JP3651330B2 - 無段変速機の変速制御装置 - Google Patents

無段変速機の変速制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステップ的なアクセル操作が行われた時、定常目標値(到達変速比や到達入力回転数)に対し過渡目標値(目標変速比や目標入力回転数)を決め、所定の変速応答で実際値を定常目標値に徐々に近づける変速比制御が行われる無段変速機の変速制御装置の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来、無段変速機の変速制御装置としては、例えば、特開平5−126239号公報に記載のものが知られている。
【0003】
この公報には、ステップ的なアクセル操作が行われた時、その時の車速とスロットル開度に基づき設定された定常目標変速比に対し過渡的な目標値として過渡目標変速比を決め、両目標変速比の変速比偏差に基づいて算出される変速時定数(図12にダウンシフトの場合、図13にアップシフトの場合)による変速応答にて変速比制御を行うことで、実変速比を滑らかな曲線を描いて定常目標変速比に到達させる技術が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の無段変速機の変速制御装置にあっては、例えば、ステップ的なアクセル足離し操作によりアップシフトさせた場合、図14に示すように、変速開始域での実入力回転数InpREVの落ち込みが目標入力回転数LInpREVより大きくなり、しかも、定常目標値である基本到達入力回転数TDsrREVまでの実入力回転数InpREVの低下量が大きいため、実入力回転数InpREVが基本到達入力回転数TDsrREVより低い回転数まで低下してしまうアンダーシュートが発生してしまうことがあるという問題がある。
【0005】
このため、エンジン側でロックアップ最小回転数の制約がある場合、図15に示すように、アクセル足離し操作開始点から実入力回転数InpREVの低下によりコースト線を横切り、エンジン側のロックアップ禁止回転数(例えば、1050rpm)以下の回転数域までエンジン回転数を下げることになり、コーストロックアップOFFの車速(例えば、28km/h)になっていないのにロックアップが解除されてしまうことになる。
【0006】
これを救済するには、コースト線を持ち上げて対処することができるが、コースト線を持ち上げるということは、0/8開度時のエンジン回転数を高くすることであり、言い換えると、ローギア化することであるため、コースト時の減速度が高くなってしまい、減速度要求値を満足できない場合がある。
【0007】
ここで、上記アンダーシュート(またはダウンシフトの場合にはオーバーシュート)の発生要因について述べる。
【0008】
このアンダーシュート→オーバーシュートの発生には、特に、トロイダル型無段変速機にみられるが、変速指令が無くても入力トルクにより変速する、いわゆる、トルクシフトが大きく絡む。
【0009】
トルクONでLow変速、トルクOFFでHi変速するこの特性では、到達入力回転数の偏差が大きいほど、オーバーシュート(ダウンシフトの場合)もアンダーシュートも大きい。
【0010】
現制御においては、変速比を制御する方式を使っているため、それぞれの変速比の関係は、図16に示すようになる。
【0011】
この実変速比Ratioで実入力回転数InpREVが決まるため、トルクシフト補償無しでは、実変速比Ratioは目標変速比RatioOに対して大きくずれて変速してしまう。但し、アクセルを踏んだとき、戻したとき、そのままの状態を長時間維持しておけば、メカのフィードバックで実変速比Ratioが目標変速比RatioOに追いつくことになる。
【0012】
通常走行した場合の変速比は、図16に示すように、アクセルのON−OFFを伴うため、トルク変化が大きいほど、トルクシフトでずれる変速比も大きいため、変速直後のオーバーシュートもアンダーシュートも大きくなる。
【0013】
到達変速比DRatioから目標変速比RatioOを算出するには変速時定数を用いる。この変速時定数を遅くすれば、オーバーシュートもアンダーシュートも小さくはできる。但し、常時この時定数設定では、変速自体に「間延び感」が出てしまい、変速レスポンスの悪さだけが目立ってしまう。
【0014】
実際の制御では、トルクシフトでずれる変速比を予め用意した補正マップに従って補正をかけ、不足分はフィードバック制御にて補うものとしている。変速レスポンスの向上のためにもフィードバック制御が必要となる。
【0015】
この場合、変速過渡においては、フィードバックで補いきれないため、積分分(I分)を貯め込むことになる。
【0016】
例えば、踏み込みダウンシフトの場合、目標変速比RatioOに対して実変速比Ratioが遅れるため、I分はLow変速をさせる方向に貯まることになる。足離しアップシフトが行われた場合、目標変速比RatioOに対して実変速比Ratioが遅れる分があるため、I分へHi変速をさせる方向に貯まることになる。
【0017】
I分は次に行きたい変速方向が逆の場合は、今までのI分の貯まりを放出してから変速方向のI分を貯めることになる。すなわち、足離しの前が、踏み込み後に目標変速比RatioOが実変速比Ratioに追いつく前だったとすると、図17に示すように、目標変速比RatioOがHi変速に転じた後、まず、I分を放出してからHi側にI分が貯まるため、アンダーシュートを助ける作用がある。
【0018】
このように足離しの前でI分が貯まっているのか、または、どの方向に貯まっているのかによって、アンダーシュートのしやすさは異なる。
【0019】
本発明は上記問題点に着目してなされたもので、アクセル急操作等によりステップ的に定常目標値が変化する時、変速レスポンスを犠牲にすることなく、実際値が基本定常目標値よりも低下するアンダーシュートや実際値が基本定常目標値よりも上昇するオーバーシュートを抑えることができる無段変速機の変速制御装置を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明のうち請求項1記載の発明では、運転者の操作状態及び車両の走行状態により定常的な目標値である定常目標値を設定する定常目標値設定手段と、
設定された前記定常目標値と後述する変速時定数に基づいて変速途中の過渡的な目標値である過渡目標値を設定する過渡目標値設定手段と、
定常目標値と過渡目標値との偏差に基づいて変速時定数を算出する変速時定数算出手段と、
定常目標値に対して過渡目標値を決め、変速時定数による変速応答にて変速制御を行う変速制御手段と、
を備えた無段変速機の変速制御装置において、
前記変速制御手段は、車両走行状態により実際値が定常目標値に至るまでの間を、変速前半の第1の制御領域と、変速後半の第2の制御領域とに分け領域分割変速制御に入る領域分割変速制御手段を有し、
前記領域分割変速制御手段は、運転者の操作状態及び車両の走行状態に基づいた最終的に到達させる基本定常目標値を設定し、
変速前半の第1の制御領域では、前記基本定常目標値より現在値に近い値であって、実入力回転数の低下もしくは上昇を待ち受けて回転を制限する一定値を第1の定常目標値として設定し、この第1の定常目標値と過渡目標値との偏差に基づいて算出された変速時定数により変速制御を行い、
変速後半の第2の制御領域では、第2の制御領域に入った時点から基本定常目標値まで、変速開始時の過渡目標値に基づいて設定された初期値及び傾きにて連続的に変化する値を第2の定常目標値として設定し、この第2の定常目標値と過渡目標値との偏差に基づいて算出された変速時定数により変速制御を行うことを特徴とする。
【0021】
本発明のうち請求項2記載の発明では、請求項1記載の無段変速機の変速制御装置において、
前記領域分割変速制御手段は、制御開始条件のうち車速条件が、アクセル足離しによるアップシフト時、元々ロックアップしていない車速領域、及び、アクセル足離しをしてもコースト線がロックアップ禁止回転までに余裕があり、ロックアップ禁止回転まで下がることのない車速領域であると判定された場合、領域分割変速制御に入らず通常の変速制御を行うことを特徴とする。
【0022】
本発明のうち請求項3記載の発明では、請求項1または請求項2記載の無段変速機の変速制御装置において、
前記領域分割変速制御手段は、アクセル踏み込みによるダウンシフト時、第1の制御領域と第2の制御領域とを切り換える目標入力回転数の切り換え設定値を、非ロックアップ時にはロックアップ時より低回転数とすることを特徴とする。
【0023】
本発明のうち請求項4記載の発明では、請求項1乃至3の何れか1項に記載の無段変速機の変速制御装置において、
前記領域分割変速制御手段は、制御開始条件が成立する場合、前記基本定常目標値と変速時定数から求められた過渡目標値と予め設定された設定値との大小が比較され、該過渡目標値が切り換え設定値を超える時点で第1の制御領域から第2の制御領域に切り換えることを特徴とする。
【0024】
本発明のうち請求項5記載の発明では、請求項1乃至4の何れか1項に記載の無段変速機の変速制御装置において、
前記領域分割変速制御手段は、制御開始条件のうちアイドル条件が、アップシフト時であって、過渡目標値が切り換え設定値を超えないと判断され、かつ、アイドルオフであると判定された場合、領域分割変速制御に入らず通常の変速制御を行うことを特徴とする。
【0025】
本発明のうち請求項6記載の発明では、運転者の操作状態及び車両の走行状態により定常的な目標値である定常目標値を設定する定常目標値設定手段と、
設定された前記定常目標値と後述する変速時定数に基づいて変速途中の過渡的な目標値である過渡目標値を設定する過渡目標値設定手段と、
定常目標値と過渡目標値との偏差に基づいて変速時定数を算出する変速時定数算出手段と、
定常目標値に対して過渡目標値を決め、変速時定数による変速応答にて変速制御を行う変速制御手段と、
を備えた無段変速機の変速制御装置において、
前記変速制御手段は、車両走行状態により実際値が定常目標値に至るまでの間を、変速前半の第1の制御領域と、変速後半の第2の制御領域とに分けて領域分割変速制御に入る領域分割変速制御手段を有し、
前記領域分割変速制御手段は、運転者の操作状態及び車両の走行状態に基づいた最終的に到達させる基本定常目標値と、変速前半の第1の制御領域では、前記基本定常目標値より現在値に近い値であって、実入力回転数の低下もしくは上昇を待ち受けて回転を制限する第1の定常目標値と、変速後半の第2の制御領域では、第2の制御領域に入った時の実際値を前記基本定常目標値に収束させる第2の定常目標値と、を設定し、
前記領域分割変速制御手段は、アクセル踏み込みによるダウンシフト時、第1の制御領域と第2の制御領域とを切り換える目標入力回転数の切り換え設定値を、非ロックアップ時にはロックアップ時より低回転数とすることを特徴とする。
【0026】
本発明のうち請求項7記載の発明では、運転者の操作状態及び車両の走行状態により定常的な目標値である定常目標値を設定する定常目標値設定手段と、
設定された前記定常目標値と後述する変速時定数に基づいて変速途中の過渡的な目標値である過渡目標値を設定する過渡目標値設定手段と、
定常目標値と過渡目標値との偏差に基づいて変速時定数を算出する変速時定数算出手段と、
定常目標値に対して過渡目標値を決め、変速時定数による変速応答にて変速制御を行う変速制御手段と、
を備えた無段変速機の変速制御装置において、
前記変速制御手段は、車両走行状態により実際値が定常目標値に至るまでの間を、変速前半の第1の制御領域と、変速後半の第2の制御領域とに分けて領域分割変速制御に入る領域分割変速制御手段を有し、
前記領域分割変速制御手段は、運転者の操作状態及び車両の走行状態に基づいた最終的に到達させる基本定常目標値と、変速前半の第1の制御領域では、前記基本定常目標値より現在値に近い値であって、実入力回転数の低下もしくは上昇を待ち受けて回転を制限する第1の定常目標値と、変速後半の第2の制御領域では、第2の制御領域に入った時の実際値を前記基本定常目標値に収束させる第2の定常目標値と、を設定し、
前記領域分割変速制御手段は、制御開始条件のうちアイドル条件が、アップシフト時であって、過渡目標値が切り換え設定値を超えないと判断され、かつ、アイドルオフであると判定された場合、領域分割変速制御に入らず通常の変速制御を行うことを特徴とする。
【0027】
【発明の作用および効果】
本発明のうち請求項1記載の発明にあっては、領域分割変速制御に入らない変速時には、定常目標値設定手段において、運転者の操作状態及び車両の走行状態(スロットル開度や車速)により定常的な目標値である定常目標値が設定され、過渡目標値設定手段において、設定された定常目標値と後述する変速時定数に基づいて変速途中の過渡的な目標値である過渡目標値が設定される。そして、変速応答を決める変速時定数は、変速時定数算出手段において、定常目標値と過渡目標値との偏差に基づいて算出され、変速制御手段において、定常目標値に対して過渡目標値を決め、変速時定数による変速応答にて変速制御が行われる。
【0028】
そして、アクセル足離し操作等のようにステップ的なアクセル操作を行うと、車両走行状態により実際値が定常目標値に至るまでの間が、変速前半の第1の制御領域と、変速後半の第2の制御領域とに分けられる領域分割変速制御に入る。領域分割変速制御手段では、運転操作状態と車両の走行状態に基づいた最終的に到達させる基本定常目標値が設定されると共に、変速前半の第1の制御領域では、基本定常目標値より現在値に近い値であって、実入力回転数の低下もしくは上昇を待ち受けて回転を制限する第1の定常目標値が設定され、この第1の定常目標値と過渡目標値との偏差に基づいて算出された変速時定数により変速制御が行われる。そして、変速後半の第2の制御領域では、第2の制御領域に入った時の実際値が基本定常目標値に収束する第2の定常目標値が設定され、この第2の定常目標値と過渡目標値との偏差に基づいて算出された変速時定数により変速制御が行われる。
【0029】
すなわち、第1の制御領域では、アンダーシュートやオーバーシュートが起こる前に、一旦、回転落ちや回転上昇が第1の定常目標値の設定により受け止められることになり、一気にアンダーシュートやオーバーシュートに向かう実際値の変化が防止される。
【0030】
そして、第2の制御領域では、定常目標値に収束する第2の定常目標値の設定により、本来、制御目標とする定常目標値に実際値を収束させることができる。
【0031】
よって、アクセル急操作等によりステップ的に定常目標値が変化する時、変速速度を遅くする方向に変速時定数を変更することでの変速レスポンスを犠牲にすることなく、実際値が基本定常目標値よりも低下するアンダーシュートや実際値が基本定常目標値よりも上昇するオーバーシュートを抑えることができる。
【0032】
加えて、領域分割変速制御手段において、基本定常目標値より現在値に近い値であって、実際値の低下もしくは上昇を待ち受けて回転制限する一定値が第1の定常目標値として設定され、第2の制御領域に入った時点から基本定常目標値まで、変速開始時の過渡目標値に基づいて設定された初期値及び傾きにて連続的に変化する値が第2の定常目標値として設定される。
【0033】
よって、第1の制御領域では、一定値の第1の定常目標値による簡単な制御により、実入力回転数の低下もしくは上昇を待ち受けて回転変化を制限することができるし、第2の制御領域では、連続的に変化する第2の定常目標値に沿うように徐々に変化し、定常目標値への収束性を向上させることができる。
【0034】
本発明のうち請求項2記載の発明にあっては、領域分割変速制御手段において、制御開始条件のうち車速条件が、アクセル足離しによるアップシフト時、元々ロックアップしていない車速領域、及び、アクセル足離しをしてもコースト線がロックアップ禁止回転までに余裕があり、ロックアップ禁止回転まで下がることのない車速領域であると判定された場合、領域分割変速制御に入らず通常の変速制御が行われる
【0035】
よって、常時、領域分割変速制御を行うと、通常の変速制御を行う場合に比べて変速レスポンスが悪化することになるが、車速条件において必要時にのみ行うようにすることで、全体的変速レスポンスの悪化を防止できる。
【0036】
本発明のうち請求項3記載の発明にあっては、領域分割変速制御手段において、アクセル踏み込みによるダウンシフト時、第1の制御領域と第2の制御領域とを切り換える目標入力回転数の切り換え設定値が、非ロックアップ時にはロックアップ時より低回転数とされる。
【0037】
よって、アクセル踏み込み時、非ロックアップ状態ではロックアップ状態に比べて変速機入力回転数が上がりやすいという特性に対応し、アクセル踏み込みによるダウンシフト時、非ロックアップ状態の方が早く第1の制御領域から第2の制御領域へと切り換えることができる。なお、アクセル足離し時には、上記車速条件から明らかなように、ロックアップ状態のみを領域分割変速制御の対象にしている。
また、本発明のうち請求項6記載の発明にあっては、上記したアクセル急操作等によりステップ的に定常目標値が変化する時、変速速度を遅くする方向に変速時定数を変更することでの変速レスポンスを犠牲にすることなく、実際値が基本定常目標値よりも低下するアンダーシュートや実際値が基本定常目標値よりも上昇するオーバーシュートを抑えることができるという効果に加え、アクセル踏み込み時、非ロックアップ状態ではロックアップ状態に比べて変速機入力回転数が上がりやすいという特性に対応し、アクセル踏み込みによるダウンシフト時、非ロックアップ状態の方が早く第1の制御領域から第2の制御領域へと切り換えることができる。
【0038】
本発明のうち請求項4記載の発明にあっては、領域分割変速制御手段において、制御開始条件が成立する場合、基本定常目標値と変速時定数から求められた過渡目標値と予め設定された定値との大小が比較され、該過渡目標値が切り換え設定値を超える時点で第1の制御領域から第2の制御領域に切り換えられる。
【0039】
よって、領域分割変速制御中は、基本定常目標値と変速時定数から求められた過渡目標値が用いられ、過渡目標値のみを用いた制御領域の切り換えとなることで、切り換え時の回転差が抑えられたスムーズな切り換えとすることができる。
【0042】
本発明のうち請求項5記載の発明にあっては、領域分割変速制御手段において、制御開始条件のうちアイドル条件が、アップシフト時であって、過渡目標値が切り換え設定値を超えないと判断され、かつ、アイドルオフであると判定された場合、領域分割変速制御に入らず通常の変速制御が行われる。
【0043】
よって、アイドルオフの場合、アイドルオンの時とは異なり、トルクシフトの方向が変わらないため、アンダーシュートになることがなく、この場合は、領域分割変速制御に入らないものとされ、全体的変速レスポンスの悪化を防止している。
また、本発明のうち請求項7記載の発明にあっては、上記したアクセル急操作等によりステップ的に定常目標値が変化する時、変速速度を遅くする方向に変速時定数を変更することでの変速レスポンスを犠牲にすることなく、実際値が基本定常目標値よりも低下するアンダーシュートや実際値が基本定常目標値よりも上昇するオーバーシュートを抑えることができるという効果に加え、アイドルオフの場合、アイドルオンの時とは異なり、トルクシフトの方向が変わらないため、アンダーシュートになることがなく、この場合は、領域分割変速制御に入らないものとされ、全体的変速レスポンスの悪化を防止することができる。
【0044】
【発明の実施の形態】
本発明による無段変速機の変速制御装置を、図面を参照して詳細に説明する。
【0045】
[無段変速機の伝動ユニット及び変速制御装置の構成について]
図1及び図2は、本発明による無段変速機の変速制御装置を備えるトロイダル型無段変速機を示し、図1はトロイダル型無段変速機の伝動ユニットを示す縦断側面図、図2はトロイダル型無段変速機の変速制御装置を示す図である。
【0046】
まず、トロイダル型無段変速機の主要部である伝動ユニットを、図1により説明する。この伝動ユニットは、図示しないエンジンからの回転が伝達される入力軸20を備え、この入力軸20は、図1に示すように、エンジンから遠い端部を変速機ケース21内に軸受22を介して回転自在に支持し、中央部を変速機ケース21の中間壁23内に軸受24及び中空出力軸25を介して回転自在に支持する。
【0047】
前記入力軸20には入力コーンディスク1を支持し、前記中空出力軸25には出力コーンディスク2を支持し、入出力コーンディスク1,2は、そのトロイド曲面1a,2aが互いに対向するように同軸配置する。
【0048】
そして、入出力コーンディスク1,2の対向するトロイド曲面1a,2a間には、入力軸20を挟んでその両側に配置した一対のパワーローラ3,3を介在させ、これらのパワーローラ3,3を入出力コーンディスク1,2間に挟圧するために、以下の構成を採用する。
【0049】
すなわち、入力軸20の軸受22側端部にローディングナット26を螺合し、このローディングナット26により抜け止めして入力軸20上に回転係合させたカムディスク27と、入力コーンディスク1のトロイド曲面1aから遠い端面との間にローディングカム28を介在させ、このローディングカム28を介して、入力軸20からカムディスク27への回転が入力コーンディスク1に伝達されるようになす。
【0050】
ここで、入力コーンディスク1の回転は両パワーローラ3,3の回転を介して出力コーンディスク2に伝わり、この伝動中、ローディングカム28は伝達トルクに比例したスラストを発生して、パワーローラ3,3を入出力コーンディスク1,2間に狭圧し、上記動力伝達を可能にする。
【0051】
前記出力コーンディスク2は、出力軸25に楔着し、この出力軸25上に出力歯車29を一体回転するように嵌着する。
【0052】
出力軸25はさらに、ラジアル兼スラスト軸受30を介して変速機ケース21の端蓋31内に回転自在に支持し、この端蓋31内には別にラジアル兼スラスト軸受32を介して入力軸20を回転自在に支持する。ここで、ラジアル兼スラスト軸受30,32は、スペーサ33を開始て相互に接近しないように突き合わせ、また相互に遠ざかる方向への相対変位不能になるよう、対応する出力歯車29入力軸20に対し軸線方向に衝接させる。
【0053】
上記構成により、ローディングカム28によって入出力コーンディスク1,2間に作用するスラストは、スペーサ33を挟むような内力となり、変速機ケース21に作用することがない。
【0054】
各パワーローラ3,3は、図2にも示すように、トラニオン41,41に回転自在に支持し、このトラニオン41,41は、それぞれ上端を球面継手42によりアッパリンク43の両端に回転自在及び揺動自在に、また、下端を球面継手44によりロアリンク45の両端に回転自在及び揺動自在に連結する。
【0055】
そして、アッパリンク43及びロアリンク45は、中央を球面継手46,47により変速機ケース21に上下方向揺動可能に支持し、両トラニオン41,41を相互逆向きにに同期して上下動させ得るようにする。
【0056】
このように、両トラニオン41,41を、相互逆向きに同期して上下動させることによって変速を行う変速制御装置を、図2に基づいて説明する。
【0057】
各トラニオン41,41は、これらを個々に上下方向へストロークさせるためのピストン6,6を設け、両ピストン6,6の両側に、それぞれ上方室51,52及び下方室53,54を画成する。そして両ピストン6,6を相互逆向きにストローク制御するために、変速制御弁5を設置する。
【0058】
ここで、変速制御弁5は、スプール型の内弁体5aと、スリーブ型の外弁体5bとを相互に摺動可能に嵌合し、外弁体5bを弁ケース5cに摺動自在に嵌合して構成する。
【0059】
上記変速制御弁5は、入力ポート5dを圧力源55に接続し、一方の連絡ポート5eをピストン室51,54に、また、他方の連絡ポート5fをピストン知る52,53にそれぞれ接続する。
【0060】
そして、内弁体5aを、一方のトラニオン41の下端に固着したプリセスカム7のカム面に、ベルクランク型の変速レバー8を介して共働させ、外弁体5bを変速アクチュエータとしてのステップモータ4に、ラックアンドピニオン型式で駆動係合させる。
【0061】
変速制御弁5の操作指令は、アクチュエータ駆動位置指令Astep(ステップ位置指令)に応動するステップモータ4が、ラックアンドピニオンを介し外弁体5bにストロークとして与えることとする。
【0062】
この操作指令で、変速制御弁5の外弁体5bが内弁体5aに対し相対的に中立位置から、例えば、図2の位置に変位されて変速制御弁5が開くとき、圧力源55からの流体圧(ライン圧PL)が室52,53に供給される一方、他の室51,54がドレンされ、また、変速制御弁5の外弁体5bが内弁体5aに対し相対的に中立位置から逆方向に変位されて変速制御弁5が開くとき、圧力源55からの流体圧が室51,54に供給される一方、他の室52,53がドレンされ、両トラニオン41,41が流体圧でピストン6,6を介して図中、対応した上下方向へ相互逆向きに変位されるものとする。
【0063】
これにより両パワーローラ3,3は、回転軸軸Oが入出力コーンディスク1,2の回転軸線Oと交差する図示位置からオフセット(オフセット量y)されることになり、核オフセットによりパワーローラ3,3は入出力コーンディスク1,2からの首振り分力で、自己の回転軸線Oと直行する首振り軸線Oの周りに傾転(傾転角φ)されて無段変速を行うことができる。
【0064】
このような変速中、一方のトラニオン41の下端に結合したプリセスカム7は、変速リンク8を介して、トラニオン41及びパワーローラ3の上述した上下動(オフセット量y)及び傾転角φを変速制御弁5の内弁体5aに機械的にxで示すようにフィードバックされる。
【0065】
そして上記無段変速により、ステップモータ4へのアクチュエータ駆動位置指令Astepに対応した変速比指令値が達成される時、上記のプリセスカム7を介した機械的フィ一ドバックが変速制御弁5の内弁体5aをして、外弁体5bに対し相対的に初期の中立位置に復帰させ、同時に、両パワーローラ3,3は、回転軸線Oが入出力コーンディスク1,2の回転軸線0と交差する図示位置に戻ることで、上記変速比指令値の達成状態を維持することができる。
【0066】
なお、パワーローラ傾転角φを変速比指令値に対応した値にすることが制御の狙いであるから、基本的にプリセスカム7はパワーローラ傾転角φのみをフィードバックすればよいことになるが、ここでパワーローラオフセット量yをもフィードバックする理由は、変速制御が振動的になるのを防止ずるダンピング効果を与えて、変速制御のハンチング現象を回避するためである。
【0067】
ステップモータ4へのアクチュエ一タ駆動位置指令Astepは、コントローラ61によって設定される。
【0068】
このためにコントローラ61には図2に示すように、エンジンスロットル開度TVOを検出するスロットル開度センサ62からの信号、車速VSPを検出する車速センサ63からの信号、入力コーンディスク1の回転数Ni(エンジン回転数Neでもよい)を検出する入力回転センサ64からの信号、出力コーンディスク2の回転数Noを検出する出力回転センサ65からの信号、変速機作動油温TMPを検出ずる油温センサ66からの信号、前記油圧源55からのライン圧Pを検出する(通常は、ライン圧Pをコントローラ61で制御するからコントローラ61の内部信号から検知する)ライン圧センサ67からの信号、工ンジン回転数Neを検出するエンジン回転センサ68からの信号、インヒビタスイッチ60からのレンジ情報についての信号、UP/DOWNスイッチ69からのUP/DOWN情報についての信号、モード選択スイッチ70からの選択モード信号、工ンジン制御装置310からのトルクダウン許可信号、アンチスキッド制御装置(ABS)320からのABS制御信号、トラクションコントロール装置(TCS)330からのTCS制御信号及び定速走行装置340からのASCDクルーズ信号をそれぞれ入力する。
【0069】
コントローラ61は、上記の各種入力情報を基にして以下の演算によってステップモータ4へのアクチュエータ駆動位置指令Astep(変速指令値)を設定するものとする。
【0070】
[コントローラの構成について]
本実施の形態では、コントローラ61を図3に示すように構成する。
【0071】
変速マップ選択部71は、図2のセンサ66で検出した油温TMPや、排気浄化触媒の活性化運転中か否かなど、各種条件に応じて変速マッブを選択する。
【0072】
到達入力回転数算出部72は、このようにして選択された変速マップが例えば図4に示すようなものである場合について説明すると、図2のセンサ62,63でそれぞれ検出したスロットル開度TVO及び車速VSPから、同図の変速線図に対応した変速マップをもとに、現在の運転状態での定常的な目標入力回転数とすべき到達入力回転数Ni*を検索して求める。
【0073】
到達変速比演算部73は、到達入力回転数Ni*を図2のセンサ65で検出した変速機出力回転数Noで除算することによって、到達入力回転数Ni*に対応する定常的な目標変速比である到達変速比i*を求める。
【0074】
変速時定数算出部74は、選択レンジ(前進通常走行レンジD、前進スポーツ走行レンジDs)、車速VSP、スロットル開度TVO、エンジン回転数Ne、アクセルペダル操作速度、トルクダウン制御装置(図示せず)からのトルクダウン量に関する信号及びトルクダウン許可信号、アンチスキッド制御信号、トラクション制御信号、定速走行信号、後に説明する目標変速比Ratio0との変速比偏差RtoERR、などの各種条件に応じて変速制御の第1変速時定数Tg1及び第2変速時定数Tg2を設定するとともに、到達変速比i*と目標変速比Ratio0との偏差Eipを算出する。
【0075】
ここでトロイダル型無段変速機の2次的な遅れ系に対応するために設定される第1変速時定数Tg1及び第2変速時定数Tg2は、到達変速比i*に対する変速の応答性を設定して変速速度を定めるためのもので、目標変速比算出部75は、到達変速比i*を第1変速時定数Tg1及び第2変速時定数Tg2で定めた変速応答をもって実現するための過渡的な時時刻々の目標変速比Ratio0及び中間変速比Ratio00をそれぞれ算出し、目標変速比Ratio0のみを出力する。
【0076】
入力トルク算出部76は、周知の方法によって変速機入力トルクTiを求めるものであり、先ずスロットル開度TVO及びエンジン回転数Neからエンジン出力トルクを求め、次いでトルクコンバータの入出力回転数(Ne,Ni)比である速度比からトルクコンバータのトルク比tを求め、最後にエンジン出力トルクにトルク比tを乗じて変速機入力トルクTiを算出する。
【0077】
トルクシフト補償変速比算出部77は、過渡的な上記目標変速比Ratio0及び当該変速機入力トルクTiから、トロイダル型無段変速機に特有なトルクシフト(変速比の不正)をなくすためのトルクシフト補償変速比TSrtoを算出する。
【0078】
ここで、トロイダル型無段変速機のトルクシフトを補足説明すると、トロイダル型無段変速機の伝動中には、既に説明したようにしてパワーローラ3,3を入出力コーンディスク1,2間に挟圧することからトラニオン41の変形が発生し、これによりこのトラニオンの下端におけるプリセスカム7の位置が変化してプリセスカム7及び変速リンク8からなる機械的フィードバック系の系路長変化を惹起し、これによって上記トルクシフトを発生させる。
【0079】
したがって、トロイダル型無段変速機のトルクシフトは、目標変速比Ratio0及び変速機入力トルクTiによって異なり、トルクシフト補償変速比算出部77は、これらの2次元マップからトルクシフト補償変速比TSrtoを検索によって求める。
【0080】
実変速比算出部78は、変速機入力回転数Niを図2のセンサ65で検出した変速機出力回転数Noで除算することによって、実変速比Ratioを算出する。変速比偏差算出部79は、上記目標変速比Ratio0から実変速比Ratioを差し引いて、両者間における変速比偏差RtoERR(=Ratio0−Ratio)を求める。
【0081】
第1フィードバック(FB)ゲイン算出部80は、変速比偏差RtoERRに応じた周知のPID制御(Pは比例制御、Iは積分制御、Dは微分制御)による変速比フィードバック補正量を算出するときに用いられ、それぞれの制御のフィードバックゲインのうち、変速機入力回転数Ni及び車速VSPに応じて設定すべき第1の比例制御用フィードバックゲインfbpDATA1、積分制御用フィードバックゲインfbiDATA1、及び微分制御用フィードバックゲインfbdDATA1をそれぞれ求める。
【0082】
これら第1のフィードバックゲインfbpDATA1,fbiDATA1,fbdDATA1は、変速機入力回転数Ni及び車速VSPの2次元マップとして予め定めておき、このマップを基に変速機入力回転数Ni及び車速VSPから検索により求めるものとする。
【0083】
第2フィードバック(FB)ゲイン算出部81は、上記PID制御による変速比フィードバック補正量を算出するときに用いるフィードバックゲインのうち、変速機作動油温TMP及びライン圧Pに応じて設定すべき第2の比例制御用フィードバックゲインfbpDATA2、積分制御用フィードバックゲインfbiDATA2、及び微分制御用フィードバックゲインfbdDATA2をそれぞれ求める。
【0084】
これら第2のフィードバックゲインfbpDATA2,fbiDATA2,fbdDATA2は、作動油温TMP及びライン圧Pの2次元マップとして予め定めておき、このマップを基に作動油温TMP及びライン圧Pから検索により求めるものとする。
【0085】
フィードバックゲイン算出部83は、上記第1のフィ一ドバックゲイン及び第2のフィードバックゲインを対応するもの同士掛け合わせて、比例制御用フィードバックゲインfbpDATA(=fbpDATA1×fbpDATA2)、積分制御用フィードバックゲインfbiDATA(=fbiDATA1×fbiDATA2)、及び微分制御用フィードバックゲインfbdDATA(=fbdDATA1×fbdDATA2)を求める。
【0086】
PID制御部84は、以上のようにして求めたフィードバックゲインを用い、変速比偏差RtoERRに応じたPID制御による変速比フィードバック補正量FBrtoを算出するために、
先す比例制御による変速比フィードバック補正量をRtoERR×fbpDATAにより求め、
次いで積分制御による変速比フィードバック補正量を∫RtoERR×fbiDATAにより求め、
更に微分制御による変速比フィードバック補正量を(d/dt)RtoERR×fbdDATAにより求め、
最後にこれら3者の和値をPID制御による変速比フィードバック補正量FBrto(=RtoERR×fbpDATA+∫RtoERR×fbiDATA+(d/dt)RtoERR×fbdDATA)とする。
【0087】
目標変速比補正部85は、目標変速比Ratio0をトルクシフト補償変速比TSrto及び変速比フィードバック補正量FBrtoだけ補正して、補正済目標変速比DsrRTO(=Ratio0+TSrto+FBrto)を求める。
目標ステップ数(アクチュエータ目標駆動位置)算出部86は、上記の補正済目標変速比DsrRTOを実現するためのステップモータ(アクチュエータ)4の目標ステップ数(アクチュエータ目標駆動位置)DsrSTPをマップ検索により求める。
【0088】
ステップモータ駆動位置指令算出部87は、ステップモータ駆動速度設定部88が変速機作動油温TMPなどから設定するステップモータ4の限界駆動速度でも1制御周期中にステップモータ4が上記目標ステップ数DsrSTPに変位し得ないとき、ステップモータ4の上記限界駆動速度で実現可能な実現可能限界位置をステップモータ4への駆動位置指令Astepとなし、ステップモータ4が1制御周期中に上記目標ステップ数DsrSTPに変位し得るときは、当該目標ステッブ数DsrSTPをそのままステップモータ4への駆動位置指令Astepとなすものとする。
【0089】
したがって、駆動位置指令Astepは常時ステップモータ4の実駆動位置とみなすことができる。
【0090】
ステップモータ4は、駆動位置指令Astepに対応する方向及び位置に変位されてラックアンドピニオンを介し変速制御弁5の外弁体5bをストロ一クさせ、トロイダル型無段変速機を既に説明したように所定通りに変速させることができる。
【0091】
この変速によって駆動位置指令Astepに対応した変速比指令値が達成される時、プリセスカム7を介した機械的フィードバックが変速制御弁5の内弁体5aをして、外分体5bに対し相対的に初期の中立位置に復帰させ、同時に、両パワーローラ3,3は、回転軸線0が入出力コーンディスク1,2の回転軸線0と交差する図示位置に戻ることで、上記変速比指令値の達成状態を維持することができる。
【0092】
なお、本実施の形態では、ステップモータ追従可能判定部89を付加して設ける。
【0093】
このステップモータ追従可能判定部89は、ステップモータ4が補正済目標変速比DsrRTOに対応した目標ステップ数(アクチュエータ目標駆動位置)DsrSTPに追従可能か否かを、以下により判定するものである。
【0094】
つまり判定部89は先ず、目標ステップ数(アクチュエータ目標駆動位置)DsrSTPと、実駆動位置とみなすことができる駆動位置指令Astepとの間におけるステップ数偏差(アクチュエータ駆動位置偏差)△STPを求める。
【0095】
そして判定部89は、ステップモータ駆動速度設定部88によって既に説明したように設定されたステップモ一夕4の限界駆動速度でもステップモータ4が1制御周期中に解消し得ないステップ数偏差(アクチュエータ駆動位置偏差)の下限値△STPLIMよりもステップ数偏差(アクチュエータ駆動位置偏差)△STPが小さい時(△STP<△STPLIM)、ステップモータ4が補正済目標変速比DsrRTOに対応した目標ステップ数(アクチュエータ目標駆動位置)DsrSTPに追従可能であると判定し、
逆に△STP≧△STPLIMである時、ステップモータ4が目標ステップ数(アクチュエータ目標駆動位置)DsrSTPに追従不能であると判定する。
【0096】
判別部89は、ステップモータ4が補正済目標変速比DsrRTOに対応した目標ステップ数(アクチュエータ目標駆動位置)DsrSTPに追従可能であると判定する場合、PID制御部84で、既に説明した通りのPID制御による変速比フィードバック補正量FBrtoの演算を継続させる。
【0097】
このようにして、ステップモータ4が目標ステップ数(アクチュエータ目標駆動位置)DsrSTPに追従不能であると判定した場合は、積分制御による変速比フィードバック補正量∫RtoERR×fbiDATAを当該判定時における値に保持するようPID制御部84に指令する。
【0098】
さらに本実施の形態では、ステップモータ駆動位置指令算出部87において、ステップモータ4の限界駆動速度でも1制御周期中にステップモータ4が目標ステップ数DsrSTPに変位し得ないとき、ステップモータ4の限界駆動速度で実現可能な実現可能限界位置をステップモータ4への駆動位置指令Astepとなすようにし、この駆動位置指令Astepをステップモータ4の実駆動位置として判定部89でのステップモータ追従可能判定に資することにしたから、
このような追従可能判定を行うに際して必要なステップモータ4の実駆動位置を、変速制御装置からステップモータ4への駆動位置指令Astepで検知することとなり、上記の追従可能判定を、ステップモータ4の実駆動位置の実測に頼ることなく廉価に行うことができる。
【0099】
また本実施の形態では、ステップモータ追従可能判定部89において、目標ステップ数(アクチュエータ目標駆動位置)DsrSTPと、実駆動位置(駆動位置指令)Astepとの間におけるステップ数偏差(アクチュエータ駆動位置偏差)△STFが、ステップモータ4の限界駆動速度ごとに定めた追従判定基準偏差△STPLIMよりも小さい時(△STP<△STPLIM)、ステップモータ4が補正済目標変速比DsrRTOに対応した目標ステップ数(アクチュエータ目標駆動位置)DsrSTPに追従可能であると判定し、逆に△STP≧△STPLIMである時、ステップモータ4が目標ステップ数(アクチュエータ目標駆動位置)DsrSTPに追従不能であると判定するため、
油温TMPなどで種々に変化するステップモータ4の限界駆動速度に関係なくステップモータ4の追従可能判定を確実に行うことができる。
【0100】
[変速制御の全体について]
図2のコントローラ61をマイクロコンピュータで構成する場合、図3について説明した通常の変速制御は図5のプログラムでこれを実行する。
【0101】
図5は変速制御の全体を示し、このルーチンは、例えば、10msごとに実行される。先ず、ステップ91において、変速時定数算出部74(図3)は、車速センサ63(図2)によって検出された車速VSP、エンジン回転センサ68(図2)によって検出されたエンジン回転数Ne、入力回転センサ64(図2)によって検出された変速機入力回転数Ni、スロットル開度センサ62(図2)によって検出されたスロットル開度TVO、インヒビタスイッチ60(図2)からのレンジ情報(自動変速(D)レンジ、スポーツ走行(S)レンジ等)等を読み込む。
【0102】
次いで、ステップ92において、到達入力回転数算出部72(図3)は、入力回転数Niを変速機出力回転数Noによって除算することによって、実変速比Ratioを算出する。次いで、ステップ93において、スロットル開度TVO及び車速VSPから図4に図示したような変速マップを基にして到達入力回転数Niを検索して求める。
【0103】
次いで、到達変速比設定手段としてのステップ94において、到達変速比算出部73(図3)は、この到達入力回転数Niを変速機出力回転数Noで除算することによって到達変速比iを算出する。次いで、偏差算出手段としてのステップ95において、変速時定数算出部74(図3)は、到達変速比iから、前回のルーチンで算出した目標変速比Ratio0(これは後のステップ99で算出される。)を減算して偏差Eipを算出する。
【0104】
次いで、ステップ96において、モード切替、マニュアル変速による有段の変速(以下、「スイッチ変速」という。)があったか否か判定する。具体的には、モード選択スイッチ70(図2)からの選択モード信号に応じて、パワーモードとスノーモードとの間の切替の有無を検出し、インヒビタスイッチ60(図2)からマニュアルレンジ信号を検出するとともにUP/DOWNスイッチ69(図2)からUP/DOWN情報についての信号を検出したか否か判定する。次いで、モード設定手段としてのステップ97、ステップ98及び目標変速比設定手段としてのステップ99において、変速時定数算出部74(図3)は、時定数算出モードと、第1及び第2変速時定数Tg1及びTg2と、目標変速比Ratio0及び中間変速比Ratio00とをそれぞれ算出する。
【0105】
その後、ステップ100において、トルクシフト補償変速比算出部77(図3)は、目標変速比Ratio0及び変速機入力トルクTiに関するマップからトルクシフト補償変速比TSrtoを算出する。次いで、ステップ101において、PID制御部84(図3)は、PID制御によって変速比フィードバック補正量FBrtoを算出する。次いで、ステップ102において、目標変速比補正部85(図3)は、目標変速比Ratio0にトルクシフト補償変速比TSrto及び変速比フィードバック補正量FBrto加算して、補正済目標変速比DsrRTOを算出する。次いで、ステップ103において、ステップモータ4(図2)への駆動位置指令Astepを算出し、本ルーチンを終了する。
【0106】
[領域分割変速制御]
以上の説明は、通常の変速制御についての説明であり、この通常の変速制御とは区別して用いられる領域分割変速制御について以下に説明する。この領域分割変速制御は、変速時定数を変更する場合に比べ変速間延び感なく、アップシフトでのアンダーシュート及びダウンシフトでのオーバーシュートを抑える制御である。なお、請求項記載の文言との対応関係は、下記の通りである。
【0107】
基本定常目標値→基本到達入力回転数TDsrREV
過渡目標値→目標入力回転数LInpREV
実際値→実入力回転数InpREV
第1の定常目標値及び第2の定常目標値→到達入力回転数DsrREV
待ち受け回転制限値→待ち受け到達入力回転数WAITREVUL(DL)
切り換え設定値→後半制御開始入力回転数WAITREVUH(DL)
図6は変速制御プログラム中の領域分割変速制御処理を示すフローチャートで、図7はアップシフト時のタイムチャートで、図8はダウンシフト時のタイムチャートである。
【0108】
1.制御中か否かを判断
ステップ104では、制御中かどうかが判断される。本制御は、一度制御に入った後は、到達入力回転数DsrREVが基本到達入力回転数TDsrREVとなるまで制御を続けるものとしている。制御中であれば傾きDrevの計算を続ける。
【0109】
2.UP/DOWN判定
ステップ105では、アップシフトかダウンシフトかの判定がされる。本制御は、アップシフト及びダウンシフトでそれぞれの制御を行うため、判定が必要である。また、どちらでもない場合には、本制御の必要がないため、ステップ126へ進み、DsrREV=TDsrREVとして制御を終了する。
【0110】
このUP/DOWNの判定は、到達入力回転数の差Diffをとることで判断している(設定は、約20rpm)。
【0111】
前回の到達入力回転数は基本到達入力回転数TDsrREVとし、今回の到達入力回転数は変速時定数のかかった目標変速比Ratioから逆算した目標入力回転数LInpREVとし、両者の差異により算出される。
【0112】
また、比較は、問題としている入力回転数をダイレクトにみたいので、変速比ではなく入力回転同士の比較とした。
【0113】
3.車速判定
次に、制御開始条件に入っているかどうかを、車速、L/U状態、Idle状態から判断する。
【0114】
制御開始条件のうち車速条件は、ステップ106及びステップ107により判定される。つまり、ステップ106では、アップシフト時に車速が制御領域分割変速制御を必要とする車速領域かどうかが判断される。また、ステップ107では、ダウンシフト時に車速が領域分割変速制御を必要とする車速領域かどうかが判断される。
【0115】
本制御は常時行われると、変速レスポンスが通常の変速制御に比べて低下するので、必要時にのみ本制御に入るようにしている。
【0116】
必要時としては、例えば、アクセル足離し時、元々ロックアップしていない車速領域、及び、アクセル足離しをしてもコースト線がロックアップ禁止回転となるまでに余裕があり、ロックアップ禁止回転まで下がることのない領域は本制御の対象外とした。
【0117】
4.L/U判定
制御開始条件のうちL/U条件は、ステップ108により判定される。つまり、ステップ108では、ダウンシフトを考えると、ロックアップ時と非ロックアップ時とでは入力回転の上昇が異なり、非ロックアップ時の方がオーバーシュートしやすいので、ロックアップ状態の判定を行うようにした。なお、ステップ108において、「以外」とは、スリップロックアップ状態をいい、スリップロックアップ状態では顕著な回転数変化があらわれないので領域分割制御を行う必要が無い。
【0118】
5.Idle判定
制御開始条件のうちIdle条件は、ステップ110により判定される。つまり、ステップ110では、アクセルペダルが完全に戻されているかどうかが判定される。これは、アクセルペダルが踏まれている状態での足戻しは、トルクシフトの変化がコーストに変化したときに比べて小さく、アンダーシュートの心配がない。コースト時のみを制御対象とするためにアイドル判定を行う。
【0119】
なお、アイドル判定は、スロットルセンサ電圧を基に、スロットルセンサオフセット分を補正し、前回のアイドル判定と比較し、フェイル等に入っていないことを確認して判定したものである。
【0120】
6.制御領域分け
次に、制御開始条件が成立する場合、目標入力回転数LInpREVによって制御領域を分ける。
【0121】
この制御領域は、回転制限を段階的に行い、連続的に実入力回転数InpREVを変化させるため、前半と後半に分ける。基本的な考え方は、目標入力回転数LInpREVに沿った実入力回転数InpREVの実現である。つまり、アンダーシュートやオーバーシュートを救うことを最優先として遅い変速とした場合、変速の「間延び感」が出る。これと、本来、達成したいアンダーシュート及びオーバーシュートを救うことを両立させるためには、TDsrREVに近づいた変速終期を含む変速後半と、変速初期を含む変速前半とを分けたい。
【0122】
以下、図7及び図8に示すように、アップシフトでの前半の制御領域を領域(1)、後半の制御領域を領域(2)とし、ダウンシフトでの前半の制御領域を領域(3)、後半の制御領域を領域(4)とする。
【0123】
前半の制御領域である領域(1)と領域(3)では、予め設定してある待ち受け回転数waitREVと現在の基本到達入力回転数TDsrREVを比較することで行われる。
【0124】
アップシフトの場合、ステップ111〜ステップ113のように、大きい方;
DsrREV=max(WAITREVUL、TDsrREV)
ダウンシフトの場合、ステップ123〜ステップ125のように、小さい方;
DsrREV=min(WAITREVDH、TDsrREV)
をとることで、目標入力回転数DsrREVのかさ上げをし、入力回転の急変を一時抑えるようにしている。
【0125】
なお、待ち受け回転数waitREVの設定は、実験データを基に、前半の領域(1),(3)までは、間延び感なく回転を変化させるため、できる限り基本到達入力回転数TDsrREVに近いところで設定している。
【0126】
後半の制御領域である領域(2)と領域(4)では、アンダーシュート及びオーバーシュートをさせないレベルで、遅い変速とし(実験データにより傾きDrevを決定)、本来の目標変速比通りの変速に近づけるようにしている。
【0127】
傾きDrevは、制御の計算遅れを考慮して基本的にアップシフト時は、目標入力回転数LInpREVよりも小さく、ダウンシフト時は、目標入力回転数LInpREVよりも大きく設定している。
【0128】
到達入力回転数DsrREVを、(1)→(2)または(3)→(4)へ切り換えるタイミングは、目標入力回転数LInpREVのみにより行われ、連続的、段階的に回転を制御するものとされる。
【0129】
すなわち、アップシフトの場合、ステップ109において、目標入力回転数LInpREVが設定値(WAITREVUH)まで変化したところで領域(1)から領域(2)へ切り換えるようにしている。
【0130】
領域(1)の待ち受け到達入力回転数WAITREVUL(=waitREV)と、領域(2)の後半制御開始入力回転数WAITREVUH(図6では設定値)との間には、100rpm程度の差を付け、待ち受け到達入力回転数WAITREVULを後半制御開始入力回転数WAITREVUHより下にすることで、自動的に制御開始回転を通過するようにして、目標入力回転数LInpREVのみで連続的に制御領域を切り換えるものとした。
【0131】
なお、ダウンシフトについては、ステップ108でのロックアップの判定に基づき、ステップ121とステップ122とで領域(3)から領域(4)へ切り換える設定値を異ならせている。
【0132】
7.制御開始初回か
ステップ115では、領域(2)の制御開始初回かどうかが判定される。制御開始入力回転数及び回転変化の傾きは、一度決めたものを制御終了まで使うものとしている。よって、初回である場合は、ステップ116及びステップ117へ進み、初期値の設定と回転変化の傾きが設定される。
【0133】
8.制御終了
制御終了は、ステップ118にように、本来の目標である基本到達入力回転数TDsrREVが、到達入力回転数DsrREVと同じになったところで終了とする。つまり、TDsrREV=DsrREVが制御終了条件であり、この条件が成立しない間は、ステップ119へ進み、設定された回転変化の傾きにより制御が継続される。
【0134】
[制御に用いられる各値の決め方]
次に、図9〜図13に基づいて、領域分割変速制御(アップシフトの例)で用いられる各値等の決め方について説明する。
【0135】
本制御は、(TDsrREV−LInpREV)からアップシフトを判断し、図9に示すように、到達入力回転数は、TDsrREV→DsrREV’へ、設定回転になると右下がりDsrREVへ、結果的に到達入力回転数DsrREVはDsrREV”の軌跡となる。このDsrREV”から求められる到達変速比DRatio→DRatio”へ、このDRatio”から求められる目標変速比RatioO→RatioO”へ、結果的に得られる変速比Ratio→Ratio”となる。そして、最終的に得られる入力回転数InpREVは、図9のInpREV”となり、アンダーシュートが抑えられる。
【0136】
以下、各設定事項について説明する。
【0137】
A.WAITREVULの設定
待ち受け到達入力回転数WAITREVULの設定は、図10に示すように、目標入力回転数LInpREVが後半制御開始入力回転数WAITREVUHとなった時点から制御領域が切り換えられるため、単純に、後半制御開始入力回転数WAITREVUHに近い値(例えば、100rpmの差)を設定する。
【0138】
B.WAITREVUHの設定
後半制御開始入力回転数WAITREVUHの設定は、基本到達入力回転数TDsrREVの既定割合(7〜8割)のところに設定する。
【0139】
変速時定数により目標入力回転数LInpREVのカーブは異なり、アンダーシュートに至る入力回転数は異なるが、変速時定数が決まってしまえば、ほとんど同じである(時定数マッチングとセットで定数決めをする必要あり)。
【0140】
すなわち、図11に示すように、同じ時間で変速が終了するように変速時定数が決められるので、既定割合での目標入力回転数LInpREVの変曲点(+の符号位置)の回転数は、高回転からの足離し時も低回転からの足離し時もほとんど変わらない。逆に、高回転からのトルク変化が大きい方は、低回転からの足離しよりも若干高めの位置になるので、この入力回転で後半制御開始入力回転数WAITREVUHを設定すれば、低回転からの足離し時には有利な方向となる。
【0141】
C.αREVの設定
初期回転数αREVの設定は、予め設定されている不等ピッチテーブルと制御開始時の目標入力回転数LInpREVを基に算出される。
【0142】
例えば、図12に示すように、1600rpm以上から下がってきた場合、1590(DsrREV)=1600(LInpREV)−10(αREV)となり、1590rpmから傾き3rpm/bitで回転を下げていくことになる。
【0143】
D.領域切り換え
領域切り換えは、実入力回転数InpREVの既定回転数のみで決める。
【0144】
ここで、既定回転数は、上記B.で述べたように、基本到達入力回転数TDsrREVの既定割合である。
【0145】
E.DrevUPの設定
アップシフトでの傾きDrevUPの設定は、初期回転数αREVと同様に、、予め設定されている不等ピッチテーブルと制御開始時の目標入力回転数LInpREVを基に算出され、図13に示すように、制御開始時の目標入力回転数LInpREVが大きいほど大きくとる。
【0146】
これは、制御無し時に比べ、変速間延び感を出さないようにするためには、変速の時系列の傾きが大きいほど、到達入力回転数DsrREVの傾きを大きくとる必要があることによる。また、これによるアンダーシュートのしやすさは、低回転からのアクセル足離しの方が、アンダーシュート量が小さいことを考えると同等と言える。
【0147】
なお、ダウンシフトの場合、基本的にアップシフトの逆となる。ロックアップ時と非ロックアップ時とでの待ち受け回転数waitREVの違いは、トルクコンバータのスリップ分を足し込んで非ロックアップ時の待ち受け回転数waitREVを下げている。
【0148】
[領域分割変速制御作用について]
様々な制約がある中で、アップシフトにおいて、アンダーシュートを許容値内に入れるために採用した制御変更点とメリットを簡単に述べると、下記のようになる。
【0149】
(1)到達入力回転を持ち上げる
アンダーシュートが起こる前に一度回転落ちを受け止めるため、一気にアンダーシュートすることがない。
【0150】
(2)現在の入力回転の落ち方と同じ割合で到達入力回転を落とす。
【0151】
徐々に目標とする回転を変化させるため、基本到達入力回転に達し易い。また、回転の落とし方を従来の場合と変えていないため、間延び感もない。
【0152】
(3)制御中の到達入力回転(DsrREV)と、基本到達入力回転(TDsrREV)とを分けている。
【0153】
制御干渉がなく、しかも制御終了条件として、基本到達入力回転(TDsrREV)を使えるため、本来あるべき入力回転の落ち着き先は変わらない。
【0154】
次に、本実施の形態の特徴とする点を下記に列挙する。
【0155】
(a)制御開始条件に、実車速(VSPSEN)、L/U状態、目標入力回転数(LInpREV)、アイドル状態を持ち、通常変速と区別するものとした。
【0156】
(b)制御中は、本制御中以外で使う目標入力回転である基本到達入力回転数TDsrREVと到達入力回転数DsrREVと分けることで、他制御との干渉を無くした。
【0157】
また、終了条件を、TDsrREV=DsrREVとすることで、最終目標とする入力ディスク回転は変わらないものとした。
【0158】
(c)制御中は、待ち受け回転数(waitREV)を設定することで、アクセル足離し及びアクセル踏み込み直後のアンダーシュート及びオーバーシュートを抑えるものとした。
【0159】
(d)制御中の回転制御は、変速時定数のかかった目標変速比RatioOから逆算した目標入力回転数LInpREVを使うことで、制御切り換え時の回転差を無くした。
【0160】
(e)制御開始時の初期値αREVの設定により、変速しない、すなわち、回転変化のないアクセル足離し等においても、初期の回転落ちを抑えることができる。
【0161】
(f)回転制御の仕方は、目標変速比RatioOから逆算した目標入力回転数LInpREVを使う、つまり、直接、目標入力回転相当を制御することで、アンダーシュート及びオーバーシュートの回転を直接制御することができる。
【0162】
(g)アクセル足離しアップシフト時のアンダーシュートによりロックアップ禁止回転を割り込むことによるロックアップOFFを防ぐ方法として、図6に示すロジックとした。この方法では、アンダーシュートの逆の現象として、ダウンシフトのオーバーシュートによるオーバーレブを防ぐ内容も織り込んでいる。
【0163】
(h)基本到達入力回転数TDsrREVと、時定数込みの目標変速比RatioO逆算した目標入力回転数LInpREVを比較することでアップシフト,ダウンシフトと判断するものとしたため、アクセル操作前後の目標回転差から確実にアップシフト,ダウンシフトを判定することができる。
【0164】
(i)制御開始時は、制御領域をアップシフト,ダウンシフトのそれぞれで各2領域に分けることで、変速前半と後半の両方をコントロールできるものとし、アップシフトでは、入力回転が高いとき、ダウンシフトでは入力回転が低いとき、待ち受け回転waitREVを設定し、制御初期からアンダーシュート,オーバーシュートを抑えるものとした。
【0165】
(j)領域(2)及び(4)では、入力回転を直接目標値にすることで、現在の入力回転から目標回転に近づくため、アンダーシュート量及びオーバーシュート量を小さくすることができる。
【0166】
(k)領域(2)及び(4)では、本領域の制御開始時の入力回転にオフセット値である初期値αREVを設定したため、制御切り換え時のつながりが良くなる。
【0167】
(l)制御終了は、本制御を行わないときの入力回転の目標である基本到達入力回転数TDsrREVとすることで、本制御の有無による違和感が無い。
【0168】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【0169】
例えば、上記実施の形態では、本発明による無段変速機の変速制御装置をトロイダル型無段変速機に適用する場合について説明したが、本発明の変速制御装置をVベルト式無段変速機に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による無段変速機の変速制御装置を備えるトロイダル型無段変速機の縦断側面図である。
【図2】図1のトロイダル型無段変速機をその変速制御システムと共に示す縦断正面図である。
【図3】図2のコントローラが実行する変速制御の機能ブロック線図である。
【図4】無段変速機の変速パターンを例示する変速線図である。
【図5】本発明による無段変速機の変速制御装置の変速制御プログラムの全体を示すフローチャートである。
【図6】変速制御プログラム中の領域分割変速制御処理を示すフローチャートである。
【図7】領域分割変速制御を行うアップシフト時のタイムチャートである。
【図8】領域分割変速制御を行うダウンシフト時のタイムチャートである。
【図9】アップシフト時に領域分割変速制御で用いられる各値の設定の仕方を説明するためのタイムチャートである。
【図10】待ち受け到達入力回転数の設定手法を説明する図である。
【図11】後半制御開始入力回転数の設定手法を説明する図である。
【図12】初期値の設定を説明する図である。
【図13】アップシフトでの傾きの設定を説明する図である。
【図14】アクセル足離しアップシフト時に通常の変速制御を行った場合にアンダーシュートを示す入力回転特性を示す図である。
【図15】エンジン側にロックアップ禁止回転が設定されている変速マップ上でアンダーシュートした場合にロックアップ禁止に入ることを示す図である。
【図16】到達変速比と目標変速比と実変速比との関係を示す変速比タイムチャートである。
【図17】アンダーシュートの一因となるフィードバック制御での積分分の偏差貯め込みと放出を示す変速比タイムチャートである。
【符号の説明】
1 入力コーンディスク
2 出力コーンディスク
3 パワーローラ
4 ステップモータ
5 変速制御弁
6 ピストン
7 プリセスカム
8 変速リンク
20 入力軸
28 ローディングカム
41 トラニオン
43 アッパリンク
45 ロアリンク
60 インヒビタスイッチ
61 コントローラ
62 スロットル開度センサ
63 車速センサ
64 入力回転センサ
65 出力回転センサ
66 油温センサ
67 ライン圧センサ
68 エンジン回転センサ
69 UP/DOWNスイッチ
70 モード選択スイッチ
71 変速マップ選択部
72 到達入力回転数算出部
73 到達変速比算出部
74 変速時定数算出部
75 目標変速比算出部
310 エンジン制御スイッチ
320 アンチスキッド制御装置
330 トラクションコントロール装置
340 定速走行装置

Claims (7)

  1. 運転者の操作状態及び車両の走行状態により定常的な目標値である定常目標値を設定する定常目標値設定手段と、
    設定された前記定常目標値と後述する変速時定数に基づいて変速途中の過渡的な目標値である過渡目標値を設定する過渡目標値設定手段と、
    定常目標値と過渡目標値との偏差に基づいて変速時定数を算出する変速時定数算出手段と、
    定常目標値に対して過渡目標値を決め、変速時定数による変速応答にて変速制御を行う変速制御手段と、
    を備えた無段変速機の変速制御装置において、
    前記変速制御手段は、車両走行状態により実際値が定常目標値に至るまでの間を、変速前半の第1の制御領域と、変速後半の第2の制御領域とに分けて領域分割変速制御に入る領域分割変速制御手段を有し、
    前記領域分割変速制御手段は、運転者の操作状態及び車両の走行状態に基づいた最終的に到達させる基本定常目標値を設定し、
    変速前半の第1の制御領域では、前記基本定常目標値より現在値に近い値であって、実入力回転数の低下もしくは上昇を待ち受けて回転を制限する一定値を第1の定常目標値として設定し、この第1の定常目標値と過渡目標値との偏差に基づいて算出された変速時定数により変速制御を行い、
    変速後半の第2の制御領域では、第2の制御領域に入った時点から基本定常目標値まで、変速開始時の過渡目標値に基づいて設定された初期値及び傾きにて連続的に変化する値を第2の定常目標値として設定し、この第2の定常目標値と過渡目標値との偏差に基づいて算出された変速時定数により変速制御を行うことを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  2. 請求項1記載の無段変速機の変速制御装置において、
    前記領域分割変速制御手段は、制御開始条件のうち車速条件が、アクセル足離しによるアップシフト時、元々ロックアップしていない車速領域、及び、アクセル足離しをしてもコースト線がロックアップ禁止回転までに余裕があり、ロックアップ禁止回転まで下がることのない車速領域であると判定された場合、領域分割変速制御に入らず通常の変速制御を行うことを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  3. 請求項1または請求項2記載の無段変速機の変速制御装置において、
    前記領域分割変速制御手段は、アクセル踏み込みによるダウンシフト時、第1の制御領域と第2の制御領域とを切り換える目標入力回転数の切り換え設定値を、非ロックアップ時にはロックアップ時より低回転数とすることを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  4. 請求項1乃至3の何れか1項に記載の無段変速機の変速制御装置において、
    前記領域分割変速制御手段は、制御開始条件が成立する場合、前記基本定常目標値と変速時定数から求められた過渡目標値と予め設定された定値との大小が比較され、該過渡目標値が切り換え設定値を超える時点で第1の制御領域から第2の制御領域に切り換えることを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  5. 請求項1乃至4の何れか1項に記載の無段変速機の変速制御装置において、
    前記領域分割変速制御手段は、制御開始条件のうちアイドル条件が、アップシフト時であって、過渡目標値が切り換え設定値を超えないと判断され、かつ、アイドルオフであると判定された場合、領域分割変速制御に入らず通常の変速制御を行うことを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  6. 運転者の操作状態及び車両の走行状態により定常的な目標値である定常目標値を設定する定常目標値設定手段と、
    設定された前記定常目標値と後述する変速時定数に基づいて変速途中の過渡的な目標値である過渡目標値を設定する過渡目標値設定手段と、
    定常目標値と過渡目標値との偏差に基づいて変速時定数を算出する変速時定数算出手段と、
    定常目標値に対して過渡目標値を決め、変速時定数による変速応答にて変速制御を行う変速制御手段と、
    を備えた無段変速機の変速制御装置において、
    前記変速制御手段は、車両走行状態により実際値が定常目標値に至るまでの間を、変速前半の第1の制御領域と、変速後半の第2の制御領域とに分けて領域分割変速制御に入る領域分割変速制御手段を有し、
    前記領域分割変速制御手段は、運転者の操作状態及び車両の走行状態に基づいた最終的に到達させる基本定常目標値と、変速前半の第1の制御領域では、前記基本定常目標値より現在値に近い値であって、実入力回転数の低下もしくは上昇を待ち受けて回転を制限する第1の定常目標値と、変速後半の第2の制御領域では、第2の制御領域に入った時の実際値を前記基本定常目標値に収束させる第2の定常目標値と、を設定し、
    前記領域分割変速制御手段は、アクセル踏み込みによるダウンシフト時、第1の制御領域と第2の制御領域とを切り換える目標入力回転数の切り換え設定値を、非ロックアップ時にはロックアップ時より低回転数とすることを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  7. 運転者の操作状態及び車両の走行状態により定常的な目標値である定常目標値を設定する定常目標値設定手段と、
    設定された前記定常目標値と後述する変速時定数に基づいて変速途中の過渡的な目標値である過渡目標値を設定する過渡目標値設定手段と、
    定常目標値と過渡目標値との偏差に基づいて変速時定数を算出する変速時定数算出手段と、
    定常目標値に対して過渡目標値を決め、変速時定数による変速応答にて変速制御を行う変速制御手段と、
    を備えた無段変速機の変速制御装置において、
    前記変速制御手段は、車両走行状態により実際値が定常目標値に至るまでの間を、変速前半の第1の制御領域と、変速後半の第2の制御領域とに分けて領域分割変速制御に入る領域分割変速制御手段を有し、
    前記領域分割変速制御手段は、運転者の操作状態及び車両の走行状態に基づいた最終的に到達させる基本定常目標値と、変速前半の第1の制御領域では、前記基本定常目標値より現在値に近い値であって、実入力回転数の低下もしくは上昇を待ち受けて回転を制限する第1の定常目標値と、変速後半の第2の制御領域では、第2の制御領域に入った時の実際値を前記基本定常目標値に収束させる第2の定常目標値と、を設定し、
    前記領域分割変速制御手段は、制御開始条件のうちアイドル条件が、アップシフト時であって、過渡目標値が切り換え設定値を超えないと判断され、かつ、アイドルオフであると判定された場合、領域分割変速制御に入らず通常の変速制御を行うことを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
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