JP3646586B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも吸気行程中に燃料噴射を行なう吸気行程噴射モードを有する筒内噴射式内燃機関に用いて好適の、内燃機関の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、燃焼室を臨んで配設された噴射装置から燃焼室内に直接燃料を噴射することにより、吸気行程初期から圧縮行程後期までの広い範囲での燃料供給を可能にし、機関運転状態に応じて均一燃焼(吸気行程噴射)と層状燃焼(圧縮行程噴射)とを切り換えることによって高出力と低燃費とを両立させた火花点火式の筒内噴射式内燃機関が実用化されている。
【0003】
このような筒内噴射式内燃機関では、噴射装置の制御量(燃料噴射量及び噴射時期)は、例えば特開平8−144806号公報に開示されたように、吸気行程中に燃料噴射を行なう吸気行程噴射モードでは、排気行程末期付近での機関運転状態(機関負荷,機関回転速度等)に基づき設定されるのが一般的である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、噴射装置の制御量が決定された後に車両が減速状態に移行した場合、例えばドライバがアクセルペダルを離したような場合には、上記の制御方法では、減速状態への移行により吸入空気量が減量するにも関わらず、減速移行前の機関運転状態に基づき設定された制御量に基づいて噴射装置を制御することになってしまう。このため、減速状態への移行により吸気行程での吸入空気量が減少した分だけ空燃比が目標値よりもオーバーリッチになってしまい、排気ガス特性が悪化したり、実際にドライバが要求する出力減少が得られずに減速応答性が悪化したりしてしまうことになる。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、吸気行程中に吸入空気量が減少した場合における空燃比のオーバーリッチ化を防止できるようにした、内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明の内燃機関の制御装置では、機関運転状態検出手段により検出された内燃機関の排気行程中の運転状態に基づいて燃料噴射量算出手段により燃料噴射量を算出し、算出した量の燃料を吸気行程中に燃焼室内に直接噴射するよう第一燃料噴射制御手段により噴射装置を制御するが、減速操作検出手段により車両の減速操作が検出されたときには、燃料噴射量算出手段により算出された燃料噴射量から所定量を減らした量の燃料を吸気行程中に噴射するように第一燃料噴射制御手段により噴射装置を制御し、また、空気量検出手段により検出された吸気行程中の吸入空気量に基づいて不足量算出手段により不足分の燃料量を算出し、算出した量の不足燃料を第一燃料噴射制御手段による噴射が終了した後に燃焼室内に追加噴射するよう第二燃料噴射制御手段により噴射装置を制御する。
【0007】
なお、好ましくは、減速操作検出手段により車両の減速操作が検出されたときに第一燃料噴射制御手段が燃料噴射量算出手段により算出された燃料噴射量から減量する所定量は、減速操作の度合いに応じて設定するようにする。
また、請求項2記載の本発明の内燃機関の制御装置では、機関運転状態検出手段により検出された内燃機関の排気行程中の運転状態に基づいて燃料噴射量算出手段により燃料噴射量を算出し、算出した量の燃料を吸気行程中に燃焼室内に直接噴射するよう第一燃料噴射制御手段により噴射装置を制御するとともに、排気行程中の機関運転状態検出手段の出力に基づいて点火時期設定手段により点火時期を設定し、設定した点火時期で点火するよう点火制御手段により点火装置を制御するが、減速操作検出手段により車両の減速操作が検出されたときには、燃料噴射量算出手段により算出された燃料噴射量から所定量を減らした量の燃料を吸気行程中に噴射するように第一燃料噴射制御手段により噴射装置を制御し、また、空気量検出手段により検出された吸気行程中の吸入空気量に基づいて不足量算出手段により不足分の燃料量を算出し、算出した量の不足燃料を第一燃料噴射制御手段による噴射が終了した後に燃焼室内に追加噴射するよう第二燃料噴射制御手段により噴射装置を制御するとともに、点火時期補正手段により、吸入空気量と、燃料噴射量算出手段により算出された燃料噴射量から所定量を減らした燃料量と不足量算出手段により算出された燃料量との総和との少なくとも一方に基づいて点火時期を補正する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、図1〜図3は本発明の一実施形態としての内燃機関の制御装置を示すものである。
まず、本制御装置が適用される内燃機関の概要について説明すると、本内燃機関は、吸気,圧縮,膨張,排気の各行程を一作動サイクル中にそなえる内燃機関、即ち4サイクル機関であって、火花点火式で、且つ、燃焼室内に燃料を直接噴射可能な筒内噴射式内燃機関である。燃料噴射の態様としては、予混合燃焼によるストイキ運転(理論空燃比運転)を実現し、出力を向上させるために吸気行程中に燃料噴射を行なうストイキモードと、さらなる出力の向上のために理論空燃比よりも過濃な空燃比で運転を行なうエンリッチモードと、予混合燃焼によるリーン運転を実現し、緩加速による出力を得るために吸気行程中(特に吸気行程前半)に燃料噴射を行なう前期リーン噴射モードと、層状燃焼によるリーン運転を実現し、さらに燃費を向上させるために圧縮行程中(特に、圧縮行程後半)で燃料噴射を行なう後期リーン噴射モードとが設けられており、運転状態に応じて選択されるようになっている。
【0009】
本筒内噴射式内燃機関の概略構成について説明すると、図1に示すように、本筒内噴射式内燃機関(以下、エンジンという)1のシリンダヘッド2には、吸気通路4および排気通路5が燃焼室3に連通しうるように接続されている。吸気通路4と燃焼室3とは吸気弁6によって連通制御されるとともに、排気通路5と燃焼室3とは排気弁7によって連通制御されるようになっている。また、シリンダヘッド2には、燃焼室3の頂部中央に点火プラグ8がそなえられており、吸気通路3側には、インジェクタ(噴射装置)9が、その開口を燃焼室3に臨ませるように配置されている。このインジェクタ9には、図示しない高圧ポンプにより加圧された燃料が供給されるようになっている。
【0010】
吸気通路4には、各気筒の燃焼室3内に吸入空気を導入するための吸気マニホールド11が、燃焼室3に対して比較的直立して設けられた吸気ポート10に接続されている。吸気マニホールド11の上流には、エアクリーナ13およびスロットルバルブ12が設けられており、スロットルバルブ12にはその開度を検出するためのスロットルポジションセンサ(TPS)14が付設されている。また、図示しない車室内にはこのスロットルバルブ12と機械的に或いは電気的に接続されたアクセルペダル21がそなえられており、アクセルペダル21にはその踏み込量(アクセル開度)を検出するための減速操作検出手段としてのアクセルポジションセンサ(APS)22が付設されている。さらに、エアクリーナ13とスロットルバルブ12との間には、吸入空気流量Aを検出するための空気量検出手段としてのエアフローセンサ(AFS)15がそなえられている。
【0011】
一方、排気通路5には、各気筒の燃焼室3から排出された排ガスを一つに集合させる排気マニホールド17が排気ポート16に連接してそなえられている。排気マニホールド17の下流側には排気浄化装置18および図示しないマフラが設けられている。排気浄化装置18には、NOx 触媒及び三元触媒がそなえられており、排出ガス中の有害成分(CO,HC,NOx)を浄化するようになっている。
【0012】
また、クランクシャフト19には、クランク角度センサ20がそなえられている。このクランク角度センサ20はクランクシャフト19の回転の180°を1周期としてパルス信号を出力するようになっており、このパルス信号は、図3に示すように5°BTDC(365°BTDC)と185°BTDC(545°BTDC)とでオンからオフへ変化するようになっている。
【0013】
本制御装置30は、上述のような構成のエンジン1に適用され、機能手段として、運転モード選択手段31と燃料噴射制御手段32と点火時期制御手段33とを有している。なお、本制御装置30はCPU,RAM,ROM,I/O等の要素からなる電子制御ユニット(ECU)として構成されており、上記機能手段31〜33はこれらの要素の協働によって実現されるようになっている。
【0014】
運転モード選択手段31は、エンジン1の運転状態に応じて上述した各運転モードの中から一つを選択する手段である。エンジン1の運転状態はエンジン回転速度Neやエンジン負荷(平均有効圧力)Peから把握することができ、エンジン回転速度Neにはクランク角センサ20の検出情報から算出したものを用い、エンジン負荷Peにはエンジン回転速度Ne及びAFS15で検出された吸入空気流量A等の各情報から算出したものを用いるようになっている。すなわち、ここではクランク角センサ20及びAFS15が機関運転状態検出手段として機能している。
【0015】
燃料噴射制御手段32は、インジェクタ9からの燃料の噴射時期と噴射量とを制御する手段であり、噴射量算出手段34と第一燃料噴射制御手段35と不足量算出手段36と第二燃料噴射制御手段37とから構成される。
各構成手段について説明すると、噴射量算出手段34は、燃焼室3内に噴射すべき燃料量を算出する手段であり、まず、運転モード選択手段31で設定された運転モードに応じた燃料噴射制御マップを選択し、選択した燃料噴射制御マップを用いて、エンジン回転速度Ne及びエンジン負荷Peに応じた目標空燃比を設定するようになっている。そして、前行程の末期にAFS15で検出した吸入空気流量Aとエンジン回転速度NeとからA/Ne(∝吸入空気量)を演算し、演算したA/Neと目標空燃比とから燃料噴射量(噴射パルス幅)Pwを算出するようになっている。例えば、運転モードが、吸気行程中に燃料噴射を行なうストイキモード,エンリッチモード及び前期リーン噴射モードの場合には、燃料噴射量Pwは排気行程末期に検出した吸入空気流量A1とエンジン回転速度Ne1とに基づき算出するようになっている。
【0016】
そして、第一燃料噴射制御手段35は、噴射量算出手段34で算出された燃料噴射量Pwと運転モードに応じて決まる噴射時期とにしたがいインジェクタ9を制御する手段である。運転モードに応じて選択された燃料噴射制御マップから、エンジン回転速度Ne及びエンジン負荷Peに応じて燃料噴射終了時期を設定し、設定した燃料噴射終了時期と燃料噴射量Pwとから燃料噴射開始時期を算出して、インジェクタ9に噴射パルスを出力するようになっている。
【0017】
ところで、減速等のためにドライバがアクセルペダル21を戻すと、スロットルバルブ12が閉じられて次第に吸入空気量が減少していくことになる。この吸入空気量の減少が吸気行程で生じると、実際に燃焼室3内に吸入される空気量は排気行程末期でのA1/Ne1から推定されるものよりも減少することになる。したがって、ストイキモード,エンリッチモード及び前期リーン噴射モードのように排気行程末期でのA1/Ne1に基づき算出した燃料噴射量Pwでは、目標空燃比よりもオーバーリッチになってしまう。
【0018】
そこで、第一燃料噴射制御手段35では、運転モードがストイキモード,エンリッチモード及び前期リーン噴射モードの場合には、燃料噴射量及び噴射時期の決定からインジェクタ9の燃料噴射〔主噴射(1st噴射)〕開始までの間に、APS22で検出されるアクセル開度の変化(減少量)が所定値以上になったときには、燃料噴射量及び噴射時期を以下のようにして補正するようになっている。
【0019】
まず、燃料噴射量については、予め記憶しておいたマップを参照してアクセル開度の偏差に応じた吸入空気量の減少量を推定し、推定した吸入空気量の減少量に応じて噴射量算出手段34で算出された燃料噴射量Pwを減量するようになっている。ただし、このときの燃料噴射量Pwの減量度dPwはオーバーリッチ化の防止を優先するために多めに設定するようになっており、燃料噴射量が多めに減量されることに伴う目標空燃比に対するリーン化は、後述する不足量算出手段36及び第二燃料噴射制御手段37によって手当するようになっている。
【0020】
一方、燃料噴射時期については、推定された吸入空気量の減少量に基づきエンジン負荷Peを再計算し、再計算したエンジン負荷Pe及びエンジン回転速度Neに基づき燃料噴射終了時期を再設定し、この再設定した燃料噴射終了時期と減量補正した燃料噴射量(噴射パルス幅)Pw′(Pw′=Pw−dPw)とから燃料噴射開始時期を算出して、インジェクタ9に噴射パルスを出力してもよい。
【0021】
次に、不足量算出手段36及び第二燃料噴射制御手段37について説明すると、これらの手段は、上述のように第一燃料噴射制御手段35による燃料噴射量の減量補正に伴う空燃比のリーン化を防止するための手段であり、選択された運転モードがストイキモード,エンリッチモード及び前期リーン噴射モードであって、且つ車両の減速操作が検出されたときにのみ機能するようになっている。
【0022】
不足量算出手段36は、第一燃料噴射制御手段35による燃料噴射量の減量補正により生じた不足燃料量を算出する手段である。詳述すると、不足量算出手段36では、吸気行程の末期(185°BTDC)においてAFS15により吸入空気流量A2を検出し、検出した吸入空気流量A2とエンジン回転速度(吸気行程の平均エンジン回転速度)Ne2とから、吸気行程における実吸入空気量(∝A2/Ne2)を算出するようになっている。そして、算出したA2/Ne2と目標空燃比とから本来吸気行程において噴射されるべき燃料噴射量Pwoを算出し、実際に噴射された燃料噴射量Pw′との差を不足燃料量Pwd(Pwd=Pwo−Pw′)として算出するようになっている。ただし、このときの目標空燃比は、運転モードが前期リーン噴射モード以外の場合には理論空燃比(ストイキ)に設定するものとし、前期リーン噴射モードの場合にはエンジン回転速度Ne及びエンジン負荷Peに応じて前期リーン噴射モード用の燃料噴射制御マップを参照して設定するようになっている。
【0023】
そして、第二燃料噴射制御手段37は、不足量算出手段36で算出された量(噴射パルス幅)Pwdの不足燃料を燃焼室3内に追加噴射(2nd噴射)すべくインジェクタ9を制御する手段であり、不足燃料量と運転モードとに応じて圧縮行程中の所定時期にインジェクタ9を制御して不足燃料を噴射するようになっている。
【0024】
最後に、点火時期制御手段33は、第一燃料噴射制御手段35の燃料噴射制御に対応して点火プラグ8の点火時期を制御する手段であり、運転モードに応じた点火時期制御マップを選択し、この選択した点火時期制御マップを参照しながらエンジン回転速度Ne及びエンジン負荷Peに応じた点火時期を設定するようになっている。
【0025】
次に、上記構成の内燃機関の制御装置にかかる制御の手順について、運転モードがストイキモード,エンリッチモード及び前期リーン噴射モードの場合について図2に示すフローチャートを参照しながら説明する。
まず、制御手段30は、排気行程中においてクランク角度センサ20が365°BTDCを検出したとき(クランク角度センサ20の出力信号がオンからオフになったとき)、その時点におけるエンジン1の運転状態を検出する。すなわち、180°周期(すなわち、545°BTDCから365°BTDCまでのクランク角180°)に要した時間からエンジン回転速度Ne1を算出するとともに、AFS15により吸入空気流量A1を検出する(以上、ステップS100)。
【0026】
そして、噴射量算出手段34では、エンジン回転速度Ne1と吸入空気流量A1とからA1/Ne1を算出し、算出したA1/Ne1と目標空燃比(インジェクタゲイン)等から燃料噴射量Pwを算出する。また、第一燃料噴射制御手段35では、運転モードに応じて選択された燃料噴射制御マップからエンジン回転速度Ne及びエンジン負荷Peに応じて燃料噴射終了時期を設定し、設定した燃料噴射終了時期と燃料噴射量Pwとから燃料噴射開始時期を算出する(以上、ステップS110)。
【0027】
インジェクタ9の制御量(燃料噴射量及び噴射時期)の決定後、第一燃料噴射制御手段35では、燃料噴射開始時期までの間、APS22により検出するアクセル開度の変化が所定値以上になるか否か判定する(ステップS120)。そして、所定値以上のアクセル開度の変化が検出されなかったときには、ステップS110で設定した制御量に基づきインジェクタ9を制御し、燃焼室3内に直接燃料を噴射させる(ステップS130)。
【0028】
一方、ステップS120において所定値以上のアクセル開度の変化が検出されたときには、第一燃料噴射制御手段35は、マップを参照してアクセル開度の偏差に応じた吸入空気量の減少量を推定し、推定した吸入空気量の減少量に応じて噴射量算出手段34で算出された燃料噴射量Pwを減量する。また、推定された吸入空気量の減少量に基づき燃料噴射時期も再設定する(ステップS140)。そして、再設定した燃料噴射時期と減量補正した燃料噴射量Pw′とに基づきインジェクタ9を制御し、燃焼室3内に直接燃料を噴射させる〔主噴射(1st噴射),ステップS150〕。
【0029】
次に、制御手段30は、吸気行程中においてクランク角度センサ20が185°BTDCを検出したとき、365°BTDCから185°BTDCまでの180°周期からエンジン回転速度Ne2を算出するとともに、AFS15により吸入空気流量A2を検出する(ステップS160)。そして、不足量算出手段36では、エンジン回転速度Ne2と吸入空気流量A2とから算出したA2/Ne2(∝実吸入空気量)と減速時の目標空燃比とから目標燃料噴射量Pwoを算出し、さらに目標燃料噴射量Pwoと減量補正した燃料噴射量Pw′との差から不足燃料量Pwdを算出する(ステップS170)。そして、第二燃料噴射制御手段37では、不足燃料量Pwdが算出された後の圧縮行程中においてインジェクタ9を制御して燃焼室3内に直接不足燃料を噴射する〔追加噴射(2nd噴射),ステップS180〕。
【0030】
以上の制御をタイムチャートにより表したものが図3である。この図3を用いて本制御装置による作用効果についてより具体的に説明する。
運転モードがストイキモード,エンリッチモード及び前期リーン噴射モードの場合、燃料噴射量Pw及び噴射時期は排気行程末期(365°BTDC)の吸入空気流量A1とエンジン回転速度Ne1とに基づき決定される(図3中二点鎖線で示す)。ところが、この燃料噴射量Pwの決定から燃料噴射開始までの間にドライバがアクセルペダル21を戻すと、スロットルバルブ12が閉じられて吸入空気量は次第に減少していく。このため、排気行程末期での運転状態に基づき算出された燃料噴射量Pwでは減少した吸入空気量に対しては過大になり、空燃比は目標空燃比よりもオーバーリッチになってしまう。
【0031】
そこで、本制御装置では、APS22によりアクセル開度の変化が燃料噴射開始前までに検出されたときには、検出されたアクセル開度偏差に応じて吸入空気量の減少量を推定し、この推定した吸入空気量の減少量に応じて燃料噴射量Pwを減量補正して、減量補正した燃料噴射量Pw′に基づきインジェクタ9を作動して減量した燃料を燃焼室3内に直接噴射する。これにより、吸入空気量に対して燃料噴射量が過剰になることが防止される。
【0032】
一方、燃料噴射量Pw′は空燃比のオーバーリッチを確実に防止するためにその減量度を大きくしており、このため、燃料噴射量Pw′のみでは空燃比は目標空燃比よりもリーン化してしまう。そこで、本制御装置では、吸気行程末期(185°BTDC)において検出した吸入空気流量A2及びエンジン回転速度Ne2に基づき目標燃料噴射量Pwoを算出し、この目標燃料噴射量Pwoと吸気行程中に噴射した燃料噴射量Pw′との差から不足燃料量Pwdを算出して、算出した量の不足燃料を圧縮行程中において燃焼室3内に直接噴射する。これにより、吸入空気量に見合った最適な量の燃料を噴射できるようになる。
【0033】
このように、本内燃機関の制御装置によれば、吸気行程中に吸入空気量が減少した場合でも、空燃比のオーバーリッチ化を防止して吸入空気量に見合った最適な量の燃料を噴射することができ、排気ガス特性の悪化や減速応答性の悪化を防止することができるという利点がある。また、燃料を2段階噴射することにより吸入空気との混合が促進されるので、燃焼効率が向上するという利点もある。
【0034】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上述の実施形態では、第一燃料噴射制御手段35の燃料噴射制御に対応して点火プラグ8の点火時期を設定しているが、第二燃料噴射制御手段37による追噴射制御を考慮して点火時期を補正(再設定)するようにしてもよい。
【0035】
つまり、点火時期制御手段33に、第一燃料噴射制御手段35の燃料噴射制御に対応して点火プラグ8の点火時期を設定する点火時期設定手段と、点火時期設定手段により設定された点火時期で点火するように点火プラグ8を制御する点火制御手段とをそなえるとともに、再設定専用の点火時期制御マップを有する点火時期補正手段をそなえ、この再設定専用マップを参照して、吸気行程末期(185°BTDC)でのエンジン回転速度Ne2、及び、第一燃料噴射制御手段35により減量補正された燃料噴射量Pw′と不足量算出手段36により算出された不足燃料量Pwdとの総和に応じて最適点火時期を再設定するのである。
【0036】
また、燃料噴射量を決定する上での基礎となる吸入空気量をパラメータとして、エンジン回転速度Neと吸入空気量とに基づき点火時期を設定する場合には、点火時期設定手段による点火時期の設定は、排気行程末期(365°BTDC)でのエンジン回転速度Ne1及び吸入空気量(∝A1/Ne1)に基づき設定し、点火時期補正手段による点火時期の補正(再設定)は、吸気行程末期(185°BTDC)でのエンジン回転速度Ne2及び吸入空気量(∝A2/Ne2)に基づき行なうようにすればよい。
【0037】
このように、第一燃料噴射制御手段35により減量補正された燃料噴射量Pw′と不足量算出手段36により算出された不足燃料量Pwdとの総和と、吸入空気量との少なくとも一方に基づいて点火時期を補正することで、車両の減速操作により吸気行程中に吸入空気量が減少した場合でも、吸入空気量と燃料噴射量とに見合った最適な点火時期の設定が可能になり、目標とするトルクを出力し、急激な減速を防止することができるようになる。
【0038】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1記載の本発明の内燃機関の制御装置によれば、車両の減速操作が検出されたときには、燃料噴射量算出手段により算出された燃料噴射量から所定量を減らした量の燃料を吸気行程中に噴射するとともに、吸気行程中に吸入された空気量に基づいて不足分の燃料量を算出し、算出した量の不足燃料を追加噴射するので、車両の減速操作により吸気行程中に吸入空気量が減少した場合でも、空燃比のオーバーリッチ化を防止して吸入空気量に見合った最適な量の燃料を噴射することができ、排気ガス特性の悪化や減速応答性の悪化を防止することができるという利点がある。
【0039】
また、請求項2記載の本発明の内燃機関の制御装置によれば、請求項1記載の内燃機関の制御装置による利点に加え、さらに、車両の減速操作により吸気行程中に吸入空気量が減少した場合でも、吸入空気量と燃料噴射量とに見合った最適な点火時期に設定でき、目標とするトルクを出力し、急激な減速を防止することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態としての内燃機関の制御装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態としての内燃機関の制御装置にかかる制御の流れを示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態としての内燃機関の制御装置にかかる吸気行程噴射時の作用効果を説明するためのタイムチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン(内燃機関)
3 燃焼室
8 点火プラグ(点火装置)
9 インジェクタ(噴射装置)
15 エアーフローセンサ(空気量検出手段,運転状態検出手段)
20 クランク角センサ(運転状態検出手段)
22 アクセルポジションセンサ(減速操作検出手段)
34 噴射量算出手段
35 第一燃料噴射制御手段
36 不足量算出手段
37 第二燃料噴射制御手段

Claims (2)

  1. 内燃機関の運転状態を検出する機関運転状態検出手段と、
    排気行程中の該機関運転状態検出手段の出力に基づいて燃料噴射量を算出する燃料噴射量算出手段と、
    該機関の燃焼室内に直接燃料を噴射する噴射装置と、
    車両の減速操作を検出する減速操作検出手段と、
    通常は該燃料噴射量算出手段により算出された量の燃料を吸気行程中に噴射するように該噴射装置を制御するが、該減速操作検出手段により減速操作が検出されたときには、該燃料噴射量算出手段により算出された燃料噴射量から所定量を減らした量の燃料を吸気行程中に噴射するように該噴射装置を制御する第一燃料噴射制御手段と、
    吸入された空気量を検出する空気量検出手段と、
    該減速操作検出手段により減速操作が検出されたとき、該空気量検出手段により検出された該燃焼室内の吸入空気量に基づいて不足分の燃料量を算出する不足量算出手段と、
    該不足量算出手段により算出された量の燃料を該第一燃料噴射制御手段による噴射が終了した後に該噴射装置に追加噴射させる第二燃料噴射制御手段とをそなえた
    ことを特徴とする、内燃機関の制御装置。
  2. 内燃機関の運転状態を検出する機関運転状態検出手段と、
    排気行程中の該機関運転状態検出手段の出力に基づいて燃料噴射量を算出する燃料噴射量算出手段と、
    該機関の燃焼室内に直接燃料を噴射する噴射装置と、
    車両の減速操作を検出する減速操作検出手段と、
    通常は該燃料噴射量算出手段により算出された量の燃料を吸気行程中に噴射するように該噴射装置を制御するが、該減速操作検出手段により減速操作が検出されたときには、該燃料噴射量算出手段により算出された燃料噴射量から所定量を減らした量の燃料を吸気行程中に噴射するように該噴射装置を制御する第一燃料噴射制御手段と、
    排気行程中の該機関運転状態検出手段の出力に基づいて点火時期を設定する点火時期設定手段と、
    該燃焼室内の混合気に点火する点火装置と、
    該点火時期設定手段により設定された点火時期で点火するように該点火装置を制御する点火制御手段と、
    吸入された空気量を検出する空気量検出手段と、
    該減速操作検出手段により減速操作が検出されたとき、該空気量検出手段により検出された該燃焼室内の吸入空気量に基づいて不足分の燃料量を算出する不足量算出手段と、
    該不足量算出手段により算出された量の燃料を該第一燃料噴射制御手段による噴射が終了した後に該噴射装置に追加噴射させる第二燃料噴射制御手段と、
    該吸入空気量と、該燃料噴射量算出手段により算出された燃料噴射量から所定量を減らした燃料量と該不足量算出手段により算出された燃料量との総和との少なくとも一方に基づいて該点火時期を補正する点火時期補正手段とをそなえた
    ことを特徴とする、内燃機関の制御装置。
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