JP3661247B2 - 外転型回転電機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は外転型回転電機に係わり、特に小形軽量な外転型回転電機及びそれを備えた電動車両を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気自動車等の電動車両用に用いる電動機としては小形軽量であることが望まれる。一方、電気自動車の駆動方法としては各駆動輪の中に回転機を分散配置する方法がある。この分散配置する方法では車輪を直接駆動することができ、ギヤが不要になって高効率になること、及び4輪を独立に制御できるのでその場での旋回ができる等の種々の長所を有する。この場合、電動機としては構造上外転型回転電機が最適となる。この外転型回転電機を用いた場合、加速する場合にイナーシャが大きいので一層回転電機を小形軽量に製作することが求められる。
【0003】
従来の外転型回転電機では、積層回転子鉄心の外周の厚みを十分とって磁気的な飽和を極力少なくする方式を採用していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これは、従来の外転型回転電機が使用される用途は家庭用回転電機等であり、常に一定の電圧や周波数で使われるため、積層回転子鉄心の外周の磁気的な飽和を極度に取ると回転電機の特性を著しく悪くするためである。
【0005】
本発明の対象とする回転電機は、例えば電気自動車用あるいは電気機関車等の駆動電動機として使用されるものを対象としている。これらの電動機においては、電動機は制御装置によって可変周波数,可変電圧運転されるものであり、特に低回転数領域では一定大トルクを発生する領域と、高速時には一定の出力を要求される領域とで運転され、かつ定常状態の時はその内側の領域で運転するものである。最大の磁束を発生し、最大のトルク領域で運転するのはほんのわずかな登坂並びに加速期間のみである。したがって、このわずかな期間のために磁束密度が十分低くしたのでは回転電機の体格を十分小さくすることができず、小形軽量化することができない欠点があった。
【0006】
本発明の目的は、以上述べた従来例の欠点を除き、小形軽量な外転型回転電機及びそれを備えた電動車両を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明の特徴とするところは、低速時の最大トルク領域ではほぼ一定トルクで電圧を変えて制御運転され、高速時ではほぼ同出力でかつ電圧がほぼ一定の状態で制御運転される回転電機であって、かつ内周に固定子巻線を巻回した固定子鉄心を有する固定子と、その外周に空隙を介して積層された回転子鉄心固体からなる回転子鉄心を備えた回転子とを有する外転型回転電機において、低速時に最大トルクを与える回転数のうち最大の回転数Nb(rpm)での電源周波数をFm(Hz),高速時の回転電機の最大相電圧をVb(V),一相の固定子巻線のターン数をW,積層された回転子鉄心の軸長及び幅をそれぞれ Wc(cm)及びHc(cm)としたとき、
Figure 0003661247
【0008】
なる関係を満たすよう構成したことを特徴とする外転型回転電機にある。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0010】
図1に本発明の外転型回転電機の構造を、図2にその断面を示す。本実施例では誘導電動機について説明する。
【0011】
図1,図2において、外転型回転電機1は固定子2とその固定子2の外周を回転する回転子3とからなる。ここで、固定子2は固定子巻線5を備えた固定子鉄心4とこれを支持する固定子支持板6とからなる。回転子3は固体回転子鉄心7とその内周に積層回転子鉄心8とを有し、積層回転子鉄心8にはスロット83が設けられており、ここには回転子巻線のバー9が備えられている。回転子巻線のバー9の軸端にはエンドリング10を備え、回転子巻線のバー9を短絡接続してカゴ型巻線を形成する構成である。固体の回転子鉄心7は分割もしくは一体の構成で図示のようにシャフト11の上にマウントされてベアリング12を介して固定子支持板6に回転可能に支持される。また、固定子支持板6は回転電機支持板13に固定,保持される。ここでは、固定子鉄心4は歯部41とコア部42とからなり、歯部41とコア部42で作られる空間のスロット部43とからなる。スロット部43には固定子巻線5が挿入される。ここで、固定子鉄心4の巻線構成は一般の3相の電動機の巻線構成と同じである。
【0012】
図3に外転型回転電機の運転特性を示す。
【0013】
電気自動車や電気機関車等の電動車両の駆動装置としては、最大トルクの運転範囲は、低速時での一定でかつ大トルクを要する期間と、高速時においては、回転電機の制御装置の容量を少なくするために出力一定の制御、つまり直巻電動機と同じトルク特性の制御をする区間とがある。この場合、低速領域の最大トルク範囲では図示のようにベース回転数に至るまで電圧を直線的に変化させる制御を行う。したがって、この領域においては、電動機の磁束量は最大でほぼ一定に保たれた制御が行われる。この最大トルクでの運転は、登坂時や急加速時等の短時間の間の使用となる。平地走行等の場合には一般にこの中の領域の所要トルクの小さい所で運転され、磁束量もそれに伴って少ない領域で運転するのが一般である。そこでは、効率を最大にする運転の選択が行われる。つまり最適な磁束量の選定が成されて制御が続行される。回転電機の回転数がベース回転数よりも高くなった場合にはトルクは図示のように回転数に反比例して回転数と共に減少し、定出力曲線となるように制御する、この時、電動機の磁束はトルクに応じて減少させる制御つまり弱め界磁制御を行う。高速時においても、平地走行等の場合には一般にこの中の領域の所要トルクの小さい所で運転され、磁束量もそれに伴ってさらに少ない領域で運転するのが一般である。そこでもまた効率を最大にする運転の選択が行われる。つまり最適な磁束量の選定が成されて制御が続行される。
【0014】
低速時の最大トルク領域では、ベース回転数Nbにおける電源周波数Fmは、(数1)で与えられる。
【0015】
【数1】
Fm=Nb・P・/(1−s)/120 …(数1)
ここで、Pは電動機の極数、sは滑りである。
【0016】
以上の電源周波数より、低速時の最大トルク領域での磁束量Φmは(数2)で計算できる。
【0017】
【数2】
Figure 0003661247
【0018】
ここで、Fm(Hz)はその時の電源周波数、Vb(V)は高速時の回転電機の最大相電圧、Wは一相の固定子巻線のターン数である。
【0019】
以上の磁束の計算式より、回転電機の積層回転子鉄心部の磁束密度は(数3)によって算出できる。
【0020】
【数3】
Figure 0003661247
【0021】
ここで、Wc(cm)は積層回転子鉄心の軸長、Hc(cm)は積層回転子鉄心のコア部の幅である。
【0022】
積層回転子鉄心における磁束密度の最大は一般にそれに使用される珪素鋼板の磁束密度の最大値によって限定され、約21kGである。上式で算出した値において、積層回転子鉄心に置ける磁束密度の最大は約21kGより大きな25kGとすることで、積層回転子鉄心の飽和度を高め、機械を小形軽量化することが可能である。実際には積層回転子鉄心の中の磁束密度が25kGになることは無く、その分、固体の回転子鉄心の方に流れる。磁束が固体回転子鉄心内を流れるとここでは渦電流が発生するが、ここで使用される運転が登坂や加速のほんのわずかな時間であることや、回転子内の磁束はわずかなすべり周波数のみの変動であるのでその渦電流もごく小さいものとなるため、大きく特性を損なうことはない。以上強度部材である固体の回転子鉄心を磁気回路に積極的に使用した構成とすることによって、回転電機の体格を著しく小さくすることが可能になる。これによって、外転型回転電機の欠点である回転イナーシャが大きいという点を修正することができる。
【0023】
これは、一般に使用されている内転型回転電機と大きく違うところである。内転型回転電機の場合には電動機の容量によって回転子の外周がほぼ決まり、そのために積層回転子鉄心の磁束密度は大きくは成らない。積層回転子磁束密度を大きくしても回転電機の体格を小さくすることが構成上、できない。一方、外転型回転電機では積層回転子鉄心の磁束密度がすぐ小形軽量化に結び付くものである。特に、回転子のイナーシャは回転子外周の4乗に比例するためにその影響は非常に大きいものがある。
【0024】
図4に本発明の他の実施例を示す。
【0025】
図1〜図3では誘導電動機の例を示した。本実施例では本発明をリラクタンス型回転電機に適用した例について示す。図において固定子2の構成は図1で示した誘導電動機の外転型回転電機の構成と同じである。回転子3は固体の回転子鉄心7と積層回転子鉄心8とで構成される。積層回転子鉄心8は、図示のように円周方向に4個の突起上の磁極を有する構成である。回転子に生じた磁極間の空間は必要に応じて樹脂及び非磁性の絶縁物で充填される構成とすることができる。ここで、積層回転子鉄心8で構成されるコア部の磁束密度は図3で示した運転条件においては、リラクタンス電動機でも全く同様になるので、(数3)と同じように表現できる。したがって、積層回転子鉄心で構成されるコア部の磁束密度を25kG以上とすることによって、誘導電動機の場合と全く同じ効果を得ることができる。
【0026】
以上の構成の外転型回転電機では、外周部をソリッドの回転ヨークで構成することで、機械的な強度を増すとともに回転子の外径を大きくする必要がない構成とすることができる。なお、以上では固定子として非突極性の固定子を用いた場合の例を示したが、突極状の固定子を用いた場合にも有効である。さらに図3で示した運転では、回転数に対して直線状に上がる電圧に制御する例を示したが、回転数に対して折線状、もしくは放物線状に上昇する場合にも有効である。この場合にはベース回転数に近い領域でかつ原点からのVb/Fmが最大になる点の磁束密度が25kGを超える点を規定するものとする。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、小形軽量な外転型回転電機及びそれを備えた電動車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の外転型回転電機の構造図を示す。
【図2】本発明の外転型回転電機の断面図を示す。
【図3】本発明の外転型回転電機の特性を示す。
【図4】本発明の外転型回転電機の他の実施例を示す。
【符号の説明】
1…外転型回転電機、2…固定子、3…回転子、4…固定子鉄心、5…固定子巻線、6…固定子支持板、7…固体回転子鉄心、8…積層回転子鉄心、9…回転子巻線のバー、10…エンドリング、11…シャフト、12…ベアリング、13…回転電機支持板、41…歯部、42…コア部、43…スロット部、81…積層回転子鉄心の歯部、82…積層回転子鉄心のコア部、83…積層回転子鉄心のスロット部。

Claims (4)

  1. 低速時の最大トルク領域ではほぼ一定トルクで電圧を変えて制御運転され、高速時ではほぼ同出力でかつ電圧がほぼ一定の状態で制御運転される回転電機であって、かつ内周に固定子巻線を巻回した固定子鉄心を有する固定子と、その外周に空隙を介して積層された回転子鉄心固体からなる回転子鉄心を備えた回転子とを有する外転型回転電機において、
    低速時に最大トルクを与える回転数のうち最大の回転数Nb(rpm)での電源周波数をFm(Hz),高速時の回転電機の最大相電圧をVb(V),一相の固定子巻線のターン数をW,積層された回転子鉄心の軸長及び幅をそれぞれWc(cm)及びHc(cm)としたとき、
    Figure 0003661247
    なる関係を満たすよう構成したことを特徴とする外転型回転電機。
  2. 請求項1において、前記回転子としてカゴ型回転子を有する誘導電動機であることを特徴とする外転型回転電機。
  3. 請求項1において、前記回転子としてリラクタンス鉄心を有するリラクタンス電動機であることを特徴とする外転型回転電機。
  4. 請求項1に記載の外転型回転電機を備えたことを特徴とする電動車両。
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