JP3653359B2 - 化粧板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、天然木が持っている微細な木理の再現に適した化粧板の製造方法、詳しくは、基板上に形成した凹凸樹脂層の微細凹凸面にワイピングのみを施して化粧板を製造する製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
木目化粧板等は、基材上に不飽和ポリエステル樹脂等を用いて凹凸樹脂層を形成し、この凹凸樹脂層の凹凸面にワイピングを施した後に、このワイピングが施された凹凸面上にスリップ剤が配合されたウレタン樹脂等でトップコート層を形成して製造される。そして、ワイピングに際しては、着色顔料が配合された流動樹脂を凹凸樹脂層上に流した後、凹凸樹脂層の凹凸面にゴム製スキージを所定の圧力で摺動させ、凹凸面上の流動樹脂を掻き均すことが行われている。
【0003】
ところが、上述したような方法で製造された木目化粧板は、ワイピングに際して着色顔料配合の樹脂が凹凸面の凸面に残留しやすく、この残留樹脂の着色顔料が美観を損なう一因となっていた。
そこで、近年、ワイピング後にワイピングが施された凹凸面を研磨シート等により研磨して凸面上の残留樹脂を除去し、研磨後にトップコート層を形成する製造方法が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したワイピング後に研磨を施す製造方法にあっては、ワイピング後の研磨により残留樹脂のみを除去することが実際上不可能であり、凹凸面の凸部も少なからず研磨され、凹凸樹脂層の微細な凹凸は研磨により消失してしまうという問題があった。したがって、凹凸樹脂層に微細な凹凸模様を転写しても、この微細な凹凸模様は研磨により消失し、木肌や繊維の流れ等の微細木理を再現する木目化粧板の製造が不可能であった。
この発明は、上記問題に鑑みなされたもので、微細な凹凸模様、例えば、微細木理等を正確に再現することができる化粧板の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明にかかる化粧板の製造方法は、基材上に凹凸面を有する凹凸樹脂層を形成し、該凹凸樹脂層の凹凸面上に透明または半透明着色剤並びに耐汚染性を賦与する添加剤が配合された流動性樹脂材料を流し、金属製のスキージを用い、0.1〜0.3kgf/cm2 の低い接触圧で前記凹凸面上に該スキージを摺動させて前記流動性樹脂材料を均し、前記凹凸面の凹部に着色剤が混合した前記流動性樹脂材料を充填するとともに、前記凹凸面の凸部に該流動性樹脂材料を残留させ、該流動性樹脂材料を硬化させて化粧板を得るようにした。
【0006】
そして、この発明に係る化粧板の製造方法は、前記透明着色剤が可視光線の波長(0.4μm)以下の平均粒径の微粒子顔料、有機溶剤に溶解する分散染料あるいは油溶性染料の少なくとも1つであり、前記流動性樹脂材料がアクリル−ウレタン樹脂である態様(請求項2)に、
また、前記金属製のスキージとして鋼によるスキージを用いる態様(請求項3)に構成することができる。
【0007】
【作用】
この発明にかかる化粧板の製造方法は、基板上に凹凸樹脂層を先ず形成し、次いで、この凹凸樹脂層の凹凸面に高剛性のスキージを用いスキージと凹凸面との接触圧を低くしてワイピングを施す。すなわち、凹凸樹脂層の凹凸面上に流動性樹脂を流し込んだ後、高剛性のスキージを低い接触圧で凹凸面に接触させて摺動させ、流動性樹脂を掻き均すことで、従来のワイピングと比べて凹凸面上に流動性樹脂が多く残存する。そして、この流動性樹脂を硬化させることで化粧板が完成し、ワイピングの後に研磨を行わないため微細な凹凸模様が損なわれることがなく、着色透明樹脂層の厚みの差による着色剤の濃淡により微細な凹凸模様を表現でき、また、流動性樹脂に配合する着色剤として透明着色剤を用いるため凹凸面の凸部に残留する樹脂により美観が毀損されることもない。さらに、流動性樹脂に耐汚染性を付与する添加剤を配合するため耐汚染性が得られ、トップコート層を省略できる。
【0008】
【実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1a,b,cはこの発明の一の実施の形態にかかる化粧板の製造方法による製造過程をアルファベット順に説明する化粧板の模式断面図である。
【0009】
図中、1は基材、2は基材1上に形成され表面に微細木理等の微細な凹凸模様を有する凹凸面2aが形成された凹凸樹脂層、3は凹凸樹脂層2の凹凸面2aの凹部内を充填し、かつ、凹凸面2aの凸部を被覆する透明着色樹脂層である。基材1はMDFあるいは金属板、無機質板、合成樹脂板、合板等が用いられ、また、必要に応じて木目を印刷した化粧紙や隠蔽紙を貼合して用いられる。凹凸樹脂層2は透明あるいは光輝性顔料や着色顔料が配合された有色透明の不飽和ポリエステル樹脂等から、透明着色樹脂層3は透明着色剤と耐汚染性を付与する添加剤が配合されたアクリル−ウレタン樹脂等からなる。
【0010】
透明着色樹脂層3の透明着色剤としては、油溶性染料、有機溶剤に溶解する分散染料あるいは平均粒径が可視光線の波長(0.4μm)以下の微粒子顔料の1種または複数を混合したものが用いられる。また、耐汚染性を付与する添加剤としては、ジメチルポリシロキサン系シリコーンオイルやメチルフェニル系シリコーンオイル等のシリコーン系スリップ剤、テトラフルオロエチレンやトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂あるいはパラフィン等の1種、または複数種を混合したものが用いられる。
【0011】
この化粧板は、先ず、図1aに示すように、基材1上に凹凸樹脂層2を形成する。この凹凸樹脂層2は、表面に凹凸面2aを有し、フィルム法により成形される。すなわち、基材1上に不飽和ポリエステル等の反応硬化性樹脂を流して均し、この反応硬化性樹脂上に凹凸賦形面を有する賦形シートを被せて賦形シート上からローラ等により押圧し、脱泡しながら反応硬化性樹脂を基材1全面に延ばし、反応硬化性樹脂を硬化させた後に賦形シートを剥離し、賦形シートの凹凸賦形面の凹凸模様を転写して凹凸面2aを形成する。
【0012】
次に、凹凸樹脂層2の凹凸面2aにワイピングを施す。すなわち、先ず、凹凸樹脂層2の凹凸面2a上に透明または半透明着色剤と耐汚染性を付与する添加剤が配合された流動性樹脂3(透明着色樹脂層と同一の番号を付す)を流す。
【0013】
続いて、凹凸樹脂層2の凹凸面2a上に一縁側位置でスキージ5を載置し、このスキージ5を載置した状態からさらに所定の変位(設定変位)を生じるように押圧してスキージ5と凹凸面2aとの接触圧を設定する。スキージ5は通常のワイピングに用いられるスキージよりも剛性(撓み難さ)が2倍程度の高剛性のスキージ、例えば、鋼等の金属製スキージが用いられる。また、接触圧の設定に際しては、従来の設定に際しての設定変位が1mmであれば、従来の調整変位の20%〜60%程度、すなわち、0.2mm〜0.6mm程度に設定する。なお、本発明者の計測によれば、従来の接触圧は0.5kgf/cm2 程度であり、この実施の形態における接触圧は0.1kgf/cm2 〜0.3kgf/cm2 である。
【0014】
この後、上記接触圧が加わった状態でスキージ5を凹凸面2a上を他縁側に摺動させ、流動性樹脂3を掻き均す(図1b)。ここで、スキージ5は剛性が高く撓み難く、また、スキージ5と凹凸面2aとの接触圧が小さいため、凹凸樹脂層2の凹凸面2aの凸面上には樹脂3が薄く残留するが、樹脂3には着色剤として透明着色剤を用いるため残留した樹脂3により美観が損なわれることもない。
【0015】
そして、この後は、凹凸樹脂層2の凹凸面2a上の樹脂3を硬化させて透明着色樹脂層3を形成し、化粧板が完成する(図1c)。すなわち、ワイピングの後に研磨を行うこと無く、化粧板が完成する。したがって、凹凸樹脂層2の凹凸面2aの凹凸が破壊されず、微細木理の木目模様も再現できる。また、透明着色樹脂層3は、耐汚染性を付与する添加剤を含有し、凹凸面2aの凹部内に充填されるのみならず凸部表面も薄く(1μm〜3μmが好ましい)覆うため、トップコート層を形成する必要がなく、化粧板の製造工程を簡素化できる。
【0016】
【実施例】
次に、この発明の実施例を説明する。
この実施例は、先ず、基材1上に下記の樹脂材料を用いて凹凸樹脂層2をフィルム法により形成した。
【0017】
凹凸樹脂層2の樹脂材料
・主剤 不飽和ポリエステル樹脂
▲1▼ゴーセラック500B(日本合成化学(株)製)
▲2▼ゴーセラック510A(日本合成化学(株)製)
▲3▼エスターR480−1(三井東圧化学(株)製)
▲4▼エスターR1710 (三井東圧化学(株)製)
▲1▼▲2▼のいずれかを100部または▲3▼▲4▼のそれぞれを50部
・硬化促進剤
▲1▼ナフテン酸コバルト(6%)
▲2▼オクテン酸コバルト(8%)
▲3▼エスターEP400(三井東圧化学(株)製)
▲4▼エスターEP430(三井東圧化学(株)製)
▲1▼〜▲4▼のいずれかを0.1部〜1.5部
・硬化促進助剤
▲1▼アセト酢酸メチル
▲2▼エスターEP440(三井東圧化学(株)製)
▲1▼▲2▼のいずれかを0.1部〜2.0部
・着色剤
▲1▼PCNトナー 各色(東京インキ(株)製)
▲2▼トーナーアクセス 各色(壽塗料(株)製)
▲1▼▲2▼のいずれかを3.0部〜20部
・光輝性顔料
▲1▼イリオジン 100シリーズ(メルク・ジャパン(株)製)
▲2▼イリオジン 200シリーズ(メルク・ジャパン(株)製)
▲3▼インフィニットカラー各色((株)資生堂製)
▲1▼▲2▼▲3▼のいずれかを3.0部〜15部
・硬化剤
▲1▼パーメック N (日本油脂(株)製)
▲2▼パーメック H (日本油脂(株)製)
▲1▼▲2▼のいずれかを1.0部〜2.0部
【0018】
次に、凹凸樹脂層2の凹凸面2a上に下記の樹脂材料を流し、従来の2倍の剛性のスチール製スキージ5を従来の接触圧よりも小さな0.1〜0.3kgf/cm2 程度の接触圧で凹凸面2a上を摺動させ、樹脂を掻き均した後に硬化させ、透明着色樹脂層3を形成した。
【0019】
透明着色樹脂層3の樹脂材料
・主剤
▲1▼ポリウレックス 548クリヤーP液(和信化学(株)製)
▲2▼ポリウレックス 548−5 P液(和信化学(株)製)
▲3▼ポリウレックス 548−7 P液(和信化学(株)製)
▲1▼▲2▼▲3▼のいずれかを100部
・硬化剤
▲1▼ポリウレックス 548 D液(和信化学(株)製) 25部
・耐汚染性を付与する添加剤
▲1▼PTC U−160スリップ剤(大日精化工業(株)製) 1部〜10部
▲2▼モディパー F200(日本油脂(株)製) 5部〜20部
▲3▼モディパー FS710(日本油脂(株)製) 5部〜30部
▲4▼LJ−489031(住友スリーエム(株)製) 5部〜10部
▲1▼▲2▼▲3▼▲4▼のいずれかを1つ
・着色剤
▲1▼微粒子顔料
シークステインPG(和信化学工業(株)製)
CFブルーEX−98(御国色素(株)製)
▲2▼分散染料
MSシアンVPG(三井東圧化学(株)製)
MSマゼンタVP(三井東圧化学(株)製)
MSシアンHM−1354(三井東圧化学(株)製)
▲3▼油溶性染料
セレスブルーGN(バイエル(株)製)
キープステインエロー(ナトコペイント(株)製)
▲1▼▲2▼▲3▼のいずれかを0.1部〜30部
・希釈剤
ウレタンシンナー #11−18 適量
【0020】
この実施例の化粧板は、トップコート層を形成せず、また、研磨も行わないため簡単な工程で製造できるのみならず、微細な凹凸模様も再現できた。そして、この化粧板は、透明着色樹脂層3が耐汚染性を付与する添加剤を含有して凹凸面2aを覆うため耐汚染性に優れ、また、透明着色樹脂層3が凹凸面2aの凸面に被るものの透明性着色剤であるため美観が損なわれることがなく、優れた商品価値が得られた。
【0021】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明にかかる化粧板の製造方法によれば、基材上に凹凸樹脂層を形成し、次いで、この凹凸樹脂層の凹凸面上に耐汚染性を付与する添加剤と透明着色剤を配合した流動性樹脂を流し込んだ後、この凹凸面上を高剛性のスキージを低い接触圧で摺動させて凹凸面上の樹脂を掻き均し、この樹脂を硬化させて化粧板を製造する。このため、微細凹凸が着色透明樹脂層の厚さの違いによる濃淡の差によって明瞭に再現されて美観に優れた化粧板が少ない工程で容易に製造できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一の実施の形態に係る化粧板の製造方法をアルファベット順に説明する図であり、a,b,cがそれぞれ各製造段階における化粧板の模式断面図である。
【符号の説明】
1 基材
2 凹凸樹脂層
2a 凹凸面
3 透明着色樹脂層
5 スキージ
Claims (3)
- 基材上に凹凸面を有する凹凸樹脂層を形成し、該凹凸樹脂層の凹凸面上に透明または半透明着色剤並びに耐汚染性を賦与する添加剤が配合された流動性樹脂材料を流し、金属製のスキージを用い、0.1〜0.3kgf/cm2 の低い接触圧で前記凹凸面上に該スキージを摺動させて前記流動性樹脂材料を均し、前記凹凸面の凹部に着色剤が混合した前記流動性樹脂材料を充填するとともに、前記凹凸面の凸部に該流動性樹脂材料を残留させ、該流動性樹脂材料を硬化させて化粧板を得ることを特徴とする化粧板の製造方法。
- 前記透明着色剤が0.4μm以下の平均粒径の微粒子顔料、有機溶剤に溶解する分散染料あるいは油溶性染料の少なくとも1つであり、前記流動性樹脂材料がアクリル−ウレタン樹脂である請求項1に記載の化粧板の製造方法。
- 前記金属製のスキージとして鋼によるスキージを用いる請求項1または請求項2に記載の化粧板の製造方法。
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JP32333396A JP3653359B2 (ja) | 1996-11-20 | 1996-11-20 | 化粧板の製造方法 |
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