JP3657173B2 - 基板めっき装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板めっき装置に係り、特に半導体基板に形成された微細配線パターン(窪み)に銅(Cu)等の金属を充填する等の用途の基板めっき装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体基板上に配線回路を形成するための材料としては、アルミニウムまたはアルミニウム合金が一般に用いられているが、集積度の向上に伴い、より伝導率の高い材料を配線材料に採用することが要求されている。このため、基板にめっき処理を施して、基板に形成された配線パターンに銅またはその合金を充填する方法が提案されている。
【0003】
これは、配線パターンに銅またはその合金を充填する方法としては、CVD(化学的蒸着)やスパッタリング等各種の方法が知られているが、金属層の材質が銅またはその合金である場合、即ち、銅配線を形成する場合には、CVDではコストが高く、またスパッタリングでは高アスペクト(パターンの深さの比が幅に比べて大きい)の場合に埋込みが不可能である等の短所を有しており、めっきによる方法が最も有効だからである。
【0004】
ここで、半導体基板上に銅めっきを施す方法としては、カップ式やディップ式のようにめっき槽に常時めっき液を張ってそこに基板を浸す方法と、めっき槽に基板が供給された時にのみめっき液を張る方法、また、電位差をかけていわゆる電解めっきを行う方法と、電位差をかけない無電解めっきを行う方法など、種々の方法がある。
【0005】
従来、この種の銅めっきを行うめっき装置には、めっき工程を行うユニットの他に、めっきに付帯する前処理工程を行うユニットや、めっき後の洗浄・乾燥工程を行うユニット等の複数のユニットと、これらの各ユニット間で基板の搬送を行う搬送ロボットが水平に配置されて備えられていた。そして、基板は、これらの各ユニット間を搬送されつつ、各ユニットで所定の処理が施され、めっき処理後の次工程に順次送られるようになっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のめっき装置にあっては、めっき処理や前処理といった各工程毎に別々のユニットが備えられ、各ユニットに基板が搬送されて処理されるようになっていたため、装置としてかなり複雑で制御が困難となるばかりでなく、大きな占有面積を占め、しかも製造コストがかなり高価であるといった問題があった。
【0007】
本発明は上記に鑑みて為されたもので、めっき処理及びそれに付帯する処理を単一のユニットで行うことができ、しかも単一のユニットとしてより一層の小型化と、操作性を向上させることができ、メンテナンス性にも優れた基板めっき装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の基板めっき装置は、被めっき面を上方に向けて基板を保持する基板保持部と該基板保持部で保持した基板に近接した上方位置に該基板と対峙して配置されるアノードを有し、前記基板とアノードとの間のシール材でシールされた空間にめっき液を満たして電解めっきを施すめっき装置であって、前記基板保持部は、回転自在な基板ステージと、この基板ステージの周縁部に立設した一対の支持腕とを備え、前記支持腕で基板を支持した時に該基板のノッチあるいはオリフラ部に対面する一方の支持腕に対向する位置に配置された他方の支持腕には、基板を内方に向けて押圧するように回動する押圧爪が設けられていることを特徴とする。
【0009】
これにより、基板を該基板のノッチ形成側を1つの支持腕に押付けた状態で固定爪で挟持保持することで、基板と基板保持部との間の余裕分(通常、基板外径に対して0.4mm程度)だけ基板を基板保持部の中心からノッチ又はオリフラ部寄りに偏心させた位置で基板保持部で保持することができ、これによって、ノッチ又はオリフラ部を避け、かつシール形状や機構を複雑にすることなく、めっき面積(有効面積)を大きくすることができる。
【0010】
前記押圧爪を内方に向けて付勢する付勢手段と、前記付勢手段の付勢力に抗して前記各爪を開く方向に回動させる上下動自在な開放ピンとを有し、これらの開放ピンを、開放部材の上下動に伴って上下動するように構成し、前記開放ピンと前記開放部材との間に動作のタイミングを調整する調整機構を備えるようにしてもよい。これにより、基板を保持する際に、押圧爪の作動のタイミングを固定爪の作動よりも早めて、基板を偏心させた後にこれを固定爪で挟持固定することで、擦れてしまうことを防止することができる。
【0011】
また、前記調整機構を、前記開放ピンの下端部に位置調整自在に取付けられる大径部材と、前記開放部材の該開放ピンに対向する位置に設けられる前記開放ピンの外径より大きく大径部材の外径より小さな内径の凹部からなるものとしてもよい。これにより、例えば開放ピンの下端部に雌ねじを刻設し、大径部としてこの雌ねじ部に螺合するナットを使用し、このナットの締付け位置を調整することで、動作のタイミングを調整することができる。このナットとしてダブルナットを使用することで、ナットの緩みによる位置ずれを防止できる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。この実施の形態の基板めっき装置は、半導体基板の表面に電解銅めっきを施して、銅層からなる配線が形成された半導体装置を得るのに使用される。このめっき工程を図1を参照して説明する。
【0028】
半導体基板Wには、図1(a)に示すように、半導体素子が形成された半導体基板1上の導電層1aの上にSiOからなる絶縁膜2が堆積され、リソグラフィ・エッチング技術によりコンタクトホール3と配線用の溝4が形成され、その上にTiN等からなるバリア層5、更にその上に電解めっきの給電層としてシード層7が形成されている。
【0029】
そして、図1(b)に示すように、前記半導体基板Wの表面に銅めっきを施すことで、半導体基板1のコンタクトホール3及び溝4内に銅を充填させるとともに、絶縁膜2上に銅層6を堆積させる。その後、化学的機械的研磨(CMP)により、絶縁膜2上の銅層6を除去して、コンタクトホール3および配線用の溝4に充填させた銅層6の表面と絶縁膜2の表面とをほぼ同一平面にする。これにより、図1(c)に示すように銅層6からなる配線が形成される。
【0030】
図2は、本発明の実施の形態の基板めっき装置の全体を示す平面図で、図2に示すように、このめっき装置には、同一設備内に位置して、内部に複数の基板Wを収納する2基のロード・アンロード部10と、めっき処理及びその付帯処理を行う2基のめっきユニット12と、ロード・アンロード部10とめっきユニット12との間で基板Wの受渡しを行う搬送ロボット14と、めっき液タンク16を有するめっき液供給設備18が備えられている。
【0031】
前記めっきユニット12には、図3に示すように、めっき処理及びその付帯処理を行う基板処理部20が備えられ、この基板処理部20に隣接して、めっき液を溜めるめっき液トレー22が配置されている。また、回転軸24を中心に揺動する揺動アーム26の先端に保持されて前記基板処理部20とめっき液トレー22との間を揺動する電極ヘッド28を有する電極アーム部30が備えられている。更に、基板処理部20の側方に位置して、プレコート・回収アーム32と、純水やイオン水等の薬液、更には気体等を基板に向けて噴射する固定ノズル34が配置されている。この実施の形態にあっては、3個の固定ノズル34が備えられて、洗浄機にも対応できるようになっており、その内の1個を純水の供給用に用いている。
【0032】
前記基板処理部20には、図4及び図5に示すように、被めっき面を上方に向けて基板Wを保持する基板保持部36と、この基板保持部36の上方に該基板保持部36の周縁部を囲繞するように配置されたカソード部38が備えられている。更に、基板保持部36の周囲を囲繞して処理中に用いる各種薬液の飛散を防止する有底略円筒状のカップ40が、エアシリンダ42を介して上下動自在に配置されている。
【0033】
ここで、前記基板保持部36は、エアシリンダ44によって、下方の基板受渡し位置Aと、上方のめっき位置Bと、これらの中間の前処理・洗浄位置Cとの間を昇降し、回転モータ46及びベルト48を介して、任意の加速度及び回転速度で前記カソード部38と一体に回転するように構成されている。この加減速度は、例えば0〜180000min−2、回転速度は、例えば0〜2500min−1の範囲で、各処理工程別に速度、加減速度、設定速度到達後の回転時間が設定され制御される
【0034】
この基板受渡し位置Aに対向して、めっきユニット12のフレーム側面の搬送ロボット14側には、図7に示すように、基板搬出入口50が設けられ、また基板保持部36がめっき位置Bまで上昇した時に、基板保持部36で保持された基板Wの周縁部に下記のカソード部38のシール材90とカソード電極88が当接するようになっている。一方、前記カップ40は、その上端が前記基板搬出入口50の下方に位置し、図5に仮想線で示すように、上昇した時に前記基板搬出入口50を塞いでカソード部38の上方に達するようになっている。
【0035】
前記めっき液トレー22は、めっきを実施していない時に電極ヘッド28の下記のめっき液含浸材100及びアノード102をめっき液で湿潤させたり、液置換及び空電解等のアノード102のコンディショニングを実施するためのものであり、図6に示すように、このめっき液含浸材100が収容できる大きさに設定されている。
【0036】
前記電極アーム部30は、図8及び図9に示すように、上下動モータ54と図示しないボールねじを介して上下動し、旋回モータ56を介して、前記めっき液トレー22と基板処理部20との間を旋回(揺動)するようになっている。
【0037】
また、プレコート・回収アーム32は、図10に示すように、上下方向に延びる支持軸58の上端に連結されて、作動位置すなわちプレコートやキャリアコートを施したりめっき液を回収する位置と格納位置との間をロータリアクチュエータ60を介して旋回(揺動)し、エアシリンダ62(図7参照)を介して上下動するよう構成されている。
【0038】
このプレコート・回収アーム32には、その自由端側にプレコート液吐出用のプレコートノズル64aとキャリアコート液吐出用のキャリアコートノズル64bが並列して保持され、基端側にめっき液回収用のめっき液回収ノズル66が保持されている。そして、プレコートノズル64aは、例えばエアシリンダによって駆動するシリンジに接続されて、プレコート液がプレコートノズル64aから間欠的に吐出され、キャリアコート液も同様に、シリンジを介してキャリアコートノズル64bから間欠的に吐出される。また、めっき液回収ノズル66は、例えばシリンダポンプまたはアスピレータに接続されて、基板上のめっき液が該めっき液回収ノズル66の下端から吸引されるようになっている。
【0039】
前記基板保持部36は、図11乃至図16に示すように、円板状の基板ステージ68を備え、この基板ステージ68の周縁部の円周方向に沿った6カ所に、上面に基板Wを水平に載置して保持する支持腕70が立設されている。この各支持腕70の段部下面には、基板Wを載置する台座72が固着されている。
【0040】
これらの支持腕70の内の1つの支持腕70aには爪が備えられておらず、この支持腕70aに対向する支持腕70bの上端には、基板Wの端面に当接し回動して基板Wを内方に押付ける押圧爪74が回動自在に支承されている。また、他の4個の支持腕70cの上端には、回動して基板Wをこの上方から下方に押付けて基板Wの周縁部を台座72との間で挟持する固定爪76が回動自在に支承されている。
【0041】
ここで、前記押圧爪74及び固定爪76の下端は、コイルばね78を介して下方に付勢した開放ピン80の上端に連結されて、この開放ピン80の下動に伴って押圧爪74及び固定爪76が内方に回動して閉じるようになっており、基板ステージ68の下方には前記開放ピン80に下面に当接してこれを上方に押上げる開放部材としての支持板82が配置されている。
【0042】
これにより、基板保持部36が図5に示す基板受渡し位置Aに位置する時、開放ピン80は支持板82に当接し上方に押上げられて、押圧爪74及び固定爪76が外方に回動して開き、基板ステージ68を上昇させると、開放ピン80がコイルばね78の弾性力で下降して、押圧爪74及び固定爪76が内方に回転して閉じるようになっている。
【0043】
ここで、図14に示すように、基板Wは、そのノッチNが支持腕70aに対面するように位置決めして台座72の上に載置される。そして、基板ステージ68の上昇に伴って、先ず支持腕70bの押圧爪74が閉じる方向に回動し、これによって、基板Wのノッチ形成側を支持腕70aに押付け、しかる後、支持腕70cの固定爪76が閉じる方向に回動して基板Wの周縁部を挟持保持することで、固定爪76で基板Wを擦ることがないようになっている。
【0044】
このため、この例にあっては、図15及び図16に示すように、開放ピン80の下端部に雌ねじ部を設け、この雌ねじ部にナット81をダブルに螺着するとともに、支持板(開放部材)82の該開放ピン80に対応する位置に、開放ピン80の直径より大きくナット81の直径より小さな凹部82aを設けている。そして、押圧爪74を開閉する開放ピン80のナット81の方が固定爪76を開閉する開放ピン80のナット81よりも上方に位置するようにしている。
【0045】
これにより、図15に示す位置から図16に示す位置まで基板ステージ68を上昇させて基板Wを保持する際、押圧爪74の回動範囲の方が固定爪76の回動範囲よりも狭く、且つ基板W寄りに位置しているため、押圧爪74の方が固定爪76よりも早く短く閉まる。なお、逆に基板Wの保持を解く時には、押圧爪74の方が固定爪76よりも遅く短く開く。
【0046】
このように、基板Wを該基板Wのノッチ形成側を支持腕70aに押付けた状態で固定爪76で挟持保持することで、基板Wと基板保持部36との余裕分(通常、基板外径に対して0.4mm程度)だけ基板Wを基板保持部36の中心からノッチ寄りに偏心させた位置で基板保持部36で保持して、図14に示すように、円状のシール境界Sがノッチの対向側に位置するようにすることができ、これによって、シール形状や機構を複雑にすることなく、めっき面積(有効面積)を大きくすることができる。
【0047】
つまり、図17(a)に示すように、基板WのノッチNを外した内方位置に円状のシール境界Sが基板Wと同心状に位置するようにすると、シール境界Sの内側のめっき面積がノッチNの深さに見合った分だけ狭くなってしまい、また、図17(b)に示すように、略円形でノッチNの内側を弦状に延びるようにシール境界Sを設けると、シール形状が複雑となってしまうが、この例にあっては、このような弊害はない。
【0048】
また、開放ピン80の下端部に螺着したナット81の締付け位置を調整することで、押圧爪74と固定爪76の動作のタイミングを調整することができる。このナット81としてダブルナットを使用すれば、ナット81の緩みによる位置ずれを防止できる。
【0049】
前記カソード部38は、図18乃至図22に示すように、前記支持板82(図5及び図13等参照)の周縁部に立設した支柱84の上端に固着した環状の枠体86と、この枠体86の下面に内方に突出させて取付けた、この例では6分割されたカソード電極88と、このカソード電極88の上方を覆うように前記枠体86の上面に取付けた環状のシール材90とを有している。
【0050】
このシール材90は、リング状で、横断面において徐々に薄肉となって下方に徐々に傾斜しつつ内方に延出する内方延出部90aと、この内方延出部90aに連続し更に薄肉となって下方に屈曲して延びる下方垂下部90bとを有し、この下方垂下部90bの下端の幅Wは、例えば0.5mmに設定されている。
【0051】
シール材90は、数mmHOのヘッド圧に耐えれば良いので、その肉厚を内方に向けて徐々に薄くし、かつ下方に向けて屈曲させて、基板Wとの接触端部を、例えば0.5mm程度の可能な限り薄くすることで、シール性を損なうことなく、めっき面積(有効面積)を大きくすることができる。
【0052】
また、カソード電極88は、例えば板厚が0.2mmで、その内周面には、円周方向に等ピッチで、例えば幅Wが2mm程度の幅の複数の突起片89が突設され、この各突起片89は、前記シール材90の下方垂下部90bの外側に位置し該下方垂下部90bに沿って下方にほぼ直角に直角に屈曲して延びる垂下部89aを有し、この垂下部89aの下端に円弧状の丸みが形成されている。
【0053】
これにより、図5及び図24に示すように、基板保持部36がめっき位置Bまで上昇した時に、この基板保持部36で保持した基板Wの周縁部にカソード電極88の各突起片89の下端が押付けられて通電し、同時にシール材90の下方垂下部90bの下端面が基板Wの周縁部上面に圧接し、ここを水密的にシールして、基板Wの上面(被めっき面)に供給されためっき液が基板Wの端部から染み出すのを防止するとともに、めっき液がカソード電極88を汚染することを防止するようになっている。
【0054】
また、図22に示すように、枠体86、カソード電極88、シール材90及び該シール材90の上面を覆うリング状の蓋体91とを一体化して、これをボルト92を介して支柱84の上端に着脱自在に螺着することで、劣化した場合も交換が容易となる。
【0055】
このように、基板保持部36で保持した基板Wの表面にカソード電極88の突起片89の下端を垂直方向から接触させて該突起片89を弾性変形させることで、カソード接触時の擦れによるパーティクルの発生を防止し、かつ突起片89の下端に丸みを持たせることで、接触抵抗を軽減することができる。しかも、カソード電極88の給電位置を基板平面上の最端部(例えば基板エッジから距離E=0.5mm)とするとともに、前述のように、シール材90の肉厚を可能な限り薄くすることで、基板エッジからのシール位置を、例えば1.5mm程度に短縮することができる。
【0056】
なお、この実施の形態において、カソード部38は、上下動不能で基板保持部36と一体に回転するようになっているが、上下動自在で、下降した時にシール材90が基板Wの被めっき面に圧接するように構成しても良い。
【0057】
前記電極アーム部30の電極ヘッド28は、図23乃至図25に示すように、揺動アーム26の自由端に、ショルダボトル93a、2個のスリーブ93b及び該スリーブ93b間に介装したスプリング93cからなる遊び機構93を介して連結した円板状の蓋体94と、この蓋体94の周囲を囲繞する円筒状のハウジング96と、このハウジング96と該ハウジング96の内部に配置した中空円筒状の支持枠98で上端フランジ部100aを挟持して固定しためっき液含浸材100と、このめっき液含浸材100の上面に載置保持されたアノード102とを有し、前記めっき液含浸材100は、前記ハウジング96の開口部を覆って、ハウジング96の内部に吸引室104が形成されている。この吸引室104の内部には、めっき液供給設備18(図2参照)から延びるめっき液供給管106に接続され直径方向に延びるめっき液導入管108がアノード102の上面に当接して配置され、更に、ハウジング96には、吸引室104に連通するめっき液排出管110が接続されている。
【0058】
ここで、前記めっき液含浸材100は、アルミナ,SiC,ムライト,ジルコニア,チタニア,コージライト等のポーラスセラミックスまたはポリプロピレンやポリエチレン等の焼結体の多孔質材料で構成されている。例えば、アルミナ系セラミックスにあっては、ポア径10〜300μm、気孔率20〜60%、厚み5〜20mm、好ましくは8〜15mm程度のものが使用される。
【0059】
ポーラスセラミックスのような硬性のあるめっき液含浸材100は、ハウジング96と中空の支持枠98でフランジ部100aを挟持して固定する際に隙間を完全にシールして電流漏洩を防ぐことが均一なめっき面を得るために重要であり、そのシール材料としては、耐薬性のあるゴム材料やフッ素材料が望ましい。そこで、この例では、図25に示すように、ハウジング96とめっき液含浸材100のフランジ部100aの下面との間に、例えばガスケットからなるシール材112を介装している。
【0060】
また、めっき液含浸材100の露出部の側面からの電流がリークするが、このリークする電流を制御することで、即ちめっき液含浸材100の露出部の側面をシールで覆い、このシール面積を変えることで、基板周辺部のめっき膜厚のコントロールが可能となるので、この例では、めっき液含浸材100の側面の所定の領域を環状シール(輪ゴム)114でシールしている。なお、この環状シール114を前記シール材112と一体に成形しても良いことは勿論である。
【0061】
前記めっき液導入管108は、マニホールド構造とすると被めっき面に均一なめっき液を供給するのに有効である。即ち、その長手方向に連続して延びるめっき液導入路108aと該導入路108aに沿った所定のピッチで、下方に連通する複数のめっき液導入口108bが設けられ、また、アノード102の該めっき液導入口108bに対応する位置に、めっき液供給口102aが設けられている。更に、アノード102には、その全面に亘って上下に連通する多数の通孔102bが設けられている。これにより、めっき液供給管106からめっき液導入管108に導入されためっき液は、めっき液導入口108b及びめっき液供給口102aからアノード102の下方に達し、めっき液含浸材100を経由して基板の被めっき面上に供給される。また、めっき液含浸材100及び基板の被めっき面へめっき液を供給した状態で、めっき液排出管110を吸引することで、めっき液含浸材100及び基板の被めっき面のめっき液は、通孔102bから吸引室104を通過して該めっき液排出管110から排出されるようになっている。
【0062】
ここで、前記アノード102は、スライムの生成を抑制するため、含有量が0.03〜0.05%のリンを含む銅(含リン銅)で構成されている。このように、アノード102に含リン銅を使用すると、めっきの進行に伴ってアノード102の表面にブラックフィルムと呼ばれる黒膜が形成される。このブラックフィルムは、リンやClを含むCu錯体で、CuCl・CuO・CuP等で構成されるものである。このブラックフィルムの形成により銅の不均化反応が抑制されるので、ブラックフィルムをアノード102に表面に安定して形成することは、めっきを安定化させる上で重要であるが、これが乾燥したり酸化してアノード102から脱落すると、パーティクルの原因となる。
【0063】
そこで、この実施の形態にあっては、例えば側面をシールした多孔質材料製のめっき液含浸材100をハウジング96の下端開口部に取付け、このめっき液含浸材100の上面にアノード102を載置保持し、このめっき液含浸材100にめっき液を保持させて、アノード102の表面を湿潤させることで、ブラックフィルムの基板の被めっき面への脱落を防止している。
【0064】
更に、めっき液含浸材100を多孔質材料製とすることで、この内部に入り込んだめっき液を介してめっき液含浸材100の内部の電気抵抗を増大させて、めっき膜厚の均一化を図るとともに、パーティクルの発生を防止している。
【0065】
つまり、図26に模式的に示すように、面内膜厚分布に影響を及ぼす抵抗要因としては、▲1▼液抵抗、▲2▼分極抵抗、▲3▼シート抵抗があり、極間距離が短い場合には液抵抗が小さくなって、シート抵抗が支配的になるが、めっき液含浸材をポーラスセラミックスのような屈曲した内部構造を有するポーラス材料とすることで、含浸材内部の電気抵抗を増大させ、極間距離に相当する液抵抗以上の電気抵抗を含浸材に付与することができる。なお、このような場合に、液抵抗や分極抵抗を増加させることも有効であるが、分極抵抗をむやみに高めると、配線の金属埋込み特性や不具合をもたらす場合がある。
【0066】
また、めっき液含浸材100の上にアノード102を載置保持することで、めっきの進行に伴ってアノード102の下面のめっき液含浸材100と接触している側が溶解しても、すなわち、図24の右側に示すアノード102が厚い状態から、アノード102が溶融して、図24の左側に示すように薄い状態となっても、アノード102を固定するための治具を使用することなく、アノード102自体の自重でアノード102の下面と基板Wとの距離を一定に保ち、かつここに空気が混入して空気溜まりが生じてしまうことを防止することができる。
【0067】
そして、前記電極ヘッド28は、基板保持部36がめっき位置B(図5参照)にある時に、基板保持部36で保持された基板Wとめっき液含浸材100との隙間が、例えば0.5〜3mm程度となるまで下降し、この状態で、めっき液供給管106からめっき液を供給して、めっき液含浸材100にめっき液を含ませながら、基板Wの上面(被めっき面)とアノード102との間にめっき液を満たして、これによって、基板Wの被めっき面にめっきが施される。
【0068】
カソード部38を支持する支柱84の外方には、基板すなわちカソード電極88に対してアノード102の平行出しを行うための固定ストッパ120が周方向に等間隔に3カ所設けられている。この固定ストッパ120は、ストッパ棒122と、このストッパ棒122の上端に固着したナット124と、このナット124に螺合するボルト126とから構成され、このボルト126の頭部上面がストッパ面128となっている。つまり、めっきを行う際に、電極ヘッド28はめっき位置までモータ駆動により下降するが、電極ヘッド28のハウジング96に設けた突出部96aがこのストッパ面128に当接することでアノード面とカソード面との平行位置出しが行えるようになっている。
【0069】
これにより、例えばテーチィングの際に、電極ヘッド28が固定ストッパ120のストッパ面128に当接した時にアノード面とカソード面とが平行となるように固定ストッパ120をナット124の締付け量を介して調整することで、繰返し位置決め精度を向上させるとともに、電極ヘッド28の交換時における電極ヘッド28の個体差にも迅速に対応させて、基板上の電流密度の均一化を図ることができる。
【0070】
なお、前述のように、電極ヘッド28には、遊び機構93を介して、これがストッパ面128に当接した時に微調整が可能な程度の上下への可動余裕(遊び)が設けられている。
【0071】
めっき液トレー22は、図27に示すように、めっき液の供給口130、排水口(図示せず)及びオーバーフロー口132を有している。また、その内面側の周縁部には、電極ヘッド28に当接してアノード面とめっき液底面との平行位置出しが行えるストッパ134が設けられている。更に、フォトセンサーが取付けられて、めっき液トレー22内のめっき液の満水すなわちオーバーフローと排水の検出が可能になっている。また、トレー部周辺には局所排気口が設置されている。
【0072】
めっき液トレー22の底板には、例えば略8mm厚の円板形状の無酸素銅からなるダミーカソード136が取付けられ、このダミーカソード136は、めっき液トレー22の底板を脱着してこの装着及び交換が行えるようになっている。これにより、ダミーカソード136をめっき液トレー22の底部に装着した状態で、電極ヘッド28をめっき液トレー22内に移動し、めっき液をはり通電することでアノード102のコンディショニング、即ち空電解が実施される。ダミーカソード136の表面には、例えば延べ40時間の空電解で約1mmの銅層が成長するので、空電解を実施した時間を積算して任意の周期でダミーカソード136を交換する。
【0073】
ここで、めっき液トレー22は、例えばPTFE等のフッ素形樹脂やポリエチレン等の濡れ性の悪い材料で構成され、この連続して延びる側壁22aの内面22bは、その全周に亘って垂直面となっている。これによって、めっき液トレー22内のめっき液に含まれる硫酸銅等がめっき液トレー22の内側面に析出してしまうことを防止している。
【0074】
すなわち、めっき液は、その主成分であるCuSOがほぼ飽和濃度に達しているため、大気との接触面積が多く、液高が変動するめっき液トレー22内のめっき液は、蒸発等により該めっき液トレー22の内側面に結晶が析出しやすく、これが核となって更に大きな固体へと成長して、その結晶がめっき液中に落下すると良質なめっきが提供できなく恐れがあるが、めっき液トレー22を濡れ性の悪い材料で構成し、その内側面を垂直面とすることで、結晶がめっき液トレー22の内側面に付着しにくくすることができる。
【0075】
次に、この実施の形態のめっき装置におけるめっき液回収処理について図28及び図29を参照して説明する。
【0076】
先ず、基板Wの上に残っためっき液を前記めっき液回収ノズル66で減圧吸引して回収するのであるが、この時、基板Wの周縁部をシール材90でシールしたまま、基板Wを、例えば100min−1以下で回転させる。これにより、めっき処理終了後に基板Wの上面に残っためっき液を基板Wの回転に伴う遠心力で基板Wの周縁部のシール材90の際に集め、ここから効率良く、かつ高い回収率でめっき液を回収することができ、これによって、高価なめっき液の補充を少なく済ますとともに、廃液の負荷を減少させることができる。
【0077】
このめっき液回収ノズル66で回収しためっき液には、多量の空気が含まれているので、これを気水分離槽140aに導き、これで分離された液体(めっき液)をめっき液供給設備18の排液側に戻し、気体を第2気水分離槽142に導く。
【0078】
電極ヘッド28にあっては、めっき液供給設備18の供給側から電極ヘッド28にめっき液を供給し、この電極ヘッド28から排出されためっき液を気水分離槽140bに導き、これで分離された液体(めっき液)をめっき液供給設備18の排液側に戻し、気体を第2気水分離槽142に導く。
【0079】
めっき液トレー22にあっては、めっき液供給設備18の供給側からめっき液トレー22にめっき液を供給し、オーバーフローも含めこのめっき液トレー22から排出されためっき液をめっき液供給設備18の排液側に戻す。
【0080】
そして、第2の気水分離槽142では、再度気水分離を行って、これで分離された液体(めっき液)をめっき液供給設備18の排液側に戻し、気体を真空ポンプ144から排気する。
【0081】
また、この実施の形態のめっき装置にあっては、図30に示すように、18ステップの処理工程、すなわち、1.プレコート、2.プレコートドライ、3.液はり、4.めっき、5.アーム液回収、6.リンス、7.水洗、8.ドライ、9.キャリアコート、10.キャリアコートドライ、11.プレコート、12.プレコートドライ、13.液はり、14.めっき、15.アーム液回収、16.リンス、17.水洗、18.ドライ、が用意されており、めっき工程については更に9ステップが用意されている。そして、その各処理工程の使用/未使用を任意に設定できるようになっている。
【0082】
これにより、例えば 7.水洗、8.ドライのみを「使用」とし、他のステップを「未使用」設定すれば、洗浄機として機能するようになっている。
【0083】
次に、前記実施の形態のめっき装置における一連のめっき処理の動作について説明する。
【0084】
先ず、ロード・アンロード部10からめっき処理前の基板Wを搬送ロボット14で取出し、被めっき面を上方に向けた状態で、フレームの側面に設けられた基板搬出入口50から一方のめっきユニット12の内部に搬送する。この時、基板保持部36は、下方の基板受渡し位置Aにあり、また電極アーム部30及びプレコート・回収アーム32とも基板保持部36の上方になく、待避位置で待避している。搬送ロボット14は、そのハンドが基板ステージ68の真上に到達した後に、ハンドを下降させることで、基板Wを支持腕70上に載置する。そして、搬送ロボット14のハンドを前記基板搬出入口50を通って退去させる。
【0085】
搬送ロボット14のハンドの退去が完了した後、カップ40を上昇させ、次に基板受渡し位置Aにあった基板保持部36を前処理・洗浄位置Cに上昇させる。すると、この上昇に伴って、支持腕70上に載置された基板は、押圧爪74で支持腕70aの方向に押圧されて偏心し、この状態で固定爪76で確実に把持される。
【0086】
一方、電極アーム部30の電極ヘッド28は、この時点ではめっき液トレー22上の通常位置にあって、めっき液含浸材100あるいはアノード102がめっき液トレー22内に位置しており、この状態でカップ40の上昇と同時に、めっき液トレー22及び電極ヘッド28にめっき液の供給を開始する。そして、基板のめっき工程に移るまで、新しいめっき液を供給し、併せてめっき液排出管110を通じた吸引を行って、めっき液含浸材100に含まれるめっき液の交換と泡抜きを行う。なお、カップ40の上昇が完了すると、フレーム側面の基板搬出入口50はカップ40で塞がれて閉じ、フレーム内外の雰囲気が遮断状態となる。
【0087】
カップ40が上昇するとプレコート処理に移る。即ち、基板Wを受け取った基板保持部36を回転させ、待避位置にあったプレコート・回収アーム32を基板と対峙する位置へ移動させる。そして、基板保持部36の回転速度が設定値に到達したところで、プレコート・回収アーム32の先端に設けられたプレコートノズル64aから、例えば界面活性剤からなるプレコート液を基板の被めっき面に間欠的に吐出する。この時、基板保持部36が回転しているため、プレコート液は基板Wの被めっき面の全面に行き渡る。次に、プレコート・回収アーム32を待避位置へ戻し、基板保持部36の回転速度を増して、遠心力により基板Wの被めっき面のプレコート液を振り切って乾燥させる。
【0088】
一方、めっき液トレー22内では電極ヘッド28の液置換を行って、めっき液の交換及び泡抜きを行う。つまり、めっき液をめっき液トレー22に供給しながら、真空ポンプを作動させて、吸引可能な圧力に到達したら、回収用のバルブを開いて電極ヘッド28からめっき液トレー22内のめっき液を吸引する。この時の吸引時間は、例えば0.5秒であり、その後、バルブを閉じる。このめっき液吸引の回数は任意に設定が可能である。設定回数終了したら、めっき液のめっき液トレー22への供給を停止し、真空ポンプを停止させる。
【0089】
プレコート完了後に液はり処理に移る。先ず、基板保持部36を、この回転を停止、若しくは回転速度をめっき時速度まで低下させて、設定回転数に到達した後、めっきを施すめっき位置Bまで上昇させる。すると、基板Wの周縁部はカソード電極88に接触して通電可能な状態となり、同時に基板Wの周縁部上面にシール材90が圧接して、基板Wの周縁部が水密的にシールされる。
【0090】
なお、めっき液含浸材100として、例えばポーラスセラミック等の多孔質材料以外の、例えばスポンジ状のものを使用した場合には、電極ヘッド28をめっき液トレー22内の通常位置から押込み位置に下降させ、めっき液含浸材100をめっき液トレー22の底に押し付けて余分なめっき液を絞ることで、アーム上昇時のめっき液の滴下を防止する。
【0091】
一方、搬入された基板Wのプレコート処理が完了したという信号に基づいて、電極アーム部30をめっき液トレー22上方からめっきを施す位置の上方に電極ヘッド28が位置するように水平方向に旋回させ、この位置に到達した後に、電極ヘッド28をカソード部38に向かって下降させる。電極ヘッド28の下降が完了した時点で、めっき電流を投入し、めっき液供給管106からめっき液を電極ヘッド28の内部に供給して、アノード102を貫通しためっき液供給口102aよりめっき液含浸材100にめっき液を供給する。この時、めっき液含浸材100は、基板Wの被めっき面に接触せず、0.5mm〜3mm程度に近接した状態となっている。また、基板保持部36を任意の速度で回転させても良い。そして、液はり工程に設定した定電圧値の通電を実施し、めっき液の押し出し及び引き込みを行ってめっき処理へ移行する。
【0092】
次のめっき処理ではステップ毎に制御パラメータを変えながらウエハにめっきを施す。めっき処理中は、めっき液含浸材100から染み出した銅イオンを含むめっき液が、めっき液含浸材100と基板Wの被めっき面との間の隙間に満たされ、基板の被めっき面に銅めっきが施される。なお、めっき液が基板Wの被めっき面に均一に供給されるよう、基板保持部36を回転させても良い。
【0093】
めっき処理が完すると、電極アーム部30を上昇させ旋回させてめっき液トレー22上方へ戻し、通常位置へ下降させる。次に、プレコート・回収アーム32を待避位置から基板Wに対峙する位置へ移動させて下降させ、めっき液回収ノズル66から基板W上のめっきの残液を回収する。つまり、めっき液回収ノズル66の先端を基板Wの周辺のシール材90の近辺に位置させ、基板保持部36を任意の設定数で回転させた状態でめっき液をめっき液回収ノズル66から吸引する。この時、基板Wが回転しているため、めっき液は遠心力で基板Wの周縁部に集まり効率的にめっき液回収ノズル66の先端から吸引される。
【0094】
なお、電極ヘッド28内に含まれためっき液も同時に回収可能であり、めっき完了後に電極ヘッド28が上昇を開始した時に、設定された時間ヘッドのめっき液回収バルブを開いてめっき液を吸引する。その時間は任意に設定可能である。なお、回収時の真空ポンプの動作は液置換工程の液回収時と同様である。
【0095】
次に、プレコート・回収アーム32を上昇させて待避位置へ戻し、基板の被めっき面のリンスのために、純水用の固定ノズル34から基板Wの中央部に純水を吐出し、同時に基板保持部36をスピードを増して回転させて基板Wの表面に僅かに残っためっき液を純水に置換し、併せてシール材90も洗浄する。このように、基板Wのリンスを行うことで、基板保持部36をめっき位置Bから下降させる際に、基板Wの周縁をシールしていたカソード部38から基板Wが離れた時にめっき液が回り込み、基板Wの裏面やカソード部38のカソード電極88が汚染されることが防止される。
【0096】
リンス終了後に水洗工程に入る。即ち、基板保持部36をめっき位置Bから前処理・洗浄位置Cへ下降させ、純水用の固定ノズル34から純水を供給しつつ基板保持部36及びカソード部38を回転させて水洗を実施する。この時、カソード部38に直接供給した純水、又は基板Wの面から飛散した純水によってシール材90及びカソード電極88も基板と同時に洗浄することができる。
【0097】
水洗完了後にドライ工程に入る。即ち、固定ノズル34からの純水の供給を停止し、更に基板保持部36及びカソード部38の回転スピードを増して、遠心力により基板表面の純水を振り切って乾燥させる。また、カソード部38も回転しているため、シール材90及びカソード電極88も乾燥される。
【0098】
以上で一連の前工程・めっき工程・洗浄/ドライ工程が完了することになるが、必要に応じて同工程の2回目を実施する。2回目を実施する場合はキャリアコート処理に移行する。つまり、キャリアコートノズル64bを備えたプレコート・回収アーム32を待避位置から基板Wと対峙する位置へ移動させ、基板保持部36の回転速度が設定値に到達したところで、プレコート・回収アーム32の先端に設けたキャリアコートノズル64bから、例えば硫黄化合物等のキャリアコート液を基板Wの被めっき面に吐出する。基板保持部36が回転しているため、キャリアコート液は基板Wの全面に行き渡る。次に、プレコート・回収アーム32を待避位置へ戻し、基板保持部36の回転速度を増して遠心力により基板W上面のキャリアコート液を振り切って乾燥させる。ここから以降の処理は1回目に記した内容と同一である。ただし、2回目のプレコート処理の実施の有無や、液はりやめっき工程の内容は1回目と異なった設定も可能である。
【0099】
ドライ工程が完了すると基板保持部36及びカソード部38の回転を停止させ、基板保持部36を基板受渡し位置Aまで下降させる。すると、固定爪76による基板Wの把持が解かれ、基板Wは、支持腕70の上面に載置された状態となる。次に、カップ40も下降させる。
【0100】
以上でめっき処理及びそれに付帯する前処理や洗浄・乾燥工程の全て工程を終了し、搬送ロボット14は、そのハンドを基板搬出入口50から基板Wの下方に挿入し、そのまま上昇させることで、基板保持部36から処理後の基板Wを受取る。そして、搬送ロボット14は、この基板保持部36から受取った処理後の基板Wをロード・アンロード部10に戻す。
【0101】
次に、アノード102のコンディショニングについて説明する。
このめっき装置では、電極ヘッド28に取付けたアノード102のコンディショニングをめっき液トレー22内で行う機能を備えている。コンディショニングの機能としては、(1)空電解、(2)アノードの乾燥防止、(3)液置換があげられる。電極ヘッド28は、めっきを施す基板保持部36の上方位置と、めっき実施時以外のめっき液トレー22上の待避位置の2ヶ所間の移動が可能であるが、これらを行う際は、めっき液トレー22の上方位置で、押込み位置及び通常位置間で電極ヘッド28の高さを制御しながらこれらを実施する。
【0102】
(1)空電解
空電解とは、本めっきを開始する前にめっきの質や速度の安定化を目的としてアノード102のコンディショニングを図る機能である。めっき液トレー22の底板には、例えば、無酸素銅からなるおよそ8mm厚の円板形状ものダミーカソード136が装着してあり、電極ヘッド28をめっき液トレー22内に移動してめっき液をはり、アノード102とダミーカソード136との間で通電することでこれを行う。ダミーカソードの表面には、延べ40時間の空電解でおよそ1mmの銅層が成長するので、空電解を実施した時間を積算して任意の周期でダミーカソード136を交換する。空電解の制御は、次の通りである。
【0103】
空電解は、「空電解動作」として、“定回数動作”と“定時間動作”が設定できる。ここで、“定回数動作”に設定した場合は、操作画面上の「空電解」スイッチの操作がトリガとして空電解を実施し、“定時間動作”に設定した場合は、空電解の実施の間隔をタイマー設定し、タイムアップがトリガとなる。
【0104】
空電解は、「液置換」、「吐出」及び「定電流」のステップ進行で実施される。「液置換」及び「吐出」では、めっき液トレー22内にめっき液を供給しながら、電極ヘッド28をめっき液トレー22内のめっき液中に位置した状態で、電極ヘッド28からめっき液の回収と供給を繰り返して、電極ヘッド28内のめっき液及びめっき液含浸材100に含まれているめっき液の交換と泡ぬきを行うものである。それらの動作用パラメータとしては、回収と供給を繰り返す回数を各々0〜5回の範囲で設定可能である。例えば、「液置換」ステップで“2回”、「吐出」ステップで“3回”が設定されていた場合は、電極ヘッド28からめっき液を2回回収した後、電極ヘッド28からめっき液を3回供給する。最後に「定電流」でアノード102からダミーカソード136に定電流を流す。この時のパラメータとしては、時間を0〜9999分、電流値を0.0〜10.0Aの範囲で設定する。また、この時めっき液トレー22に対する液供給有無の設定パラメータが用意されている。このめっき液供給有無とは、定電流を流している間に、めっき液トレー22に新めっき液を供給し続けるか、あるいはしないかの設定である。
【0105】
なお、以上の3つのステップが一連の空電解の動作となるが、“定回数動作”設定の場合は、この一連の動作を何回実施するかが0〜10回の範囲で設定できる。例えば、2回と設定すれば、先の3つのステップを2回繰り返して動作完了となる。“定時間動作”設定の場合は、一連の動作は1回実施であるが、その実施間隔を0〜9999分の間で設定可能である。通常は“定回数動作”としておき、画面スイッチから空電解を実施させるが、長時間、アノードをめっき液トレーに待避させているときは、“定時間動作”に切り換えて無人で定期的に空電解を実施するように運用している。こうして空電解を実施するとダミーカソード136の表面には、延べ40時間の空電解でおよそ1mmの銅層が成長するので、空電解を実施した時間を積算して任意の周期でダミーカソード136を交換する。
【0106】
(2)アノードの乾燥防止
アノード102は常にめっき液で湿潤しておく必要があり、乾燥させるとアノード102の表面に形成されたブラックフィルムが酸化され、変質してめっき性能を低下させる。めっきを実施していない時に、めっき液トレー22内に電極ヘッド28を待避させることによって、常に最良の状態にアノード102を維持することができる。
【0107】
(3)液置換
液置換は、電極ヘッド28内のめっき液またはめっき液含浸材100に含まれているめっき液を新しいめっき液に交換したり泡抜きを行う機能で、空電解の他、めっき工程時に随時行われる。
【0108】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、基板保持部で基板を上向きに保持した状態で、めっき処理とめっき処理に付帯した前処理や洗浄・乾燥処理といった他の処理をめっき処理に前後して行うことができる。従って、単一の装置でめっきの全工程の実施が可能となり、装置として簡素化を図るとともに、小さな占有面積で済むめっき装置を安価に提供できる。しかも、単一のユニットとしてより一層の小型化と、操作性を向上させることができ、メンテナンス性にも優れている。また、めっきユニットとして、他の半導体製造装置へ搭載が可能であるため、めっき、アニール、CMPの一連の配線形成工程をクラスター化する時に有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基板めっき装置方法によってめっきを行う工程の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態の基板めっき装置の全体を示す平面図である。
【図3】めっきユニットを示す平面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】基板保持部及びカソード部の拡大断面図である。
【図6】図3の正面図である。
【図7】図3の右側面図である。
【図8】図3の背面図である。
【図9】図3の左側面図である。
【図10】プレコート・回収アームを示す正面図である。
【図11】基板保持部の平面図である。
【図12】図11のB−B線断面図である。
【図13】図11のC−C線断面図である。
【図14】基板保持部における基板の動き(偏心)の説明に付する図である。
【図15】固定爪を有する支持腕(a)、及び押圧爪を有する支持腕(b)の基板保持前の状態を示す図である。
【図16】固定爪を有する支持腕(a)、及び押圧爪を有する支持腕(b)の基板保持後の状態を示す図である。
【図17】基板を偏心させない場合における問題の説明に付する図である。
【図18】カソード部の平面図である。
【図19】図14のD−D線断面図である。
【図20】図19の一部を拡大した拡大図である。
【図21】カソード電極の一部を拡大して示す拡大斜視図である。
【図22】カソード電極とシール材を一体として支柱に取付ける前後の状態を示す図である。
【図23】電極アーム部の平面図である。
【図24】めっき時における図23のE−E線断面図である。
【図25】図24の一部を拡大して示す拡大図である。
【図26】めっき時に形成される回路を示す図である。
【図27】めっき液トレーを電極ヘッドと共に示す断面図である。
【図28】基板の上面に残っためっき液の回収の説明に付する図である。
【図29】めっき液の供給及び回収のフロー図である。
【図30】用意されたステップの処理工程と、ステップ使用/未使用の設定例を示す図である。
【符号の説明】
10 ロード・アンロード部
12 めっきユニット
14 搬送ロボット
16 めっき液タンク
18 めっき液供給設備
20 基板処理部
22 めっき液トレー
26 揺動アーム
28 電極ヘッド
30 電極アーム部
32 プレコート・回収アーム
34 固定ノズル
36 基板保持部
38 カソード部
40 カップ
48 ベルト
50 基板搬出入口
64a プレコートノズル
64b キャリアコートノズル
66 めっき液回収ノズル
68 基板ステージ
70 支持腕
72 台座
74 押圧爪
76 固定爪
80 開放ピン
82 支持板(開放部材)
82a 凹部
84 支柱
86 枠体
88 カソード電極
89 突起片
89a 垂下部
90 シール材
90a 内方延出部
90b 下方垂下部
93 遊び機構
94 蓋体
96 ハウジング
96a 突出部
98 支持枠
100 めっき液含浸材
100a フランジ部
102 アノード
102a めっき液供給口
102b 通孔
104 吸引室
106 めっき液供給管
108 めっき液導入管
108b めっき液導入口
108a めっき液導入路
110 めっき液排出管
112 シール材
114 環状シール
120 固定ストッパ
122 ストッパ棒
128 ストッパ面
130 めっき供給口
132 オーバーフロー口
134 ストッパ
136 ダミーカソード
140a,140b,142 気水分離槽

Claims (5)

  1. 被めっき面を上方に向けて基板を保持する基板保持部と該基板保持部で保持した基板に近接した上方位置に該基板と対峙して配置されるアノードを有し、前記基板とアノードとの間のシール材でシールされた空間にめっき液を満たして電解めっきを施すめっき装置であって、
    前記基板保持部は、回転自在な基板ステージと、この基板ステージの周縁部に立設した一対の支持腕とを備え、
    前記支持腕で基板を支持した時に該基板のノッチあるいはオリフラ部に対面する一方の支持腕に対向する位置に配置された他方の支持腕には、基板を内方に向けて押圧するように回動する押圧爪が設けられていることを特徴とする基板めっき装置。
  2. 前記押圧爪を内方に向けて付勢する付勢手段と、前記付勢手段の付勢力に抗して前記押圧爪を開く方向に回動させる上下動自在な開放ピンとを有し、
    前記開放ピンは、開放部材の上下動に伴って上下動するように構成され、
    前記開放ピンと前記開放部材との間に動作のタイミングを調整する調整機構が備えられていることを特徴とする請求項1記載の基板めっき装置。
  3. 前記調整機構は、前記開放ピンの下端部に位置調整可能に取付けられる大径部材と、前記開放部材の前記開放ピンに対向する位置に設けられる前記開放ピンの外径よりも大きき前記大径部材の外径より小さい内径の凹部からなることを特徴とする請求項2記載の基板めっき装置。
  4. 前記大径部材は、ナットからなることを特徴とする請求項3記載の基板めっき装置。
  5. 前記基板ステージの周縁部には、基板の周縁部を挟持するように回動して基板を固定する固定爪を設けた他の支持腕が立設されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の基板めっき装置。
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