JP3659552B2 - イオン濃度測定電極とその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、pHや各種イオンを測定する際に用いられるイオン濃度測定電極と、その製造方法とに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えばpHの測定には、図5に示すように、ガラス電極(イオン濃度測定電極)aと比較電極bとを対にしたpH計が用いられる。
【0003】
この図5において、図中のcはガラス電極内極、dはガラス電極内部液、eは電極応答部、fは比較電極内極、hは比較電極内部液、iは液絡部である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記の電極応答部eは、球形のガラス薄膜(100〜150μm)から成り、その接液面積が非常に狭くてインピーダンスが非常に高い(通常、100MΩ程度)ことから、起電力を測定するためには、1012Ω以上の高入力絶縁回路が必要とされ、電気回路が複雑になっていた。
【0005】
一方、電極応答部eのpH応答性の向上は、接液面におけるガラス膜厚を薄くすることで達成されるが、強度面ならびに加工面で限界があり、上記したように、100〜150μmの薄膜にするのが限度であって、それ以下に薄くする製品化は不可能であった。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みて成され、高入力絶縁回路が不要な低インピーダンスの電極応答部を有するイオン濃度測定電極を、応答性の高いものにして提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明が講じた技術的手段は、次の通りである。即ち、本発明によるイオン濃度測定電極は、複数本のキャピラリーを集束し、このキャピラリーの貫通孔による流路を残して、集束キャピラリー間の隙間の両端側のみを封止して成り、かつ、前記隙間には、内部液が注入され、更に、リード線に接続された内極が挿通されて成る点に特徴がある(請求項1)。
【0008】
上記の構成においては、キャピラリーの貫通孔による流路壁面が電極応答部を形成するのであって、このキャピラリーの複数本を集束させたことで、電極応答部の接液面積が従来に比較して格段に広くなることから、インピーダンスを大幅に低下させることが可能となり、例えば従来の1/100以下にすることも容易に可能であって、これまでのような高入力絶縁回路が不要となり、例えばデジボル等のmV計でイオン濃度の測定が可能となる。
【0009】
しかも、キャピラリー自体は非常に薄膜であることから、応答性も飛躍的に高くなる。
【0010】
上記のイオン濃度測定電極は、例えば、複数本のキャピラリーを筒状部材の内部に集束し、この集束したキャピラリーの一端側を樹脂モールドすると共に、集束キャピラリー間の隙間に、リード線に接続された内極を挿通し、かつ内部液を注入した状態で、集束キャピラリーの他端側を樹脂モールドし、樹脂モールドによる隙間両端側の封止を残すように、キャピラリーの両端部とモールド樹脂の一部とを切除して、キャピラリーの貫通孔による流路を形成することで製造される(請求項2)。
【0011】
上記の方法によれば、キャピラリーの貫通孔による流路壁面が膨大であって、電極応答部の低インピーダンス化が達成される上に、応答性の優れたイオン濃度測定電極が製造される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1はガラス電極1と比較電極2とによってフロースルータイプに構成したpH計を模式的に示しており、この内のガラス電極1は、複数本のキャピラリー3を集束し、かつ、リード線4に接続されたガラス電極内極(Ag/AgCl)5を、キャピラリー3,3間の隙間(図4を参照)mに挿通する一方、前記隙間mに内部液(KCl)6を注入して、その隙間mの両端側を封止して成り、試料流通用の例えば石英製のキャピラリー7の途中に液密状に介装させている。
【0013】
具体的には、図2に示すように、酸可溶性のガラス管(筒状部材であって、例えば1mol/L程度のHClやHNO3 によって可溶なホウケイ酸系ガラス;例えばSiO2 −B2 3 −Na2 O)8に、SiO2 −Li2 O系ガラスによる複数本(数十本〜数百本)のキャピラリー素材管9を挿通させて、素材管9が10〜100μm程度の貫通孔nを有する薄膜(10μm程度)のキャピラリー3となるように、650〜700℃の温度下で引き延ばし加工(リ・ドロー加工)し、これを所定長さにダイシングする。
【0014】
次に、図3(A)に示すように、ダイシングされた電極素材Aのガラス管8両端部を除く範囲を、耐酸性の熱収縮チューブ10でマスキングし、1mol/L程度のHClやHNO3 の酸を用いてガラス管8の両端部8aを溶解して、キャピラリー3の両端側を露出させる。
【0015】
次いで同図(B)に示すように、露出させたキャピラリー3の一端側を樹脂11によってモールドする。この樹脂11のモールドにあっては、キャピラリー3の貫通孔nの断面積に比較して、キャピラリー3,3間の隙間mの断面積が極めて小さいことから、毛管現象によってモールド樹脂11は、キャピラリー3の貫通孔nよりも深く隙間mに入り込むことになるのである。
【0016】
そして、この樹脂モールドした電極素材Aを、同図(C)に示すように、真空ケース16内に持ち込み、かつ、キャピラリー3の他端側を、例えばゲル状(スラリー状や単なる液状であってもよい。)の内部液6に真空下で浸漬させ、ここで真空を解除して、キャピラリー3,3間の隙間mに内部液6を注入(キャピラリー3内に注入されても一向に構わず、後の工程で排除される。)する。
【0017】
次に、同図(D)に示すように、キャピラリー3の他端側からキャピラリー3,3間の隙間mに、リード線4が接続された内極5を挿通し、かつ、リード線4をガラス管8の端部で外方に折り曲げて、このリード線4を液密保持させるように、キャピラリー3の他端側を樹脂11によってモールドする。
【0018】
この樹脂11のモールドに際しては、樹脂11がキャピラリー3,3間の隙間mに入り込んで、内部液6を注入した隙間mの両端側が樹脂11で封止されるようにすることが肝要であり、従って、内部液6が隙間mに目一杯、注入されている時は、これを排除し、モールド樹脂11が、キャピラリー3の貫通孔nよりも深く隙間mに入り込むようにするのである。
【0019】
次に、同図(E)に示すように、樹脂11による隙間m両端側の封止だけを残して、キャピラリー3の両端側のみの封止をなくすように、即ち、キャピラリー3の貫通孔nによる流路のみを形成するように、キャピラリー3の両端側でモールド樹脂11とキャピラリー3とを切除(切除部分を仮想線jで示している。)して、貫通孔n内の内部液6を排除するのであり、以上をもって、隙間mに注入された内部液6が密封状態で互いに連通し、かつ、この内部液6に内極5が浸漬されたフロースルータイプのガラス電極1を構成しているのである。
【0020】
上記の構成におけるガラス電極1では、キャピラリー3の貫通孔nによる流路壁面が電極応答部を形成するのであって、このキャピラリー3の複数本を集束させたことで、それの接液面積が格段に広くなることから、電極応答部のインピーダンスを大幅に低下させることが可能となり、しかも、キャピラリー自体は非常に薄膜であることから、応答性も飛躍的に高くなる。
【0021】
尚、上記のガラス電極1の成形手順において、隙間mの一端側を樹脂11でモールドして、上記のjに相当する部分を切除し、次いで、内部液6を注入して内極5を隙間mに挿入し、この後、キャピラリー3の他端側を樹脂11でモールドして、このモールド樹脂11とキャピラリー3とを、上記のjに相当する部分で切除するようにしてもよい。
【0022】
また、隙間mの一端側をモールドする際に、その隙間mに内極5を挿通させるようにしてもよいのであって、ガラス電極1の成形手順に制約を受けることはないのである。
【0023】
更に、酸可溶性のガラス管8に複数本のキャピラリー素材管9を挿通させて、引き延ばし加工(リ・ドロー加工)し、これを所定長さにダイシングして、電極素材Aとしているが、所定の形状に形成されたキャピラリー3の複数本を、熱収縮チューブ(筒状部材)で集束してダイシングし、この熱収縮チューブの両端側を切除して、これを電極素材Aとしてもよく、或いは、チューブ両端側を切除することなく、このチューブの一端側に切れ目を形成して、内極5に接続のリード線4を、この切れ目を通して外方に折り曲げるようにしてもよいのである。
【0024】
また、所定の形状に形成された所定長さのキャピラリー3の複数本を、熱収縮チューブで集束してダイシングしてもよいのであり、この際、熱収縮チューブの端部をキャピラリー3の端部から少し控えさせるようにすれば、チューブ両端側の切除や切れ目の加工などを不要にして、内極5に接続のリード線4を外方に折り曲げることができる。
【0025】
図1に戻って、比較電極2は、例えば次のように構成されている。即ち、試料流通用のキャピラリー7に液絡部rを形成する一方、この液絡部rを囲うように、ガラス製の比較電極ボデイ12をキャピラリー7に密着保持させ、かつ、この比較電極ボデイ12内に、比較電極内部液13と、リード線14を導出させる状態で比較電極内極(Ag/AgCl)15とを設けて成る。
【0026】
この比較電極2と上記のガラス電極1とによって、所謂フロースルータイプのpH計が構成されるのであるが、図5に示した比較電極bと本発明によるガラス電極1とを組み合わせてpH計を構成してもよく、かつ、pH以外にも、例えばNa+ などの各種イオンの測定も可能である。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のイオン濃度測定電極においては、キャピラリーの複数本を集束させて、その集束キャピラリーによって、接液面積が極めて広い電極応答部を形成したのであって、これによって電極応答部のインピーダンスを大幅に低下させ得ることから、高入力絶縁回路が不要となり、しかも、キャピラリー自体が非常に薄膜であることから、応答性も飛躍的に高くなり、全体として、高入力絶縁回路が不要な低インピーダンスの電極応答部を有するイオン濃度測定電極を、応答性の高いものにして提供できる。
【0028】
また、本発明によるイオン濃度測定電極の製造方法によれば、電極応答部の低インピーダンス化が達成される上に、応答性の優れたイオン濃度測定電極が製造される。
【図面の簡単な説明】
【図1】フロースルータイプに構成したpH計の縦断面図である。
【図2】一部を取り出して拡大図示したリ・ドロー加工による電極素材の成形説明図である。
【図3】(A)〜(E)はガラス電極の一成形手順を示し、(A)はガラス管の両端部を溶解した電極素材の断面図、(B)は樹脂によるキャピラリー一端側のモールド断面図、(C)は真空引きによる内部液の注入説明図、(D)は樹脂によるキャピラリー他端側のモールド断面図、(E)はモールド部分の切除説明図である。
【図4】電極の横断面図である。
【図5】従来のガラス電極および比較電極によるpH計の説明図である。
【符号の説明】
3…キャピラリー、4…リード線、5…内極、6…内部液、m…隙間。

Claims (2)

  1. 複数本のキャピラリーを集束し、このキャピラリーの貫通孔による流路を残して、集束キャピラリー間の隙間の両端側のみを封止して成り、かつ、前記隙間には、内部液が注入され、更に、リード線に接続された内極が挿通されて成ることを特徴とするイオン濃度測定電極。
  2. 複数本のキャピラリーを筒状部材の内部に集束し、この集束したキャピラリーの一端側を樹脂モールドすると共に、集束キャピラリー間の隙間に、リード線に接続された内極を挿通し、かつ内部液を注入した状態で、集束キャピラリーの他端側を樹脂モールドし、樹脂モールドによる隙間両端側の封止を残すように、キャピラリーの両端部とモールド樹脂の一部とを切除して、キャピラリーの貫通孔による流路を形成することを特徴とするイオン濃度測定電極の製造方法。
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