JP3652866B2 - 有胞子乳酸菌を含有する飲料 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明が属する技術分野】
本発明は、有胞子乳酸菌を含有する飲料に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
最近、“体質改善をねらった健康指向の食品”が世を賑わしており、特に腸の環境改善効果を目指した商品の要望が高まってきている。そういった中である種の乳酸菌又はビフィズス菌を継続的に飲用することで腸内菌叢が改善され、それにより健康増進されることが多くの研究者により研究され知られている。しかし、乳酸菌は一般に寿命が短く、特に乾燥条件下ではその生存率は極めて低く、また健康増進効果を得るには胃液及び胆汁酸による影響をのがれて腸管に達する必要性があり、現在多くのメーカーでは耐酸性乳酸菌の利用、腸溶性カプセルを用いた導入方法等が考案され用いられてきている。
一方、有胞子乳酸菌〔バチルス コアグランス（Bacillus coagulans) 〕は、一般的な乳酸菌と異なり、一定の条件下で乾燥にも熱や酸にも非常に強く、腸内で発芽して活発に増殖する特性を有するものであり、各種食品用途への応用がなされている。
しかしながら、有胞子乳酸菌は、胞子が発芽せずに成熟胞子のままでいてこそ、耐熱性等に優れているものであり、一旦発芽し発芽胞子（発芽胞子は更に栄養細胞へと変化する）となると、耐熱性、耐薬品性等が失われてしまうことが知られている。
そこで、従来より、有胞子乳酸菌の安定化（胞子を発芽させずに成熟胞子のまま維持すること）について各種の検討がなされてきている。有胞子乳酸菌は粉末の状態では極めて安定であり、１年以上にわたり一定の菌数を保持することが知られている。しかしながら、水系で安定に保持する方法は未だ提案されてない。即ち、生理食塩水や糖水溶液に保存しても、経時的に死滅菌数が増加し、安定に保持しているとは言いがたく、有胞子乳酸菌の各種飲料等への応用性が損なわれているのが現状である。
【０００３】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、飲料中において有胞子乳酸菌を安定に保持する方法について鋭意検討した結果、特定の耐熱性値を有する有胞子乳酸菌胞子を選抜し、これを飲料に添加すれば、保存安定性に優れた有胞子乳酸菌含有飲料を提供できることを見出し、本発明を完成するに到った。
即ち本発明は、ｐＨが3.5 の酸性溶液中でのＤ₁₀₀ 値（分）が2.8 以上の有胞子乳酸菌胞子を配合した飲料である。
【０００４】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
従来、有胞子細菌の性質として、次のことが知られている。
▲１▼バチルス コアグランスは、５％の食塩を含有する培地では生育しない。
▲２▼バチルス コアグランスは、ｐＨ４以下では生育しない。
▲３▼バチルス メガテリウム（Bacillus megaterium)のリン酸制限培地での生育菌体の胞子は、0.1 ％リン酸添加培地での胞子よりもかなり耐熱性が高い〔 Microbios Lett.,20(79)103-107(1982) 〕。
▲４▼バチルス コアグランスの胞子は、加熱時のリン酸緩衝液の濃度によって耐熱性が変化し、10〜25mMの時が最も耐熱性が高い〔J.Bacteriol.,74:596-60 4(1957) 〕。
又、クエン酸ナトリウムなどの有機酸塩が、有胞子細菌の芽胞の発芽を抑制することも知られている〔食衛誌、25(2)125-131(1984)〕。
更に、〔食品工業、65-71 、２下−1976〕には、ソルビン酸およびアミノ酸の芽胞発芽阻害性についての研究が報告されており、バチルス サブチリス（Bacillus subtilis) PCI-219菌の場合、中性条件下で、食品保存料（ソルビン酸等）が初期の芽胞発育を阻害することが示されている。
【０００５】
また、MnやCaを添加することによって胞子形成が促進され、形成された胞子の耐熱性が向上するのも公知の事実である〔食衛誌、25(6)488(1984)〕。一方、胞子は耐熱性を有するが、発芽すると、現象的には耐熱性が消失すると言われているが、耐熱性と水系での安定性の関係については不明であった。
本発明者らは、上記の公知事実をふまえた上で、公知の胞子形成条件で調製した胞子の耐熱性と安定性との関係について鋭意検討した結果、特定の耐熱性値を有する有胞子乳酸菌胞子を選抜し、これを飲料に添加すれば、保存安定性に優れた有胞子乳酸菌含有飲料を提供できることを見出したのである。
即ち、本発明で用いる有胞子乳酸菌は、ｐＨが3.5 の酸性溶液中でのＤ₁₀₀ 値（分）が2.8 以上、好ましくは3.0 以上の有胞子乳酸菌胞子である。
ここで、Ｄ₁₀₀ 値とは、100 ℃加熱時に、胞子を10％に減少させるのに要する時間（分）である。
本発明において、飲料とは酸性飲料であり、配合組成に特に制限はなく、ｐＨ３〜４の飲料であれぱ何れでもよく、市販品でもよい。
また、有胞子乳酸菌の飲料への添加量は、特に制限はないが、１回の飲用で健腸効果を示すと言われている10⁸ 個程度であれば何れでもよい。
【０００６】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
参考例１
ラクリス（三共（株）製、登録商標）粉末より単離した有胞子乳酸菌を、下記するようなMnSO₄ とCaCl₂ の添加量を変えたNutrient agar(Difco)および標準寒天培地（日本製薬（株）製）で、50℃、４日培養して得られたコロニーを、生理食塩水に懸濁し、80℃、30分加熱して胞子懸濁液を調製した。
各々の胞子の酸性溶液（ｐＨ3.5 ）中でのＤ₁₀₀ 値を測定したところ、以下のように違いが見られた。
Nutrient agar Ｄ₁₀₀ 値＝2.09
MnSO₄ を10ppm 添加したNutrient agar Ｄ₁₀₀ 値＝3.21
MnSO₄ とCaCl₂ を50ppm 添加したNutrient agar Ｄ₁₀₀ 値＝3.68
標準寒天培地 Ｄ₁₀₀ 値＝2.52
MnSO₄ を10ppm 添加した標準寒天培地 Ｄ₁₀₀ 値＝2.83
参考例２
ラクリス（三共（株）製、登録商標）粉末より単離した有胞子乳酸菌を、50℃、４日振とう培養して得られた胞子を遠心洗浄してイオン交換水に懸濁した後、噴霧乾燥することによって胞子粉末を得た。このＤ₁₀₀ 値を参考例１と同様に測定した結果、3.80であった。
Nutrient broth(Difco) ８ｇ／リットル
KH₂PO₄ .3ｇ
K₂HPO₄ .3ｇ
MgSO₄ 100mg
MnSO₄ 50mg
FeSO₄ 10mg
CaCl₂ 50mg
実施例１〜４、比較例１〜３
参考例１及び２で得られた各種胞子及びラクリス−Ｓ（三共（株）製、登録商標）粉末を、下記に示す飲料に添加し（10⁶ 〜10⁷ 個／ｇ）、飲料中での安定性（50℃で保存後の胞子残存率（％））を調べた。結果を表１に示す。
（飲料処方）
エリスリトール ８％
発酵乳 20％
ペクチン 0.4％
クエン酸 0.1％
ポリグリセリド 0.1％
香料 0.2％
ｐＨ3.5
【０００７】
【表１】

Claims (1)

1. ｐＨが3.5 の酸性溶液中でのＤ₁₀₀ 値（分）が2.8 以上の有胞子乳酸菌胞子を配合した飲料。