JP3652720B2 - 二段噴流床石炭ガス化炉 - Google Patents

二段噴流床石炭ガス化炉 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は二段噴流床石炭ガス化炉に関し、特にその炉形状及びバーナ配置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の二段噴流床石炭ガス化炉の構成を図8に示してある。
図8において、4はコンバスタ部でその上にリダクタ部5が配設されており、コンバスタ部4とリダクタ部5の間にはスロート部3が形成されている。
リダクタ部5には上段バーナ1が取付けられ、コンバスタ部4には下段バーナ2が取付けられている。7はスラグホール、8はスラグホッパ水を示している。
【0003】
従来の二段噴流床石炭ガス化炉では図8の(a)に示すように上段バーナ1と下段バーナ2の間に径Dsが0.4D(Dは炉径)程度のスロート部3が設置されており、かつ、強旋回流が形成されるように下段バーナ2では図8の(b)に示すように仮想円径Dbが0.5〜0.7D程度に設定されていた。
【0004】
これによって、図9に示されるように下段バーナ2が設置されているコンバスタ部4では、石炭中の灰または循環してきたチャー中の灰を1に近い高い空気比(0.6〜1.0)で、石炭の溶融点(1300〜1600度)以上の高温で強旋回燃焼させて壁面に溶融捕捉させ、ガスから分離しコンバスタ部4の炉底にあるスラグホール7から排出する。
【0005】
一方、コンバスタ部4で発生した高温ガスは、上段バーナ1が設置されてスロート部3の上部にあるリダクタ部5に供給し、上段バーナ1により供給される石炭を乾留およびガス化し、チャー(炭素と灰の混合物)を生成していた。このチャーはリダクタ部5後流でサイクロンなどで捕集し、コンバスタ部4に下段バーナ2の一部によって再度投入されることによって99%以上の石炭中炭素がガス化される。
【0006】
この過程の中で図10に示すように、コンバスタ部4での灰の捕捉効率は強旋回流のため極めて高く80〜90%であり、捕捉されなかった灰は溶融液状の粒子としてリダクタ部5に持ち上がるが、上段バーナ1から供給される石炭によって発生する石炭ガス化反応が急激な吸熱反応であるため溶融点以下の1000〜1200度程度まで冷却固化され、チャー粒子とともにあるいはチャー粒子としてコンバスタ部4へと循環し再度溶融され、最終的には完全にコンバスタ部4の炉底にあるスラグホールから排出され、スラグホッパ水8中に落下し水砕される。
【0007】
この場合スロート部3での絞りはコンバスタ部4での灰の捕捉に寄与するとともに、図8に示すように下段バーナ2による強旋回流によって発生するリダクタ部5での炉中心部の逆流域をコンバスタ部4に進入させぬことによって、上段バーナ1より上部の1000〜1200度の低温のガスによるコンバスタ部4の温度の低下を防止している。
【0008】
また、一段の噴流床石炭ガス化炉においては、石炭ガス化反応が終了した後も生成ガス温度は灰の溶融温度以上の1400度以上であるため、急激に灰を冷却固化させるよう低温ガスを炉内にシール状に投入していたが、生成ガス量の200%〜400%もの大量の循環ガスが必要となり、設備が大がかりになりかつ所内動力が増えるため経済的でないという点があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従来の石炭ガス化炉では上記のプロセスによって石炭のガス化が行われるが、コンバスタ部4から持ち上がってくる溶融灰粒子は、コンバスタ部4での強旋回流による最小分離粒径として微粉炭およびチャーの粒径分布から計算すると数ミクロン程度以下となり、リダクタ部5で急激に冷却固化されると考えられ、リダクタ部5の炉壁6に付着することはないと予想された。
【0010】
しかし、スロート部3でのガス流速がスロート部3における0.4の絞り比と強旋回流のため過大となり、図11に示されるように上段バーナ1〜スロート部3の間の壁面に捕捉された溶融スラグが、その過大なガス動圧が溶融灰の表面張力より大きくなることによって、数mm〜30mm程度の大径の溶融灰粒子として上段バーナ1より上部へ再飛散し、上段バーナ1より投入される石炭による吸熱反応域で急冷されるものの径が大きいために完全に固体とはならず粘調な半溶融状となり、壁面に付着成長し炉を閉塞させる問題点があった(溶融灰の再飛散)。
【0011】
さらにまた、図11に示す通り上段バーナ1から投入される石炭粒子は、炉中心部にむけて対向に噴出されるものの、すぐに下段バーナによる強旋回流によって噴流が曲げられ壁面に衝突し、前述した粘調な大径半溶融灰27粒子をバインダとして炉壁6に付着し、石炭がガス化したのちは灰のみが残り、溶融灰の付着成長による炉の閉塞を加速させていた。また上段バーナ1より上部は逆円錐形状であったために、付着した半溶融灰27が構造強度を有しやすく自重による脱落が起こりにくく成長しやすいこともあった。
【0012】
本発明は炉壁面への溶融灰の付着成長を抑制すると共にコンバスタ部での灰の分離捕捉効率を向上させることにより安定運転が可能な二段噴流床石炭ガス化炉を提供することを課題としている。
【0013】
【課題を解決するための手段及び作用】
本発明は、空気または酸素富化空気を酸化剤とする噴流床石炭ガス化炉における前記課題を解決するため、上段バーナと下段バーナの間のスロート部の径Dsを炉径Dに対し0.7〜0.9Dとし、かつ、上段バーナは対向配置、下段バーナは旋回配置とした上下2レベルのバーナで構成され下レベルの下段バーナを仮想円径Db1が0.1〜0.3Dの石炭バーナとし、かつ上レベルの下段バーナの仮想円径Db2を前記下レベルの石炭バーナの仮想円径の値以上で0.5D以下のチャーバーナとした構成を採用する。
【0014】
噴流床石炭ガス化炉においては、炉内のガスが上昇流で、壁面に捕捉された溶融スラグは重力による下降流であるために、ガス動圧Aがある値以上になると溶融灰は持ち上げられ滞留し、さらにガス動圧Aが大きくなると溶融灰の表面張力B以上の力となり、溶融灰が引きちぎられ溶融灰が大径粒子として上方へと再飛散する。
【0015】
本発明によるガス化炉では、前記したようにスロート径Dsを広げ、かつ、下段バーナでの旋回力を弱めるよう下段バーナの仮想円径Dbを低減させた構成を採用することによって、ガス動圧A(ガス流速の自乗に比例)を低下させることができる。さらに具体的にはスロート部のガス動圧Aと溶融灰の表面張力Bの比が1〜3以下であれば溶融灰の再飛散現象が抑制されることがわかった。この比A/B=Weは下式のように表される。
【0016】
【数1】
Figure 0003652720
【0017】
これによってスロート部〜上段バーナ間での半溶融状の大径粒子の発生が抑制され、上段バーナ上部での灰の付着成長が防止できる。
また、本発明によるガス化炉では0.7〜0.9Dとスロート径Dsを広げたが、同時に旋回力を弱めたため炉中心部での逆流も弱くなり下段バーナ部での温度低下の可能性もなくなる。
また、本発明によるガス化炉においては、旋回配置とした下段バーナを上下2レベルのバーナ構成とし、炉底にあるスラグホールからスラグの排出が円滑に行われるように燃焼性の良い石炭バーナを下レベルに設置し、かつ、ファイヤボールがスラグホールの真ん中に形成されるよう下レベルのバーナの仮想円径Db1を0.1〜0.3D程度に小さく設定し、上レベルのバーナをチャーバーナとし、その灰分が多い上レベルのチャーバーナについては、灰の捕捉効率が高くなるように上記スロート部での作用が保持できる限度までバーナの仮想円径Db2を0.5D以下の好ましくは0.3〜0.5程度に高く設定している。
【0018】
さらに、コンバスタ部での灰の捕集効率については、前記したようにスロート径Dsを広げ、かつ、下段バーナでの旋回力を弱めると低下する傾向にあるが、前記した構成に加え、下段バーナの全部又は一部を下向きにチルトさせた構成を採用することにより従来のガス化炉よりもコンバスタ内での石炭粒子の滞留時間が増えることによって、従来よりも同等かそれ以上のスラグ捕集効率を得ることができる。
【0019】
また本発明による二段噴流床石炭ガス化炉では、上段バーナの石炭の投入においても、旋回力が弱まったことにより従来と比べ相対的に石炭投入時の貫通モーメンタムが増加し、炉中心付近まで石炭粒子が到達したのち主流の旋回流に乗ってガス化反応をしていくので、壁面に衝突するまでの滞留時間が十分に確保できるようになり、半溶融灰の温度も十分に低下しバインダとしての機能をもたなくなり上段バーナから投入された石炭中の灰の炉壁面への付着成長は著しく抑制される。
【0020】
一方、これらの作用によって再飛散した大径の半溶融灰粒子が発生しなくなったとしても、コンバスタ部での未捕捉灰が残存するが、これは粒子径が小さく上段バーナ部での石炭ガス化反応により急激に冷却固化されやすく付着成長しにくい。
【0021】
したがってこの未捕捉灰の付着成長防止のために、前記した構成に加え、上段バーナより上部を円筒形状壁面またはゆるやかな円錐形状壁面とした構成を採用することによってそれらの灰は自重で脱落しやすくする。さらに必要ならば付着した灰を除去脱落させる適宜の装置を設置した構成とすることもできる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明による二段噴流床石炭ガス化炉を図1に示した実施例により具体的に説明する。
図1に示すように、本実施例による二段噴流床石炭ガス化炉ではスロート部3の上方に上段バーナ1があり、スロート部3の下方に上下2レベルの下段バーナ2,2’が設けられている。
上段バーナ1は(c)図に示すように4個のバーナが対向配置され、下段バーナは上レベルのバーナ2は、仮想円径Db2、下レベルのバーナ2’は仮想円径Db1の旋回配置とされている。
【0024】
なお、上レベルのバーナ2は(a)図の如く水平配置とするか、(b)図の如く下向きにチルトさせた配置とする。
そして、下段バーナの上レベルのバーナ2をチャーバーナとし、下レベルのバーナ2’を燃焼性の良い石炭バーナとする。
上段バーナ1は同様に石炭バーナである。
【0025】
本実施例によるガス化炉において、下レベルの下段バーナである4本の微粉炭バーナ2’の仮想円径Db1を0.1D、バーナの2次空気流速を10〜30m/s とし、上レベルの下段バーナ2である4本のチャーバーナの仮想円径Db2を0.4D、バーナの2次空気流速を10〜30m/s とした場合には、スロート径Dsが0.7D以上では、Weが2程度であり上段バーナと下段バーナの間において溶融灰の再飛散が著しく抑制されていることが、ガスの動圧と溶融灰の表面張力の比を一致させたコールドモデル試験で明らかにされた。
そのモデル試験の結果を図2に示してある。
【0026】
また、上記実施例においてスロート径Dsが0.9D以下であれば炉中心部での逆流域も小さくなり灰やチャーはコンバスタ部にほとんど進入しないことが、流れのコールドモデル試験および3次元の流動解析によって確認された。
そのモデル試験および3次元流動解析結果をそれぞれ図3および図7に示してある。
【0027】
スロート径Dsを0.8Dとした8t/日容量の石炭ガス化実験炉でも逆流による下段バーナ部での温度低下が無かったことも確認されている。
その本発明による石炭ガス化実験炉と従来の構成をもつ石炭ガス化実験炉における炉内温度分布の比較結果を図5に示してある。
【0028】
また、図4に示すように、そのときの灰の捕捉効率は従来の炉と比較してやや低い効率を保持していたが、さらにチャーバーナ2を下向きにチルトさせることによって灰の捕捉効率を従来とほぼ同等まで向上させることができることも8t/日容量の石炭ガス化実験炉および3次元の流動解析によって確認された。
【0029】
また上段バーナ2での投入石炭粒子の軌跡を3次元の流動解析によって評価すると図6のように本実施例のガス化炉では従来例に比べて壁面への衝突はその量が著しく減少しまた位置がより下流側へシフトすることが明かになった。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、二段噴流床石炭ガス化炉における上段バーナと下段バーナの間のスロート部の径を適切に選定すると共に、その上段バーナと下段バーナを独特の配置とすることにより、噴流床石炭ガス化炉として最大の課題である溶融灰の冷却過程での炉壁面への灰の付着成長を抑制するとともに、コンバスタ部の灰の分離捕捉効率を高く維持し、かつ、灰を溶融させる温度をコンバスタ部にて保持し、その溶融スラグの排出を円滑に行わせることにより、安定な運転を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による二段噴流床石炭ガス化炉を示し、(a)と(b)は、それぞれ、異るバーナ配置をもつガス化炉の側面図、(c)はそのバーナ配置を示す平面図。
【図2】本発明の実施例による石炭ガス化炉におけるスロート径比と、動圧及び溶融灰の表面張力の比との関係についてのコールドモデル試験結果を示すグラフ。
【図3】本発明の実施例による石炭ガス化炉におけるスロート径比と、コンバスタへの逆流域の進入深さを示すコールドモデル試験結果のグラフ。
【図4】本発明による石炭ガス化炉におけるスロート径比と灰の捕捉効率の関係を3次元流動解析および8t/日実験炉による試験結果を示すグラフ。
【図5】本発明による8t/日石炭ガス化実験炉と従来の構成をもつ8t/日石炭ガス化実験炉における炉内温度分布の比較結果を示すグラフ。
【図6】本発明による石炭ガス化炉と従来の石炭ガス化炉の上段バーナにおける投入石炭の軌跡を3次元流動解析した結果を示す図面。
【図7】本発明の実施例と従来例による石炭ガス化炉におけるスロート部の流速分布を示すコールドモデル試験結果のグラフ。
【図8】従来の二段噴流床石炭ガス化炉の構成を示す断面図。
【図9】図8に示した石炭ガス化炉の炉内温度分布を示す説明図。
【図10】図8に示した石炭ガス化炉における炉内の灰の流れを示す説明図。
【図11】図8に示した石炭ガス化炉におけるスロート部から上段バーナの上部までの炉内の状況を示す説明図。
【符号の説明】
1 上段(石炭)バーナ
2 上レベルの下段(チャー)バーナ
2’ 下レベルの下段(石炭)バーナ
3 スロート部
Db1 下レベルの下段バーナの仮想円径
Db2 上レベルの下段バーナの仮想円径
D 炉径
Ds スロート部の径

Claims (4)

  1. 空気または酸素富化空気を酸化剤とする噴流床石炭ガス化炉において、炉径Dに対し、上段バーナと下段バーナの間に径Dsが0.7〜0.9Dのスロート部があり、上段バーナは対向配置とし、下段バーナは旋回配置とした上下2レベルのバーナで構成され下レベルの下段バーナを仮想円径Db1が0.1〜0.3Dの石炭バーナとし、かつ上レベルの下段バーナの仮想円径Db2を前記下レベルの石炭バーナの仮想円径の値以上で0.5D以下のチャーバーナとしたことを特徴とする二段噴流床石炭ガス化炉。
  2. 前記下段バーナの一部または全部を下向きにチルトさせてなる請求項1記載の二段噴流床石炭ガス化炉。
  3. 前記上段バーナより上部の炉壁を円筒形状壁面またはゆるやかな円錐形状壁面とした請求項1記載の二段噴流床石炭ガス化炉。
  4. 前記スロート部にガス動圧Aと生成する溶融スラグの表面張力Bの比A/Bが1〜3以下となるように構成した請求項1記載の二段噴流床石炭ガス化炉。
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