JP3644660B2 - コンクリート離型剤組成物及びその使用方法 - Google Patents
コンクリート離型剤組成物及びその使用方法 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はコンクリート離型剤組成物及びその使用方法に関し、更に詳しくはコンクリート表面の仕上がり性、離型性、防錆性、型枠ノロ防止性、作業性及び貯蔵安定性に優れたコンクリート離型剤組成物及びその使用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、コンクリート離型剤として要求される性能は、
1.離型力に優れていること
2.コンクリート表面仕上がりが良好であること
3.貯蔵安定性が良好であること
4.不快な臭気が無いこと
5.使用上、安全性の高いこと
6.経済性の高いこと
7.作業性が良好であること
等が挙げられる。
【0003】
一般に、コンクリート離型剤はベースオイルに動植物油、鉱物油等を使用し、これに脂肪酸,界面活性剤,ワックス等何種類かの添加剤を混合して提供される油性型と、ベースオイルに何種類かの添加剤と乳化剤(界面活性剤)を混合し使用に際して水で希釈して(もしくは予め水で希釈して)提供されるエマルション型に大別される。
【0004】
従来の油性タイプの長所としては、▲1▼離型力に優れている、▲2▼型枠へのカスの付着が少ない、▲3▼型枠の掃除が簡単、▲4▼型枠が錆にくい等が挙げられ、短所としては、▲1▼製品に気泡が多い、▲2▼油やけがある、▲3▼危険物であり作業環境が悪い等が挙げられる。又、従来のエマルション型の長所としては、▲1▼外観が白色に仕上がる、▲2▼製品に気泡が出来にくい、▲3▼油やけが起こりにくい、▲4▼作業環境がよい等が挙げられるものの、短所としては、▲1▼離型力が悪い、▲2▼貯蔵安定性が悪い、▲3▼カスが多く掃除が困難である、▲4▼型枠が錆易い等が挙げられる。
【0005】
このように、油性型、エマルション型にはそれぞれ一長一短があり、コンクリート製品の製造物、製造環境等により油性型、エマルション型の単独使用か、もしくは併用されている。しかしながら、最近ではコンクリート製品の美観性、環境問題、経済性等の観点から、エマルション型(O/W型,W/O型)離型剤に対するニーズが高まっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
近年、コンクリート構造物の大型化、複雑化が進む中でコンクリート製品に対する耐久性、美観性等を含めた技術力の向上が求められ、それに伴いコンクリート離型剤に対する性能も非常に高い品質のものが要求されている。しかし、従来の離型剤、特にエマルション型離型剤では、上記に示したエマルション型離型剤の短所、即ち型枠へのカスの付着が多く掃除が困難であること、離型力の悪さ、型枠への錆発生及び貯蔵安定性の全てに優れた性能を具備していないことから、生産効率が低下したり、コンクリート製品の品質が低下したりする問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、コンクリート離型剤に要求される性能、即ち、離型性、型枠残存ノロ防止、コンクリート表面の仕上がり性(気泡防止及び色焼け防止)、作業性、並びに貯蔵安定性の全てに優れた性能を有する安全性に富んだエマルション型コンクリート離型剤組成物及びその使用方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記性能を満たすエマルション型コンクリート離型剤の開発について鋭意研究した結果、所定の油脂又は鉱物油に乳化剤としてHLB価が相異なる二種類のノニオン界面活性剤を使用し、これに特定量のカチオン界面活性剤を配合した場合には油膜強化、残存ノロ防止として効果的に働くこと、水置換型防錆剤(環状アミンエトキシレート)と相溶剤(例えばシリコン)を併用することによって更に性能が向上すること、そして、このようにして調製された混合物に水を加えホモジナイザーを用いて微細なエマルションにすることにより貯蔵安定性に優れている一方、型枠に塗布すると直ちにエマルションが破壊され、強固な油性塗膜を形成することを見出して本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、(a)ベースオイルとして常温で固体又は半固体状であって、上昇融点(基準油脂分析試験法による)が20〜60℃の油脂と常温で液体の油脂との組み合わせによる混合油脂又は鉱物油12〜40重量%、(b)乳化剤としてHLB値が相異なるノニオン界面活性剤を混合してHLBを6.0〜14.0に調整したノニオン界面活性剤1.0〜7重量%、(c)乳化助剤と油膜強化剤としてカチオン界面活性剤0.3〜6重量%、(d)水置換型防錆剤として環状アミンエトキシレート0.2〜6重量%を含み、残余が水で全体を100重量%とし、この組成物にホモジナイザーによる分散処理を施して0.1〜10μmに微粒子化したことを特徴とするO/Wエマルション型コンクリート離型剤組成物である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のエマルション型コンクリート離型剤組成物は、従来のエマルション型コンクリート離型剤の長所を実質的に損なわず短所を全て解決したものであって
以下、項目別に順次詳細に説明する。
【0011】
▲1▼ 離型力の向上
本発明におけるベースオイル(油類)は、常温で固体又は半固体状であって、上昇融点(基準油脂分析試験法による)が20℃〜60℃の油脂と常温で液状の油脂との組み合わせによる混合油脂が提供されるが、ベースオイルを混合油にすることによって、ベースオイルが常温で液状の油脂のみのものより油の展着性が良好になり離型力が向上する。又、常温で固体又は半固体状の油脂のみでは離型剤を型枠に塗布した場合膜厚が厚層になり、離型剤の均一なぬれを阻害し油やけ及び部分的な付着等の欠点を生ずる。混合油脂の組み合わせにおいては、離型性、油やけ、乳化安定度等を考慮し、常温で固体又は半固体状の油脂を少なくとも10重量%以上含有するように配合した方が好ましい。混合油脂の添加量が12重量%未満であると、離型剤の油膜が薄層となりすぎて了い油膜が損傷し十分なと離型力が得られない。又、同様に添加量が40重量%を越えると十分な離型力を保持しているにも拘らず、余分な離型剤が残存してしまいノロ等の発生原因となったり、膜厚が厚層になったりして表面仕上り性において油やけ、気泡発生等の欠点を生じ、あわせて経済効果も悪くなる。
【0012】
常温で固体又は半固体状の油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、やし油、牛脂、各種油脂の硬化油等が挙げられる。又、常温で液状の油脂としては、例えば、大豆油、ナタネ油、こめ油、サンフラワー油、アマニ油及びこれらのボイル油、微水添加油等が挙げられ、常温で固体又は半固体状の油脂と常温で液状の油脂の1種又は2種以上の混合物が挙げられる。
【0013】
これらの混合油脂を用いることによりエマルションを不安定にさせ型枠に対し強固な油膜を形成し、コンクリート打設時や種々のバイブレーターによる油膜の損傷が起こらず強い離型性を発揮する。又、鉱物油、例えば灯油、スピンドル油、マシン油等を使用することによっても同様に離型力を保持することができる。離型剤組成物に占める混合油脂又は鉱物油の含有量は12〜40重量%が適当である。
【0014】
本発明において使用する界面活性剤は、殆どのコンクリート製品は製造工程の途中で蒸気養生を受けること、又、コンクリート製品はアルカリ度が高いことから、エステル結合の部分が蒸気や強アルカリによる加水分解を受けやすく、油膜の損傷、カスの発生等を生じやすいと考えられるために加水分解を受けにくいエーテル結合やアミド結合又はアミン化合物等の中から環境問題を考えた上で極力、生分解性に優れているものを選定したものである。
【0015】
エマルション型コンクリート離型剤の油膜強化剤として、高級脂肪酸、金属石けんの添加が効果ありとする、特公昭58−8602号公報で開示されているが、脂肪酸、金属石けん等はコンクリート中のカルシウム塩と反応し、型枠内面にいわゆるノロ等の反応カスを生成して固着し、掃除が困難である等の欠点がある。本発明に於いては、かかる高級脂肪酸、金属石けんを配合せずとも、効果的に油膜を保持することができる。油膜強化としては、それぞれの物質のもつイオン化傾向に着眼することにある。工場で使用されるコンクリートの型枠は殆どが鉄製(鋼製)型枠である。鉄はマイナスに帯電するので、カチオン界面活性剤を使用することにより油の吸着性が向上し、油膜強化の助剤として働き、その際エマルションが破壊され強固な油膜を形成する。又、型枠に対して油の吸着が優れることから、防錆性能も付加できる。
【0016】
好適なカチオン界面活性剤は、下記一般式(3)にて表される第一級ないし第三級アミン型カチオン界面活性剤及び下記一般式(4)にて表される第四級アンモニウム型カチオン界面活性剤から選択することができる。又、カチオン界面活性剤の強度が弱いものについては、有機酸、無機酸を併用する。カチオン界面活性剤は両性界面活性剤例えば、ベタイン型あるいはアミノ酸型を包含する。
【0017】
【化8】
[但し、RはC6〜C30のアルキル基又はアルケニル基、R1,R3,R4は水素原子,C1〜C30のアルキル基又はアルケニル基又は次の一般式Xを示し、
【0018】
【化9】
(但し、AはC1〜C4のアルキレン基、mは1〜50を示す)
R2はエチレン基又はプロピレン基であり、nは0〜6を示す]
【0019】
【化10】
[但し、RはC6〜C30のアルキル基又はアルケニル基、R1,R2,R4,R5,R6はC1〜C30のアルキル基又はアルケニル基又は次の一般式Zを示し、
【0020】
【化11】
(但し、AはC1〜C4のアルキレン基、mは1〜50を示す)
[R3はエチレン基又はプロピレン基であり、YはCl-,CH3SO4 -,ClO4 -等の陰イオン、nは0〜6を示す]
【0021】
一般式(3)表示のカチオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオクタデシルアミン(EO2〜30モル付加物)、ヒドロオキシエチレンデシルアミン(EO1モル付加物)、ポリオキシエチレン牛脂アミン(EO2〜30モル付加物)、ポリオキシエチレン牛脂アルキルプロピレンジアミン(EO2〜20モル付加物)、ポリオキシエチレン脂肪酸アミンエーテル(EO2〜20モル付加物、ヤシアルキルジメルアミン、オレイルアミン、ジオレイルアミン等が挙げられる。
【0022】
又、一般式(4)表示のカチオン界面活性剤としては、例えば、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルイミダゾリウムクロライド、テトラデシルアミンアセテート、ジメチルヤシアルキルベタイン、ラウリルアミノプロピオン酸メチル、ジメチルヤシアルキルベタイン等が挙げられる。
【0023】
▲2▼ 貯蔵安定性の向上
貯蔵安定性は界面活性剤、即ち乳化剤の選択が基本的大きな要因である。但し、離型剤としての性能を損なわない範囲で且つ性能を向上させるべき種類、添加量、組み合わせを選択することにある。即ち、本発明はHLB値の相異なる(HLB=1〜6,HLB=7〜16)ノニオン界面活性剤を混合してHLB値を6.0〜14.0に調整したものを、乳化に対して必要最小限に(1.0〜7重量%)添加し、更にエマルションの貯蔵安定性向上を計るためにカチオン界面活性剤を特定量(0.3〜6重量%)添加することを特徴としている。
【0024】
ノニオン界面活性剤としては、下記一般式(1)、(2)で表されるアルキル又はアルケニル置換フェノールアルキレンオキサイド付加物又は高級アルコールアルキレンオキサイド付加物が好適に使用される。
【0025】
【化12】
(但し、RはC6〜C30のアルキル基又はアルケニル基、nは1〜30の数を示す)
【0026】
【化13】
(但し、RはC6〜C30のアルキル基又はアルケニル基、nは1〜30の数を示す)
【0027】
一般式(1)表示のノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO2〜30モル付加物)、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO2〜30モル付加物)、ポリオキシエチレンデシルフェニルエーテル(EO2〜30モル付加物)、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル(EO2〜30モル付加物)等が挙げられる。又、一般式(2)表示のノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンセチルエーテル(EO2〜30モル付加物)、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(EO2〜30モル付加物)、ポリオキシエチレンドデシルエーテル(EO2〜30モル付加物)、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(EO2〜30モル付加物)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO2〜30モル付加物)、ポリオキシエチレンラノリンアルコールエーテル(EO2〜30モル付加物)、ポリオキシアリキレンアルキルエーテル(EO2〜30モル付加物)等が挙げられる。
【0028】
乳化剤は添加量が多い程安定性に寄与するが、他方、油膜の耐水性を低下させ離型性を悪くし又、コンクリートの水和反応に影響を及ぼし、カスの発生、著しくは一部硬化不良を起こす可能性がある等の欠点を生ずる。
【0029】
貯蔵安定性には粒子の大きさも起因する。それぞれの粒径は細かい程良いとされるが、0.1μm未満であるとブラウン運動が増して合一してしまう傾向があるので離型剤としては0.1〜10μm、好ましくは0.2〜5μm程度が良い。但し、粒度分布は比較的バラツキが少なく粒径が均一の方が望ましい。本発明品であるコンクリート離型剤組成物の粒子を微細にする目的でホモジナイザーを用いて均一に微粒子化することであり、その際なるべく空気を巻き込まないようにし温度管理を行いながら加温することが推奨される。しかしながら、ホモジナイザーを用いても、界面活性剤の選択及び添加量が不十分で且つ乳化条件が整なわないと、粒径が10〜30μmであり粒度分布が広く均一でないエマルションが得られる場合があるが、このものは経時変化及び5〜50℃温度変化によるサイクル試験での安定性は得られず貯蔵安定性が悪い。従来のエマルション型離型剤では使用前に水で希釈するタイプが主流で乳化剤を過度に使用しても、常温における通常攪拌が多いので粒度分布が不均一で且つ粒径が粗いため、水で希釈後の貯蔵安定性は悪い。
【0030】
▲3▼ カスの抑制
カスの発生は化学反応、物理反応等種々の要因が挙げられる。コンクリート組成物はセメントの水和反応により硬化し、水酸化カルシウム等を生成する。型枠とコンクリートの境界に存在するのがコンクリート離型剤であるが、前述したようにカルシウム等と反応してしまう添加剤はカスを発生させる恐れがあるため、その反応を極力抑制しなければならない。本発明のコンクリート離型剤組成物におけるカスの抑制は、カチオン界面活性剤を使用することににより実証できる。但しカチオン界面活性剤は添加量を考慮し、エマルションのPHを7〜10、好ましくは7.5〜9にすることにより弱アルカリ性とする。エマルションのPHが10を越えると組成物の乳化を阻害し、貯蔵安定性が非常に悪くなり、又、手あれ等が起こる可能性があり作業環境が悪くなる。カスの抑制にはコンクリート離型剤の膜厚も起因する。本発明のコンクリート離型剤組成物は、ホモジナイザーを用いて得られたエマルションであり、粒径は0.2〜10μm、好ましくは0.2〜5μmに調整して型枠に塗布した場合、単粒子又は、単粒子の複層膜厚が2〜10μm、好ましくは2〜8μmの溥層であるため、界面張力も低く必要以上の離型剤が残痕せず、離型力を保持しながらカスの発生を抑え、合わせて油やけも防止する。従来のコンクリート離型剤にほとんど使用されている、油膜強化剤として優れている脂肪酸等は酸であるために反応を起こすことから、カスの発生の要因となるため、エマルション型離型剤において添加量を極力抑制するか、もしくは全く使用しない方がカスの抑制には望ましい。
【0031】
▲4▼ 防錆性の向上
本発明のコンクリート離型剤組成物は、カチオン界面活性剤を使用することにより防錆性能を保持するが、さらに防錆性の向上を計るために水置換型防錆剤として環状アミンエトキシレート防錆剤更に必要に応じて気化性防錆剤例えば脂肪酸アミンを添加することにより防錆性を高めることができるのみならず、エマルション型離型剤の乾燥後の再乳化を阻止し離型力の保持、油膜の安定性を向上させることができる。
【0032】
環状アミンエトキシレートは、下記一般式(5)にて表すことができるが、例えば、「ラミプルーフC−2」(商品名、第一工業製薬社製)等が好ましく使用することができる。
【0033】
【化14】
(但し、Xは、環状アミン残基、nは1〜4の数を示す)
環状アミン残基としては、例えば、シクロヘキシルアミン残基等が挙げられる。
【0034】
又、本発明のコンクリート離型剤組成物に従来のコンクリート離型剤に配合されている防錆剤、防腐剤、チキソトロピック剤、増粘剤、消泡剤等を用いることができる。
【0035】
水を加えて加温(40〜60℃程度)下にホモジナイザーを用いて乳化させて調整したエマルションコンクリート離型剤組成物は、用途により水、好ましくは軟水で1〜5倍に希釈して使用する。これにより、コンクリート製品の表面仕上がり性を向上させるための油脂膜厚を保持するとともに経済性を向上し得ることなる。
【0036】
本組成物のコンクリート型枠への塗布方法は、スプレー,刷毛塗り,どぶづけ,モップ掛け,ローラー法等が採用される。
【0037】
本発明で得られるエマルション型コンクリート離型剤組成物は、貯蔵安定性に優れるとともに型枠に塗布されると直ちにエマルションが破壊され、強固な塗膜を形成する特徴を持つ。
【0038】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。なお、実施例及び比較例において「部」は「重量部」を意味する。
【0039】
実施例1
油脂としてパーム油75重量%−パームオレイン油25重量%からなる固体油(上昇融点33℃〜40℃)14部と液状のナタネ油6部との混合油脂に乳化剤としてポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(HLB 12)2.0部〔日本油脂社製,「ノニオンNS202S」HLB 5.7;25重量%、同社製,「ノニオンNS212」HLB 14.1;75重量%〕、カチオン界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルアミン2.5部(日本油脂社製,「ナイミーンT2−202」)を加え、防錆剤として脂肪酸アミン化合物0.5部(キレスト社製,「キレスコートZB」)、水置換型防錆剤として環状アミンエトキシレート0.5部(第一工業製薬社製,「ラミプルーフC−2」),消泡剤として消泡シリコーン0.1部(東芝シリコーン社製,「TSA730」)を加え攪拌溶解し、次いで水74.4部を加え混合液温を27℃〜30℃にしてからホモミキサー(特殊機械化工業社製)のジャケット温度を45℃〜55℃で温度管理を行ない、この組成物をホモミキサーを用いて乳化して、所定のエマルション型組成物を得た。これを水にて4倍に希釈したものを用いて性能評価を行った。この組成物の性能評価は、離型性、型枠残存ノロの有無、コンクリート表面の仕上がりにおける気泡の有無及び着色の有無、防錆製、及び離型剤の貯蔵安定性について行った。この試験結果を[表2−(1)],[表3−(1)]に示す。
【0040】
実施例2
実施例1において、カチオン界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルアミン2.0部(日本油脂社製,「ナイミーンDT−203」)と牛脂アルキルメチルアンモニウムクロライド0.5部(日本油脂社製,「ニッサンカチオンABT2−500」)〕を使用した以外はベースオイル並びに他の添加剤は実施例1と同一のものを用いて[表1−(1)]に示す配合量をもって同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて4倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(1)],[表3−(1)]に示す。
【0041】
実施例3
実施例1において、乳化剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル〔日本油脂社製,「ノニオンK−201」(HLB 3.6)〕0.8部とポリオキシエチレンオレイルエーテル〔日本油脂社製,「ノニオンE−215」(HLB 14.2)〕2.2部との2種類からなる混合物(HLB 12.1)を使用した以外はベースオイル並びに他の添加剤は実施例1と同一のものを用いて[表1−(1)]に示す配合量をもって同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて2倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(1)],[表3−(1)]に示す。
【0042】
実施例4
実施例1において、混合油脂の代わりに鉱物油としてマシン油70重量%−スピンドル油30重量%からなる混合油15部を使用した以外は、他の添加剤は実施例1と同一のものを用いて[表1−(1)]に示す配合量をもって同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて4倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(1)],[表3−(1)]に示す。
【0043】
実施例5
鉱物油としてマシン油70重量%−スピンドル油30重量%からなる混合油25部、カチオン界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルアミン3.0部〔日本油脂社製,「ナイミーンL−201」;75重量%、同社製,「ナイミーンF−215」;75重量%〕及び乳化剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル(HLB 7.4)4.0部〔日本油脂社製,「ノニオンK−201」(HLB3.6);70重量%、同社製,「ノニオンK−220」(HLB 16.2);30重量%〕を使用した以外は、他の添加剤は実施例1と同一のものを用いて[表1−(1)]に示す配合量をもって同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて4倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(1)],[表3−(1)]に示す。
【0044】
実施例6
実施例1において、ベースオイルとしてやし油65重量%−ラード35重量%からなる固体油(上昇融点29℃〜36℃)10部と液状のヒマシ油15部との混合油脂を使用した以外は、他の添加剤は実施例2と同一のものを用いて[表1−(1)]に示す配合量をもって同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水て4倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(1)],[表3−(1)]に示す。
【0045】
実施例7
実施例6において、カチオン界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルアミンエーテル2.0部(第1工業製薬社製,「カラゾールWLM56」を使用した以外は、他の添加剤は実施例1と同一のものを用いて[表1−(1)]に示す配合量をもって同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて2倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(1)],[表3−(1)]に示す。
【0046】
実施例8
実施例1において、カチオン界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルアミン3.2部(日本乳化剤社製,「Newco 145」)とジメチルヤシアルキルベタイン1.3部(日本油脂社製,「ニッサンアノンBF」)を使用した以外は、他の添加剤は実施例1と同一のものを用いて[表1−(1)]に示す配合量をもって同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて2倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(1)],[表3−(1)]に示す。
【0047】
実施例9
実施例1において、相溶剤としてシリコン油1.0部(東芝シリコーン社製,「TSF4440」)を使用した以外はベースオイル並びに他の添加剤は実施例1と同一のものを用いて[表1−(1)]に示す配合量をもって同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて4倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(1)],[表3−(1)]に示す。
【0048】
比較例1
実施例1において、カチオン界面活性剤を全く添加しない以外は、同一のベースオイル並びに添加剤を用いて[表1−(2)]に示す配合量をもって、同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて4倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(2)],[表3−(2)]に示す。
【0049】
比較例2
実施例1において、水置換型防錆剤の環状アミンエトキシレートを全く添加しない以外は、同一のベースオイル並びに添加剤を用いて[表1−(2)]に示す配合量をもって、同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて4倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(2)],[表3−(2)]に示す。
【0050】
比較例3
実施例5において、カチオン界面活性剤を全く添加しない以外は同一のベースオイル並びに添加剤を用いて[表1−(2)]に示す配合量をもって、同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて4倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(2)],[表3−(2)]に示す。
【0051】
比較例4
実施例6において、カチオン界面活性剤を全く添加しない以外は同一のベースオイル並びに添加剤を用いて[表1−(2)]に示す配合量をもって、同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて4倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(2)],[表3−(2)]に示す。
【0052】
比較例5
実施例7において、水置換型防錆剤の環状アミンエトキシレートを全く添加しない以外は、同一のベースオイル並びに添加剤を用いて[表1−(2)]に示す配合量をもって、同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて2倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(2)],[表3−(2)]に示す。
【0053】
比較例6
実施例1において、ベースオイルとしてパーム油75重量%−パームオレイン油25重量%からなる固体油(上昇融点33℃〜40℃)0.4部と液状のナタネ油7.6部との混合油脂を使用した以外は他の添加剤は実施例1と同一のものを用いて[表1−(2)]に示す配合量をもって同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて2倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(2)],[表3−(2)]に示す。
【0054】
比較例7
実施例1において、ベースオイルとしてパーム油75重量%−パームオレイン油25重量%からなる固体油(上昇融点33℃〜40℃)8.75部と液状のナタネ油41.25部との混合油脂を使用した以外は他の添加剤は実施例1と同一のものを用いて[表1−(2)]に示す配合量をもって同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて4倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(2)],[表3−(2)]に示す。
【0055】
比較例8
実施例1において、カチオン界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルアミン9.0部(日本油脂社製,「ナイミーンT2−202」)を使用した以外はベースオイル並びに他の添加剤は実施例1と同一のものを用いて[表1−(2)]に示す配合量をもって同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて4倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(2)],[表3−(2)]に示す。
【0056】
比較例9
実施例1において、乳化剤としてポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(HLB 12)9.0部(日本油脂社製,「ノニオンNS202S」HLB 5.7;25重量%と同社製「ノニオンNS212」HLB 14.1;75重量%の混合物)を使用した以外はベースオイル並びに他の添加剤は実施例1と同一のものを用いて[表1−(2)]に示す配合量をもって同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて4倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。[表2−(2)],[表3−(2)]に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
[表2−(1),(2)],[表3−(1),(2)]の試験結果から明らかように、実施例No.1〜9はいずれも、離型性、型枠残存ノロ、表面仕上がり性、防錆性及び貯蔵安定性に優れるとともに、コンクリート製品の大小に拘わらず非常に良好な結果を与える。特に、従来のエマルション型離型剤では成し得なかった型枠残存ノロについて、型枠にノロが全く残存せず作業性が大幅に向上し、コンクリート製品側においてもコンクリートカスの付着は全くみられず、コンクリート製品が非常に美麗であることが判った。
【0061】
これに対して、比較例No.1,No.3,No.4のように本発明品に使用したカチオン界面活性剤を除外すると離型性が悪く、並びに型枠残存ノロが多く残り、コンクリート表面仕上がり性において気泡が多い。比較例No.2,No.5のように本発明品に使用した水置換型防錆剤環状アミンエトキシレートを除外すると離型性並びに防錆性が悪くなる。比較例No.6のように混合油脂の配合量が12重量%未満であると、離型性並びに貯蔵安定性が悪くなる。比較例No.7のように混合油脂の配合量が40重量%を越えると離型性、型枠残存ノロ、コンクリート表面仕上がり性並びに貯蔵安定性が悪くなる。比較例No.8のようにカチオン界面活性剤の配合量が6重量%を越えると型枠残存ノロ並びにコンクリート表面仕上がり性が悪くなる。比較例No.9のようにノニオン界面活性剤の配合量が7重量%を越えると当該カチオン界面活性剤を使用していても離型性、型枠残存ノロ及びコンクリート表面仕上がり性が悪いことが理解されよう。
【0062】
上記離型剤のテスト結果を示す[表2−(1)]及び[表2−(2)]は、1200×1400×2000の共同溝の鋼製型枠に、所定の離型剤を塗布してコンクリートを打ち込み型枠振動機を3000Vpmで1分間振動を行い、60℃で5時間蒸気養生後脱型して行った。又[表3−(1)]及び[表3−(2)]は、300×700×2000のU字溝の鋼製型枠に、所定の離型剤を塗布してコンクリートを打ち込みテーブルバイブレーターで2分間振動を行い、さらに棒バイブレーターで1分30秒間振動を行い、55℃で6時間蒸気養生後脱型して行った。尚、各項目の判定基準を下記に記す。
【0063】
【0064】
【発明の効果】
以上のように、本発明のエマルション型コンクリート離型剤組成物は、コンクリート製品の製造に要求される性能、即ち、離型性、コンクリート表面の仕上がり性、作業性、並びに貯蔵安定性の全てに優れた性能を発揮する。従って、これらのコンクリート離型剤組成物を用いればコンクリート製品の高品質を維持できるし、生産効率は低下しない。
【発明の属する技術分野】
本発明はコンクリート離型剤組成物及びその使用方法に関し、更に詳しくはコンクリート表面の仕上がり性、離型性、防錆性、型枠ノロ防止性、作業性及び貯蔵安定性に優れたコンクリート離型剤組成物及びその使用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、コンクリート離型剤として要求される性能は、
1.離型力に優れていること
2.コンクリート表面仕上がりが良好であること
3.貯蔵安定性が良好であること
4.不快な臭気が無いこと
5.使用上、安全性の高いこと
6.経済性の高いこと
7.作業性が良好であること
等が挙げられる。
【0003】
一般に、コンクリート離型剤はベースオイルに動植物油、鉱物油等を使用し、これに脂肪酸,界面活性剤,ワックス等何種類かの添加剤を混合して提供される油性型と、ベースオイルに何種類かの添加剤と乳化剤(界面活性剤)を混合し使用に際して水で希釈して(もしくは予め水で希釈して)提供されるエマルション型に大別される。
【0004】
従来の油性タイプの長所としては、▲1▼離型力に優れている、▲2▼型枠へのカスの付着が少ない、▲3▼型枠の掃除が簡単、▲4▼型枠が錆にくい等が挙げられ、短所としては、▲1▼製品に気泡が多い、▲2▼油やけがある、▲3▼危険物であり作業環境が悪い等が挙げられる。又、従来のエマルション型の長所としては、▲1▼外観が白色に仕上がる、▲2▼製品に気泡が出来にくい、▲3▼油やけが起こりにくい、▲4▼作業環境がよい等が挙げられるものの、短所としては、▲1▼離型力が悪い、▲2▼貯蔵安定性が悪い、▲3▼カスが多く掃除が困難である、▲4▼型枠が錆易い等が挙げられる。
【0005】
このように、油性型、エマルション型にはそれぞれ一長一短があり、コンクリート製品の製造物、製造環境等により油性型、エマルション型の単独使用か、もしくは併用されている。しかしながら、最近ではコンクリート製品の美観性、環境問題、経済性等の観点から、エマルション型(O/W型,W/O型)離型剤に対するニーズが高まっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
近年、コンクリート構造物の大型化、複雑化が進む中でコンクリート製品に対する耐久性、美観性等を含めた技術力の向上が求められ、それに伴いコンクリート離型剤に対する性能も非常に高い品質のものが要求されている。しかし、従来の離型剤、特にエマルション型離型剤では、上記に示したエマルション型離型剤の短所、即ち型枠へのカスの付着が多く掃除が困難であること、離型力の悪さ、型枠への錆発生及び貯蔵安定性の全てに優れた性能を具備していないことから、生産効率が低下したり、コンクリート製品の品質が低下したりする問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、コンクリート離型剤に要求される性能、即ち、離型性、型枠残存ノロ防止、コンクリート表面の仕上がり性(気泡防止及び色焼け防止)、作業性、並びに貯蔵安定性の全てに優れた性能を有する安全性に富んだエマルション型コンクリート離型剤組成物及びその使用方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記性能を満たすエマルション型コンクリート離型剤の開発について鋭意研究した結果、所定の油脂又は鉱物油に乳化剤としてHLB価が相異なる二種類のノニオン界面活性剤を使用し、これに特定量のカチオン界面活性剤を配合した場合には油膜強化、残存ノロ防止として効果的に働くこと、水置換型防錆剤(環状アミンエトキシレート)と相溶剤(例えばシリコン)を併用することによって更に性能が向上すること、そして、このようにして調製された混合物に水を加えホモジナイザーを用いて微細なエマルションにすることにより貯蔵安定性に優れている一方、型枠に塗布すると直ちにエマルションが破壊され、強固な油性塗膜を形成することを見出して本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、(a)ベースオイルとして常温で固体又は半固体状であって、上昇融点(基準油脂分析試験法による)が20〜60℃の油脂と常温で液体の油脂との組み合わせによる混合油脂又は鉱物油12〜40重量%、(b)乳化剤としてHLB値が相異なるノニオン界面活性剤を混合してHLBを6.0〜14.0に調整したノニオン界面活性剤1.0〜7重量%、(c)乳化助剤と油膜強化剤としてカチオン界面活性剤0.3〜6重量%、(d)水置換型防錆剤として環状アミンエトキシレート0.2〜6重量%を含み、残余が水で全体を100重量%とし、この組成物にホモジナイザーによる分散処理を施して0.1〜10μmに微粒子化したことを特徴とするO/Wエマルション型コンクリート離型剤組成物である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のエマルション型コンクリート離型剤組成物は、従来のエマルション型コンクリート離型剤の長所を実質的に損なわず短所を全て解決したものであって
以下、項目別に順次詳細に説明する。
【0011】
▲1▼ 離型力の向上
本発明におけるベースオイル(油類)は、常温で固体又は半固体状であって、上昇融点(基準油脂分析試験法による)が20℃〜60℃の油脂と常温で液状の油脂との組み合わせによる混合油脂が提供されるが、ベースオイルを混合油にすることによって、ベースオイルが常温で液状の油脂のみのものより油の展着性が良好になり離型力が向上する。又、常温で固体又は半固体状の油脂のみでは離型剤を型枠に塗布した場合膜厚が厚層になり、離型剤の均一なぬれを阻害し油やけ及び部分的な付着等の欠点を生ずる。混合油脂の組み合わせにおいては、離型性、油やけ、乳化安定度等を考慮し、常温で固体又は半固体状の油脂を少なくとも10重量%以上含有するように配合した方が好ましい。混合油脂の添加量が12重量%未満であると、離型剤の油膜が薄層となりすぎて了い油膜が損傷し十分なと離型力が得られない。又、同様に添加量が40重量%を越えると十分な離型力を保持しているにも拘らず、余分な離型剤が残存してしまいノロ等の発生原因となったり、膜厚が厚層になったりして表面仕上り性において油やけ、気泡発生等の欠点を生じ、あわせて経済効果も悪くなる。
【0012】
常温で固体又は半固体状の油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、やし油、牛脂、各種油脂の硬化油等が挙げられる。又、常温で液状の油脂としては、例えば、大豆油、ナタネ油、こめ油、サンフラワー油、アマニ油及びこれらのボイル油、微水添加油等が挙げられ、常温で固体又は半固体状の油脂と常温で液状の油脂の1種又は2種以上の混合物が挙げられる。
【0013】
これらの混合油脂を用いることによりエマルションを不安定にさせ型枠に対し強固な油膜を形成し、コンクリート打設時や種々のバイブレーターによる油膜の損傷が起こらず強い離型性を発揮する。又、鉱物油、例えば灯油、スピンドル油、マシン油等を使用することによっても同様に離型力を保持することができる。離型剤組成物に占める混合油脂又は鉱物油の含有量は12〜40重量%が適当である。
【0014】
本発明において使用する界面活性剤は、殆どのコンクリート製品は製造工程の途中で蒸気養生を受けること、又、コンクリート製品はアルカリ度が高いことから、エステル結合の部分が蒸気や強アルカリによる加水分解を受けやすく、油膜の損傷、カスの発生等を生じやすいと考えられるために加水分解を受けにくいエーテル結合やアミド結合又はアミン化合物等の中から環境問題を考えた上で極力、生分解性に優れているものを選定したものである。
【0015】
エマルション型コンクリート離型剤の油膜強化剤として、高級脂肪酸、金属石けんの添加が効果ありとする、特公昭58−8602号公報で開示されているが、脂肪酸、金属石けん等はコンクリート中のカルシウム塩と反応し、型枠内面にいわゆるノロ等の反応カスを生成して固着し、掃除が困難である等の欠点がある。本発明に於いては、かかる高級脂肪酸、金属石けんを配合せずとも、効果的に油膜を保持することができる。油膜強化としては、それぞれの物質のもつイオン化傾向に着眼することにある。工場で使用されるコンクリートの型枠は殆どが鉄製(鋼製)型枠である。鉄はマイナスに帯電するので、カチオン界面活性剤を使用することにより油の吸着性が向上し、油膜強化の助剤として働き、その際エマルションが破壊され強固な油膜を形成する。又、型枠に対して油の吸着が優れることから、防錆性能も付加できる。
【0016】
好適なカチオン界面活性剤は、下記一般式(3)にて表される第一級ないし第三級アミン型カチオン界面活性剤及び下記一般式(4)にて表される第四級アンモニウム型カチオン界面活性剤から選択することができる。又、カチオン界面活性剤の強度が弱いものについては、有機酸、無機酸を併用する。カチオン界面活性剤は両性界面活性剤例えば、ベタイン型あるいはアミノ酸型を包含する。
【0017】
【化8】
[但し、RはC6〜C30のアルキル基又はアルケニル基、R1,R3,R4は水素原子,C1〜C30のアルキル基又はアルケニル基又は次の一般式Xを示し、
【0018】
【化9】
(但し、AはC1〜C4のアルキレン基、mは1〜50を示す)
R2はエチレン基又はプロピレン基であり、nは0〜6を示す]
【0019】
【化10】
[但し、RはC6〜C30のアルキル基又はアルケニル基、R1,R2,R4,R5,R6はC1〜C30のアルキル基又はアルケニル基又は次の一般式Zを示し、
【0020】
【化11】
(但し、AはC1〜C4のアルキレン基、mは1〜50を示す)
[R3はエチレン基又はプロピレン基であり、YはCl-,CH3SO4 -,ClO4 -等の陰イオン、nは0〜6を示す]
【0021】
一般式(3)表示のカチオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオクタデシルアミン(EO2〜30モル付加物)、ヒドロオキシエチレンデシルアミン(EO1モル付加物)、ポリオキシエチレン牛脂アミン(EO2〜30モル付加物)、ポリオキシエチレン牛脂アルキルプロピレンジアミン(EO2〜20モル付加物)、ポリオキシエチレン脂肪酸アミンエーテル(EO2〜20モル付加物、ヤシアルキルジメルアミン、オレイルアミン、ジオレイルアミン等が挙げられる。
【0022】
又、一般式(4)表示のカチオン界面活性剤としては、例えば、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルイミダゾリウムクロライド、テトラデシルアミンアセテート、ジメチルヤシアルキルベタイン、ラウリルアミノプロピオン酸メチル、ジメチルヤシアルキルベタイン等が挙げられる。
【0023】
▲2▼ 貯蔵安定性の向上
貯蔵安定性は界面活性剤、即ち乳化剤の選択が基本的大きな要因である。但し、離型剤としての性能を損なわない範囲で且つ性能を向上させるべき種類、添加量、組み合わせを選択することにある。即ち、本発明はHLB値の相異なる(HLB=1〜6,HLB=7〜16)ノニオン界面活性剤を混合してHLB値を6.0〜14.0に調整したものを、乳化に対して必要最小限に(1.0〜7重量%)添加し、更にエマルションの貯蔵安定性向上を計るためにカチオン界面活性剤を特定量(0.3〜6重量%)添加することを特徴としている。
【0024】
ノニオン界面活性剤としては、下記一般式(1)、(2)で表されるアルキル又はアルケニル置換フェノールアルキレンオキサイド付加物又は高級アルコールアルキレンオキサイド付加物が好適に使用される。
【0025】
【化12】
(但し、RはC6〜C30のアルキル基又はアルケニル基、nは1〜30の数を示す)
【0026】
【化13】
(但し、RはC6〜C30のアルキル基又はアルケニル基、nは1〜30の数を示す)
【0027】
一般式(1)表示のノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO2〜30モル付加物)、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO2〜30モル付加物)、ポリオキシエチレンデシルフェニルエーテル(EO2〜30モル付加物)、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル(EO2〜30モル付加物)等が挙げられる。又、一般式(2)表示のノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンセチルエーテル(EO2〜30モル付加物)、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(EO2〜30モル付加物)、ポリオキシエチレンドデシルエーテル(EO2〜30モル付加物)、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(EO2〜30モル付加物)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO2〜30モル付加物)、ポリオキシエチレンラノリンアルコールエーテル(EO2〜30モル付加物)、ポリオキシアリキレンアルキルエーテル(EO2〜30モル付加物)等が挙げられる。
【0028】
乳化剤は添加量が多い程安定性に寄与するが、他方、油膜の耐水性を低下させ離型性を悪くし又、コンクリートの水和反応に影響を及ぼし、カスの発生、著しくは一部硬化不良を起こす可能性がある等の欠点を生ずる。
【0029】
貯蔵安定性には粒子の大きさも起因する。それぞれの粒径は細かい程良いとされるが、0.1μm未満であるとブラウン運動が増して合一してしまう傾向があるので離型剤としては0.1〜10μm、好ましくは0.2〜5μm程度が良い。但し、粒度分布は比較的バラツキが少なく粒径が均一の方が望ましい。本発明品であるコンクリート離型剤組成物の粒子を微細にする目的でホモジナイザーを用いて均一に微粒子化することであり、その際なるべく空気を巻き込まないようにし温度管理を行いながら加温することが推奨される。しかしながら、ホモジナイザーを用いても、界面活性剤の選択及び添加量が不十分で且つ乳化条件が整なわないと、粒径が10〜30μmであり粒度分布が広く均一でないエマルションが得られる場合があるが、このものは経時変化及び5〜50℃温度変化によるサイクル試験での安定性は得られず貯蔵安定性が悪い。従来のエマルション型離型剤では使用前に水で希釈するタイプが主流で乳化剤を過度に使用しても、常温における通常攪拌が多いので粒度分布が不均一で且つ粒径が粗いため、水で希釈後の貯蔵安定性は悪い。
【0030】
▲3▼ カスの抑制
カスの発生は化学反応、物理反応等種々の要因が挙げられる。コンクリート組成物はセメントの水和反応により硬化し、水酸化カルシウム等を生成する。型枠とコンクリートの境界に存在するのがコンクリート離型剤であるが、前述したようにカルシウム等と反応してしまう添加剤はカスを発生させる恐れがあるため、その反応を極力抑制しなければならない。本発明のコンクリート離型剤組成物におけるカスの抑制は、カチオン界面活性剤を使用することににより実証できる。但しカチオン界面活性剤は添加量を考慮し、エマルションのPHを7〜10、好ましくは7.5〜9にすることにより弱アルカリ性とする。エマルションのPHが10を越えると組成物の乳化を阻害し、貯蔵安定性が非常に悪くなり、又、手あれ等が起こる可能性があり作業環境が悪くなる。カスの抑制にはコンクリート離型剤の膜厚も起因する。本発明のコンクリート離型剤組成物は、ホモジナイザーを用いて得られたエマルションであり、粒径は0.2〜10μm、好ましくは0.2〜5μmに調整して型枠に塗布した場合、単粒子又は、単粒子の複層膜厚が2〜10μm、好ましくは2〜8μmの溥層であるため、界面張力も低く必要以上の離型剤が残痕せず、離型力を保持しながらカスの発生を抑え、合わせて油やけも防止する。従来のコンクリート離型剤にほとんど使用されている、油膜強化剤として優れている脂肪酸等は酸であるために反応を起こすことから、カスの発生の要因となるため、エマルション型離型剤において添加量を極力抑制するか、もしくは全く使用しない方がカスの抑制には望ましい。
【0031】
▲4▼ 防錆性の向上
本発明のコンクリート離型剤組成物は、カチオン界面活性剤を使用することにより防錆性能を保持するが、さらに防錆性の向上を計るために水置換型防錆剤として環状アミンエトキシレート防錆剤更に必要に応じて気化性防錆剤例えば脂肪酸アミンを添加することにより防錆性を高めることができるのみならず、エマルション型離型剤の乾燥後の再乳化を阻止し離型力の保持、油膜の安定性を向上させることができる。
【0032】
環状アミンエトキシレートは、下記一般式(5)にて表すことができるが、例えば、「ラミプルーフC−2」(商品名、第一工業製薬社製)等が好ましく使用することができる。
【0033】
【化14】
(但し、Xは、環状アミン残基、nは1〜4の数を示す)
環状アミン残基としては、例えば、シクロヘキシルアミン残基等が挙げられる。
【0034】
又、本発明のコンクリート離型剤組成物に従来のコンクリート離型剤に配合されている防錆剤、防腐剤、チキソトロピック剤、増粘剤、消泡剤等を用いることができる。
【0035】
水を加えて加温(40〜60℃程度)下にホモジナイザーを用いて乳化させて調整したエマルションコンクリート離型剤組成物は、用途により水、好ましくは軟水で1〜5倍に希釈して使用する。これにより、コンクリート製品の表面仕上がり性を向上させるための油脂膜厚を保持するとともに経済性を向上し得ることなる。
【0036】
本組成物のコンクリート型枠への塗布方法は、スプレー,刷毛塗り,どぶづけ,モップ掛け,ローラー法等が採用される。
【0037】
本発明で得られるエマルション型コンクリート離型剤組成物は、貯蔵安定性に優れるとともに型枠に塗布されると直ちにエマルションが破壊され、強固な塗膜を形成する特徴を持つ。
【0038】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。なお、実施例及び比較例において「部」は「重量部」を意味する。
【0039】
実施例1
油脂としてパーム油75重量%−パームオレイン油25重量%からなる固体油(上昇融点33℃〜40℃)14部と液状のナタネ油6部との混合油脂に乳化剤としてポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(HLB 12)2.0部〔日本油脂社製,「ノニオンNS202S」HLB 5.7;25重量%、同社製,「ノニオンNS212」HLB 14.1;75重量%〕、カチオン界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルアミン2.5部(日本油脂社製,「ナイミーンT2−202」)を加え、防錆剤として脂肪酸アミン化合物0.5部(キレスト社製,「キレスコートZB」)、水置換型防錆剤として環状アミンエトキシレート0.5部(第一工業製薬社製,「ラミプルーフC−2」),消泡剤として消泡シリコーン0.1部(東芝シリコーン社製,「TSA730」)を加え攪拌溶解し、次いで水74.4部を加え混合液温を27℃〜30℃にしてからホモミキサー(特殊機械化工業社製)のジャケット温度を45℃〜55℃で温度管理を行ない、この組成物をホモミキサーを用いて乳化して、所定のエマルション型組成物を得た。これを水にて4倍に希釈したものを用いて性能評価を行った。この組成物の性能評価は、離型性、型枠残存ノロの有無、コンクリート表面の仕上がりにおける気泡の有無及び着色の有無、防錆製、及び離型剤の貯蔵安定性について行った。この試験結果を[表2−(1)],[表3−(1)]に示す。
【0040】
実施例2
実施例1において、カチオン界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルアミン2.0部(日本油脂社製,「ナイミーンDT−203」)と牛脂アルキルメチルアンモニウムクロライド0.5部(日本油脂社製,「ニッサンカチオンABT2−500」)〕を使用した以外はベースオイル並びに他の添加剤は実施例1と同一のものを用いて[表1−(1)]に示す配合量をもって同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて4倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(1)],[表3−(1)]に示す。
【0041】
実施例3
実施例1において、乳化剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル〔日本油脂社製,「ノニオンK−201」(HLB 3.6)〕0.8部とポリオキシエチレンオレイルエーテル〔日本油脂社製,「ノニオンE−215」(HLB 14.2)〕2.2部との2種類からなる混合物(HLB 12.1)を使用した以外はベースオイル並びに他の添加剤は実施例1と同一のものを用いて[表1−(1)]に示す配合量をもって同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて2倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(1)],[表3−(1)]に示す。
【0042】
実施例4
実施例1において、混合油脂の代わりに鉱物油としてマシン油70重量%−スピンドル油30重量%からなる混合油15部を使用した以外は、他の添加剤は実施例1と同一のものを用いて[表1−(1)]に示す配合量をもって同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて4倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(1)],[表3−(1)]に示す。
【0043】
実施例5
鉱物油としてマシン油70重量%−スピンドル油30重量%からなる混合油25部、カチオン界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルアミン3.0部〔日本油脂社製,「ナイミーンL−201」;75重量%、同社製,「ナイミーンF−215」;75重量%〕及び乳化剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル(HLB 7.4)4.0部〔日本油脂社製,「ノニオンK−201」(HLB3.6);70重量%、同社製,「ノニオンK−220」(HLB 16.2);30重量%〕を使用した以外は、他の添加剤は実施例1と同一のものを用いて[表1−(1)]に示す配合量をもって同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて4倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(1)],[表3−(1)]に示す。
【0044】
実施例6
実施例1において、ベースオイルとしてやし油65重量%−ラード35重量%からなる固体油(上昇融点29℃〜36℃)10部と液状のヒマシ油15部との混合油脂を使用した以外は、他の添加剤は実施例2と同一のものを用いて[表1−(1)]に示す配合量をもって同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水て4倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(1)],[表3−(1)]に示す。
【0045】
実施例7
実施例6において、カチオン界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルアミンエーテル2.0部(第1工業製薬社製,「カラゾールWLM56」を使用した以外は、他の添加剤は実施例1と同一のものを用いて[表1−(1)]に示す配合量をもって同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて2倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(1)],[表3−(1)]に示す。
【0046】
実施例8
実施例1において、カチオン界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルアミン3.2部(日本乳化剤社製,「Newco 145」)とジメチルヤシアルキルベタイン1.3部(日本油脂社製,「ニッサンアノンBF」)を使用した以外は、他の添加剤は実施例1と同一のものを用いて[表1−(1)]に示す配合量をもって同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて2倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(1)],[表3−(1)]に示す。
【0047】
実施例9
実施例1において、相溶剤としてシリコン油1.0部(東芝シリコーン社製,「TSF4440」)を使用した以外はベースオイル並びに他の添加剤は実施例1と同一のものを用いて[表1−(1)]に示す配合量をもって同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて4倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(1)],[表3−(1)]に示す。
【0048】
比較例1
実施例1において、カチオン界面活性剤を全く添加しない以外は、同一のベースオイル並びに添加剤を用いて[表1−(2)]に示す配合量をもって、同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて4倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(2)],[表3−(2)]に示す。
【0049】
比較例2
実施例1において、水置換型防錆剤の環状アミンエトキシレートを全く添加しない以外は、同一のベースオイル並びに添加剤を用いて[表1−(2)]に示す配合量をもって、同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて4倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(2)],[表3−(2)]に示す。
【0050】
比較例3
実施例5において、カチオン界面活性剤を全く添加しない以外は同一のベースオイル並びに添加剤を用いて[表1−(2)]に示す配合量をもって、同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて4倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(2)],[表3−(2)]に示す。
【0051】
比較例4
実施例6において、カチオン界面活性剤を全く添加しない以外は同一のベースオイル並びに添加剤を用いて[表1−(2)]に示す配合量をもって、同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて4倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(2)],[表3−(2)]に示す。
【0052】
比較例5
実施例7において、水置換型防錆剤の環状アミンエトキシレートを全く添加しない以外は、同一のベースオイル並びに添加剤を用いて[表1−(2)]に示す配合量をもって、同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて2倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(2)],[表3−(2)]に示す。
【0053】
比較例6
実施例1において、ベースオイルとしてパーム油75重量%−パームオレイン油25重量%からなる固体油(上昇融点33℃〜40℃)0.4部と液状のナタネ油7.6部との混合油脂を使用した以外は他の添加剤は実施例1と同一のものを用いて[表1−(2)]に示す配合量をもって同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて2倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(2)],[表3−(2)]に示す。
【0054】
比較例7
実施例1において、ベースオイルとしてパーム油75重量%−パームオレイン油25重量%からなる固体油(上昇融点33℃〜40℃)8.75部と液状のナタネ油41.25部との混合油脂を使用した以外は他の添加剤は実施例1と同一のものを用いて[表1−(2)]に示す配合量をもって同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて4倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(2)],[表3−(2)]に示す。
【0055】
比較例8
実施例1において、カチオン界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルアミン9.0部(日本油脂社製,「ナイミーンT2−202」)を使用した以外はベースオイル並びに他の添加剤は実施例1と同一のものを用いて[表1−(2)]に示す配合量をもって同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて4倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。その結果を[表2−(2)],[表3−(2)]に示す。
【0056】
比較例9
実施例1において、乳化剤としてポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(HLB 12)9.0部(日本油脂社製,「ノニオンNS202S」HLB 5.7;25重量%と同社製「ノニオンNS212」HLB 14.1;75重量%の混合物)を使用した以外はベースオイル並びに他の添加剤は実施例1と同一のものを用いて[表1−(2)]に示す配合量をもって同様な製造条件でエマルション型組成物を得た。これを水にて4倍に希釈したものを用いて実施例1と同様な評価試験を行った。[表2−(2)],[表3−(2)]に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
[表2−(1),(2)],[表3−(1),(2)]の試験結果から明らかように、実施例No.1〜9はいずれも、離型性、型枠残存ノロ、表面仕上がり性、防錆性及び貯蔵安定性に優れるとともに、コンクリート製品の大小に拘わらず非常に良好な結果を与える。特に、従来のエマルション型離型剤では成し得なかった型枠残存ノロについて、型枠にノロが全く残存せず作業性が大幅に向上し、コンクリート製品側においてもコンクリートカスの付着は全くみられず、コンクリート製品が非常に美麗であることが判った。
【0061】
これに対して、比較例No.1,No.3,No.4のように本発明品に使用したカチオン界面活性剤を除外すると離型性が悪く、並びに型枠残存ノロが多く残り、コンクリート表面仕上がり性において気泡が多い。比較例No.2,No.5のように本発明品に使用した水置換型防錆剤環状アミンエトキシレートを除外すると離型性並びに防錆性が悪くなる。比較例No.6のように混合油脂の配合量が12重量%未満であると、離型性並びに貯蔵安定性が悪くなる。比較例No.7のように混合油脂の配合量が40重量%を越えると離型性、型枠残存ノロ、コンクリート表面仕上がり性並びに貯蔵安定性が悪くなる。比較例No.8のようにカチオン界面活性剤の配合量が6重量%を越えると型枠残存ノロ並びにコンクリート表面仕上がり性が悪くなる。比較例No.9のようにノニオン界面活性剤の配合量が7重量%を越えると当該カチオン界面活性剤を使用していても離型性、型枠残存ノロ及びコンクリート表面仕上がり性が悪いことが理解されよう。
【0062】
上記離型剤のテスト結果を示す[表2−(1)]及び[表2−(2)]は、1200×1400×2000の共同溝の鋼製型枠に、所定の離型剤を塗布してコンクリートを打ち込み型枠振動機を3000Vpmで1分間振動を行い、60℃で5時間蒸気養生後脱型して行った。又[表3−(1)]及び[表3−(2)]は、300×700×2000のU字溝の鋼製型枠に、所定の離型剤を塗布してコンクリートを打ち込みテーブルバイブレーターで2分間振動を行い、さらに棒バイブレーターで1分30秒間振動を行い、55℃で6時間蒸気養生後脱型して行った。尚、各項目の判定基準を下記に記す。
【0063】
【0064】
【発明の効果】
以上のように、本発明のエマルション型コンクリート離型剤組成物は、コンクリート製品の製造に要求される性能、即ち、離型性、コンクリート表面の仕上がり性、作業性、並びに貯蔵安定性の全てに優れた性能を発揮する。従って、これらのコンクリート離型剤組成物を用いればコンクリート製品の高品質を維持できるし、生産効率は低下しない。
Claims (5)
- (a)ベースオイルとして常温で固体又は半固体状であって、上昇融点(基準油脂分析試験法による)が20〜60℃の油脂と常温で液体の油脂との組み合わせによる混合油脂又は鉱物油12〜40重量%、(b)乳化剤としてHLB値が相異なるノニオン界面活性剤を混合してHLBを6.0〜14.0に調整したノニオン界面活性剤1.0〜7重量%、(c)乳化助剤と油膜強化剤としてカチオン界面活性剤0.3〜6重量%、(d)水置換型防錆剤として環状アミンエトキシレート0.2〜6重量%を含み、残余が水で全体を100重量%とし、この組成物にホモジナイザーによる分散処理を施して0.1〜10μmに微粒子化したことを特徴とするO/Wエマルション型コンクリート離型剤組成物
- 前記カチオン界面活性剤が下記一般式(3)又は(4)で表される化合物である請求項1記載のO/Wエマルション型コンクリート離型剤組成物
R3はエチレン基又はプロピレン基であり、YはCl-,CH3SO4 -,ClO4 -等の陰イオン、nは0〜6を示す] - 請求項1記載のO/Wエマルション型コンクリート離型剤組成物を1〜5倍量の水に希釈し、これを型枠に塗布することを特徴とする該コンクリート離型剤組成物の使用方法
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