち、雄歯車の歯形と雌歯車の歯形で密閉状態にある容積は、回転に伴う移動に伴って時間的に縮小することができる。
【0040】
以上のように特定されたねじれ角可変型歯車にあっては、かみ合いピッチ円筒上での歯すじ転がり曲線が、単調にその勾配を変えかつ単調増加関数的に変化し、この歯すじねじれ曲線の勾配変化を基礎として、ピッチ円筒上での可変歯すじねじれ角を定め、これを基準として歯型形状部を既知のはすば歯車や、ねじ歯車の歯すじねじれ角の基礎的な考え方に基ずき、ねじれ進行方向の回転軸直角平面上の軸直角面ピッチTを一致させることでかみあいを実施し、回転軸方向ピッチtsgが、回転角の変化に伴い刻々変化しつつも回転軸直角平面上のかみ合い状態、歯型形状が保持されつつねじれが回転軸方向Y(θ)に進んで行くため、回転角と歯すじ転がり量は一定の関係を持ち、雄雌一対の歯車の歯型形状を回転軸方向の直角平面上で一致させることができ、回転軸方向の回転に伴い逐次現れる回転軸直角空間平面n(nM 又はnF )番目に回転当初と同一歯が現れる。
即ち、この歯車によれば、通常の歯車としての特徴を有するばかりでなく、回転軸直角平面上のシ一ル性の高いねじとしての特徴も併せ持つものである。
【0041】
また、回転軸方向ピッチを周期的かつ連続的に変化させることが可能である。
したがって、この歯車を用いて雄雌ロータを構成すれば、前記雄ロータと雌ロータの歯すじねじれ角はロータの回転角にしたがって変化し、その結果ロータとケーシングにより形成されるV字形の作動室容積を連続的に変化させることができる。
即ち、すべての作動室をその容積が減少する作動室とすることができる。
【0042】
以上のように、上記歯車を用いてスクリュ−真空ポンプや圧縮ポンプを構成すれば、図6の実線で示されるように作動室の容積は連続的に変化して連続圧縮し、移送を行うため、それらポンプの温度状態は、吸入側から吐出側に向けて徐々に温度が上昇し、局部的に温度が上昇することはない。
また、作動室は吸入ポ−トと連通した状態で気体を吸入する吸入作用、作動室内の気体を連続圧縮移送する連続圧縮移送作用、吐出ポ−トと連通した状態で気体を吐出する吐出作用を行い、単なる移送作用を有さないため、効率的に駆動することができる。
【0043】
更に、回転軸方向ピッチが変化するため、等ピッチの従来のスクリュ−流体機械と比べて、ロ−タの全長を短くすることができ、スクリュ−流体機械の小型化を図ることができるという効果を奏する。
【0044】
次に、本発明に係る流体機械において、雄雌ロータの各スクリュー部の少なくとも一端側にルーツ部を設ける場合の真空ポンプとしての一実施例について、図7乃至図9に基づいて説明する。
尚、図7は本実施例に用いられる雄雌ロ−タの斜視図であり、図8は雄雌ロ−タの平面図である。また図9は図7、8に図示した雄雌ロ−タを用いたスリュー真空ポンプの断面図であって、図10は図9のA−A断面図である。
【0045】
まず、本実施例の特徴について説明すると、従来雄雌ロ−タにはいわゆる単一のねじ歯車が形成されていたのに対し、本実施例は雄雌ロ−タに前記ねじ歯車とル−ツとを形成した点に特徴がある。
即ち、図7及び図8に示すように、雄雌ロ−タ101、102はねじ歯車部101a、102aと雄側ル−ツ部103、105、雌側ル−ツ部104、106とにより構成され、前記雄側ル−ツ部103、105、雌側ル−ツ部104、106は前記ねじ歯車部101a、102aの両端に形成されている。
【0046】
また、雄雌ロ−タ101、102のねじ歯車部101a、102aとケーシングによって形成される作動室101b、102bと、雄側ル−ツ部103、雌側ル−ツ部104とケーシングとによって形成される作動室103a、104aとは連通し、同様に作動室101b、102b、雄側ル−ツ部105、雌側ル−ツ部106とケーシングとによって形成される作動室105a、106aとは連通している。
尚、前記雄雌ロ−タ101、102の一端部には回転軸107、108が形成されている。
【0047】
次に、この雄雌ロ−タ101、102をケ−シングに配置した状態を図9、図10に基づいて説明する。
図に示すように、雄ロータ101と雌ロータ102は、主ケーシング109に収納され、前記主ケーシング109の一端面を密封する端板110に取りつけられた軸受111、112と副ケーシング117に取りつけられた軸受118、119とにより回転自在に支持されている。
前記主ケーシング109の端板110側には雄雌ロ−タ101、102で圧縮された気体を外部に吐出する吐出口109bが設けられている。また各軸受け111、112にはシ−ル材113、114が取りつけられ、前記シール材113、114によって後述するタイミングギヤ115、116による潤滑油が作動室内へ侵入するのを防いでいる。
【0048】
前記雄雌ロータ101、102の回転軸107、108には、副ケーシング117内に収納されたタイミングギヤ115、116が取付られ、雄、雌ロータが互いに接触しないように両ロータ間を調整している。
そして軸受111、112の潤滑は飛まつ給油より行ない、副ケーシング117内に溜った潤滑油(図示せず)をタイミングギヤ115、116によって跳ねかけるように成されている。
尚、前記主ケーシング109の他端側には副ケーシング120が取り付けられている。また前記主ケーシング109の他端側には吸入口109aが設けられている。
【0049】
このように構成されたスクリュ−真空ポンプは、雄、雌ロータ101、102の回転に伴い気体が吸入口109aから雄側ル−ツ部105、雌側ル−ツ部106とケーシングとによって形成される作動室103a、104aに吸い込まれる。この吸引時にル−ツ部103、104の作動室103a、104aによって、吸引した気体は圧縮される。
そして、前記作動室103a、104aと連通しているねじ歯車部101a、102aとケーシングによって形成される作動室101b、102bに移送される。前記作動室101b、102bはロータ101、102の回転に伴い当初容積一定のまま気体を移送するが、さらにロータが回転するとその容積を減少させ気体を圧縮する。
更に、圧縮された気体は作動室101b、102bと連通している雄側ル−ツ部105、雌側ル−ツ部106の作動室105a、106aに移送され、圧縮されながら吐出口109bから吐出される。
【0050】
尚、主ケーシング109の外側には気体の圧縮により温度が上昇するため、冷却ジャケット121を設け、このジャケット内に冷却水を通しケーシング109や圧縮気体を冷却するように成されている。
【0051】
以上のように、本実施例によればスクリュ−ポンプとル−ツポンプの機能を兼ね備えるため、図11の実線に示すようにスクリュ−真空空ポンプの排気速度が大幅に改善され、1台の真空ポンプで効率良く、大気圧(760Torr)から10-4Torrの中真空領域まで、略安定した排気速度を得ることができ、広い作動範囲をカバーすることができる。また、上記実施例のポンプを圧縮機として使用した場合には高い吐出圧を得ることができる。
尚、上記実施例において、ルーツ部はねじ歯車部の両端、つまり吸入口側及び吐出口側の両方形成したが、必要に応じていずれか一方のみに形成しても良い。また、上記実施例において、ねじ歯車のねじれ角は、図4、5で説明したように連続的に変化するものであっても、従来の図1、2のように一定のものであっても良い。
【0052】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明にかかるスクリュー真空ポンプによれば、前記雄雌ロータを構成するねじ歯車がその歯車のピッチ円筒上での歯すじ転がり曲線は一つの曲線であって単調増加関数で表され、かつ前記曲線の微分係数も単調増加関数で表され、該ねじ歯車のねじれ角が当該ねじれの進行に伴って連続的に増加する歯車であって、更に前記各ねじ歯車は、そのねじ山の回転軸方向ピッチは連続的に変化するが、軸直角ピッチが円周方向において一定な歯車であって、該軸直角ピッチはピッチ円筒半径と歯車との比と、2πとの積に等しい歯車で構成されているため、前記雄雌ロータとケーシングとにより形成される作動室は、吸入、連続圧縮移送、吐出作用を有し、前記流体作動室の容積が、流入口から流出口に進行するにつれて連続的に減少させることができる。
その結果、局部的に温度が異常に上昇するのを抑えることができ、ケーシングとロータ、雄ロータと雌ロータのかみ合い間の寸法精度を良好なものにすることができる等の効果を奏するものである。
また、このようなスクリュー真空ポンプの当該ねじ歯車は、その歯車のピッチ円筒上での歯すじ転がり曲線が一つの曲線であって単調増加関数で表され、かつ前記曲線の微分係数も単調増加関数で表され、該ねじ歯車のねじれ角が当該ねじれの進行に伴って連続的に増加する歯車であって、更に、前記各ねじ歯車は、そのねじ山の回転軸方向ピッチは連続的に変化するが、軸直角ピッチが円周方向において一定な歯車であって、該軸直角ピッチはピッチ円筒半径と歯数との比と、2πとの積に等しい歯車であることを特徴とする本発明にかかるねじ歯車を用いることができ、その結果、回転軸直角シール性が高くなり、流体作動室の機密性を良好とすることができる。
【0053】
また、本発明にかかる真空ポンプによれば、雄雌ロータのスクリュー部の少なくとも一端部にルーツ部を設けているため、排気速度が大幅に改善され、1台の真空ポンプで効率よく大気圧から10-4Torrの中真空領域まで、安定した排気速度をえることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は従来のスクリュ−真空ポンプを示し、図2のB−B断面図である。
【図2】図2は従来のスクリュ−真空ポンプを示し、図1のA−A断面図である。
【図3】図3は従来のスクリュ−真空ポンプの雄ロータと雌ロータが噛み合っている状態をロータの周方向に展開した模式図である。
【図4】図4は本発明に用いられるねじ歯車の平面図である。
【図5】図5は本発明に用いられるねじ歯車のかみ合いピッチ円筒上の展開図あって、横軸にかみ合いピッチ円筒の雄転がり周長を、縦軸にねじれ進行量をとり、この座標軸上に放物線(2次曲線)からなる歯すじ転がり曲線を表した展開図である。
【図6】図6はスクリュ−真空ポンプの温度の上昇を表した図であって、点線は従来のスクリュ−真空ポンプの場合を示し、実線は本発明の一実施例の場合を示している。
【図7】図7は本発明の一実施例に用いられる雄雌ロ−タの斜視図である。
【図8】図8は図7の雄雌ロ−タの平面図である。
【図9】図9は図7、8に図示した雄雌ロ−タを用いたスリュー真空ポンプの断面図である。
【図10】図10は図9のA−A断面図である。
【図11】図11は排気速度の特性を示す図である。
【符号の説明】
1 雄歯車(雄ロ−タ)
2 雌歯車(雌ロ−タ)
3 雄かみ合いピッチ円筒
4 雌かみ合いピッチ円筒
5 雄歯型形状
6 雌歯型形状
7 雄回転軸
8 雌回転軸
101 雄ロ−タ
101a ねじ歯車部
102 雌ロ−タ
102a ねじ歯車部
103 ル−ツ部
104 ル−ツ部
105 ル−ツ部
106 ル−ツ部
109 ケ−シング
109a 吸入口(流入口)
109b 吐出口(流出口)
202 インバ−タ
203 インバ−タ
204 コントロ−ラ
205 フィ−ドバック回路
206 フィ−ドバック回路
1 モ−タ
2 モ−タ
301 雄ロ−タ
301a 作動室
301b 歯端面
302 雌ロ−タ
302a 作動室
302b 歯端面
303 ケ−シング
303a 雄ロ−タ側端面プレ−ト
303b 雌ロ−タ側端面プレ−ト
304a〜304d 排出口
305a〜305e 排出口
306 吐出口
307 排出弁

Claims (4)

  1. 互に噛み合う雄ロータ及び雌ロータと、両ロータを収納するケ−シングと、雄雌ロータとケーシングとにより形成される流体作動室と、該作動室の一端部および他端部に連通しうるようケーシングに設けられた流体の流入口および流出口とを備えたスクリュー真空ポンプにおいて、
    前記雄雌ロータを構成するねじ歯車は、その歯車のピッチ円筒上での歯すじ転がり曲線が一つの曲線であって単調増加関数で表され、かつ前記曲線の微分係数も単調増加関数で表され、該ねじ歯車のねじれ角が当該ねじれの進行に伴って連続的に増加する歯車であって、
    更に、前記各ねじ歯車は、そのねじ山の回転軸方向ピッチは連続的に変化するが、軸直角ピッチが円周方向において一定な歯車であって、該軸直角ピッチはピッチ円筒半径と歯数との比と、2πとの積に等しい歯車であり、
    前記流体作動室の容積が、流入口から流出口に進行するにつれて連続的に減少し、前記流体作動室は吸引作用、連続圧縮移送作用、吐出作用を有するように構成されていることを特徴とするスクリュー真空ポンプ。
  2. 前記雄雌ロータの各ねじ歯車部の少なくともいずれか一端部にルーツ部が形成されていること特徴とする請求項1に記載のスクリュー真空ポンプ。
  3. 前記雄雌ロータには、流入口側から流出口側に向かって、ルーツ部、ねじ歯車部、ルーツ部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のスクリュー真空ポンプ。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載されたスクリュー真空ポンプに用いられるねじ歯車であることを特徴とするねじ歯車。
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