JP3653626B2 - 有機・無機交互多重積層複合体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、実用的に十分な物理的、機械的強度、生物学的適合性、化学的安定性を有し、天然物質に類似の自然環境において生物学的分解を受けることができる、有機・無機交互複合多層体、特にコラーゲンなどのタンパク質を素材とする有機高分子薄膜/ヒドロキシアパタイトまたはリン酸三カルシウムを素材とする無機薄膜の交互複合積層体、および前記交互複合積層複合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
従来から生物学的特性を有する素材が開発研究されてきいており、現在骨のような構造を持つヒドロキシアパタイト多孔質焼結体は上市されるようになっている(”Boning Up”,C&EN,August 25,1997,PP.27−32;最新医用材料開発利用便覧;R&Dプランニング社;PP.297−307.)。また、次世代材料としてタンパク質/無機化合物複合体が、特にここ数年来、興味を集めるようになってきており、多くの研究がされている。そのような研究は、多くは、天然の生物が自然環境に耐える強度と安定性を持ちながら、自然に還元できる特性を持つことをモデルとし、これと類似の特性が発揮される材料を開発するものである。例えば、ほ乳類の骨、魚類のうろこなどの動物の硬組織は力学的特性に優れるばかりでなく、多くの石油系高分子とは異なり地球環境にやさしい天然物質である。これら生体構成部材は石油系高分子ではまねのできない力学的および生物科学的特性を有している。しかし、形状、形態、サイズが限定され、また、医療材料等としては人体などと生化学的応答が著しく異なるから、人体の構成部材の代替として利用できる状態にはなっていない。
こうした、生体構成部材の特長と問題を背景として、近年,天然の生体構成部材と同じか近い構造特性を持つ材料の人工的合成が注目されている。なかでも羽,骨など硬い組織を形作るもっとも豊富なタンパク質原料であるコラーゲンと無機化合物とを組み合わせ、これらの複合体を作成することを意図した研究報告が多々されている。このような技術においては、タンパク質材料のコラーゲンは水溶性であり薄層により複合化すること、特に交互層として多重に累積することに困難である。従って、無機物層の形成法としては、1層のコラーゲン上に無機化合物層を1層重ねた計2層の複合層が作られているすぎない。このような構造では力学的機能や外見形状において天然の硬組織には遠く及ばないのが現状である。
【0003】
ここで、前記研究報告の具体例を挙げると、例えば、第49回(1999年)の高分子学会(5月27〜29日に国立京都国際会館において開催)における報告において、高分子/無機複合体の形成技術として以下のものがある。
1.貝殻や真珠などのバイオミネラルの形成(バイオミネラリゼーション)をモデルとして、キトサンフイルム上に炭酸カルシウム薄膜結晶、特にアラゴナイト構造の薄膜結晶が、結晶成長溶液中にポリアスパラギン酸と塩化マグネシウムとを共存(〔Ca2+〕:〔Mg2+〕=1:6の配合)させることによって、形成できたこと(報告:II−7−25、東大院工、菅原彩絵、加藤隆史)(これに関連する報告は、イオン性高分子によるリン酸カルシウム結晶化の制御の技術として多く存在する。)。
2.骨結合性材料の開発を目的としたアパタイトハイブリッドシルクを、シルクファイバーへリン酸ポリマーをグラフト化し、該シルクファイバーにリン酸カルシウムの微細な核を生成させる処理ををして形成したこと。得られたものが、模擬体液への浸漬の実験から、短時間に均一なアパタイト層形成に有用であったこと(報告:IPF092、農水省蚕昆研、古菌勉、玉田靖、鹿児島大工、岸田晶夫、明石満)。
3.有機/無機複合膜の構築における、有機高分子膜の官能基、特にN−フタロイル化キトサン、キチンおよびセルロースマトリックスにおける水酸基と炭酸カルシウム溶液に存在させるポリアクリル酸のカルボキシル基の、炭酸カルシウム薄膜状結晶形成の形成における相互作用の有用性の考察(報告:IPd110、東大院工、細田尚也、加藤隆史)。
4.他に、有機/無機複合製品として、ポリテトラメチレンオキシド/TiO2ハイブリッドが、紫外線防御効果が優れ、機械的に改善された構造物が得れること(報告:日大理工、橋本和可子、清水繁、栗田公夫、矢野彰一郎)。
【0004】
また、特開平8−182754号公報には、コラーゲン層とアパタイト・コラーゲンからなる層を積層した生体材料が記載されている。
しかし、コラーゲン層/アパタイト層からなる積層構造ではないし、まして、コラーゲン層/アパタイト層の交互多層構造の複合材料を開示していないし、交互多層構造を形成する方法を示唆していない。
前記報告、先行技術を見ると、無機の薄膜が積層される有機高分子膜の構成(前処理などを含めた)、および所望の無機薄膜を結晶や膜厚を制御して形成する方法(制御成分の発見など)の開発に試行錯誤がされていることを窺い知ることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、制御された厚さと、制御された厚さの安定な無機薄膜が形成できる特性を有する有機薄膜を形成する手段を確立し、かつ前記有機薄膜上に前記安定な無機薄膜を形成する手段を見出し、これによって、前記有機薄膜・無機薄膜の交互層を多層(二層以上)形成でき手段を確立することであり、更に前記手段の確立により前記有機薄膜・無機薄膜交互層を多層(二層以上)形成してなる積層複合体を提供することである。
前記方法を確立するために、本発明者は前記特性の有機薄膜を形成できる材料を鋭意検討し、有機薄膜を形成する溶液としては水溶性であるが、完成した有機薄膜は架橋されて水不溶性となり、かつ、無機薄膜の膜厚を制御して形成できる特性を持っ有機薄膜形成原料を確認した。また、制御された無機薄膜層が前記有機薄膜層上に形成できるところのリン酸加水分解酵素あるいは脱炭酸酵素(デカルボキシラーゼ)を用いた手段を適用し、その際、有機薄膜を構成する原料としては、例えばメルカプト基を導入した材料に限定されず、架橋構造が導入できる材料ならば使用できることを発見し、前記課題を解決した。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、架橋した繊維状蛋白質あるいは架橋した多糖類からなる有機高分子薄膜とアパタイトあるいは金属炭酸塩からなる無機物薄膜との交互層が少なくとも2層以上積層された有機・無機複合積層構造体であり、前記積層構造体において交互層が同一材料の組み合わせのみによって形成されていても、また、異なった材料の組み合わせによって形成されていてもよい有機・無機複合積層構造体である。好ましくは、架橋した繊維状蛋白質の層がコラーゲン、ケラチン、絹フイブロイン、フィブリノーゲン、フィブリンから選択される材料によって形成されていることを特徴とする前記有機・無機複合積層体、または多糖類が単純多糖類であって単純多糖類が、キチン、キトサン、デンプン、セルロース、プルランから選択される材料によって形成されていることを特徴とする前記有機・無機複合積層体である。より好ましくは、アパタイトが、M10(RO4)6X2なる化学式である〔但し、式中Mが、Ca、Ba、Mg、Al、Ni、Znから選択される1種以上の元素、Rは、P、Si、S、から選択される1種以上の元素、Xは、OH、F、Cl、Oから選択される1種以上の元素または基である〕ことを特徴とする前記有機・無機複合積層体、または金属炭酸塩が、化学式(MY)であり(但し、MはCa、Mg、Baから選択される元素であり、YはCO3である。)であることを特徴とする前記有機・無機複合積層体である。更に好ましくは、架橋した繊維状蛋白質あるいは多糖類からなる層は、繊維状蛋白質あるいは単純多糖類に官能基を導入することにより架橋構造を導入できるように処理し、繊維状蛋白質あるいは単純多糖類の溶液に官能性化合物、ラジカル発生剤、金属化合物からなる架橋剤、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、エポキシ化合物、エピクロルヒドリン、珪酸から選択される化学架橋剤を混合することにより架橋構造を導入できるようにし、または赤外線、紫外線、ガンマ線、X線などの架橋化処理により架橋構造を導入することにより、架橋したものであることを特徴とする前記有機・無機複合積層体である。一層好ましくは、繊維状蛋白質あるいは単純多糖類に導入される官能基が、メルカプト基であることを特徴とする前記有機・無機複合積層体である。より一層好ましくは、無機薄膜層がアパタイトあるいは金属炭酸塩からなり、該無機薄膜がリン酸加水分解酵素乃至は脱炭酸酵素を作用させてタンパク質薄膜または多糖類薄膜面上乃至その近傍で生成させることにより形成されたものであることを特徴とする前記有機・無機複合積層体である。更には、有機高分子薄膜の膜厚は1〜100ミクロンであり、無機物簿膜の膜厚は1〜100ミクロンであることを特徴とする前記有機・無機複合積層体である。
【0007】
【本発明の実施の態様】
本発明をより詳細に説明する。
A.有機高分子薄膜を構成する材料としては、コラーゲン、ケラチン、絹フィブロイン、フィブリノーゲン、フィブリン、キチン、キトサン、デンプン、セルロース、プルランなどを挙げることができるが、コラーゲンを特に好ましい材料として挙げることができる。
コラーゲンとしては、例えば牛皮より抽出したものを変成することなく使用できるが、チオコラーゲンとすることにより、空気などの酸化剤を使用して、形成されたコラーゲンからなる薄膜に架橋構造を導入することができるので好ましい。
チオコラーゲンは、コラーゲンをチオブチロラクトン(γ−thiobutyrolactone)と反応させることによって得られ、前記反応によりリジン、チロシン残基は-CO(CH2)3SH基(修飾率:全アミノ酸残基の1−18%:好ましくは約10%)で修飾される〔第49回(1999年)高分子年次大会(5月27〜29日に国立京都国際会館において開催)(報告:IIー6-03,阪市大工,山内 清、竹内伸行)〕。
前記修飾処理をしない場合には、紫外線(30W)、γ線、X線などにより、またホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、エポキシ化合物、エピクロルヒドリン、珪酸から選択される化学架橋剤により架橋構造を導入して本発明の有機高分子薄膜を形成することができる。
単純多糖類を用いて有機高分子薄膜を形成する場合にも、前記コラーゲンと同様の手法を採用することができることはむろんである。
【0008】
B.無機薄膜層の形成
無機薄膜形成材料としてはリン酸カルシウム系材料、炭酸カルシウム系材料を挙げることができる。前記HPa薄膜を形成する原料としてはグリセロリン酸カルシウム(GCa)、エチレングリコールリン酸エステルカルシウムなどのポリオールのリン酸エステルの金属塩が好ましい。
前記ポリオールのリン酸エステルを用いて無機薄膜層を形成する際、酵素(アルカリホスファターゼ:EC3.1.3.1、pH9)を共存させ、コラーゲン薄膜表面およびその近傍でHAp(CaHPO4)を形成するのが好ましい。この際酵素濃度を調節することにより形成される薄膜の厚さを調整できるという作用・効果がもたらされる。
前記GCaを用いた場合のHPa薄膜の形成反応は以下のように表すことができる。(前記形成された無機の薄膜の結晶組成は、von Kossa染色法で組織の石灰化を調べ、走査電子顕微鏡およびIRでHApの構造を確認した。)
【0009】
【化1】
【0010】
前記無機薄膜の形成法は、単純多糖類から得られる有機高分子薄膜の場合にも適用できることは勿論である。
他の炭酸カルシウム系の無機薄膜層の形成にも、酵素を用いる方法を採用するのが、制御された薄膜が形成できることから好ましい。
酵素を用いる方法は、酵素の作用を受ける物質(酵素の作用によりC−C結合が切断されてCO2を放出する)が、酵素の作用を受けて形成される有機物質がカルシウムイオンと不溶性物質を作るか(例えば、オキサレート:カルボキシリアーゼ=オキサレート デカルボキシラーゼ:酵素番号4.1.1.)、または不溶性物質を形成しないか(例えば、アセトアセテート:アセトアセテート デカルボキシラーゼ)によって、無機薄膜層が形成されるフイルム表面を処理する条件が異なる。すなわち、
1.前者の場合には、無機薄膜が形成されるフイルム表面を前記有機物質を溶解した溶液で処理し、該処理したものを前記酵素および無機薄膜を形成する金属イオンの化合物、例えばCaCl2含む溶液に浸漬して無機薄膜を形成する無機化合物を前記フイルム表面乃至その近傍に生成させて、前記無機薄膜を形成するのに対し、
2.後者では、無機薄膜が形成されるフイルム表面を前記酵素を溶解した溶液で処理し、該処理したものを前記有機化合物および無機薄膜を形成する金属イオンの化合物、例えばCaCl2含む溶液に浸漬して無機薄膜を形成する無機化合物を前記フイルム表面乃至その近傍に生成させて、前記無機薄膜を形成する。
交互層の形成は、前記有機高分子薄膜の形成と前記無機薄膜の形成を交互に繰り返すことによって実現される。
【0011】
C.前記交互層の形成は、基板の片側に交互層を2層以上積層する構造とすることも、基板の両面に同時に交互層を2層以上積層する構造とすることもできる。
また、積層される交互層を異なる有機高分子薄膜を形成する材料と無機薄膜を形成する材料の組み合わせたものとすることができる。
これにより、所望の機械的強度、機能などの複合材料を設計することができる。
【0012】
【実施例】
実施例1
コラーゲン/ヒドロキシアパタイト(HAp)交互層が積層された有機・無機複合積層体の製造。
1.上記チオコラーゲン水溶液を平板上にキャストし、室温で乾燥して得たチオコラーゲンフイルムを、メタノールに浸漬して脱水し、乾燥した。得られたフイルムを酸化重合することによりケラチン様の水不溶性薄膜を形成した。
前記不溶化はS−S結合(架橋構造の導入)による3次元構造の形成による。2.前記コラーゲン薄膜にリン酸加水分解酵素(前記EC3.1.3.1、pH9)浸潤させ乾燥する。
3.グリセロリン酸カルシウム(GCa)〔前記酵素の働きによりリン酸(H2PO4)イオンを徐々に放出する。〕の溶液に漬け、この間に両面にHAp薄膜を形成する。
4.次いで、前記チオコラーゲンを溶解した溶液に一定時間浸漬し、乾燥することによって前記両HAp薄膜表面に前記ケラチン様の水不溶性薄膜が累積する。5.2〜3の工程を適宜の回数繰り返すことにより、・・HPa/コラーゲン/HPa/コラーゲン(基板部)/HPa/コラーゲン/HPa・・の半透明積層体が形成された。それぞれの薄膜の厚さは5〜50μmであった。
【0013】
実施例2
実施例1の修飾したチオール化コラーゲンに代えて未修飾のコラーゲンを使用し、架橋構造の導入を、コラーゲンフイルムをメタノールに1時間浸漬し、20〜30cmの距離から30分間紫外線を照射して行い水不溶性薄膜を形成する以外、すなわち有機高分子薄膜の形成方法以外は、実施例1を繰り返した。
実施例1と同様に所望の累積構造の積層体が形成された。それぞれの薄膜の厚さはも実施例1の場合とほぼ同じであった。
有機高分子薄膜として、絹フィブロインを用い、耐水性処理をした薄膜の場合、キトサンから形成された薄膜に耐水性処理した場合、キトサンフイルムを無水酢酸でキチン化したものを使用した場合、セロファンフイルムを用いた場合、および前記実施例1.2および前記材料のフイルムをクロロ酢酸などで処理してカルボン酸基を導入したもの(該基の導入により無機イオンとの相互作用が向上する。)を用いた場合にも。前記実施例1および2と同様に所望の累積構造の積層体が形成できる。
【0014】
実施例3
無機質薄膜を炭酸カルシウム系材料により形成する場合。
1.カルボキシーリアーゼ(酵素番号4.1.1.:例えばオキサレート デカルボキシラーゼ)によりC−C結合が切断されCO2を放出するオキサレートなどの溶液を、有機高分子薄膜、すなわち、コラーゲン、チオコラーゲン、キトサン、絹フィブロイン、フィブリンなどから作成したタンパク質または単純多糖類薄膜に浸潤(0.05-10mg/cm2)させる。
2.上記薄膜を1−10%の塩化カルシウム水溶液〔前記化学式(MY)におけるMイオンを含む〕と前記酵素を含む水溶液(0.1-5単位/10mL)に、15〜50℃乃至室温で、5分〜1時間浸漬する。前記有機高分子薄膜上乃至近傍に、厚さ10〜50μmの無機質化合物(炭酸カルシウム)生成させ、室温乃至100℃で乾燥して無機薄膜を形成した。
3.前記無機薄膜を形成した物を、コラーゲン、チオコラーゲン、キトサン、絹フィブロイン、フィブリンの0.3〜10%の溶液を(この場合、前記有機高分子薄膜を形成に使用したものと同じである必要はない。)塗布し、室温〜100℃までの気温中で乾燥する。必要により紫外線など架橋構造を導入する手段により有機高分子膜を架橋処理する。
4.以後1〜4の操作を所望回数繰り返して所望の累積構造の積層体が形成できる。
【0015】
実施例4
ここでは、酵素の作用を受ける有機化合物がカルシウムイオンと不溶物質を形成しない、アセトアセテートを使用した場合である。
1.カルボキシーリアーゼ(酵素番号4.1.1.)の水溶液(0.1-5単位/10mL)を実施例3と同じ有機高分子薄膜、すなわち、コラーゲン、チオコラーゲン、キトサン、絹フィブロイン、フィブリンなどから作成したタンパク質または単純多糖類薄膜に浸潤(0.05-10mg/cm2)させる。
2.上記フイルムを塩化カルシウムなど〔前記化学式(MY)におけるMイオンを含む〕および前記アセトアセテートを溶かした(各成分の濃度1〜15%)溶液に、15〜50℃乃至室温で、5分〜1時間浸漬する。前記有機高分子薄膜上乃至近傍に、厚さ10〜50μmの無機質化合物(炭酸カルシウム)生成させ、室温乃至100℃で乾燥して無機薄膜を形成した。
3.次いで実施例3の3.の工程により有機高分子薄膜を形成、必要により架橋構造を導入する処理をして耐水性の薄膜を形成する。
4.前記1〜3の工程を所望回数繰り返して所望の累積構造の積層体が形成できる。
【0016】
本発明の有機薄膜・無機薄膜からなる交互層構造は極めて多層累積できることから、可撓性から剛直性までの種々の材料が設計可能である。従って、人工爪から人工骨などの代替硬組織としての応用が可能である。その際、生分解が十分予想されるから、真の組織の再生中乃至再生後に、代替硬組織の取り外しが不要となるという効果が期待できる。また、生体適合性がよく、応力がかかっても折れたりしないから、損傷カバー材としての利用も可能である。
また、積層体の物質放出性(透過性)を所望に設計でき、且つ生体適合性が有るから、DDS(ドラッグ デリバリー システム)基材、埋め込み薬物保持体などの設計も可能である。
【0017】
また、無機薄膜をコラーゲンなどの有機高分子フイルムに積層することにより、前記フイルム単独の場合に比べて、最大破断張力、最大破断伸度、ヤング率、水中膨潤度などの特性を改善することができた。
また、上記実施例では平板状の有機・無機複合積層体についてのみ説明したが円筒状など適宜の形状に設計できることはむろんである。
【0018】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の有機・無機複合積層体は、医療材料、医療マイクロデバイスなどの分野において種々の機能を発揮する材料を提供できるという優れた効果をもたす。また、本発明の材料は生分解性が有り、機械的強度も十分あるから、環境に優しい材料として、前記以外の一般加工材料としての利用も可能である。
Claims (9)
- 架橋した繊維状蛋白質あるいは架橋した多糖類からなる有機高分子薄膜とアパタイトあるいは金属炭酸塩からなる無機物薄膜との交互層が少なくとも2層以上積層された有機・無機複合積層構造体であり、前記積層構造体において交互層が同一材料の組み合わせのみによって形成されていても、また、異なった材料の組み合わせによって形成されていてもよい有機・無機複合積層構造体。
- 架橋した繊維状蛋白質の層がコラーゲン、ケラチン、絹フイブロイン、フィブリノーゲン、フィブリンから選択される材料によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機・無機複合積層体。
- 多糖類が単純多糖類であり単純多糖類が、キチン、キトサン、デンプン、セルロース、プルランから選択される材料によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機・無機複合積層体。
- アパタイトが、(M10(RO4)6X2)なる化学式において、Mが、Ca、Ba、Mg、Al、Ni、Znから選択される1種以上の元素、Rは、P、Si、S、から選択される1種以上の元素、Xは、OH、F、Cl、Oから選択される1種以上の元素または基であることを特徴とする請求項1〜3に記載のいずれか1つである有機・無機複合積層体。
- 金属炭酸塩が、化学式(MY)であり(但し、MはCa、Mg、Baから選択される元素であり、YはCO3である。)であることを特徴とする請求項1〜3に記載のいずれか1つである有機・無機複合積層体。
- 架橋した繊維状蛋白質あるいは多糖類からなる層は、繊維状蛋白質あるいは単純多糖類に官能基を導入することによりヨウ素、酸素などの酸化処理により架橋構造を導入できるようにし、繊維状蛋白質あるいは単純多糖類の溶液に官能性化合物、ラジカル発生剤、金属化合物からなる架橋剤、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、エポキシ化合物、エピクロルヒドリン、珪酸から選択される化学架橋剤を混合することにより架橋構造を導入できるようにし、または赤外線、紫外線、ガンマ線、X線などの架橋化処理により架橋構造を導入することにより、架橋したものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の有機・無機複合積層体。
- 繊維状蛋白質あるいは単純多糖類に導入される官能基が、メルカプト基であることを特徴とする請求項6に記載の有機・無機複合積層体。
- 無機薄膜層がアパタイトからなり、該アパタイト膜が燐酸加水分解酵素を作用させてタンパク質薄膜または多糖類薄膜面上乃至その近傍で生成させることにより形成されたものであることを特徴とする請求項1〜4および請求項6、7のいずれかに記載の有機・無機複合積層体。
- 有機高分子薄膜の膜厚は1〜100ミクロンであり、無機物簿膜の膜厚は1〜100ミクロンであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の有機・無機複合積層体。
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