JP3656339B2 - 無線通信システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、周波数ホッピング方式により所定のホッピングパターンに従って周波数を切り換えながら通信機相互間で双方向通信を行う無線通信システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年において、通信データを変調後に拡散して送信する一方、受信した信号を逆拡散して復調することにより通信データを得るスペクトラム拡散方式の無線通信システムが、周波数の有効利用および低い電力密度の通信を可能にすることから注目されている。そして、特に、スペクトラム拡散方式による送受信時に、周波数を順次切り換える周波数ホッピングを行うと、信号の秘匿性が極めて高いものとなるため、この周波数ホッピングを適用したスペクトラム拡散方式の無線通信システムが例えば電話機やファクシミリ装置等の各種の分野において広範囲に採用されようとしている。
【0003】
従来、上記方式の無線通信システムは、拡散および逆拡散のパターンを示すものとして、使用する周波数を示すホップ周波数データの組み合わせとして表現されるホッピングパターンを有している。一つのホッピングパターン(周波数の変化パターン)は、複数のホップ周波数データの系列として予め設定されており、、このデータ(拡散符号ともいう)を滞留時間毎に読みだして通信周波数を順次変更しつつ、通信機間で送受信が行われるのである。この通信を行うため、全ての通信機に同一のホッピングパターンが設定されているのである。これが周波数ホッピングによるスペクトラム拡散通信である。そして、例えば、親機となる通信機から特定の子機となる通信機に対して通信を行う場合に、親機は、送信する信号を一定の滞留時間毎に周波数ホッピングさせて変調する拡散変調信号とし、この拡散変調信号を子機に対して送信する。子機は、送信された前記の拡散変調信号を、予め与えられているホッピングパターンに従った逆拡散による復調によって、送信信号を受信処理することが可能となっている。
【0004】
そして、このように滞留時間毎に周波数をホッピングさせながら、送信側の拡散と受信側の逆拡散とを繰り返すことにより、通信機器の相互間においてスペクトラム拡散方式に基づく送受信が可能となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、周波数ホッピングにより拡散変調される信号を通信機器の相互間において送受信しようとすると、受信側は前記のごとく送信信号を逆拡散により復調する必要がある。そのため、無線通信システムを構成する全ての通信機は、送受信の際に使用されるホッピングパターンを予め備えていることが必要である。
【0006】
しかし、無線通信システムにホッピングパターンの異なる新たな通信機を導入したい場合や、使用するホッピングパターンを新たに追加したい場合がある。また、複数用意されるホッピングパターンのうち、従来使用していたものと異なるものに更新しようとする場合に、電源が切られている等の通信機については、その更新を認識させることができない場合がある。このような場合には、無線通信システムの各通信機の相互間において、拡散変調信号による送受信ができないことになる。
【0007】
そこで、本発明は、無線通信システムに新たな通信機を導入する場合や、使用するホッピングパターンが新たに追加、あるいは更新される等の場合にも、拡散変調信号による送受信を可能とすることを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、周波数ホッピング方式により所定のホッピングパターンに従って通信機相互間で双方向通信を行う無線通信システムにおいて、一方の通信機は、前記所定のホッピングパターンを繰り返して送信する送信手段を備え、他方の通信機は、前記所定のホッピングパターンの開始点として選ばれる周波数を基準として他の周波数を受信するまでの送信間隔を計測する第一計測手段と、前記第一計測手段が計測した計測順に並べられた前記他の周波数と前記送信間隔とを前記送信間隔の小さい順に並び変える並び変え手段と、前記並び変え手段が並び変えた前記他の周波数と前記送信間隔とが示す前記所定のホッピングパターンを学習する学習手段を備えることを特徴とする無線通信システムである
【0009】
れにより、他方の通信機は、一方の通信機が繰り返して送信する前記所定のホッピングパターンについて、その周波数と前記所定のホッピングパターンの開始点として選ばれる周波数を基準として他の周波数を受信するまでの送信間隔とを並べ替えて、前記所定のホッピングパターンを学習する。他方の通信機は、学習をしたホッピングパターンに基づいて一方の通信機と送受信することができる。ここで、他方の通信機の具体例として、従来より機能している無線システムに増設される新規な通信機や、従来より保有している通信機であって異なる無線システムに追加されるもの、ホッピングパターンの更新中に電源が切られていた通信機等をげることができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記他方の通信機は、前記所定のホッピングパターンの特定周波数を受信した後再び前記特定周波数を受信することにより、前記ホッピングパターンの送信周期を計測する第計測手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の無線通信システムである。これにより、他方の通信機は、ホッピングパターンに含まれる特定周波数を受信した後に再び特定周波数を受信するまでの周期によって、ホッピングパターンの送信周期を計測する。次に、この送信周期を計測上の最大間隔として設定し、前記特定周波数を基準として他の周波数を受信するまでの送信間隔を計測する。即ち、一つの周波数の送信間隔の計測は、特定周波数の受信時点より開始され、送信周期を計測の上限として行われる。このようにして計測された送信間隔の順に、周波数の並べ替えが行われ、一方の通信機により送信されたホッピングパターンが構成される。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記送信間隔は、前記特定周波数を検出してからある周波数に切り換え、前記特定周波数の受信から前記のある周波数の検出までの時間で計測し、前記周期内に前記のある周波数を検出できない場合には、次の周期内で前記のある周波数を検出し一周期分を減算して時間を計測する請求項2記載の無線通信システムである。これにより、送信間隔を計測する上で、他方の通信機の受信周波数を特定周波数からある周波数へ切り換えることが遅れた場合でも、一周期後にある周波数を検出することができる。該検出までに計測されたある周波数の送信間隔は一周期分加算されたものであるので、この一周期を減算すると、ある周波数の送信間隔を時間で計測することができる。
【0012】
請求項記載の発明は、前記一方の通信機は、通常の通信データの送信から前記所定のホッピングパターンを繰り返して送信する前記送信手段による送信に切り換える第一切り換え手段を有し、前記他方の通信機は、通常の通信データの受信から前記学習手段による学習を行うための受信に切り換える第二切り換え手段を有する請求項1記載の無線通信システムである。これにより、他方の通信機がホッピングパターンの学習を行う場合には、一方の通信機は第一切り換え手段により通常の通信から前記送信手段による通信に切り換えられ、他方の通信機は第二切り換え手段により通常の通信から前記学習手段による通信に切り換えられる。そして、請求項1記載の前記並び変え手段が並び変えた前記他の周波数と前記送信間隔とが示す前記所定のホッピングパターンの学習が行われる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図1ないし図9に基づいて以下に説明する。本実施の形態に係る無線通信システムは、図2に示すように、外部回線に接続された1台の親機10(通信機)と、子機11(通信機)と、子機12(通信機)とによって構成されている。これらのうち、親機10と子機11は、既に所定の周波数ホッピングパターンによって相互に通信可能に構成されている。
【0014】
この例では、子機12が新規に増設されるものとして他方の通信機を構成し、該子機12が前記所定の周波数ホッピングパターンを学習するものとする。子機12は、周波数ホッピングパターンを学習した後において、親機10および子機11と該周波数ホッピングパターンの下に相互に通信することが可能である。
【0015】
また、親機10は、通常の通信から子機12が学習を行うための送信モードに切り換えるスイッチ15を備えており、子機12は、通常の通信から前記の学習を行うための受信モードに切り換えるためのスイッチ16を備えている。子機12には、必要に応じて動作状況を表示するための表示装置としてLEDやLCD17等も備わる。このスイッチ15は第一切換手段を構成し、スイッチ16は第二切換手段を構成する。本発明では、周波数ホッピングパターンを学習するためのルーチンとして、後で説明する二つの学習ルーチンI、IIを備えており、スイッチ16はいずれのルーチンをも任意に選択できるように構成されている。なお、子機12が学習を行っている間は、他の子機11と通信することができないため、前記のLED等の点灯により子機12が学習中であることを表示すると、通信機の使用上便利である。
【0016】
このスイッチ15、16の操作により、周波数ホッピングパターンを学習するためのモードへの切り換えが行われたことは、後に説明する無線通信部1に備わるコントローラ35に検知されるようになっている。このスイッチ15、16については、誤操作を防ぐ等の観点から機器の底部等に備えられ、また、細い棒を用いる等しなければその操作ができないように構成すると、使用上便利である。
【0017】
尚、これらの親機10や子機11、12には、電話機やファクシミリ装置、プリンタ装置、コンピュータ等を適用することができる。親機10と子機11、12との通信および子機11、12間の通信は、図3に示すように、TDD(TimeDivision Duplex)方式により行われるようになっており、一方が送信状態(TX)のときには他方を受信状態(RX)とし、この送信状態(TX)と受信状態(RX)とを交互に置き換えることにより通信を行うようになっている。
【0018】
上記の親機10および子機11、12は、図4に示すように、通信データを周波数ホッピングするスペクトラム拡散方式により送受信する無線通信部1を有している。この無線通信部1については、親機10と、本発明にかかる学習等を行う子機12とは、多くの部分が共通であるが、区別する必要がある場合には親機10について1aで表し、子機12を1bとして表す。また、部材や信号等について、子機12の1bについて付加されるものがあるが、かかる部材には添字bを付加することによって区別できるように表す。
【0019】
無線通信部1は、図示しない外部回路に対して通信データをデータ処理して入出力するインターフェース部21を有している。インターフェース部21は、通信データが音声信号である場合、音声信号とデジタル信号とを相互変換するコーデックおよび圧縮器を有している一方、通信データが非音声信号である場合、バッファやエラー訂正処理等を行うデータ変換器を有している。
【0020】
上記のインターフェース部21は、通信データを変調する変調部22aと、通信データを復調する復調部22bとを有した変復調器22に接続されている。変復調器22は、コントローラ35からの送信指令信号pおよび受信指令信号qにより変調部22aと復調部22bとの作動状態を通信データの送信時と受信時とで切り換えるようになっている。そして、送信時に作動される変調部22aは、ミキサを備えたアップコンバータ23に接続されている。
【0021】
上記のアップコンバータ23には、PLL局部発振器25が接続されており、PLL局部発振器25には、図5にも示すように、複数チャンネルC1,C2,...CL分のホップ周波数データf1,f2,...fL を格納したホップテーブル26が接続されている。これらのホップテーブル26およびPLL局部発振器25には、コントローラ35から所定の滞留時間毎にホップ信号rが入力されるようになっており、ホップテーブル26は、ホップ信号rが入力されるたびに、ホップ信号rが示すチャンネル設定値Sのチャンネルに対応するホップ周波数データfをPLL局部発振器25に出力し、PLL局部発振器25からホップ周波数データf1,f2,...fL に対応した周波数のホップ周波数信号(局部発信信号)sをアップコンバータ23に出力させるようになっている。特定のホップ周波数データ、例えばf1に対応する周波数を示すとき、周波数(f1)と示すことにする。そして、アップコンバータ23は、PLL局部発振器25からのホップ周波数信号sと、変調部22aからの通信データの変調信号tとを加え合わせることによって、拡散された周波数の拡散変調信号uを形成するようになっている。
【0022】
また、親機10について、学習を行うための送信モードに切り換わった場合には、所定のホッピングパターンを繰り返して送信するように、無線通信部1aのコントローラ35がホップ信号raを調整して出力するようになっている。このホップ信号ra が出力されると、ホップテーブル26から信号raに対応するホップ周波数データfa がPLL局部発振器25に出力されてPLL局部発振器25からホップ周波数信号sがアップコンバータ23に出力され、アップコンバータ23はホップ周波数信号sと変調部22aからの学習用通信データの変調信号tとを加え合わせることによって拡散変調信号ua が出力される。前記ホップ信号ra を滞留時間毎に出力することにより、ホップテーブルからfa が順次出力され、所定のホッピングパターンが繰り返されるのである。コントローラ35のこの動作が送信手段を構成する。
【0023】
上記のアップコンバータ23は、拡散変調信号uを増幅するパワーアンプ24を介して送受切換器27に接続されている。送受切換器27には、コントローラ35から送信指令信号pおよび受信指令信号qが入力されるようになっており、送信指令信号pが入力されたときには、作動状態を送信可能状態としてパワーアンプ24からの拡散変調信号uをアンテナ28から送信させるようになっている。一方、受信指令信号qが入力されたときには、作動状態を受信可能状態とし、アンテナ28を介して受信された拡散変調信号uをローノイズアンプ31に出力させるようになっている。
【0024】
上記のローノイズアンプ31は、ダウンコンバータ32に接続されており、ダウンコンバータ32に対して拡散変調信号uを増幅して出力するようになっている。ダウンコンバータ32には、上述のアップコンバータ23に入力されるホップ周波数信号sがPLL局部発振器25から入力されるようになっており、ダウンコンバータ32は、ホップ周波数信号sを基にして拡散変調信号uを逆拡散して変調信号tを形成し、この変調信号tを復調部22bに出力するようになっている。そして、復調部22bは、入力された変調信号tを復調した後、インターフェース部21に出力するようになっている。
【0025】
また、子機12の無線通信部1bについては、復調器22bはコントローラ35に接続される構成である。本発明にかかる周波数ホッピングパターンの学習等を行うため、復調信号ub をコントローラ35に入力するようになっている。
【0026】
コントローラ35は上記のようにして各部の制御を行い、スペクトラム拡散通信方式に基づく通信機として機能するための部材に加え、本発明にかかる学習を行うための部材として、特に、記憶部61b、解析部62b、タイマ部63b、カウンタ部64bをも備えている。
【0027】
記憶部61bには、学習ルーチンが備わっている。この学習ルーチンは、所定のホッピングパターンの開始点として選ばれる周波数を基準として他の周波数を受信するまでの送信間隔を計測する第一計測手段、前記第一計測手段が計測した計測順に並べられた前記他の周波数と前記送信間隔とを前記送信間隔の小さい順に並び変える並び変え手段、前記並び変え手段が並び変えた前記他の周波数と前記送信間隔とが示す前記所定のホッピングパターンを学習する学習手段及びホッピングパターンの送信周期を計測する第二計測手段を構成する。
【0028】
この学習ルーチンには、ホッピングパターンを構成する送信間隔を時間で計測する学習ルーチンIと、送信間隔をホッピング数で計測する学習ルーチンIIが用意されている。その実行手順については図6、図7に示されるが、学習ルーチンの実行に伴うホッピングパターンを学習する動作については後に説明する。
【0029】
解析部62bは、子機12で受信された拡散変調信号の周波数を検出する部分である。この解析部62bで検出される送信周波数と、後に説明する学習ルーチンにセットされる受信周波数とを一致させることにより、拡散変調信号に含まれる各周波数の信号を受信できるようにしている。なお、解析部62bの構成を、例えばローノイズアンプ31の出力を外部のFFTアナライザ等に接続し、ここで検出される周波数を読み込むようにすることもできる。
【0030】
タイマ部63bは、送信周期や送信間隔等の時間を計数するための部材である。この例では、タイマAとタイマBとを備える。カウンタ部64bは、コントローラ35が発生するクロック等のパルス数を計数するための部材である。この例では、コントローラ35が発生するクロックパルスの数を計数するためのカウンタAと、特にホップ数に対応するパルス数を計数するためのホップカウンタBとを備えている。
【0031】
解析部62b、カウンタ部63b、タイマ部64bは、記憶部61bに対して、I/Oを介する等により接続されている。これにより、解析部62bで検出された送信周波数を学習ルーチンに読み込むことができる。また、学習ルーチンの指令によりタイマ部63bおよびカウンタ部64bにリセットやストップをかけることや、計数された時間等を学習ルーチンに読み込むことができるようになっており、学習ルーチンが、送信信号のホッピングパターンを構成する周波数や送信間隔を計測できるようになっている。
【0032】
また、コントローラ35は、前記のごとくスイッチ15、16の操作による学習を行うためのモードに切り換えられたことを検知するようになっている。無線通信部1aについては、学習を行うためのモードに切り換えらると、前記のとおりホップ信号raが出力され、所定のホッピングパターンによる送信を繰り返して行う。
【0033】
無線通信部1bについては、この学習のためのモードへの切り換えを検知すると、コントローラ35が受信切換信号qを出力して子機12を受信可能な状態とし、前記の学習ルーチンの実行を開始するともに、解析部62b、カウンタ部63b、タイマ部64bを作動できるようになっている。
【0034】
電源部36は、無線通信部1を作動させるための電力を供給する部分である。この電源部36は、コントローラ35の制御の下に無線通信部1の各部へ電力を供給する。この無線通信部1の各部への電力の供給について、コントローラ35を除く部分につき、電力の供給を制限すること等が行われる。送受信の動作との関係から、無線通信部1の構成各部のうち動作する必要のない部分について、電力供給を制限することにより、電力の無駄な消費を防ぐことができる。
【0035】
以下に、ホッピングパターンの学習に伴う無線通信システムの動作について説明する。なお、ホッピングパターンの学習を行う場合には、親機10と子機12とは十分に近接させて設置するものとする。これにより、子機12は、親機10の送信を確実に受信でき、学習を行い易いからである。
【0036】
まず、親機10について、前記のスイッチ15を操作し、学習のための送信モードに切り換える。親機10は、このモードに設定されている間は、前記のごとく所定のホッピングパターンを繰り返して送信するのみであり、異なるホッピングパターンの送信が行われることはない。
【0037】
次に、子機12について、前記のスイッチ16を操作し、学習を行うための受信モードに切り換えると、学習ルーチンの実行が開始される。学習ルーチンには、前記のとおり学習ルーチンIと、学習ルーチンIIとが用意されているが、まず、学習ルーチンIの実行について図6を用いて説明する。
【0038】
前記のスイッチ16の操作により学習ルーチンの実行が開始されると(S1)、まず、子機12の受信周波数を(f1)にセットした(S2、S3)後に、タイマAをリセットし(S4)、受信待機する(S5)。ここで、(f1)には、この無線通信システムに許容されている周波数帯域のうちで最低の周波数を選ぶ。
【0039】
所定の時間、例えば、ホッピングパターンの送信周期TH 以上の時間であるTmax の間、親機10からの送信を受信しなければ、この周波数の送信はないものと判断し(S6、N、S22、N)、次の周波数(f2)で同様のことを行う(S23〜)。送信周波数を受信できれば(S6、Y)、再びタイマAをリセットし(S7)、次に、先の送信周波数を再び受信すると(S8、Y)、タイマAをストップする(S9)。ここで、再び受信された周波数がホッピングパターンの特定周波数(fs)として、この間のタイマAにより測定された時間がホッピングパターンの送信周期TH として決定される(S10)。
【0040】
ここで、特定周波数とは、親機10が送信する周波数のうち最低のものである。ホッピングパターンは一周期学習すればよく、その開始点は特に指定されないが、ここでは開始点として特定周波数を選ぶこととする。
【0041】
なお、送信周期TH については、親機10が送信する信号のうち特定の周波数(fm)にのみ同位相で特定の信号uwを重畳させ、この特定信号が送信される時間の間隔を測定することによっても計測することが可能である。この方法により計測する場合には、受信周波数を特定信号の周波数(fm)にセットして受信待機し、前記で周波数(fs)の送信される時間間隔を測定した場合と同じ手順を用いると、送信周期TH を計測することができる。
【0042】
次に、前記特定周波数(fs)で受信待機し(S13、S14)、親機10の信号を受信したら(S15、Y)、タイマA、タイマBをリセットし(S16)、計測を開始する。この時点が計測開始点となる。次に、受信周波数を(fi)にセットし受信待機する(S17、S18)。この(fi)を受信したら(S18、S19、Y)、タイマBをストップし(S20)、送信時間間隔Ti を決定する(S21)。セットする受信周波数を変更して(S11)、これを繰り返す(S11〜S21)。
【0043】
セットした受信周波数が受信されない場合(S19、N)で、送信周期TH を経過している場合(S25、N)、受信周波数の切り換えが遅れたことが原因で受信できなかったことも考えられるので、タイマA、タイマBをリセットし(S26)、引き続き計測を行う(S27)。ここで、タイマBをリセットすることは、切り換えの遅れた周波数(fi)を一周期後に検出して一周期TH 分を減算して時間を計測する操作に相当する。受信できない場合は、その周波数は、使用されていないと判断し、Ti =NOとする(S28、N、S29)。そして、次の周波数の計測に移る(S11)。以上を許可されている帯域の最高周波数(fend )まで繰り返す(S12、N、S24)。
【0044】
なお、送信間隔について、学習ルーチンIは、前記のようにタイマA、タイマBを用いて時間を測定するとしているが、コントローラ35が発生するクロックパルス数をカウンタAにより計数することに基づく測定も可能である。
【0045】
以上の手順によって、ホッピングパターンを構成する周波数や送信時間間隔を決定することができるが、その手順の時系列を、図1に示される親機10からの送信信号のタイミングチャート(i)と、子機12が受信待機するタイミングチャート(ii)とを用いて以下に説明する。図1(a)は、送信周期TH が決定されるタイミングチャートである。子機12は特定周波数(f1)で受信待機する(〜S5)。親機10が(f1)で送信を行ってから、次に(f1)で送信を行うまでの時間を計測し、送信周期THが決定される(〜S10)。
【0046】
なお、送信周期TH の計測を、図1(d)に示されるように、親機10が送信する信号のうち周波数(f1)にのみ同位相tp で含まれる特定の信号、例えば同期信号uwを検出して行う場合には、周波数(f1)で受信待機し、親機10が(f1)で特定の信号uwの送信を行ってから、次に特定の信号uwが送信されるまでの時間を計測する。
【0047】
図1(b)は、各周波数についての送信間隔時間が決定されるタイミングチャートである。親機10が(f1)で送信を行ってから、計測したい周波数(f2)を送信するまでの時間T2 を子機が計測する。子機12は受信周波数(f1)で受信待機し(S13、S14)、親機10が(f1)を送信するとタイマを作動させ、受信周波数を(f2)に切り換えて、親機10から送信された(f2)の信号を受信するまでの時間T2 を計測する(〜S21)。
【0048】
図1(c)は、計測したい周波数への受信周波数の切り換えが遅れた場合に、一周期待って計測するタイミングチャートである。親機10が(f1)で送信してから、計測したい周波数(f6)を送信するまでの時間T6 を子機12が計測する。子機12は受信周波数(f1)で受信待機し(S13、S14)、親機10が(f1)を送信するとタイマを作動させ、受信周波数を(f6)に切り換える(〜S17)。この切り換えが間に合わないことも考えられるので、一周期TH 待ってから計測を開始する(S19、N)。TH 経過後(S25、N)、一度タイマをリセットしてから(S26)、親機10から送信された(f6)の信号を受信するまでの時間T6 を計測する(〜S21)。この計測された時間T6 は、切り換えが間に合わなかった周波数(f6)を、次の周期で検出し一周期TH 分を減算して計測される時間となる。これにより、切り換えが間に合わない場合でも、一周期後には受信周波数を受信して計測できるので、計測の信頼度が向上する。
【0049】
次に、学習ルーチンIIの実行について、該ルーチンの手順を示す図7と、ホップ数を計測するためのタイミングチャートを表す図8とに基づいて説明する。図8において、(i)は親機10が送信するタイミングチャートであり、(ii)は子機12が受信するタイミングチャートである。また、図8(a)はホッピングパターンの送信周期TH を決定するための基準クロック51を発生するタイミングチャートを表している。図8(b)は周波数(f2)の送信間隔を決定するためのタイミングチャートを表している。図8(c)は、周波数(f1)に続いて送信される周波数(f6)の送信間隔を決定するためのタイミングチャートを表している。
【0050】
学習ルーチンの実行を開始すると(S31)、受信周波数を(f1)として受信待機する(S32〜S36)。親機10が周波数(f1)で送信していることを確認後(送信していなければ次の周波数で待機、S36、N、S53、N→S33→S35)、受信周波数(f1)を受信すると、基準クロック51を発生させる(S37)。次に、カウンタAをリセットし(S38)、再度(f1)を受信するまでの間隔が、図8(a)にも示されるように、ホッピングの送信周期TH となる(S39、Y→S40)。このホッピングの送信周期TH の間隔を、クロックパルスの計数値(カウンタAの値)に対応させたものが送信ホップ数CH である(S41)。この送信ホップ数CH に基づいて基準クロック51を発生させる時期を設定し(S42)、以降の手順においても、この間隔で基準クロック51を継続的に発生させる。
【0051】
次に、受信周波数を(fi)=(f2) として受信待機し、ホッピングカウンタBをリセットする(S44〜S47)。このホッピングカウンタBのリセットは、基準クロック51に同期して行うようにする。この間において、受信周波数(fi)が許容周波数帯域の最高周波数(fend)を越えているかどうかを判断し(S45)、越えている場合はルーチンを終了する(S45、N→S56)。(fend)を越えていない場合には、受信周波数(f2)を受信するまでホップ数をカウントする(S48、S49、Y→S50)が、ホップ数のカウントは図8(b)に示すようにホップ開始パルス53の数をカウントする。このホップカウンタBの値により、受信周波数(f2)のホップ数(基準クロックからのホップ数)が決定される(S51)。そして、カウンタAの計数値が送信ホップ数CH を越えていない場合には、ホップ数の計測を開始してから送信周期TH を越えておらず、そのまま待機する(S52、Y)。カウンタAの計数値が送信ホップ数CH を越えている場合には、受信周波数を次の周波数に切り換える(S52、N)。
【0052】
カウンタAが送信ホップ数CH を計数する間に受信がなければ、その周波数は使用されていないと判断する(S55、N)。この手順を、受信周波数を切り換えて各周波数について繰り返す(S44〜S52)。
【0053】
このホッピング数を計測することは、カウンタによる計測であるため、時間を計測するよりも簡単に送信間隔を決定できる。また、先の学習ルーチンのように特定周波数(f1)を基準とする計測開始点を設けて各周波数に変化するまでの時間を測定するのでなく、受信周波数を計測したい周波数にセットして受信待機するのみで計測できる。そのため、図8(c)に示すように、送信周波数が周波数(f1)から周波数(f6)に変化する場合にも、受信周波数を(f6)へ切り換えることの遅れにより受信の機会を逃すということもない。このホッピング数を計測する上で、基準クロック51に誤差が生ずる場合には、適時、周波数(f1)で送信周期TH を再計測し、誤差を補正すればよい。
【0054】
図9は、学習ルーチンIを実行することにより得られた結果の一例を示している。図9(a)は、計測した周波数(f)と、その周波数を受信するまでの送信間隔時間Tとを測定順に並べたものである。この図9(a)に示される測定結果を、時間Tの小さい順に並べ替えて示したものが図9(b)である。即ち、この図9(b)は、親機10が送信し子機12によって計測されたホッピングパターンの一例を示すものである。
【0055】
この計測したホッピングパターンの結果について、学習ルーチンIIのように、送信間隔をホップ数によって計測した場合には、図9(a)に示される時間Tの代わりにホップ数により表した表を作るとよく、また、ホップ数の少ないものから順に図9(b)のように並び替えるとよい。
【0056】
この計測された周波数と送信間隔の結果を、送信間隔の順に並べ替える手順については特に図示していないが、前記の学習ルーチンI、IIにルーチンの一部として含まれている。なお、ここでは、ホッピングパターンの計測について、学習ルーチンI、IIともに、周波数の低い方から高い方へ順に計測を行うとして説明したが、周波数の高い方から低い方へ計測してもよく、計測する周波数の順についても限定されない。また、古いホップパターンに基づいて順に計測してもよく、これはホップパターンの変更が少ない場合に有効である。また、TH を測定するために特定の周波数(f1)の間隔を測定していたが、周波数と時間間隔を順次記憶していき、それらの変化パターンをパターンマッチング法により特定してTH を決定することができる。
【0057】
【発明の効果】
以上のように、本発明にかかる請求項1記載の発明は、他方の通信機の増設や、一方の通信機のホップパターンが随時更新される場合で他方の通信機の電源が切られている場合であっても、他方の通信機が一方の通信機の周波数ホッピングパターンを構成する周波数と送信間隔とを学習できるので、他方の通信機と一方の通信機は、該学習したホッピングパターンにより相互に送受信を行うことができる。これにより、新規な通信機を無線システムに増設することや、システムの異なる手持ちの通信機を無線システムに追加すること、ホッピングパターンの更新中に電源が切られていた通信機を使用することが可能になるという効果を奏する。
【0058】
請求項2記載の発明は、前記ホッピングパターンを学習するにあたり、最初に一方の通信機の送信周期を計測し、その周期の中で周波数が出現する間隔である送信間隔を送信周期毎に計測するので、効率的に学習できるという効果を奏する。
【0059】
請求項3記載の発明は、他方の通信機は、特定周波数を基準として検出するべきある周波数に切り換えて計測するため、検出すべきある周波数までの時間を正確に計測できる。また、ある周波数への切り換えに間に合わない場合でも、一周期分ずらすことで送信間隔を計測できるという効果を奏する。
【0060】
請求項記載の発明は、第一および第二切換手段を切り換えないと、学習ができないため、誤って学習モードになることを防止できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】ホッピングパターンの学習を行う際のホッピングパターンの状態を示す説明図である。
【図2】親機と子機との関係を示す説明図である。
【図3】TDD方式による通信形態を示す説明図である。
【図4】無線通信部のブロック図である。
【図5】ホップテーブルのデータ内容を示す説明図である。
【図6】学習ルーチンを示すフローチャートである。
【図7】学習ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】ホッピングパターンの学習を行う際のホッピングパターンの状態を示す説明図である。
【図9】ホップテーブルのデータ内容を示す説明図である。
【符号の説明】
1 無線通信部
10 親機
11、12 子機
15、16 切り換えスイッチ
17 表示器
21 インターフェース部
22 変復調器
23 アップコンバータ
24 パワーアンプ
25 PLL局部発振器
26 ホップテーブル
27 送受切換器
28 アンテナ
31 ローノイズアンプ
32 ダウンコンバータ
35 コントローラ
36 電源部
61 記憶部
62 解析部
63 タイマ部
64 カウンタ部

Claims (4)

  1. 周波数ホッピング方式により所定のホッピングパターンに従って通信機相互間で双方向通信を行う無線通信システムにおいて、
    一方の通信機は、前記所定のホッピングパターンを繰り返して送信する送信手段を備え、
    他方の通信機は、前記所定のホッピングパターンの開始点として選ばれる周波数を基準として他の周波数を受信するまでの送信間隔を計測する第一計測手段と、
    前記第一計測手段が計測した計測順に並べられた前記他の周波数と前記送信間隔とを前記送信間隔の小さい順に並び変える並び変え手段と、
    前記並び変え手段が並び変えた前記他の周波数と前記送信間隔とが示す前記所定のホッピングパターンを学習する学習手段を備えることを特徴とする無線通信システム。
  2. 前記他方の通信機は、前記所定のホッピングパターンの特定周波数を受信した後再び前記特定周波数を受信することにより、前記ホッピングパターンの送信周期を計測する第計測手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
  3. 前記送信間隔は、前記特定周波数を検出してからある周波数に切り換え、前記特定周波数の受信から前記のある周波数の検出までの時間で計測し、前記周期内に前記のある周波数を検出できない場合には、次の周期内で前記のある周波数を検出し一周期分を減算して時間を計測する請求項2記載の無線通信システム。
  4. 前記一方の通信機は、通常の通信データの送信から前記所定のホッピングパターンを繰り返して送信する前記送信手段による送信に切り換える第一切り換え手段を有し、前記他方の通信機は、通常の通信データの受信から前記学習手段による学習を行うための受信に切り換える第二切り換え手段を有する請求項1記載の無線通信システム。
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