JP3650765B2 - イムノアッセイ用の粒子およびその処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、イムノアッセイの分野に関し、より詳細には、粒子凝集イムノアッセイにおける干渉を低減させるために粒子を処理する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
薬物分子などのアナライト(測定対象物質)の試験においてイムノアッセイは特に有用性を示してきた。イムノアッセイでは、アナライト、それは時に抗原を意味するが、そのアナライトと特異的な受容体、それは典型的には抗体であるが、その受容体との相互作用は抗原抗体複合体の形成をもたらす。この複合体は種々の測定法、例えば放射活性、蛍光、吸光度、および光散乱などで検出することができる。その後、結果はアナライトの存在、不在、理想的には濃度と相関させることができる。
【0003】
あるタイプの粒子ベースの凝集イムノアッセイは、抗原と、粒子に結合された抗体との結合に基づくものである。用いる粒子は通常はポリスチレンおよびポリ(メチルメタクリレート)などのポリマー粒子で、典型的には乳化重合法によって調製される。その他の粒子系も用いることができ、そのようなものとしては、金ナノ粒子および金コロイドなどの金粒子、シリカなどのセラミック粒子、ガラス、および金属酸化物粒子などが含まれる。抗体は粒子上に物理的に吸着させることができる。しかし、抗体を共有結合で結合させれば安定性がより高く、有効期間がより長いものが得られる。たとえば、J. L. Ortega-Vinuesaら, J. Biomater. Sci. Polymer Edn., 12(4), 379-408(2001)を参照されたい。
【0004】
共有結合で抗体を結合させた粒子を調製するには、典型的には、粒子を活性化し、次いでその活性化させた粒子へ抗体をカップリングさせる。表面にカルボキシル基を結合させた粒子では、活性化は、その粒子をカルボジイミドカップリング剤の溶液およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)もしくはN-ヒドロキシスルホスクシンイミド(sNHS)などのスクシンイミド試薬と接触させることによって行われることが多い。表面のカルボキシル基はNHS-エステル基もしくはsNHS-エステル基に変換される。カルボジイミドカプラーとしては、例えば、N-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC);ジシクロヘキシカルボジイミド(DCC);およびジイソプロピルカルボジイミド(DIC)が挙げられる。次いで、抗体、例えばIgGは、水性混合液中で活性化粒子と抗体を混合することによって、粒子にカッブリングさせることができ、それによって感作された粒子が形成される。そのプロセスの説明を下記の反応スキームに示す。
【0005】
【化1】
【0006】
次いで、その感作粒子を、典型的には、ポストブロッカー、例えばウシ血清アルブミン(BSA)で処理する。これらのプロセスでは、共有結合、例えば、アミド結合(-NH-C(=O)-)が粒子表面と抗体との間、および粒子表面とBSAの間に形成される。このような共有結合の形成は、典型的には、完全に行われているわけではなく、残存NHS-エステルもしくはsNHS-エステルが粒子表面上に残りうる。
【0007】
感作粒子を水性環境中で分析すべきサンプルと混合すると、サンプル中の抗原がその抗体と特異的に結合することとなり、その結果、粒子は、個々の粒子のサイズより大きな集合サイズを持つ粒子のクラスターへと凝集する。この凝集はそのサンプルによる吸光度の変化もしくは光散乱の変化を測定することによって検出することができる。理想的には、粒子ベースの凝集イムノアッセイでは、凝集の程度はサンプル中の抗原量と相関する。しかし、粒子とサンプルの間の非特異的な相互作用によって抗原−抗体相互作用とは無関係の粒子の凝集がもたらされることもある。これらの望ましくない相互作用によって偽陽性もしくは偽陰性の結果が生ずることがあり、対象の抗原の濃度と凝集反応との不正確な相関性をもたらしうる。
【0008】
粒子表面上の残存NHS-エステルもしくはsNHS-エステルはサンプル成分と非特異的な化学反応を起こすと考えられ、特に問題になるのは、サンプル成分のうちポリペプチドである。非特異的結合を最小限にするために、感作粒子は、イムノアッセイに用いる前に、これらのエステルと反応させるためにグリシンもしくはエタノールアミンなどのアミン化合物で処理されてきた(米国特許第5,486,479号)。このような努力を行ったが、その結果は成否まちまちであった。
【0009】
したがって、粒子に結合されたNHS-エステルもしくはsNHA-エステルとサンプル成分との化学反応を防止することが望ましい。また、サンプル成分の粒子表面上への吸着を阻害するように粒子表面を改変することも望ましい。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記のような従来技術の欠点がなく、粒子凝集イムノアッセイにおける干渉を低減させるイムノアッセイ用の粒子を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の1態様においては、イムノアッセイ用の粒子を調製する方法を提供し、この方法は、カルボキシル基を含む粒子を、N-ヒドロキシスクシンイミドもしくはN-ヒドロキシスルホスクシンイミドおよびカルボジイミドカップリング剤と反応させて、スクシンイミドエステル基を含む活性化粒子を調製し;該活性化粒子を抗体と接触させて、共有結合で結合された抗体と残存スクシンイミドエステルを含む感作粒子を取得し;水性混合液中の該感作粒子を式(I)のアミン化合物:
H2N-R-X (I);
[式中、-Xは-NH2、-OH、および-CO2CH2CH3からなる群から選択され、Rはアルキル基およびアルキルエーテル基からなる群から選択され、ここで、-Xが-NH2もしくは-CO2CH2CH3である場合には、Rは1〜20個の炭素原子を含み、-Xが-OHである場合には、Rは4〜20個の炭素原子を含む]
で処理することを特徴とする。
【0012】
本発明の別の1態様においては、イムノアッセイに用いるための感作粒子を提供し、該感作粒子は、表面をもつ粒子;その表面に共有結合を介して結合している少なくとも1つの抗体;ならびに、その表面上の、スクシンイミドエステルと式(I)のアミン化合物:
H2N-R-X (I);
[式中、-Xは-NH2、-OH、および-CO2CH2CH3からなる群から選択され、Rはアルキル基およびアルキルエーテル基からなる群から選択され、ここで、-Xが-NH2もしくは-CO2CH2CH3である場合には、Rは1〜20個の炭素原子を含み、-Xが-OHである場合には、Rは4〜20個の炭素原子を含む]
との反応生成物;を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明のまた別の1態様においては、イムノアッセイに用いるための粒子を提供し、該粒子は、表面をもつポリマー粒子;その表面に共有結合を介して結合している少なくとも1つの抗体;その表面上のBSA;ならびに、その表面上の、スクシンイミドエステルとアミン化合物との反応生成物;を含むことを特徴とする。前記アミン化合物はグリシンエチルエステル;2-(アミノエトキシ)エタノール;2,2'-(エチレンジオキシ)ビスエチルアミン;および4,7,10-トリオキサ-1,3-トリデカンジアミンからなる群から選択されたものであり、さらに、該粒子は、血清と接触させた場合に、0.35mg/m2未満の非特異的タンパク質と共有結合し、また、該粒子は、血清と接触させた場合に、2mg/m2未満の非特異的タンパク質を物理的に吸着するものである。
【0014】
本発明のまた別の1態様においては、試薬が提供され、該試薬は、各粒子が表面をもつ、複数の粒子;その表面に共有結合を介して結合している抗体;ならびに、その表面上の、スクシンイミドエステルと式(I)のアミン化合物:
H2N-R-X (I);
[式中、-Xは-NH2、-OH、および-CO2CH2CH3からなる群から選択され、Rはアルキル基およびアルキルエーテル基からなる群から選択され、ここで、-Xが-NH2もしくは-CO2CH2CH3である場合には、Rは1〜20個の炭素原子を含み、-Xが-OHである場合には、Rは4〜20個の炭素原子を含む]
との反応生成物;を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明のまた別の1態様においては、抗原を測定するためのアッセイ法が提供され、このアッセイ法は、抗原を含むと予想されるサンプルを上記の試薬と組み合わせること、ただし、該試薬は該抗原に対する抗体を含み、該抗原との検出可能な複合体を形成することができるものであること;および、該サンプル中の該抗原の尺度としてその検出可能な複合体の存在もしくは量を測定すること;を特徴とする。
【0016】
本発明の別の1態様においては、上記の試薬もしくは上記の粒子のいずれかを含むテストキットが提供される。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明は、粒子凝集イムノアッセイにおける干渉を低減させるものである。N-ヒドロキシスクシンイミドもしくはN-ヒドロキシスルホスクシンイミドで活性化し、抗体で感作した粒子を、その表面上の残存N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルもしくはN-ヒドロキシスルホスクシンイミド(sNHS)エステルを低減もしくは除去するためにある種のアミン化合物で処理する。NHS-エステルおよびsNHS-エステルは本明細書中ではまとめて「スクシンイミドエステル」と呼ぶ。本発明で用いるアミン化合物は、粒子上でのサンプル成分と反応性スクシンイミドエステルとの間の共有結合による非特異的な相互作用を防止するのにきわめて有効である。好ましくは、この方法で調製した粒子はサンプル成分の物理的な吸着をも防ぐものである。本発明はまた、これらの粒子を調製する方法およびそのイムノアッセイへの使用にも関する。
【0018】
本発明の粒子はその表面に抗体を含んでおり、その抗体は分析すべきサンプル中のアナライトと特異的に相互作用し、またそのアッセイ混合液中に存在するアナライトのコンジュゲートとも相互作用する。この相互作用によって粒子は凝集し、この凝集をモニターしてサンプル中のアナライトの量と相関させることができる。
【0019】
アナライトとは、液状媒体中のその存在もしくはその量が測定されることとなる物質もしくは物質群を意味し、そのような物質としては、限定するものではないが、薬物もしくは薬物誘導体、ホルモン、タンパク質抗原、オリゴヌクレオチド、ハプテン、もしくはハプテン−担体複合体が含まれる。アナライト類似体とは、アナライトと同様に挙動する、またはそのアナライトに対する抗体の結合親和性および/もしくは特異性に関して所望のアッセイ結果を達成することを誘導するように挙動する物質もしくは物質群であり、そのようなものとしては、限定するものではないが、アナライトの誘導体、代謝産物、およびアイソマーが含まれる。
【0020】
抗体とは、アナライトの特異的な結合相手を指し、そのアナライトに特異的な結合親和性を有し、他の物質を排除するような物質もしくは物質群が含まれる。この用語はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、および抗体フラグメントを含む。
【0021】
ハプテンとは、抗体形成を刺激することはできないが抗体と反応する、典型的には低分子量の物質である。抗体との反応は、ハプテンを高分子量の担体とカップリングさせ、そのカップリングされた産物をヒトもしくは動物の体内へ注射することによって行われる。ハプテンの例としては、ジゴキシンおよびテオフィリンなどの治療用薬物;モルヒネ、リゼルギン酸ジエチルアミド(LSD)、およびΔ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)などの濫用される薬物;アミノグリコシドおよびバンコマイシンなどの抗生物質;エストロゲンおよびプロゲステロンなどのホルモン;ビタミンB12および葉酸などのビタミン;チロキシン;ヒスタミン;セロトニン;アドレナリン、およびその他のものが挙げられる。
【0022】
担体とは、ハプテンと結合しうる免疫原性を有する物質、通常はタンパク質を意味し、それによってハプテンが免疫応答を刺激することができるようになるものをいう。担体物質としては、タンパク質、糖タンパク質、複合多糖、および核酸が含まれ、それらは非自己のものとして認識され、それによって宿主から免疫応答を引き出すものである。
【0023】
免疫原および免疫原性という用語は、生体内で免疫応答を生じさせることのできる物質を意味する。
【0024】
ペプチドは2個以上のアミノ酸をアミド(ペプチド)結合で結合させることによって形成された化合物であって、通常は、直鎖内で各アミノ酸残基のαアミノ基(アミノ末端を除く)が隣接する残基のαカルボキシル基と連結されている、αアミノ酸のポリマーである。ペプチド、ポリペプチド、およびポリ(アミノ酸)という用語は、本明細書では同義語として用いられ、それは分子の大きさに関しての制限を付けず、このクラスの化合物を意味している。このクラスの最も大きなメンバーはタンパク質と呼ばれる。
【0025】
共有結合とは、2つの化学種間の化学結合であって、単結合および多重結合を含むことができる。「共有」という用語は疎水性/親水性の相互作用、水素結合、ヴァンデルワールス相互作用、およびイオン性相互作用は含まない。
【0026】
アナライトを含むと予想されるサンプルは本発明の方法によって分析することができる。そのサンプルは典型的には宿主由来の体液などの水性溶液であり、例えば、尿、全血、血漿、血清、唾液、精液、糞便、喀痰、脳脊髄液、涙液、粘液、もしくは類似のものであるが、好ましくは尿、血漿、もしくは血清である。サンプルは所望により前処理することができ、アッセイを妨害しないような都合のよいいかなる媒体中にも調製することができる。水性媒体が好ましい。
【0027】
較正物質とは、測定しようとするアナライトの既知の量を含んでいる標準物質もしくは参照物質を意味する。アナライトを含むと予想されるサンプルおよび較正物質は類似の条件下でアッセイされる。次いでアナライトの濃度は、未知の検体で得られた結果を標準品で得られた結果と比較することによって計算される。
【0028】
本発明に従って処理しうる粒子としては、スクシンイミドエステルを用いて活性化することのできるいかなるタイプの粒子をも含む。そのような粒子としては、ポリスチレンおよびポリ(メチルメタクリレート)を含むポリマー粒子;金ナノ粒子および金コロイドを含む金粒子;シリカなどのセラミック粒子、ガラス、および金属酸化物粒子などが含まれる。例えば、C. R. Martinら、Analytical Chemistry-News & Features, May 1, 1998, 322A-327Aを参照されたい。これらの粒子はスクシンイミドエステルによって直接的に活性化することができ、あるいはそれらの粒子の表面にカルボキシル基が含まれるように改変してから活性化することができる。カルボキシル基は、例えば加水分解反応によって、カルボキシル化試薬での処理によって、もしくはカルボキシル基を含んでいる自己アセンブルされた単層(SAM)の形成によって、表面に導入することができる。例えば、J. G. Chapmanら, J. Am. Chem. Soc. 122, 8303-8304 (2000)を参照されたい。
【0029】
本発明の粒子は、活性化され、感作され、次いで式(I)のアミン化合物:
H2N-R-X (I);
[式中、-Xは-NH2、-OH、もしくは-CO2CH2CH3であり;Rはアルキル基またはアルキルエーテル基であり;-Xが-NH2もしくは-CO2CH2CH3である場合には、Rは1〜20個の炭素原子を含み、-Xが-OHである場合には、Rは4〜20個の炭素原子を含む]
で処理された粒子である。「アルキル」とは置換されている、もしくは置換されていない、直鎖の、分枝した、もしくは環状の炭化水素鎖を意味する。「アルキルエーテル」とは、少なくとも1個の-C-O-C-結合を含んでいるアルキル基を意味する。好ましいアミン化合物とは、-Xが-OHもしくは-NH2であって、Rが4〜20個の炭素原子と1〜9個の酸素原子を含んでいるアルキルエーテル基であるものである。特に好ましいアミンは、2-(アミノエトキシ)エタノール(AEO);2,2'-(エチレンジオキシ)ビスエチルアミン(EBE);および4,7,10-トリオキサ-1,3-トリデカンジアミン(TTD)であり、それらは下記の式で表される:
H2N-CH2CH2OCH2CH2-OH (AEO);
H2N-(CH2)2O(CH2)2O(CH2)2-NH2 (EBE);
H2N-(CH2)3O(CH2)2O(CH2)2O(CH2)3-NH2 (TTD)
【0030】
本発明の処理プロセスに関係する化学反応の説明は下記の反応スキームのとおりである。
【化2】
【0031】
-Rと-X部分の性質および長さはアミン化合物のクエンチング(quenching)試薬としての有効性に著しい影響を及ぼす。例えば、-Xが-NH2で、Rが十分な長さを持つものである場合には、その化合物の末端の反応性アミン(-NH2)基はそれぞれがスクシンイミドエステル基と相互作用することができる。これは「二座」性の化合物を提供し、スクシンイミドエステルが互いに十分近接して存在するという条件で、単一の化合物が2個のスクシンイミドエステルと反応することができる。第1のアミン-スクシンイミドエステル反応が近位の位置で起こるため、第2の反応は溶液中の遊離アミンの反応よりも高効率で進行することができる。Rが少なくとも6個の炭素原子を含有していることが好ましい。さらに好ましくは、Rが少なくとも6個の炭素原子と少なくとも2個の酸素原子を含有していることである。しかし、Rが長すぎる場合には、単一のアミン化合物が別々の粒子上のスクシンイミドエステルと反応する危険性がある。このシナリオはR部分をブリッジとして互いに連結された(架橋された)粒子をもたらすであろう。このような粒子の架橋は、凝集したサンプルとそうでないサンプルの区別がより困難なものとなるので、通常は望ましくない。従って、Rが40個以下の炭素原子を含んでいるものであることが好ましい。より好ましくは、Rが30個以下の炭素原子を含むことである。さらにより好ましくは、Rが20個以下の炭素原子を含むことである。-R-部分の性質と長さはまた、サンプル成分が物理的に粒子表面上へ吸着される傾向にも影響を及ぼす。アルキルエーテルをベースとしたR部分、とりわけ、エチレンオキシ単位(-CH2CH2O-)を用いることは、サンプル成分の粒子表面上への物理的吸着を阻害するものと考えられている(J. G. Chapmanら, J. Am. Chem. Soc., 122, 8303-8304 (2000))。
【0032】
アミン化合物は、スクシンイミドエステルとの反応を最大にするために、感作粒子へ過剰量で加えられる。好ましくは、その粒子は、活性化前にその粒子上にもともと存在していたカルボキシル基の量に対して少なくとも50当量のアミンを含んでいる溶液と接触させる。より好ましくは、その粒子は少なくとも100当量のアミンを含んでいる溶液と接触させる。さらにより好ましくは、その粒子は少なくとも200当量のアミンを含んでいる溶液と接触させる。その粒子は接触する溶液に、許容しうる量の反応を起こさせるのに十分な時間にわたり、暴露する。この時間とはおそらく数分から数時間である。接触する溶液のpHは7.0を超えることが好ましい。その粒子をアミンへの暴露によって処理した後、そのアミン溶液を粒子表面から洗い流す。その結果、これらの粒子は抗体、残存スクシンイミドエステルとアミンとの反応生成物、および任意で固定化BSAを含む表面を有するようになる。
【0033】
これらの粒子は、標準的なイムノアッセイ技法を用いて、対応する抗体のアナライトについてのイムノアッセイに用いることができる。これらの粒子を用いるイムノアッセイ混合液にはまた、第3級アミン化合物を含有させて、粒子表面上の第3級アミン基の存在による干渉を低減させることもできる。適切な第3級アミン化合物としてはトリエタノールアミン(TEO)が含まれる。
【0034】
本発明の粒子はサンプル成分の非特異的共有結合の量を低減させる。図1は活性化されアミンで処理されているが抗体とは反応させていない粒子の特徴を示している。特に、図1は粒子に共有結合した血清タンパク質の量を、活性化後に添加されたアミン化合物AEOの当量数の関数として示したグラフである。抗体が存在しないため、結合したもしくは吸着したタンパク質は全て非特異的タンパク質である。アミン処理がなければ(AEOの0当量)、血清混合物のタンパク質は活性化された粒子と共有結合し、この場合には表面が1.5mg/m2被覆されることとなる。もともと存在していたカルボキシル基の量に対して200当量のAEOで処理すると、共有結合するタンパク質の量を約85%低減させる。
【0035】
粒子に共有結合している非特異的タンパク質の量は次の試験法によって測定する。0.5%(w/v)の粒子、5%(v/v)正常ヒト血清、および50mM 3-モルホリノ-プロパンスルホン酸バッファー(MOPS), pH7.0を含む750μLのサンプルを37℃で2時間インキュベートし、遠心(15,000 x g, 30分間)する。そのサンプルは粒子に結合した抗体と複合体を形成することとなるような抗原を含んでいない可能性もある。その粒子を1mLの50mM MOPSバッファー, pH7.0に再懸濁し、再度遠心して過剰の未結合血清を除去する。この再懸濁と遠心をさらに3回繰り返す。この結果得られた粒子を手動ピペッティングによって、6%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、10%(v/v)グリセロール、および60mM Tris, pH6.2を含有する溶液の100μL中に再懸濁し、80℃で2時間インキュベートして粒子表面から共有結合していない分子種を脱着させる。粒子を遠心して集め(15,000 x g, 1.5時間)、再懸濁し、1mLの50mM MOPSバッファー, pH7.0を用いて3回洗う。最後に粒子を100μLの50mM MOPSバッファー, pH7.0中に再懸濁し、次いでタンパク質含量の分析にかける。タンパク質含量分析法は、ビシンコニン酸(BCA)アッセイ(PIERCE CHEMICAL COMPANY, Rockford, 米国イリノイ州)を用いて製造者の使用説明書に従って行った。BCAアッセイサンプルを0.1μmのWHATMANフィルター(FISHER SCIENTIC)でろ過した後、562nmでの分析を行った。タンパク質含量は粒子に共有結合しているタンパク質の量に対応している。次いで、この結果を、用いたポリマー粒子の表面全体の面積に対する結合タンパク質の量として表す。
【0036】
好ましくは、上述の試験において、その粒子は粒子の表面積の1平方メートルあたり0.35mg未満の非特異的タンパク質と共有結合する。より好ましくは、その粒子は0.30 mg/m2の非特異的タンパク質と共有結合する。さらにより好ましくは、その粒子は0.20 mg/m2未満の非特異的タンパク質と共有結合する。さらにいっそう好ましくは、その粒子は0.10 mg/m2未満の非特異的タンパク質と共有結合する。さらによりいっそう好ましくは、その粒子は0.05 mg/m2未満の非特異的タンパク質と共有結合する。
【0037】
本発明の粒子はまた、サンプル成分の粒子表面への物理的吸着に対する抵抗性をも提供する。粒子上へ物理的に吸着する非特異的タンパク質の量は次の試験法で測定することができる。0.5%(w/v)の粒子、5%(v/v)正常ヒト血清、および50mM MOPSバッファー, pH7.0を含む750μLのサンプルを37℃で2時間インキュベートし、遠心(15,000 x g, 30分間)する。そのサンプルは粒子に結合した抗体と複合体を形成することとなるような抗原を含んでいない可能性もある。その粒子を1mLの50mM MOPSバッファー, pH7.0に再懸濁し、再度遠心して過剰の未結合血清を除去する。この再懸濁と遠心をさらに3回繰り返す。この結果得られた粒子を手動ピペッティングによって、6%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、10%(v/v)グリセロール、および60mM Tris, pH6.2を含有する溶液の100μL中に再懸濁し、80℃で2時間インキュベートして粒子表面から共有結合していない分子種を脱着させる。粒子を遠心して集め(15,000 x g, 1.5時間)、上清をBCAアッセイによるタンパク質含量の分析にかける。タンパク質含量は粒子上に物理的に吸着されたタンパク質の量に対応している。次いで、この結果を、用いたポリマー粒子の表面全体の面積に対する吸着されたタンパク質の量として表す。
【0038】
好ましくは、上述の試験において、その粒子は粒子の表面積の1平方メートルあたり3.0mg(mg/m2)未満の非特異的タンパク質を物理的に吸着する。より好ましくは、その粒子が2.0 mg/m2未満の非特異的タンパク質を物理的に吸着する。さらにより好ましくは、その粒子が1.0 mg/m2未満の非特異的タンパク質を物理的に吸着する。
【0039】
表1は粒子表面上に物理的に吸着した(非共有結合で)血清タンパク質の量を、その粒子をクエンチ(quench)するために用いたAEOの当量数の関数として示したものである。これらの粒子は抗体で感作されていないが、図に示したようにAEOを用いて活性化および/もしくは処理されたものである。各々の場合において、受動的に吸着した血清タンパク質の量は、EDC活性化を行わなかった粒子を用いた場合(314μg)よりも少なく、活性化はされているがAEOでの処理は行わなかった粒子での量(57μg)に比肩するものであった。このように、粒子表面上の残存スクシンイミドエステルが本発明のアミンと反応してイムノアッセイの際のその粒子と血清タンパク質との共有結合の形成を低減させるのみならず、粒子とアミンとの反応は血清タンパク質の物理的吸着に対して抵抗性の表面をもたらすものである。これらの効果の双方によってイムノアッセイの性能を向上させることができる。
【0040】
【表1】
【0041】
本発明の粒子は、従来の粒子と比べて、イムノアッセイ条件における干渉の低減を示すが、対象の抗原と特異的に相互作用する能力は保持している。事実、これらの粒子の、イムノアッセイに用いる試薬の構成成分としての性能は、干渉がないことによって改善されている。図2と3は共に、本発明の粒子のイムノアッセイにおける性能の改善を示している。図2は、ゲンタマイシンについてのイムノアッセイの測定を蛍光偏光(FP)で行ったものと、ゲンタマイシンのイムノアッセイの測定を未処理の粒子を用いた粒子凝集によって行ったものとの相関性を示すグラフである。図3は同じゲンタマイシンについてのFP測定値と、本発明に従って処理した粒子を用いた粒子凝集イムノアッセイでのゲンタマイシン測定値の相関性を示すグラフである。データポイントを相関させるような最良適合直線は理想的には勾配が1、y軸切片が0、相関係数(R)が1の直線になるはずである。3回測定の全てにおいて処理した粒子の性能は未処理の粒子の性能より優れている。処理した粒子は最良適合直線の勾配が1.07であったのに対し、未処理の粒子では最良適合直線の勾配は1.11であった。処理した粒子では切片が0.009であるのに対し、未処理の粒子では切片は−0.010である。処理した粒子はR値が0.987であるのに対し、未処理の粒子ではR値は0.974である。定性的には、この処理した粒子の相関図は、未処理粒子の相関図よりも「散乱」の程度が低いことが、再現性を持って示されている。
【0042】
陰性サンプルのイムノアッセイを行う場合、それはアナライトを含まない血清のアッセイであるが、本発明の粒子はそのような場合でも性能の改善を示す。非特異的なサンプル中の成分、特にリウマチ因子およびコレステロールなどの物質は、従来の粒子には結合することができ、それによってアナライトと粒子との特異的反応によって生ずるものと類似の凝集反応が生じてしまう。従って、あるサンプルがアナライトを含んでいるものとして不適切に同定されてしまう可能性がある。陰性のサンプル、それにリウマチ因子もしくはコレステロールが多量含まれているものでは、本発明に従ってアミン化合物で処理された粒子は、アミン処理ステップにかけなかった粒子と比較すると、アナライト濃度の平均値と標準偏差の低下が見られる。すなわち、処理された粒子は真の測定値であるゼロに近い値を提供し、測定値はより一貫したものとなる。粒子の調製の際に処理ステップを含めても、得られる較正曲線の質にはわずかな影響しか与えない。
【0043】
これらの結果は、粒子をベースとしたイムノアッセイの性能の向上は粒子を本発明に従ってアミン化合物で処理することによって得られることを示している。このステップの間に粒子表面上のスクシンイミドエステル、それはカルボジイミドが媒介する活性化反応で形成され、抗体およびBSAでの感作の際には開裂されないものであるが、そのエステルは第1級アミン化合物と反応する。このような様式での反応が行われなければ、スクシンイミドエステルはその反応の代わりにイムノアッセイの際に血清成分と反応してしまう。このことが、粒子凝集プロセスの速度および/もしくは温度による挙動を、標的のアナライトを含有する血清サンプルの場合、および含有していない血清サンプルの場合の双方において、妨害し、どちらの場合も誤ったアッセイ結果をもたらすこととなる。
【0044】
本発明のアミン化合物を用いる粒子の処理は、単独でもしくはイムノアッセイにおける干渉を低減するための他の技法と組み合わせて用いることができる。粒子の凝集によるイムノアッセイの性能を最適なものとするには、本発明に従って第1級アミン化合物で処理された感作粒子を用いることが好ましく、アッセイ混合液中に第3級アミン化合物を含ませることも好ましい。いくつかの場合においては、TEOなどの第3級アミン化合物をイムノアッセイ混合液中に使用することで、イムノアッセイの際の干渉を所望のレベルまで低減させるために十分なものとすることができる。第1級アミンを粒子の処理に用いること、もしくは第3級アミン化合物を添加することのいずれかを、単独でもしくは組み合わせて使用することは、経験的に決めることができ、一方の技法が他方よりも良いかどうか、もしくは組み合わせることによって最良の結果が得られるか否かを決めることができる。
【0045】
本発明によるアッセイにおいては種々の補助的な物質もよく用いることができる。例えば、バッファーは通常はアッセイ用液中に存在しており、アッセイ用液およびアッセイの構成成分を安定化するための安定剤も存在している。これらの添加剤に加えてアルブミンなどの他のタンパク質も含むことができ、または界面活性剤、特に非イオン性界面活性剤および類似のものも含むことができる。
【0046】
該粒子は、他の試薬と共に、アナライトの測定のためのアッセイ法を都合よく行うのに有用なキットとしてパッケージすることができる。本発明の多能性を増強するために、試薬類の比率がその方法およびアッセイに実質的に最適なものを提供することとなるように、試薬をパッケージ化した組み合わせで、同一容器もしくは別の容器中に、液状もしくは凍結乾燥品の形態で提供することができる。各試薬はそれぞれ別々の容器に入れることができ、もしくは種々の試薬は1個以上の容器に、それらの試薬の交差反応性および安定性の如何によって組み合わせることができる。
【0047】
例えば、試薬テストキットには、パッケージ化された組み合わせで、ある特定のアナライトに対して特異的な抗体、それと同じ抗体もしくはそれの類似体もしくは誘導体を含む本発明の粒子を含有することができ、また任意で既知の量のアナライトを含んでなる1種以上の較正物質を含むものとすることができる。そのようなテストキットは、そのアナライトおよび構造的に関連のある化合物について臨床的な感度が増強されたアッセイのための試薬を提供することができる。
【0048】
【実施例】
下記の実施例は説明のために示したものであって本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。
【0049】
平均粒径が201ナノメーター(nm)、表面積が1グラムあたり28.4平方メートル(m2/g)でラテックス1gあたり表面のカルボキシル基が0.21ミリ当量(meq)であるようなラテックス粒子はSERADYN(米国インディアナポリス)から入手し、それについてはさらに特徴を調べることなく用いた。微粒子凝集イムノアッセイはHITACHI 717アナライザー(ROCHE DIAGNOSTICS CORPORATION, 米国インディアナポリス)で実施し、その性能は、ROCHE 蛍光偏光(FP)イムノアッセイと、それと並行して行ったINTEGRA 700アナライザー(ROCHE DIAGNOSTICS SYSTEMS)の結果を参照して評価した。ROCHE FP較正物質を微粒子をベースとしたアッセイの較正曲線を作成するために用いた。溶液およびラテックス粒子のタンパク質含量はビシンコニン酸(BCA)アッセイ(PIERCE CHEMICAL COMPANY, Rockford, 米国イリノイ州)を用いて製造者の使用説明書に従って測定した。ラテックスを含むBCAアッセイサンプルを、0.1μM WHATMAN フィルター(FISHER SCIENTIFIC)を通過させてろ過した後、562nmでの分析にかけた。ラテックスペレットの再懸濁はULTRASONIC HOMOGENIZER-4710 SERIESソニケーター(COLE-PARMER, Vernon Hills, 米国イリノイ州)を25〜50%の出力で用いて、サンプルを氷上に保持しつつ行い、ラテックスの単分散性はCOBAS MIRA アナライザー(ROCHE DIAGNOSTICS SYSTEMS)で多数の波長での光散乱によって調べた。
【0050】
溶媒とバッファーはFISHER SCIENTIFIC(Suwanee, 米国ジョージア州)から入手した。その他の試薬は全てALDRICH(Milwaukee, 米国ウイスコンシン州)もしくはFLUKAから入手し、そのまま用いた。
【0051】
実施例 1−アミンを用いた処理の、活性化したラテックスへの血清成分の共有結合および物理的吸着に及ぼす影響
21mMのN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を含有する、pH5.0の10mM 2-モルホリノエタンスルホン酸バッファー(MES)中の1%(w/v)のラテックス懸濁液へ、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)の新鮮な水溶液をその濃度が21mMとなるまで添加した。室温で2時間インキュベートした後、その懸濁液を遠心し(15,000 x g, 30分間)、ラテックスを50mMの3-モルホリノプロパンスルホン酸バッファー(MOPS), pH8.0中に再懸濁した。この懸濁液のアリコートに2-(アミノエトキシ)エタノール(AEO)(50mMのMOPSバッファーpH8.0中)を添加してその濃度を0 M、0.002 M、0.011 M、0.021 M、0.105 M、0.210 M、および0.420 Mとした。これらの懸濁液の各々の最終液量は1%(w/v)のラテックスを含み1.1mLであった。室温で2時間インキュベートした後、ラテックスを遠心し(15,000 x g, 30分間)、50mMのMOPSバッファー, pH7.0中に再懸濁し、再度遠心した。このプロセスをさらに3回繰り返した。最終的に得られたラテックスペレットを50mMのMOPSバッファー, pH7.0中に再懸濁し、1%(w/v)懸濁液として4℃で48時間保存した。
【0052】
血清のラテックス粒子との相互作用を下記のとおり調べた。上述の方法で調製した0.5%(w/v)ラテックス粒子、5%(v/v)正常ヒト血清(SIGMA)、および50mM MOPSバッファー, pH7.0を含むサンプル(750μL)を37℃で2時間インキュベートし、遠心した(15,000 x g, 30分間)。別に、血清を含まない、もしくは活性化していないラテックス粒子を用いた対照についてもインキュベーションを行った。
【0053】
ペレットを1mLの50mM MOPSバッファー, pH7.0中に再懸濁し、再度遠心して過剰で結合していない血清を除去した。このプロセスをさらに3回繰り返した。この結果得られたラテックスペレットを手動ピペッティングによって、6%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、10%(v/v)グリセロール、および60mM Tris, pH6.2を含有する溶液100μL中に再懸濁し、80℃で2時間インキュベートしてラテックス表面から共有結合していない分子種を脱着させた。粒子を遠心して集め(15,000 x g, 1.5時間)、上清をBCAアッセイによるタンパク質含量の分析にかけた。タンパク質含量は粒子上に物理的に吸着されたタンパク質の量に対応しており、これらの結果は表1に示す。
【0054】
粒子を再懸濁し、1mL容量の50mM MOPSバッファー, pH7.0を用いて3回洗った。最後にその粒子を100μLの50mM MOPSバッファー, pH7.0中に再懸濁し、次いでこれもタンパク質含量のBCA分析にかけた。タンパク質含量は粒子に共有結合しているタンパク質の量に対応しており、これらの結果は図1に示す。
【0055】
実施例 2−イムノアッセイの性能に及ぼすアミン処理の効果
10mM MESバッファー, pH5.0中の1%(w/v)ラテックス懸濁液30mLに、0.22M NHSの新たに調製した水溶液を2.86mL添加し、次いで0.26M EDCの新たに調製した水溶液を2.42mL添加した。活性化反応は室温で2時間行い、その後ラテックスを遠心して(15,000 x g, 45分間)集めた。そのペレットを15mLの50mM MOPSバッファー, pH6.4中に再懸濁した。この懸濁液に、50mg/mLのBSAおよび0.30mg/mLのゲンタマイシンモノクローナル抗体M-12A9-IgGを含有する50mM MOPSバッファー, pH6.4を15mL添加した。この懸濁液を室温で2時間インキュベートして感作を行った。過剰のIgGとBSAは遠心(15,000 x g, 30分間)して除去し、そのペレットを15mLの50mM MOPSバッファー, pH8.0中に再懸濁した。この懸濁液に0.84M AEOを含有する50mM MOPSバッファー, pH8.0を15mL添加し、感作後のラテックス表面に残存するNHSエステルを全てクエンチさせるために室温で一晩インキュベートした。遠心と50mM MOPSバッファー, pH8.0中への再懸濁(30mLを3回)を繰り返すことによって、過剰のAEOを除去し、この結果得られたラテックスを、0.1%(v/v) BSAおよび0.1%(w/v) NaN3を含有する50mM MOPSバッファー, pH7.5中に2%(w/v)の懸濁液として保存した。対照のラテックスのバッチはAEOのクエンチステップを行わなかったことを除いては全く同一の方法で並行して調製した。クエンチしたものおよび対照の粒子の性能は一連の臨床血清サンプルに対するイムノアッセイによって評価した。
【0056】
各サンプルのゲンタマイシン含量は、ラテックスをベースとしたアッセイと同じゲンタマイシンモノクローナル抗体を用いてROCHE FP ゲンタマイシンイムノアッセイで測定した。FP 参照イムノアッセイおよびラテックス凝集イムノアッセイはサンプルの分解を避けるために並行して行った。ROCHE FPシステムで測定したゲンタマイシン濃度の、粒子をベースとした凝集アッセイで測定したゲンタマイシン濃度との相関性は図2および図3に示す。
【0057】
実施例 3−陰性サンプルのイムノアッセイ
Roche FP イムノアッセイで試験した結果ゲンタマイシンが陰性であった血清サンプル30検体のセットについてイムノアッセイを行った。このサンプルセットの見かけの平均ゲンタマイシン濃度はクエンチしたラテックスでは約0.03μg/mLで標準偏差は0.17μg/mLであり、これに対してクエンチしていないラテックスではそれぞれ約0.09μg/mLおよび0.31μg/mLであった。
【0058】
実施例 4−効果的な処理を行いうる他のアミン化合物
10mM MESバッファー, pH5.0中に1%(w/v)ラテックスを含む50mLの懸濁液に、0.22M NHSの新鮮な水溶液を4.78mL添加した後、0.26M EDCの新鮮な水溶液を4.03mL添加した。室温で2時間インキュベートした後、その懸濁液を遠心し(15,000 x g, 30分間)、ラテックスを50mM MOPSバッファー, pH8.0中に再懸濁して2%(w/v)の懸濁液を得た。その懸濁液を1.5mLアリコートに分け、その各々に下記のアミン化合物のうちの1種の1M溶液の1.29mLを添加した:ヒドロキシルアミン;エタノールアミン;2-(メチルアミノ)エタノール;ジエタノールアミン;グリシン;グリシンエチルエステル;サルコシン;サルコシンエチルエステル;(メチルアミノ)アセトアルデヒドジメチルアセタール;N-メチル-D-グルカミン;AEO;EBE;およびTTD。各化合物は50mM MOPSバッファー, pH8.0中に溶解したそれらの塩酸塩の溶液とし、それを添加した。別に対照実験を、アミンのない条件、もしくは活性化反応にかけていないラテックスを用いて行った。反応混合液を室温で2時間インキュベートした後、遠心した(15,000 x g, 30分間)。過剰のアミンはそのラテックスを、1mLの50mM MOPSバッファー, pH7.0による処理で3回洗って除去した。最終的に得られたラテックスペレットを50mM MOPSバッファー, pH7.0中に再懸濁し、2%(w/v)の懸濁液とし、4℃で48時間保存した。
【0059】
血清とこれらのラテックス粒子との相互作用を調べた。上述の方法で調製した0.5%(w/v)ラテックス粒子、5%(v/v)正常ヒト血清、および50mM MOPSバッファー, pH7.0を含むサンプル(750μL)を37℃で2時間インキュベートし、遠心した(15,000 x g, 30分間)。選択したラテックスについて血清の存在しない条件下で対照のインキュベーションを行った。ペレットを1mLの50mM MOPSバッファー, pH7.0中に再懸濁し、再度遠心して過剰で結合していない血清を除去した。このプロセスをさらに3回繰り返した。この結果得られたラテックスペレットを手動ピペッティングによって、6%(w/v)SDS、10%(v/v)グリセロール、および60mM Tris, pH6.2を含有する溶液の100μL中に再懸濁し、80℃で2時間インキュベートしてラテックス表面から共有結合していない分子種を脱着させた。粒子を遠心して集め(15,000 x g, 1.5時間)、上清を取り、BCA分析にかけた。粒子を再懸濁し、1mLの50mM MOPSバッファー, pH7.0を用いて3回洗った。最後にその粒子を100μLの50mM MOPSバッファー, pH7.0中に再懸濁し、供試化合物の各々のクエンチについて評価するためにBCA分析にかけた。
【0060】
表2は、血清サンプル中の、活性化および処理を行ったラテックスの各々に共有結合したタンパク質の量をBCAアッセイで測定した結果を示している。
【0061】
【表2】
【0062】
このデータは、試験した13種の化合物のうち5種のみが、これらの条件下でラテックス粒子の表面上のスクシンイミドエステルの官能基と効果的に反応することを示しており、それら5種とは:エタノールアミン、グリシンエチルエステル、AEO、EBE、およびTTDである。これら5種は全て、粒子へのタンパク質の共有結合が0.50 mg/m2未満である。これらの効果的なアミン化合物のうち、AEOおよび2種のジアミノ化合物EBEおよびTTDは粒子へのタンパク質の共有結合が0.30mg/m2未満で、一般的なアミンであるエタノールアミン(0.42mg/m2)およびグリシン(0.95mg/m2)よりも著しく改善されている。
【0063】
EBEおよびTTDの2種の化合物およびそれらの類似体は、単一の分子で2つのスクシンイミドエステルを開裂させる能力があり、それによってラテックス粒子上に閉鎖された(末端の閉じた)表面エレメントを形成し、それは血清成分との相互作用に特に抵抗性のものとなると考えられるので、それらの化合物は処理に用いる分子として興味深いものとなる可能性がある。EBEおよびTTD処理ラテックスの単分散性を調べたところ、ラテックス粒子間のジアミンの架橋は生じていなかった。
【0064】
この血清吸着実験での脱着上清の分析では、これらのラテックスに受動的に吸着した血清タンパク質の量は、活性化していない対照のラテックスに対して39%(AEO)、41%(EBE)、および36%(TTD)であった。このように、ラテックス上の残存スクシンイミドエステル基をAEO、EBE、およびTTDで反応させると、血清タンパク質の物理的吸着に対して適度な抵抗性のある望ましい特性を持ったラテックスの表面が作り出される。これらのラテックスは、非可逆的(共有結合的)結合もしくは可逆的(受動的)結合のいずれかによる血清タンパク質との相互作用が最小限のものであるので、イムノアッセイ法の進展に適したものである。
【0065】
実施例 5−イムノアッセイの性能改善のための添加剤としてのトリエタノールアミンの使用
ゲンタマイシンモノクローナル抗体で感作し、AEOで処理したラテックス粒子を用いてラテックス凝集イムノアッセイを行った。イムノアッセイはトリエタノールアミン(TEO)不含の条件およびTEOを最終濃度で2.5〜15mMの範囲で存在させた条件で行った。供試した各血清サンプルのゲンタマイシン含量は市販のRoche FP ゲンタマイシンイムノアッセイで測定したが、このアッセイはラテックスをベースとしたアッセイで用いたものと同じゲンタマイシンモノクローナル抗体を用いている。FP参照イムノアッセイおよびラテックス凝集イムノアッセイはサンプルの分解を避けるために並行して実施した。ラテックスイムノアッセイバッファーにTEOを添加しても得られた較正曲線の質には顕著な影響はなかった。
【0066】
図4および5は、微粒子をベースとしたイムノアッセイをTEO不含の条件とTEOを12.5mM存在させた条件のいずれかで行ったものと、Roche FPイムノアッセイで行ったものとの相関性のグラフである。添加剤としてTEOを用いると、ラテックス凝集イムノアッセイの性能に劇的な効果が現れる。対照の実験(TEO不含)と比較すると、最良適合直線の勾配は1.11から1.01へと減少し、y軸切片は-0.11から0.05へ、R相関係数は0.976から0.985へと増加する。このように、最良適合直線(実践)が標的直線(点線(勾配=1、切片=0))と合一することから視覚的に明らかなように、3つのパラメーターが最適な値である1.00、0.00、および1.000へとそれぞれ近付く。Roche FPイムノアッセイで試験した結果ゲンタマイシンが陰性であった血清サンプルのセットを用いてラテックスを試験したところ、微粒子をベースとしたアッセイの試薬中にTEOを含めることにも、FPアッセイの場合と類似の利点が認められた。アッセイ混合液中に最終的に12.5mMのTEOが含有されていると、このサンプルセットの見かけのゲンタマイシン濃度の平均はTEO不含の条件での0.42μg/mLと比較して約0.32μg/mLであった。このアッセイの望ましい検出限界は0.17μg/mLである。TEOの最適濃度を調べた実験では、最終のTEO濃度として5mMあればこの添加剤によってもたらされる利点が完全に発揮されるには十分であることが示唆される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、血清タンパク質のカーボジイミド活性化ラテックス粒子への共有結合の、EDC/NHS活性化後に添加された2-アミノエトキシエタノール(AEO)の量への依存性を示すグラフである。
【図2】図2は、未処理の粒子を用いた、蛍光偏光によるゲンタマイシンイムノアッセイと、粒子凝集によるゲンタマイシンイムノアッセイとの測定値の相関性を示すグラフである。
【図3】図3は、処理された粒子を用いた、蛍光偏光によるゲンタマイシンイムノアッセイと、粒子凝集によるゲンタマイシンイムノアッセイとの測定値の相関性を示すグラフである。
【図4】図4は、トリエタノールアミン(TEO)の存在しない条件での、蛍光偏光によるゲンタマイシンイムノアッセイと、粒子凝集によるゲンタマイシンイムノアッセイとの測定値の相関性を示すグラフである。
【図5】図5は、TEOの存在する条件での、蛍光偏光によるゲンタマイシンイムノアッセイと、粒子凝集によるゲンタマイシンイムノアッセイとの測定値の相関性を示すグラフである。
Claims (5)
- イムノアッセイ用の粒子を調製する方法であって、
カルボキシル基を含み、約200nmの平均粒径を有する粒子を、N-ヒドロキシスクシンイミドもしくはN-ヒドロキシスルホスクシンイミド、およびカルボジイミドカップリング剤と反応させて、スクシンイミドエステル基を含む活性化粒子を取得し;
該活性化粒子を抗体と接触させて、共有結合した抗体および残存スクシンイミドエステル基を含む感作粒子を取得し;そして
該感作粒子を水性混合液中において式(I)のアミン化合物:
H2N-R-X (I);
[式中、-Xは、-NH2、-OH、および-CO2CH2CH3からなる群から選択され、
Rは、アルキル基およびアルキルエーテル基からなる群から選択され、
ここで、-Xが-NH2もしくは-CO2CH2CH3である場合には、Rは1〜20個の炭素原子を含み、-Xが-OHである場合には、Rは4〜20個の炭素原子を含む]
で処理する;
ことを含み、前記アミン化合物が 2,2'-( エチレンジオキシ ) ビスエチルアミンおよび 4,7,10- トリオキサ -1,3- トリデカンジアミンからなる群から選択されることを特徴とする、上記方法。 - イムノアッセイ用の感作粒子であって、
表面をもち、約200nmの粒径を有する粒子;
該表面に共有結合を介して結合された少なくとも1つの抗体;および
該表面上の、スクシンイミドエステルと式(I)のアミン化合物:
H2N-R-X (I);
[式中、-Xは、-NH2、-OH、および-CO2CH2CH3からなる群から選択され、
Rは、アルキル基およびアルキルエーテル基からなる群から選択され、
ここで、-Xが-NH2もしくは-CO2CH2CH3である場合には、Rは1〜20個の炭素原子を含み、-Xが-OHである場合には、Rは4〜20個の炭素原子を含む]
との反応生成物;
を含んでなり、前記アミン化合物が 2,2'-( エチレンジオキシ ) ビスエチルアミンおよび 4,7,10- トリオキサ -1,3- トリデカンジアミンからなる群から選択されることを特徴とする上記感作粒子。 - イムノアッセイ用の粒子であって、
表面をもち、約200nmの粒径を有するポリマー粒子;
該表面に共有結合を介して結合された少なくとも1つの抗体;
該表面上のBSA;および
該表面上の、スクシンイミドエステルとアミン化合物との反応生成物;
を含んでなり、ここにおいて、
該アミン化合物は、 2,2'-(エチレンジオキシ)ビスエチルアミンおよび4,7,10-トリオキサ-1,3-トリデカンジアミンからなる群から選択され、
該粒子は、血清と接触させた場合に、0.35mg/m2未満の非特異的タンパク質と共有結合し、そして
該粒子は、血清と接触させた場合に、2mg/m2未満の非特異的タンパク質を物理的に吸着する、
ことを特徴とする上記粒子。 - 試薬であって、
各粒子が表面をもち、約200nmの粒径を有する、複数の粒子;
該表面に共有結合を介して結合された抗体;および
該表面上の、スクシンイミドエステルと式(I)のアミン化合物:
H2N-R-X (I);
[式中、-Xは、-NH2、-OH、および-CO2CH2CH3からなる群から選択され、
Rは、アルキル基およびアルキルエーテル基からなる群から選択され、
ここで、-Xが-NH2もしくは-CO2CH2CH3である場合には、Rは1〜20個の炭素原子を含み、-Xが-OHである場合には、Rは4〜20個の炭素原子を含む]
との反応生成物;
を含んでなり、前記アミン化合物が 2,2'-( エチレンジオキシ ) ビスエチルアミンおよび 4,7,10- トリオキサ -1,3- トリデカンジアミンからなる群から選択されることを特徴とする上記試薬。 - 抗原を測定するアッセイ法であって、
抗原を含むと予想されるサンプルを請求項4に記載の試薬と組み合わせること、ただし、該試薬は該抗原に対する抗体を含んでなり、該試薬は該抗原との検出可能な複合体を形成することができるものであること;および
検出可能な該複合体の存在もしくは量を、該サンプル中の該抗原の尺度として測定すること;
を特徴とする上記方法。
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