JP3641153B2 - 偏向アンプ及び荷電粒子ビーム用偏向装置 - Google Patents

偏向アンプ及び荷電粒子ビーム用偏向装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する分野】
本発明は、安定した位相補償を可能にした偏向アンプ及び荷電粒子ビーム用偏向装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子ビーム描画装置は、被描画材料上の所定の位置に電子ビームをショットする事により被描画材料の所定の位置に所定のパターンを描く事の出来る装置であり、極めて密度の高い半導体素子を製作することが出来る。
【0003】
この様な電子ビーム描画装置においては、図1に示す様に、描画すべきパターンデータに基づいた電子ビームのショット位置データ(電子ビームの偏向位置データ)がコンピュータの如き制御装置(図示せず)からDA変換器1へ送られ、ここでアナログ電流信号に変換され、電流電圧変換アンプ(偏向アンプ)2に送られる。該偏向アンプは電流信号を電圧信号に変換して偏向電極3に与える。この結果、該偏向電極の偏向作用に基づいて、電子ビーム4は被描画材料(図示せず)上の所定の位置にショットされて所定のパターンが描かれるのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
さて、前記DA変換器1,偏向アンプ及2び偏向電極3から成る偏向装置において、偏向アンプ2は図1にその一例を示す様に、演算増幅器5,正側電源6,負側電源7,正側増幅用トランジスタ8,負側増幅用トランジスタ9,フィードバック抵抗Rf,抵抗Ra,Rbから成る。そして、この偏向アンプの出力段はエミッタフォロワ(出力電流増幅)を形成しているので、この偏向アンプの出力としては、電圧振幅も電流振幅も他の部分に比べて大きく、その為にこの出力段部分の性能が偏向アンプ全体の性能を大きく左右している。
【0005】
所で、この出力段を成すトランジスタ、例えばトランジスタ8を例に取ると、このトランジスタ8の端子間浮遊容量成分と前記演算増幅器5の出力インピーダンス分によってローパスフイルタが形成されている。その為に、偏向アンプ2の性能悪化、即ち、この偏向アンプの出力に位相遅れが発生する。この様な位相遅れは前記トランジスタ9の端子間浮遊容量と前記演算増幅器5の出力インピーダンス分により形成されるローパスフイルタに依っても発生している。
【0006】
通常、この様なローパスフイルタにより発生する出力の位相遅れを補償する為に、前記演算増幅器5中にトランジスタの全端子間浮遊容量に見合った固定容量値を持つ位相補償用コンデンサ(図示せず)を組み込み、該演算増幅器の出力の位相を或る一定量進めるようにし、結果的に、前記偏向アンプ出力の位相の遅れを少なくしている。
【0007】
一方、前記ローパスフイルタを形成するトランジスタ(8,9)の端子間浮遊容量成分の内、他の端子間の電圧降下より著しく大きな電圧降下がある,コレクタC,ベースB間の容量CCBは前記性能悪化の主体を成しており、このベースB,コレクタC間の容量CCBは図2に示す様に、ベースB,コレクタC間の電圧VCBに依存する特性を持っている。そして、該ベースB,コレクタC間の電圧VCBは偏向アンプ2の出力電圧に反比例するので、ベースB,コレクタC間の容量CCBは偏向アンプ2の出力電圧に依存して変化することになる。即ち、DA変換器1に入力される位置データに応じた電圧を偏向アンプ2が出力するので、位置データに応じてベースB,コレクタC間の容量CCBが変化してしまい、その為に、位相補償状態が変化してしまう。即ち、この偏向アンプの出力電圧範囲中の或る出力電圧値の時に最適な位相補償状態にあっても、その出力電圧値と異なる電圧値を出力する場合には最適な位相補償状態がずれてしまうのである。
【0008】
本発明はこの様な問題を解決する新規な偏向アンプ及び荷電粒子ビーム用偏向装置を提供することを目的としたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に基づく偏向アンプは、電流信号を電圧信号に変換する偏向アンプであって、帰還系の増幅器、正側の電流信号を増幅するトランジスタ、及び負側の電流信号を増幅するトランジスタを備えており、前記帰還系の増幅器の出力側と前記トランジスタの入力側の間に、該トランジスタの端子間浮遊容量に並列に成る様にコンデンサを接続するように成したことを特徴とする。
【0010】
本発明に基づく偏向アンプは、コンデンサとして容量可変形のものを使用し、偏向アンプへの入力信号に応じて該コンデンサの容量値を変えるように成したことを特徴とする。本発明に基づく偏向アンプは、各々容量値の異なるコンデンサを選択可能に接続し、偏向アンプへの入力信号に応じてコンデンサを選択するように成したことを特徴とする。
【0011】
本発明に基づく荷電粒子ビーム用偏向装置は、荷電粒子ビーム偏向位置を表したデジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換器、該DA変換器の出力電流信号を電圧信号に変換する偏向アンプ、及び該偏向アンプの出力電圧信号が印加される偏向器から成る荷電粒子ビーム偏向装置であって、前記偏向アンプは、帰還系の増幅器、正側の電流信号を増幅するトランジスタ、負側の電流信号を増幅するトランジスタを備えており、前記帰還系の増幅器の出力側と前記トランジスタの入力側の間に、該トランジスタの端子間浮遊容量に並列に成る様にコンデンサを接続し、この偏向アンプの出力電圧の変化範囲に対する前記トランジスタの端子間浮遊容量の変化率を小さくするように成したことを特徴とする。本発明に基づく荷電粒子ビーム用偏向装置は、コンデンサとして容量可変形のものを使用し、前記DA変換器への入力信号若しくは出力信号に応じて該コンデンサの容量値を変えるように成したことを特徴とする。本発明に基づく荷電粒子ビーム偏向用装置は、各々容量値の異なるコンデンサを選択可能に接続し、前記DA変換器への入力信号若しくは出力信号に応じてコンデンサを選択するように成したことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
図3は本発明に基づく偏向アンプを備えた荷電粒子ビーム偏向装置の一例を示している。図中、前記図1で使用された符号と同一符号の付されたものは同一構成要素である。
【0014】
図3に示す装置の構成と図1に示す装置の構成とで異なる所は、トランジスタ8,9のベースB,コレクタC間の容量CCB,CCB´を有する仮想的コンデンサ10,11に対し並列に、該容量の数倍〜10倍程度の容量を有する補助コンデンサ12を接続したことにある。尚、この際、この様な補助コンデンサを接続することによりトランジスタの全端子間浮遊容量が大きくなるので、該トランジスタの全端子間浮遊容量に見合った固有容量を有する位相補償用コンデンサ(図示せず)を演算増幅器5内に取り付ける。
【0015】
この様に成せば、トランジスタ8,9の全体の端子間浮遊容量が数倍〜10数倍大きく成り、出力電圧の変化範囲において、トランジスタ8,9のベースB,コレクタC間の容量CCB,CCB´の変化率が従来に比べ著しく小さくなり、その為に、位相補償のずれが小さくなる。この点について、次に例を上げて詳説する。
【0016】
この偏向装置により電子ビーム4を偏向出来る量は決まっており、その為にDA変換器1への入力値の範囲も決まっている。従って、この入力値に対応している偏向アンプ2の出力値の範囲も決まっており、トランジスタ8,9のベースB,コレクタC間の容量値CCB,CCB´の変化する範囲も決まっている。
【0017】
例えば、図2に示す様に、トランジスタ8のベースB,コレクタC間の容量値CCBの変化範囲を5pF〜10pFと仮定すると、従来においては、7.5pFを中心に±2.5pF変化するので、DA変換器1への入力値の変化範囲若しくは偏向アンプ2の出力値の変化範囲に対して凡そ±33%の変化率を呈していた。
【0018】
そこで、本実施例の様に補助コンデンサ12を取り付けるのであるが、例えば、トランジスタ8のベースB,コレクタC間の容量値CCBの変化範囲(5pF〜10pF)の10倍〜5倍に当たる50pFの補助コンデンサを取り付けると、トランジスタの全端子間浮遊容量の変化範囲は凡そ55pF〜60pFとなり、57.5pFを中心に±2.5pF変化することになるので、DA変換器1への入力値の変化範囲若しくは偏向アンプ2の出力値の変化範囲に対して凡そ±4.3%の変化率を呈することになる。又、例えば、トランジスタ8のベースB,コレクタC間の容量値CCBの変化範囲(5pF〜10pF)の4倍〜2倍に当たる20pFの補助コンデンサを取り付けると、トランジスタの全端子間浮遊容量の変化範囲は凡そ25pF〜30pFとなり、27.5pFを中心に±2.5pF変化することになるので、DA変換器1への入力値の変化範囲若しくは偏向アンプ2の出力値の変化範囲に対して凡そ±9.1%の変化率を呈することになる。この様に、トランジスタ8のベースB,コレクタC間の容量値CCBの変化範囲(5pF〜10pF)の数倍〜10倍程度の補助コンデンサを付けると、DA変換器1への入力値の変化範囲若しくは偏向アンプ2の出力値の変化範囲に対して凡そ±9.1%〜±4.3%程度の変化率を呈することになり、従来比べて著しく変化率が小さく、その為に位相補償のずれが著しく小さくなる。
【0019】
尚、この様に、補助コンデンサとして、トランジスタ8のベースB,コレクタC間の容量値CCBの変化範囲(5pF〜10pF)より大きいものを選択する事により位相補償のずれの改善するわけであるが、この際、トランジスタ8のベースB,コレクタC間の容量値CCBの変化範囲(5pF〜10pF)により近いものを選択すれば、それだけDA変換器1への入力値の変化範囲若しくは偏向アンプ2の出力値の変化範囲に対する変化率が大きくなるので、位相補償の改善が小さくなる。一方、より離れたものを選択すれば、前記した様に、該選択した補助コンデンサの容量に応じて前記演算増幅器5内に取り付ける位相補償用コンデンサとしてより容量の大きいものを選択されることになるので、その分、演算増幅器5の応答速度が遅くなる。従って、絶対条件ではないが、トランジスタ(8,9)のベースB,コレクタC間の容量CCB,CCB´を有する仮想的コンデンサ10,11に対し並列に、該容量の凡そ数倍〜10倍程度の容量を有する補助コンデンサ12を接続すると、演算増幅器の応答速度の問題など他の問題が許容される範囲で、位相補償のずれを従来に比べて大幅に小さくできる。
【0020】
図4は本発明に基づく偏向アンプを備えた荷電粒子ビーム偏向装置の他の例を示している。図中、前記図1で使用された符号と同一符号の付されたものは同一構成要素である。
【0021】
この実施例では、1個の固有容量を持つ補助コンデンサを取り付けるのではなく、トランジスタ8,9のベースB,コレクタC間の容量CCB,CCB´を有する仮想的コンデンサ10,11に対し並列に、補助コンデンサ13AとスイッチSWAを直列接続した回路、補助コンデンサ13BとスイッチSWBを直列接続した回路、補助コンデンサ13CとスイッチSWCを直列接続した回路を接続している。前記各補助コンデンサとしては、DA変換器1への入力値の変化範囲若しくは偏向アンプ2の出力値の変化範囲に対して凡そ±4.3%の変化率を考えた場合には、補助コンデンサ13Aとして52.5pF、13Bとして50pF、13Cとして67.5pFの容量を有するものを選択する。そして、DA変換器1への入力データに応じて前記スイッチの切り替え指令を発する制御回路14を設けておく。例えば、DA変換器1への入力データが最小の場合、制御回路14はスイッチSWAをオンさせ、補助コンデンサ13Aが選択される。その為、トランジスタ(8,9)の全容量が凡そ57.5pFとなり、変化率は凡そ0となる。又、DA変換器1への入力データが最大の場合、制御回路14はスイッチSWCをオンさせ、補助コンデンサ13Cが選択される。その為、トランジスタ(8,9)の全端子間浮遊容量が凡そ57.5pFとなり、変化率は凡そ0となる。又、又、DA変換器1への入力データがちょうど中間値の場合、制御回路14はスイッチSWBをオンさせ、補助コンデンサ13Bが選択される。その為、トランジスタ(8,9)の全端子間浮遊容量が凡そ57.5pFとなり、変化率は凡そ0となる。尚、この実施例では、最小,最大及び中間値の入力データの対して最適補助コンデンサが選択されるように成したが、実際には入力データの値域が3つに分けられ、出来るだけ変化率が小さくなる容量の補助コンデサが選択できるように成してある。
【0022】
尚、前記実施例では3つの補助コンデンサを設けたが、52.5pF〜67.5pFの容量範囲で互いに異なった容量値を持つ補助コンデンサとスイッチを直列接続した回路を多数、トランジスタ8,9のベースB,コレクタC間の容量CCB,CCB´を有する仮想的コンデンサ10,11に対し並列に接続し、入力データに対してきめ細かに最適に近い(出来るだけ変化率が小さくなる)補助コンデンサが選択出来るようにしても良い。
【0023】
又、前記の様に固有の容量値を有する補助コンデンではなく、バリコンのような容量可変コンデンサを用いて、DA変換器の入力データに応じて最適な容量値を選択できるように成しても良い。
【0024】
又、前記実施例ではDA変換器1の入力信号に基づいて補助コンデンサ若しくはバリコンの容量値を選択するように成したが、DA変換器1の出力信号(演算増幅器5への入力信号)に基づいて補助コンデンサ若しくはバリコンの容量値を選択するように成しても良い。
【0025】
尚、前記実施例では、電子ビームの偏向を例に上げて説明したが、イオンビームの偏向にも適用可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来の荷電粒子ビーム用偏向装置の一例を示している。
【図2】 トランジスタのベースB,コレクタC間の容量CCB とベースB,コレクタC間の電圧VCBの関係を示している。
【図3】 本発明の荷電粒子ビーム用偏向装置の一例を示している。
【図4】 本発明の荷電粒子ビーム用偏向装置の他の例を示している。
【符号の説明】
1…DA変換器
2…偏向アンプ
3…偏向器
4…電子ビーム
5…演算増幅器
6…正側電源
7…負側電源
8,9…トランジスタ
Rf…フィードバックトランジスタ
10,11…仮想コンデンサ
12 …補助コンデンサ
13A,13B,13C…コンデンサ
SWA,SWB,SWC…スイッチ
14…制御回路

Claims (6)

  1. 電流信号を電圧信号に変換する偏向アンプであって、帰還系の増幅器、正側の電流信号を増幅するトランジスタ、及び負側の電流信号を増幅するトランジスタを備えており、前記帰還系の増幅器の出力側と前記トランジスタの入力側の間に、該トランジスタの端子間浮遊容量に並列に成る様にコンデンサを接続するように成したことを特徴とする偏向アンプ。
  2. 前記コンデンサとして容量可変形のものを使用し、偏向アンプへの入力信号に応じて該コンデンサの容量値を変えるように成したことを特徴とする請求項1記載の偏向アンプ。
  3. 各々容量値の異なるコンデンサを選択可能に接続し、偏向アンプへの入力信号に応じてコンデンサを選択するように成したことを特徴とする請求項記載の偏向アンプ。
  4. 荷電粒子ビーム偏向位置を表したデジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換器、該DA変換器の出力電流信号を電圧信号に変換する偏向アンプ、及び該偏向アンプの出力電圧信号が印加される偏向器から成る荷電粒子ビーム用偏向装置であって、前記偏向アンプは、帰還系の増幅器、正側の電流信号を増幅するトランジスタ、及び負側の電流信号を増幅するトランジスタを備えており、前記帰還系の増幅器の出力側と前記トランジスタの入力側の間に、該トランジスタの端子間浮遊容量に並列に成る様にコンデンサを接続するように成したことを特徴とする荷電粒子ビーム用偏向装置
  5. 前記コンデンサとして容量可変形のものを使用し、前記DA変換器への入力信号若しくは出力信号に応じて該コンデンサの容量値を変えるように成したことを特徴とする請求項記載の荷電粒子ビーム用偏向装置。
  6. 各々容量値の異なるコンデンサを選択可能に接続し、前記DA変換器への入力信号若しくは出力信号に応じてコンデンサを選択するように成したことを特徴とする請求項記載の荷電粒子ビーム偏向装置。
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