JP3651291B2 - 弾性表面波装置 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気信号と弾性表面波との間の変換を行うすだれ状電極を有する弾性表面波装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話やテレビ受像機等の電子部品や通信部品において、共振子や帯域フィルタとして弾性表面波装置(SAW(Surface AcousticWave)デバイス)が使用されている。
【0003】
図7は、従来のSAWデバイスの一例を示す平面図である。
【0004】
このSAWデバイス1は、1ポート型SAW共振子であり、圧電基板2とすだれ状電極である櫛形電極(IDT(Inter Digital Transducer))3及び反射器4等で大略構成されている。
【0005】
圧電基板2は、例えば水晶で矩形板状に形成されている。IDT3及び反射器4は、圧電基板2の表面に導体金属を蒸着あるいはスパッタリング等により薄膜状に形成した上で、フォトリソグラフィ等によりすだれ状となるように形成されている。具体的には、IDT3は、複数の電極指3aが所定のピッチで並設されて長手方向の各端部が交互に短絡されるように形成されている。即ち、2つの櫛形状の電極の各櫛歯部分が、所定距離隔てて互い違いに入り込むように形成されている。このIDT3は、電気的に接続されている外部端子5を介して電気信号とSAWとの間の変換を行う機能を有する。反射器4は、複数の電極指4aが所定のピッチで並設されて長手方向の各両端部が短絡されるように形成されている。そして、同一構成の2つの反射器4が、電極指4aがIDT3の電極指3aと平行になるように、かつIDT3をSAWの伝播方向、即ちIDT3の電極指3aの長手方向に直交する方向に所定距離隔てて挟み込むように形成されている。この反射器4は、IDT3から伝搬してくるSAWを反射して、SAWのエネルギを内部に閉じこめる機能を有する。
【0006】
このような構成において、電気信号が、外部端子5を介してIDT3に入力されると、圧電効果によりSAWに変換される。このSAWは、IDT3の電極指3aの長手方向に対して直交方向に伝搬され、IDT3の両側から反射器4に放射される。このとき、圧電基板2の材質、電極の厚みや電極の幅等で決定される伝播速度とIDT3の電極指3aの電極周期d0 に等しい波長を持つSAWが、最も強く励振される。このSAWは、反射器4により多段反射されてIDT3に戻され、図8に示す共振周波数付近の周波数(動作周波数)fv のみの電気信号に変換されてIDT3から外部端子5を介して出力される。
【0007】
図9は、従来のSAWデバイスの別の一例を示す平面図である。
【0008】
このSAWデバイス11は、トランスバーサル型SAWフィルタであり、圧電基板12とすだれ状電極であるIDT13等で大略構成されている。圧電基板12は、例えば水晶で矩形板状に形成されている。IDT13は、圧電基板12の表面に導体金属を蒸着あるいはスパッタリング等により薄膜状に形成した上で、フォトリソグラフィ等によりすだれ状となるように形成されている。具体的には、IDT13は、複数の電極指13aが所定のピッチで並設されて長手方向の各端部が交互に短絡されるように形成されている。即ち、2つの櫛形状の電極の各櫛歯部分が、所定距離隔てて互い違いに入り込むように形成されている。さらに、各電極指13aは、全体として2分の1周期の正反転の余弦カーブ(図示一点鎖線)を描くように長手方向の途中部分が分断されている。このように、電極指13aに対して重み付けを実施することにより、図8に示す周波数fs 付近の横モードスプリアスの発生を低減することができる。
【0009】
図10は、従来のSAWデバイスのさらに別の一例を示す平面図である。
【0010】
このSAWデバイス21は、横結合型SAWフィルタであり、圧電基板22とすだれ状電極であるIDT23及び反射器24等で大略構成されている。圧電基板22は、例えば水晶で矩形板状に形成されている。IDT23及び反射器24は、圧電基板22の表面に導体金属を蒸着あるいはスパッタリング等により薄膜状に形成した上で、フォトリソグラフィ等によりすだれ状となるように形成されている。具体的には、IDT23及び反射器24は、図7に示すIDT3及び反射器4を電極指3a、4aの長手方向に2組並べて結合配置した形状に形成されている。このようなIDT23及び反射器24とすることにより、広帯域化及び遅延特性を向上させることができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述した図7の従来の1ポート型SAW共振子は、SAWの伝播方向の電極指3aの幅w0 が、長手方向にわたって均一に形成されているため、その長手方向のSAWの伝播速度の分布は一定となる。従って、SAWの変位分布は、複数の電極指3aの重なり部分(以下、交差指という)の全体に分散し、交差指の長さl0 を長くすると、横モードスプリアスが主振近辺に表れる現象、即ち図8に示す横モードスプリアスの周波数fs と主振の動作周波数fv との差Δfが小さくなり、周波数の安定した発振器を得ることが難しい。
【0012】
図9の従来のトランスバーサル型SAWフィルタは、電極指13aの交差指の長さが、SAWの伝播方向に余弦カーブを描くように変化して形成されているので、横モードスプリアスの発生を抑圧することができる。ところが、電極指13aの分断されて孤立した部分13aaは、IDT13として機能しないにもかかわらず、孤立部分13aaの面積は、IDT13の面積の30%に達するため、フィルタ自体が大型化する。
【0013】
図10の従来の横結合型SAWフィルタは、通過帯域幅が、主振の動作周波数と斜対称モードの周波数の差によって決定される。従って、通過帯域幅を広げるためには、電極指23a交差指の長さl2 を短くしなければならないが、交差指の長さl2 を短くすると、IDT23の面積が減少して、特性インピーダンスが増加する。
【0014】
本発明の目的は、上記課題を解消して、横モードスプリアスが低減され特性インピーダンスが改善されたSAW装置を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の弾性表面波装置は、複数の電極指が所定の間隔で併設され前記電極指の長手方向の各端部が交互に短絡されるように形成された一対の櫛形電極と、弾性表面波の伝播方向に前記櫛形電極を挟んで配置される一対の反射器とが設けられた圧電基板を備えた弾性表面波装置において、
前記櫛形電極を構成する前記電極指の長さは互いに等しく、且つ、その先端部の幅及び短絡される側の幅に対してその途中部分の幅が狭くなる変化部が形成されてなり、
前記変化部が、前記弾性表面波の伝播方向に延びる前記櫛形電極の中心線に対して対称に形成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、弾性表面波の変位を電極指の変化部に集中させることができるので、各電極指の交差部分の長さを短くすることなく、横モードスプリアスを主振から遠ざけることができる。また、特性インピーダンスを増加させることなく、通過帯域幅を広げることができる。
また、本発明の弾性表面波装置は、複数の電極指が所定の間隔で併設され前記電極指の長手方向の各端部が交互に短絡されるように形成された一対の櫛形電極を備えた弾性表面波装置において、
前記櫛形電極を構成する前記電極指の長さは互いに等しく、且つ、その先端部の幅及び短絡される側の幅に対してその途中部分の幅が狭くなる変化部が形成されてなり、
前記変化部が、前記弾性表面波の伝播方向に延びる前記櫛形電極の中心線に対して対称に形成されると共に、重み付けされて形成されてなり、
前記重み付けが、前記弾性表面波の伝播方向に直交する方向の前記電極指の変化部の長さであることを特徴とする。
上記の構成によれば、上記の効果に加え、櫛形電極の面積を小さくすることができるので、弾性表面波装置を小型化することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
図1は、本発明のSAWデバイスの実施形態を示す平面図である。
【0028】
このSAWデバイス31は、1ポート型SAW共振子であり、圧電基板32とすだれ状電極である櫛形電極(IDT(Inter Digital Transducer))33及び反射器34等で大略構成されている。
【0029】
圧電基板32は、例えば水晶で矩形板状に形成されている。IDT33及び反射器34は、圧電基板32の表面に導体金属を蒸着あるいはスパッタリング等により薄膜状に形成した上で、フォトリソグラフィ等によりすだれ状となるように形成されている。
【0030】
本発明の特徴的な部分は、IDT33及び反射器34の形状にあり、以下に詳細に説明する。IDT33は、複数の電極指33aが所定のピッチで並設されて長手方向の各端部が交互に短絡されるように形成されている。即ち、2つの櫛形状の電極の各櫛歯部分が、所定距離隔てて互い違いに入り込むように形成されている。さらに、IDT33は、SAWの伝播方向の電極指33aの幅に変化を付けて形成されている。即ち、電極指33aにおける変化部分は、長さL3 の交差指の部分のうち長さl3 の部分であって、SAWの伝播方向に延びるIDT33の中心線LC に対して対称の部分であり、この変化部分の幅w3 が、他の部分の幅W3 より狭くなるように形成されている。このIDT33は、電気的に接続されている外部端子35を介して電気信号とSAWとの間の変換を行う機能を有する。
【0031】
反射器34は、複数の電極指34aが所定のピッチで並設されて長手方向の各両端部が短絡されるように形成されている。そして、同一構成の2つの反射器34が、電極指34aがIDT33の電極指33aと平行になるように、かつIDT33をSAWの伝播方向、即ちIDT33の電極指33aの長手方向に直交する方向に所定距離隔てて挟み込むように形成されている。さらに、反射器34は、SAWの伝播方向の電極指34aの幅に変化を付けて形成されている。即ち、電極指34aにおける変化部分は、IDT33の変化部分をSAWの伝播方向に延長させた部分であり、この変化部分の幅w33が、他の部分の幅W33より狭くなるように形成されている。この反射器34は、IDT33から伝搬してくるSAWを反射して、SAWのエネルギを内部に閉じこめる機能を有する。
【0032】
このような構成において、電気信号が、外部端子35を介してIDT33に入力されると、圧電効果によりSAWに変換される。このSAWは、IDT33の電極指33aの長手方向に対して直交方向に伝搬され、IDT33の両側から反射器34に放射され、反射器34により多段反射されてIDT33に戻される。このとき、IDT33の電極指33aの電極周期d3 に等しい波長を持つSAWが、最も強く励振される。
【0033】
さらに、IDT33の電極指33a及び反射器34の電極指34aが、SAWの伝播直交方向に変化して形成されているので、SAWの伝播速度も、SAWの伝播直交方向に変化する。このため、エネルギ閉じ込め効果によりSAWの変位が、電極指33a、34aの細い部分に集中する。例えば、図3に示すように、従来のIDT3の電極指3aは、幅w0 が長手方向にわたって均一に形成されているため、A−A線断面における交差指部分のSAWの変位分布は、比較的ブロードになる。ところが、図4に示すように、本発明のIDT33の電極指33aは、長手方向中央の幅w3 が長手方向両側の幅W3 より狭くなるように形成されているため、B−B線断面における交差指部分のうちの中央部分のSAWの変位分布は、図3に比べてシャープになる。従って、SAWの変位分布は、交差指幅を狭く設計したときと同様の変位分布となるので、図2に示すように、横モードスプリアスが発生する周波数Fs は、交差指幅を狭く設計したときと同様に、主振の動作周波数Fv から遠ざかる。即ち、横モードスプリアスの周波数Fs と主振の動作周波数Fv の差ΔFが、図8に示す横モードスプリアスの周波数fs と主振の動作周波数fv の差Δfより大きくなり、周波数シフトのない、安定した発振を実現することができる。また、電極指33a、34aの太い部分もSAWを励振させるように作用するため、交差指幅を広く設計したときと同様に特性を向上させることができる。このようなSAWは、動作周波数Fv のみの電気信号に変換されてIDT33から外部端子35を介して出力される。
【0034】
図5は、本発明のSAWデバイスの別の実施形態を示す平面図である。
【0035】
このSAWデバイス41は、トランスバーサル型SAWフィルタであり、圧電基板42とすだれ状電極であるIDT43等で大略構成されている。圧電基板42は、例えば水晶で矩形板状に形成されている。IDT43は、圧電基板42の表面に導体金属を蒸着あるいはスパッタリング等により薄膜状に形成した上で、フォトリソグラフィ等によりすだれ状となるように形成されている。
【0036】
本発明の特徴的な部分は、IDT43の形状にあり、以下に詳細に説明する。IDT43は、複数の電極指43aが所定のピッチで並設されて長手方向の各端部が交互に短絡されるように形成されている。即ち、2つの櫛形状の電極の各櫛歯部分が、所定距離隔てて互い違いに入り込むように形成されている。さらに、IDT43は、SAWの伝播直交方向の電極指43aの変化部分の長さに重み付けして形成されていると共に、SAWの伝播方向の電極指43aの幅に変化を付けて形成されている。即ち、各電極指43aにおける変化部分は、SAWの伝播方向に延びるIDT43の中心線LC を対称軸に全体として2分の1周期の正反転の余弦カーブ(図示一点鎖線)の内側部分であり、この変化部分の幅w4 が、他の部分の幅W4 より細くなるように形成されている。
【0037】
このように、電極指43aに対して重み付けを実施することにより、図2に示す周波数Fs 付近の横モードスプリアスの発生を低減することができる。また、電極指43aの太い部分もSAWを励振させるように作用し、IDT43の全体を有効に利用することができるので、従来のIDT13の電極面積より小さくしても十分なSAWを励振させることができ、フィルタを小型化することができる。
【0038】
図6は、本発明のSAWデバイスのさらに別の実施形態を示す平面図である。
【0039】
このSAWデバイス51は、横結合型SAWフィルタであり、圧電基板52とすだれ状電極であるIDT53及び反射器54等で大略構成されている。圧電基板52は、例えば水晶で矩形板状に形成されている。IDT53及び反射器54は、圧電基板52の表面に導体金属を蒸着あるいはスパッタリング等により薄膜状に形成した上で、フォトリソグラフィ等によりすだれ状となるように形成されている。
【0040】
本発明の特徴的な部分は、IDT53及び反射器54の形状にあり、図1に示すIDT33及び反射器34を電極指33a、34aの長手方向に2組並べて結合配置した形状に形成されている。このように、IDT53の電極指53a及び反射器54の電極指54aの結合部の長手方向中央の幅w5 、w55が長手方向両側の幅W5 、W55より狭くなるように形成されているため、交差指幅を狭く設計したときと同様の効果、即ちフィルタの通過帯域幅を飛躍的に広帯域化させることができる。また、電極指53a、54aの太い部分もSAWを励振させるように作用するため、特性インピーダンスは増加せず、交差指幅を広く設計したときと同様に遅延特性を向上させることができる。
【0041】
尚、上述した図1及び図6に示すSAWデバイス31、51では、反射器34、54の電極指34a、54aの幅も変化させるように構成したが、IDT33、53の電極指33a、53aの幅のみ変化させるように構成してもよい。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、弾性表面波の変位を電極指の変化部に集中させることができるので、各電極指の交差部分の長さを短くすることなく、横モードスプリアスを主振から遠ざけることができる。また、特性インピーダンスを増加させることなく、通過帯域幅を広げることができる。
【0043】
また、本発明によれば、上記の効果に加え、すだれ状電極の面積を小さくすることができるので、弾性表面波装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のSAWデバイスの実施形態を示す平面図。
【図2】 図1のSAWデバイスにおける周波数特性を示す図。
【図3】 従来のSAWデバイスにおけるSAWの変位分布を示す図。
【図4】 本発明のSAWデバイスにおけるSAWの変位分布を示す図。
【図5】 本発明のSAWデバイスの別の実施形態を示す平面図。
【図6】 本発明のSAWデバイスのさらに別の実施形態を示す平面図。
【図7】 従来のSAWデバイスの一例を示す平面図。
【図8】 図7のSAWデバイスにおける周波数特性を示す図。
【図9】 従来のSAWデバイスの別の一例を示す平面図。
【図10】 従来のSAWデバイスのさらに別の一例を示す平面図。
【符号の説明】
31、41、51 SAWデバイス
32、42、52 圧電基板
33、43、53 IDT(すだれ状電極)
34、54 反射器(すだれ状電極)
33a、34a、43a、53a、54a 電極指
35 外部端子

Claims (2)

  1. 複数の電極指が所定の間隔で併設され前記電極指の長手方向の各端部が交互に短絡されるように形成された一対の櫛形電極と、弾性表面波の伝播方向に前記櫛形電極を挟んで配置される一対の反射器とが設けられた圧電基板を備えた弾性表面波装置において、
    前記櫛形電極を構成する前記電極指の長さは互いに等しく、且つ、その先端部の幅及び短絡される側の幅に対してその途中部分の幅が狭くなる変化部が形成されてなり、
    前記変化部が、前記弾性表面波の伝播方向に延びる前記櫛形電極の中心線に対して対称に形成されていることを特徴とする弾性表面波装置。
  2. 複数の電極指が所定の間隔で併設され前記電極指の長手方向の各端部が交互に短絡されるように形成された一対の櫛形電極を備えた弾性表面波装置において、
    前記櫛形電極を構成する前記電極指の長さは互いに等しく、且つ、その先端部の幅及び短絡される側の幅に対してその途中部分の幅が狭くなる変化部が形成されてなり、
    前記変化部が、前記弾性表面波の伝播方向に延びる前記櫛形電極の中心線に対して対称に形成されると共に、重み付けされて形成されてなり、
    前記重み付けが、前記弾性表面波の伝播方向に直交する方向の前記電極指の変化部の長さであることを特徴とする弾性表面波装置。
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