JP3655587B2 - 連続アナライトモニタリング用小型バイオセンサー - Google Patents

連続アナライトモニタリング用小型バイオセンサー Download PDF

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Description

【0001】
発明の分野
本発明は、生物学的流体中のアナライトの有無または量を検出するためのセンサーに関する。より詳細には本発明は、特に留置または埋込用に適合したセンサーに関する。アナライト濃度は、場合によっては半透膜によって生物学的流体から分離されていてもよい収容された検出保持容積部(retention volume)のアナライト透過性媒体中で電気化学的に測定される。
【0002】
発明の背景
生物学的に重要なアナライトの有無および/または量を検出することができる電気化学センサーの開発に向けて、多くの研究および開発努力が行われてきた。ほとんどではないにしても、そのようなアナライト検知装置の多くが、アナライト依存検出組成物で前処理された試験流体閉じ込め空間ならびにその試験流体閉じ込め空間に送り込まれる試験流体と接触する電極を有する試験片(テストストリップ)の形である。携帯用または卓上用のプログラム済みセンサー読取装置に接続するために、電極から試験片のある領域へ電気導電体が延びている。通常センサー読取装置は、生物学的流体をサンプル流体閉じ込め領域または容積部に送り、流体サンプルをサンプル閉じ込め空間に送り込んでから所定の時間後に電極に所定の電位を印加するようにプログラムされている。次に、前記印加電位に対する電流を測定すると、標的アナライトの有無および/または濃度を示す指標が得られる。
【0003】
そのような電気化学センサーの中には、試験媒体には不溶であり、その試験媒体と接触した時に少なくとも対象とするアナライトに対して透過性である半透膜またはゲルマトリクス材料で電極を覆うことによって、サンプル流体と電極とが直接接触するのを防ぐように構成されているものもある。
【0004】
生物学的に重要なアナライト用の商業的に利用可能な多目的/連続使用センサーの開発が以前から望まれている。特に、数時間から数週間、数ヶ月または数年という期間にわたって患者の体内に埋込または注入可能であって、膜成分の拡散特性における変化あるいは酵素活性および/または電子メディエータ要素の損失に関して補正を行うための取出しや再較正を行うことなく正確な結果を与えるよう設計された生体センサーの開発が必要とされている。そのようなセンサーには、例えば患者のグルコースレベルの連続的および/または定期的モニタリングが必要な人工膵臓などの人工臓器の構成要素としての用途があると考えられる。そのような機器には、患者の体液サンプルについて分析を行う商業的検査施設で遭遇する分析上の状況のようなin vitroでの体液中のアナライト濃度を測定する再利用可能なセンサーとしての用途もあると考えられる。
【0005】
in vitroでの繰り返し使用および/またはin vivoでの連続使用が可能な生体センサーの設計および構築には特有の問題がある。実際、そのような機能的必要条件に固有のものとして、センサーの機能性化学成分が閉じ込められるという条件、すなわちそのような成分が繰り返しおよび/または連続使用時にサンプル液中にセンサーから放出されないという条件がある。バイオセンサーの「活性な」化学/電気化学成分の保持は、いくつかの方法のいずれかを単独で用いるか組み合わせて用いることで行うことができる。そこで、例えばバイオセンサーの非浸出性(non-leachable)構成要素への共有結合によって、あるいは少なくともアナライトは透過可能であるが、閉じ込められた場合によっては共有結合していてもよい酵素、補酵素および/または電子メディエータは透過できない膜により、試験領域もしくは容積部に生物学的/電気的活性成分を閉じ込めることによって固定化することができる。
【0006】
本発明による埋込可能および/または再使用可能なバイオセンサーは、通常はアナライト保持容積部にある親水性マトリクスに、活性なセンサー依存性化学成分を保持するように設計されている。印加電位に応答してセンサー内で共働して、保持容積部中に拡散したアナライト濃度に比例する電流信号を与える活性な電気化学種は、場合によっては、電極系の電極、少なくとも部分的に保持容積部を画定するセンサーのエンクロージャ部分の壁(これらに限定されるものではない)などの保持容積部の非浸出性構成要素、保持容積部に収容されたミクロスフィアその他の微粒子固体、膜の側面に接触する保持容積部、あるいは保持容積部マトリクスのポリマー性構成要素に共有結合させることができる。別法として、酵素、酵素コファクターおよび電子メディエータは、そのような成分が保持容積部から分析対象の生物学的流体中へ実質的に拡散するのを防止するように充分高い分子量を有するように選択することができる。
【0007】
本発明の1態様において、「低減(depletion)容積部媒体」とも称される保持容積部媒体は、電子メディエータを介して酵素から電子を受け取ったり、酵素に電子を供与することができる電極を有する電極系と接触している。電極から機器上のある箇所まで導電体要素が延びていることで、電極はプログラム可能なコントローラと電気的に接続されている。コントローラは、メディエータ酸化電位もしくはメディエータ還元電位などの可変電位、可変パルス幅および可変パルス間隔などの所定の電位シーケンスを電極系に印加するようプログラムすることができる。コントローラはまた、電極系へ印加した電位に応答する電流を検知し、その系について予め得ておいた対照データとそのようなデータを比較して、分析対象の生物学的サンプルにおけるアナライトの濃度を計算および報告し、場合によってはそのようなデータを用いて機器の性能状況を検知し、それを用いて既存の電位シーケンスプロトコールに変更を加えて機器機能を最適化することもできる。そこで例えば、定期的にセンサー制御に変更を加えて、従来の再較正法を用いることなく、膜を横切るアナライトの拡散効率における差および/または機器の活性電子メディエータおよび/または酵素成分の濃度変化に対して調節することができる。
【0008】
本発明の1実施形態において保持容積部は、少なくとも部分的にアナライト透過性膜によって画定または囲まれており、少なくとも部分的に保持容積部を画定する半透膜表面積に対する保持容積部の比は、2 mm未満、より好ましくは1 mm未満である。表面積に対する容積部の比が低いと、試験対象流体と保持容積部媒体との間の拡散平衡の速度が上昇することにより、センサーの無反応期間(回復期)が短縮されるという点で好ましい。
【0009】
ある好ましい実施形態では、前記酵素成分の選択は、それが前記アナライト以外の内因性物質との電子の授受を行うことが実質的にできないように行う。そのような条件下では、アナライト濃度の信号提供に関わる酵素反応は、所定の閾値電位が電極系に印加されない限り起こり得ない。従って、場合によってはメディエータを「失活させる」還元電位(reducing potential)のパルス後に、このセンサーをオフとして酵素活性を停止させ、予測可能な濃度勾配支配の拡散を起こさせて、アナライト検出/保持容積部におけるアナライト濃度を急速に「復帰(reset)」させて、次のプログラムされたパルス電位検出シーケンスに備えることができる。
【0010】
本発明の別の実施形態では、本発明のセンサーを用いて、センサーを分析対象の生物学的流体と接触させることによりアナライト濃度をモニタリングする方法が提供される。最初に、保持容積部における電子メディエータを酸化するのに充分な電位を、所定の間隔で間欠的に電極系に印加し、その電極を流れる電流を、印加した電位の持続時間の関数として検知する。印加されたメディエータ酸化電位は、少なくとも、印加電位持続時間の関数として電極を流れる電流の変化率を測定するのに充分な時間にわたって維持する。検知した電流値を、既知濃度のアナライトについての電流値と関連づける。別形態として検知プロトコールは、電位を調節して所定の電流を確保する段階、次に前記電流を所定の時間にわたって維持する上で必要な電位の変化率を検知する段階を有していることができる。
【0011】
別の実施形態では、生物学的サンプル中のアナライト濃度を、アナライト低減電位パルス後の保持容積部における時間依存的アナライト濃度の関数として測定する。保持/低減容積部における濃度回復の速度は、センサーと接触する生物学的流体中のアナライト濃度と容易に関連づけることができる。膜の「拡散状況」は、センサー使用中に時おり、予めプログラムされたシーケンスによってチェックすることができ、検知された状況に関連する数値を、その後のセンサー操作のための予めプログラムされたパルスシーケンスアルゴリズムを修正する上での入力として用いることができる。
【0012】
本発明の上記および他の特徴について、図面ならびに本発明の実施においてわかっている最良の形態を参照しながら以下に説明する。
【0013】
発明の説明
本発明の電気化学センサーは、生物学的流体中のアナライト濃度を示す信号を提供するためのものである。このセンサーは、センサーと接触している生物学的流体中のアナライト濃度に比例する量のアナライトを保持するため小さい容積の親水性媒体と接触している電極を有する。この媒体は、それだけで、あるいはセンサー使用の前もしくは後の媒体水和時に、その媒体を通る円滑なアナライト拡散が可能となるように選択する。このセンサーは、前記の容積の親水性媒体用のエンクロージャを有する。そのエンクロージャは、親水性媒体を生物学的流体に曝露することで、媒体中のアナライト濃度が生物学的流体中のアナライト濃度に等しくなるまで生物学的流体中のアナライトが親水性媒体中に拡散するように形成されている。保持容積部へのアナライト質量拡散の速度は、アナライト濃度勾配によって決まる。保持/低減容積部におけるアナライト濃度は、それぞれが親水性媒体の一部を形成しているかその媒体と接触している電子メディエータおよびアナライトに特異的な酸化還元酵素の共働によって、電気化学的に測定することができる。
【0014】
親水性媒体は、生物学的流体の含水率より低い、それと同等、またはそれより高い水濃度レベルを有することができる。従って、酵素成分および電子メディエータ成分などの親水性媒体の成分ならびに親水性ポリマーを、センサー構築において実質的に脱水状態で使用し、使用に先だってあるいは生物学的流体とセンサーとが接触した時に再水和できるようにすることが可能である。センサー機能に関しては、対象となるアナライトが親水性媒体を通って容易に拡散可能であることにより、アナライト保持容積部での実質的に均一なアナライト濃度ならびにセンサーと接触している生物学的流体中のアナライト濃度に密接に相当する濃度が得られるようにすることが重要である。
【0015】
センサーは、親水性媒体のアナライト保持容積部を収納するためのエンクロージャまたは区画を有するように構成する。そのエンクロージャ区画は、センサー使用時に親水性媒体が生物学的流体に曝露されるように形成される。1実施形態においてエンクロージャ区画は、少なくとも部分的に、親水性媒体と接触している第1の面とセンサー使用時に生物学的流体と接触する反対側の面を有するアナライト透過性膜の領域を有する壁によって画定される。生物学的流体の対象アナライト、水その他の膜透過性成分は、媒体中のアナライト濃度が、センサーのアナライト透過性膜構成要素と接触している生物学的流体中のアナライト濃度に釣り合うまで、膜を通って親水性媒体の保持容積部中に拡散する。
【0016】
センサーは、親水性媒体と電気的に接触する電極を提供するように構成される。電極は代表的には、炭素、銀、金、白金、パラジウムなどの導電性元素製であり、代表的には親水性媒体のアナライト保持容積部用の容器またはチャンバー内に延びているか、あるいはその壁の一部を形成している。1実施形態において、電極は白金製であり、保持容積部は電極の上にある空間として画定される。別の実施態様において、電極はグラファイト粉末製とすることができ、保持容積部は粒子内空間および少なくとも1実施形態では覆っているアナライト透過性膜によって画定される。別の実施形態において電極は、参照電極ならびに場合によって存在することがあるその参照電極と同一でも異なっていても良い適宜の補助電極とを有する電極系の一構成要素である。電極系は、その系の電極構成要素とプログラム可能なコントローラとの間を電気的に接続して、前記電極系における電位を制御し、その電位に応答して前記電極の少なくとも1個を通る電流を検知するための導電体要素も有することができる。代表的にはプログラム可能なコントローラは、特にセンサーのコントローラと電極系との間の電気的接続用に適合した導電体を有する別個のユニットとして構成される。そのコントローラは代表的には、1以上のバイオセンサーと可逆的に接続可能であり、データ保存要素およびデータ表示要素を有する携帯ユニットまたは卓上ユニットである。
【0017】
本発明による電気化学分析用センサーはさらに、親水性媒体と接触する酸化還元酵素と電子メディエータを有する。酵素は、対象となるアナライトを酸化または還元する能力に関して選択される。酵素は好ましくは、生物学的流体からアナライト保持容積部中に拡散することができる前記アナライト以外の物質から電子を授受する能力を持たないようにも選択される。好適な酵素の例としては、ピロロキノリンキノン(PQQ)依存グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)(EC 1.1.99.17)またはヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼ(HBDH)(EC 1.1.1.30)などがあるが、これらに限定されるものではない。他の拡散性アナライト用のデヒドロゲナーゼ酵素は当業界で公知であり、対象とするアナライトに応じて切り替えることができる。
【0018】
電子メディエータは、酸化還元酵素と、その酵素および前記メディエータを含むかそれらと接触している媒体と接触するセンサー電極との間の電子伝達を促進することができる非常に多様な電子メディエータのいずれかから選択することができる。好適なメディエータの例としては、塩化オスミウム(ビス−ビピリジル)ピリジニウムなどがあるが、これに限定されるものではない。しかしながら、例として米国特許第5589326号(この特許の開示は参照によって本明細書に明瞭に組み込まれるものとする)に記載のもの(それに限定されるものではない)が挙げられる多くの市販のメディエータが、本発明に従って使用可能であるものと了解されたい。上記の酵素および電子メディエータは電極上のポリマーマトリクス中に捕捉されていることができる。場合により、この酵素と電子メディエータを選択して、センサー使用時のアナライト透過性膜を通るそれらの拡散を最低に抑えることができ、あるいはそれらを前記エンクロージャの壁または保持媒体の親水性ポリマー要素に共有結合させて、センサー使用時の保持媒体容積部から膜を通って生物学的流体に至るそれらの拡散を、防止はできなくとも最小に抑えることができる。
【0019】
代表的には5000ダルトンを超える分子量を有し、多アニオン性、多カチオン性または多水酸基性官能基を有する非常に多様な親水性ポリマーのいずれかを、センサーの親水性媒体要素の一部を形成するキャリアまたはキャリアマトリクスとして用いることができる。そのようなポリマーの例としては、酢酸セルロースなどのセルロース系ポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール類、グアーガムもしくはキサンタンガムなどの合成もしくは天然ガム類、アルギン酸、ポリ(メタ)アクリル酸類ならびにアクリル酸類およびアクリル酸エステル類の共重合体、グリコサミノグリカン類などがあり、これらポリマーが使用可能である。さらに、ピロール-3-酢酸およびピロール-3-カルボン酸などのモノマーから電気的に重合したマトリクスは、親水性マトリクスおよび/または酵素捕捉用マトリクスとして役立ち得る。
【0020】
そのような親水性ポリマーは、単独でまたは組み合わせて使用して、標的アナライトが容易に拡散可能な水和マトリクスまたは水和可能マトリクスを提供することができる。さらに、そのような多官能性親水性ポリマーを用いて、「固定」その他の形で媒体の酵素または電子メディエータ成分の拡散を抑制して、センサー使用時における保持容積部からのそのような成分の損失を低減することができる。
【0021】
当業界で公知のエステル形成もしくはアミド形成カップリング法を用いて、例えばヒドロキシ、カルボキシルまたはアミノ官能基を有する当業界で公知の電子メディエータ、例えばフェロセンカルボン酸をカップリングさせて、本発明のセンサーの製造に用いられる親水性媒体を形成することができる。メディエータ化合物のさらに別の例として、米国特許第5589326号(その開示は、参照によって明瞭に本明細書に組み込まれる)に記載のものなどのオスミウム含有酸化還元メディエータならびに酸化還元可逆性イミダゾール−オスミウム錯体などのポリマーマトリクスに連結することができるメディエータ化合物などがあるが、これらに限定されるものではない。そのような錯体の例としては、大きい媒介反応速度および低い酸化還元電位(Ag/AgClに対して+150 mV)を特徴とするビス(ビピリジル)イミダゾリルハロオスミウム錯体などのオスミウム−ビピリジルコンジュゲートなどがあるが、それに限定されるものではない。オスミウム含有メディエータの別の群には、トリス(ビピリジル)オスミウム錯体で標識した電気化学的に検出可能なコンジュゲートなどがある。酸化還元酵素および電子メディエータは、本来非拡散性のものとするか、あるいは媒体の高分子量成分と化学的に結合させて、生物学的流体と接触した状態でセンサーを使用している時に、酵素および電子メディエータ成分がアナライト透過性膜を通って拡散できないようにすることができる。
【0022】
センサーの酵素成分は代表的には、半透膜を通ってのその成分の拡散損失がセンサー使用の代表的期間にわたって微小となるのに充分な分子量のものである。例えば、そのような酵素は、例えばマルトースもしくはトレハロースなどの親水性モノマーまたは他の酵素安定化親水性組成物の存在下に酵素溶液を凍結乾燥することで形成される酵素凍結乾燥物として、機器構築時に親水性媒体に組み込むことができる。凍結乾燥酵素は、前記センサーの初回使用の前またはその途中での再水和まで、センサーの製造および保管中は脱水状態で前記媒体に保持されるようにすることで、センサーの保管寿命を延長することができる。
【0023】
本発明のセンサーの電子メディエータ成分は、それらを選択あるいは例えば親水性マトリクスもしくは親水性媒体のポリマー成分の共有結合によって変性させて、センサー使用の途中でのアナライト保持容積部媒体からの電子メディエータ成分の拡散損失を防止または低減すべきであるという点以外は重要ではない。先行技術には、金属キレート類ならびにフェロセン、より詳細には親水性媒体の非拡散性成分に容易に共有結合し得るカルボキシフェロセンなどの他の金属錯体のように非常に多様な化合物が豊富にある。
【0024】
本発明のセンサー構築物の膜要素は、例えば酢酸セルロース、ポリウレタンおよびポリカーボネートなどの生体適合性アナライト透過性膜であることができる。バイオセンサー構築での使用に好適な他のポリマー生体適合性膜も当業界では公知であり、そのような当業界で公知のアナライト透過性膜/膜材料を、本発明のセンサー製造において用いることができる。アナライト透過性膜ならびに電子メディエータおよび酸化還元酵素の例は、米国特許第5264105号(その明細書は、参照によって明瞭に本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0025】
本発明の1実施形態において、親水性マトリクスは、電極系の電極の少なくとも一つの表面上に結合されている。親水性マトリクスは、そのマトリクスの非拡散性または低拡散性親水性ポリマー成分に共有結合した電子メディエータを含む。酸化還元酵素も、親水性マトリクスのポリマー成分に結合している。本発明のセンサーは好ましくは、センサーの保持容積部に存在するアナライトに曝露される電子メディエータおよび酸化還元酵素成分をすでに含んでいる。最初に、所定の間隔で、電子メディエータを酸化するのに充分な程度の電位を電極系に間欠的に印加し、電極を通る電流を印加電位持続時間の関数として検知する。印加されるメディエータ酸化電位は、少なくとも、印加電位持続時間の関数として電極を通る電流の変化率を求めることができるだけの充分な時間にわたって維持する。検知電流値を、既知濃度のアナライトについての電流値と関連づける。
【0026】
本発明の別の実施形態において親水性媒体は、ポリマー性の電子メディエータあるいは媒体の非拡散性もしくは低拡散性親水性ポリマー成分に共有結合した電子メディエータを含む。酸化還元酵素は、安定化された凍結乾燥品として含ませるか、あるいはそれ自体を親水性媒体のポリマー成分に共有結合させる。親水性媒体はまた、前記親水性媒体の表面と接触する2官能性架橋剤と反応して、in situで親水性媒体表面上にアナライト透過性膜を形成することができる多官能性成分をも含む。例えば、親水性媒体の多水酸基性ポリマーあるいは2もしくは3水酸基性の、好ましくは高分子量モノマー成分を、例えば気相でジイソシアネートのようなポリイソシアネートと反応させて、親水性媒体表面上にポリマーのフィルムもしくは膜を形成することができる。多官能性架橋剤への多水酸基性媒体表面の曝露の長さによって、膜の透過性を制御することができる。例えば、1,4-ベンゼンジイソシアネートを、チャンバー中で気化させることができる。曝露表面を有し、好ましくは電子メディエータおよび酸化還元酵素成分をすでに含む親水性媒体を含むセンサー構築物を、親水性媒体表面上に生体適合性膜を形成できるだけの充分な時間にわたってチャンバー中に入れて、例えば簡単な平面状非導電性基材などの他のセンサー構成要素とともに、センサーのアナライト保持容積部用のエンクロージャを画定する。
【0027】
図1について説明すると、本発明の1実施形態において、不活性基材14上のフィルム金電極12を利用するセンサー10が提供される。断面図では(図2参照)、検知部分16には、不活性基材14の表面13上の金電極12、スペーサー層18および小孔を有するか孔を持たない拡散制限膜20がある。膜20は別個のシートとして形成して、金電極12および不活性基材14上にあるスペーサー層18に乗せて、親水性媒体24で充填された低減容積部22用のエンクロージャを画定することができる。酵素およびメディエータは、例えば金電極12上の親水性マトリクス中に捕捉することによって固定化してもよい。さらに、酵素およびメディエータはエンクロージャ22の壁26または覆っている膜20への共有結合によって固定化してもよいし、あるいはそのような成分が自由拡散性であり、かつ最小の膜透過性を有するように選択することが可能であることが想到される。拡散制限膜20は、当業界で公知のアナライト透過性膜から選択することができ、スペーサー層18の表面28に付着させて、アナライト保持/低減容積部用のエンクロージャ22を完成させることができる。別法として、多官能性親水性ポリマーおよび/または酵素/メディエータ試薬層のモノマー成分の架橋によって、アナライト透過性膜をin situで形成することができる。本開示を通じて、同様の参照番号は同様の構成要素を示すのに用いられるものと了解されたい。
【0028】
図3について説明すると、本発明によるセンサー110が提供される。センサー110には、炭素/グラファイト粒子(不図示)間の粒子間空間によって低減容積部が規定される多孔性/粒子状炭素層で形成された電極がある。炭素−酵素−メディエータ試薬層122は、例えば1以上の存在しても良い非電子媒介性多官能性ポリマーと組み合わせて、酸化還元酵素および非拡散性もしくは低拡散性(例:ポリマー性)電気メディエータを含む炭素/グラファイト懸濁液をスクリーン印刷することで形成することができる。その懸濁液は代表的には、不活性基材上の導電体要素(不図示)上に堆積させる。拡散制限アナライト透過性膜20は、上記の方法と同様にして、粒子内多官能性ポリマーマトリクスを有する露出したプリント電極をポリマー溶液でコーティングすることにより、炭素電極または膜20の表面123全体に施されて封止された予備成形ポリマーシートとして設けることができる。バイオセンサーのコーティング用のポリマー膜の例としては、例えば国際特許出願WO 98/17995を参照することができるが、それに限定されるものではない。
【0029】
図1と同様である図4について説明すると、本発明のセンサー210は、グルコース拡散を高めるための大きい孔223を有するように形成された拡散制限膜220を有する。メディエータおよび酵素成分は好ましくは、親水性媒体24の非拡散性ポリマー要素への共有結合または保持容積部用のセンサーエンクロージャ22の表面26への共有結合によって、電極12上の親水性マトリクスに捕捉することで固定化する。
【0030】
図5について説明すると、本発明における別の実施形態が提供される。センサー310は、親水性媒体24を覆う膜320がそれ自体非透過性であるという点以外、図1および4に示したものと同様である。膜320には、グルコースその他のアナライトの保持/低減容積部への拡散を可能とする周辺多孔部が設けられている。
【0031】
本発明の生化学センサーは、所期の用途に合わせたいかなる形態でも構築可能である。従って、検査室での繰り返し使用向けのセンサーは、一方の端に取り付けられたセンサー要素自体ならびに検知要素の電極構成要素をプログラム可能なセンサーコントローラへのプローブセンサーの電気的取り付け箇所に接続する導電体とを有する長いプローブの形で構築することができる。別形態として本発明の電気化学センサーは、当業界で公知の微細製造法を用いて、留置センサー用途用の箇所に埋込または注入することができる針のようなセンサーを得ることで構築することができる。
【0032】
本発明の電気化学センサーは、生物学的流体中のアナライト濃度をモニタリングするのに利用することができる。その方法は、生物学的流体をセンサーと接触させる段階、ならびに所定の間隔で間欠的に、電子メディエータを酸化できるだけの電位を電極に印加する段階を有する。そして電極を通る電流を、印加電位持続時間の関数として検知する。印加されるメディエータ酸化電位は、少なくとも前記電極を通る電流の経時的変化率を求めることができるだけの期間にわたって維持する。次に、検知された電流を、保持/検出媒体中の既知濃度の前記アナライトに対する電流と関連づける。別法として前記センサーは、少なくとも作用電極および参照電極ならびに場合によっては、参照電極と同一であっても良い補助電極を有するように構築することが可能である。所定の間隔で、作用電極と補助電極の間に、所定の電流レベルが得られるだけの電位を印加する。そして、その電流レベルを得るのに必要な作用電極と参照電極との間の電位差を測定し、前記電極を通る前記電流を維持するのに必要な電位変化率を求めることができる期間にわたって維持する。次に電位測定値を、生物学的流体中の既知濃度のアナライトについて記録される電位測定値と関連づける。
【0033】
印加電位、電位パルス持続時間および電位パルス間の間隔を、アナライト測定用のセンサーと連動して使用されるプログラム式コントローラに入力する。本発明の1実施形態において間欠印加電位間の間隔は、保持容積部中のアナライト濃度が、アナライト透過性膜と接触している生物学的流体中の濃度と平衡に達するのに要する時間より短い。別の実施形態では、その間隔を一連の印加電位について漸増させ、生物学的流体中のアナライト濃度を、保持容積部中のアナライト濃度における上昇率の関数として測定する。印加電位パルス間の間隔をすでに得られている測定値に基づいて変更して、酸化還元酵素および電子メディエータ成分の損失または劣化および/またはアナライト透過性膜または保持容積部媒体の拡散特性における変化によって生じるセンサー性能変動に対する調節を行うことができる。別法として、検知されたセンサー性能状況についてすでに得られている測定値に基づいて、印加電位パルスの持続時間を変更する。さらに別のセンサー操作の実施形態では、測定間の間隔を、保持容積部でのアナライト濃度を生物学的流体中の濃度と平衡状態とするのに要する時間と実質的に等しくするか、それより長くする。
【0034】
図6−9は、メディエータの酸化が起こらない電位(E0)からメディエータ酸化電位(E1)を経て、メディエータの還元が起こる電位(E-1)まで変化する期間にわたって、電極の電位を制御するサンプル測定アルゴリズムをグラフで示したものである。何らかの所定の状況に適用される電位プロトコールは、センサーの状況、センサーの形ならびに電子メディエータおよび酸化還元酵素の性質によって決まる。センサー操作のプロトコールは、熟練ユーザーによる実験測定および観察によって至適化することができる。
【0035】
具体的には図6には、持続時間の異なる2種類の酸化電位パルスをセンサーに印加し、還元電位による回復期間が散在しているパルスシーケンスを示してある。第1のパルスからの電流プロファイルを第2のものと比較することで、基質の酵素ターンオーバーの速度およびセンサー内での電子拡散速度に関する情報を得ることができる。酸化電位印加の間で還元電位を印加することで、次の酸化電位印加の前に、全てのメディエータがそれの初期状態に確実に戻るようにする。
【0036】
図7には、パルス間の間隔の長さを変えるシーケンスを示してある。第2のパルスから観察される電流を第1のパルスからのものと比較することで、センサーの回復時間に関する情報を得ることができる。回復時間からは、アナライト濃度に関する情報だけでなく、親水性マトリクスへの拡散に関する情報も得られる。定電位パルス間におけるセンサーの休止電位の測定によっても、センサー回復に関する情報が得られる。
【0037】
図8−9には、パルス間隔における変化とパルス幅における変化とを組み合わせる測定プロトコールを示してある。コントローラが、電流検出測定間隔および回復間隔の多様なシーケンスおよび持続時間から選択を行って、アナライト濃度を測定するだけでなく、酵素活性に関するセンサーの条件、センサー内での基質およびメディエータの拡散ならびにセンサーへの基質の拡散を調べることもできる。
【0038】
本発明の電気化学センサーで用いられるコントローラの性質および構成は、そのコントローラをプログラムして、センサーの電極もしくは電極系に適切な電位パルスプロファイルを加え、適時に電位の関数として電流を検知できるのであれば、あまり重要ではない。電流データから低減容積部および膜の拡散特性を計算可能なプロトコールをコントローラが実行する、別のセンサー状況評価プロトコールを実行することができる。コントローラは、計算された拡散時間および測定された基質濃度に基づいて、測定間隔およびパルス幅を調節するようプログラムすることができる。クロノアンペロメトリーおよびクロノクーロメトリー(chronocolometry)の両方を用いて、センサー状況および基質濃度を測定することができる。理想的にはコントローラは、電極に対して還元電位を印加してメディエータを還元することで、測定間のアナライト消費を低減できるものでもなければならない。
【0039】
実施例1
膜20を持たない以外、図1−2のセンサー10と同様にして、センサーを形成する。酵素および電子メディエータが、電極上のポリマーマトリクスに捕捉される。このポリマーマトリクスは、ピロールおよびピロール−メディエータ誘導体の電気重合によって製造した。この方法によって、電極上のポリマーマトリクスに酵素を捕捉し、メディエータ誘導体化ピロールをポリマー中に組み込むことで、センサー内の電子伝達のための固定化メディエータを得た。
【0040】
この方法によるセンサーの製造には、白金ディスク電極が好適であった。マトリクスでの共重合に好適なメディエータは、下記の反応手順によって製造した。
【0041】
【化1】
Figure 0003655587
ピロール変性塩化オスミウム(ビスビピリジル)ピリジニウムの合成
ピロール変性塩化オスミウム(ビスビピリジル)ピリジニウムを、下記の反応手順によって製造した。
【0042】
【化2】
Figure 0003655587
白金電極のクリーニング手順
粗さを徐々に下げながら(3μm、1μm、0.1μm)Al2O3ペーストを研摩布に塗り、それを用いて白金ディスク電極を磨き、蒸留水で洗浄した。次に電極を、超音波浴で、最初に10 M NaOH中、次に5 M H2SO4中でそれぞれ10分間クリーニングした。
【0043】
電極について、酸素を含まない0.5 M H2SO4中での下記の電気化学的サイクルを行った。
【0044】
1.走査:Hg/HgSO4に対して-610から+1000 mV(100 mV/s、10μA);
2.走査:Hg/HgSO4に対して-810から+1600 mV(100 mV/s、10μA);
3.走査:Hg/HgSO4に対して-610から+1000 mV(100 mV/s、10μA)。
【0045】
周期的ボルタグラム(voltagram)が清浄な白金表面を示し安定するまで、第3の走査を繰り返した。
【0046】
最後の段階は、-210 mVでの5分間にわたる分極であった。
【0047】
白金化
さらに、脱気電気化学セル中でアルゴン下に、酸素を含まない2 mM H2PtCl6溶液4 mLを調製した。走査速度10 mV/sでAg/AgClに対して+500から-400 mVのボルタンメトリーサイクルを行った。次に電極を、アルゴン下に酸素を含まない蒸留水で洗浄し、用時までアルゴン下で保管した。
【0048】
ピロール/メディエータの重合
以下のようにピロールフィルムを重合して、活性塩化オスミウム(ビス−ビピリジル)ピリジニウムを含有させた。
【0049】
2 mMピロール、8 mM (9)および25 mM過塩素酸テトラメチルアンモニウム(電解質として)のアセトニトリル:水1:1混合液中混合物を用いて、共重合を行った。0 Vで5秒間/1.5 Vで1秒間という電位/時間で100パルスを行った。酸素非存在下で重合を行った。
【0050】
ピロール -3- 酢酸/ GDH の重合
50 mMピロール-3-酢酸、0.05 mM PQQおよび50 mM KClの0.1 M HEPES緩衝液溶液に、5 mg/mLのGDHを溶かした。30分間インキュベーションして、アポ酵素の再生を行った後、0 Vで5秒間/1.2 Vで1秒間の20パルスからなる電位パルスプロファイルで溶液の重合を行った。
【0051】
ピロール -3- カルボン酸/ GDH の重合
50 mMピロール-3-カルボン酸および50 mM KClの0.1 M Hepes緩衝液溶液に、5 mg/mLのsGDHを溶かした。0 Vで5秒間/1.2 Vで1秒間、あるいは0 Vで5秒間/1.4 Vで1秒間、あるいは0 Vで5秒間/1.6 Vで1秒間の20パルスからなる電位パルスプロファイルで溶液の重合を行った。電位がセンサー性能にかなり影響し、ポリピロールフィルム特性への依存性が示された。
【0052】
ピロール -3- 酢酸/メディエータ/ GDH の重合
50 mMピロール-3-酢酸、10 mMオスミウム変性ピロール誘導体10、0.05 mM PQQおよび50 mM KClの0.1 M HEPES緩衝液溶液に、5 mg/mLのsGDHを溶かした。0 Vで5秒間/1.4 Vで1秒間の20パルスからなる電位パルスプロファイルで溶液の重合を行った。
【0053】
ピロール -3- カルボン酸/メディエータ/ GDH の重合
50 mMピロール-3-酢酸、10 mMオスミウム変性ピロール誘導体10、0.05 mM PQQおよび50 mM KClの0.1 M HEPES緩衝液溶液に、5 mg/mLのsGDHを溶かした。0 Vで5秒間/1.4 Vで1秒間の20パルスからなる電位パルスプロファイルで溶液の重合を行った。
【0054】
酵素電極を脱イオン水で洗浄した。しかしながら、酵素電極を緩衝液または必要に応じて3 M KCl溶液で洗浄することにより、吸着したGDHを除去し、その後pH 7の0.1 Mリン酸緩衝液中で保管することができることは明らかである。電極を終夜保管する場合、それは4℃に維持するか、さもなければ室温に維持する。
【0055】
センサーのグルコースに対する応答の評価
参照電極および対向電極とともに、撹拌PBS(リン酸緩衝生理食塩水)緩衝液中にセンサーを入れることで、センサーの応答を測定した。固定化メディエータを酸化できるだけの電位(E)を印加し、電流(I)が低い値で安定するまでの時間(t)にわたって溶液を撹拌した(図11参照)。図12において矢印で示したように、グルコースの1 M PBS溶液の小分けサンプルを段階的にPBS緩衝液に加えて、撹拌PBS緩衝液溶液中のグルコース濃度を上昇させ、応答曲線の平坦領域で電流(I)を測定した。
【0056】
次に図13について説明すると、ピロール-3-酢酸/メディエータ/GDHセンサーおよびピロール-3-カルボン酸/メディエータ/GDHセンサーについて応答を測定した。得られた応答は、ポリピロールフィルムでの固定化メディエータによる電子伝達が良好であることを示している。
【0057】
実施例2
センサー410は、平坦なポリマー基材14上に堆積させた導電体12, 15および試薬からなる。導電体12, 15を封入するための材料が提供され、試薬含有検知領域16を覆う半透性生体適合性層を形成する試薬が提供される(図10参照)。
【0058】
方法および材料
基材:金電極および導電路を有する厚さ0.005インチ(0.127 mm)のポリイミド(デュポン社(E. I. DuPont de Nemours, Wilmington, Delaware)が市販しているカプトン(Kapton;登録商標)ポリイミドフィルムおよび日本の宇部興産が市販しているウピレックス(Upilex;登録商標)ポリイミドフィルムなど)。
【0059】
処理:材料を水、アセトンおよび塩化メチレンで洗浄し、180℃で20時間乾燥する。材料を真空チャンバーに入れ、50オングストロームのクロムと次に500オングストロームの金で金属被覆する。金属被覆した材料を取り出す。積層フォトレジストを施す。レジストを露光し、塩水溶液で現像する。次に、金属エッチング液(代表的にはHNO3_HCl)中で金属パターンを現像する。パターニングした材料を水で洗浄し、残ったフォトマスクを溶媒(代表的にはN-メチルピロリドン(NMP))で除去する。光画定可能な(photodefinable)厚さ2μmのポリイミド層をスピンコーターによって塗布し、80℃で20分間焼成することで固化させる。それを露光し、次に溶媒(NMP)で現像する。次にそれを200℃で30分間焼成して、残ったポリマーを硬化させる。
【0060】
参照/対向電極:アルギン酸塩などのポリマー性懸濁剤を含む、表面が部分的に塩化銀に変換された銀粒子の有機溶媒(すなわちシクロヘキサノン)懸濁液からなる銀/塩化銀インク製剤。
【0061】
処理:このインク混合物をポリイミドの開口に塗布し、80℃で30分間乾燥して、溶媒を全て除去する。
【0062】
センサー領域:ポリイミドから金電極への開口を、下記の試薬からなる多層試薬領域で覆う。
【0063】
活性酵素層:多水酸基合成、天然または半合成ポリマーを含有していても良い、グルコースデヒドロゲナーゼ/ピロロキノリンキノン(PQQ)(Enzyme Commission No. 1.1.99.17)ならびにビス(ビピリジル)クロロ−オスミウムを含むポリビニルイミダゾールからなる酸化還元ポリマーのリン酸緩衝液溶液を一つの電極の開口に塗布し、乾燥させる。ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルの水系緩衝液(すなわち、10 mM NaPO4、150 mM NaCl)溶液をその領域に塗布し、室温で終夜乾燥させる。次に、電極を生理食塩水で洗浄し、乾燥させる。
【0064】
生体適合性層:構造物全体を真空チャンバーに入れる。低圧蒸気を導入し、RF場をかけることでジグライムの解離と重合を起こすことによって、ジグライムのプラズマをチャンバー内で発生させる。5分後、ジグライム添加を停止し、プラズマをさらに5分間続ける。次に、真空を解除して、シートをチャンバーから取り出す。
【0065】
後処理:センサー410をシートから打ち抜いて取り、検知領域を保護し挿入機器として役立つ小さいポリカーボネートホルダーに取り付ける。組み立てたセンサーをポリエチレン袋に入れて密閉する。袋に入ったセンサーを放射線滅菌する。滅菌済みセンサー10個を、蓋に乾燥剤が入っている比較的大きいプラスチック製の箱に入れる。箱を閉じ、最終消費者包装となるボール紙製外装に入れる。
【0066】
本発明による使用に好適なこのセンサー作製方法は、センサーフィルム内で活性関係にある(in active relationship)酵素およびメディエータの固定化のためのいわゆる「ワイヤード(wired)酵素」法を利用するものである。GDH/PQQは、対象アナライト以外の内因性基質とは実質的に反応しない。それにより、電極がメディエータを再生してさらなる活動が可能とならない限り、センサーを失活状態、すなわち「オフ」状態に維持することができる。この方法によって製造されるセンサーは、グルコースに対する非常に高い感度および非常に高い電流密度を示す。
【0067】
以上、好ましい実施形態を参照しながら、本発明について詳細に説明したが、特許請求の範囲で記載および定義される本発明の範囲および精神には、各種変更および修正が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明によるセンサーの平面図である。
【図2】 図2は、図1の2-2線でのセンサーの断面図である。
【図3】 図3は、図2と同様であるが、電極が異なる構成のものである断面図である。
【図4】 図4は、径の大きい孔を有する拡散制限膜を有する本発明によるセンサーの断面図を示す図2と同様の図である。
【図5】 図5は、保持容積部への拡散が、他の部分は非透過性の膜構成要素の周囲にある孔を介したものである本発明のセンサー実施形態の断面図である。
【図6】 図6は、持続時間が異なる2種類の酸化電位パルスをセンサーに印加するパルスシーケンスであって、還元電位による回復期間が散在しているもののグラフである。
【図7】 図7は、パルス間の間隔の持続時間を変化させたパルスシーケンスのグラフである。
【図8】 図8は、パルス間隔における変化とパルス幅における変化を組み合わせた測定プロトコールのグラフである。
【図9】 図9は、パルス間隔における変化とパルス幅における変化を組み合わせた測定プロトコールのグラフである。
【図10】 図10は図1と同様であって、本発明によるセンサーの平面図である。
【図11】 図11は、ピロール-3-酢酸/メディエータ/グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)センサーにおいて測定される応答を示すグラフである。
【図12】 図12は、ピロール-3-カルボン酸/メディエータ/GDHセンサーにおいて測定される応答を示すグラフである。
【図13】 図13は、ピロール-3-酢酸/メディエータ/GDHセンサーおよびピロール-3-カルボン酸/メディエータ/GDHセンサーにおいて測定される応答を示すグラフである。

Claims (9)

  1. センサーを利用して生物学的流体中のアナライト濃度をモニタリングする方法において、
    センサーと接触する生物学的流体中のアナライトの濃度に比例する量のアナライトを保持するように形成された親水性媒体の保持容積部、前記親水性媒体と接触する第1の面を有するアナライト透過性膜(20、220)の領域を含む壁によって少なくとも一部が画定される、前記アナライト保持容積部用のエンクロージャ、前記親水性媒体と接触する電極、前記媒体と接触し、生物学的流体の前記アナライト以外の成分と電子の授受を行うことが実質的にできない酸化還元酵素、および前記酵素と前記電極の間の電子の伝達を容易にするための電子伝達メディエータを有しており、前記保持容積部からの前記酸化還元酵素および前記電子伝達メディエータの拡散が最小に抑えられているセンサーを提供
    前記生物学的流体を前記センサーと接触させ、ある間隔で間欠的に、前記電子メディエータを酸化するのに充分な電位を前記電極に印加し、少なくとも、前記電極を流れる電流の経時的変化率を測定するのに充分な時間にわたって前記印加されたメディエータ酸化電位を維持し、前記電極を流れる電流を印加した電位の持続時間の関数として検知
    前記電流を、前記保持媒体中の既知濃度の前記アナライトに対する電流と関連づける
    段階を有することを特徴とする方法。
  2. 前記間欠的に印加した電位間の間隔が、前記保持容積部中の前記アナライトの濃度が、前記エンクロージャと接触している生物学的流体中の濃度と平衡に達するのに要する時間より短い、請求項1に記載の方法。
  3. 前記間隔を一連の印加電位に対して漸増させ、前記生物学的流体中の前記アナライトの濃度を、前記保持容積部中のアナライト濃度の上昇率の関数として求める、請求項1に記載の方法。
  4. 印加電位パルス間の間隔を、前の測定結果に基づいて変更する、請求項3に記載の方法。
  5. 前記印加電位パルスの持続時間を、前の測定結果に基づいて変更する、請求項3に記載の方法。
  6. 前記間欠的に印加した電位間の間隔が、前記保持容積部中の前記アナライト濃度が前記生物学的流体中の濃度と平衡に達するのに要する時間と実質的に同等またはそれより長い、請求項1に記載の方法。
  7. センサーを利用して生物学的流体中のアナライト濃度をモニタリングする方法において、
    センサーと接触する生物学的流体中のアナライトの濃度に比例する量のアナライトを保持するように形成された親水性媒体の保持容積部、前記親水性媒体と接触する第1の面を有するアナライト透過性膜(20、220)の領域を含む壁によって少なくとも一部が画定される、前記アナライト保持容積部用のエンクロージャ、前記親水性媒体と接触する電極、前記媒体と接触し、生物学的流体の前記アナライト以外の成分と電子の授受を行うことが実質的にできない酸化還元酵素、および前記酵素と前記電極の間の電子の伝達を容易にするための電子伝達メディエータを有しており、前記保持容積部からの前記酸化還元酵素および前記電子伝達メディエータの拡散が最小に抑えられており、さらに少なくとも1つの参照電極を有するセンサーを提供し、
    前記生物学的流体を前記センサーと接触させ、作用電極を所定の間隔で間欠的に所定レベルの電流が流れるようにし、前記電流レベルを、少なくとも、前記電極を流れる前記電流を経時的に維持するのに必要な電位変化率を決定するのに充分な時間にわたって維持し、前記作用電極と前記参照電極の間の電位差を測定し、
    前記電位を、前記生物学的流体中の既知濃度の前記アナライトに対する電位と関連づける段階を有することを特徴とする方法。
  8. 前記センサーが少なくとも1つの補助電極をさらに有しており、前記作用電極と前記補助電極の間に、所定の間隔で間欠的に所定レベルの電流が流れるようにし、前記電流レベルを、少なくとも、前記電極を流れる前記電流を経時的に維持するのに 必要な電位変化率を決定するのに充分な時間にわたって維持し、前記作用電極と前記参照電極の間の電位差を測定し、前記電位を、前記生物学的流体中の既知濃度の前記アナライトに対する電位と関連づける段階を有することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
  9. 生物学的流体中のアナライトレベルの電気化学的分析で使用されるセンサーにおいて、
    前記センサーと接触する生物学的流体中のアナライトの濃度に比例する量のアナライトを親水性媒体中に保持するように形成された親水性媒体の保持容積部、
    前記親水性媒体と接触する第1の面を有するアナライト透過性膜(20、220)の領域を含む壁によって少なくとも一部が画定される、前記アナライト保持容積部用のエンクロージャ、
    前記親水性媒体と接触する電極、ならびに
    前記電極上にあって、ポリ(ピロール−3−酢酸)、電子メディエータおよび酸化還元酵素を含む親水性マトリクス
    を有することを特徴とするセンサー。
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