JP3654229B2 - 閃光放電ランプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は閃光放電ランプに関し、更に詳しくはセラミックスよりなる発光管を有する閃光放電ランプに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、殺菌処理、トナーの定着処理、接着剤の硬化処理、半導体製造プロセスにおける急速熱処理(Rapid Thermal Processing:RTP)などにおいて、放射強度の高い光が高い効率で得られることから、閃光放電ランプが好適に利用されている。かかる閃光放電ランプは、例えば直管状の発光管の両端部に、一対の放電電極が互いに対向するよう配置されると共に、当該発光管における放電空間内に適宜の放電用ガス例えば希ガスが封入されて構成されている。
このような閃光放電ランプにおいては、発光に要する極めて短い時間内に、放電空間内の温度が例えば1000℃という高温に達する。従って、閃光放電ランプを構成する発光管においては、優れた耐熱性を有し、かつ、比較的高い耐熱衝撃性を有するものであることが要求される。このような事情から、閃光放電ランプを構成する発光管としては、従来、石英ガラスよりなるものが用いられている。
【0003】
而して、近年、より一層高い放射強度を有する光を得ることができる閃光放電ランプが要求されており、このような光を得るためには、例えばパルス幅(パルスの尖高値の1/2の高さにおける時間幅)が400μm以下の高負荷の点灯条件で閃光放電ランプを作動させることが必要である。
然るに、石英ガラスよりなる発光管を有する閃光放電ランプを高負荷の点灯条件で作動させた場合には、発光管を形成する石英ガラスが放電プラズマの作用を受けることにより、発光管の内面には、SiO2 以外のケイ素酸化物(SiOx )が生成するため、発光管が例えば黄色に着色して失透し、これに加えて、特に陰極を構成する電極物質が蒸発し、放電電極の消耗が著しくなり、これにより、閃光放電ランプから放射される光の出力が早期に低下し、その結果、使用寿命が極めて短いものとなる。
このような理由により、石英ガラスよりなる発光管を有する閃光放電ランプにおいては、高負荷の点灯条件で作動させた場合に長い使用寿命が得られない。
【0004】
一方、発光管が石英ガラス以外の光透過性材料である透光性セラミックスによって形成された閃光放電ランプが知られている。例えば、「ILC Technical Bulletin No.3、1965」には、発光管がサファイアによって形成されてなる閃光放電ランプが記載されており、また、実開昭63−60265号公報には、発光管が酸化アルミニウムにより形成されてなる閃光放電ランプが記載されている。
【0005】
このような閃光放電ランプによれば、発光管を形成するサファイアまたは酸化アルミニウムなどの透光性セラミックスが、石英ガラスに比較して、放電プラズマに対して優れた耐性を有するため、高負荷の点灯条件で点灯させた場合であっても、発光管が劣化することが抑制され、しかも、電極の消耗が少ない、とされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、透光性セラミックスよりなる発光管を有する閃光放電ランプにおいては、以下のような理由により、高負荷の点灯条件で点灯させると長い使用寿命が得られないことが判明した。
透光性セラミックスは、一般に、石英ガラスに比較して熱膨張率が大きいものである。具体的には、石英ガラスの平均線熱膨張率が5.6×10-7〔K-1〕であるのに対し、透光性アルミナ多結晶体の平均線熱膨張率が7.0×10-6〔K-1〕、透光性イットリウム−アルミニウム−ガーネット多結晶体の平均線熱膨張率が7.2×10-6〔K-1〕、透光性イットリア多結晶体の平均線熱膨張率が7.8×10-6〔K-1〕である。
従って、透光性セラミックスよりなる発光管を有する閃光放電ランプを点灯させたときには、発光管の内面部分例えば内面から深さ20μmまでの間の部分において、その熱膨張によって当該発光管の面方向に相当に大きい応力が生じる。そして、このような熱膨張によって生じる応力が、発光管に瞬時に加わることにより、或いは当該閃光放電ランプを点灯する度に発光管に繰り返し加わることにより、発光管が早期に破損するため、結局、長い使用寿命が得られない。
【0007】
また、セラミックスは、一般に脆いものであって、その耐衝撃性が石英ガラスより低いものであるため、仮に、発光管を形成する透光性セラミックスとして、平均線熱膨張率が石英ガラスの平均線熱膨張率と同程度のものを使用した場合であっても、当該発光管は熱膨張による応力によって早期に破損する恐れがある。
【0008】
更に、高い耐熱衝撃性を有する発光管を得るために、当該発光管の径を大きくすることも考えられるが、このような手段では、閃光放電ランプ全体の寸法が相当に大きいものとなり、ランプの小型化が要請されている現在においては、実用的ではない。
【0009】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、高負荷の点灯条件で点灯させる場合であっても、発光管が早期に破損したり、放射される光の出力が早期に低下したりすることがなく、従って、長い使用寿命が得られる閃光放電ランプを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の閃光放電ランプは、透光性セラミックスにより形成された発光管を備えてなる閃光放電ランプにおいて、
前記発光管の内面には、熱膨張緩衝用凹所が形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の閃光放電ランプにおいては、前記発光管は、アルミナ多結晶体、イットリア多結晶体、イットリウム−アルミニウム−ガーネット多結晶体、マグネシア多結晶体、イットリウム−アルミニウム−ガーネット単結晶体およびサファイアよりなる単結晶体からなる群から選ばれた透光性セラミックスにより形成されていることが好ましい。
また、前記発光管は、結晶粒の平均粒径が10〜300μmの透光性アルミナ多結晶体よりなり、当該発光管の内面には、当該透光性アルミナ多結晶体における粒界に沿って熱膨張緩衝用凹所が形成されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明の閃光放電ランプにおいては、前記熱膨張緩衝用凹所は、発光管の内面が化学エッチングされることによって形成されていることが好ましい。
また、前記熱膨張緩衝用凹所は、発光管における有効発光領域全体にわたって形成されていることが好ましい。
また、本発明の閃光放電ランプは、パルス幅が400μs以下の点灯条件で点灯される閃光放電ランプとして好適である。
【0013】
【作用】
上記のような構成の閃光放電ランプによれば、発光管の内面に熱膨張緩衝用凹所が形成されていることにより、当該閃光放電ランプを点灯させたときに、発光管の内面部分において面方向に大きな熱膨張が生じても、当該発光管にその熱膨張による応力が生じることが回避または抑制される。そのため、当該閃光放電ランプを高負荷の点灯条件で点灯させる場合であっても、発光管が早期に破損することが防止される。
また、発光管が放電プラズマに対して優れた耐性を有する透光性セラミックスにより形成されていることにより、高負荷の点灯条件で点灯させた場合であっても、発光管が劣化することが抑制されてそれ自体の光透過性が低下することがなく、しかも、放電電極の消耗が抑制される結果、放射される光の出力が早期に低下することが防止される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の閃光放電ランプについて詳細に説明する。
図1は、本発明の閃光放電ランプの一例における構成を示す説明用縦断面図であり、図2は、図1に示す閃光放電ランプにおける発光管の説明用横断面図である。
この閃光放電ランプは、透光性セラミックスよりなる直管状の発光管10を有し、この発光管10内における両端の各々には、当該発光管10と同質の材料よりなる略円柱状の封止部材20が挿入されている。具体的には、封止部材20は、発光管10の内径より小さい径を有する胴部21の一端に、当該発光管10の内径より大きい径を有する鍔部22が形成されてなり、当該封止部材20の胴部21が発光管10内に挿入されている。そして、発光管10および封止部材20が、例えばAl2 O3 −CaO系或いはAl2 O3 −希土類系の封着ガラスよりなる封着材25によって気密に封着されている。
封止部材20の各々には、電極棒35が発光管10の軸方向に沿って貫通して伸びるよう設けられており、電極棒35の各々の先端には、電極30が互いに対向するよう配置されている。
また、発光管10内における放電空間Sは、例えば希ガスが4〜6MPaの封入圧で封入されている。
【0015】
発光管10を形成する透光性セラミックスとしては、アルミナ多結晶体、イットリア多結晶体、イットリウム−アルミニウム−ガーネット多結晶体、マグネシア多結晶体、サファイアよりなる単結晶体、イットリウム−アルミニウム−ガーネット単結晶体、イットリア多結晶体などを用いることができ、これらの中では、アルミナ多結晶体、イットリア多結晶体、イットリウム−アルミニウム−ガーネット多結晶体、マグネシア多結晶体、イットリウム−アルミニウム−ガーネット単結晶体、サファイアよりなる単結晶体が好ましく、特に、アルミナ多結晶体が好ましい。
【0016】
発光管10の内面11には、図2に示すように、例えは溝状の熱膨張緩衝用凹所15が形成されている。この熱膨張緩衝用凹所15は、発光管10の有効発光領域全体にわたって形成されていることが好ましく、これにより、当該閃光放電ランプを点灯させたときに、当該発光管10にその熱膨張による応力が生じることが確実に回避または抑制される。
また、熱膨張緩衝用凹所15は、発光管10の軸方向に沿って連続してまたは不連続で伸びるよう形成されていてもよく、或いは、無秩序な状態で形成されていてもよい。
【0017】
発光管10の内面11に形成された熱膨張緩衝用凹所15の深さは、1〜30μm、特に5〜15μmであることが好ましい。熱膨張緩衝用凹所15の深さが1μm未満である場合には、当該閃光放電ランプを点灯した際に、当該発光管10の熱膨張によって生ずる応力が十分に抑制されず、当該発光管10が早期に破損して使用寿命が短くなることがある。一方、熱膨張緩衝用凹所15の深さが30μmを超える場合には、発光管10の機械的強度が低いものとなることがある。
ここで、熱膨張緩衝用凹所15の深さとは、以下のようにして測定されるものをいう。
図3に示すように、発光管10を適宜の方向に切断した断面において、発光管10の内面11における粗さ曲線f(x)を求め、この粗さ曲線f(x)からその平均線(図において一点鎖線Xで示す。)の方向に基準長さLだけ抜きとり、この抜き取り部分において、平均線より下方に位置する谷Aの底部[A1 ,A2 ,・・・,An-1 ]から平均線までの最短距離(平均線からの深さ)[a1 ,a2 ,・・・,an-1 ]を測定し、それらの和を算術平均したもの[(a1 +a2 +・・・+an-1 )/(n−1)]を、熱膨張緩衝用凹所15の深さとする。
以上において、平均線は、粗さ曲線f(x)を基準長さLの抜き取り部分において積分し、これを基準長さLで割った値(下記式(1)で示される値)の高さレベルを表す線である。
また、発光管10の内面11における粗さ曲線、平均線、谷の底部における平均線からの深さは、発光管10の断面を写真撮影し、この写真を解析することにより求めることができる。
【0018】
【数1】
【0019】
また、発光管10の内面11における熱膨張緩衝用凹所15の深さをa(μm)とし、発光管10の内面11における凹凸平均間隔をb(μm)としたとき、比(b/a)の値が0.1〜100、特に1〜20であることが好ましい。この比(b/a)の値が0.1未満である場合には、当該発光管10の機械的強度が著しく低下することがある。一方、この比(b/a)の値が100を超える場合には、当該発光管10に加わる熱膨張による応力を抑制する効果が低下することがある。
ここで、凹凸平均間隔とは、JIS B0601の規格に準拠して測定されるものをいい、図3を参照してこれを具体的に説明すると、発光管10の内面11における粗さ曲線からその平均線Xの方向に基準長さLだけ抜きとり、この抜き取り部分において一つの山Bおよびそれに隣り合う一つの谷Aに対応する平均線長さ[b1 ,b2 ,・・・,bn-1 ,bn ]の和を求め、この多数の凹凸の間隔を算術平均したもの[(b1 +b2 +・・・+bn-1 +bn )/n]である。
【0020】
発光管10の内面11に熱膨張緩衝用凹所15を形成する方法としては、化学エッチング処理による方法、ダイス等によって切削、研磨する機械加工による方法を利用することができるが、所要の熱膨張緩衝用凹所15を比較的容易に形成することができる点で、化学エッチング処理による方法を利用することが好ましい。
【0021】
化学エッチング処理によって熱膨張緩衝用凹所15を形成する方法を具体的に説明すると、先ず、図4(イ)に示すように、発光管10の内面11に、熱膨張緩衝用凹所15を形成すべき部分が露出するようマスク40を形成する。次いで、発光管10の内面11に対して、適宜のエッチング剤によって化学エッチング処理を施して熱膨張緩衝用凹所15となる部分を除去することにより、図4(ロ)に示すように、発光管10の内面11に熱膨張緩衝用凹所15を形成する。その後、図4(ハ)に示すように、発光管10の内面11からマスク40を除去する。
【0022】
以上において、化学エッチング処理に用いられるエッチング剤としては、発光管10を形成する透光性セラミックスの種類、形成すべき熱膨張緩衝用凹所15の深さなどに応じて適宜選択される。例えば発光管10を形成する透光性セラミックスがアルミナである場合には、エッチング剤として、硫酸、塩酸、フッ酸などの酸類を用いることができる。
発光管10の内面11に形成されるマスク40の材質としては、用いられるエッチング剤に応じて適宜選択される。例えばエッチング剤として上記の酸類を用いる場合には、マスク40の材質として、フッ素系樹脂を好適に用いることができる。
化学エッチング処理における具体的な条件、例えば処理温度、処理時間、処理環境は、発光管10を形成する透光性セラミックスの種類、用いられるエッチング剤の種類によって適宜選択される。
【0023】
また、発光管10を形成する透光性セラミックスとして、アルミナ多結晶体を用いる場合には、発光管10の内面11に対してマスク40を形成することなしに化学エッチング処理を施すことにより、図5に示すように、発光管10を形成するアルミナ多結晶体の粒界Fに沿って、例えば深さが5〜15μmの所要の熱膨張緩衝用凹所15を形成することができる。
このような方法によって発光管10の内面11に熱膨張緩衝用凹所15を形成する場合において、化学エッチング処理は、エッチング剤として、硫酸、塩酸、フッ酸などの強酸類を用い、高蒸気圧下に、処理温度100〜300℃、処理時間0.1〜6.0時間の条件で行われる。
また、この方法によれば、熱膨張緩衝用凹所15がアルミナ多結晶体の粒界に沿って形成されるため、当該アルミナ結晶体の結晶粒の平均粒径に応じた凹凸平均間隔で熱膨張緩衝用凹所15を形成することが可能となる。従って、発光管10を形成するアルミナ多結晶体としては、結晶粒の平均粒径が10〜300μm、特に15〜60μmのものを用いることが好ましい。
【0024】
本発明において、「結晶粒の平均粒径」とは、「インターセプト長の1.5倍」を意味する。ここに、「インターセプト長」とは、以下の方法により測定されるものをいう。
透光性アルミナ多結晶体の表面を、例えばダイヤモンドペーストにより研磨し、この研磨された面を粒界が現れるようプラズマエッチング処理した後、走査型電子顕微鏡(SEM)により、プラズマエッチング処理された面の写真を撮影する。得られた写真に、適宜の寸法の正方形を描き、この正方形にその横辺および縦辺の各々に平行な直線を等間隔で引くことにより、正方形内に同一の寸法の枡目を形成し、正方形の4辺および枡目を形成する直線の各々を横切る粒界の数を測定する。そして、正方形の4辺および枡目を形成する直線の合計の長さ(写真上での長さ)をLとし、正方形の4辺および枡目を形成する直線の各々を横切る粒界の数をnとしたとき、インターセプト長はL/nの値である。
例えば、一辺が300μmの正方形内に一辺が30μmの正方形の枡目を形成した場合には、正方形の4辺および枡目を形成する直線の合計の長さLは6600μmであり、正方形の4辺および枡目を形成する直線の各々を横切る粒界の数nが330である場合には、インターセプト長は20μmであり、結晶粒子の平均粒径は30μmである。
【0025】
上記のような構成の閃光放電ランプによれば、発光管10の内面11に熱膨張緩衝用凹所15が形成されていることにより、当該閃光放電ランプを点灯させたときに、発光管10の内面部分において面方向に大きな熱膨張が生じても、当該発光管10にその熱膨張による応力が生じることが回避または抑制される。そのため、当該閃光放電ランプを高負荷の点灯条件で点灯させる場合であっても、発光管10が早期に破損することを防止することができる。
また、発光管10が放電プラズマに対して優れた耐性を有する透光性セラミックスにより形成されていることにより、高負荷の点灯条件で点灯させた場合であっても、発光管10が劣化することが抑制されてそれ自体の光透過性が低下することがなく、しかも、電極30の消耗が抑制される結果、放射される光の出力が早期に低下することを防止することができる。
従って、高負荷の点灯条件で点灯させる場合であっても、使用寿命の長い閃光放電ランプが得られる。
このように、本発明の閃光放電ランプは、高負荷の点灯条件、例えばパルス幅が400μs以下の点灯条件で点灯させることが可能であるため、殺菌処理、トナーの定着処理、接着剤の硬化処理、半導体製造プロセスにおける急速熱処理(Rapid Thermal Processing:RTP)などに好適に利用することができる。
【0026】
本発明の閃光放電ランプは、上記の実施の形態に係るものに限定されず、透光性セラミックスよりなる発光管を有し、当該発光管の内面に熱膨張緩衝用凹所が形成されてなるものであれば、種々の構成を採用することができる。
【0027】
【実施例】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、以下の実施例において、発光管の内面における熱膨張緩衝用凹所の深さおよび凹凸平均間隔は、基準長さLを1.5mmとして求めたものである。
【0028】
〈実施例1〉
内径が8mm、外径が9.5mm、全長が200mmの透光性アルミナ多結晶体(結晶粒の平均粒径が30μm)よりなる発光管を用意し、この発光管を、4.7%フッ酸水溶液を注入した圧力容器内に配置し、250℃、3時間の条件で、発光管の内面に対して化学エッチング処理を施すことにより、当該発光管の内面の全領域にわたって熱膨張緩衝用凹所を形成した。
発光管の内面に形成された熱膨張緩衝用凹所の深さaは10μmであり、発光管の内面における凹凸平均間隔bが30μmであり、比(b/a)の値は3.0であった。
【0029】
このようにして内面に熱膨張緩衝用凹所が形成された発光管を用い、図1に示す構成に従って、閃光放電ランプを製造した。
この閃光放電ランプにおける発光管以外の仕様は、有効発光長が140mmであり、発光管における放電空間内には、キセノンガスが6×104 Paの封入圧で封入されている。
得られた閃光放電ランプを、入力エネルギーが700J、パルス幅が70μs、管壁負荷が20J/cm2 となる点灯条件で、30sで1ショットとなる時間間隔で繰り返し点灯したところ、1万回点灯後においても、発光管が破損することがなく、また、光の出力の低下も認められず、この閃光放電ランプは、高負荷の点灯条件で繰り返し点灯させても、長い使用寿命が得られるものであることが確認された。
【0030】
〈比較例1〉
発光管の内面に熱膨張緩衝用凹所を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして閃光放電ランプを製造し、実施例1と同様の点灯条件で点灯させたところ、1回の点灯で発光管が破損した。
【0031】
〈比較例2〉
透光性アルミナ多結晶体よりなる発光管の代わりに、石英ガラスよりなる発光管を用い、発光管の内面に熱膨張緩衝用凹所を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして閃光放電ランプを製造し、実施例1と同様の点灯条件で繰り返し点灯させ、1000回点灯後における光の出力を測定したところ、初期の光の出力の90%に低下した。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の閃光放電ランプによれば、発光管の内面に熱膨張緩衝用凹所が形成されていることにより、当該閃光放電ランプを点灯させたときに、発光管の内面部分において面方向に大きな熱膨張が生じても、当該発光管にその熱膨張による応力が生じることが回避または抑制される。そのため、当該閃光放電ランプを高負荷の点灯条件で点灯させる場合であっても、発光管が早期に破損することを防止することができる。
また、発光管が放電プラズマに対して優れた耐性を有する透光性セラミックスにより形成されていることにより、高負荷の点灯条件で点灯させた場合であっても、発光管が劣化することが抑制されてそれ自体の光透過性が低下することがなく、しかも、放電電極の消耗が抑制される結果、放射される光の出力が早期に低下することを防止することができる。
従って、高負荷の点灯条件で点灯させる場合であっても、使用寿命の長い閃光放電ランプが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の閃光放電ランプの一例における構成を示す説明用縦断面図である。
【図2】図1に示す閃光放電ランプにおける発光管を示す説明用横断面図である。
【図3】発光管の内面を拡大して示す説明用断面図である。
【図4】発光管の内面に熱膨張緩衝用凹所を形成する工程を示す説明用断面図である。
【図5】発光管を形成するアルミナ多結晶体の粒界に沿って熱膨張緩衝用凹所が形成された状態を示す説明用断面図である。
【符号の説明】
10 発光管
11 内面
15 熱膨張緩衝用凹所
20 封止部材
21 胴部
22 鍔部
25 封着材
30 電極
35 電極棒
40 マスク
Claims (6)
- 透光性セラミックスにより形成された発光管を備えてなる閃光放電ランプにおいて、
前記発光管の内面には、熱膨張緩衝用凹所が形成されていることを特徴とする閃光放電ランプ。 - 発光管は、アルミナ多結晶体、イットリア多結晶体、イットリウム−アルミニウム−ガーネット多結晶体、マグネシア多結晶体、イットリウム−アルミニウム−ガーネット単結晶体およびサファイアよりなる単結晶体からなる群から選ばれた透光性セラミックスにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の閃光放電ランプ。
- 発光管は、結晶粒の平均粒径が10〜300μmの透光性アルミナ多結晶体よりなり、当該発光管の内面には、当該透光性アルミナ多結晶体における粒界に沿って熱膨張緩衝用凹所が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の閃光放電ランプ。
- 熱膨張緩衝用凹所は、発光管の内面が化学エッチング処理されることによって形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の閃光放電ランプ。
- 熱膨張緩衝用凹所は、発光管における有効発光領域全体にわたって形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の閃光放電ランプ。
- パルス幅が400μs以下の点灯条件で点灯されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の閃光放電ランプ。
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