JP3656357B2 - 体積速度計測方法及び装置 - Google Patents
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Description
本発明は体積速度計測方法及び装置に関し、特に、車両や産業機械のエンジン、トランスミッション、キャブパネル等の音源振動面から離れた位置の音圧を予測する音圧予測方法に好適な体積計測方法及び装置に関するものである。
【0001】
【従来の技術】
近年、自動車や産業機械から発生する騒音が環境公害問題となっており、この騒音の静粛化が国内外で要求されている。
【0002】
この場合、騒音の規制値は発生源から所定距離だけ離れた遠隔点で計測されるが、例えばエンジンを実際の車両に搭載する前の状態で音圧が分かれば騒音規制に対する方策をより簡単に決定することができるため、音源の振動面に起因する該音源振動面から離れた位置での音圧を正確に予測できる方法が求められている。
【0003】
本出願人は特願平8−34604号において、音源振動面と音圧予測点間の空間伝達特性を正確に計測し、音圧を実際に計測することなく音圧予測を行うことを目的とした「音圧予測方法」を出願した。以下、これについて概略的に述べる。
【0004】
図4は上記の音圧予測方法をより概念的に示した図で、例えば、音源振動面積S1で振動速度V1の音源振動面1aを有するエンジン1と、振動面積S2で振動速度V2の振動面2aを有するスピーカ2とが配置設定されている。
【0005】
いま、振動面1a,2aに加わる力をそれぞれF1,F2とすると次の関係式が成り立つ。
【数1】
F1=Z11・V1+Z12・V2 ・・・式(1)
【数2】
F2=Z21・V1+Z22・V2 ・・・式(2)
但し、Z11,Z12,Z21,Z22は機械インピーダンスとする。
【0006】
ここで、式(1)及び(2)において相反定理が成り立つと仮定すると、次式のようになる。
【数3】
Z12=Z21 ・・・式(3)
【0007】
一方、振動面1a,2aの表面の平均音圧をそれぞれP1,P2、表面積をS1,S2とすると次の関係式が成り立つ。
【数4】
F1=P1・S1 ・・・式(4)
【数5】
F2=P2・S2 ・・・式(5)
【0008】
式(1),(2),(4),(5)から、次の関係式が得られる。
【数6】
S1・P1=Z11・V1+Z12・V2 ・・・式(6)
【数7】
S2・P2=Z21・V1+Z22・V2 ・・・式(7)
【0009】
次に式(6)で、V1=0(エンジン1の振動面1aを振動させない状態)とし、両辺をV2で割って整理すると、次の関係式が成り立つ。
【数8】
Z12=P1・S1/V2 ・・・式(8)
【0010】
式(3),(8)から、次の関係式が得られる。
【数9】
Z21=P1・S1/V2 ・・・式(9)
【0011】
同様に、式(7)で、V2=0(スピーカ2の振動面2aを振動させない状態)とし、両辺をS2で割って整理すると、次の関係式が成り立つ。
【数10】
P2=Z21・V1/S2 ・・・式(10)
【0012】
次に、式(9),(10)からインピーダンスZ21を消去して整理すると、次の関係式が成り立つ。
【数11】
P2={P1/(S2・V2)}・(S1・V1) ・・・式(11)
【0013】
すなわち、音源振動面1aを振動させて、予測点Qでの音圧を実測する代わりに、エンジン1の振動面1aを振動させない状態で、スピーカ2の振動面2a(音圧予測点)を振動させ、この振動面2aの振動速度V2と振動面1a近傍の音圧P1を測定することにより伝達特性G=P1/(S2・V2)が得られる。なお、振動面面積S2は既知の値とする。また、「近傍」とは歪みを含まない一定値以上の被測定対象が得られる距離範囲内を意味する。
【0014】
さらに、式(11)から分かることは、スピーカ2の振動面2aを振動させない状態で、エンジン1の振動面1aを振動させた時の振動面1a近傍の振動速度V1を計測すれば振動面2a(音圧予測点)の音圧P2は伝達特性Gに体積速度(振動面面積S1×振動速度V1)を乗ずれば予測できるということである。なお、振動面面積S1も既知の値とする。
【0015】
このような概念に基づき、特願平8−34604号に係る音圧予測方法は、音源の振動面近傍にマイクロホンを配置するとともに、音圧予測位置にスピーカ及び振動計測器を配置し、該音源振動面が振動していないときに該スピーカを振動させて該振動計測器で該スピーカの振動速度(V2)を計測するとともに該マイクロホンで該音源振動面の音圧(P1)を計測することにより、該スピーカの既知の振動面面積(S2)を用いて該マイクロホンから該スピーカまでの空間の伝達特性をP1/(S2・V2)として求め、次に該振動計測器を該音源振動面近傍に配置し、該音源振動面を振動させて該振動計測器で該音源振動面の振動速度(V1)を計測し、該音源振動面の既知の面積(S1)を用いて該音源振動面に起因する該予測点における音圧P2をP2=(S1・V1)・P1/(S2・V2)の式から求めている。
【0016】
この音圧予測方法における空間伝達特性を求めるための具体的な手段を図5(1)により説明する。この音圧予測方法では、音圧を予測する点Qにスピーカ2を配置し、このスピーカ2の近傍にスピーカ2の振動面2aの振動速度V2を測定する振動計測器6(振動速度測定器)を配置し、更にエンジン1の振動面1aの近傍にマイクロホン4を配置して、振動面1aと予測点Q間の空間の伝達特性を測定する点が異なっている。
【0017】
まず、エンジン1を停止して振動面1a〜1dを振動させない状態で、スピーカ2を振動させ、このスピーカ2の振動面2aの振動速度V2を振動計測器6で測定するとともに、スピーカ2に起因する振動面1a近傍の音圧P1aをマイクロホン4で測定する。
【0018】
この測定結果により,振動面1aの近傍の音圧P1aと予測点Qのスピーカ2の振動速度V2から振動面1aと予測点Qとの間の空間の伝達特性Gaを次式により求める。
【数12】
Ga=P1a/(S2・V2) ・・・式(12)
但し、スピーカ2の振動面積S2は上記の通り既知の値である。
【0019】
なお、上記の如く、この伝達特性Gaは(P1a・S1)/V2としても求められる。
【0020】
次に、エンジン1を停止して振動面1a〜1dを振動させない状態で、スピーカ2を振動させ、振動面1b〜1dの近傍にマイクロホン4を順次移動してそれぞれ振動面1b〜1d近傍の音圧P1b〜P1dを測定し、上記式(12)と同様にして下記の式により空間の伝達特性Gb〜Gdをそれぞれ求める。
【数13】
Gb=P1b/(S2・V2) ・・・式(13)
【数14】
Gc=P1c/(S2・V2) ・・・式(14)
【数15】
Gd=P1d/(S2・V2) ・・・式(15)
【0021】
次に、上記のようにして求めた空間伝達特性Ga〜Gdを用いることにより、図5(2)の構成により予測点Qでの音圧を予測する。
【0022】
まず、振動面1aの近傍に振動計測器6を配置し、エンジン1を始動して振動面1a(及び振動面1b〜1d)を振動状態にするとともに、スピーカ2は存在しないので振動しない状態と等価になり、振動計測器6で振動面1aの近傍の振動速度V1aを測定する。
【0023】
以下同様にして、振動面1a〜1dの振動状態を維持して、振動計測器6を順次、振動面1b〜1dの近傍に配置してそれぞれ振動面1b〜1dの近傍の振動速度V1b〜V1dを計測する。
【0024】
以上の測定結果により、エンジン1の振動面1a〜1dに起因する予測点Qの音圧P2は、既に求めた空間伝達特性Ga〜Gdと、各振動速度V1a〜V1dと各振動面1a〜1dの面積S1a〜S1dを乗じた各結果(体積速度)とを乗じた値の和で与えられるから次式のようになる。
【数16】
P2=Ga・(V1a・S1a)+Gb・(V1b・S1b)+Gc・(V1c・S1c)+Gd・(V1d・S1d) ・・・式(16)
但し、振動面面積S1a〜S1dは上記の通り既知の値である。
【0025】
なお、式(16)は、次式と同等である。
【数17】
P2=P1a・(S1a・V1a)/(S2・V2)+P1b・(S1b・V1b)/(S2・V2)+P1c・(S1c・V1c)/(S2・V2)+P1d・(S1d・V1d)/(S2・V2) ・・・式(17)
【0026】
従って、上記のように伝達特性Ga〜Gdを求めずに、直接計測結果を式(17)に代入しても予測点Qの音圧は求めることができる。
【0027】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような音圧予測方法においては、音源振動面の面積S1とその振動速度V1とを用いているが、これらのパラメータの計測に際してはそれぞれ以下のような課題がある。
【0028】
面積S1:実際に面積を何らかの方法で計測する必要があり、計測面等が汚れていたり高温であったりすると、清掃を含めて非常に時間が掛かったり、計測できない場合がある。
【0029】
振動速度V1:振動計測装置の接触型では、ピックアップを音源振動面に固定して計測するが、レーザー等の非接触型の場合には、レーザーの放射する検出部位を音源振動面の近傍に固定して計測する。計測面等が汚れていたりすると、清掃を含めて非常に時間が掛かる場合がある。接触型では、高温状態では計測できない場合がある。
【0030】
したがって本発明は、音源振動面の面積S1とその振動速度V1を個々に計測せずに両者の積である体積速度(S1・V1)を計測することが可能な方法及び装置を提供することを目的としている。
【0031】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明者は振動面の音圧に着目した。
すなわち、図1に示すように振動面11から距離Lだけ離れた点でマイクロホン等によりピックアップされる音圧Pは次式で表されることが知られている。
【0032】
【数18】
P=ρ0・c0・U・e-jKL ・・・式(18)
ただし、ρ0は媒質の密度、c0は媒質の速度、Uは粒子速度、Kは波長定数、をそれぞれ示す。
【0033】
この式(18)中の粒子速度Uは、振動面11の近傍約5mm以内では、振動面11の振動速度Vとほぼ等しい(U≒V)ことが既に実験的に証明されている。
【0034】
一方、体積速度QはQ=V・M(Mは振動面11の表面積)で与えられるので、体積速度Qは上記の式(18)を用いると次式(19)のようになる。
【数19】
【0035】
ただし、このときの音圧Pは隣接面からの漏れ込み音を遮断する必要があるので、この対策として誘導管を用いればよい。
【0036】
従って、本発明に係る体積速度計測方法は、音源振動面に近接して一定断面積の誘導管を設置し、該誘導管中に設けられたマイクロホンにより該振動面による音圧を測定し、該音圧及び該断面積に基づき体積速度を演算することを特徴としている。
【0037】
また、本発明に係る体積速度計測装置は、音源振動面に近接して設けられた一定断面積の誘導管と、該誘導管中に設けられて該振動面による音圧を測定するマイクロホンと、該音圧及び該断面積に基づき体積速度を演算する演算部と、を備えている。
【0038】
なお、この誘導管に導入された振動音は平面波となって伝達されるため減衰し難いので、誘導管内に設けるマイクロホンの位置は上記の式(19)のパラメータとはならない。そこで、上記のマイクロホンは、該誘導管の端部までの距離が変えられるように設けてもよい。
【0039】
【発明の実施の形態】
図2は、本発明に係る体積速度計測方法を実施するための装置を示したもので、図中、10は従来例において取り上げたエンジン等の音源を示し、この音源10の一面には振動面11が設けられている。
【0040】
振動面11と対向し且つその近傍に両端が開放され断面積が一定である誘導管12が配置されており、この誘導管12中にはマイクロフォン13が設けられている。マイクロフォン13の出力信号はアンプ14を経由して周波数分析を行うためのFFT演算部15に与えられている。
【0041】
図3は、図1に示した体積速度計測装置の実施例における振動面11と誘導管12との関係を拡大して示したものであり、マイクロフォン13はマイクロフォンガイド16に取り付けられ、このマイクロフォンガイド16は誘導管12内を矢印▲1▼で示す両方向に移動可能になっている。
【0042】
このような構造において、振動面11から発生する体積速度Qは、上記の式(19)から計算することができる。
【0043】
すなわち、FFT演算部15は、予め既知の定数M,ρ0,C0,K,Lを保有しており、マイクロフォン13で検出された音圧Pをアンプ14を介してディジタル信号に変換した後、上記の式(19)により体積速度Qを算出する。
【0044】
この場合、距離Aは式(19)の要素になっていないが、λ(解析対象波長)/4=340/1000/4=0.085m以上であることが好ましい。この数値以下でもよいが、振動音波が誘導管12の端部から中に入り込んで来たときに波が安定するまで、λ/4程度かかることが実験的に判明している。
【0045】
また、誘導管12の端部から振動面11までの距離Lは5mm以下であることが好ましい。これより大きくなると周囲の壁面からの音波が回り込んでき来て正確な計測が困難になる。したがって、誘導管12の端部は振動面11に接触しない限り近づくことが望ましい。
【0046】
また、誘導管12の断面は一定であれば、丸形でも正方形でも構わない。また、音源10の上限周波数に対応して種々の誘導管12を用いることができ、マイクロフォンガイド16が移動できる構造であればフレキシブルな管でもよい。
【0047】
この場合、上記のように誘導管12に導入された振動音は平面波となって伝達されるため減衰し難いので、必要に応じて誘導管12を長くすることができ、高温等で接近し難い場合には有効となる。
【0048】
ただし、この誘導管12が矩形断面形状を有する場合には、対象周波数fC=5KHzとすれば、最大対角寸法lはl=c/2fC=0.034[m]となる。また、円形断面形状の場合には、d=0.586c/fCで与えられる直径が最大寸法となる。
【0049】
マイクロフォン13はプローブ型でもよく、マイクロフォン13とFFT演算部15とが一体であっても構わない。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る体積速度計測方法及び装置によれば、音源振動面に近接して設けられた一定断面積の誘導管中に設けたマイクロホンにより該振動面による音圧を測定し、該音圧及び該断面積に基づき体積速度を演算するように構成したので、音源振動面の面積とその振動速度を個々に計測する必要なく、正確且つ短時間で体積速度を求めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】振動面の音圧を計測するための一般的な手法を説明するためのブロック図である。
【図2】本発明に係る体積速度計測方法で実施される装置を示したブロック図である。
【図3】図2の実施例を一部拡大して示した概略断面図である。
【図4】本出願人の特願平8−34604号による音圧予測方法において用いられた解析モデル図である。
【図5】本出願人の特願平8−34604号による音圧予測方法の実施の形態を示したブロック図である。
【符号の説明】
10 音源
11 振動面
12 誘導管
13 マイクロフォン
14 アンプ
15 FFT演算部
図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
Claims (3)
- 音源振動面に近接して一定断面積の誘導管を設置し、該誘導管中に設けられたマイクロホンにより該振動面による音圧を測定し、該音圧及び該断面積に基づき体積速度を演算することを特徴とした体積速度計測方法。
- 音源振動面に近接して設けられた一定断面積の誘導管と、該誘導管中に設けられて該振動面による音圧を測定するマイクロホンと、該音圧及び該断面積に基づき体積速度を演算する演算部と、を備えたことを特徴とした体積速度計測装置。
- 請求項1において、
該マイクロホンは、該誘導管の端部までの距離が変えられるように設けられていることを特徴とした体積速度計測装置。
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