JP2007333545A - 吸音特性測定方法および吸音特性測定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 音源から直接マイクへと伝わる直接音と音源の音が試料で反射されたマイクへと伝わる反射音とを完全に分離して正確な吸音率の算出を行うこと。
【解決手段】 本発明に係る吸音特性測定装置1では、評価音出力手段3より試料10に向けて出力された評価音の第1インパルス応答の値から、自由音場環境において評価音出力手段3から収音手段4へと直接伝えられる評価音の第2インパルス応答の値を差し引いて、評価音出力手段3から収音手段4へと直接伝えられる評価音成分を除去した試料用インパルス応答を算出する。同様に、評価音出力手段3より完全反射面11に向けて出力された評価音の第3インパルス応答の値から第2インパルス応答の値を差し引いて、評価音出力手段3から収音手段4へと直接伝えられる評価音成分を除去した完全反射面用インパルス応答を算出する。そして、求められた両インパルス応答の周波数応答の値に基づいて試料10の吸音率を求める。
【選択図】 図1
【解決手段】 本発明に係る吸音特性測定装置1では、評価音出力手段3より試料10に向けて出力された評価音の第1インパルス応答の値から、自由音場環境において評価音出力手段3から収音手段4へと直接伝えられる評価音の第2インパルス応答の値を差し引いて、評価音出力手段3から収音手段4へと直接伝えられる評価音成分を除去した試料用インパルス応答を算出する。同様に、評価音出力手段3より完全反射面11に向けて出力された評価音の第3インパルス応答の値から第2インパルス応答の値を差し引いて、評価音出力手段3から収音手段4へと直接伝えられる評価音成分を除去した完全反射面用インパルス応答を算出する。そして、求められた両インパルス応答の周波数応答の値に基づいて試料10の吸音率を求める。
【選択図】 図1
Description
本発明は、吸音材の吸音特性を測定するための吸音特性測定方法および吸音特性測定装置に関する。
今日では、住宅内や自動車室内等における静粛性が求められており、不要な音を低減させるため数多くの吸音材が使用されている。また、サラウンドシステム等の音響環境を構築する場合には、音響システムにおいて出力される音をより鮮明にするために、又はより効果的な音響効果を奏するために、積極的に吸音材が用いられている。このような吸音材を適切に使用するためには、あらかじめ吸音材の吸音特性を正確に把握しておく必要がある。
吸音材の吸音特性を測定する方法として、残響室法が知られている(例えば、特許文献1参照)。残響室法では、内面が完全反射に近い壁面で形成された残響室内に、試料となる吸音材と、複数のマイクと、音源(スピーカ)を設置する。そして、試料が残響室内に設置された状態と設置されていない状態とにおいて、音源から音波(評価音)を出力してその音の状態を複数のマイクで収音することによって、試料の吸音特性を測定する。
吸音材の吸音特性を測定する方法として、残響室法が知られている(例えば、特許文献1参照)。残響室法では、内面が完全反射に近い壁面で形成された残響室内に、試料となる吸音材と、複数のマイクと、音源(スピーカ)を設置する。そして、試料が残響室内に設置された状態と設置されていない状態とにおいて、音源から音波(評価音)を出力してその音の状態を複数のマイクで収音することによって、試料の吸音特性を測定する。
また、他の吸音特性測定の方法として、斜め入射吸音率測定法が知られている(例えば、特許文献2参照)。斜め入射吸音率測定法では、試料となる吸音材に対して斜め方向より評価音を出力してその反射音を測定し、同様の状態において完全反射面に対して評価音を出力してその反射音を測定する。そして、測定されたそれぞれの測定音の比を求めることによって試料の吸音特性を算出する。
特開2005−134207号公報(第1頁、第6図)
特開2005−213928号公報(第6〜8頁、第3図、第7図)
しかしながら、上述した残響室法では、複数の試料を層にして測定する場合や空気層を含む場合の厚さの違い等によって、また、試料が設置される残響室の状態によって吸音率が変化してしまう。さらに、残響室法では、常に残響室という大型の設備が必要になると共に、測定を行う度に、既に設置されている吸音測定対象物の解体・移動等を行った上で、試料を残響室に搬入・設置する必要があるため、測定の準備負担が重いという問題があった。
一方で、残響室を必要としない斜め入射吸音率測定法では、音源から直接マイクへと伝わってしまう直接音を測定してしまうおそれがある。直接音と試料を反射した反射音との分離を容易とするために、一般的には、試料と音源および試料とマイクの間隔を十分に確保して、マイクで収音される直接音と反射音との測定時間差を大きくする。そして、この測定時間の違いに基づいて反射音のみを抽出する方法が用いられる。
しかしながら、車室内等のような狭い空間では、試料と音源および試料とマイクの間隔を十分に長くすることが容易ではないため、直接音と反射音を完全に分離し難く、正確な吸音率の算出を行うことができないおそれがあった。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、斜め入射吸音率測定法において、試料と音源および試料とマイクの間隔が長く確保し難い環境においても、音源から直接マイクへと伝わる直接音と音源の音が試料で反射されてマイクへと伝わる反射音とを完全に分離して正確な吸音率の算出を行うことが可能な吸音特性測定方法および吸音特性測定装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る吸音特性測定方法は、試料が設置された状態において評価音出力手段から試料に向けて既知の評価音を出力し、前記評価音出力手段から収音手段へと直接伝播された直接音と前記試料で反射されてから前記収音手段に伝播された反射音とを含む収録音に基づいて第1インパルス応答を算出し、前記評価音出力手段と前記収音手段との配置状態を保持した自由音場において、前記評価音出力手段から前記評価音を出力し、前記評価音出力手段から前記収音手段へと直接伝播された直接音に基づいて第2インパルス応答を算出し、前記評価音出力手段と前記収音手段との配置状態において、前記評価音出力手段から完全反射面に向けて前記評価音を出力し、前記評価音出力手段から収音手段へと直接伝播された直接音と前記完全反射面で反射されてから前記収音手段に伝播された反射音とを含む収録音に基づいて第3インパルス応答を算出し、前記第1インパルス応答の値より、前記第2インパルス応答の値を差し引いて、前記評価音出力手段から前記収音手段へと直接伝播される評価音成分を除去した試料用インパルス応答を算出し、前記第3インパルス応答の値より、前記第2インパルス応答の値を差し引いて、前記評価音出力手段から前記収音手段へと直接伝播される評価音成分を除去した完全反射面用インパルス応答を算出し、前記試料用インパルス応答と前記完全反射面用インパルス応答とに基づいて、それぞれの周波数応答を算出し、算出された前記試料用インパルス応答の周波数応答の値と、前記完全反射面用インパルス応答の周波数応答の値とに基づいて、前記試料の吸音特性を求めることを特徴とする。
また、本発明に係る吸音特性測定装置は、既知の評価音を出力する評価音出力手段と、該評価音出力手段により出力された評価音を収音する収音手段と、該収音手段により収音された収録音のインパルス応答を算出するインパルス応答算出手段と、前記評価音出力手段より試料に向けて出力された評価音を前記収音手段で収音し、収音された収録音に基づいて前記インパルス応答算出手段で算出された第1インパルス応答の値から、前記試料に対して前記評価音が出力されたときの前記評価音出力手段と前記収音手段との配置状態を第1配置状態として保持した自由音場環境において、前記評価音出力手段から前記収音手段へと直接伝えられる評価音を前記収音手段で収音し、収音された収録音に基づいて前記インパルス応答算出手段で算出された第2インパルス応答の値を差し引いて、前記評価音出力手段から前記収音手段へと直接伝播される評価音成分を除去した試料用インパルス応答を算出する試料用インパルス応答算出手段と、前記第1配置状態において、前記評価音出力手段より完全反射面に向けて出力された評価音を前記収音手段で収音し、収音された収録音に基づいて前記インパルス応答算出手段で算出された第3インパルス応答の値から、前記第2インパルス応答の値を差し引いて、前記評価音出力手段から前記収音手段へと直接伝播される評価音成分を除去した完全反射面インパルス応答を算出する完全反射面用インパルス応答算出手段と、前記試料用インパルス応答算出手段により算出された前記試料用インパルス応答と、前記完全反射面用インパルス応答算出手段により算出された前記完全反射面用インパルス応答とに基づいて、それぞれの周波数応答を算出する周波数応答算出手段と、該周波数応答算出手段により算出された前記試料用インパルス応答の周波数応答の値と、前記完全反射面用インパルス応答の周波数応答の値とに基づいて、前記試料の吸音特性を求める吸音特性判定手段とを有することを特徴とする。
本発明に係る吸音特性測定方法および吸音特性測定装置によれば、試料に向けて出力された評価音の直接音と反射音とを含む収録音の第1インパルス応答から、評価音出力手段から収音手段へと伝播された直接音の第2インパルス応答を差し引くことにより、評価音出力手段から収音手段へと直接伝えられる評価音成分を除去した試料用インパルス応答を算出することができる。また、完全反射面に向けて出力された評価音の直接音と反射音とを含む収録音の第3インパルス応答から、第2インパルス応答を差し引くことにより、評価音出力手段から収音手段へと直接伝えられる評価音成分を除去した完全反射面用インパルス応答を算出することができる。このため、吸音率を求める際に問題となる直接音(評価音出力手段から収音手段へと直接伝播される直接音)を除いた反射音のみのインパルス応答を簡易に得ることができ、求められた試料用インパルス応答と完全反射面用インパルス応答との周波数応答に基づいて、簡易かつ高精度に試料の吸音率を求めることが可能となる。
以下、本発明に係る吸音特性測定装置を、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、吸音特性測定装置の概略構成を示したブロック図である。吸音特性測定装置1は、評価音生成部2と、スピーカ(評価音出力手段)3と、マイク(収音手段)4と、インパルス応答算出部(インパルス応答算出手段)5と、周波数応答算出部(周波数応答算出手段)6と、吸音率算出部(吸音特性判定手段)7と、制御部(試料用インパルス応答算出手段、完全反射面用インパルス応答算出手段)8とを備えている。
評価音生成部2は、吸音率の算出を行うために、スピーカ3から試料10に対して出力する評価音を生成する装置であり、評価音としてM系列信号や時間伸張パルス(TSP:Time Stretched Pulse)信号が用いられる。
スピーカ3およびマイク4は、図2(a)に示すように、試料10に対するなす角度をθとし、試料10までの直線距離をLとして、スピーカ3とマイク4とが試料10の正面方向に対して互いに左右対称となる位置に設置される。このため、スピーカ3より出力された評価音は、試料10において一部吸音等された後に、スピーカ3からの入射角に対応する角度で反射し、マイク4において収音されることとなる。このようにして吸音率を測定する方法を、一般的に斜め入射吸音率測定法という。
なお、図2(a)に示す構成により反射音を収音する場合には、評価音がスピーカ3から試料10において反射されてマイク4で収音される反射音に加えて、スピーカ3で出力された評価音が試料10方向に進まずに直接マイク4に向かって収音されてしまう直接音も同時に収音される。このような直接音と反射音との判別を行うために、図2(b)、図2(c)に示すような構成における収音も別途行う。
図2(b)は、図2(a)と同じスピーカ3、マイク4の配置状態において、反射面に試料10を設置せずに完全反射面(反射率1.0の反射面。実際に完全反射面を設けることが難しい場合には、コンクリートや大理石等の反射率の高い素材により構成される)11の表面を露出させ、この完全反射面11に対して評価音を出力したときの直接音および反射音をマイク4で収音する。
また、図2(c)は、図2(a)、図2(b)と同じスピーカ3、マイク4の配置状態ではあるが、図2(a)、図2(b)と異なり、完全反射面11および試料10を設置しない自由音場において、直接音のみを収音する場合を示している。なお、自由音場とは、評価音の反射が全く行われない音響環境を意味する。
インパルス応答算出部5は、マイク4により収音した収録音(反射音および直接音)からインパルス応答を求める機能を有している。周波数応答算出部6は、インパルス応答算出部5により算出されたインパルス応答をフーリエ変換することによって収録音の周波数応答を求める機能を有している。
吸音率算出部7は、周波数応答算出部6によって算出された周波数応答に基づいて、周波数毎に試料10の吸音率を求める。一般に試料の吸音率aは、
a=1―Ps(f)/Pr(f) ・・・・・式1
で示される。
吸音率算出部7は、周波数応答算出部6によって算出された周波数応答に基づいて、周波数毎に試料10の吸音率を求める。一般に試料の吸音率aは、
a=1―Ps(f)/Pr(f) ・・・・・式1
で示される。
ここで、Ps(f)は、試料10の反射音のパワースペクトル(周波数応答における出力値)を示し、Pr(f)は、完全反射面11の反射音のパワースペクトルを示している。なお、式1のPs(f)/Pr(f)は反射率を表す。
試料10の吸音率aを求める場合には、周波数応答算出部6を用いて、試料10の反射音と完全反射面11の反射音との周波数応答を算出し、算出されたそれぞれの周波数応答の出力値の比をとって、所定の周波数の吸音率aを算出する。
制御部8は、上述した評価音生成部2、インパルス応答算出部5、周波数応答算出部6、吸音率算出部7の制御を行う。また、制御部8は、インパルス応答算出部5により算出された試料10の収録音のインパルス応答成分と、完全反射面11の収録音のインパルス応答成分とから、直接音のインパルス応答成分を除去して反射音のみからなるインパルス応答を求める役割を有している。
図3(a)、図3(b)は、図2(a)に示すようにスピーカ3、試料10、マイク4が配置される状況において収音された収録音のインパルス応答を示している。ただし、図3(a)では、図2(a)に示したθやLの値が大きい値の場合のインパルス応答を示しており、図3(b)では、θやLの値が小さい場合のインパルス応答を示している。
θやLの値が大きい値の場合には、図2(a)より明らかなように、直接音がスピーカ3からマイク4まで進む距離Rに比べて、反射音が進む距離2Lの方が長くなるため、マイクにおいて収音される音は、直接音の収音がされた後にしばらく間をおいて反射音が収音されることとなる。このため、図3(a)に示す場合には、直接音によるピーク部分Aと反射音によるピーク部分Bとの時間差が生じ、直接音と反射音との分離が行いやすいという特徴がある。
一方で、θやLの値が小さい値の場合には、直接音がスピーカ3からマイク4まで進む距離Rと、反射音が進む距離2Lとの差が少なくなってしまう場合がある。このため、マイク4において収音される直接音と反射音との時間の間隔が短くなり、図3(b)に示すように、直接音によるピーク部分Aと反射音によるピーク部分Bとが近づきすぎて、直接音と反射音とを分離し難い場合がある。
そこで、制御部8は、図2(c)に示すように、自由音場における直接音のみのインパルス応答をあらかじめデータとして取得しておき、試料10を設置した場合の収録音のインパルス応答から直接音のみのインパルス応答を除去することによって、反射音のみのインパルス応答を算出する。また、制御部8は、同様にして、完全反射面11において収音した収録音のインパルス応答から直接音のみのインパルス応答を除去することによって、完全反射面11における反射音のみのインパルス応答を算出する。
次に、制御部8の制御に基づいて試料の吸音率aを算出する処理手順を、図4に示すフローチャートに従って説明する。
まず、図2(b)に示すように、完全反射面に対してスピーカ3とマイク4とを設置する。制御部8は、評価音生成部2に対して評価音の生成指示制御を行い、評価音生成部2で生成された評価音をスピーカ3から完全反射面11に対して斜め方向より発射させる。そして、制御部8は、マイク4で収録された収録音(直接音と完全反射面の反射音)に基づいて、インパルス応答算出部5に収録音のインパルス応答を算出させる(ステップS.1)。図5(a)は、ステップS.1における収録音のインパルス応答を示した図である。
続いて、図2(a)に示すように、上述した完全反射面11の収録音測定時と同じ位置にスピーカ3とマイク4と設置し、スピーカ3より出力される評価音が当たるようにして試料10を配置する。制御部8は、評価音生成部2に対して評価音の生成指示制御を行い、評価音生成部2で生成された評価音をスピーカ3から試料10に対して斜め方向より発射させる。そして、制御部8は、マイク4で収録された収録音(直接音と試料の反射音)に基づいて、インパルス応答算出部5に収録音のインパルス応答を算出させる(ステップS.2)。図5(b)は、ステップS.2における収録音のインパルス応答を示した図である。
さらに、図2(c)に示すように、自由音場において、上述した完全反射面11の収録音測定時および試料10の収録音測定時と同じ位置にスピーカ3とマイク4と設置する。制御部8は、評価音生成部2に対して評価音の生成指示制御を行い、評価音生成部2で生成された評価音をスピーカ3から斜め方向より発射させ、その発射された評価音の収録音(直接音のみ)をマイク4で収録させる。そして、制御部8は、マイク4で収録された収録音(直接音のみ)に基づいて、インパルス応答算出部5に収録音のインパルス応答を算出させる(ステップS.3)。図5(c)は、ステップS.3における収録音のインパルス応答を示した図である。
なお、スピーカ3およびマイク4の位置が常に一定である場合には、上述した完全反射面11における収録音のインパルス応答と、自由音場における収録音のインパルス応答とは常に決まった波形状態を示すこととなるため、以前に測定したインパルス応答を再度利用するようにしてもよい。
そして、制御部8は、図5(a)に示すインパルス応答(ステップS.1において算出したインパルス応答)のピーク成分A1、B1から、図5(c)に示すインパルス応答(ステップS.3において算出されたインパルス応答)のピーク成分A1を差し引くことによって、試料10の反射音のみからなるインパルス応答(ピーク成分B1のみのインパルス応答)を算出する(ステップS.4)。
図6(a)は、ステップS.4の処理により算出された完全反射面11の反射音のみからなる収録音のインパルス応答を示している。ステップS.1において算出されたインパルス応答には、図5(a)に示すように、直接音によるピーク部分A1と完全反射面11による反射音によるピーク部分B1とが示されている。一方で、図5(c)に示すように、ステップS.3において算出されたインパルス応答は、自由音場における収録音のインパルス応答であって直接音のみしか収録音に含まれていないため、図5(c)のインパルス応答には直接音によるピーク部分A1のみが示され、反射音によるピーク部分は含まれていない。
このため、制御部8が、図5(a)に示すインパルス応答から、図5(c)に示すインパルス応答を差し引くことによって、図6(a)に示す完全反射面11の反射音のみからなるインパルス応答を求めることができる。
同様にして、制御部8は、ステップS.2において算出したインパルス応答のピーク成分(図5(b)のA1、B2)から、ステップS.3において算出されたインパルス応答のピーク成分(図5(c)のA1)を差し引くことによって、試料10の反射音のみからなる収録音のインパルス応答を算出する(ステップS.5)。図6(b)は、ステップS.5の処理により算出された試料10の反射音のみからなる収録音のインパルス応答を示している。
そして、制御部8は、ステップS.4により求められた完全反射面11の反射音のみからなるインパルス応答と、ステップS.5により求められた試料10の反射音のみからなるインパルス応答とに基づいて、周波数応答算出部6に対してそれぞれの周波数応答を算出する旨の制御指示を行う(ステップS.6)。
図7は、試料10の反射音のみからなるインパルス応答と、完全反射面11の反射音のみからなるインパルス応答とに基づいて算出された周波数応答を示したグラフである。図7に示すように、試料10の反射音のみからなるインパルス応答の周波数応答と、完全反射面11の反射音のみからなるインパルス応答の周波数応答とは、異なるスペクトル曲線を示している。
そして、制御部8は、試料10の反射音のみの周波数特性の値Ps(パワースペクトル)と、完全反射面11の反射面のみの周波数特性の値Prとの比をとることによって周波数毎の反射率Ps/Prを求め、求められた反射率を用いて式1より吸音率aを算出する(ステップS.7)。
例えば、図7において周波数がXの場合の吸音率a1を求める場合には、周波数Xにおける試料10の反射音のみの周波数特性の値Ps1と、周波数Xにおける完全反射面11の反射面のみの周波数特性の値Pr1とを求め、この2つの値を、
吸音率a1=1―Ps1/Pr1
に代入することによって周波数Xの吸音率a1を算出することができる。
例えば、図7において周波数がXの場合の吸音率a1を求める場合には、周波数Xにおける試料10の反射音のみの周波数特性の値Ps1と、周波数Xにおける完全反射面11の反射面のみの周波数特性の値Pr1とを求め、この2つの値を、
吸音率a1=1―Ps1/Pr1
に代入することによって周波数Xの吸音率a1を算出することができる。
以上説明したように、本発明に係る吸音特性測定装置1を用いることによって、測定された試料10の収録音(直接音と反射音)のインパルス応答から、自由音場における直接音のみのインパルス応答を差し引くことができる。このため、斜め入射吸音率測定法を用いる場合あっても、確実かつ精度良く試料10の反射音のみからなるインパルス応答を求めることができ、精度の高い吸音率測定を行うことが可能となる。
また、同様にして、吸音率測定に利用される完全反射面11の収録音のインパルス応答を求める場合にも、自由音場における直接音のみのインパルス応答を完全反射面11のインパルス応答から差し引くことによって、確実かつ精度良く完全反射面の反射音のみからなるインパルス応答を求めることができ、吸音率の測定精度をさらに高めることが可能となる。
なお、本発明に係る吸音特性測定装置および吸音特性測定方法を、図面を用いて詳細に説明したが、本発明に係る吸音特性測定装置および吸音特性測定方法は、上述した実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1 …吸音特性測定装置
2 …評価音生成部
3 …スピーカ(評価音出力手段)
4 …マイク(収音手段)
5 …インパルス応答算出部(インパルス応答算出手段)
6 …周波数応答算出部(周波数応答算出手段)
7 …吸音率算出部(吸音特性判定手段)
8 …制御部(試料用インパルス応答算出手段、完全反射面用インパルス応答算出手段)
10 …試料
11 …完全反射面
2 …評価音生成部
3 …スピーカ(評価音出力手段)
4 …マイク(収音手段)
5 …インパルス応答算出部(インパルス応答算出手段)
6 …周波数応答算出部(周波数応答算出手段)
7 …吸音率算出部(吸音特性判定手段)
8 …制御部(試料用インパルス応答算出手段、完全反射面用インパルス応答算出手段)
10 …試料
11 …完全反射面
Claims (2)
- 試料が設置された状態において評価音出力手段から試料に向けて既知の評価音を出力し、前記評価音出力手段から収音手段へと直接伝播された直接音と前記試料で反射されてから前記収音手段に伝播された反射音とを含む収録音に基づいて第1インパルス応答を算出し、
前記評価音出力手段と前記収音手段との配置状態を保持した自由音場において、前記評価音出力手段から前記評価音を出力し、前記評価音出力手段から前記収音手段へと直接伝播された直接音に基づいて第2インパルス応答を算出し、
前記評価音出力手段と前記収音手段との配置状態において、前記評価音出力手段から完全反射面に向けて前記評価音を出力し、前記評価音出力手段から収音手段へと直接伝播された直接音と前記完全反射面で反射されてから前記収音手段に伝播された反射音とを含む収録音に基づいて第3インパルス応答を算出し、
前記第1インパルス応答の値より、前記第2インパルス応答の値を差し引いて、前記評価音出力手段から前記収音手段へと直接伝播される評価音成分を除去した試料用インパルス応答を算出し、
前記第3インパルス応答の値より、前記第2インパルス応答の値を差し引いて、前記評価音出力手段から前記収音手段へと直接伝播される評価音成分を除去した完全反射面用インパルス応答を算出し、
前記試料用インパルス応答と前記完全反射面用インパルス応答とに基づいて、それぞれの周波数応答を算出し、
算出された前記試料用インパルス応答の周波数応答の値と、前記完全反射面用インパルス応答の周波数応答の値とに基づいて、前記試料の吸音特性を求めること
を特徴とする吸音特性測定方法。 - 既知の評価音を出力する評価音出力手段と、
該評価音出力手段により出力された評価音を収音する収音手段と、
該収音手段により収音された収録音のインパルス応答を算出するインパルス応答算出手段と、
前記評価音出力手段より試料に向けて出力された評価音を前記収音手段で収音し、収音された収録音に基づいて前記インパルス応答算出手段で算出された第1インパルス応答の値から、前記試料に対して前記評価音が出力されたときの前記評価音出力手段と前記収音手段との配置状態を第1配置状態として保持した自由音場環境において、前記評価音出力手段から前記収音手段へと直接伝播される評価音を前記収音手段で収音し、収音された収録音に基づいて前記インパルス応答算出手段で算出された第2インパルス応答の値を差し引いて、前記評価音出力手段から前記収音手段へと直接伝播される評価音成分を除去した試料用インパルス応答を算出する試料用インパルス応答算出手段と、
前記第1配置状態において、前記評価音出力手段より完全反射面に向けて出力された評価音を前記収音手段で収音し、収音された収録音に基づいて前記インパルス応答算出手段で算出された第3インパルス応答の値から、前記第2インパルス応答の値を差し引いて、前記評価音出力手段から前記収音手段へと直接伝播される評価音成分を除去した完全反射面インパルス応答を算出する完全反射面用インパルス応答算出手段と、
前記試料用インパルス応答算出手段により算出された前記試料用インパルス応答と、前記完全反射面用インパルス応答算出手段により算出された前記完全反射面用インパルス応答とに基づいて、それぞれの周波数応答を算出する周波数応答算出手段と、
該周波数応答算出手段により算出された前記試料用インパルス応答の周波数応答の値と、前記完全反射面用インパルス応答の周波数応答の値とに基づいて、前記試料の吸音特性を求める吸音特性判定手段と
を有することを特徴とする吸音特性測定装置。
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