JP3528248B2 - リン−バナジウム化合物の製造方法 - Google Patents

リン−バナジウム化合物の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はリン−バナジウム化合物
の製造方法に関するものである。より詳しくは、気相酸
化により炭素数4のブタン、ブテン、ブタジエン等の炭
化水素から無水マレイン酸を製造する際の触媒として使
用するリン−バナジウム酸化物の前駆物質であるリン−
バナジウム化合物の改良された製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ブタン、ブテン、ブタジエン等の
炭素数4の炭化水素、特に飽和炭化水素のn−ブタン
を、気相反応で選択的に酸化して無水マレイン酸を製造
するための触媒として、4価のバナジウムと5価のリン
から成る触媒が用いられている。この触媒としては、特
に、触媒特性の優れた結晶性の複合酸化物触媒として、
ピロリン酸ジバナジル((VO)227)が知られて
おり、この化合物に係る文献が多く知られている(例え
ば、Chem.Rev.88,P.55〜80(198
8)及びその引用文献)。このピロリン酸ジバナジルの
合成方法としては、その前駆物質であるリン−バナジウ
ム化合物、即ち、リン酸水素バナジル・1/2水塩(V
OHPO4・1/2H2O)を焼成する方法が一般的であ
る。
【0003】前駆物質であるリン酸水素バナジル・1/
2水塩の製造方法としては、有機溶媒中で前駆物質を製
造する方法が数多く報告されている。基本的には、5価
のバナジウム化合物の少なくとも一部を有機溶媒中で還
元して、5価のリン化合物と反応させて5価のリンと4
価のバナジウムのリン−バナジウム化合物を得る方法で
ある。例えば、特公昭57−8761号には、実質的に
無水の有機溶媒中で五酸化バナジウムをバナジウムの価
数を4.0〜4.6に還元させた後、オルトリン酸と反
応させる方法が示されている。有機溶媒としては、2−
メチルプロパノ−ルまたは2−メチルプロパノ−ルとベ
ンジルアルコ−ルの混合溶媒が用いられている。
【0004】更に、特公平2−61951号には、リン
−バナジウム化合物触媒前駆体の製造方法として、リン
−バナジウム化合物合成の過程において、バナジウム1
モル当たり少なくとも1.5モルの有機液体を反応媒体
より、加熱除去する方法が記載されている。また、特開
昭61−181,540号には、リン酸の2−メチルプ
ロパノ−ル溶液に五酸化バナジウムの2−メチルプロパ
ノ−ル懸濁液を添加し、次いで、添加した量と等量の2
−メチルプロパノ−ルを留去するリン−バナジウム化合
物の製造方法が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記の例を含めた公知
のリン−バナジウム化合物の製造方法では、合成過程に
おいて溶媒を除去する方法は開示されているものの、2
−メチルプロパノ−ル等の溶媒を回収し、製造に再使用
する方法については何も示されていない。即ち、工業的
な規模でのリン−バナジウム化合物の製造においては、
使用した溶媒を安価にかつ安全に回収し、再使用できる
ことが望ましいにもかかわらず、従来、かかる点に関す
る有益な方法は報告されていなかった。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記実情
に鑑み鋭意検討を進めた結果、工業的な製造に適した特
定の方法、条件を見出し、本発明に到達した。即ち,本
発明は、リン酸及び5価のバナジウム化合物を、炭素数
3〜5のアルコ−ルを含有する溶媒中で反応させてリン
−バナジウム化合物を製造する方法において、(a)リ
ン酸及び5価のバナジウム化合物を、炭素数3〜5のア
ルコ−ルを含有する溶媒中で反応させてリン−バナジウ
ム化合物を合成し、(b)該リン−バナジウム化合物を
反応液より分離し、(c)一方、リン−バナジウム化合
物を分離した後の反応液中のリン酸を、吸着剤によりリ
ン酸濃度1.0%以下まで吸着、除去し、(d)該液を
蒸留して炭素数3〜5のアルコ−ルを回収し、(e)該
アルコ−ルを工程(a)で循環使用する、ことを特徴と
するリン−バナジウム化合物の製造方法に存する。以下
に本発明を詳細に説明する。
【0007】工程(a)では、リン酸及び5価のバナジ
ウム化合物を、炭素数3〜5のアルコ−ルを含有する溶
媒中で反応させてリン−バナジウム化合物を合成する。
原料として使用する5価のバナジウム化合物としては、
五酸化バナジウム、またはメタバナジウム酸アンモニウ
ム、オキシ三ハロゲン化バナジウムなどのバナジウム塩
が例示されるが、最も一般的な原料は五酸化バナジウム
である。また、リン酸としては、最も一般に使用される
85%リン酸あるいは99%リン酸が使用できるが、そ
の他、工業規模で生産されている89%リン酸や105
%リン酸を使用することも可能である。原料の使用割合
は、リンとバナジウムの原子比として、通常1.1〜
1.3が適当である。
【0008】本発明で使用する溶媒は、炭素数3〜5の
アルコ−ルを主体とするものである。炭素数3のアルコ
−ルとしては、2−プロパノ−ル、炭素数4のアルコ−
ルとしては、2−メチルプロパノ−ルや1−ブタノ−
ル、炭素数5のアルコ−ルとしては、2−ペンタノ−ル
や3−ペンタノ−ル等が挙げられる。これらのアルコ−
ルの中では、2−メチルプロパノ−ルが特に好適であ
る。以上の炭素数3〜5のアルコ−ルは単独で溶媒とし
て使用できる。また、ベンジルアルコ−ルのような5価
のバナジウムを還元する性質が強く、炭素数3〜5のア
ルコ−ルよりも沸点が高い溶媒と共に使用する方法も好
ましい態様である。このベンジルアルコ−ルを使用する
場合は、ベンジルアルコ−ルは5価のバナジウム化合物
に対するモル比で通常0.02〜2、好ましくは0.5
〜1.5である。また、シュウ酸等の還元剤を有機溶媒
中に添加して、バナジウムを還元する方法も可能であ
る。
【0009】さらに、合成するリン−バナジウム化合物
を触媒前駆体として使用することを考慮し、合成反応系
に助触媒成分としての金属成分を含む化合物を添加して
もよく、該金属成分としては、鉄、コバルト、亜鉛、ジ
ルコニウム、リチウム等が挙げられる。これらの元素の
中では、特に鉄が良好であり、鉄の化合物としては、塩
化鉄、酢酸鉄、シュウ酸鉄等が例示される。添加金属成
分の使用量としては、バナジウムと添加金属の合計に対
する添加金属の原子比で、通常0.005〜0.3、好
ましくは0.02〜0.2である。
【0010】本発明では上記で選択された原料からなる
スラリ−状態の溶液を、通常、加熱撹拌下で反応させ
る。具体的には、5価のバナジウムを還元するととも
に、リン酸と反応させ、4価のバナジウム及び5価のリ
ンを含有するリン−バナジウム化合物を製造する。原料
を混合したスラリ−の加熱温度としては、用いる有機溶
媒の種類によるが、通常80〜200℃の範囲で実施
し、溶媒の沸点付近の温度範囲で還流させる方法が特に
好ましい。加熱時間は、合成条件により変動するが、反
応系にリン酸を添加してから、通常1〜20時間が好適
である。
【0011】工程(b)では工程(a)で合成したリン
−バナジウム化合物を反応液より分離する。分離方法と
しては通常の濾過や沈降を実施すればよい。濾過の方式
としては、スラリ−を加圧として濾過する方法や濾液側
を減圧する方法がある。加圧濾過した後にさらに圧搾す
る濾過方式も採用できる。また、遠心力を利用したセン
トル等の遠心分離法も使用できる。さらに、リン−バナ
ジウム化合物の粒子径によっては、合成スラリ−を静
置、デカンテ−ションする方法やデカンタ−を用いるこ
とにより、生成物を沈降させて分離、濾液を上澄み液と
して得ることができる。リン−バナジウム化合物を一旦
沈降させて上澄み液と分離した後、沈降スラリ−を濾過
することも可能である。
【0012】分離したリン−バナジウム化合物は、必要
により炭素数3〜5のアルコ−ル等の溶媒により洗浄す
る。この洗浄溶媒に関しても、リン酸濃度が1.0%を
超えるような場合にはリン酸除去を実施した後、反応液
と同様に炭素数3〜5のアルコ−ルの蒸留回収を実施す
ることができる。リン酸濃度が1.0%未満で以下であ
れば、そのまま蒸留回収を実施することができる。
【0013】一方、工程(c)では工程(b)でリン−
バナジウム化合物を分離した後の反応液中のリン酸を、
吸着剤によりリン酸濃度1.0%以下まで吸着、除去す
る。該反応液中の主な成分は、炭素数3〜5のアルコ−
ル及びその酸化生成物、リン酸との反応で生成した水、
過剰に使用したリン酸である。この中でも炭素数3〜5
のアルコ−ルの量が多く、通常50%以上、特に80%
以上を占める。当該溶液中のリン酸濃度は、合成により
使用したリン酸量に依存するが、通常1〜5%程度の範
囲にある。
【0014】また、リン酸の吸着剤としては、アニオン
種を吸着するか、交換する特性を有するものが用いられ
る。その具体例としては、アニオン交換樹脂、ハイドロ
タルサイトあるいは活性アルミナ、活性炭が挙げられ
る。本発明においては、ハイドロタルサイトが特に好適
に使用できる。ハイドロタルサイトは、典型的にはアル
ミニウムとマグネシウムから成る複合酸化物であり、以
下の一般式で表される。
【化1】[Mg1-xAlx(OH)2x+[(CO3x/2
m2O]x- このハイドロタルサイト化合物は、アニオンを吸着、除
去する試薬として知られており(石膏と石灰,No.1
87(1983),P.333)、商品名「キョ−ワ
ド」(協和化学工業製)など、市販品として容易に入手
できる。
【0015】上記のリン酸除去のための吸着剤は、通
常、反応液に固体のままで添加する。使用量としては、
反応液中のリン酸濃度を測定し、処理後のリン酸濃度が
1.0%以下、好ましくは0.5%以下となる量とす
る。例えば、残存リン酸濃度をほぼ0とする場合では、
リン酸に対する理論的な吸着量の1倍モルから10倍モ
ルを使用する。上記の溶液にリン酸除去剤を添加し、攪
拌しながら室温から溶液の還流温度程度の温度範囲で処
理を行なう。処理時間は、リン酸除去剤の使用量や処理
温度に依存するが、通常30分から10時間の範囲で選
択できる。
【0016】リン酸濃度が1%を超えるような反応液を
蒸留すると、蒸留後の釜残に発熱性物質が生成しやすく
なり、安全上適当ではない。この発熱性物質は充分には
同定されていないが、炭素数3〜5のアルコ−ルの過酸
化物及びリン酸エステル誘導体によるものと推定され
る。
【0017】工程(d)では工程(c)でリン酸を除去
した液を蒸留して炭素数3〜5のアルコ−ルを回収す
る。通常、リン酸除去のための吸着剤を濾過等に分離し
た液を、そのまま蒸留に供すればよい。蒸留の圧力とし
ては、特に制限がないが、通常の常圧、あるいは50m
mHg程度までの減圧で実施することができる。減圧下
では、蒸留温度が下るために安全上好ましいが、50m
mHgより圧力が低いような場合には、蒸留で留出した
アルコ−ルの冷却負荷が大きくなるので好ましくない。
また、蒸留温度としては、アルコ−ルの種類や蒸留圧力
に依存するが、例えば、2−メチルプロパノ−ルが留出
している時の塔頂温度は、常圧においては通常90〜1
10℃であり、蒸留釜の温度としては、通常200℃以
下、好ましくは150℃以下である。また、蒸留の開始
と終了時においては、蒸留系内を不活性雰囲気に維持す
ることが安全上望ましい。
【0018】回収した炭素数3〜5のアルコ−ル中に
は、通常はわずかに水が含まれてくるが、回収したアル
コールを使用してもリン−バナジウム化合物が再現性良
く合成できるように、蒸留条件を留意決定する。回収ア
ルコ−ル中の水分濃度は、回収アルコ−ルを使用する割
合に依存するが,触媒前駆体として好適なリン−バナジ
ウム化合物を製造するためには、回収アルコ−ル中の水
分濃度を、通常5%以下、好ましくは1%以下になるよ
うに蒸留条件を設定する。例えば、水含有量の少ない回
収アルコールを得るには、通常、蒸留段数として3段以
上、還流比として3以上の蒸留条件が好ましい。
【0019】工程(e)では工程(d)で回収したアル
コ−ルを工程(a)の反応溶媒として循環使用する。工
程(d)にて蒸留回収した炭素数3〜5のアルコ−ル
は、その回収率や合成規模などに応じて不足分の炭素数
3〜5のアルコ−ルを加えて、再度(a)のリン−バナ
ジウム化合物製造で使用する。不足分のアルコ−ルとし
ては、未使用の工業品、あるいは本発明等によりあらか
じめ回収保存しておいたものが用いられる。。
【0020】以上述べた方法で得たリン−バナジウム化
合物は、通常は、最終的に400〜700℃程度で加熱
することにより活性化させ、リン−バナジウム化合物の
少なくとも一部をピロリン酸ジバナジルに転換させて触
媒として使用する。この加熱条件としては、窒素雰囲気
や窒素と空気を適当な割合で混合した雰囲気での焼成、
炭素数4の炭化水素を含有した反応ガス雰囲気での加熱
が挙げられる。また、リン−バナジウム化合物をバイン
ダ−成分あるいは担体成分と混合し、乾燥、加熱活性化
するか、あるいは、そのリン−バナジウム化合物を予め
加熱して活性化後にバインダ−成分あるいは担体成分と
混合し、乾燥するなどした後、反応器の形態により必要
に応じて成型し、工業用触媒として使用することができ
る。
【0021】以上の触媒は、炭化水素又はカルボン酸の
部分酸化反応、特にn−ブタン、1−ブテン、2−ブテ
ン、1,3−ブタジエン等の炭素数4の炭化水素の気相
酸化による無水マレイン酸の製造に好適に利用される。
炭化水素原料として特に経済的に有利なのはn−ブタン
及びブテンであり、これらは天然ガスからの分離、或い
はナフサクラッキング生成物からの分離などによって容
易に得ることができる。 酸化反応の形式は流動床でも
固定床でもよい。酸化剤としては空気あるいは分子状酸
素含有ガスが用いられる。原料炭化水素は通常0.1〜
10容量%、好ましくは1〜5容量%、酸素濃度は10
〜30容量%で行われる。反応温度は通常300〜50
0℃、好ましくは350〜450℃であり、反応圧力
は、通常、常圧もしくは0.05〜10kg/cm2
の加圧下で行われる。
【0022】
【実施例】以下に実施例により本発明をさらに具体的に
説明するが,本発明はその要旨を越えない限り、以下の
実施例により限定されるものではない。なお、特に断り
がない限り「%」は、「重量%」を示す。
【0023】実施例1 (リン−バナジウム化合物の合成)10リットルの容器
に2−メチルプロパノ−ル2195g、ベンジルアルコ
−ル205.4g、五酸化バナジウム347.5g、シ
ュウ酸鉄・2水物36.0gを入れてスラリー状態で3
時間、加熱・還流した。このスラリ−溶液に89%リン
酸528.5gを2−メチルプロパノ−ル1.0リット
ルに溶解した溶液を添加後、2−メチルプロパノ−ル
2.4リットルを入れた。このスラリ−溶液を更に7時
間、加熱・還流した後、冷却した。生成物をヌチェにて
減圧下濾過した。リン−バナジウム化合物は、2−メチ
ルプロパノ−ルにより洗浄後、濾過し、130℃で10
時間乾燥した。
【0024】(リン酸の除去)上記のリン−バナジウム
化合物を濾過した後の反応液2001gのリン酸濃度を
測定したところ1.43%であった。これに、ハイドロ
タルサイト(商品名「キョ−ワド1000」(協和化学
工業製))を47・1g添加した。この溶液を加熱し、
還流下で3時間攪拌した。リン酸濃度は、処理後0.0
2%以下まで除去された。水の含有量は2.23%であ
った。この液を濾過して固形分を分離し、濾液を蒸留原
料液とした。
【0025】(蒸留)10段のガラス製オ−ルダ−ショ
ウを用いた装置にて、還流比5にて常圧で蒸留を実施し
た。蒸留釜部分は、オイルバスにて142℃に加熱し
た。仕込みに対して初留を12%留出させた。この時の
塔頂温度は、89〜108℃であった。その後、主留を
仕込みに対して73%留出させた。この時の塔頂温度
は、108℃〜109℃であった。この留分の水含有量
は、0.08%であり、2−メチルプロパノ−ルの純度
は99.8%以上であった。釜残は、仕込み重量に対し
て15%であった。この蒸留における2−メチルプロパ
ノ−ル回収率(水含有量0.08%)は、79%であっ
た。得られた釜残の発熱挙動を示差熱量計(島津製作所
製)を用い、窒素雰囲気下にて測定したところ、250
℃までに発熱ピ−クは観察されなかった。
【0026】(回収2−メチルプロパノ−ルを用いたリ
ン−バナジウム化合物の合成)上記で蒸留回収した2−
メチルプロパノ−ルを用いて、上記の実施例1と同様に
してリン−バナジウム化合物を製造した。
【0027】(反応試験例)上記で初めに合成したリン
−バナジウム化合物(製造例1)と、回収アルコールを
用いて合成したリン−バナジウム化合物(製造例2)
を、各々窒素雰囲気下,550℃で焼成後,14〜24
メッシュの粒径に成型した触媒を用いて,触媒活性を試
験した。石英製反応管に触媒を1cc充填し、n−ブタ
ン濃度4モル%の空気混合ガスを,GHSV1000H
-1の速度で通過させて400℃で反応を実施した。約
20時間経過後、反応管内の温度を350〜500℃の
範囲で調整し、反応状態を調べた。反応管出口ガスをサ
ンプリングして,オンライン接続したガスクロマトグラ
フにより生成物の分析を実施した。得られた結果を以下
の表−1に示す。回収した2−メチルプロパノ−ルを用
いて製造したリン−バナジウム化合物から得た製造例2
の触媒は、新しい2−メチルプロパノ−ルを使用して製
造した製造例1の触媒と比較して、反応成績にほとんど
変化がないことがわかる。
【0028】
【表1】
【0029】実施例2 実施例1で初めに合成したリン−バナジウム化合物を濾
過した後の反応液(リン酸濃度1.43%)250g中
にハイドロタルサイト(商品名「キョ−ワド1000」
(協和化学工業製))3.5gを添加、加熱・還流し
た。還流開始30分後と4時間後の液をサンプリング
し、リン酸濃度を測定したところ0.10%と0.03
%であった。ハイドロタルサイト添加量を7.0gとし
て同様の実験を繰り返した。還流開始30分後の液中の
リン酸濃度は、0.02%未満と検出限界以下であっ
た。該液を実施例1と同様に蒸留を行ったが、得られた
釜残において発熱ピ−クは観察されなかった。また、実
施例1と同様に回収したアルコールを用いリン−バナジ
ウム化合物を合成し、次いで、触媒化して反応試験を実
施しが反応成績が良好であった。
【0030】比較例1 実施例1において、リン酸除去工程を省略し、リン−バ
ナジウム化合物を濾過した後の反応液(リン酸濃度1.
43%)蒸留原料液とし、実施例1と同様に蒸留を行な
った。得られた釜残の発熱挙動を示差熱量計を用い、窒
素雰囲気下にて測定したところ、195℃付近から発熱
が始まり、約230℃にピ−クを有する大きな発熱ピ−
クが観察された。
【0031】
【発明の効果】本発明のリン−バナジウム化合物の製造
方法によれば、製造に使用した炭素数3〜5のアルコ−
ルを安全にかつ安価に回収でき、また、これを再度製造
に使用することができる。従って、リン−バナジウム化
合物を安価に製造することができる。また、リン−バナ
ジウム化合物を再現性良く、製造することができる。本
発明により得られたリン−バナジウム化合物を活性化し
た触媒は、炭素数4の炭化水素、特に飽和のブタンを選
択的に酸化して無水マレイン酸を製造する反応に適して
いる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01B 25/00 - 25/46

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リン酸及び5価のバナジウム化合物を、
    炭素数3〜5のアルコ−ルを含有する溶媒中で反応させ
    てリン−バナジウム化合物を製造する方法において、
    (a)リン酸及び5価のバナジウム化合物を、炭素数3
    〜5のアルコ−ルを含有する溶媒中で反応させてリン−
    バナジウム化合物を合成し、(b)該リン−バナジウム
    化合物を反応液より分離し、(c)一方、リン−バナジ
    ウム化合物を分離した後の反応液中のリン酸を、吸着剤
    によりリン酸濃度1.0%以下まで吸着、除去し、
    (d)該液を蒸留して炭素数3〜5のアルコ−ルを回収
    し、(e)該アルコ−ルを工程(a)で循環使用する、
    ことを特徴とするリン−バナジウム化合物の製造方法。
  2. 【請求項2】 溶媒として、2−メチルプロパノ−ルと
    ベンジルアルコ−ルの混合液を使用することを特徴とす
    る請求項1の製造方法。
  3. 【請求項3】 リン酸の吸着剤として、ハイドロタルサ
    イトを使用することを特徴とする請求項1または請求項
    2の製造方法。
  4. 【請求項4】 蒸留回収した炭素数3〜5のアルコ−ル
    中の水分濃度が5%以下であることを特徴とする請求項
    1ないし請求項3のいずれかの製造方法。
  5. 【請求項5】 合成したリン−バナジウム化合物を炭素
    数3〜5のアルコ−ルで洗浄し、該洗浄液から炭素数3
    〜5のアルコ−ルを蒸留回収する工程を含むことを特徴
    とする請求項1ないし請求項4のいずれかの製造方法。
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