JP3641815B2 - せん断土槽 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は土砂等の各種物質の動的性質(挙動)を試験するための実験装置に関し、より詳細には現実により近い加振状態を再現できるせん断土槽に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のせん断土槽としては、例えば特開平5−281081号公報に開示されている。このせん断土槽は、周囲にベアリングを有する方形枠状のフレームを多段的に配置し、これらのフレーム群の周囲に立設した柱状部材の各水平ガイド溝に前記ベアリングを走行自在に嵌装して構成し、せん断土槽を載置した振動台で水平面内一方向(x方向又はy方向)に加振することで、各フレーム間を水平面内一方向(x方向又はy方向)の相対変位を許容する構造になっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記したせん断土槽にあっては次のような課題がある。
<イ> 実際の地震動は水平面内で多方向に作用するが、従来のせん断土槽は付与できる変位方向が水平面内一方向に限定され、現実に近い再現が困難なうえに、実験結果に対する信頼性も低い。
<ロ> せん断土槽の規模を大きくすると、フレームの変形防止の観点からフレームの肉厚を増す等して剛性を高める必要がある。
フレームの剛性を高めると慣性要因となるフレームの重量が増加し、土槽内の土砂の変形に悪影響を及ぼしてしまう。
<ハ> 又、方形枠状のフレーム間に複数の棒状ベアリングを同一方向に列設して介在し、棒状ベアリングの直交方向に水平面内一方向にせん断変形する構造のせん断土槽も提案されている。
このせん断土槽にあっては、棒状ベアリングの移動量はフレームの動きと同じであるため、実験中にベアリングが片側に寄ってしまい、繰り返して加振する場合、せん断土槽としての機能を喪失する。
【0004】
本発明は以上の点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、水平面内多方向の地震動を忠実に再現できるせん断土槽を提供することにある。
更に本発明の他の目的は、地盤の液状化試験や杭基礎構造物の地震時の挙動を正確に実験できる、せん断土槽を提供することにある。
更に本発明の他の目的は、慣性力の影響が小さく、詳細な実験が可能なせん断土槽を提供することにある。
【0005】
【問題点を解決するための手段】
本願の第1の本発明は、複数の閉鎖形の枠体を多段的に積層してなり閉鎖形の枠体の対向面間に全方向の移動を許容する球状ころを介挿したせん断土槽において、閉鎖形の枠体が、その躯体を軽量材で形成すると共に、この躯体の全面を補強層で覆って形成したことを特徴とする、せん断土槽である。本願の第2の本発明は、複数の閉鎖形の枠体を多段的に積層してなり、閉鎖形の枠体の対向面間に全方向の移動を許容する球状ころを介挿したせん断土槽において、球状ころに放射状に戻しばねを配設し、球状ころを元位置に復帰可能に構成したことを特徴とする、せん断土槽である。本願の第3の本発明は、第1または2の発明において、閉鎖形の枠体が平面円環形を呈するリング体であることを特徴とする、せん断土槽である。
【0006】
【発明の実施の形態1】
以下図1〜図4を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0007】
<イ>せん断土槽の全体構成
図1,図2にせん断土槽の一例を示す。平面円環形を呈するせん断土槽は複数のリング体1を多段的に積み重ね、各リング体1の板面間に複数の球状ころ2を介挿し、各リング体1の水平面多方向の相対移動を許容して構成されている。
筒状に積み上げたリング体1群の内側下部に底版3が設けられていると共に、リング体1群の内側にリング体1から分離独立した筒状の防水シート4が配設されている。
防水シート4の下部と底版3間は、漏水しないように止水処理が施されている。
【0008】
又、底版3には給排水するための複数の孔6が設けられている。この孔6は例えば底版3の下部に配設した弁付きの管が接続していて、弁の開閉操作によって給排水が可能な構造になっている。以下、各部について詳述する。
【0009】
<ロ>リング体
閉鎖形枠体であるリング体1は円環状を呈する枠体であって、すべてが同一寸法、同一構造に形成されている。
リング体1の素材を例示すると、図1に拡大して示すようにリング体1の躯体7を軽量な発泡スチロール等の軽量材で形成し、この躯体7の全面を硬質樹脂被膜等の補強層8で覆って形成すると、リング体1の強度と軽量化の両条件を満足できる。
リング体1は円環形を呈することが肝要であって、リング体1の素材については特には制約はなく、上記の他に公知の各種素材を使用できることは勿論である。
【0010】
<ハ>球状ころ
球状ころ2は上下のリング体1,1が水平面内の全方向へ向けた相対移動を許容するためのころで、例えば公知のスラスト軸受等を採用できる。
球状ころ2は図1に示すようにリング体1の表面(補強層8)間に介挿しても良いが、補強層8の耐摩耗性に不安がある場合は、図2,3に示すようにリング体1表面の一部に鋼板9を取り付け、この鋼板9,9間に介挿するようにしても良い。
【0011】
又、本発明はリング体1,1間に球状のころを介挿していることが基本的構成となるが、図2,3に示すように放射方向に配設した戻しばね10を接続しても良い。戻しばね10は実験終了後にせん断土槽を鉛直の筒体に戻す際に、各リング体1に対してすべての球状ころ2を図4のように元位置に復帰できる程度の小さなばね力を有するばねで、各ばね力がほぼ等しく設定されている。
戻しばね10の設置形態としては、引張状態又は圧縮状態又は無負荷状態のいずれかの状態で設置される。
尚、図3において符号11は鋼板9をリング体1に接合するボルトで、戻しばね10の一端を掛止する支軸としても機能する。
【0012】
【作用】
次にせん断土槽の使用方法について説明する。
水平面内のx,y方向と、鉛直面内のz方向及び夫々についての回転を加えた三次元6自由度の加振ができる公知の振動台に既述したとせん断土槽を載置する。 そしてせん断土槽内に実験対象である土砂等を投入して模型地盤を作成する。 模型地盤の土圧はせん断土槽を構成する各リング体1の内周面に均一に作用するため、模型地盤は柱状を維持する。
この状態で振動台を加振してせん断土槽に地震状態を再現する。
この加振はせん断土槽内の模型地盤に伝えられてせん断変形する。
【0013】
各リング体1の間に全方向の移動を許容する球状ころ2が介挿されていることから、各リング体1は模型地盤1のせん断変形に追随して相対移動する。図1の鎖線は模型地盤が図面右側へせん断変形したきの状態を示す。
このように模型地盤に水平面内多方向の加振を付与しても、リング体1が模型地盤に追従するので、模型地盤の例えば液状化現象を詳細に再現できる。
又、リング体1が円環形を呈するため、加振方向に位置するリング体1に模型地盤の変形力が作用しても、加振の逆方向に位置するリング体1の部位は模型地盤より抵抗力を受ける。そのためリング体1に作用する外力は打ち消される。
【0014】
又、リング体1群の慣性について考察すると、リング体1を断面積の割に軽量であるため、せん断土槽が大型であってもリング体1群による慣性力の影響はほぼ無視できる程度に小さい。
リング体1の慣性について考察すると、リング体1の密度は模型地盤の密度に比べて非常に小さいため、ひとつのリング体1の厚さ部分を考えると、加振中の慣性力は明らかに地盤の方が大きく、リング体1の慣性力が地盤の動きに及ぼす影響は無視できる程度に小さい。また球状ころ2の摩擦抵抗も小さいため、リング体1の変形は慣性力による模型地盤の変形にほぼ等しくなる。
【0015】
又、せん断土槽の変形に伴い、球状ころ2の位置は加振開始前と比べてずれている。したがって、球状ころ2上部のリング体1を持ち上げ、球状ころ2との間に隙間を形成すると、戻しばね10のばね力によって球状ころ2が初期の位置に復帰する。そのため、実験の繰り返しによって球状ころ2が偏寄する現象は起きない。
【0016】
【発明の実施の形態2】
以上はせん断土槽が平面円環形を呈する場合について説明したが、多角形であっても良い。この場合、せん断土槽を構成する各リング体1は多角形となることは勿論である。
【0017】
【発明の効果】
本発明は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<イ> せん断土槽を構成するリング体を軽量素材で形成することで、せん断土槽の慣性力の影響を小さくでき、詳細な実験が可能となると共に、解体組み立てが容易である。又、せん断土槽の大型化が可能である。
<ロ> せん断土槽を平面円環形に構成すると共に、各リング体の間に全方向の移動を許容する球状ころを介挿してあるので、水平面内多方向の加振に追従できる。そのため、これまで不可能とされていた水平面内多方向の加振実験が可能となる。
<ハ> 地震動を忠実に再現でき、地盤の液状化実験や杭基礎構造物等の地震時の挙動実験及び地盤と構造物の相互作用実験を従来より正確に行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る一部を省略したせん断土槽の説明図
【図2】 図1におけるII−IIの断面図
【図3】 図2におけるIII −III の断面図
【図4】 球状ころの平面図

Claims (3)

  1. 複数の閉鎖形の枠体を多段的に積層してなり閉鎖形の枠体の対向面間に全方向の移動を許容する球状ころを介挿したせん断土槽において、
    閉鎖形の枠体が、その躯体を軽量材で形成すると共に、この躯体の全面を補強層で覆って形成したことを特徴とする、
    せん断土槽。
  2. 複数の閉鎖形の枠体を多段的に積層してなり、閉鎖形の枠体の対向面間に全方向の移動を許容する球状ころを介挿したせん断土槽において、
    球状ころに放射状に戻しばねを配設し、球状ころを元位置に復帰可能に構成したことを特徴とする、
    せん断土槽。
  3. 請求項1または2において、閉鎖形の枠体が平面円環形を呈するリング体であることを特徴とする、せん断土槽。
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