JP3646351B2 - リン−バナジウム化合物の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はリン−バナジウム化合物の製造方法に関する。詳しくは、炭素数4の炭化水素を気相酸化して無水マレイン酸を製造するに適した、リン−バナジウム系触媒の前駆物質の改良された製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ブタン、ブテン、ブタジエン等の炭素数4の炭化水素、特に飽和炭化水素のn−ブタンを、気相反応で選択的に酸化して無水マレイン酸を製造するための触媒として、4価のバナジウムと5価のリンから成る触媒が用いられている。特に、触媒特性の優れた結晶性の複合酸化物触媒として、ピロリン酸ジバナジル((VO)2 P2 O7 )が知られており、この化合物に係る文献が多く知られている(例えば、Chem.Rev.88,P.55〜80(1988)等)。ピロリン酸ジバナジルの合成方法としては、その前駆体であるリン−バナジウム化合物、即ち、リン酸水素バナジル・1/2水塩(VOHPO4 ・1/2H2 O)を焼成する方法が一般的である。
【0003】
前駆体であるリン酸水素バナジル・1/2水塩の製造方法としては、有機溶媒中で合成する方法が数多く報告されている。これらの方法は、基本的には、5価のバナジウム化合物の少なくとも一部を有機溶媒中で還元し、これを5価のリン化合物と反応させて5価のリンと4価のバナジウムから成るリン−バナジウム化合物を得る方法である。
【0004】
例えば、特開昭53−91,100号公報には、実質的に無水の有機溶媒中で、五酸化バナジウムをバナジウムの価数が4.0〜4.6価になるまで還元させた後、オルトリン酸と反応させる方法が示されており、有機溶媒として、2−メチルプロパノールまたは2−メチルプロパノールとベンジルアルコールの混合溶媒が用いられている。ベンジルアルコールの使用量はベンジルアルコール/五酸化バナジウム(モル比)で2.2以上である。
【0005】
更に、特開昭59−87,049号公報には、アルコール溶媒中で5価のバナジウム化合物を還元し、かつ5価のリン酸と反応させてリン−バナジウム化合物を合成する過程において、反応中にバナジウム1モル当たり少なくとも1.5モルの溶媒を留出させる製造法が記載されている。また、特開昭61−181,540号公報には、リン酸の2−メチルプロパノール溶液に五酸化バナジウムの2−メチルプロパノール懸濁液を加え、かつ添加した懸濁液中の量と等量の2−メチルプロパノールを反応により生成した水と共に留去する製造法が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
工業的な規模でのリン−バナジウム化合物の製造においては、使用した溶媒を安価かつ安全に回収し、再使用できることが望ましい。しかしながら、上記の公報を含め、従来公知のリン−バナジウム化合物の製造方法に関する報告には、溶媒の回収、再使用等については何も示されていない。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、リン酸及び5価のバナジウム化合物をアルコール含有溶媒中で反応させてリン−バナジウム化合物を製造する方法において、
(a)リン酸及び5価のバナジウム化合物を炭素数3〜5のアルコールを含有する溶媒中で反応させてリン−バナジウム化合物を合成し、
(b)該リン−バナジウム化合物を反応液より分離し、
(c)分離後の反応液を中和してリン酸濃度を1.0%以下とし、
(d)次いで該液を蒸留してアルコールを回収する、
ことを特徴とする、リン−バナジウム化合物の製造法を提供するものである。本発明によれば、使用した溶媒を安価かつ安全に回収し、再使用することができる。
【0008】
本発明の原料として、工程(a)で使用する5価のバナジウム化合物としては、五酸化バナジウム、またはメタバナジウム酸アンモニウム、オキシ三ハロゲン化バナジウムなどのバナジウム塩が例示され、最も一般的な原料は五酸化バナジウムである。リン酸としては高濃度のものが好ましく、85%リン酸あるいは99%リン酸が最も一般に使用される。他の濃度のリン酸も勿論用いることができ、例えば工業規模で生産されている89%リン酸や105%リン酸を使用することもできる。リン酸及び5価のバナジウム化合物の使用割合は、リンとバナジウムの原子比(P/V)として、通常、1.0〜1.5、好ましくは1.1〜1.3である。
【0009】
炭素数3〜5のアルコールとしては、飽和の1価アルコールが好ましい。具体的には、2−プロパノール、2−メチルプロパノール、1−ブタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール等が挙げられる。これらのアルコールは単独でも使用できるが、ベンジルアルコールのような上記のアルコールよりも沸点が高く、且つ、5価のバナジウムを還元する性質が強い溶媒と共に使用する方法が好ましい態様である。これらの中では、2−メチルプロパノールとベンジルアルコールの混合アルコールが特に好適である。
【0010】
ベンジルアルコールの使用量は、5価のバナジウムに対するモル比で、通常0.02〜2、好ましくは0.5〜1.5である。また、炭素数3〜5のアルコールないしはこれとベンジルアルコールとの混合物にさらにシュウ酸等の還元剤を添加してバナジウムを還元することも可能である。なお、上記のアルコールに加えて反応を阻害しない他の有機溶媒を併用することもできるが、溶媒の回収操作が複雑となるおそれがある。
【0011】
さらに、反応溶媒中に助触媒成分となる金属を含む化合物を添加して、最終的に得られる触媒中に助触媒成分を含有させることもできる。このような助触媒成分としては、通常、鉄、コバルト、亜鉛、ジルコニウム等があげられる。これらの中では、特に鉄が助触媒として良好である。反応溶媒中に添加される鉄の化合物としては、塩化鉄、酢酸鉄、シュウ酸鉄等が例示される。これらの金属成分の添加量は、バナジウムと添加金属の合計に対する添加金属の原子比で、通常0.05〜0.3、好ましくは0.02〜0.2である。
【0012】
本発明でリン酸と5価のバナジウム化合物とを反応させてリン−バナジウム化合物を合成するには、炭素数3〜5のアルコールを含有する溶媒中にリン酸と5価のバナジウム化合物とを所定の比率で加え、攪拌下に加熱して反応させればよい。好ましくは先ず溶媒中に5価のバナジウム化合物を加え、攪拌下に加熱してバナジウムの一部を4価に還元したのち、リン酸を添加する。いずれにしてもリン酸の存在下に5価のバナジウムが還元され、かつこれがリン酸と反応して4価のバナジウム及び5価のリンを含有するリン−バナジウム化合物が生成する。
【0013】
加熱温度は、用いる有機溶媒の種類にもよるが、通常、80〜200℃、好ましくは90〜120℃で、用いる溶媒の沸点付近の温度範囲で還流させる方法が特に好ましい。加熱時間は、反応条件により変動するが、反応系にリン酸を添加してから、通常1〜20時間である。
攪拌はスラリーの沈降を防ぎ、反応系を均一に維持する程度でよい。
【0014】
所定時間反応させたならば、次いで生成したリン−バナジウム化合物を反応液より分離する。分離方法としては通常の濾過や沈降操作を行えばよい。例えば、加圧濾過や減圧濾過が適用できる。また、加圧濾過後にさらに圧搾する方式、セントル等の遠心力を利用した分離法も使用できる。リン−バナジウム化合物の粒子径によっては、スラリーを静置したりデカンターを用いることにより、生成物を沈降させて分離することができる。沈降スラリーを濾過することも可能である。
【0015】
分離したリン−バナジウム化合物は、必要により、アルコール等の溶媒で洗浄する。洗浄溶媒としては反応液と同様、炭素数3〜5のアルコールが好ましい。回収した洗浄溶媒は通常はそのまま蒸留して再使用できる。
リン−バナジウム化合物を分離後の反応液中の主な成分は、炭素数3〜5のアルコール及びその酸化生成物を含む有機溶媒、リン酸との反応で生成した水及び過剰に使用したリン酸である。通常は、炭素数3〜5のアルコールが50%以上、特に80%以上を占める。リン酸濃度は、過剰に添加したリン酸量に依存するが、通常1〜5重量%程度の範囲にある。
【0016】
本発明では、リン−バナジウム化合物を分離した後の反応液中のリン酸を、リン酸濃度1.0%以下、好ましくは0.5%以下まで中和したのち蒸留して、炭素数3〜5のアルコールを含む有機溶媒を回収する。
リン酸濃度が1%を超える反応液をそのまま蒸留すると、蒸留後の釜残に発熱性物質が生成しやすく、自然発火や爆発等の危険があり、安全上適当でない。この発熱性物質は同定されていないが、溶媒であるアルコールの過酸化物及びリン酸エステル誘導体と推定される。反応液中のリン酸を1%以下まで中和したのち蒸留すると、このような発熱性物質の生成を抑制できる。
【0017】
中和剤としては、アルカリ金属の水酸化物またはアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物が用いられる。
通常は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム等が用いられる。最も一般的な中和剤は水酸化ナトリウムであり、このものは固体で使用することもできるが、水溶液として使用する方が好ましい。水溶液として使用する場合の濃度は、通常1〜50%であるが、濃度が高くなると水層と有機層との界面が不明確となることがある。好適な濃度は1〜10%である。
【0018】
中和剤の使用量は、反応液中のリン酸濃度と中和後の所望のリン酸濃度に応じて適宜決定する。中和後のリン酸濃度は1%以下であればよいが、できるだけ低い方が好ましく、かつ中和反応は容易に進行するので、0.5%以下、特に0.1%以下まで中和するのが好ましい。中和剤として水酸化ナトリウムの水溶液等を用いた場合には、中和反応はほぼ定量的に進行する。しかし酸化カルシウム等を固体のままで用いた場合には一部は未反応で残存するので計算量よりも若干多く用いる必要がある。一般に中和剤の使用量は、反応液中のリン酸濃度と中和後の所望のリン酸濃度とから算出される計算量に対して、通常1.0〜2.5倍当量である。なお、本明細書において反応液中のリン酸濃度は、反応液を水酸化ナトリウムで中和し、完全に中和するまでに要した水酸化ナトリウム量と当量のリン酸が反応液中に存在するとして計算した値である。
【0019】
中和は、反応液に中和剤を添加して30分〜10時間程度攪拌すればよい。中和剤を水溶液で用いる場合には、反応液と水とが混和せずに2層となることがあるが、攪拌を十分に行なえば中和反応は良好に進行する。
リン酸を中和した反応液は、常法により蒸留してアルコールを回収する。なお、中和にアルカリ水溶液を使用した場合には、蒸留に先立ち予め水層を分離除去するのが好ましい。また中和後の液中に固体が存在する場合は、蒸留前に濾過等で固体成分の分離をしておくことが好ましい。
【0020】
蒸留圧力は、特に制限がないが、常圧あるいは50mmHg程度までの減圧で実施する。減圧下では、蒸留温度が低いので安全上好ましいが、強い減圧下では、留出するアルコールを回収するための冷却負担が大きくなるので、実用上不利である。蒸留温度は、アルコールの種類や圧力条件に依存するが、例えば、2−メチルプロパノールの常圧蒸留の場合、塔頂温度は90℃〜110℃であり、蒸留釜の温度は、通常、200℃以下、好ましくは150℃以下である。蒸留に際しては系内を不活性雰囲気に維持することが望ましい。
【0021】
回収したアルコールは、通常、少量の水を含んでいる。回収アルコール中の水分濃度が高いと、回収したアルコールを反応溶媒として再使用する際に障害となるので、通常は回収アルコール中の水分が5重量%以下、好ましくは1重量%以下になるように蒸留条件を設定する。例えば2−メチルプロパノールにベンジルアルコールを添加したものを反応の溶媒とした場合には、蒸留段数として3段以上、還流比として3以上の条件で蒸留して先ず水を留出させ、次いでアルコールを留出させるのが好ましい。
【0022】
このようにして回収したアルコールは、リン酸と5価のバナジウム化合物とからリン−バナジウム化合物を合成する際の反応溶媒として循環使用することができる。通常は回収したアルコールに、回収率に応じた不足分のアルコールを新たに加えて反応溶媒とする。
本発明の方法で得られるリン−バナジウム化合物は、焼成してリン−バナジウム化合物の少なくとも一部をピロリン酸ジバナジルに転換させて触媒として使用する。通常は最終的に400〜700℃で焼成することにより、触媒の活性化が行なわれる。活性化の条件の例としては、窒素雰囲気や窒素と空気を適当な割合で混合した雰囲気での焼成、炭素数4の炭化水素を含有した反応ガス雰囲気での加熱が挙げられる。また、リン−バナジウム化合物をバインダー成分あるいは担体成分と混合して反応器の形態に適した触媒に成型し、乾燥、加熱活性化するか、あるいは、予め加熱して活性化後にバインダー成分あるいは担体成分と混合して成型し、乾燥することにより、所望の形状の触媒とすることもできる。
【0023】
このようにして得られた触媒は、炭化水素の部分酸化反応、特にn−ブタン、1−ブテン、2−ブテン、1,3−ブタジエン等の炭素数4の炭化水素の気相酸化による無水マレイン酸の製造に好適に利用される。酸化反応の形式は流動床でも固定床でもよい。酸化剤としては空気または他の分子状酸素含有ガスが用いられる。反応器に供給するガス中の原料炭化水素は通常0.1〜10容量%、好ましくは1〜5容量%、酸素濃度は10〜30容量%である。反応温度は通常300〜500℃、好ましくは350〜450℃であり、反応圧力は、通常、常圧もしくは0.05〜10kg/cm2 Gの加圧下で行われる。
【0024】
【実施例】
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明する。尚、特に断りがない限り「%」は「重量%」を示す。
実施例1
工程(a)
10リットルのステンレス製容器に2−メチルプロパノール2195g、ベンジルアルコール205.4g、五酸化バナジウム347.5g、シュウ酸鉄・2水物36.0gを入れてスラリー状態で3時間、攪拌下に加熱・還流した。このスラリーに89%リン酸528.5gを2−メチルプロパノール1.0リットルに溶解した溶液を添加し、次いで2−メチルプロパノール2.4リットルを加えた。このスラリーを攪拌下に更に7時間、加熱・還流した後、冷却した。
生成物をヌチェで吸引濾過した。取得したリン−バナジウム化合物は、2−メチルプロパノールで洗浄し、130℃で10時間乾燥した。
【0025】
上記のリン−バナジウム化合物を分離した後の反応液2001gのリン酸濃度を測定したところ、1.43%であった。これに1Nの水酸化ナトリウム320.3g(リン酸に対する当量比1.23)を添加し、室温で1時間攪拌した。リン酸濃度は、攪拌30分で0.01%以下まで低下した。上記の液を静置して2層に分け、水層を除去し有機層を取得した。
【0026】
10段のガラス製オールダーショウ蒸留塔を用いて、上記で取得した有機層を常圧で蒸留した。還流比は、初留を5、主留を1に設定した。蒸留釜部分は、オイルバスにて130℃に加熱した。仕込みに対して初留を38%留出させた。この時の塔頂温度は、90℃〜110℃であった。その後、主留を仕込みに対して51%留出させた。この時の塔頂温度は、109℃〜110℃であった。この留分の水含有量は、0.10%であり、2−メチルプロパノールの純度は99.8%以上であった。釜残は、仕込み重量に対して11%であった。この蒸留における2−メチルプロパノール回収率は、61%であった。
得られた釜残の発熱挙動を示差熱量計(以下、「DSC」と略す。島津製作所社製品)を用いて窒素雰囲気下で測定したところ、250℃までに発熱ピークは観察されなかった。
【0027】
(回収2−メチルプロパノールを用いたリン−バナジウム化合物の合成)
2−メチルプロパノールとして、上記と同様にして回収した2−メチルプロパノールのみを用いた以外は上記と全く同様の操作を行い、リン−バナジウム化合物を製造した。生成したリン−バナジウム化合物の粉末X線を測定したところ、新しい2−メチルプロパノールを用いて製造した生成物と同位置にピークが観察された。
【0028】
比較例1
実施例1において、中和工程を省略し、濾液をそのまま蒸留した。蒸留条件等は実施例1と同様に行なった。
得られた釜残の発熱挙動を示差熱量計(島津製作所製)を用い、窒素雰囲気下にて測定したところ、195℃付近から発熱が始まり、約230℃にピークを有する大きな発熱ピークが観測された。
【0029】
実施例2〜6
ステンレス容器の代わりに、120Lのグラスライニングの容器を使用して、実施例1の10倍スケールで同様の反応を実施した。リン−バナジウム化合物を分離した後の反応液中のリン酸濃度は、1.43%であった。この溶液250gに表1の中和剤を添加して、攪拌しながら還流した。還流時間30分と3時間後に溶液中のリン酸濃度と水濃度を測定した結果を表1にまとめた。
【0030】
【表1】
【0031】
実施例7
(リン酸の中和)
実施例2〜6と同じ反応液からリン−バナジウム化合物を分離したリン酸濃度1.43%の反応液1000.2gにリン酸濃度の15倍に相当する120.8gの酸化カルシウムを添加して、攪拌しながら3時間還流処理した。その後、濾過により酸化カルシウムとリン酸を除去した。この濾液中のリン酸濃度は0.02%以下、水濃度は0.45%であり、これを以下の蒸留に用いた。
【0032】
(蒸留)
10段のガラス製オールダーショウ蒸留塔を用い、常圧で蒸留を実施した。還流比は、初留を5、主留を1に設定した。蒸留釜部分は、オイルバスにて142℃に加熱した。仕込みに対して初留を8.9%留出させた。この時の塔頂温度は、90℃〜110℃であった。その後、主留を仕込みに対して77.7%留出させた。この時の塔頂温度は、109℃〜110℃であった。この留分の水含有量は、0.06%であり、2−メチルプロパノールの純度は99.8%以上であった。釜残は、仕込み重量に対して13.3%であった。この蒸留における2−メチルプロパノール回収率は、79%であった。
得られた釜残を窒素雰囲気下でDSCで測定したところ、250℃までに発熱ピークは観察されなかった。
【0033】
(回収2−メチルプロパノールを用いたリン−バナジウム化合物の合成)
上記にて回収した2−メチルプロパノールを用いて、実施例1と同様にしてリン−バナジウム化合物を製造した。粉末X線を測定したところ、新しい2−メチルプロパノールを用いて製造した生成物と同位置にピークが観察された。
【0034】
反応試験例
(無水マレイン酸の製造例)
実施例1及び7において回収した2−メチルプロパノールで合成したリン−バナジウム化合物、並びに新しい2−メチルプロパノールを用いて実施例1で合成したリン−バナジウム化合物をそれぞれ窒素雰囲気下、550℃で焼成後14〜24メッシュの粒径に成型した触媒を石英製反応管に1cc充填し、該反応管にn−ブタン濃度4モル%の空気混合ガスをGHSV1000Hr-1の速度で通過させて400℃で反応を実施した。約20時間経過後、反応管内の温度を350〜500℃の範囲で調整し、反応管出口ガスをサンプリングして、オンライン接続したガスクロマトグラフにより生成物の分析を実施した。得られた結果を表2に示す。表2の結果から、回収した2−メチルプロパノールを使用して生成したリン−バナジウム化合物を活性化して得られた触媒(触媒A:実施例1、触媒B:実施例7)は、新しい2−メチルプロパノールを用いて合成したものから得られた触媒(触媒C)と比べても無水マレイン酸(CML)収率並びに反応温度が同等であり、反応成績が同等以上なことが理解される。
【0035】
【表2】
【0036】
【発明の効果】
本発明のリン−バナジウム化合物の製造方法によれば、製造に使用した炭素数3〜5のアルコールを安全にかつ安価に回収でき、また、これを再使用しても、リン−バナジウム化合物を再現性良く、製造することができるので、リン−バナジウム化合物の安価な製造に有効である。本発明により得られたリン−バナジウム化合物を活性化した触媒は、炭素数4の炭化水素、特に飽和のブタンを選択的に酸化して無水マレイン酸を製造する反応に適している。
Claims (6)
- リン酸及び5価のバナジウム化合物をアルコール含有溶媒中で反応させてリン−バナジウム化合物を製造する方法において、
(a)リン酸及び5価のバナジウム化合物を炭素数3〜5のアルコールを含有する溶媒中で反応させてリン−バナジウム化合物を合成し、
(b)該リン−バナジウム化合物を反応液より分離し、
(c)分離後の反応液を中和してリン酸濃度を1.0%以下とし、
(d)次いで該液を蒸留してアルコールを回収する、
ことを特徴とするリン−バナジウム化合物の製造方法。 - アルコールが、2−メチルプロパノールとベンジルアルコールの混合アルコールである請求項1記載の方法。
- 中和剤が、アルカリ金属の水酸化物並びにアルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物よりなる群から選ばれた少くとも1種である請求項1記載の方法。
- 回収アルコール中の水分濃度が5%以下である請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
- 反応液から分離されたリン−バナジウム化合物を、炭素数3〜5のアルコールで洗浄し、該洗浄液から該アルコールを蒸留回収することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
- 反応液から蒸留回収したアルコールを、リン酸及び5価のバナジウム化合物を反応させてリン−バナジウム化合物を合成する際の溶媒として再使用することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
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