JP3648921B2 - 永久磁石形同期回転電機の回転子構造 - Google Patents

永久磁石形同期回転電機の回転子構造 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は永久磁石形同期回転電機の回転子構造に関し、詳しくは、始動時には誘導機として始動し定格運転時には同期機として運転する電動機として使用できる永久磁石形同期回転電機の回転子構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
図4(a)は従来の永久磁石形同期回転電機の回転子構造を示す横断面図、図4(b)は前記回転子構造の下半分を省略して示す縦断面図である。
【0003】
図4(a)、(b)に示すように、回転子鉄心2は図示しない電機子(固定子)鉄心の内側に空隙を介して設けられており、多数の電磁鉄板(鋼板)2aを軸方向に積層して構成されている。電磁鉄板2a(即ち回転子鉄心2)には回転子1の磁極毎に回転子鉄心周方向に等間隔で回転子スロット2bが形成されると共に、回転子1の各極間に位置するように磁石用スロット2cが形成されている。そして各磁石用スロット2cの外周側部2dと内周側部2eは、回転子1の各極間を磁気絶縁するために分離されている。即ち、図示例の回転子1は4極であり、これに応じて電磁鉄板2aは4分割されている。
【0004】
従って、このままでは回転遠心力に対する強度が低いため、回転子鉄心2の間には軸方向に所定の間隔でステンレス(SUS)板7が介設されており、これらのSUS板7によって回転遠心力に対する強度が補強されている。
【0005】
回転子スロット2bにはアルミダイキャストによって2次導体であるアルミ導体3が設けらており、これらのアルミ導体3の軸方向両端部はエンドリング8によって短絡されている。即ち、アルミ導体3とエンドリング8とによってかご形に形成されている。磁石用スロット2cには永久磁石(フェライト)4が挿入されている。これらの永久磁石4は、N,S極の方向が回転子鉄心周方向に沿い且つ隣合う永久磁石4の磁極同士が同極となるように各磁石用スロット2cに挿入されており、その磁力によって回転子1の磁極(4極)を構成している。
【0006】
また、回転子鉄心2の内周部には回転軸であるシャフト6が嵌合固定されており、このシャフト6と回転子鉄心2の内周部との間には永久磁石5が回転子1の各磁極毎に介設されている。これらの永久磁石5は回転子鉄心2とシャフト6との間を磁気絶縁するために設けられている。
【0007】
従って、上記構造の回転子1を備えた永久磁石形同期回転電機は、アルミ導体3に固定子の回転磁界により誘導起電力が発生して電流が流れることにより、トルクが発生して回転子1が回転し始める。即ち、誘導機として始動することができる。また、回転子1を同期速度付近まで加速した後は永久磁石4により同期機として運転することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の永久磁石形同期回転電機の回転子構造では、次のような問題点があった。
【0009】
▲1▼ トルクを発生する電磁鉄板2aとトルクを発生しない非磁性のSUS板7とが軸方向に交互に積層されているため、トルク/積み代率が低い。
▲2▼ また、電磁鉄板2aとSUS板7とを交互に積層するため、製造に手間がかかり作業時間が増大していた。
▲3▼ 回転遠心力に対する強度をSUS板7によって間接的に補強する構造であるため、回転子1の高速化には限界があった。
▲4▼ SUS板7は電磁鉄板2bに比べて高価であるため、コストアップの要因となっていた。
▲5▼ また、回転子鉄心2とシャフト6との間に永久磁石5を介設して磁気絶縁しなければならないため構造が複雑で部品点数も多く、このこともコストアップの要因となっていた。
【0010】
従って本発明は上記従来技術に鑑み、補強用の非磁性材や磁気絶縁用の永久磁石を要せず簡素な構造とし、コストダウンや高速化や小型化(積み代当たりのトルクの増加)を図ることができる永久磁石形同期回転電機の回転子構造を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する第1発明の永久磁石形同期回転電機の回転子構造は、回転子鉄心と、回転子鉄心に形成した回転子スロット内に設けた2次導体と、回転子鉄心に形成した磁石用スロット内に設けて回転子の磁極を構成する永久磁石と、回転子鉄心の内周部に嵌合固定した回転軸とを備えてなる同期回転電機の回転子構造であって、
前記回転子スロットは回転子鉄心周方向に沿って略等間隔に形成し、回転子の各極間に位置する回転子スロットと回転子鉄心の外周面との間には容易に磁気飽和し且つ回転遠心力を支持可能な大きさの第1鉄心部を有しており、
前記磁石用スロットは回転子スロットよりも回転子鉄心径方向の内側に回転子鉄心周方向に沿って略等間隔に形成し、回転子の各極間では隣接する磁石用スロット同士を連結してこの連結部の外周側に第1凸部を形成し、この第1凸部と回転子の各極間に位置する回転子スロットの内周側に形成した第2凸部との間には容易に磁気飽和し且つ回転遠心力を支持可能な大きさの第2鉄心部を有しており、
回転子の各磁極における磁石用スロット同士の間には容易に磁気飽和し、且つ回転遠心力を支持可能であると共に回転軸へのトルク伝達に耐えられる大きさの第3鉄心部を有していることを特徴とする。
【0012】
また、第2発明の永久磁石形同期回転電機の回転子構造は、第1発明の永久磁石形同期回転電機の回転子構造において、
第1鉄心部における回転子鉄心径方向の幅を、他の回転子スロットと回転子鉄心の外周面との間の鉄心部における回転子鉄心径方向の幅よりも広くして、回転遠心力により第2鉄心部に作用する引張応力が平均化されるように構成したことを特徴とする。
【0013】
また、第3発明の永久磁石形同期回転電機の回転子構造は、第1又は第2発明の永久磁石形同期回転電機の回転子構造において、
第2鉄心部は第1凸部の基端から第2凸部の基端までの間の中心に位置することを特徴とする。
【0014】
また、第4発明の永久磁石形同期回転電機の回転子構造は、第1、第2又は第3発明の永久磁石形同期回転電機の回転子構造において、
第2鉄心部の回転子鉄心周方向の幅b4は、次式、
b4/(2×永久磁石の厚さ)=永久磁石の保磁力/鉄板飽和磁界
の関係を満たす寸法であることを特徴とする。
【0015】
また、第5発明の永久磁石形同期回転電機の回転子構造は、第1、第2、第3又は第4発明の永久磁石形同期回転電機の回転子構造において、
第3鉄心部を回転子鉄心周方向の幅が回転子鉄心の外周側から内周側に向かって漸減する略三角形の形状としたことを特徴とする。
【0016】
また、第6発明の永久磁石形同期回転電機の回転子構造は、第5発明の永久磁石形同期回転電機の回転子構造において、
第3鉄心部の外周側部における回転子鉄心周方向の幅を、第3鉄心部の内周側部における回転子鉄心周方向の幅の2倍以上にしたことを特徴とする。
【0017】
従って、上記第1発明の永久磁石形同期回転電機の回転子構造によれば、第1鉄心部、第2鉄心部及び第3鉄心部が容易に磁気飽和して極間が磁気絶縁されることにより、回転子の磁極が構成される。即ち、磁気絶縁のために回転子鉄心を周方向に分離したり永久磁石を設けたりする必要がない。しかも、回転子鉄心は第1鉄心部、第2鉄心部及び第3鉄心部において連結した一体のものあり、これらの第1鉄心部、第2鉄心部及び第3鉄心部は何れも回転遠心力を支持可能な大きさを有しているため、補強用の非磁性材を設ける必要もない。
【0018】
また、上記第2発明の永久磁石形同期回転電機の回転子構造によれば、第1鉄心部におけるの回転子鉄心径方向の幅を、他の回転子スロットと回転子鉄心の外周面との間の鉄心部における回転子鉄心径方向の幅よりも広くすることによって、回転遠心力により第2鉄心部に作用する引張応力が平均化されるようにしたことにより、第2鉄心部における機械的保持力が有効に発揮される。
【0019】
また、上記第3発明の永久磁石形同期回転電機の回転子構造によれば、第2鉄心部が第1凸部の基端から第2凸部の基端までの間の中心に位置することにより、第2鉄心部における部分的応力集中が最も緩和される。
【0020】
また、上記第4発明の永久磁石形同期回転電機の回転子構造によれば、第2鉄心部の回転子鉄心周方向の幅b4を、次式の関係を満たす寸法とすることにより、永久磁石にかかる減磁力が過大にならず且つ発生トルクの減少を招かない最適な値となる。
【0021】
b4/(2×永久磁石の厚さ)=永久磁石の保磁力/鉄板飽和磁界
【0022】
また、上記第5又は第6発明の永久磁石形同期回転電機の回転子構造によれば、第3鉄心部を回転子鉄心周方向の幅が回転子鉄心の外周側から内周側に向かって漸減する略三角形の形状としたことにより、変形しにくく外乱による変動トルク等にも耐え得る機械的強度を有し、しかも幅の狭い部分では磁気飽和し易い構造となる。特に、第3鉄心部の外周側部における回転子鉄心周方向の幅を、第3鉄心部の内周側部における回転子鉄心周方向の幅の2倍以上にした場合に、その効果が顕著となる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0024】
図1は本発明の実施の形態に係る永久磁石形同期回転電機の回転子構造を示す横断面図、図2は図1の一部拡大図、図3は図1に示す回転子の鉄心部に作用する引張応力の説明図である。
【0025】
<構成>
図1において12は回転子鉄心であり、この回転子鉄心12は図示しない電機子(固定子)鉄心の内側に空隙を介して設けられており、多数の電磁鉄板(鋼板)12aを軸方向に積層して構成されている。そして、詳細は後述するが、回転子鉄心12は周方向に分離されておらず一体のものであり、この回転子鉄心12自体で直接的に回転遠心力を支持することができるため、軸方向の途中に従来のような補強用のSUS板は介設されていない。
【0026】
図1及び図2に示すように、電磁鉄板12a(即ち回転子鉄心12)には、回転子スロット12b,12cと磁石用スロット12dとが形成されている。
【0027】
回転子スロット12b,12cは回転子鉄心周方向に沿って略等間隔に形成されており、回転子11の各極間(図中の一点鎖線部分)に位置する回転子スロット12bと回転子鉄心12の外周面との間には第1鉄心部aを有している。また、他の回転子スロット12cと回転子鉄心12の外周面との間にも鉄心部a’を有している。
【0028】
磁石用スロット12dは回転子スロット12b,12cよりも回転子鉄心径方向の内側に回転子鉄心周方向に沿って略等間隔に形成されている。しかも、回転子11の各極間では隣接する磁石用スロット12d同士を連結して、この連結部の外周側には第1凸部12d−1が形成されている。一方、回転子11の各極間に位置する回転子スロット12bの内周側には、第2凸部12b−1が形成されている。そして、第1凸部12d−1と第2凸部12b−1との間には、第2鉄心部bを有している。
【0029】
また、回転子11の各磁極における磁石用スロット12d同士の間には、第3鉄心部cを有している。
【0030】
回転子スロット12b,12cにはアルミダイキャストによって2次導体であるアルミ導体13が設けられており、これらのアルミ導体13の軸方向両端部は図示しないエンドリングによって短絡されている。即ち、アルミ導体13とエンドリングとによってかご形に形成されている。磁石用スロット12dには永久磁石14が挿入されている。これらの永久磁石14は、N,S極の方向が回転子鉄心径方向に沿い且つ2つの永久磁石14毎に(即ち回転子11の各磁極毎に)磁束の方向が変わるように各磁石用スロット12dに挿入されており、その磁力によって回転子11の磁極(4極)を構成している。また、回転子鉄心12の内周部には、回転軸である強磁性材のシャフト16がヤキバメ等によって嵌合固定されている。
【0031】
そして、上記の第1鉄心部a、第2鉄心部b及び第3鉄心部cは何れも、極間を磁気絶縁して回転子11の磁極を構成するために容易に磁気飽和し且つ回転遠心力を支持することができる大きさとなっている。また、アルミ導体13や回転子鉄心12の外周部に発生するトルクは第3鉄心部cを介して回転子鉄心12の内周部へと伝達され更にシャフト16に伝達されるため、第3鉄心部cはこのトルク伝達にも耐えられる機械的強度を有する大きさとなっている。
【0032】
また、第1鉄心部aにおける回転子鉄心径方向の幅a1は、他の回転子スロット12cと回転子鉄心12の外周面との間の鉄心部a’における回転子鉄心径方向の幅a2よりも広くして、回転遠心力により第2鉄心部bに作用する引張応力が平均化されるようになっている。
【0033】
つまり、鉄心部a’の幅a2の寸法は通常0.2〜0.8mm程度でありアルミ導体(2次導体)13のリアクタンスを増大させない程度の寸法に設定される。第1鉄心部aもこれと同様の働きをするが、4箇所の第1鉄心部aの幅a1の寸法だけを広くしても全体のトルク特性に与える影響は小さい。そこで上記の如く、第1鉄心部aの幅a1を鉄心部a’の幅a2よりも大きくして、回転遠心力により第2鉄心部bに作用する引張応力が平均化されるようにしている。
【0034】
図3(a)に示すように、a1の寸法が小さい場合には回転遠心力によって回転子スロット12bを図中左右方向に開くような力が働き、この引張応力が第2鉄心部bの外周側部分(即ち第2凸部12b−1の先端(図中下端)角部)に集中してしまい不均一な分布となる。これに対して、図3(b)に示すように、a1の寸法を大きくした場合には回転遠心力による引張応力が第2鉄心部bの全体に作用して平均化される。
【0035】
また、図2に示すように、第2鉄心部bは第1凸部12d−1の基端(図中下端)から第2凸部12b−1の基端(図中上端)までの間b5の中心に位置している。
【0036】
また、第2鉄心部bの回転子鉄心周方向の幅b4は、永久磁石14にかかる減磁力が過大とならないような寸法としなければならず、しかもb4の寸法が小さいと発生トルクが減少する。そこでb4の寸法は、永久磁石14の厚さをMHとして、次の(1)式を満たす寸法に設定されている。
【0037】
b4/(2×永久磁石の厚さMH)=永久磁石の保磁力/鉄板飽和磁界 (1)
【0038】
また、第3鉄心部cは回転子鉄心12の外周側と内周側とを連結する部分であるが磁気的には短絡回路となるため、容易に磁気飽和して磁気絶縁することができるようになるべく小さい方がよい。一方、第3鉄心部cは機械強度的には、上記の如く回転遠心力を支持すると共にトルク伝達に耐え得る強度を要する。
【0039】
そこで、第3鉄心部cは、回転子鉄心周方向の幅が回転子鉄心の外周側から内周側に向かって漸減する略三角形状に形成されている。また、第3鉄心部cの外周側部における回転子鉄心周方向の幅c2は、第3鉄心部cの内周側部における回転子鉄心周方向の幅c2の2倍以上にしている(2×c1<c2)。
【0040】
<作用・効果>
上記構造の回転子11を備えた永久磁石形同期回転電機は、アルミ導体13に固定子の回転磁界により誘導起電力が発生して電流が流れることにより、トルクが発生して回転子11が回転し始める。即ち、誘導機として始動することができる。また、回転子1を同期速度付近まで加速した後は永久磁石14により同期機として運転することができる。
【0041】
そして、上記構造の回転子11によれば、第1鉄心部a、第2鉄心部b及び第3鉄心部cが容易に磁気飽和して極間が磁気絶縁されることにより、回転子11の磁極が構成される。即ち、磁気絶縁のために回転子鉄心12を周方向に分離したり永久磁石を設けたりする必要がない。しかも、電磁鉄板12a(即ち回転子鉄心12)は第1鉄心部a、第2鉄心部b及び第3鉄心部cにおいて連結された一体のものあり、これらの第1鉄心部a、第2鉄心部b及び第3鉄心部cは何れも回転遠心力を支持可能な大きさを有しているため、補強用の非磁性材を設ける必要もない。
【0042】
このため、簡素な構造となってコストダウンを図ることができ、更には高速化や小型化(積み代当たりのトルクの増加)を図ることができる。
【0043】
また、第1鉄心部aにおけるの回転子鉄心径方向の幅a1を、他の回転子スロットと回転子鉄心12の外周面との間の鉄心部a’における回転子鉄心径方向の幅a2よりも広くすることによって、回転遠心力により第2鉄心部bに作用する引張応力が平均化されるようにしたことにより、第2鉄心部bにおいて有効に機械的保持力が発揮される。
【0044】
つまり、磁気飽和させるためには第2鉄心部bの回転子鉄心周方向の幅b2(図2参照)はできるだけ小さい方がよいが、第2鉄心部bには回転遠心力を支持する強度も必要である。従って上記の如く第1鉄心部aの幅a1を広くして回転遠心力により第2鉄心部bに作用する引張応力が平均化されるようにすれば、第2鉄心部bにおいて有効に機械的保持力が発揮されるため、第2鉄心部bをより小さくして、より磁気飽和し易くすることができる。
【0045】
また、第2鉄心部bが第1凸部12d−1の基端から第2凸部12b−1の基端までの間b5の中心に位置することにより、第2鉄心部bが最適な位置となり、第2鉄心部bにおける部分的応力集中を最も緩和させることができる。
【0046】
また、第2鉄心部bの回転子鉄心周方向の幅b4を、上記(1)式の関係を満たす寸法とすることにより、永久磁石14にかかる減磁力が過大にならず且つ発生トルクの減少を招かない最適な値となる。
【0047】
また、第3鉄心部bを回転子鉄心周方向の幅が回転子鉄心の外周側から内周側に向かって漸減する略三角形の形状としたことにより、変形しにくく外乱による変動トルク等にも耐え得る機械的強度を有し、しかも幅の狭い部分(c1)では磁気飽和し易い構造となる。特に、第3鉄心部cの外周側部における回転子鉄心周方向の幅c2を、第3鉄心部cの内周側部における回転子鉄心周方向の幅c1の2倍以上にすることにより、その効果が顕著となる。
【0048】
【発明の効果】
以上、発明の実施の形態と共に具体的に説明したように、第1発明の永久磁石形同期回転電機の回転子構造によれば、第1鉄心部、第2鉄心部及び第3鉄心部が容易に磁気飽和して極間が磁気絶縁されることにより、回転子の磁極が構成される。即ち、磁気絶縁のために回転子鉄心を周方向に分離したり永久磁石を設けたりする必要がない。しかも、回転子鉄心は第1鉄心部、第2鉄心部及び第3鉄心部において連結された一体のものであり、これらの第1鉄心部、第2鉄心部及び第3鉄心部は何れも回転遠心力を支持可能な大きさを有しているため、補強用の非磁性材を設ける必要もない。このため、簡素な構造となってコストダウンを図ることができ、更には高速化や小型化(積み代当たりのトルクの増加)を図ることができる。
【0049】
また、第2発明の永久磁石形同期回転電機の回転子構造によれば、第1鉄心部における回転子鉄心径方向の幅を、他の回転子スロットと回転子鉄心の外周面との間の鉄心部における回転子鉄心径方向の幅よりも広くすることによって、回転遠心力により第2鉄心部に作用する引張応力が平均化されるようにしたことにより、第2鉄心部bにおいて有効に機械的保持力が発揮され、第2鉄心部bをより小さくして、より磁気飽和し易くすることができる。
【0050】
また、第3発明の永久磁石形同期回転電機の回転子構造によれば、第2鉄心部が第1凸部の基端から第2凸部の基端までの間の中心に位置することにより、第2鉄心部が最適な位置となり、第2鉄心部における部分的応力集中を最も緩和させることができる。
【0051】
また、上記第4発明の永久磁石形同期回転電機の回転子構造によれば、第2鉄心部の回転子鉄心周方向の幅b4を、次式の関係を満たす寸法とすることにより、永久磁石にかかる減磁力が過大にならず且つ発生トルクの減少を招かない最適な値となる。
【0052】
b4/(2×永久磁石の厚さ)=永久磁石の保磁力/鉄板飽和磁界
【0053】
また、第5又は第6発明の永久磁石形同期回転電機の回転子構造によれば、第3鉄心部を回転子鉄心周方向の幅が回転子鉄心の外周側から内周側に向かって漸減する略三角形の形状としたことにより、変形しにくく外乱による変動トルク等にも耐え得る機械的強度を有し、しかも幅の狭い部分では磁気飽和し易い構造となる。特に、第3鉄心部の外周側部における回転子鉄心周方向の幅を、第3鉄心部の内周側部における回転子鉄心周方向の幅の2倍以上にすることにより、その効果が顕著となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る永久磁石形同期回転電機の回転子構造を示す横断面図である。
【図2】図1の一部拡大図である。
【図3】図1に示す回転子の鉄心部に作用する引張応力の説明図である。
【図4】(a)は従来の永久磁石形同期回転電機の回転子構造を示す横断面図、(b)は前記回転子構造の下半分を省略して示す縦断面図である。
【符号の説明】
11 回転子
12 回転子鉄心
12a 電磁鉄板
12b,12c 回転子スロット
12d 磁石用スロット
12b−1 第2凸部
12d−2 第1凸部
13 アルミ導体(2次導体)
14 永久磁石
16 シャフト
a 第1鉄心部
b 第2鉄心部
c 第3鉄心部

Claims (6)

  1. 回転子鉄心と、回転子鉄心に形成した回転子スロット内に設けた2次導体と、回転子鉄心に形成した磁石用スロット内に設けて回転子の磁極を構成する永久磁石と、回転子鉄心の内周部に嵌合固定した回転軸とを備えてなる永久磁石形同期回転電機の回転子構造であって、
    前記回転子スロットは回転子鉄心周方向に沿って略等間隔に形成し、回転子の各極間に位置する回転子スロットと回転子鉄心の外周面との間には容易に磁気飽和し且つ回転遠心力を支持可能な大きさの第1鉄心部を有しており、
    前記磁石用スロットは回転子スロットよりも回転子鉄心径方向の内側に回転子鉄心周方向に沿って略等間隔に形成し、回転子の各極間では隣接する磁石用スロット同士を連結してこの連結部の外周側に第1凸部を形成し、この第1凸部と回転子の各極間に位置する回転子スロットの内周側に形成した第2凸部との間には容易に磁気飽和し且つ回転遠心力を支持可能な大きさの第2鉄心部を有しており、
    回転子の各磁極における磁石用スロット同士の間には容易に磁気飽和し、且つ回転遠心力を支持可能であると共に回転軸へのトルク伝達に耐えられる大きさの第3鉄心部を有していることを特徴とする永久磁石形同期回転電機の回転子構造。
  2. 請求項1に記載する永久磁石形同期回転電機の回転子構造において、
    第1鉄心部における回転子鉄心径方向の幅を、他の回転子スロットと回転子鉄心の外周面との間の鉄心部における回転子鉄心径方向の幅よりも広くして、回転遠心力により第2鉄心部に作用する引張応力が平均化されるように構成したことを特徴とする永久磁石形同期回転電機の回転子構造。
  3. 請求項1又は2に記載する永久磁石形同期回転電機の回転子構造において、
    第2鉄心部は第1凸部の基端から第2凸部の基端までの間の中心に位置することを特徴とする永久磁石形同期回転電機の回転子構造。
  4. 請求項1、2又は3に記載する永久磁石形同期回転電機の回転子構造において、
    第2鉄心部の回転子鉄心周方向の幅b4は、次式、
    b4/(2×永久磁石の厚さ)=永久磁石の保磁力/鉄板飽和磁界
    の関係を満たす寸法であることを特徴とする永久磁石形同期回転電機の回転子構造。
  5. 請求項1、2、3又は4に記載する永久磁石形同期回転電機の回転子構造において、
    第3鉄心部を回転子鉄心周方向の幅が回転子鉄心の外周側から内周側に向かって漸減する略三角形の形状としたことを特徴とする永久磁石形同期回転電機の回転子構造。
  6. 請求項5に記載する永久磁石形同期回転電機の回転子構造において、
    第3鉄心部の外周側部における回転子鉄心周方向の幅を、第3鉄心部の内周側部における回転子鉄心周方向の幅の2倍以上にしたことを特徴とする永久磁石形同期回転電機の回転子構造。
JP13645397A 1997-05-27 1997-05-27 永久磁石形同期回転電機の回転子構造 Expired - Fee Related JP3648921B2 (ja)

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