JP3651473B2 - プレニル二リン酸合成酵素遺伝子 - Google Patents

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Description

本発明は、プレニル二リン酸合成酵素のペプチドおよび活性型のプレニル二リン酸合成酵素の製造方法、該酵素をコードするDNA、該DNAを含む組換えベクター並びに該組換えベクターによって形質転換された形質転換体に関する。
細菌から高等真核生物にいたるまで、天然物中には非常に多様なイソプレノイド化合物が見い出されている。例えば、ステロイド、カロテノイド、糖キャリアーであるポリプレノール、キノン類、イソペンテニルアデニンで修飾されたtRNA、プレニル化蛋白質等がそれである。これらのイソプレノイド化合物は、いずれもプレニル二リン酸合成酵素により生成したプレニル二リン酸を中間体として生合成されている(図1)。
プレニル二リン酸合成酵素とは、プレニル二リン酸(アリル性プライマー)と3−イソペンテニル二リン酸(IPP)を重合的に縮合する反応を触媒し、ポリプレニル二リン酸を生成物とする酵素の総称である。
また、プレニル二リン酸合成酵素には、IPPの縮合の度に形成される二重結合がE型をとる縮合反応を触媒する酵素と、Z型となる縮合反応を触媒する酵素がある。さらに、プレニル二リン酸合成酵素は各々の酵素により生成できる最大のイソプレン鎖長が決まっている。そして、生成物のイソプレン鎖長に応じ生成物の疎水性が変化するので、酵素活性の発現様式には大きな違いがある。この発現様式の違いから細菌の酵素について比較すると、プレニル二リン酸合成酵素は以下の4つに分類される。
(1) プレニル二リン酸合成酵素I(E型短鎖プレニル二リン酸合成酵素)
(i)ゲラニル二リン酸(GPP)合成酵素(Sagami,H. et al.,(1978) Biochem. Biophys. Res. Commun., 85,575.) (C5 →C10
ここで、「C5 →C10」とは、炭素数5の化合物から炭素数10の化合物への合成を触媒することを意味する(以下同様である)。
(ii)ファルネシル二リン酸(FPP)合成酵素 (Takahashi,I.and Ogura,K.(1981) J.Biochem.,89,1581; Fujisaki,S.et al.,(1986) J.Biochem.,99,1327.)(C5 →C15
(iii)ゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)合成酵素(Takahashi,I.and Ogura,K.(1982) J.Biochem.,92,1527. ; Sagami,H.and Ogura,K.(1981) J.Biochem.,89,1573.) (C5 →C20
(2) プレニル二リン酸合成酵素II(E型中鎖プレニル二リン酸合成酵素)
(i)ヘキサプレニル二リン酸(HexPP)合成酵素(Fujii,H.,et al.,(1982)J.Biol.Chem.,257,14610.) (C15→C30
(ii)ヘプタプレニル二リン酸(HepPP)合成酵素(Takahashi,I.et al.,(1980) J.Biochem.,255,4539.) (C15→C35
(3) プレニル二リン酸合成酵素III (E型長鎖プレニル二リン酸合成酵素)
(i)オクタプレニル二リン酸(OctPP)合成酵素(Fujisaki,S.et al.,(1986) J.Biochem.,99,1327.)(C15→C40
(ii)ノナプレニル二リン酸(NonPP)合成酵素(Sagami,H. et al.,(1977)Biochemistry,16,4616.)(C10→C45
デカプレニル二リン酸(DecPP)合成酵素(Ishii,K. et al.,(1983) Biochem.Biophys.Res.Commun.,116,500.)(C15→C50
(4) プレニル二リン酸合成酵素IV(Z型長鎖プレニル二リン酸合成酵素)
(i)Z−ノナプレニル二リン酸合成酵素 (Ishii,K. et al.,(1986) Biochem,J.,233,773.) (C15⇒C45
(ii)ウンデカプレニル二リン酸(UPP)合成酵素 (Takahashi,I.and Ogura,K.(1982) J.Biochem.,92,1527.; Keenman,M.V. and Allen,C.M.(1974) Arch.Biochem.Biophys.,161,375.)(C15⇒C55
(iii)デヒドロドリキル二リン酸(deDolPP)合成酵素 (Sagami,H. et al.,(1989) Biochem.Biophys.Acta,1002,218.) (C15⇒C85105)
プレニル二リン酸合成酵素Iは、3−イソペンテニル二リン酸(IPP)の異性化により生じるジメチルアリル二リン酸(DMAPP)をアリル性プライマーとしてIPPを順次縮合し、炭素数20以下の、短鎖の全E型プレニル二リン酸を合成し、生成物は、ステロイドやカロテノイド、プレニル化タンパクの前駆体となる。また、ゲラニル二リン酸(GPP)、ファルネシル二リン酸(FPP)、ゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)は、中、長鎖のプレニル二リン酸合成酵素のアリル性プライマー基質にもなる。
プレニル二リン酸合成酵素IIには、ヘキサプレニル二リン酸合成酵素(HexPS)と、ヘプタプレニル二リン酸合成酵素(HepPS)が属する。これらは、いずれもDMAPPやGPPをプライマーとせず、FPPをアリル性プライマーとして、それぞれヘキサプレニル、ヘプタプレニル二リン酸を合成する。生成物は疎水性が高く、これらの酵素を持つ生物のメナキノン、ユビキノンの側鎖の前駆体である。このプレニルキノンは、呼吸鎖あるいは光合成における電子伝達系で重要な役割を果たしている。
また、プレニル二リン酸合成酵素IIは、いずれも2種類の必須タンパク質から成る酵素であり、これらの酵素はそれぞれ単独のタンパク質では触媒活性を持たない。しかし、上記酵素は基質の存在下では会合して触媒機能を発現する特徴を有し (Yoshida,I.et al.,(1989)Biochem.Biophys.Res.Commun.,160,448.)、この点で他のプレニル二リン酸合成酵素と大きく異なる。
ところで、プレニル二リン酸合成酵素IIを産生する微生物としては、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus) 及びバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等が知られている(Fujii,H. et al.(1982)J.Biol.Chem.,257,14610;Takahashi,I. et al.,(1980)J.Biol.Chem.,255,4539) 。そして、ミクロコッカス・ルテウスB-P 26のHexPSの2つの成分をそれぞれ成分Aおよび成分Bとし、バチルス・ズブチリスのHepPSのそれらを成分I、IIとすると、次のことが明らかにされている。
a)成分A及び成分Iは熱安定性が比較的高いが、成分B及び成分IIは常温細菌由来の他の酵素と同程度の熱安定性しかない(Fujii,H.,et al.,(1982) J.Biol.Chem.,257,14610.) 。
b)成分Aと成分Iには互換性がない。即ち、成分Aと成分IIとの組合せや成分Iと成分Bとの組み合わせでは酵素活性を発現しない(Fujii,H.et al.,(1983) FEBS Lett.,161,257. )。
c)成分Bと成分IIは、SH試薬及びアルギニン特異的試薬によって酵素活性が著しく低下するが、成分Aと成分Iはこれらの試薬の影響を受けない (Yoshida,I.,et al.,(1989)Biochem.Biophys.Acta,995,138.)。
プレニル二リン酸合成酵素IIIには、オクタプレニル二リン酸合成酵素(OctPS)とノナプレニル二リン酸合成酵素(NonPS)等が属する。これらはプレニル二リン酸合成酵素Iと同様に、同一のサブユニットから成る二量体タンパク質であり、それ自体で触媒活性を示すが、触媒のターンオーバーを維持するために、疎水性の生成物を酵素の活性部位から除去するタンパク性の因子を必要とする(Ohnuma,S.,et al.,(1991) J.Biol.Chem.,266,23706.)。この活性化因子には互換性があり、プレニル二リン酸合成酵素IIIに属する酵素のいずれに対しても活性化作用を示す (Ohnuma,S.,et al.,(1991) J.Biol.Chem.,266,23706.)。
プレニル二リン酸合成酵素IVに属する酵素は、短鎖のプレニル二リン酸(GPP,FPP)をプライマー基質として、IPPをZ型に縮合してEとZとの混合型のポリプレニル二リン酸を合成する。細菌のウンデカプレニル二リン酸合成酵素(UPS)や、真核生物のデヒドロドリキル二リン酸合成酵素(deDolPS)がこれに当たる。これらの多くは膜結合タンパク質で、界面活性剤等で可溶化するとほとんどの場合、活性の発現にTriton X-100等の界面活性剤の添加が必要である (Takahashi,I and Ogura,K.(1982)J.Biochem.,92,1527; Allen,C.M. and Muth,J.D.(1977) Biochemistry,16,2908.)。また、プレニル二リン酸合成酵素IIIに共通する活性化因子は、UPSに対しては無効である。このことは、膜の疎水的環境が酵素活性発現に必須であるためと考えられる。
これらの知見の多くは、細胞破砕液から抽出、精製された酵素を用いた実験により得られたものであり、より詳細な酵素反応機構を解明するためには、タンパク質の一次構造のみならず、結晶構造等も解析しなければならない。そのためにも、これらの酵素タンパク質をコードする遺伝子のクローニングは必須である。
実際に、最近FPSやGGPSをはじめとするプレニル二リン酸合成酵素遺伝子が次々とクローニングされている(FPP合成酵素:Koyama,T.et al.,(1993)J.Biochem.,113,355.; Fujisaki,S.et al.,(1990) J.Biochem.,108,995.; Anderson,M,A.,et al.,(1989) J.Biol.Chem.,264,19176.; Clarke,C.F.,et al.,(1987) Mol.Cell.Bio.,7,3138.; Wilkin,D.J.et al.,(1990) J.Biol.Chem.,265,4607.;GGPP合成酵素: Carattoli,A.,et al.,(1991) J.Biol.Chem.,266,5854.;Armstrong,G.A.et al.,(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87,9975.; Math,S.K.et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89,6761.; Misawa,N.et al.,(1990) J.Bacteriol.,172,6704.)。また、HexPP合成酵素については、酵母における相補性実験により2つの成分のうち1つ(成分Bに相当する)をコードする遺伝子がクローニングされている。しかし、前述のごとく本酵素の活性の発現には2つの成分が必要である。従って、活性型酵素をコードする遺伝子の完全なクローニングがなされたわけではない(HexPP合成酵素:Ashby,M.M. and Edwards,P.A.(1990) J.Biol.Chem.,265,13157.)。
本発明者は、前記各酵素について、遺伝子の塩基配列に基づく一次構造を比較した。その結果、プレニル二リン酸合成酵素には、鎖長や生物種間を超えてアミノ酸配列が比較的保存された7つの領域があることが明らかとなった(Koyama,T. et al.,J.Biochem.113,355-363(1993))。これらの領域は、本質的に同じ反応を触媒する酵素に保存されていることから触媒機能に重要な役割を持っていると考えられる。一方、非保存領域には、鎖長を規定する部分や酵素機能発現様式の違いに関わる部分が存在すると予想される。しかし、その存在を一次構造上の比較により見出すには、鎖長の異なるプレニル二リン酸合成酵素についてクローニングされている遺伝子の種類が少ないのが現状である。
また、機能発現様式に注目した場合、前述の通り、プレニル二リン酸合成酵素IIに属する酵素は、他のプレニル二リン酸合成酵素と大きく異なり、単独では触媒機能を持たないが、基質が存在すると、会合して、触媒機能を発現する2つのタンパク質(ヘテロダイマー型)から成るという特徴がある。
このようなヘテロダイマー型プレニル二リン酸合成酵素により合成される物質は、ビタミンK、ユビキノンといった生体内で普遍的に存在する物質の前駆体であり、重要な生理活性物質であることから応用価値が高い。さらに、ヘテロダイマー型プレニル二リン酸合成酵素により生成するプレニル二リン酸は、その鎖長および構造異性体が厳密に制御される点で工業的に極めて有用であるため、大量に発現させることのニーズがある。
従って、プレニル二リン酸合成酵素IIに属する2つのタンパク質をコードする遺伝子を単離し、別個に発現させることにより、タンパク質を大量生産することが望まれる。
本発明は、プレニル二リン酸合成酵素のペプチドおよび活性型のプレニル二リン酸合成酵素の製造方法、該酵素をコードするDNA、該DNAを含む組換えベクター並びに該組換えベクターによって形質転換された形質転換体を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題に基づいて鋭意研究を行った結果、ミクロコッカス・ルテウスからプレニル二リン酸合成酵素の遺伝子をクローニングすることに成功し、また、プレニル二リン酸合成酵素の各サブユニットのペプチドを混合することにより活性型のプレニル二リン酸合成酵素を製造することに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、プレニル二リン酸合成酵素のサブユニット(A)のポリペプチドおよびサブユニット(B)のポリペプチドから選ぶポリペプチドをコードするDNAである。
サブユニット(A)及び(B)は、ヘテロダイマーを形成してプレニル二リン酸合成酵素活性を発現する2種類のポリペプチド鎖であり、そのうちサブユニット(B)はプレニルトランスフェラーゼに特徴的なアミノ酸配列を有するものである。
サブユニット(A)のポリペプチドとしては実質的に配列番号1のアミノ酸配列を表すものが挙げられ、およびサブユニット(B)のポリペプチドとしては実質的に配列番号2のアミノ酸配列を表すものが挙げられる。また、前記サブユニット(A)のポリペプチドをコードするDNAとしては配列番号3で表されるものが挙げられ、サブユニット(B)のポリペプチドをコードするDNAとしては配列番号4で表されるものが挙げられる。
ここで、「実質的に」とは、サブユニット(A)のポリペプチドおよびサブユニット(B)のポリペプチドから選ぶポリペプチドがプレニル二リン酸を合成する活性を有する限り、当該ポリペプチドに含まれるアミノ酸配列に欠失、置換、挿入等の変異が生じてもよいことを意味する。
従って、例えば配列番号1のアミノ酸配列に含まれる第1番目のメチオニン(Met)が欠失しているものなども、このアミノ酸配列の変化によるポリペプチドに含まれる。また、当該ポリペプチドに含まれるアミノ酸をコードする塩基配列のほか、縮重コドンにおいてのみ異なる同一のポリペプチドをコードする縮重異性体も本発明のDNAに含まれる。
さらに、本発明は、前記DNAを含む組換えベクターである。
さらに、本発明は、前記組換えベクターで宿主生物を形質転換して得られる形質転換体である。
さらに、本発明は、前記形質転換体を培地中で培養し、培養物中にサブユニット(A)のポリペプチドおよび/またはサブユニット(B)のポリペプチドを蓄積せしめ該ポリペプチドを採取することを特徴とするサブユニット(A)のポリペプチドおよび/またはサブユニット(B)のポリペプチドの製造方法である。
さらに、本発明は、実質的に配列番号1で表されるサブユニット(A)のポリペプチドおよび実質的に配列番号2で表されるサブユニット(B)のポリペプチドから選ぶポリペプチドである。
さらに、本発明は、ヘテロダイマー型プレニル二リン酸合成酵素において、該プレニル二リン酸合成酵素の各サブユニットのペプチドを遺伝子組み換えの手法により調製し、得られる各サブユニットのペプチドを混合することにより活性型プレニル二リン酸合成酵素を製造することを特徴とする活性型プレニル二リン酸合成酵素の製造方法である。各サブユニットのペプチドとしては、前記サブユニット(A)のポリペプチドおよびサブユニット(B)のポリペプチド、例えば、それぞれ配列番号1で表されるポリペプチドおよび配列番号2で表されるポリペプチドが挙げられる。
さらに、本発明は、由来の生物、例えば微生物を異にしその一方が特異な性質を有するヘテロダイマー型酵素の二つのサブユニットのポリペプチドをそれぞれ調製し、これらのサブユニットのポリペプチドを混合して特異な性質が付与された活性型酵素を製造することを特徴とする活性型酵素の製造方法である。この製造方法において、二つのサブユニットのポリペプチドのうちの一方はバチルス・ズブチリス由来であって実質的に配列番号5のアミノ酸配列を表すものが挙げられ、他方はバチルス・ステアロサーモフィラス由来であって実質的に配列番号6のアミノ酸配列を表すものが挙げられ、そして特異な性質が付与された活性型酵素としては耐熱性の活性型プレニル二リン酸合成酵素が挙げられる。
さらに、本発明は、バチルス・ズブチリス由来であって実質的に配列番号5のアミノ酸配列を表すプレニル二リン酸合成酵素のサブユニットのポリペプチドと、バチルス・ステアロサーモフィラス由来であって実質的に配列番号6のアミノ酸配列を表す耐熱性プレニル二リン酸合成酵素のサブユニットのポリペプチドとを混合することにより、耐熱性が付与され、かつ活性が高められたヘテロダイマー型の活性型プレニル二リン酸合成酵素を製造することを特徴とする活性型プレニル二リン酸合成酵素の製造方法である。
本発明により、プレニル二リン酸合成酵素のペプチドおよび活性型のプレニル二リン酸合成酵素の製造方法、該酵素をコードするDNA、該DNAを含む組換えベクター並びに該組換えベクターを含む形質転換体が提供される。
また、本発明のプレニル二リン酸合成酵素により合成される物質は、ビタミンK、ユビキノンといった生体内で普遍的に存在する物質の前駆体であり、重要な生理活性物質であることから応用価値が高い。さらに、ヘテロダイマー型プレニル二リン酸合成酵素により生成するプレニル二リン酸はその鎖長及び構造異性体が厳密に制御される点で有用である。
以下、本発明を詳細に説明する。
プレニル二リン酸合成酵素には、生物種間、酵素の種類によらず、アミノ酸配列の比較的保存された7つの領域がある。これらの領域はミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus) B-P 26(Dr.L.Jeffries, Walton Oaks Experimental Station Vitamins, Ltd.より入手;以下「M.luteusB-P 26」という) のヘキサプレニル二リン酸合成酵素にも保存されていることが予想される。
そこで、本発明は、細菌のプレニル二リン酸合成酵素における保存アミノ酸配列を参考にして、遺伝子組換えの手法によりM.luteus B-P 26 のプレニル二リン酸合成酵素遺伝子をクローニングする。
以下、DNAのクローニング手法について説明する。
まず、プレニル二リン酸合成酵素の産生菌、例えばM.luteus B-P 26 の培養細胞からゲノムDNAを調製する。次に、プレニル二リン酸合成酵素の種類、生物種間をこえてアミノ酸配列が比較的保存された7つの領域をもとにDNAプローブを合成し、それを用いて、コロニーハイブリダイゼーション等を行うことにより、遺伝子全長のクローニングを行う。
(1) ゲノムDNAの調製
M.luteus B-P 26 の培養は常法により行うことができる。例えば、イーストエキス0.5 %、ポリペプチド1%、塩化ナトリウム1%を含む培地にM.luteus B-P26 を植菌し、30〜37℃で1〜3日培養する。M.luteus B-P 26 の培養細胞からプレニル二リン酸合成酵素のポリペプチドをコードするゲノムDNAを調製するには、公知のいずれの手法を用いても行うことができる。例えば、微生物菌体をリゾチームで処理し、さらにラウリル硫酸ナトリウム等の界面活性剤で処理した後、フェノール、クロロホルム、エーテル等の有機溶媒で除タンパクし、エタノールで沈殿させる方法など、常法により容易に調製することができる(J.Mol.Biol.,3,208,1961) 。
次に、得られるゲノムDNAをベクタープラスミドにつないでゲノムDNAライブラリーを調製する。その調製は公知の方法に従って行うことができる。例えば、適当な制限酵素(例えばEcoRI 、BamHI、Hind III、Sau3AI、MboI、PstI等)を用いてゲノムのDNA鎖とプラスミドのDNA鎖を切断した後、DNAリガーゼ(例えばT4DNAリガーゼ等)で処理するか、又はその切断末端の状態によってはターミナルトランスフェラーゼ若しくはDNAポリメラーゼ等で処理した後、DNAリガーゼを作用させてDNA鎖を結合する(Molecular cloning, Cold Spring Harbor Laboratory,269,1982; Method in Enzymol.,68, 41,1979)。ここで用いられるベクターとしては、λファージベクター(λgt10、Charon 4A、EMBL-3等) 、プラスミドベクター(pBR322、pSC101、pUC19 、pUC119、pACYC117)などが挙げられ、前記DNA断片をこれらのベクターに組み込んだ後、大腸菌(DH1 、HB101 、JM109 、C600、MV1184、TH2 )等を形質転換してゲノムDNAライブラリーを得ることができる。
(2) スクリーニング用プローブの作製
まず、前記ゲノムDNAをハイブリダイゼーションによりスクリーニングするためのプローブを作製する。より選択性の高いプローブを作製するためには、各生物種間でアミノ酸残基の保存性の高い領域をコードするオリゴヌクレオチドを作製するのが適当と考えられる。なお、プローブは、通常の化学合成により作製することができる。この条件に合うものとして、以下の保存アミノ酸配列を選択する(下線を付したアミノ酸は、生物種間(下記参照)で50%以上保存されたアミノ酸である)(図2)。
領域Iの「Gly Gly Lys Arg Ile Arg Pro Leu」配列(配列番号7)
領域IIの「Ser Leu Ile His Asp Asp」配列(配列番号8)及び「Asp Leu Arg Arg Gly Arg Pro」配列(配列番号9)
領域IIIの「Leu Ala Gly Asp Gly Leu Leu」配列(配列番号10)
領域VIの「Phe Gln Ile Arg Asp Asp Ile Leu Asp」配列(配列番号11)及び「Gly Lys Pro Val Gly Ser Asp」配列(配列番号12)
ここで、領域I、II、III 、VIは、Koyama,T. et al.,J.Biochem.113,355-363(1993)に記載されたバチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophylus )由来のFPSのアミノ酸配列のうち、それぞれ第39〜52番目、第73〜103 番目、第115 〜123 番目、第217 〜250 番目の領域である。
なお、生物種間における保存アミノ酸配列の検討は、バチルス・ステアロサーモフィラス、エッシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ラットおよびヒトのFPS、エルウィニア・ヘルビコラ( Erwinia herbicola)およびエルウィニア・ウレドボラ(Erwinia uredovora )のGGPS並びにサッカロミセス・セレビシエのHexPSの間で行うことができる。プローブの設計に当たり、基本とするアミノ酸配列は、M.luteus B-P 26と同じグラム陽性細菌に属するバチルス・ステアロサーモフィラスのものを用いる。
これらのアミノ酸配列を基にして以下のオリゴヌクレオチドプローブを作製する。
P1 : 配列番号13
P2 : 配列番号14
P3 : 配列番号15
N1 : 配列番号16
N2 : 配列番号17
N3 : 配列番号18
N4 : 配列番号19
N5 : 配列番号20
前記ゲノムDNAを鋳型として、また前記オリゴヌクレオチドをプローブとしてハイブリダイゼーションを行う。
(3) スクリーニング
M. luteus B-P 26のゲノムDNAからのヘキサプレニル二リン酸合成酵素遺伝子のスクリーニングは、公知の手法、例えばサザンハイブリダイゼーション、コロニーハイブリダイゼーション等によって行うことができる。
ここで、本発明者は、実施例2記載の方法によりM.luteus B-P 26 のFPS遺伝子をクローニングした。従って、そのDNA断片であるB500(配列番号28)を放射能ラベルしてサザンハイブリダイゼーションを行うことにより容易にFPS遺伝子の位置を同定することができる。この結果と同様に、本発明者は、HexPS遺伝子にプレニル二リン酸合成酵素に保存されたアミノ酸配列をコードするDNA配列が存在するのであれば、プローブに対して陽性で、かつ、FPS遺伝子由来でないDNA断片についても選出することができると考えた。
そこで、本発明では、前記のように作製したプローブを用いて、M.luteus B-P26 のゲノムDNAのサザンハイブリダイゼーションを行った。
すなわち、M.luteus B-P 26 のゲノムDNAを適当な制限酵素(EcoRI, HindIII, Pst I )で別々に消化する。得られる制限断片をアガロースゲル中に電気泳動し、そのゲルをアルカリ処理し、DNAを一本鎖に変性させた後、ナイロン膜に転写する。このナイロン膜に紫外線を照射して、DNAをナイロン膜に固定させる。次に、標識したプローブ又はB500 をプローブとして用いてハイブリダイゼーション及び洗浄を行い、バイオイメージアナライザーを用いてオートラジオグラフィーを行う。そして、プローブに相同性のあるDNAバンドの位置をオートラジオグラフィーで確認する。
なお、プローブ(P1, P2, N3, N4, N5) は、[γ−32P]ATPからリン酸基を5'末端に酵素的に転移させることによって32Pで末端標識する。一方、B500 については、ランダムプライムラベリング法を用いて[α−35S]dCTPで35S−ラベルし、プローブとする。
(4) プローブB500 と弱くハイブリダイズするDNA断片のクローニング
プローブB500 は、前述のようにM.luteus B-P 26 のFPS遺伝子の一部を含むDNA断片である。従って、FPS遺伝子とは強くハイブリダイズする。また、B500 はプレニル二リン酸合成酵素に保存されたアミノ酸配列をコードするDNA配列を有する。さらに、HexPS遺伝子にプレニル二リン酸合成酵素に保存されたアミノ酸配列をコードするDNA配列が存在するのであれば、B500 ともハイブリダイズする。
そこで、本発明のプレニル二リン酸合成酵素のペプチドをコードする遺伝子をスクリーニングするには、FPS遺伝子の存在によりB500 と強くハイブリダイズするDNA断片の他に、プローブB500 と弱くハイブリダイズするDNA断片のクローニングを行う。
EcoRI消化したゲノムDNAの4〜6kbp の部分をアガロースゲルより抽出し、pUC119に挿入して、大腸菌JM109株を形質転換し、この領域のDNAライブラリーを作製する。そして各プローブを用いてコロニーハイブリダイゼーションを行う。
得られるクローンを適当な培地(LB液体培地等)で培養後、集菌し、超音波処理により菌体を破砕し、粗酵素抽出液を得る。この粗酵素抽出液を用いて、HexPS活性の測定を行う。
こうしてプレニル二リン酸合成酵素遺伝子を含むクローンを得、以後、塩基配列の解析に用いる。
(5) 塩基配列の決定
前記のようにして得られたクローンを適当な制限酵素で消化してアガロースゲル中で電気泳動し、その泳動パターンと泳動距離から制限酵素地図を作成する。
この制限酵素地図を基にDNA断片のデリーション(小断片化)を行い、活性を示す最小のクローンを得、活性を示すDNAについて塩基配列の解析を行う。
塩基配列は、インサートの片側から欠失させたデリーションクローンを正逆両方向について作製したものを用いて決定すればよい。
スクリーニングされたクローンを、適当な制限酵素、例えばEcoRI 、PstIなどで切断後、pUC119、pUC19 等のプラスミドにクローニングし、通常用いられる塩基配列分析方法、例えばSangarらのジデオキシ法( Proc.Natl.Acad.Sci.USA,74,5463(1977)) 等によって目的とするDNAの塩基配列を決定することができる。塩基配列の決定は、塩基配列自動分析装置、例えばT7 Sequencing Kit (ファルマシア社)等を用いて行うことができる。
このようにして塩基配列が決定された後は、化学合成又はPCR等により得られたDNA断片を用いてハイブリダイズさせることにより、目的とするDNAを得ることができる。
また、本発明のDNAは、プレニル二リン酸合成酵素を発現させるための遺伝子として用いることができる。
このようにして決定されるプレニル二リン酸合成酵素のサブユニットのポリペプチドをコードするDNAの塩基配列として、例えば配列番号21で示される塩基配列が挙げられ、これらの塩基配列には、3つのオープンリーディングフレーム(ORF)が含まれる。各オープンリーディングフレームをhex1、hex2、hex3と命名し、各ORFは、それぞれ配列番号21で示される塩基配列の第216 〜644 番目(配列番号3)、第622 〜1359番目(配列番号29)および第1368〜2342番目(配列番号4)である。
上記各ORFは、通常の遺伝子組換えの手法により全体として又はそれぞれ単独にクローニングすることができる。例えば、プレニル二リン酸合成酵素のサブユニットのポリペプチドをコードするDNAの塩基配列を適当な制限酵素を用いてhex1、hex2およびhex3を含む各断片に消化し、同じ制限酵素を用いて消化したプラスミドベクターに連結することによりクローニングすることができる。
(6) プレニル二リン酸合成酵素遺伝子の同定
上記のようにして得られた3つの遺伝子が発現することにより得られるポリペプチドが活性を有するか否かを調べるため、各ORFをそれぞれ別個に含むプラスミドを作製し、それらを用いて宿主を形質転換する。形質転換体を培養して粗酵素抽出液を調製し、プレニル二リン酸合成酵素活性を調べる。
組み換えベクターによる宿主細胞の形質転換は、例えば宿主細胞が大腸菌の場合は、CaCl2 、MgCl2 又はRbClを共存させて調製したコンピテント細胞に該組換えベクターを加えることにより実施することができる。
目的とする遺伝子を保有する細胞を検出するには、タンパク質のアミノ酸配列をもとにして化学合成したオリゴヌクレオチドプローブを用いたコロニー又はプラークハイブリダイゼーション法(Molecular cloning, J.Sambrook,E.F.,Fritsch,T. Maniatis著,Cold Spring Harbor Laboratory Press発行) などを用いればよい。
このようにしてクローニングされたプレニル二リン酸合成酵素のポリペプチドをコードするDNAを含む断片は、適当なベクターDNA(例えばpMalc2、pTrc99A 等)に再度組み込むことにより、大腸菌内でその遺伝子を高発現させることが可能である。また、適当なベクターに再度組み込むことにより他の原核生物または真核生物の宿主細胞を形質転換させることができる。さらに、これらのベクターに適当なプロモーター及び形質発現に関わる配列を導入することにより、それぞれの宿主細胞において遺伝子を発現させることができる。
宿主細胞としては、COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HELA細胞(ヒト子宮癌細胞)、マウスのセルトリ細胞等の哺乳動物細胞由来のもの、昆虫細胞由来のもの、ピキア・パストリス、サッカロミセス・セレビシエ等の酵母由来のものが挙げられ、これらの細胞を形質転換させるベクターとしてはBacPAK6 、pSVL、SV40等が挙げられる。このベクターは、複製起源、選択マーカー、プロモーター、ポリアデニル化シグナルなどを含む。
遺伝子発現のプロモーターとしてはレトロウイルス、ポリオーマウイルス等のプロモーターを用いることができる。
複製起源としては、SV40、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、VSV等の由来のものを用いることができ、選択マーカーとしては、チミジンキナーゼ遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子等を用いることができる。
(7) ポリペプチドの発現
以上のごとき宿主−ベクター系を用いて培養物中にプレニル二リン酸合成酵素のサブユニット(A)のポリペプチドおよび/またはサブユニット(B)のポリペプチドを蓄積せしめ、該ポリペプチドを採取するには、ベクターの適当な部位に該遺伝子を組み込んだ組換えDNAにより宿主細胞を形質転換させた後、得られる形質転換体を培養すればよい。さらに細胞内又は培養液からポリペプチドを分離、精製するには、公知の手法を用いることができる。例えば、塩析、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー等を単独又は適宜組み合わせることにより精製することができる。精製されたポリペプチドが目的のものか否かは、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、ウエスタンブロッティング等により確認することができる。
(8) ヘテロダイマー型の活性型プレニル二リン酸合成酵素の製造
本発明においては、ヘテロダイマー型プレニル二リン酸合成酵素において、該プレニル二リン酸合成酵素の各サブユニットのペプチドを遺伝子組み換えの手法により調製し、得られる各サブユニットのペプチドを混合することにより活性型プレニル二リン酸合成酵素を製造することができる。
例えば、プレニル二リン酸合成酵素のサブユニット(A)としてhex1の発現産物、サブユニット(B)としてhex3の発現産物を挙げることができる。そして、hex1の発現産物とhex3の発現産物とを混合することにより、高い酵素活性を有する活性型プレニル二リン酸合成酵素を得ることができる。
なお、hex1の発現産物(サブユニットA)とhex2の発現産物との混合物、或いはhex3の発現産物(サブユニットB)とhex2の発現産物との混合物は、プレニル二リン酸合成酵素の酵素活性を有さないものである。
さらに、本発明では、由来の生物、例えば微生物を異にしその一方が特異な性質を有するヘテロダイマー型酵素の二つのサブユニットのポリペプチドをそれぞれ調製し、これらのサブユニットのポリペプチドを混合して特異な性質が付与された活性型酵素を製造することができる。
ここで、「特異な性質」とは、その酵素の酵素活性の他にさらに付加された、酵素活性以外の特異な性質をいう。例えば、耐熱性、耐アルカリ性、耐酸性、長期保存安定性、有機溶媒耐性等の性質が挙げられる。
本発明では、これらの特異な性質の他に、比活性の増大をもたらすこともできる。
このような例としては、実質的に配列番号5のアミノ酸配列を表すバチルス・ズブチリス(ATCC 6633 ) 由来のサブユニットのポリペプチドと、実質的に配列番号6のアミノ酸配列を表すバチルス・ステアロサーモフィラス(ATCC 10149)由来のサブユニットのポリペプチド(耐熱性を有する)とを等量混合することにより、耐熱性が付与され、かつ活性が高められたヘテロダイマー型の活性型プレニル二リン酸合成酵素が挙げられる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例にその技術的範囲を限定するものではない。
〔実施例1〕ミクロコッカス・ルテウス由来ゲノムDNAの調製
M.luteus B-P 26 を6LのL-broth (Bacto Tryptone 10g, Bacto Yeast extract 5g,NaCl 5g,Glucose 1g/1L )中、30℃で24時間培養した。培養液を7,000rpm、4℃で15分間遠心分離し、細胞をSaline-EDTA (0.15M NaCl,0.1MEDTA, pH8.0)に懸濁して洗浄し、再度7,000rpm、4℃で10分間遠心分離した。
こうして得た湿重量約17gの菌体を17mLのSaline-EDTA に懸濁した後、1gのリゾチームを加えて、37℃で30分間インキュベートした。
次に、滅菌水36mL、1M Tris-HCl緩衝液(pH9.0 )36mL、5M NaCl 12mL 及び10%SDS 12mL を加え、よく懸濁した後、液体窒素を用いて凍結させた。次に、60℃で融解し、室温でリゾチーム1.0gを追加した後、再び-70 ℃で凍結、60℃で融解した。この凍結、融解をさらにもう一度行った。37℃で1時間インキュベートした後さらに400mg のリゾチームと3.1mg のプロテイナーゼKを加えて55℃で30分間インキュベートした。等量(〜150mL )のフェノールを加え、氷冷しながら20分間ゆっくりと攪拌を続けた。これを3,000rpm、4℃、10分間遠心分離し、上清を分取し、さらに3,000rpm、4℃、30分間遠心分離した。この上清を15mLづつ50mLのコニカルチューブ(ファルコン社製)に移し、2倍量のエタノールを静かに加えた後、ゆっくり混合した。糸状のDNAの白沈殿を滅菌したガラス棒で巻きとり、36mLのDiluted Saline-Citrate (0.015M NaCl, 0.0015M trisodium citrate)に溶解し、4mLのConcentrated Saline-Citrate (1.5M NaCl, 0.15M trisodium citrate)を加えた。吸光度A260の測定により、粗収量は約44mgであった。RNAを除去するため、40mLのDiluted Saline-Citrateを加えて、核酸の濃度を約0.5mg/mLになるようにした後、RNaseTI とRNaseAを、それぞれ終濃度3.6μg/mL及び50μg/mLとなるように加えて、37℃、30分間インキュベートした。等量のフェノールを加えて、氷冷しながら10分間チューブを上下反転してゆっくりと攪拌した。フェノール混合液を3,000rpm、4℃、10分間遠心分離し、水層をフェノール、クロロホルム1対1溶液と混合した。
3,000rpm、4℃、15分間遠心分離した後、水層を分取し、2倍量のエタノールを加えて、DNAを沈殿させた。15,000rpm 、4℃、20分間遠心分離し、沈殿を70%、80%及び90%のエタノールで順次洗浄し、最後に50mLのTE(10mL Tris-HCl,1mM EDTA, pH7.4)に懸濁した。
吸光度の測定から、収量は4.95mgであった。
〔実施例2〕PCRによるFPP合成酵素遺伝子断片(B500 )の増幅とFPP合成酵素遺伝子のクローニング
種々の生物種間におけるプレニル二リン酸合成酵素のアミノ酸の保存領域Iの「Gly Gly Lys Arg Ile Arg Pro Leu 」配列(配列番号7)、領域IIの「Ser Leu Ile His Asp Asp 」配列(配列番号8)及び「Asp Leu Arg Arg Gly Arg Pro」配列(配列番号9)、領域III の「Leu Ala Gly Asp Gly Leu Leu 」配列(配列番号10)、並びに領域VIの「Phe Gln Ile Arg Asp Asp Ile Leu Asp 」配列(配列番号11)及び「Gly Lys Pro Val Gly Ser Asp 」配列(配列番号12)で示されるアミノ酸配列を基にして以下のプライマーを合成した。
センスプライマー
P1 : 配列番号13
P2 : 配列番号14
P3 : 配列番号15
アンチセンスプライマー
N1 : 配列番号16
N2 : 配列番号17
N3 : 配列番号18
N4 : 配列番号19
N5 : 配列番号20
前記ゲノムDNAを鋳型として、また前記オリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行った。
PCRは以下の組成を有するPCR反応液中で、97℃で90秒、40℃で90秒、72℃で120 秒を1サイクルとしてこれを5サイクル行なった後、96℃で90秒、55℃で90秒、72℃で120 秒を1サイクルとしてこれを20サイクル行なった。
Figure 0003651473
P1/N3の組み合わせで特異的に増幅される約500bp のバンド(B500)が得られたのでpT7Blue T-vector (Novagen 社製)にライゲーションし、pB500 を得た。塩基配列をジデオキシ法にて解析した結果、B500のコードするアミノ酸配列はバチルス・ステアロサーモフィラスのFPSと145 アミノ酸中で60.7%の相同性があった。M.luteus B-26 のゲノムをSau3AIで限定分解し、4〜8kbp のDNA断片をpUC119/ BamHIに挿入した後、大腸菌JM109 を形質転換してゲノムライブラリーを作製した。pB500 をPstIとBamHIで切断後アガロースゲルで電気泳動してDNA断片を切り出し、回収した。得られたB500断片のラベリングにはRandomPrimer Labeling Kit(宝酒造社製)を用い、方法はそのプロトコルに従った。標識B500をプローブとし、コロニーハイブリダイゼーションにより約6000個のライブラリーをスクリーニングして、B500とハイブリダイズするクローンを得た。プレニル二リン酸合成酵素活性を測定し、生成物を分析したところFPP合成酵素であることを確認した。
〔実施例3〕M.luteus B-P 26 のゲノムDNAのサザンハイブリダイゼーション
(1) ゲノムDNAのナイロン膜へのブロッティング
実施例1で調製した M.luteus B-P 26のゲノムDNAをサザンブロッティングに用いた。
Figure 0003651473
上記の組成で、M.luteus B-P 26 のゲノムDNA10μg を、制限酵素EcoRI(10U/μL)、PstI(100U/μL)またはHind III (12U/μL)の何れかで、それぞれ37℃、40時間反応させ完全に消化した。反応溶液をフェノール−クロロホルム処理、クロロホルム処理の後、エタノール沈殿した。得られたDNAを減圧下で乾燥後、 100μL のTE(10mM Tris-HCl,1mM EDTA(pH8.0)) に溶解した(350ng/μL) 。3つのDNA溶液10μL を0.8%アガロースゲル中で電気泳動した。なお、サザンブロッティングには平板型転写装置 NA-1512型(日本エイドー社)を使用した。また、制限酵素は市販のもの(宝酒造社、NEB社又はベーリンガーマンハイム社)を使用した。
DNAを泳動したアガロースゲルを1.5M NaCl,0.5M NaOHに浸して、30分間ゆっくりと振盪し、DNAを変性させた。ナイロンメンブレンおよび濾紙をゲルと同じ大きさに切り、0.25M NaOH,1.5M NaClに浸しておいた。平板転写装置にアガロースゲル、ナイロンメンブレンをそれぞれ図3のように重ね、150mA(定電流) の電流を60分間流すことにより、DNAを膜に転写した。DNAを転写したナイロンメンブレンを5×SSC( 0.5M NaCl, 0.075M Sodium citrate) で洗浄して、濾紙上に置いて風乾した後、紫外線を照射して(120mJ/cm2) DNAを膜に固定した。
こうして得られたナイロンメイブレンをサザンハイブリダイゼーションに用いた。
(2) サザンハイブリダイゼーションに用いるプローブの作製
FPS遺伝子のDNA断片であるB500 は、ランダムプライマー(9mer)と[α−35S]dCTP(アマシャム社)を用いてラベルした。また、プローブに用いた合成オリゴヌクレオチドについては、以下の組成に含まれるT4 ポリヌクレオチドキナーゼにより、その5'末端に[γ−32P]ATP(アマシャム社)からγ位のリン酸基を酵素的に転移する方法でラベルした。
Figure 0003651473
上記の組成で37℃、30分間反応した後、95℃で3分間熱処理して、T4 ポリヌクレオチドキナーゼを失活させた。こうして得られた末端標識オリゴヌクレオチドをサザンハイブリダイゼーションのプローブとして用いた。
次に、標識したプローブを用いてハイブリダイゼーション及び洗浄を行い、富士写真フィルム社製バイオイメージアナライザーを用いてオートラジオグラフィーを行った。
ナイロン膜は同一のものを3枚作製した(No.1, No.2, No.3とする)。はじめにNo.1をプローブB500 、No.2をプローブN4、No.3をプローブN5でハイブリダイゼーションし、オートラジオグラフィーを行った。その後、フィルターを洗浄してハイブリダイズしているプローブを完全に除去して、それぞれプローブP1, P2, N3で再びハイブリダイゼーションし、オートラジオグラフィーを行った。
結果を図4に示す。このオートラジオグラムより、プローブB500 との結合の強さから(▲)で示したバンドがFPS遺伝子のものと考えられる。さらに、EcoRI消化したゲノムDNAに対してはFPSのバンドの下に弱いバンド(△:〜4.2kbp) が1つ確認された。これはプローブN4とも比較的強く結合していることがわかる。
FPS遺伝子はその内部にEcoRI切断部位を持たないので、FPS遺伝子がEcoRIで切断されて2本のバンドを示すことはない。よってこの弱く結合する約4.2kbpのバンドは他のプレニル二リン酸合成酵素の遺伝子を含んでいる可能性がある。
そこで、この約4.2kbpのDNA断片をクローニングすることにした。
(5) プローブB500 と弱くハイブリダイズするDNA断片のクローニング
EcoRIで消化したゲノムDNAの4〜6kbp の画分をアガロースゲルより切り出し、DNA断片をBIO 101 社のThe GEANCLEAN II Kitを用いて回収した。
このDNA断片をpUC119に挿入後大腸菌JM109株を形質転換し、コロニーハイブリダイゼーションを行った。
その結果、約1,200個のコロニーから全てのプローブとハイブリダイズする3つのクローンを得た。これらのクローンをLB培地で培養後、集菌し、超音波処理により菌体を破砕し、粗酵素抽出液を得た。この粗酵素抽出液を用いて、プレニル二リン酸合成酵素活性の測定を行った。
活性の測定は、以下の通り行った。
ポジティブコロニーを50mLのL培地で一晩培養し、4℃、3,000rpm、20分の遠心分離により集菌し、菌体を3mLのTEに懸濁した。これに超音波処理を施し菌体を破砕した後、4℃、3,000rpm、20分の遠心分離により上清を得、更に15,000rpm 、5分間遠心分離した上清を粗酵素抽出液とした。超音波処理は、出力40W、30%のパルスで5分間行った。
Figure 0003651473
上記の組成で37℃、3時間反応を行い、生成物に3mLのブタノールを添加かくはんした。そして、静置あるいは遠心により二層分離させた後ブタノール層を回収した。回収したブタノール層のうち 500μL を用いて生成物の放射能量を液体シンチレーションカウンターで測定し、また、回収したブタノール層のうち2mLを酸性ホスファターゼで処理し、逆相薄層クロマトグラフィー(TLC)で生成物の分析を行った。
Figure 0003651473
上記の組成で、37℃、14時間反応し、反応液に4mLのペンタンを添加かくはんした。そして、静置あるいは遠心により二層分離させた後ペンタン層を回収した。窒素ガスで溶媒を除去し、100 μL のペンタンに溶解した後、ワットマン社製LKC18 逆相薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:アセトン/水=19/1)による分析を行なった。
その結果を図5に示す。
これより、生成物はHexPPであることが分かった。
こうしてHexPP遺伝子を含むクローンを得たので、これをpHX00 と命名し、以後、塩基配列の解析に用いた。
〔実施例4〕制限酵素地図と塩基配列の解析
(1) pHX00 のデリーションクローンの作製
pHX00 の制限酵素地図を作製し、これを基にしてデリーションクローンの作製を行い、長さの異なるDNA断片を得た(図6)。図6に示すように、pHX01 〜pHX05 及びpEcoRV-Lは、pHX00 をXbaIで切断した後、それぞれの断片に示されるサイト(例えば、pHX02 についてはMluI、pHX05 についてはNruI) で切断し、アガロースゲル中で電気泳動し、目的の長さのDNA断片をBIO 101 社製 The GENECLEAN II Kit を用いた方法で回収した。次に、DNA断片の末端をT4 DNAPolymerase で平滑化し、セルフライゲーションにより目的のデリーションクローンを作製した。
なお、pSacI-L 及びpSacI-s は、pHX00 を SacIで切断したときの一方の断片と他方の断片である。ここでは、2本の断片のうち長い方(pUC119を含む) についてはセルフライゲーションによりpSacI-L とし、短い方については SacIで切断した別のpUC119とライゲーションしてpScI-sとした(図6)。
pPstI-L 及びpPstI-s は、pHX01 を基にしてpSacI-L 及びpSacI-s と同様に処理したものである。すなわち、pHX01 を PstIで処理して得られる2本の断片のうち、長い方についてはセルフライゲーションしてpPstI-L とし、短い方は、別のpUC119の PstIサイトに挿入してpPstI-s とした(図6)。
なお、pSacI-L 及びpPstI-L では、挿入の方向の異なる2つのプラスミドが得られるので、挿入の方向が異なったプラスミドのそれぞれをpSacI-L-1,2 及びpPstI-L-1,2 とした。
以上のデリーションを行った各クローンについてプレニル二リン酸合成酵素の活性を測定した。その結果、活性を示す最小の長さのクローンpHX05 を得た(図6)。
さらに、pPstI-L-1 及びpPstI-L-2 についてKilo-sequence 用Deletion kit(宝酒造社製)を用いて遺伝子の順方向又は逆方向から順次欠失したデリーションクローンを作製した。方法はキットのプロトコルに従った。こうして作製したデリーションクローンを用いて塩基配列の解析を行った。
(2) 塩基配列の決定
塩基配列の決定は、以下の手法により行った。
アルカリ−SDS法で調製したデリーションクローンを、以下に示すように、アルカリ変性を行って鋳型DNAを作製した。
Figure 0003651473
上記の溶液を調製し、穏やかに攪拌して室温で10分間インキュベートした。7μL の3M 酢酸トリウム(pH 4.8) と、4μL の蒸留水を加えた。120μL のエタノールを加えて、混合した後、ドライアイス中に15分置いた。15,000rpm、4℃で15分間遠心分離してDNAを沈殿させた。70%エタノールで洗浄し、15,000rpm 、4℃で10分間遠心分離し上清を捨てた。減圧下で乾燥し、10μL の蒸留水に溶解した。
これを鋳型DNAとして、T7Sequencing Kit(ファルマシア)と、[α−35S]dCTPとを用いたジデオキシ法により塩基配列の解析を行った。
解析した塩基配列を配列番号21に示した。
その結果、pHX05 にはタンパク質をコードする3つの読み枠が存在することが明らかとなった。上流からそれぞれ、hex1、hex2、hex3とした(図7)。
hex1は配列番号1に示した143 個のアミノ酸で構成されるタンパク質をコードしており、その推定分子量は17kDa であった。hex2は配列番号29に示した246 個のアミノ酸で構成されるタンパク質をコードしており、その推定分子量は28kDa であった。また、開始コドンを含む始めの23塩基がhex1の下流とオーバーラップしていた。hex3は配列番号2に示した325 個のアミノ酸で構成されるタンパク質をコードしており、その推定分子量は37kDa であった。
これら3つのオープンリーディングフレーム(ORF)がコードするアミノ酸配列(Hex1,Hex2,Hex3)をバチルス・ステアロサーモフィラスのHepPS遺伝子(hep1,hep2)がコードするアミノ酸配列(Hep1,Hep2)と比較すると、Hex3はHep2と36.4%の相同性を示し、前述のプレニル二リン酸合成酵素に共通の7つの保存領域も保持していた。一方,Hex1はHep1と8.4 %の相同性しか示さず、Hep1が220 個のアミノ酸から成るのに対し、Hex1は143 個と非常に小さかった。
バチルス・ステアロサーモフィラスのHepPSの構造遺伝子がhep1とhep2であり、これらとの相同性から、hex3はM.luteus B-P 26 のHexPSの構造遺伝子であろうと予想されたが、hex1またはhex2はhep1と高い相同性を示さなかったので容易に断定できなかった。そこで3つのORFのうち、どれがHexPSの構造遺伝子であるかを確認することにした。
〔実施例5〕ヘテロダイマー型プレニル二リン酸合成酵素活性の測定(1)
(i)HexPP合成酵素遺伝子の同定
hex1のみを含むプラスミドを作製するため、pdel 2-5をHincIIとNruIで切断し、セルフライゲーションさせた(図8,9)。これがpREG1 である。同様に、hex2のみを含むプラスミドを作製するため、pdel 1-1のSacI-SacI 断片を切り出し、pUC119のSacI部位に挿入したのがpREG2 である(図8,9)。
また、hex3のみを含むプラスミドの作製は次のようにした。pdel 1-13 をEcoRI で切断し、末端を平滑化した後にPstIで切断した。さらにpPstI-S をHindIIIで切断し、末端を平滑化した後にPstIで切断した。これらをライゲーションしてpREG3 を作製した。pREG3 はhep3の下流の約400bp を含んでいるため、pREG3 をEcoRI とEcoT14I で消化し、平滑末端化した後ライゲーションしてpREG3Sとした(図8,9)。ここで、pdel 2-5、pdel 1-1、pdel 1-13 は前述したpPstI-L のKilo-Sequence 用Deletion Kitを用いて作製したデリーションクローンである。
こうしてpHX05 のインサートDNAにある3つの領域(hex1,hex2,hex3)をそれぞれ別個に含むプラスミドを作製した(図9)。
hex1〜3を含むpHX05 はhex3の下流の約400bp を含んでいるため、pHX00 をNruIとEcoT14I で切断後、HincIIで切断したpUC119とライゲーションし、得られる2種類のクローンのうちpHX05 と遺伝子の向きが同一のものを選択してpHX06 とした(図9)。
これらを用いて大腸菌JM109 株を形質転換し、前記と同様の方法で酵素活性の測定を行なった。
なお、hex1、hex2およびhex3遺伝子を含むプラスミド(それぞれpREG1 、pREG2 、pREG3S) を保有する形質転換体は、(独)産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、pREG1/JM109 がFERM BP-5910とし、pREG2/JM109 がFERM BP-5911とし、pREG3S/JM109がFERM BP-5912としてそれぞれ寄託されている。
(ii)酵素活性の測定
得られたクローンの粗酵素抽出液を調製し、表1に示す組み合わせでHexPP合成酵素活性を調べた。
結果を表1および図10に示す。
Figure 0003651473
図10中、レーン1〜9は、それぞれ表1のレーン1〜9に対応する。
表1および図10より、hex1とhex3にコードされるポリペプチドが同時に存在する場合(表1,レーン1, 2, 9 ;図10,レーン1, 9) にHexPS活性が発現することが分かる。すなわち、Hex1(サブユニットのポリペプチド(A))とHex3(サブユニットのポリペプチド(B))とを混合することにより、活性が発現することが分かる。また、このことからバチルス・ステアロサーモフィラスのHepPS遺伝子と同様に、hex1とhex3がHexPSの構造遺伝子であることが分かる。
〔実施例6〕ヘテロダイマー型プレニル二リン酸合成酵素活性の測定(2)
(i)バチルス・ズブチリス由来HepPS遺伝子を持つプラスミドの構築
データベース検索により、バチルス・ステアロサーモフィラスのHepPS遺伝子であるhep1、hep2と高い相同性を示す遺伝子がバチルス・ズブチリスに存在することがわかった。hep1に対応するのがgerC1、hep2に対応するのがgerC3である。GenBank M80245に登録されたDNA配列を基に以下のオリゴヌクレオチドを合成し、PCRプライマーとした。
センスプライマー
P6’:配列番号22
P5’:配列番号23
アンチセンスプライマー
P2’:配列番号24
P4’:配列番号25
バチルス・ズブチリス(ATCC 6633)を1L のLB(Bacto Tryptone 10g, Bacto Yeast extract 5g, NaCl 10g/1L)中、37℃でOD600 が1になるまで培養した。培養液を7,000 rpm、4℃で15分間遠心分離し、集菌した。
バチルス・ズブチリス由来のゲノムDNAはバチルス・ステアロサーモフィラスのゲノムDNA調製の方法に従って調製し(Koike-Takeshita, A.,et al.,(1995)J.Biol.Chem.,270,18396)、PCRの鋳型とした。
前記ゲノムDNAを鋳型として、また前記オリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行った。
PCRは以下の組成を有するPCR反応液中で、74℃で30秒、55℃で60秒、72℃で60秒を1サイクルとしてこれを24サイクル行なった後、72℃で7分反応した。
Figure 0003651473
gerC1を持つクローンはP6’/P4’の組み合わせでPCRを行ない、増幅されたDNA断片をNcoIとHind IIIで切断した後、NcoIとHind IIIで切断したpTrc99A にライゲーションして作製し、pEHA1 とした。
gerC3を持つクローンはP5’/P2’の組み合わせでPCRを行ない、増幅されたDNA断片をNcoIとBglIIで消化した後、NcoIとBamHIで消化したpTrc99A にライゲーションして作製し、pEHA3 とした。
(ii)バチルス・ステアロサーモフィラス(ATCC 10149)由来のhepPS遺伝子を持つプラスミドの構築
hep1を持つクローンは、Koike-Takeshita, A.,et al.,(1995)J.Biol.Chem.,270,18396 に示されたpTLD7 を使用した。
hep2を持つクローンはKoike-Takeshita, A.,et al.,(1995)J.Biol.Chem.,270,18396 に示されたpTL6を鋳型にして下記のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行った後、増幅されたDNA断片をBspHI とHind IIIで消化して、NcoIとHind IIIで消化したpTrc99A にライゲーションして作製し、pHE5とした。
センスプライマー
HPP10:配列番号26
アンチセンスプライマー
HPP12:配列番号27
(iii)タンパク質の発現
上記4種のプラスミド(pEHA1, pEHA3, pTLD7, pHE5)を用い大腸菌JM109 株を形質転換した。pEHA1 、pEHA3 の形質転換体はM9YG培地(1×M9 salt, 0.2% glycerol, 0.2% Yeast extract)で、pTLD7 、pHE5の形質転換体はLBで培養し、対数増殖期の後半で1mMのIPTGを添加後3時間培養して、5,000rpm,20分の遠心分離で集菌した。各菌体約0.2 gを1mL Lysis buffer(25mM Tris-HCl,1mM EDTA, 10mM 2−メルカプトエタノール)に懸濁後、超音波処理により菌体を破砕し、15,000rpm ,5分間遠心分離した上清を、pTLD7 、pHE5の形質転換体についてのみ55℃、15分間熱処理し、粗酵素液とした。
(iv)酵素活性の測定
表2に示す組み合わせで等量混合し、HepPS活性を調べた。
下記の組成で37℃、1時間反応を行ない、前述と同様に生成物をブタノールで抽出後、放射能量の測定および逆相TLCによる生成物の分析に用いた。
Figure 0003651473
pEHA1 の発現産物であるポリペプチドGERC1〔pEHA1 (GERC1)という〕とpEHA3 の発現産物であるポリペプチドGERC3〔pEHA3 (GERC3)という〕との組合せ、およびpEHA1 (GERC1)とpHE5の発現産物であるポリペプチドHep2〔pHE5(Hep2)という〕との組み合わせの時にプレニル二リン酸合成酵素活性を示し(表2)、生成物の分析から両者ともHepPPを合成したことを確認した(図11)。
Figure 0003651473
(v)熱安定性の比較
ポリペプチドGERC1、GERC3は常温菌バチルス・ズブチリス由来であり、Hep2は中等度好熱菌バチルス・ステアロサーモフィラス由来である。そこで、pEHA1 (GERC1)+pEHA3 (GERC3)の組合せ、およびpEHA1 (GERC1)+pHE5(Hep2)の組み合わせで得たHepPSの至適反応温度および熱安定性を比較した。
pEHA1 (GERC1)+pEHA3 (GERC3)の組合せ、およびpEHA1 (GERC1)+pHE5(Hep2)の組み合わせで、10、15、20、25、30、37、40、45、50、55、60℃で反応を行ないブタノール抽出液の放射能量を比較した(図12)。pEHA1 (GERC1)+pEHA3 (GERC3) の組み合わせのHepPSの至適反応温度が25℃であるのに対し、pEHA1 (GERC1)+pHE5(Hep2)の組み合わせのHepPSでは至適反応温度が40℃と15℃上昇していた。
さらに熱処理後の残存活性を両者で比較した。各組み合わせで粗酵素液を混ぜた後、37、45、50、55℃で20分間熱処理を施した。その後、30℃で1時間反応を行ないブタノール抽出液の放射能量を比較した(図13)。
pEHA1 (GERC1)+pEHA3 (GERC3)の組み合わせのHepPSは37℃の熱処理で残存活性72%、45℃で20%、50℃で7%であるのに対し、pEHA1 (GERC1)+pHE5(Hep2)の組み合わせのHepPSでは45℃の熱処理で残存活性102 %、50℃で83%の残存活性を示した。
バチルス・ズブチリス由来HepPSのGERC3に相当すると思われる成分IIは、GERC1に相当すると思われる成分Iに比べて熱に不安定であるという知見があるが(Fujii,H. et al., (1983) FEBS Lett.,161,257) 、中等度好熱菌バチルス・ステアロサーモフィラス由来のHep2(成分IIに相当する)とのハイブリッド型酵素の構築により熱安定性が付与された。
イソプレノイド化合物の生合成経路を示す図である。 保存アミノ酸配列を基にしたプライマー設計を示す図である。 平板転写装置を示す図である。 サザンハイブリダイゼーションの結果を示す電気泳動写真である。 逆相TLCの結果を示すクロマトグラフの写真である。 デリーションクローンの概略を示す図である。 本発明のDNAのORFを示す図である。 各ORFを単独に持つプラスミドの構築に用いたクローンの概略図である。 各ORFを単独に持つプラスミドを示す図である。 各ORFを単独に持つプラスミドを組み合わせたときの酵素活性を示す逆相TLCの結果(クロマトグラフの写真)である。 バチルス・ズブチリスとバチルス・ステアロサーモフィラスの各遺伝子を組み合わせたときの酵素活性を示す逆相TLCの結果(クロマトグラフの写真)である。 至適反応温度を示す図である。 熱処理後の残存活性を示す図である。

Claims (2)

  1. 配列番号5に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと、配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドとからなるプレニル二リン酸合成酵素。
  2. 配列番号5に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドと、配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドとを混合し、プレニル二リン酸合成酵素を製造することを特徴とする、プレニル二リン酸合成酵素の製造方法。
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