JP3644998B2 - ベンジリデン誘導体の結晶の選択的取得方法 - Google Patents

ベンジリデン誘導体の結晶の選択的取得方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、次の式(1)で表される(E)−5−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)ベンジリデン−2−エチル−1,2−イソチアゾリジン−1,1−ジオキシド(以下「本化合物」という)の結晶のうち、I型結晶を選択的に取得する方法に関する。本発明に係る(E)−5−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)ベンジリデン−2−エチル−1,2−イソチアゾリジン−1,1−ジオキシドは、抗炎症剤として極めて有用である。
【0002】
【化1】
Figure 0003644998
【0003】
【従来の技術】
本化合物は、公知化合物であって、ラット腹腔細胞におけるLTB4 産生阻害作用、ラットカラゲニン足浮腫抑制作用、及び、胃粘膜障害形成阻害作用を有し、抗炎症作用剤として有用であることが既に公知の化合物である(特開平6−211819号公報64欄以下)。
特開平6−211819号公報21欄の記載によれば、このものは融点135〜137℃を有する物質とされている。
【0004】
しかしながら、このものは、その後の単離精製過程において、2つの異なる結晶構造を有することが判った。複数の結晶構造の存在は、本化合物のE型/Z型アイソマーの存在に基づくものではなく、E型アイソマーである本化合物の多形現象によるものである。
【0005】
一般に、結晶が複数存在する場合には、より不安定な結晶は、保存中に、より安定な結晶に転移することがある。また、異なる結晶は、融点、X線回折結果、IR分析結果、熱分析結果等の物理恒数が異なるので、同一物質の同定のためには、単一の結晶を取得する必要がある。
【0006】
上述のように、本化合物は極めて有用な薬理効果を有しているが、このものが異なる物理恒数を有する複数の結晶の混合物である場合には、その混合比率により当然に混合物の物理恒数が変化し、生体内挙動の探索、毒性及び安全性の確認等に大きな弊害が起こることが極めて容易に推定される。また、本化合物が、より安定性の低い結晶である場合には、生体内において、より安定性の高い結晶への転移の可能性があり、その場合に物理恒数が変化するので、同様の弊害が起こる危険がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本化合物を医薬品として活用する場合に、二つの結晶を完全に単離し、より安定な結晶として取得することができなければ、医薬品として自在に活用することができなかった。
上記に鑑み、本発明は、本化合物の結晶をより安定な単一の結晶として取得することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、(E)−5−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)ベンジリデン−2−エチル−1,2−イソチアゾリジン−1,1−ジオキシドの、より安定な結晶を取得するにあたり、(E)−5−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)ベンジリデン−2−エチル−1,2−イソチアゾリジン−1,1−ジオキシドをアルコール系溶媒に溶解又は懸濁し、攪拌しながら晶析させるところにある。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明に係る本化合物は、例えば、特開平6−211819号公報19欄以下に記載の方法等により製造することができる。
上記本化合物の結晶のうち、より安定なものをI型、より不安定なものをII型とすると、これらは、後述するように、X線回折、IR及び熱分析の値がそれぞれ異なり、明確に区別することができる。
【0010】
本発明の方法においては、まず本化合物をアルコール系溶媒に添加して溶解又は懸濁させる。上記アルコール系溶媒としては特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール系溶媒が好ましい。また、操作性から考えると、上記アルコール系溶媒は相当量の水を含んでいても良い。
上記アルコール系溶媒に添加するにあたって、本化合物を完全に溶解させてもよいし懸濁状態のままでもよい。
【0011】
本発明においては、本化合物をアルコール系溶媒に添加した後、このものを攪拌する。攪拌することなく、静置したまま晶析させると、結晶の転移が完全には起こらず、目的とするI型結晶を選択的に得ることができない。上記攪拌は、通常、振とうによる方法、攪拌棒による方法、攪拌羽根による方法等があるが、本発明においては、すりつぶし効果が大きい回転子による攪拌が好適に適用される。
【0012】
上記攪拌の時間は、通常の攪拌時間である0.5〜10時間で充分であるが、2〜5時間がより好ましい。上記攪拌温度は、0〜30℃、特に室温が好ましい。
本発明において溶解とは、飽和又は過飽和で溶解させることを意味する。
【0013】
本発明においては、上記攪拌をしながら、目的物を晶析させる。上記晶析にあたっては、通常の方法に従って、種晶を添加することが好ましいが、種晶を添加しなくとも、本発明の目的には特に支障が生じることはない。
上記晶析は、攪拌中に析出させるために、できるだけ少量の溶媒に加温溶解又は懸濁させ、徐々に冷却する等、溶媒量、温度等の条件を適宜選択するとよい。
【0014】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0015】
実施例1
IRで確認したI型結晶0.5gとIRで確認したII型結晶0.5gとを、エタノール5mlに懸濁して種晶なしの条件で室温で5時間回転子攪拌した。これを濾過して692mgのI型結晶を得た。
【0016】
実施例2
実施例1と同様にして、II型結晶1gをエタノール3mlに加温溶解して種晶なしの条件で室温で4時間回転子攪拌した。これを濾過して797mgのI型結晶を得た。
【0017】
実施例3
実施例1と同様にして、II型結晶1gをエタノール5mlに懸濁して種晶なしの条件で室温で4時間回転子攪拌した。これを濾過して725mgのI型結晶を得た。
【0018】
実施例4
実施例1と同様にして、II型結晶1gをメタノール5mlに懸濁して種晶なしの条件で室温で30分回転子攪拌した。これを濾過して594mgのI型結晶を得た。
【0019】
実施例5
実施例1と同様にして、II型結晶1gをイソプロピルアルコール5mlに懸濁して種晶なしの条件で室温で5時間回転子攪拌した。これを濾過して750mgのI型結晶を得た。
【0020】
実施例6
実施例1と同様にして、I型結晶1gをエタノール5mlに懸濁してII型結晶を種晶として加えて室温で5時間回転子攪拌した。これを濾過して855mgのI型結晶を得た。
【0021】
比較例1
実施例1と同様にして、II型結晶1gをエタノール5mlに加温溶解して種晶なしの条件で室温で静置した。2時間後に析出結晶を濾過して745mgのII型結晶を得た。
【0022】
比較例2
実施例1と同様にして、I型結晶1gをエタノール5mlに加温溶解して種晶なしの条件で室温で静置した。2時間後に析出結晶を濾過して780mgのII型結晶を得た。
【0023】
比較例3
実施例1と同様にして、I型結晶0.5gとII型結晶0.5gとをエタノール5mlに加温溶解して種晶なしの条件で室温で静置した。2時間後に析出結晶を濾過して675mgのII型結晶を得た。
【0024】
比較例4
実施例1と同様にして、II型結晶1gをトルエン5mlに懸濁して種晶なしの条件で室温で5時間回転子攪拌した。これを濾過して621mgのII型結晶を得た。
【0025】
I型結晶の物性を以下に示す。
粉末X線回折図を図1に示す。
図3に示すように、熱分析(DSC)において113.8℃に転移による吸熱ピーク、159.6℃に融解による吸熱ピークが認められる。
図5に示すように、IR(ヌジョール)において3608cm-1にシャープな吸収があり、1643、1595cm-1に吸収がある。
【0026】
II型結晶の物性を以下に示す。
粉末X線回折図を図2に示す。
図4に示すように、熱分析(DSC)において160.5℃に融解による吸熱ピークが認められる。
図6に示すように、IR(ヌジョール)において3540cm-1にブロードの吸収があり、1643、1595、1576cm-1に吸収がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本化合物のI型結晶の粉末X線回折の図である。縦軸は回折強度を表し、横軸は2θを表す。
【図2】本化合物のII型結晶の粉末X線回折の図である。縦軸は回折強度を表し、横軸は2θを表す。
【図3】本化合物のI型結晶の熱分析(DSC)の図である。縦軸は吸熱(MW)を表し、横軸は温度(℃)を表す。
【図4】本化合物のII型結晶の熱分析(DSC)の図である。縦軸は吸熱(MW)を表し、横軸は温度(℃)を表す。
【図5】本化合物のI型結晶のIR(ヌジョール)の図である。縦軸は透過度(%)を表し、下の横軸は波数(cm-1)を表す。
【図6】本化合物のII型結晶のIR(ヌジョール)の図である。縦軸は透過度(%)を表し、下の横軸は波数(cm-1)を表す。

Claims (2)

  1. (E)−5−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)ベンジリデン−2−エチル−1,2−イソチアゾリジン−1,1−ジオキシドをアルコール系溶媒に溶解又は懸濁し、攪拌しながら晶析させることを特徴とする(E)−5−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)ベンジリデン−2−エチル−1,2−イソチアゾリジン−1,1−ジオキシドのI型結晶の選択的取得方法。
  2. アルコール系溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール又はイソプロパノールである請求項1記載の選択的取得方法。
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