JP3641361B2 - めっき厚調整用ガス噴射ノズル装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、連続的に溶融めっきされた金属帯のめっき厚を調整するガス噴射ノズル装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より金属帯、たとえば鋼帯に連続的に溶融めっきを施すときには、ガスワイピング法によってめっき付着量の制御が行われている。ガスワイピング法は、鋼帯に付着した過剰なめっき金属をガス噴射ノズルから噴射されるガスの圧力によって吹払する方法であり、これによってめっき付着量を予め定める値に制御することができるとともに、美麗な表面肌を得ることができる。このガスワイピング法を用いた場合、鋼帯の幅方向に延びるガス噴射ノズルの長さは、鋼帯の幅よりも長く構成されているので、鋼帯の存在しない部分については表裏のガスが緩衝して緩衝流が発生する。この緩衝流は、鋼帯の幅端部のワイピング効果を阻害するので、鋼帯の幅端部のめっき付着量が多くなる(以後、エッジオーバーコートと呼ぶ)という問題を引起こす。このため、鋼帯の幅端部に鋼帯幅に合わせて追従できる補助ノズルを設け、鋼帯の幅端部のみワイピングガス圧力を高くしてエッジオーバーコートを防止する方法が行われている。この方法では、めっき付着量が多くなるにつれて対応が困難になるという問題がある。
【0003】
また、他の方法としてガス噴射ノズルのノズル孔にテーパを形成して、ノズル孔の両端部の間隔を中央部よりも大きくし、両端部における噴射ガス流量を増大してエッジオーバーコートを防止する方法が行われている。この方法では、狭幅の鋼帯に適合するようにノズル孔にテーパを形成すると、広幅の鋼帯に対してはテーパが不適合であるので、幅中央部と幅端部とのめっき付着量差が大きくなり、幅方向の付着量分布が不均一になるという問題がある。このため、各鋼帯幅毎に適正なテーパを設計し、製造幅に応じて適正なテーパを有するガス噴射ノズルに交換する必要がある。この場合には、ノズル交換に長時間を要するので、操業を停止する必要があり、生産性が大幅に低下するという問題がある。このような従来からの問題を解消するために、下記に示す先行技術が開示されている。
【0004】
特公昭52−32330号公報は、過剰めっき金属の吹払用噴射ノズル装置の噴射開口部に関するものである。この公報には、噴射開口部を形成する上唇部と下唇部との間に唇片を設け、上唇部を上下方向に貫通して唇片に螺合するねじと、ねじに螺合するナットとを上唇部の長手方向に複数個設け、ねじとナットとによって唇片を上下方向に変位させ、唇片と下唇部との間に形成される圧力気体通過開口の間隔を調整可能にした噴射開口部の構成が開示されている。
【0005】
特公昭60−58785号公報は、連続溶融めっき装置のノズルヘッダに関するものである。この公報には、筒形ノズルヘッダの外周面に複数個のガス噴射ノズルを設け、筒形ノズルヘッダの回転と同時にガス噴射ノズルを回転し、複数個のガス噴射ノズルの中から1個のガス噴射ノズルを選択して用いるようにしたノズルヘッダの構成が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特公昭52−32330号公報に開示されている先行技術によれば、圧力気体通過開口の間隔を調整するねじとナットとが上唇部の長手方向、すなわち金属帯の幅方向に複数個設けられているので、金属帯の板幅が変化してもガス噴射ノズルを交換することなく、圧力気体通過開口の形状を調整することができる。その反面この先行技術では、金属帯の板幅に応じて複数のねじとナットとを調整する必要があるので、調整に長時間を要し、操業停止を余儀なくされるという問題がある。
【0007】
特公昭60−58785号公報に開示されている先行技術によれば、複数個のガス噴射ノズルが回転操作によって選択できるように構成されているので、操業を停止することなく、ガス噴射ノズルを交換することができる。その反面この先行技術では、筒形ノズルヘッダの外周面に設置できるガス噴射ノズルの個数に限界があるので、金属帯の板幅範囲全域にわたって最適なガス噴射ノズルを提供することができないという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、操業を停止することなく、短時間でガス噴射ノズルのノズル孔形状を最適形状に変更することのできるめっき厚調整用ガス噴射ノズル装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、溶融めっき金属の浴面上方で、浴中を通過してほぼ鉛直上方に搬送される金属帯の板面両側に、金属帯をはさんで対向して設けられる一対のガス噴射ノズルのノズル孔からガスを噴射して、金属帯にめっきされた過剰なめっき金属を吹払するめっき厚調整用ガス噴射ノズル装置において、
位置決め凸部または位置決め凹部のいずれか一方を有し、金属帯の幅方向に延びるノズル孔の一方の内面を形成するノズル本体と、
前記ノズル本体の位置決め凸部または位置決め凹部のいずれか一方に当接する位置決め凹部または位置決め凸部を有し、ノズル本体に着脱可能に挿入され、ノズル孔の他方の内面を形成するノズル孔調整片と、
ノズル孔調整片の位置決め凸部または位置決め凹部を、ノズル本体の位置決め凸部または位置決め凹部に押付ける押圧手段であって一の押圧手段による押圧力によってノズル孔調整片がその幅方向全体にわたって押圧される押圧手段とを含み、
前記押圧手段は、金属帯の幅方向に延びる先細状の楔片であって、
前記楔片は、ノズル本体とノズル孔調整片との間に着脱可能に挿入されることを特徴とするめっき厚調整用ガス噴射ノズル装置である。
【0010】
本発明に従えば、ノズル孔の他方の内面を形成するノズル孔調整片が着脱可能に挿入されているので、ノズル孔調整片を操業を停止させることなく交換することができる。また、形状の異なるノズル孔調整片を多数準備しておけば、金属帯の板幅に応じて最適なノズル孔調整片を選択することができるので、ノズル孔形状を最適形状に変更することができる。押圧手段は先細状の楔片であるので、簡単な押し・引きの操作によってノズル孔調整片をノズル本体に対して固定/開放することができる。したがって、短時間でノズル孔調整片の交換を行うことができる。一の押圧手段の押圧力によって、ノズル孔調整片はその幅方向全体にわたって押圧される。
【0013】
また本発明の前記楔片の基端部および先端部は、前記挿入状態でノズル本体の両端部から外方に突出しており、前記突出した楔片の先端部にはノズル孔調整片の着脱案内台が設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明に従えば、楔片の先端部近辺にはノズル孔調整片の着脱案内台が設けられているので、長尺のノズル孔調整片の着脱を円滑に行うことができる。したがって、さらに短時間でノズル孔調整片の交換を行うことができる。
【0015】
また本発明の前記押圧手段は、軸線と外周面との距離が周方向に沿って増減する偏心部材を備え、
偏心部材は、ノズル本体とノズル孔調整片との間に設けられ、軸線まわりに角変位可能であることを特徴とする。
【0016】
本発明に従えば、押圧手段は角変位可能な偏心部材を有する偏心装置であるので、簡単な角変位操作によってノズル孔調整片をノズル本体に対して固定/開放することができる。したがって、短時間でノズル孔調整片の交換を行うことができる。
【0017】
また本発明の前記ノズル本体は、
ノズル孔の上面を規定するノズル内面を有する上ノズル本体と、
位置決め凸部または位置決め凹部のいずれか一方を有し、かつ上ノズル本体と一体的に固定される下ノズル本体と、
上ノズル本体と下ノズル本体との相互の当接面間に介在され、各ノズル本体の材料よりも軟質な金属から成るシムとを含むことを特徴とする。
【0018】
本発明に従えば、ノズル本体が上下2つに分割され、上ノズル本体と下ノズル本体との間には、金属製シムが設けられているので、シムの厚みを調整することによってノズル孔の上下方向の間隔を予め定める値になるように調整することができる。また各ノズル本体よりも軟質な金属製シムが設けられているので、上ノズル本体と下ノズル本体とをボルトで締付けるときには、締付け力を接触面全域に均等化することができ、締付け後の上ノズル本体と下ノズル本体とのがたつきを防止することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施の一形態であるめっき厚調整用ガス噴射ノズル装置のガス噴射ノズルの構成を簡略化して示す側面図であり、図2は図1に示すガス噴射ノズルの平面図であり、図3は本発明の実施の一形態であるめっき厚調整用ガス噴射ノズル装置の構成を簡略化して示す側面図である。めっき厚調整用ガス噴射ノズル装置1は、同一の構成を有する一対のガス噴射ノズル3を含んで構成される。一対のガス噴射ノズル3は、溶融めっき金属、たとえば溶融亜鉛4の浴面上の同一位置で浴中を通過してほぼ鉛直上方に搬送される金属帯、たとえば鋼帯5をはさんで対向して設けられている。一対のガス噴射ノズル3は、鋼帯5の板面両側にそのノズル孔6からガスを噴射し、鋼帯5にめっきされた過剰な溶融亜鉛4を吹払してめっき厚、すなわち亜鉛付着量を調整する。噴射されるガスは、空気、窒素および燃焼排ガスなどであり、本実施の形態では空気が用いられる。
【0020】
ガス噴射ノズル3は、ノズル本体7と、ノズル孔調整片8と、押圧手段である楔片9とを含んで構成される。ノズル本体7は、ノズル孔6を境にして上下に分割されており、上ノズル本体10と下ノズル本体11とシム68とを含んで構成される。上ノズル本体10は、鋼帯5の幅方向(以後、幅方向と略称する)に延びる部材であり、その軸直角断面形状は大略的に嘴状である。上ノズル本体10の先端部13は、鋼帯5を臨んで設けられており、先端部13の第1下面14は水平面にほぼ平行に形成されている。第1下面14は、ノズル孔6の一方の内面、すなわちノズル孔6の上面を形成する。前記先端部13近辺の鋼帯5を臨む外面40は、鋼帯5に近付くにつれて下方に傾斜している。前記傾斜角度は、予め定める角度に設定される。
【0021】
上ノズル本体10には、前記第1下面14に連なる溝15と、ガス供給路16とが形成されている。溝15は、前記第1下面14に形成され、幅方向に延びており、後述のようにガス供給室を形成する。ガス供給路16は、上ノズル本体10の後端面18に形成されている切欠溝19と、前記溝15とを連通する連通孔であり、幅方向に間隔をあけて複数個形成されている。上ノズル本体10の後端部17の第2下面20は、水平面にほぼ平行に形成されており、前記第1下面14と同一面内に存在する。上ノズル本体10の後端部17には、上下方向に延びる第1ボルト挿通孔21と、水平方向に延びる第2ボルト挿通孔22とが形成されている。上ノズル本体10の幅方向両端部の端面には、図3に示すように端面カバー39が設けられている。
【0022】
図4は、図1に示す下ノズル本体11の構成を簡略化して示す斜視図である。下ノズル本体11は、幅方向に延びる部材であり、その軸直角断面形状は図1および図4に示すように大略的に嘴状である。下ノズル本体11の先端部23は、鋼帯5を臨んで設けられており、先端部23の上面である第1上面24は水平面にほぼ平行に形成されている。第1上面24は、後述のようにノズル孔調整片8の位置決め面を形成するので、以後、第1位置決め面24と呼ぶ。第1位置決め面24には、幅方向に延びる浅溝25が形成されている。
【0023】
下ノズル本体11の先端部23には、略V字状の位置決め凸部26が形成されており、前記先端部23と下ノズル本体11の後端部28との中間には幅方向に延びる嵌合溝29が形成されている。位置決め凸部26は、図4に示すように前記嵌合溝29内に突出しており、かつ幅方向に延びている。位置決め凸部26は、前記第1位置決め面24と、第2位置決め面27と、頭頂面30とを有し、第2位置決め面27は、鋼帯5に近付くにつれて下方に傾斜している。第1位置決め面24と、第2位置決め面27とのなす角度αは鋭角である。嵌合溝29の先端部23側第1側面33および前記頭頂面30は、鋼帯5の板面に対してほぼ平行になるように形成されている。これに対して、嵌合溝29の後端部28側第2側面34は、鋼帯5の板面に対して傾斜しており、その傾斜面は本実施の形態では鋼帯5の幅方向一端部から他端部、すなわち図2の上方から下方に向かうにつれて板面に近付くように形成されている。
【0024】
嵌合溝29の底面31は、水平面にほぼ平行に形成されている。下ノズル本体11の先端部23の鋼帯5を臨む外面41は、鋼帯5に近付くにつれて上方に傾斜している。前記傾斜角度は、予め定める角度に設定される。下ノズル本体11の後端部28には、上下方向に延びる第3ボルト挿通孔36と、水平方向に延びる第4ボルト挿通孔37とが幅方向に間隔をあけて複数個形成されている。第3ボルト挿通孔36は、前記第1ボルト挿通孔21と対応する位置に形成されている。下ノズル本体11の後端部28の第2上面35は、水平面にほぼ平行に形成されている。なお、シム68については後述する。
【0025】
図5は、図1に示すノズル孔調整片の構成を簡略化して示す斜視図である。ノズル孔調整片8は、幅方向に延びる部材であり、その軸直角断面形状は大略的にL字状である。ノズル孔調整片8の下部には、略V字状の位置決め凹部43が形成されている。位置決め凹部43は、前記第1位置決め面24に当接する第3位置決め面44と、前記第2位置決め面27に当接する第4位置決め面45と、谷底面51とを有している。前記第3位置決め面44は、ノズル孔調整片8の先端部46の第3下面であり、水平面にほぼ水平に形成されている。第4位置決め面45は、鋼帯5に近付くにつれて下方に傾斜している。第3位置決め面44と、第4位置決め面45とのなす角度は鋭角であって、かつ前記第1位置決め面24と第2位置決め面27とのなす角度αと同一である。したがって、ノズル孔調整片8は、位置決め凹部43および位置決め凸部26の対応する各位置決め面を相互に当接させて幅方向に摺動させることができる。またこれによって、図1に示すようにノズル孔調整片8を下ノズル本体11に挿入して装着させることができ、逆にノズル孔調整片8を下ノズル本体11から抜き出すことができる。摺動面が面であるので、摺動面の磨耗を低減することができる。さらにまた、第1位置決め面24に浅溝25が形成されているので、第1位置決め面24と第3位置決め面44とを均一に接触させることができる。
【0026】
ノズル孔調整片8の先端部46の第3上面47は、前記装着時にノズル孔6の他方の内面、すなわちノズル孔6の下面を形成する。前記第3上面47の形状については後述する。ノズル孔調整片8の先端部46の鋼帯5を臨む外面54は、鋼帯5に近付くにつれて上方に予め定める角度で傾斜している。この外面54は、前記下ノズル本体11の外面41とほぼ同一面内に存在する。ノズル孔調整片8の後端部48の第4上面49は、前記第3上面47よりも下方に段差をつけて形成されており、後述のようにガス供給室を形成する。前記第4上面49および前記後端部48の第4下面50は、水平面にほぼ平行に形成されている。位置決め凹部43の谷底面51、第4位置決め面45に連なる第3側面52およびノズル孔調整片8の後端部側第4側面53は、ともに鋼帯5の板面にほぼ平行に形成されている。ノズル孔調整片8の幅方向長さは、図2に示すように下ノズル本体11よりも長く形成されている。したがって、前記装着時のノズル孔調整片8は下ノズル本体11の幅両端部外方に突出している。
【0027】
前記位置決め凸部26および位置決め凹部43の寸法は、図1に示すように前記装着時に頭頂面30と谷底面51とが接触しないように、かつ第1側面33と第3側面52とが接触しないように、かつ嵌合溝29の底面31とノズル孔調整片8の第4下面50とが接触しないように設定される。このように、前記ノズル孔調整片8および下ノズル本体11は、前記対応する位置決め面のみで当接し、他の部分では接触しないように構成されているので、ノズル孔調整片8の位置決めを正確に行うことができる。
【0028】
図6は、鋼帯の板面から見たノズル孔の形状を示す正面図である。ノズル孔6は、幅方向すなわち図6の左右方向に細長く延びるガス噴射空隙であり、前述のようにノズル孔6の上面を規定する上ノズル本体10の第1下面14(以後、ノズル孔上面と呼ぶ)と、ノズル孔6の下面を規定するノズル孔調整片8の第3上面47(以後、ノズル孔下面と呼ぶ)とによって形成される。前記ノズル孔下面47の形状は平坦でなく、台形状に形成されている。すなわち、ノズル孔調整片8の幅方向両端部付近の領域E1およびE5は、水平面にほぼ平行な平坦面に形成されており、幅方向中央部の領域E3は、前記領域E1およびE5よりも上方で、かつ水平面にほぼ平行な平坦面に形成されている。これに対して、中間領域E2およびE4は幅方向中央に向かうにつれて上方に傾斜したテーパ面に形成されている。前述のように、ノズル孔上面14は水平面にほぼ平行に形成されているので、ノズル孔6の間隔は幅方向中央領域E3で最小間隔G1となり、幅方向両端部に向かうにつれて間隔が大きくなり、幅方向両端部付近の領域E1およびE5で最大間隔G2となる。前記各領域E1〜E5の区分けおよび最大間隔G2と最小間隔G1との差、換言すればテーパの勾配については、鋼帯5の板幅および溶融めっき金属の種類などに応じて予め設定される。
【0029】
図7は、図1に示す楔片の構成を簡略化して示す斜視図である。楔片9は、幅方向に延びる先細状の角形棒状体であり、ノズル孔調整片8の第4側面53に当接する第5側面55と、下ノズル本体11の嵌合溝29の第2側面34に当接する第6側面56と、前記嵌合溝29の底面31に当接する第5下面57と、第5上面58とを有する。第5側面55は、鋼帯5の板面にほぼ平行に形成されており、第5下面57および第5上面58は水平面にほぼ平行に形成されている。これに対して、第6側面56は幅方向一端部から他端部に向かうにつれて鋼帯5に近付くように傾斜している。第5側面55と第6側面56とのなす角度θは、前記嵌合溝29の第2側面34の板面に対する傾斜角と同一である。したがって、楔片9はノズル孔調整片8の第4側面53と、下ノズル本体11の第2側面34との間に着脱可能に挿入することができる。また、楔片9を挿入して幅方向他端部に向けて押し込み、第5側面55、第6側面56および第5下面57をともに対応する当接面に接触する状態にすれば、楔片9は楔効果によってノズル調整片8に鋼帯5の板面に垂直な方向の押圧力を付与することができる。この結果、ノズル調整片8を下ノズル本体11に前記位置決め凸部26および位置決め凹部43を介して確実に固定することができる。さらに楔片9を幅方向に引抜けば前記押圧力を開放することができるので、ノズル調整片8を容易に引出すことができる。このように、簡単な操作によってノズル孔調整片8の固定および開放を行うことができるので、短時間で迅速にノズル孔調整片8の交換を行うことができる。楔片9の第5上面58は、前記溝15およびノズル孔調整片8の第4上面49とともにガス供給室を形成する。
【0030】
楔片9の長さは、図2に示すように下ノズル本体11の長さよりも長く形成されている。したがって、前記挿入状態では楔片9の基端部60および先細の先端部61は、下ノズル本体11の幅方向両端部から外方に突出している。前記突出した楔片9の先端部61には、着脱案内台63が設けられており、着脱案内台63は固定ボルト64によって楔片9の下面57に取付けられている。楔片9の基端部60および先端部61には、楔片9の挿入および引抜き時に治具を係止する係止孔65がそれぞれ形成されている。なお、前記上ノズル本体10、下ノズル本体11、ノズル孔調整片8および楔片9は、いずれも同一鋼種の鋼材、たとえばクロムモリブデン鋼から成る。
【0031】
前記上ノズル本体10の第2下面20と、第2下面20に対応する当接面である下ノズル本体11の第2上面35との間には、図1に示すようにシム68が設けられている。シム68は、上ノズル本体10および下ノズル本体11よりも軟質な金属、たとえば黄銅から成る薄板である。このように、ノズル本体7が上下に分割され、上下ノズル本体10,11間にシム68が設けられているので、前記ノズル孔6の最小間隔G1を予め定める値に調整することができる。また、シム68が上ノズル本体10および下ノズル本体11よりも軟質であるので、第1ボルト挿通孔21および第3ボルト挿通孔36にボルトを挿通して上ノズル本体10と下ノズル本体11とを一体的に固定する場合、ボルト締付け力を接触面全域に均等化することができ、締付け後のがたつきを防止することができる。
【0032】
ガス噴射ノズル3の組立は、前述のように上ノズル本体10と下ノズル本体11とをシム68を介して一体的に固定した後、ノズル孔調整片8を位置決め凸部26および位置決め凹部43を接触させた状態で下ノズル本体11に挿入し、さらに楔片9を挿入してノズル孔調整片8を下ノズル本体11に固定することによって行われる。組立てられたガス噴射ノズル3は、第2および第4ボルト挿通孔22,37に挿通されるボルトによって図示しないノズルヘッダに取付けられる。ノズルヘッダから供給されたガスは、ガス供給路16、ガス供給室、ノズル孔6をこの順序で通過して鋼帯5の板面に吹付けられる。ノズル孔調整片8の交換は、楔片9を幅方向一端部側に変位させて押圧力を開放し、ノズル孔調整片8を抜出して別のノズル孔調整片8を同様の手順で下ノズル本体11に挿入することによって行われる。なお、押圧力を開放するための楔片9の変位量は小さくてもよく、ノズル孔調整片8の挿入および抜出しは、ノズル孔調整片8の他端部を前記着脱案内台63上に載置して幅方向に移動させることによって行われる。
【0033】
このように、簡単な操作で迅速にノズル孔調整片8の交換を行うことができるので、交換時に操業を停止させる必要がない。したがって、生産性を大幅に向上させることができる。また前記ノズル孔下面47の形状の異なるノズル孔調整片8を多数準備しておけば、鋼帯5の板幅に応じて最適なノズル孔調整片8を選択することができるので、交換によってノズル孔形状を最適形状に変更することができる。この結果、常時最適なノズル孔形状でガスワイピングを行うことができる。したがって、エッジオーバーコートの防止と幅方向付着量分布の均一化とを両立させることができる。
【0034】
また、ノズル孔調整片8の位置決めが楔片9の押圧力によって前記位置決め凹部43を前記位置決め凸部26に押し付けることによって行われるので、ノズル孔調整片8を所定位置に確実、かつ正確に固定することができる。したがって、操業時のノズル孔調整片8のがたつきを防止することができるとともに、ノズル孔6の幅方向開度分布を予め定める値に精度よく設定することができる。またノズル本体7、ノズル孔調整片8および楔片9が同一鋼種の鋼材から成るので、熱膨張率が同一であり、熱膨張率の差によってノズル孔調整片8および楔片9の着脱が困難になるという不具合を回避することができる。また楔片9の先端部61近辺にはノズル孔調整片8の着脱案内台が設けられているので、ノズル孔調整片8の着脱を円滑に行うことができる。
【0035】
以上述べたように、本実施の形態ではノズル本体7はノズル孔6を境にして上下2つに分割されているけれども、分割しないで一体に形成するように構成してもよい。また本実施の形態では、下ノズル本体11に位置決め凸部26が形成され、ノズル孔調整片8に位置決め凹部43が形成されているけれども、下ノズル本体11に位置決め凹部43を形成し、ノズル孔調整片8に位置決め凸部26を形成するように構成してもよい。また本実施の形態では、下ノズル本体11にノズル孔調整片8および楔片9が設けられているけれども、上ノズル本体10にそれらを設けるように構成してもよい。
【0036】
図8は本発明の他の実施の形態であるガス噴射ノズルの構成を簡略化して示す側面図であり、図9は図8に示すガス噴射ノズルの平面図である。図8および図9に示すガス噴射ノズル73は、前記ガス噴射ノズル3と類似し、対応する構成には同一の参照符号を付す。なお、図9は図解の便宜のために上ノズル本体10を省略して示している。ガス噴射ノズル73と前記ガス噴射ノズル3との相違点は、ノズル孔調整片8を下ノズル本体11に押し付ける押圧手段の構成が異なる点にある。すなわち、前記ガス噴射ノズル3の押圧手段としては、前記楔片9が用いられているけれども、ガス噴射ノズル73の押圧手段としては偏心装置74が用いられている。また本実施の形態では、楔片9が用いられていないので、下ノズル本体11の嵌合溝29の第2側面34は鋼帯5の板面に平行に形成されている。
【0037】
偏心装置74は、偏心部材75と、回転軸76とを含んで構成される。偏心部材75は、たとえばカムによって実現され、軸線と外周面との距離が周方向に沿って増減するように構成されている。偏心部材75は、回転軸76に軸線方向に間隔をあけて複数個設けられており、複数の偏心部材75の形状は全て同一である。偏心部材75の軸線と回転軸76の軸線78とは同軸であり、偏心部材75の外周面は軸線78に平行である。回転軸76および偏心部材75は、前記嵌合溝29内におけるノズル孔調整片8の第4側面53と嵌合溝29の第2側面34との間に嵌合される。回転軸76の軸線78は、鋼帯5の板面に平行である。回転軸76は、その両端部付近を側板79によって角変位自在に軸支される。回転軸76の一端部は、側板79よりも軸線方向外方に突出しており、この突出部にはハンドル77が設けられている。ハンドル77は、回転軸76および偏心部材75を角変位させる。なお、その他の構成はガス噴射ノズル3の構成と全く同一である。
【0038】
ハンドル77の操作によって偏心部材75はノズル孔調整片8を下ノズル本体11に押し付けて固定したり、開放したりすることができる。すなわち、図10に示すようにハンドル77を第1位置80になるように操作して偏心部材75の軸線を含む最大偏心面83が水平面にほぼ平行になるように偏心部材75を角変位させれば、ノズル孔調整片8に押圧力を付与することができ、ノズル孔調整片8を下ノズル本体11に押し付けて固定することができる。前記最大偏心面83は、偏心部材75の軸線と外周面との距離が最大となる仮想面である。また、図11に示すようにハンドル77を第2位置81になるように操作して前記最大偏心面83が鋼帯5の板面にほぼ平行になるように偏心部材75を角変位させれば、前記押圧力を開放することができ、ノズル孔調整片8を容易に抜出すことができる。前記第1位置80と第2位置81とのなす角度は90°である。
【0039】
このように、本実施の形態では簡単なハンドル操作によってノズル孔調整片8を下ノズル本体11に対して固定したり開放したりすることができるので、短時間でノズル孔調整片の交換を行うことができる。
【0040】
【発明の効果】
以上のように請求項1記載の本発明によれば、ノズル孔調整片が着脱可能に構成されているので、操業を停止させることなく金属帯の板幅に応じてノズル孔調整片を交換することができ、ノズル孔形状を最適形状に変更することができる。したがって、常時最適なノズル孔形状でガスワイピングを行うことができ、エッジオーバーコートの防止および金属帯の幅方向における付着量分布の均一化を図ることができる。
【0041】
押圧手段は先細状の楔片であるので、簡単な操作によってノズル孔調整片をノズル本体に対して固定したり開放したりすることができる。したがって、短時間でノズル孔調整片の交換を行うことができる。一の押圧手段の押圧力によって、ノズル孔調整片はその幅方向全体にわたって押圧される。
【0042】
また請求項2記載の本発明によれば、楔片の先端部近辺にはノズル孔調整片の着脱案内台が設けられているので、ノズル孔調整片の着脱を円滑に行うことができる。したがって、さらに短時間でノズル孔調整片の交換を行うことができる。
【0043】
また請求項3記載の本発明によれば、押圧手段は角変位可能な偏心装置であるので、簡単な角変位操作によってノズル孔調整片をノズル本体に対して固定したり開放したりすることができる。したがって、短時間でノズル孔調整片の交換を行うことができる。
【0044】
また請求項4記載の本発明によれば、ノズル本体が上下2つに分割され、上ノズル本体と下ノズル本体との間には、金属製シムが設けられているので、ノズル孔の上下方向の間隔を予め定める値になるように調整することができる。また各ノズル本体よりも軟質な金属製シムが設けられているので、締付け後の上ノズル本体と下ノズル本体とのがたつきを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態であるめっき厚調整用ガス噴射ノズル装置のガス噴射ノズルの構成を簡略化して示す側面図である。
【図2】図1に示すガス噴射ノズルの平面図である。
【図3】本発明の実施の一形態であるめっき厚調整用ガス噴射ノズル装置の構成を簡略化して示す側面図である。
【図4】図1に示す下ノズル本体11の構成を簡略化して示す斜視図である。
【図5】図1に示すノズル孔調整片の構成を簡略化して示す斜視図である。
【図6】鋼帯の板面から見たノズル孔の形状を示す正面図である。
【図7】図1に示す楔片の構成を簡略化して示す斜視図である。
【図8】本発明の他の実施の形態であるガス噴射ノズルの構成を簡略化して示す側面図である。
【図9】図8に示すガス噴射ノズルの平面図である。
【図10】偏心部材によってノズル孔調整片が押圧されている状態を示す側面図である。
【図11】偏心部材によるノズル孔調整片に対する押圧力が開放された状態を示す側面図である。
【符号の説明】
1 めっき厚調整用ガス噴射ノズル装置
3,73 ガス噴射ノズル
5 鋼帯
6 ノズル孔
7 ノズル本体
8 ノズル孔調整片
9 楔片
10 上ノズル本体
11 下ノズル本体
26 位置決め凸部
29 嵌合溝
43 位置決め凹部
63 着脱案内台
68 シム
74 偏心装置
75 偏心部材
76 回転軸
77 ハンドル
Claims (4)
- 溶融めっき金属の浴面上方で、浴中を通過してほぼ鉛直上方に搬送される金属帯の板面両側に、金属帯をはさんで対向して設けられる一対のガス噴射ノズルのノズル孔からガスを噴射して、金属帯にめっきされた過剰なめっき金属を吹払するめっき厚調整用ガス噴射ノズル装置において、
位置決め凸部または位置決め凹部のいずれか一方を有し、金属帯の幅方向に延びるノズル孔の一方の内面を形成するノズル本体と、
前記ノズル本体の位置決め凸部または位置決め凹部のいずれか一方に当接する位置決め凹部または位置決め凸部を有し、ノズル本体に着脱可能に挿入され、ノズル孔の他方の内面を形成するノズル孔調整片と、
ノズル孔調整片の位置決め凸部または位置決め凹部を、ノズル本体の位置決め凸部または位置決め凹部に押付ける押圧手段であって一の押圧手段による押圧力によってノズル孔調整片がその幅方向全体にわたって押圧される押圧手段とを含み、
前記押圧手段は、金属帯の幅方向に延びる先細状の楔片であって、
前記楔片は、ノズル本体とノズル孔調整片との間に着脱可能に挿入されることを特徴とするめっき厚調整用ガス噴射ノズル装置。 - 前記楔片の基端部および先端部は、前記挿入状態でノズル本体の両端部から外方に突出しており、前記突出した楔片の先端部にはノズル孔調整片の着脱案内台が設けられていることを特徴とする請求項1記載のめっき厚調整用ガス噴射ノズル装置。
- 前記押圧手段は、軸線と外周面との距離が周方向に沿って増減する偏心部材を備え、
偏心部材は、ノズル本体とノズル孔調整片との間に設けられ、軸線まわりに角変位可能であることを特徴とする請求項1記載のめっき厚調整用ガス噴射ノズル装置。 - 前記ノズル本体は、
ノズル孔の上面を規定するノズル内面を有する上ノズル本体と、
位置決め凸部または位置決め凹部のいずれか一方を有し、かつ上ノズル本体と一体的に固定される下ノズル本体と、
上ノズル本体と下ノズル本体との相互の当接面間に介在され、各ノズル本体の材料よりも軟質な金属から成るシムとを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のめっき厚調整用ガス噴射ノズル装置。
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