JP3647842B2 - 金属成形瓦の固定構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、瓦状の浮き出し模様を縦横に連続して膨出形成してある金属成形瓦の固定構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明に関して、金属成形瓦(以下、単に金属瓦と言う)で屋根を葺き上げることは公知である(特許文献1参照)。この種の金属瓦は、図11に示すように、既に葺かれた金属瓦40の側縁に、新たな金属瓦41の一側を被せ付けたうえで、内外に重なる連結部42・43どうしをビス44で締結固定している。本発明の金属瓦の固定構造においては、金属瓦とともにビスで締結固定される金具を利用して、内外に重なる金属瓦の側縁を固定するが、類似する瓦係止金具は特許文献2に公知である。但し、この瓦係止金具の固定対象は陶製瓦であって、暴風雨時などに瓦が風に煽られて位置ずれしたり、あるいは風で飛ばされて屋根下地から外れたりするのを阻止する目的で使用されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−210171号公報(段落番号0009、図1)
【特許文献2】
特許第2558603号公報(段落番号0019、図3)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
図11に示す従来の固定構造では、ビス頭45が金属瓦41の外表面に露出するので、葺き上がった屋根の美観を損ねやすい。内外に重なる金属瓦40・41をビス44で同時に締結するので、外側の金属瓦41にあけたビス穴から雨水が屋根裏へ浸入しやすい。多くの場合、ビス44の締結面には防水パッキン46が組み付けられており、先のビス穴を防水パッキン46で封止できる。しかし、防水パッキン46は経時的に劣化するのを避けられず、施工後に長い期間を経ると漏水することがある。金属瓦40・41の左右両側の連結部42・43を内外に重ねてビス44で締結するので、ビス44が過剰にねじ込まれるような場合に、連結部42・43が拡開変形し、その変形応力を受けて左右中央の山壁が浮き上がって外観上の体裁を損ねがちである。
【0005】
施工上にも問題がある。施工時には、屋根下地に締結した金属瓦40の連結部42に、新たな金属瓦41の連結部43を被せ付けたのち後者を位置決めしてビス44で締結するが、ビス44で締結する前の新たな金属瓦41は、屋根下地の上に単に載置してあるに過ぎない。そのため、新たな金属瓦41が自重で落下するおそれがあり、例えば屋根の傾斜が一定角度を越えるような場合に、落下を防止するための人手が不可欠になることもある。
【0006】
本発明の目的は、隣接する金属瓦の連結部において、ビス頭が金属瓦の表面に露出するのを解消し、隣接する金属瓦の締結部からの漏水を長期にわたって確実に防止できて信頼性に優れた金属瓦の固定構造を提供することにある。
【0007】
本発明の目的は、金属瓦とともにビスで締結される連結金具を利用して、仮組みした金属瓦のすべり落ちを阻止でき、従ってより少ない手間で能率よく金属瓦を葺き上げることができる金属瓦の固定構造を提供することにある。
【0008】
本発明の目的は、ビスの過剰ねじ込みに伴う連結部の拡開変形を防いで山壁の浮き上がりを解消し、屋根の外観上の体裁を向上できる金属瓦の固定構造を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の金属瓦の固定構造は、板面全体に瓦模様が膨出形成され、対向辺部に内連結部8と外連結部7とが形成してある金属成形瓦1と、内連結部8の外面に配置される連結金具2と、内連結部8と連結金具2とを同時に屋根下地3に締結固定するビス4とを含む。連結金具2は、内連結部8の外面形状に沿う主壁20と、主壁20の外面側に折り返し形成される係止片21とを備えている。以て、連結金具2の外面に被さる外連結部7の端縁7aを係止片21で受け止め係合することにより、内外に隣接する内連結部8と外連結部7とが、連結金具2を介して分離不能に連結されていることを特徴とする。
【0010】
具体的には、瓦模様は軒棟方向へ階段状に形成されて、各瓦模様の間に段壁10が形成されており、外連結部7の端縁7aを連結金具2の係止片21で受け止め係合した状態において、外連結部7側の段壁10が係止片21で受け止め支持されている。
【0011】
塗装鋼板で形成した金属成形瓦1は、屋根の一側から他側へ向かって順次連結されており、連結金具2は、ステンレス鋼板を素材にしてプレス成形されており、主壁20の一側外面に、外連結部7の側縁7aを受け止め係合する係止片21を折り返し形成されており、外連結部7の段壁10が、係止片21の上縁21aで受け止め支持されている。
【0012】
内連結部8の側端側には、外連結部7から離れる向きに傾く傾斜壁17が形成されており、傾斜壁17の側端に樋溝18が折り曲げ形成されている。
【0013】
連結金具2の主壁20には、図8(b)に示すごとく主壁20の拡開変形を阻止する補強体27を形成することができる。
【0014】
【発明の作用効果】
本発明では、対向辺部に内連結部8と外連結部7とが形成してある金属瓦1で屋根を葺く際に、金属瓦1の内連結部8と、その外面に配置した連結金具2とをビス4で屋根下地3に締結したうえで、これら締結部の外面に新たな金属瓦1の外連結部7を被せ付け、外連結部7の端縁7aを連結金具2に設けた係止片21で受け止め係合することにより、内外に隣接する内連結部8と外連結部7とを分離不能に連結できるようにした。従って、本発明の固定構造によれば、ビス4の頭部を外連結部7で覆い隠して屋根の外観上の体裁を向上できる。内連結部8に形成されるビス穴を外連結部7で覆い隠して雨水の浸入を阻止し、防水機能を強化できる。外連結部7で太陽光を遮蔽してビス頭4aやその周辺が紫外線に晒されるのを阻止できるので、ビス4に装着した防水用のパッキン25が劣化することもなく、止水機能の信頼性を向上する。
【0015】
外連結部7の端縁7aを連結金具2の係止片21で受け止め係合した仮組み状態において、外連結部7側の段壁10を係止片21で受け止め支持できるようにした固定構造によれば、仮組みした金属瓦1が軒側へすべり落ちるのを確実に阻止でき、しかも仮組みした金属瓦1がずれ動くことも規制できるので、以後に行われる内連結部8と連結金具2との締結作業がより少ない手間で手際よく行え、その分だけ金属瓦1による屋根の構築に要する施工の手間と時間を減少できる。
【0016】
金属成形瓦1より厚肉のステンレス鋼板を素材にしてプレス成形した連結金具2によれば、内連結部8がビス4の締結力を受けて拡開変形しようとするのを連結金具2で受け止めて規制する。さらにビス4が過剰にねじ込まれることも抑止できるので、内連結部8が変形することに伴って山壁9が屋根下地3から浮き上り変形するのを阻止し、屋根の外観上の体裁を向上できる。連結金具2の係止片21は、外連結部7の外面に露出して雨水に晒されるが、連結金具2をステンレス鋼板で形成するので、係止片2が錆付いたり腐蝕したりするのを確実に防止できる。主壁20の一側外面に折り返し形成した係止片21で、外連結部7の側縁7aを受け止め係合するのと同時に、外連結部7の段壁10を係止片21の上縁21aで受け止め支持するようにした連結金具2によれば、仮組みした状態の金属瓦1が縦横2方向へずれ動くのを規制して、仮組み姿勢を確実に維持し、同時に位置決めできるので、以後のビス4による締結作業がさらに簡便に行える。
【0017】
内連結部8の側端側に、外連結部7から離れる向きに傾く傾斜壁17を形成したうえで、傾斜壁17の側端に樋溝18を折り曲げ形成した金属瓦1によれば、連結部分から雨水が浸入することがあっても、傾斜壁17と外連結部7との間の空間によって止水できるうえ、傾斜壁17に沿って染み込んだ雨水を樋溝18に沿って軒先へ流して排出できるので、屋根裏への漏水を確実に防止できる。
【0018】
主壁20に拡開変形を阻止する補強体27を形成した連結金具2によれば、主壁20の構造強度を大にして、内連結部8が拡開変形しようとするのをさらに確実に規制して、山壁9が屋根下地3から浮き上り変形するのを解消し、屋根の外観上の体裁を向上できる。
【0019】
【実施例】
図1ないし図7は、本発明に係る金属瓦の固定構造の実施例を示しており、塗装鋼板で形成される金属瓦1と、連結金具2と、これら両者1・2を屋根下地3に締結固定するセルフドリリング型のビス4とを要素部材にしている。図2において金属瓦1は、板面全体に瓦模様を膨出形成してあり、その裏面側に防音作用および断熱作用を同時に発揮する発泡プラスチック製の裏打材5が貼り付けてある。
【0020】
金属瓦1の左右の対向辺部には、それぞれ突弧状の外連結部7と内連結部8とが形成されており、これらの連結部7・8と左右中央の山壁9とを滑らかに連続させて、瓦模様が横断面で波形に形成されている(図3参照)。瓦模様は軒棟方向へ階段状に形成してあり、各瓦模様の間に波形の段壁10が形成してある。金属瓦1の上下の辺部には、上連結部11と下連結部12とを形成してある。
【0021】
図5において外連結部7は、滑らかな突弧状に形成し、その頂部にビス頭との接触を避ける凹み14が形成されている。内連結部8と接合する外連結部7の内面部分は裏打材5を省略してある。
【0022】
内連結部8は、図5に示すごとく外連結部7の側端内面に密着する湾曲壁15と、平坦な頂部壁16と、斜めに傾く傾斜壁17と、傾斜壁17の下端に連続して形成した樋溝18とで形成する。傾斜壁17を設けることによって、外連結部7と傾斜壁17との間に空間を確保して止水でき、さらに傾斜壁17に沿って染み込んだ雨水は樋溝18に沿って軒先へ流して排出できる。
【0023】
図2および図3において金属瓦1は、各図に向かって左側から右側へ、さらに軒から棟側へ順に連結して屋根下地3に締結固定するが、内外に重なる内連結部8と外連結部7とを強固に連結するために連結金具2を使用する。
【0024】
図4において連結金具2は、先の内連結部8の外面形状に沿う主壁20と、主壁20の左側縁に折り返し形成される係止片21とを一体に形成したプレス金具であり、主壁20の平坦な頂部壁22にビス4用の挿通穴23を通設してある。
【0025】
係止片21と主壁20との間に溝24が形成されており、この溝24に外連結部7の側縁(端縁)7aが差し込み係合される。そのために、図4(c)に示すように溝24の開口側の溝幅を他より大きく設定して、外連結部7の側縁7aの差し込み係合を容易化している。
【0026】
金属瓦1の板厚は0.5mmである。連結金具2は厚みが0.8mmのステンレス鋼板を素材にして形成してあり、充分な強度を備えている。図4(b)に示すように、主壁20の上縁20aは段壁10の湾曲形状に沿わせて湾曲している。しかし、係止片21の上縁21aは直線状に切り落として、溝24に対する外連結部7の組み付け操作の簡便化を図っている。なお、連結金具2は金属瓦1と同色ないし異色の塗装鋼板で形成することができる。
【0027】
金属瓦1の組み付け手順を説明すると、まず屋根側端に固定したスターターに金属瓦1の外連結部7を固定する。次に、図5に示すごとく内連結部8の外面に連結金具2の主壁20をあてがい、その上縁20aが段壁10に接する図4(b)の状態で、挿通穴23に挿通したビス4を屋根下地3にねじ込み、連結金具2と内連結部8とを固定する。
【0028】
この締結作業を行うとき、ステンレス鋼板で形成した連結金具2は、内連結部8が締結力を受けて拡開変形するのを規制し、ビス4が過剰にねじ込まれるのを抑止できる。そのため、中央の山壁9が屋根下地3から異常に浮き離れるのを防いで、屋根の外観を向上できる。なお、連結金具2および内連結部8は、図2に示すように瓦模様の各段壁10毎に締結する。
【0029】
続いて、新たな金属瓦1の段壁10を締結済みの金属瓦1の段壁10に当接させて、外連結部7を締結済みの連結金具2および内連結部8の外面に横からずらせて重ね、外連結部7の側縁7aを溝24内に差し込み係合し、以て図7に示すように係止片21の上縁21aに段壁10を当てる。図1に示すように係止片21で側縁7aの外面を受け止め係合する。
【0030】
このように、段壁10を係止片21の上縁21aで受け止め係合した状態では、金属瓦1が軒側へ滑り落ちるのを確実に防止して、金属瓦1の仮組み状態を安定した状態で維持できるので、仮組みした金属瓦1を支持しておくための要員を省くことができ、金属瓦1が動かないので以下の締結作業も迅速に行える。
【0031】
先に説明した締結手順と同様に、内連結部8の外面に連結金具2の主壁20をあてがい、その上縁20aが段壁10に接する状態で、挿通穴23に挿通したビス4を屋根下地3にねじ込んで、連結金具2と内連結部8とを固定する。以下は上記の手順を繰り返すことにより、屋根を葺き上げる。図6において符号25は防水用のパッキンである。
【0032】
連結金具2は、図8および図9に示す形態で実施してもよい。図8(a)においては、主壁20の上縁20aおよび下縁に沿って補強用の立壁26を折り起こし形成して、主壁20の構造強度を増強した。このように補強用の立壁26が設けられていると、ビス4の締結力を受けて内連結部8が拡開変形しようとするのを主壁20で強固に受け止めることができ、ビス4の過剰なねじ込みもさらに確実に防止できる。
【0033】
図8(b)においても、同様の主旨で、主壁20の上縁20aに沿って補強用のリブ27を膨出形成したものとなっている。
【0034】
図9(a)に示す連結金具2は、主壁20の上縁20aに補強用の縦壁28を設け、さらに縦壁28の側端を折り返して係止片21とした。この場合には、係止片21と縦壁28との間に形成される溝24に、金属瓦1の段壁10の端縁が差し込み係合され、この端縁は先の実施例で言う外連結部7の端縁7aに相当する。
【0035】
図9(b)に示す連結金具2においては、図9(a)の連結金具2の構造に加えて、図4で説明した係止片21を主壁20の側端に設けたものとなっている。
【0036】
図10(a)・(b)は、それぞれ金属瓦1の変形例を示す。図10(a)では、内連結部8に連結金具2の主壁20を収容する逃げ部30を凹み形成して、ビス頭4aが内連結部8の表面から突出するのを防止した。これに伴い外連結部7の凹み14は省略した。他は先の実施例と同じであるので、図10(b)も含めて、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
【0037】
図10(b)においては、外連結部7にビス頭4aを収容する逃げ部30を膨出形成し、ビス頭4aを膨出部31内に収容できるようにした。
【0038】
上記の実施例以外に、連結金具2における係止片21は、金属瓦1の葺き上げ方向との関係でその位置と折り返し方向を設定すべきであるから、実施例で説明した構造には限定されない。例えば、主壁20の右側縁や下縁側に係止片21を折り返し形成することができる。連結金具2は、内連結部8の段壁10から離れた位置で締結固定してもよく、その場合にも外連結部7の段壁10を受け止めて仮組み状態を維持できる。ビス4としては、セルフドリリング型以外のビスを使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 金属瓦の接合構造を示す要部の縦断正面図である。
【図2】 屋根の葺き上げ要領を示す平面図である。
【図3】 金属瓦の連結手順を示す縦断正面図である。
【図4】 連結金具を示す斜視図、平面図、正面図である。
【図5】 内外の連結部の連結要領を示す分解断面図である。
【図6】 図2におけるA−A線断面図である。
【図7】 図1におけるB−B線断面図である。
【図8】 連結金具に関する別実施例を示す平面図と端面図である。
【図9】 連結金具の更に異なる別実施例を示す平面図と正面図である。
【図10】 金属瓦の別実施例を示す縦断側面図である。
【図11】 従来の金属瓦の固定構造を示す縦断正面図である。
【符合の説明】
1 金属成型瓦
2 連結金具
7 外連結部
7a 外連結部の端縁
8 内連結部
10 段壁
17 傾斜壁
18 樋溝
20 連結金具の主壁
21 連結金具の係止片
Claims (2)
- 板面全体に瓦模様が膨出形成され、左右の対向辺部に内連結部8と外連結部7とがそれぞれ突弧状に形成された金属成形瓦1と、
内連結部8の外面に配置される連結金具2と、
内連結部8と連結金具2とを同時に屋根下地3に締結固定するビス4とを含み、
金属成形瓦1には、前記瓦模様が軒棟方向へ階段状に形成されて、上下の各瓦模様の間に段壁10が形成されており、
金属成形瓦1の裏面側には、内連結部8と接合する外連結部7の内面部分を除いて防音作用および断熱作用を発揮する裏打材5が貼り付けられており、
金属成形瓦1の内連結部8は、外連結部7の側端内面に密着する湾曲壁15と、平坦な頂部壁16と、外連結部7から離れる向きに傾く傾斜壁17と、傾斜壁17の下端に折り曲げ形成された樋溝18とを有し、
内連結部8の傾斜壁17と外連結部7との間に止水用の空間が確保され、傾斜壁17に沿って染み込んだ雨水は樋溝18に沿って軒先へ流して排出することができ、
連結金具2は、ステンレス鋼板を素材にしてプレス成形することにより、内連結部8の外面形状に沿う主壁20と、主壁20の左右の一側縁に主壁20の外面側へ折り返し形成された係止片21とを備えており、
主壁20の平坦な頂部壁22にビス4用の挿通穴23を通設してあり、
係止片21と主壁20との間に、外連結部7の側縁7aが差し込み係合される溝24を形成してあり、
主壁20の上縁20aは、前記段壁10の湾曲形状に沿わせて湾曲しており、
係止片21の上縁21aは直線状に切り落としてあり、
内連結部8の外面に連結金具2の主壁20をあてがい、主壁20の上縁20aが前記段壁10に接する状態で前記挿通穴23に挿通したビス4を屋根下地3にねじ込むことにより、連結金具2と内連結部8とを固定してあり、
連結金具2の外面に被さる新たな金属成形瓦1の外連結部7の端縁7aを前記溝24内に差し込み係合した状態において、係止片21の上縁21aで新たな金属成形瓦1の段壁10を受け止め係合していることを特徴とする金属成形瓦の固定構造。 - 連結金具2の主壁20に、主壁20の拡開変形を阻止する補強体27が形成されている請求項1記載の金属成形瓦の固定構造。
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