JP3660982B2 - カルボン酸塩の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機ハロゲン化物、水、一酸化炭素を反応させてカルボン酸塩を製造する方法に関するものである。カルボン酸塩類は酸で加水分解することによって、容易に対応するカルボン酸類とすることができる。
【0002】
カルボン酸塩は、そのままでも各種有機合成原料や食品添加剤等に用いられているほか、カルボン酸として医薬、農薬のような各種化合物の製造原料又は合成中間体として広く利用されており、極めて有用な化合物群である。
【0003】
【従来の技術】
パラジウム触媒の存在下、有機ハロゲン化物、水、一酸化炭素を反応させるカルボニル化反応により、対応するカルボン酸塩、さらにカルボン酸を製造する方法は、1)L.Cassar,M.Foa,A.Gardano,J.Organomet.Chem.,121,C55(1976)や2)V.V.Grushin,H.Alper,Organometallics,12,1890(1993)等によって公知である。しかし、例えば3)F.Monteil,P.Kalck,J.Organomet.Chem.,482,45(1994)において指摘されているように、これらのカルボニル化反応においては、反応速度が遅く、触媒効率が低いことが問題になっていた。
【0004】
反応速度を向上させることにより高い触媒効率を達成する試みとしては、例えば4)T.Okano,I.Uchida,T.Nakagaki,H.Konishi,J.Kiji,J.Mol.Catal.,54,65(1989)や5)C.W.Kohlpaintner,M.Beller,J.Mol.Catal.A:Chem.,116,259(1997)等、スルホン化したホスフィン配位子を有する、水溶性の触媒を用いて反応を行う方法が挙げられる。一方、一回の反応での触媒効率が低くても、反応後に触媒を分離し、再使用することによって、トータルの触媒効率を上げることができる。しかし、例えば上記の水溶性の触媒を用いる方法では、生成物であるカルボン酸塩も触媒も水溶性であり、生成物を分離するべく水層を酸性にすると、どちらも有機層に移るため、生成物と触媒の分離が困難である。実際、6)F.Bertoux,E.Monflier,Y.Castanet,A.Mortreux,J.Mol.Catal.A:Chem.,143,11(1999)には、触媒の再使用が困難であることが記載されている。
従って、有機ハロゲン化物のカルボニル化によるカルボン酸の製造法において、カルボン酸塩を、高い反応速度で、かつ、触媒の分離、回収及び再使用が容易な形で製造する方法が求められていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、パラジウム触媒及び塩基の存在下で有機ハロゲン化物、水、一酸化炭素を反応させるカルボン酸塩を製造する方法において、高い反応速度でカルボン酸塩を製造する方法、及びパラジウム触媒を経済的に回収、再使用し、トータルの触媒効率を上げることのできる方法を提供することをその課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、第4級アンモニウム塩からなるイオン性流体の存在下で反応を実施することにより、高い反応速度でカルボニル化反応が進行すること、及び、反応終了後、生成物であるカルボン酸塩は水による抽出等により分離可能であり、使用したパラジウムを含む触媒は、なお十分な触媒活性を保持しつつイオン性流体中に存在しているため、これを再び反応に使用し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
即ち、本発明によれば、パラジウムを含む触媒及び塩基の存在下に、有機ハロゲン化物、水、一酸化炭素を反応させるカルボニル化反応によりカルボン酸塩を製造する方法において、カルボニル化反応を第4級アンモニウム塩からなるイオン性流体の存在下で行うことを特徴とするカルボン酸塩の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、パラジウムを含む触媒及び塩基の存在下に、有機ハロゲン化物、水、一酸化炭素を反応させるカルボニル化反応によりカルボン酸塩を製造する方法において、(i)カルボニル化反応を第4級アンモニウム塩からなるイオン性流体の存在下で行なう工程、(ii)該工程から得られたカルボン酸塩を分離する工程とからなり、カルボン酸塩を分離した後の残液を前記(i)の工程へ循環再利用することを特徴とするカルボン酸塩の製造方法が提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明において反応原料として用いる有機ハロゲン化物は、一酸化炭素を用いるカルボニル化反応に用いられるものであり、従来公知の各種のものが用いられる。
【0008】
多環系芳香環、ビフェニル等の鎖状多環系芳香環及び、ピリジン環等の複素芳香環等が包含される。前記芳香環には、ハロゲン原子の他、反応に不活性な置換基、例えば、アルキル基、アリール基、エステル基、アシル基、アミド基、シアノ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、トリメチルシリル基のようなトリオルガノシリル基等の置換基を有することができる。前記有機ハロゲン化物の有機基の具体例を示すと、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アルコキシカルボニル基、フェニル基、アセチルフェニル基、アミノカルボニルフェニル基、シアノフェニル基、アルコキシフェニル基、アリーロキシフェニル基、トリメチルシリルフェニル基等のアリール基、ベンジル基、トリルメチル基、(フルオロフェニル)メチル基、(クロロフェニル)メチル基、(アセチルフェニル)メチル基、(シアノフェニル)メチル基、(メトキシフェニル)メチル基、(トリメチルシリルフェニル)メチル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基が挙げられる。
【0009】
本発明の製造方法に好適な有機ハロゲン化物としては、例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、エチルクロロベンゼン、クロロアニソール、クロロベンゾニトリル、クロロフェニル酢酸エステル、クロロ安息香酸エステル、クロロアセトフェノン、クロロジフェニルエーテル、クロロナフタレン、クロロメチルナフタレン、クロロアントラキノン、クロロチオフェン、クロロインドール、クロロキノリン、クロロピコリン、クロロトリメチルシリルベンゼン、ブロモベンゼン、クロロブロモベンゼン、ジブロモベンゼン、ブロモトルエン、エチルブロモベンゼン、ブロモアニソール、ブロモベンゾニトリル、ブロモフェニル酢酸エステル、ブロモ安息香酸エステル、ブロモアセトフェノン、ブロモジフェニルエーテル、ブロモナフタレン、ブロモメチルナフタレン、ブロモアントラキノン、ブロモチオフェン、ブロモインドール、ブロモキノリン、ブロモピコリン、ブロモトリメチルシリルベンゼン、ヨードベンゼン、クロロヨードベンゼン、ブロモヨードベンゼン、ジヨードベンゼン、ヨードトルエン、エチルヨードベンゼン、ヨードアニソール、ヨードベンゾニトリル、ヨードフェニル酢酸エステル、ヨード安息香酸エステル、ヨードアセトフェノン、ヨードジフェニルエーテル、ヨードナフタレン、ヨードメチルナフタレン、ヨードアントラキノン、ヨードチオフェン、ヨードインドール、ヨードキノリン、ヨードピコリン、ヨードトリメチルシリルベンゼン、塩化ベンジル、トリルメチルクロライド、(フルオロフェニル)メチルクロライド、(クロロフェニル)メチルクロライド、(アセチルフェニル)メチルクロライド、(シアノフェニル)メチルクロライド、(メトキシフェニル)メチルクロライド、(トリメチルシリルフェニル)メチルクロライド、フェネチルクロライド、ナフチルメチルクロライド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0010】
本発明の反応においては水が反応原料として用いられる。原料としての水の使用量には特に制限は無いが、一般には原料としての有機ハロゲン化物中の反応に関わるハロゲン原子に対して少なくとも1当量使用するのが有利である。
【0011】
本発明の反応においては、前記有機ハロゲン化物と水に対して、パラジウムを含む触媒、塩基、第4級アンモニウム塩からなるイオン性流体の存在下において、一酸化炭素を反応させる。これによって、対応するカルボン酸塩を得ることができる。
【0012】
本発明の反応におけるパラジウムを含む触媒としては、有機ハロゲン化物のカルボニル化反応に用いられる従来公知の種々の構造のものを用いることができるが、好適なものとして、例えば、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム等のほか、ホスフィンを配位子とするジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリイソプロピルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロ(1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスファイト)パラジウム等も好ましい結果をもたらす。また、第3級ホスフィンや第3級ホスファイトを配位子として含まない錯体と第3級ホスフィンや第3級ホスファイトを反応系中で混合し、第3級ホスフィンや第3級ホスファイトを配位子とするパラジウム錯体を発生させてそのまま触媒として用いる方法も好ましい態様である。その場合の配位子は、一般には第3級ホスフィンや第3級ホスファイトを配位子として含まない錯体中のパラジウム原子に対して、1ないし50当量の範囲から選ばれ、好ましくは1ないし20当量の範囲で選ばれる。これらいずれかの方法で有利な性能を発揮する配位子としては、種々の第3級ホスフィンや第3級ホスファイトを挙げることができる。好適に用いることができる配位子を例示すると、トリフェニルホスフィン、フェニルジメチルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリ(1−ナフチル)ホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、トリフェニルホスファイト等が挙げられる。これに組み合わせて用いられる第3級ホスフィンや第3級ホスファイトを配位子として含まない錯体としては、例えば、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム等が有利であるが、これらに限定されるものではない。
これらの触媒の使用量はいわゆる触媒量で良く、一般的には有機ハロゲン化物に対して10モル%以下で十分であり、通常、0.01〜5モル%の割合で用いられる。
【0013】
本発明の反応に用いる塩基としては、有機ハロゲン化物のカルボニル化反応に用いられる従来公知の各種のものが用いられる。好適なものとして、無機塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸水素塩、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等のアルカリ土類金属酸化物等が、有機塩基としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等のアルカリ金属カルボン酸塩、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム等のアルカリ土類金属カルボン酸塩、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソブロピルエチルアミン、トリイソオクチルアミン、ピリジン、N−メチルピロリジン、N−メチルモルホリン等の第3級アミン類等が挙げられる。塩基の使用量には制限はないが、ハロゲン化水素の捕捉に塩基が消費されると同時に、使用した塩基との塩として反応生成物が得られる事を考慮すると、原料としての有機ハロゲン化物中の反応に関わるハロゲン原子に対して少なくとも2当量を使用するのが好ましい。
【0014】
本発明のカルボニル化反応は、第4級アンモニウム塩の存在下に実施される。この第4級アンモニウム塩は、触媒として使用されるパラジウムを含む錯体を溶解するものである。第4級アンモニウム塩として水と混和しないものを用いることにより、水溶性の反応生成物は、水による抽出により容易に分離される。
【0015】
本発明で用いる第4級アンモニウム塩としては、N,N’−ジアルキルイミダゾリウムカチオン又はアルキルアンモニウムカチオンを有する第4級アンモニウム塩を好ましく用いることができる。N,N’−ジアルキルイミダゾリウムカチオンを有する第4級アンモニウム塩は、下記一般式(1)で表される。
【化1】
アルキルアンモニウムカチオンを有する第4級アンモニウム塩は、下記一般式(2)で表される。
【化2】
前記式(1)及び(2)中、R1〜R5は、水素原子又は炭化水素基を示し、X-は対イオンを示す。炭化水素基に含まれる炭素数は1〜20、好ましくは1〜12である。この炭化水素基には、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基が包含される。脂肪族炭化水素基には、鎖状のもの(アルキル基、アルケニル基)及び環状のもの(シクロアルキル基、シクロアルケニル基)が包含される。芳香族炭化水素基には、アリール基及びアリールアルキル基が包含される。
【0016】
前記対イオンX-の例としては、Cl-、Br-、I-等のハロゲンイオンの他、テトラフルオロボレート(BF4 -)、ヘキサフルオロホスフェート(PF6 -)、トリフルオロメタンスルホナート(CF3SO3 -)、ナイトレート(NO3 -)、テトラクロロアルミネート(AlCl4 -)、メチルスルフェート(CH3SO4 -)等が挙げられる。
【0017】
本発明の反応において好適に用いられるN,N’−イミダゾリウムカチオンを含有する第4級アンモニウム塩としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフロオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフロオロボレート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフロオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムメチルスルフェート、1,3−ジブチルイミダゾリウムメチルスルフェート等を、アルキルアンモニウムカチオンを有する第4級アンモニウム塩としては、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(Aliquat 336)、テトラヘプチルアンモニウムクロライド、テトラオクチルアンモニウムブロマイド、テトラへプチルアンモニウムブロマイド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の反応においては、これらのイオン性流体を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
イオン性流体の使用量は、特に限定されないが、溶媒の使用量は、原料として仕込まれる液体容量の総量に対し通常10分の1程度以上の量であればよい。
【0019】
ゲン原子に対して少なくとも1当量使用する。圧力は通常、500kg/cm2ゲージ圧以下の範囲から選ばれ、好ましくは常圧ないし300kg/cm2ゲージ圧の範囲から選ばれる。
反応温度は、あまりに低温では反応が有利な速度で進行せず、あまりに高温では触媒が分解するので、一般には室温ないし300℃の範囲から選ばれ、好ましくは室温ないし200℃から選ばれる。
【0020】
本発明の分離工程においては、前記カルボニル化反応工程で得られる反応生成液から、カルボン酸塩を分離回収する。そして、カルボン酸塩を分離した後の残液は、これを前記カルボニル化反応工程に循環し、再使用する。
【0021】
前記カルボニル化反応生成液から、水による抽出法により、容易にカルボン酸塩を抽出し、抽出後の水相を酸加水分解後、溶媒抽出することにより対応するカルボン酸が得られる。またカルボン酸塩が水に不溶の場合には、反応液を濾過することにより、容易にカルボン酸塩を分離することができる。
【0022】
【実施例】
本発明を以下の実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0023】
実施例1
オートクレーブ中において、酢酸パラジウム1mg(ヨードベンゼンに対して0.1モル%)、トリフェニルホスフィン23mg(ヨードベンゼンに対して2モル%)を1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート2mlに溶解し、100℃で10分間攪拌した。室温まで冷却後、ヨードベンゼン0.49ml、トリエチルアミン1.23ml、水0.4mlを加え、室温において30kg/cm2の一酸化炭素ガスを充填した後、120℃で3時間反応させた。反応混合物を水で抽出し、安息香酸塩及びトリエチルアンモニウム塩を、パラジウム触媒及び未反応原料を含む1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート層から分離した。抽出後の水溶液を塩酸により加水分解、さらにエーテル抽出を行った結果、安息香酸が80%の収率で得られた。
【0024】
実施例2
実施例1の抽残側の1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート層に再びヨードベンゼン0.49ml、トリエチルアミン1.23ml、水0.4mlを加え、室温において30kg/cm2の一酸化炭素ガスを充填した後、120℃で3時間反応させた。実施例1と同様の後処理を行い、安息香酸が90%収率で得られた。同様に反応を繰り返し実施した。安息香酸の収率は以下のとおりであり、その触媒ターンオーバー数の合計は3300回であった。
安息香酸収率(%)
当初触媒 80
くり返し1回目 90
くり返し2回目 86
くり返し3回目 71
【0025】
比較例1、2
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートに代えて各種有機溶媒を使用したほかは、実施例1と同様にして反応を行った。安息香酸の収率はそれぞれ以下のとおりであり、実施例1における収率に比べ著しく低かった。
安息香酸収率(%)
塩化メチレン 0
ベンゼン 30
【0026】
施例3
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートに代えて1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートを使用したほかは、実施例1と同様にして反応を行った結果、触媒ターンオーバー数600回、安息香酸を60%の収率で得た。
【0027】
実施例4
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートに代えてメチルトリオクチルアンモニウムクロライド(Aliquat 336)を使用したほかは、実施例1と同様にして反応を行った結果、触媒ターンオーバー数500回、安息香酸を50%の収率で得た。
【0028】
実施例5
ヨードベンゼンの代りにブロモベンゼン0.46mlを使用し、150℃で24時間反応させたほかは、実施例1と同様にして反応を行った結果、触媒ターンオーバー数710回、安息香酸を71%の収率で得た。
【0029】
実施例6
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートに代えて1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートを使用したほかは、実施例5と同様にして反応を行った結果、触媒ターンオーバー数240回、安息香酸を24%の収率で得た。
【0030】
実施例7
酢酸パラジウム3mg(ブロモベンゼンに対して0.5モル%)、トリフェニルホスフィン70mg(ブロモベンゼンに対して10モル%)、ブロモベンゼン0.28ml、トリエチルアミン0.74ml、水0.24mlを使用し、5時間反応させたほかは、実施例5と同様にして反応を行った結果、安息香酸を82%の収率で得た。触媒ターンオーバー数は164回に達した。
【0031】
実施例8
実施例7の抽残側の1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート層に再びブロモベンゼン0.28ml、トリエチルアミン0.74ml、水0.24mlを加え、室温において30kg/cm2の一酸化炭素ガスを充填した後、150℃で24時間反応させた。実施例1と同様の後処理を行い、安息香酸が76%収率で得られた。同様に反応を繰り返し実施した。安息香酸の収率は以下のとおりであり、その触媒ターンオーバー数の合計は780回であった。
安息香酸収率(%)
当初触媒 82
くり返し1回目 76
くり返し2回目 85
くり返し3回目 83
くり返し4回目 64
【0032】
実施例9
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートに代えて1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートを使用したほかは、実施例7と同様にして反応を行った結果、安息香酸を75%の収率で得た。
【0033】
実施例10
オートクレーブ中において、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム28mg(4−メチルベンジルクロライドに対して2モル%)を1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート2mlに溶解し、100℃で10分間攪拌した。室温まで冷却後、4−メチルベンジルクロライド0.26ml、2.5M水酸化ナトリウム水溶液2mlを加え、室温において30kg/cm2の一酸化炭素ガスを充填した後、50℃で40時間反応させた。反応混合物を水で抽出し、4−メチルフェニル酢酸塩及び塩化ナトリウムを、パラジウム触媒及び未反応原料を含む1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート層から分離した。抽出後の水溶液を塩酸により加水分解、さらにエーテル抽出を行った結果、4−メチルフェニル酢酸が88%の収率で得られた。
【0034】
実施例11
実施例10の抽残側の1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート層に再び4−メチルベンジルクロライド0.26ml、2.5M水酸化ナトリウム水溶液2mlを加え、室温において30kg/cm2の一酸化炭素ガスを充填した後、50℃で40時間反応させた。実施例10と同様の後処理を行い、4−メチルフェニル酢酸が80%収率で得られた。同様に反応を繰り返し実施した。4−メチルフェニル酢酸の収率は以下のとおりであった。
4−メチルフェニル酢酸収率(%)
当初触媒 88
くり返し1回目 80
くり返し2回目 71
【0035】
実施例12
4−メチルベンジルクロライドの代りに4−フルオロベンジルクロライド0.24mlを使用したほかは実施例10と同様の操作を実施した結果、4−フルオロフェニル酢酸を82%の収率で得た。
【0036】
実施例13
実施例12の抽残側の1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート層に再び4−フルオロベンジルクロライド0.24ml、2.5M水酸化ナトリウム水溶液2mlを加え、室温において30kg/cm2の一酸化炭素ガスを充填した後、50℃で40時間反応させた。実施例10と同様の後処理を行い、4−フルオロフェニル酢酸が76%収率で得られた。同様に反応を繰り返し実施した。4−フルオロフェニル酢酸の収率は以下のとおりであった。
4−フルオロフェニル酢酸収率(%)
当初触媒 82
くり返し1回目 76
くり返し2回目 40
【0037】
実施例14
4−フルオロベンジルクロライドの代りに2−クロロベンジルクロライド0.23mlを使用し、20時間反応させたほかは実施例10と同様の操作を実施した結果、2−クロロフェニル酢酸を57%の収率で得た。
【0038】
実施例15
実施例14の抽残側の1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート層に再び2−クロロベンジルクロライド0.23ml、2.5M水酸化ナトリウム水溶液2mlを加え、室温において30kg/cm2の一酸化炭素ガスを充填した後、50℃で40時間反応させた。実施例10と同様の後処理を行い、2−クロロフェニル酢酸が52%収率で得られた。同様に反応を繰り返し実施した。2−クロロフェニル酢酸の収率は以下のとおりであった。
2−クロロフェニル酢酸収率(%)
当初触媒 57
くり返し1回目 52
くり返し2回目 41
【0039】
実施例16
ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム14mg(ベンジルクロライドに対して1モル%)、4−メチルベンジルクロライドの代りにベンジルクロライド0.23mlを使用し、24時間反応させたほかは実施例10と同様の操作を実施した結果、フェニル酢酸を47%の収率で得た。
【0040】
施例17
実施例16の抽残側の1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート層に再びベンジルクロライド0.23ml、2.5M水酸化ナトリウム水溶液2mlを加え、室温において30kg/cm2の一酸化炭素ガスを充填した後、50℃で40時間反応させた。実施例10と同様の後処理を行い、フェニル酢酸が40%収率で得られた。同様に反応を繰り返し実施した。フェニル酢酸の収率は以下のとおりであった。
フェニル酢酸収率(%)
当初触媒 47
くり返し1回目 40
くり返し2回目 37
【0041】
【発明の効果】
本発明により、医薬・農薬などファインケミカルズとして極めて有用なカルボン酸塩類、及びカルボン酸類を効率よく製造することができる。本発明においては反応が効率良く進行し、かつ、高価な触媒を回収し、再使用することができるので、本発明の方法は、経済性において非常にすぐれた方法である。また、本発明では、生成物の分離精製も容易である。従って、本発明の工業的意義は多大である。
Claims (3)
- パラジウムを含む触媒及び塩基の存在下に、有機ハロゲン化物、水、一酸化炭素を反応させるカルボニル化反応によりカルボン酸塩を製造する方法において、該カルボニル化反応を第4級アンモニウム塩からなるイオン性流体の存在下で行うことを特徴とするカルボン酸塩の製造方法。
- パラジウムを含む触媒及び塩基の存在下に、有機ハロゲン化物、水、一酸化炭素を反応させるカルボニル化反応によりカルボン酸塩を製造する方法において、(i)該カルボニル化反応を第4級アンモニウム塩からなるイオン性流体の存在下で行なう工程、(ii)該工程から得られたカルボン酸塩を分離する工程とからなり、該カルボン酸塩を分離した後の残液を前記(i)の工程へ循環再利用することを特徴とするカルボン酸塩の製造方法。
- 該第4級アンモニウム塩からなるイオン性流体が、イミダゾリウムカチオンを含有する塩またはアルキルアンモニウムカチオンを含有する塩である請求項1〜2のいずれかに記載の方法。
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