JP3652544B2 - 高速撹拌方法及び高速撹拌装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体と液体、又は液体と粉体を混合撹拌して成分を高度に微細化して分散、乳化させるための方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
処理液を高速撹拌して高度に微細化する技術は、本発明と同一の発明者に係る先願の特開平9−75698号公報に記載されて公知である。その技術は、円筒状の撹拌容器内で該容器の内径に近い外径をもつ撹拌具を高速回転させ、処理液を薄肉円筒状に回転させながら撹拌するものである。この先願の技術は、その出願以前に利用されていた、多量の処理液中で小径の撹拌具を回転させる形式のものに比べて、微細化の向上及び処理時間の短縮において格段に優れている。
【0003】
しかしながら、前記先願の技術にあっては、撹拌容器が円筒形の周壁に平らな底部を設け、上方の開口を平らな蓋体で閉じる構造であるため、大きい内圧に耐えることができず、高温高圧下で撹拌することができない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記先願の技術を改善し、高温高圧下での撹拌を可能にして撹拌能率を向上させることを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、各請求項に記載した手段によって解決される。このうち第1の手段は、請求項1に記載したとおり、横断面が円形の攪拌容器に、該攪拌容器と同心で容器内径に近い外径をもつ高速の攪拌具を設置し、容器の容積に比して少量の処理液を容器に収容して容器内面に沿って中空状に立上げながら攪拌する高速攪拌方法において、攪拌容器として内面が球形の容器を用い、攪拌具を周速10m/sec以上の速度で回転することによって、処理液を容器内面に沿わせて外周が球帯面で内周が略円筒面の薄い球帯リング状に立上げながら攪拌することを特徴とする。
【0006】
この手段によれば、撹拌容器として球形の容器を用いるため、該容器の耐圧性が高く過度の熱ストレスが発生しないから、高温高圧力のもとで撹拌することができる。
【0007】
第2の手段は、請求項2に記載したとおり、内面が球形で2分割できる撹拌容器内に同心の駆動軸を設置し、前記球形の内径に近い外径をもつ撹拌具を撹拌容器の中心を横切って駆動軸に取付け、該撹拌具を周速10m/sec以上の速度で回転させることを特徴とする。この手段によれば、撹拌容器が球形であるため、高温高圧下で撹拌することができ、また、撹拌具近傍の液量が撹拌具から遠い上下部分の液量より多い状態で撹拌されるから撹拌能率が高い。
【0008】
第3の手段は、請求項3に記載したとおり、請求項2において、前記撹拌容器を、球形の内部容器と、該内部容器を囲む熱媒体室をもつ耐圧性の外部容器とによって構成し、高圧ポンプで処理液を供給する供給管を内部容器に接続し、撹拌時の内部容器内の圧力に対抗する圧力を熱媒体室に加えることを特徴とする。この手段によれば、撹拌容器の内部容器に作用する内圧に対抗して熱媒体の圧力を外側から加えるので、内部容器の内外の圧力差が少なく、球体の内部容器に加わる負荷及び熱ストレスが少ないから、該内部容器を薄肉にすることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1において、1は高速撹拌装置、2は撹拌容器、3は多数のワイヤを放射状に重ねて固定した撹拌具、4は撹拌具3を高速回転させるための駆動軸である。撹拌容器2は、球形の内部容器5と内面が球形で外面が直方体の外部容器6からなり、両容器5,6の間に熱媒体室7が形成されている。また該撹拌容器2は、上半部2aと下半部2bに水平に2分割され、内部容器5と内部容器6の分割部に沿って上フランジ8と下フランジ9が溶接され、両フランジ8,9はクランパ10によって係脱可能に結合されている。
【0010】
この係脱手段としては、下フランジ9の外周側に等間隔で切欠部9aを設け、クランパ10には、下部に該切欠部9aを通過できる幅をもつジョー10aと止めねじ10bを設け、適数のクランパ10を切欠部9a側から嵌めて等距離に配置し、止めねじ10bで固定する。
【0011】
なおこの係脱手段に代えて、いわゆるバヨネット式の係脱手段を用いることができる。この手段は、下フランジ9に切欠部9aを数個所設け、前記クランパ10と部分的に同じ断面のクランパリングを用い、該クランパリングにおける、前記切欠部36aと対応する位置にジョー10aを設け、クランパリングの回動により下フランジ9を係止又は解除する構成である。
【0012】
原料供給管11,12は、外部容器6を貫通して内部容器5に接続され、原料圧入用の高圧の送液ポンプ11a,12aを備える。熱媒体室7には、熱媒体の流入管13と流出管14が1組以上設けられ、内部容器5の上部には、製品取出し用の流出孔15が、熱媒体室7と外部容器6を貫いて設けられる。
【0013】
撹拌容器2の上部には、排出室16と軸封部17が連設され、排出室16に排出管18が接続され、排出室16の内部に熱媒体室19が形成されている。軸封部17には周知のメカニカルシールが装着されており、20は該メカニカルシールの回転リング、21は固定リングである。駆動軸4の上端には駆動モータの回転軸が連結される。
【0014】
以上説明した高速撹拌装置1は、処理液を連続的に撹拌できるが、少量の処理液を撹拌するバッチ処理にも利用できる。バッチ処理の場合は、例えば図1にLとして示す処理液が管11,12から供給され、供給時に該処理液Lは底部に溜まっているが、撹拌具3を高速駆動すると、液上の空気層が回転し、これに伴って処理液Lも回転して立上がり、撹拌具3に接触して回転力を直接受けると高速回転して中空になり、外面は撹拌容器2の内面と同じ球帯面になるが、内面は略円筒面S1になり、最大厚さTのリング状になる。この状態で撹拌具3近傍は該撹拌具3から撹拌、剪断等の強い作用を受け、撹拌具3から遠い上端部と、下端部の近傍では、撹拌具近傍の運動に随伴した運動がなされ、容器内面との速度差と液体相互の速度差によって撹拌されると共に矢印Aに示す反転をして撹拌具3側へ引寄せられ、該撹拌具3によって再び強く撹拌される。そして所定時間が経過したとき回転を止め、撹拌時に発生した摩擦熱を自然冷却させたのち管11又は12から製品を取出す。
【0015】
連続処理の場合は、管11,12から原料を連続的に送入しながら撹拌具3を回転する。この場合の処理液Lの内面は、上部の流出孔15で規制された円筒面S2になり、この状態で撹拌具3によって撹拌される。撹拌された処理液は、流出孔15から排出室16に入り、熱交換されながら排出管18から流出する。
【0016】
上記の処理において、処理液Lの内周面がS1又はS2のいずれの場合も、処理液Lの上端又は下端近傍の液量は、撹拌具3近傍の液量より少ないから、撹拌容器が円筒状のものに比べて撹拌具3で直接撹拌する液量の比率が高く、短時間で撹拌を終了できる。なお、撹拌具3としてワイヤ型のものを示したが、ギヤ型羽根のように外周部に作用面をもつものであれば代替使用ができる。
【0017】
この撹拌装置1は、大気圧近傍の圧力下で撹拌作業をすることはできるが、内部容器5を球形にし、その外部を熱媒体室として高温高圧の熱媒体を流通させるようにしたことにより、耐圧性と耐高温性が高まり、耐圧度100気圧以上、耐熱度400℃以上にすることができ、高温高圧下で撹拌することが可能であり、水の臨界圧218.5気圧、臨界温度341.7℃近傍で、又は他の材料の臨界域で撹拌することを可能にしたものである。このときの圧力は、高圧の送液ポンプ11a,12a及び高圧ガスの導入によって発生し、高温は、熱媒体室7内の熱媒体からの伝熱及び撹拌具3の高速回転で生じる摩擦熱によって生じる。このような圧力、温度条件下で撹拌すると、常温常圧下の撹拌に比べて撹拌能率が極めて向上する。なお、高温で処理することが望ましくない材料を撹拌するときは、熱媒体室7に冷却水を供給する。
【0018】
図2は前記高速撹拌装置1を使用するときの関連装置の系統図であり、30,31は原料容器、11a,12aは前記送液ポンプ、30a,31aは熱交換器、32は熱媒ボイラ、32aは熱媒ポンプである。また33は加圧器であり、加圧器33には加圧源としてN2ガスが封入され、調圧弁33aを介して所要の圧力のN2ガスを装置1内に送って内部を高圧に保つ。
【0019】
原料容器30,31内の原料は、送液ポンプ11a,12aで例えば160気圧に加圧され、熱交換器30b,31bにおいて熱媒ボイラ32から送られる熱媒体と熱交換し、例えば200℃に加熱されて内部容器5内へ送られる。熱媒ポンプ32aは、高温の熱媒体を、例えば155気圧に加圧して前記のとおり熱交換器30a,31aに送ると共に、撹拌容器2の熱媒体室7に送り、その圧力を内部容器5内の前記160気圧の圧力に対抗させ、圧力差5気圧を保持しながら、熱媒体の熱で材料を加熱する。
【0020】
撹拌後の材料は排出管18から取り出されるが、排出管18の下流には、減圧タンク34,35,36、貯溜タンク37が直列に接続され、各タンクの中間には減圧弁34a,35a,36aと冷却器34b,35b,36bが介設され、各冷却器には冷却装置38から冷水が供給され、段階的に減圧、冷却が行なわれる。
【0021】
図3,4は、本発明の球形の撹拌容器2を用いた装置から得た実験データであり、図5は、前記公知技術の円筒形容器を用いた装置から得た実験データである。各容器には内部の観察ができるように透明のアクリル樹脂を用い、球形、円筒形の容器の内径をそれぞれ80mmとし、撹拌具には図1に示すワイヤ型の外径74mmの撹拌具3(φ74W)を用い、該撹拌具3を周速30m/secで駆動し、15秒、30秒、60秒撹拌したサンプルの粒度分布を、図3〜5に数値及びグラフで示した。サンプルは、水120、流動パラフィン30、乳化剤(商標名tween80)1の比率で混合したもので、該流動パラフィンの微粒化状態を常温常圧下で調査した。
【0022】
各図において、図(A)は15秒、図(B)は30秒、図(C)は60秒連続して撹拌したサンプルのデータであり、棒線は粒径(μm)ごとの頻度(%)を示し、曲線は小粒度のものから大粒度のものまでの累積値(%)である。また、枠外に粒度分布として示す数値は、粒度分布の小さい方から数えて10%目、50%目、90%目にあたる粒子の粒子径(μm)である。したがって棒グラフは左右対称で全体の幅が狭いほど均質であり、また曲線は垂直に近いほど均質であり、左側に位置するほど粒径が小さい。
【0023】
撹拌した液量と膜厚Tは各図に記入したとおりで、図3では液量88ml、膜厚17mm、図4では液量65ml、膜厚12mm、図5では液量192ml、膜厚12mmで、図5は円筒形のため膜厚に比し液量が大になる。
【0024】
図3は、本発明の球形の撹拌容器を用い88mlの液を撹拌したものを示し、同図(B)の30秒撹拌で棒グラフの幅が狭く左右対称になり、(C)の60秒撹拌でその傾向が更に顕著になり、60秒で粒子の90%が3.595μm以下になっている。また図4は、同様の球形の撹拌容器を用いて65mlの液を撹拌したものであり、30秒までは不均等であるが、60秒撹拌で棒グラフの幅は狭く曲線グラフが垂直に近くなり、粒子の90%が3.653μm以下になっている。
【0025】
これに対して図5の従来装置においては、30秒撹拌しても分布幅が広く15秒撹拌のものと大差がなく、60秒撹拌しても10μm近い粒子を含み、分布幅が広く粒子の90%が4.647μm以下である。
【0026】
以上のデータから明らかなように、内部容器5が球形の撹拌容器2を用いると、1回の処理量は少ないが、粒子が微細になる点及び粒子径が平均化する点で円筒形の撹拌容器を用いるものに比べて優れている。また、球形の容器2は耐圧力が高く熱ストレスの発生も少ないから、外側から熱媒体によって背圧を加えなくても加圧状態での撹拌ができ、これに背圧を加えれば、水の臨界圧力程度の圧力下で高温の撹拌が可能になる。
【0027】
【発明の効果】
請求項1の手段によれば、撹拌容器として球形の容器を用い、該容器は耐圧性が高く、高温で使用されても熱ストレスの発生が少ないから、処理液を高温、高圧の一方の条件下又は双方の条件下で撹拌することができ、撹拌作用又は反応を早めることができる。また、処理液が球帯リング状になって撹拌されることにより、撹拌具近傍の液量に比し撹拌具から遠い部分の液量が少ないので、撹拌具で直接撹拌される液量の比率が高く、高い撹拌能率が得られる効果がある。
【0028】
請求項2の手段によれば、撹拌容器を球形にしたため、耐圧性が高く、熱ストレスの発生も少ない。したがって、処理液を高温、高圧の一方の条件下又は双方の条件下で撹拌することができ、撹拌作用又は反応を早めることができる。また処理液は球帯リング状になって撹拌され、撹拌具近傍で撹拌される液量の比率が高いから、高い撹拌能率が得られる。
【0029】
請求項3の手段によれば、熱媒体の圧力で内部容器に背圧を与えるから、内部容器内で高温高圧の撹拌を支障なく行なわせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の一形態を示す縦断面図
【図2】 本発明を実施する際の系統図
【図3】 本発明の一実験値を示すグラフ
【図4】 他の実験値を示すグラフ
【図5】 従来技術の実験値を示すグラフ
【符号の説明】
1 高速撹拌装置 2 撹拌容器
3 撹拌具 4 駆動軸
7 冷却水室 11,12 供給管
38a,39a 高圧ポンプ
Claims (3)
- 横断面が円形の攪拌容器に、該攪拌容器と同心で容器内径に近い外径をもつ高速の攪拌具を設置し、容器の容積に比して少量の処理液を容器に収容して容器内面に沿って中空状に立上げながら攪拌する高速攪拌方法において、攪拌容器として内面が球形の容器を用い、攪拌具を周速10m/sec以上の速度で回転することによって、処理液を容器内面に沿わせて外周が球帯面で内周が略円筒面の薄い球帯リング状に立上げながら攪拌することを特徴とする高速攪拌方法。
- 内面が球形で2分割できる攪拌容器内に同心の駆動軸を設置し、前記球形の内径に近い外径をもつ攪拌具を攪拌容器の中心を横切って駆動軸に取付け、該攪拌具を周速10m/sec以上の速度で回転させることを特徴とする高速攪拌装置。
- 請求項2において、前記攪拌容器を、球形の内部容器と、該内部容器を囲む熱媒体室をもつ耐圧性の外部容器とによって構成し、高圧ポンプで処理液を供給する供給管を内部容器に接続し、攪拌時の内部容器内の圧力に対抗する圧力を熱媒体室に加えることを特徴とする高速攪拌装置。
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