JP3640352B2 - マイクロウエーブセンサ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロウエーブセンサ(以下、「MWセンサ」という)に係る。特に、本発明は、MWセンサの信頼性の向上を図るための対策に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、防犯装置の一つとして、マイクロ波を検知エリアに向けて送信し、検知エリア内に人体が存在する場合には、その人体からの反射波(ドップラー効果によって変調したマイクロ波)を受信して人体(侵入者)を検知するMWセンサが知られている(例えば特開平7−37176号公報)。
【0003】
更に、MWセンサの1タイプとして、周波数の異なる複数のマイクロ波を利用して物体までの距離を計測するようにしたものも知られている。この種のセンサは、例えば周波数の異なる2種類のマイクロ波を検知エリアに向けて送信し、それぞれの反射波に基づく2つのIF信号の位相差を検出するようになっている。この位相差は、ターゲット(人体等の検知対象物体)までの距離に相関があり、ターゲットまでの距離が大きいほど位相差も大きくなる傾向がある。つまり、この位相差を求めることによりターゲットまでの距離を計測することが可能である。また、この位相差の時間的な変化を認識することにより検知エリア内の物体が移動しているか否かを判定することも可能である。これにより、例えば検知エリア内で移動している物体のみを、検知すべき物体(ターゲット)として判定することが可能になる。以下、この種のセンサにおけるIF信号の位相差検出動作について説明する。
【0004】
周波数の異なる2種類のマイクロ波の反射波に基づくIF信号が図5(a)に示すような正弦波IFout1,IFout2(ターゲットまでの距離に応じた位相差を有している)である場合、これらIF信号から成形される矩形波A,Bは、それぞれ図5(b)に示すようになる。そして、これら矩形波A,Bの位相差(図中における矩形波の立ち上がり部分の位相差Δt)を検出することによってターゲットまでの距離を計測することが可能になる。また、この矩形波A,Bの位相差の時間的な変化を認識することにより、検知エリア内の物体の移動(センサに近づいているのか遠ざかっているのか)を認識することが可能である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この種のセンサを防犯用センサとして使用し、上記位相差の時間的な変化を認識して検知エリア内で移動している物体のみを、検知すべき物体(ターゲット)であると判定するようにした場合、以下に述べる不具合がある。
【0006】
つまり、この種のセンサを屋外に設置した場合に、風による草木などの揺れによって上記矩形波A,Bに位相差が生じ、これによって草木などを、検知すべき物体(ターゲット)であると誤検知してしまう可能性がある。同様に、この種のセンサを屋内に設置した場合に、換気用のファンの回転動作や、風によるブラインドやカーテンの揺れによっても上記矩形波A,Bに位相差が生じ、この場合にも人体以外の物体を、検知すべき物体であると誤検知してしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、マイクロ波を利用して物体を検知するようにしたMWセンサに対し、人体などの検知すべき物体とそうでない物体との判別を正確に行って、誤報を回避することができるMWセンサを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
−発明の概要−
上記の目的を達成するために、本発明は、検知エリア内での物体の移動距離を認識し、その移動距離に基づいてその物体が検知すべき物体であるか否かを判定するようにしている。
【0009】
−解決手段−
具体的には、検知エリアに向けて周波数の異なる複数のマイクロ波を送信し、この検知エリア内に物体が存在する場合に、上記各マイクロ波が物体で反射されてドップラ効果により変調した各反射波を受信し、これら反射波とその送信波とをミキシングした後のIF信号同士の位相差により物体までの相対距離を計測するマイクロウエーブセンサを前提とする。このマイクロウエーブセンサに対し、上記物体が、検知エリア内の一定の範囲内でのみ移動しているか否かを判別し、一定の範囲内で移動しているに過ぎない場合にはその物体を非検知対象と判定し、一定の範囲を越えて移動している場合にはその物体を検知対象と判定する物体判定手段を備えさせている。
【0010】
この場合、物体判定手段は、上記各反射波に基づいて検知エリア内に存在する物体までの相対距離の単位時間当たりの変化量を計測することによって、物体が一定の範囲内でのみ移動しているか否かを判別し、その変化量が所定量未満であるときには、その物体を、一定の範囲内で移動しているに過ぎない非検知対象であると判定し、その変化量が所定量以上であるときには、その物体を、一定の範囲を越えて移動している検知対象であると判定するよう構成されている。
【0011】
また、物体判定手段は、上記各反射波に基づいて検知エリア内に存在する物体の相対的な移動距離を計測することによって、物体が一定の範囲内でのみ移動しているか否かを判別し、その相対的な移動距離が所定値未満であるときには、その物体を、一定の範囲内で移動しているに過ぎない非検知対象であると判定し、その相対的な移動距離が所定値以上であるときには、その物体を、一定の範囲を越えて移動している検知対象であると判定するよう構成されている。
【0013】
以上の各構成により、物体判定手段は、一定の範囲を越えて移動している物体のみを検知すべき物体であると判定し、それ以外のものに対しては検知すべきでない物体であると判定する。従って、例えば、検知エリア内において風により草木やブラインドやカーテンが揺れている状況や、換気用のファンが回転している状況であっても、これらをターゲットとして検知することはなく、必要な物体(侵入者の人体など)のみを正確に検知することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ここでは、MWセンサを防犯センサとして使用した場合であって、周波数の異なる2種類のマイクロ波を利用して検知対象物体(侵入者等)を判定するようにしたMWセンサに本発明を適用した場合について説明する。
【0015】
(第1実施形態)
−MWセンサの構成説明−
図1は本形態に係るMWセンサ1の回路構成を示している。この図に示すように、MWセンサ1は、RFモジュール2及び信号処理部3を備えている。
【0016】
RFモジュール2は、マイクロ波を発振する発振器21、この発振器21から発振されるマイクロ波の周波数を切り換えるための変調器22、発振器21から発振されたマイクロ波を検知エリアに向けて送信する送信アンテナ23、人体等の物体によって反射したマイクロ波の反射波を受信する受信アンテナ24、この受信されたマイクロ波と発振器21の電圧波形とをミキシングして出力するミキサ25を備えている。つまり、送信アンテナ23から検知エリアに向けて送信されたマイクロ波は、検知エリア内に人体等が存在する場合、ドップラー効果によりその人体等からの反射波の周波数が変調されて受信アンテナ24に受信される。この受信された反射波はミキサ25によって発振器21の電圧波形とミキシングされた後、RFモジュール2からIF出力信号(IFout0)として信号処理部3に出力されるようになっている。
【0017】
一方、信号処理部3は、送信アンテナ23から送信する各周波数のマイクロ波毎に対応して第1の出力ラインL1及び第2の出力ラインL2を備えている。各ラインL1,L2には、電源31,32,33、IFアンプ34,35、コンパレータ36,37が備えられ、コンパレータ36,37の出力側には本形態の特徴とする物体判定手段としての物体判定部38が設けられている。
【0018】
各IFアンプ34,35は、第1スイッチSW1を介してRFモジュール2の出力側に接続されている。この第1スイッチSW1は、上記2種類のマイクロ波のうち一方が送信アンテナ23から送信されている場合には第1の出力ラインL1に接続し、他方のマイクロ波が送信アンテナ23から送信されている場合には第2の出力ラインL2に接続するように切り換えられる。つまり、一方のマイクロ波の送信時に人体等によって反射された反射波に係るIF出力信号(IFout1)は第1の出力ラインL1に出力され、他方のマイクロ波の送信時に人体等によって反射された反射波に係るIF出力信号(IFout2)は第2の出力ラインL2に出力される構成となっている。
【0019】
また、各電源31,32は、上記第1スイッチSW1に連動する第2スイッチSW2を介してRFモジュール2の入力側に接続されている。この第2スイッチSW2も、2種類のマイクロ波のうち何れのマイクロ波を送信アンテナ23から送信するかによって各電源31,32に対する接続状態が切り換わるようになっている。つまり、この第2スイッチSW2が一方の電源31に接続している状態と他方の電源32に接続している状態とで、変調器22がマイクロ波の周波数を切り換え、これによって送信アンテナ23から送信されるマイクロ波の周波数が切り換えられる構成となっている。
【0020】
このようにして、各スイッチSW1,SW2の切り換え動作に伴い、一方の周波数のマイクロ波が送信アンテナ23から検知エリアに向けて送信され、その反射波に基づくIF出力信号(IFout1)が信号処理部3の第1の出力ラインL1に出力されてこの第1の出力ラインL1において信号処理が行われる第1処理動作と、他方の周波数のマイクロ波が送信アンテナ23から検知エリアに向けて送信され、その反射波に基づくIF出力信号(IFout2)が信号処理部3の第2の出力ラインL2に出力されてこの第2の出力ラインL2において信号処理が行われる第2処理動作とが所定時間間隔(例えば数msec)をもって切り換えられるようになっている。そして、各処理動作では、RFモジュール2から出力されたIF出力信号が、IFアンプ34,35によって増幅され、このIFアンプ34,35からの出力がコンパレータ36,37によって矩形波に成形された後に物体判定部38に出力されるようになっている。
【0021】
更に、上記各処理動作について詳述すると、検知エリア内に人体等の物体が存在していない場合には、送信アンテナ23から送信されたマイクロ波と受信アンテナ24に受信されたマイクロ波との周波数は等しいため、IFアンプ34,35からの出力信号におけるIF周波数は「0」となり、コンパレータ36,37からは信号が出力されない。これに対し、検知エリア内に人体等が存在する場合には、送信アンテナ23から送信されたマイクロ波の周波数に対して受信アンテナ24に受信されたマイクロ波は変調されるため、コンパレータ36,37の出力信号波形に変化が生じ、この矩形波が物体判定部38に出力されるようになっている。
【0022】
−物体判定部38の説明−
次に、コンパレータ36,37からの出力信号波形を受ける物体判定部38について説明する。この物体判定部38は、上記各コンパレータ36,37の出力信号波形を受け、これに基づいて検知物体(人体等)までの距離を計測するものである。また、この物体判定部38は、検知した物体までの距離の単位時間当たりの変化量を計測し、その結果に基づいて検知エリア内の物体が検知すべき物体(侵入者の人体)であるか否かを判別し、物体が検知すべきものである場合にのみ物体検知信号を発信するようになっている。
【0023】
具体的には、物体までの距離を所定時間毎に算出していき、単位時間(例えば2秒間)当たりのこの距離の変化量が、予め設定された値(例えば1.5m)よりも大きい場合にのみ物体判定部38から物体検知信号が発信(発報)されるようになっている。
【0024】
以下、具体的に説明する。
【0025】
MWセンサ1から物体までの相対距離は以下の式(1)により算出することができる。
【0026】
R=c・Δφ/4π・Δf …(1)
(R:物体までの相対距離、c:光速、Δφ:矩形波A,Bの位相差、Δf:発振器21から発振される2種類のマイクロ波の周波数差)
この式(1)によって所定時間毎に物体までの距離を算出していき、この物体までの距離の単位時間当たりの変化量を計測する。そして、物体判定部38は、この変化量が所定量以上であるとき、その物体は検知すべき物体(人体)であると判定し、物体検知信号を発信する。
【0027】
具体的に図2のグラフを用いて説明する。この図2は、人体(侵入者)がセンサに徐々に近づいてくる場合と、草木が風によって揺れている場合とにおける上記位相差の変化をそれぞれ示している。このグラフの場合、2秒間に位相差が10度以上変化した場合にはその物体は侵入者であると判断するようにしている。つまり、草木が風によって揺れている場合には、2秒間に位相差が10度に達することはない。図2のものでは最大でも8度程度である。つまり、2秒間に位相差が10度に達していない場合には検知不要な物体であると判断し、この場合には物体検知信号を発信しないようにしている。
【0028】
言い換えると、検知エリア内に侵入者が存在する場合、その侵入者がセンサに徐々に近づいてくる場合には時間の経過と共に上記位相差が小さくなっていく(上記の場合には2秒間に10度以上の位相差が生じる移動が行われる)。これに対し、草木が風によって揺れている場合、この草木は一定の範囲内で移動しているに過ぎず、時間が経過しても上記位相差は一定の範囲内にある(上記の場合には2秒間に最大でも8度程度の位相差しか生じない)。この差を認識することにより、検知エリア内に存在する物体が侵入者であるか否かを判定するようにしている。
【0029】
以上説明したように、本形態では、検知物体が、検知対象とすべき人体(侵入者)であるのか、非検知対象とすべき草木等であるのかをその単位時間当たりの移動変化量を認識することによって判別して、検知対象とすべき物体である場合にのみ物体判定部38が物体検知信号を発信するようになっている。このため、誤報を回避することができ、信頼性の高いMWセンサ1を提供することができる。
【0030】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本形態は物体判定部38による物体判定動作が上述した第1実施形態のものと異なっている。従って、ここでは物体判定部38の物体判定動作についてのみ説明する。
【0031】
本形態の物体判定部38は、上記各コンパレータ36,37の出力信号波形を受け、これに基づいて、検知エリア内に存在する物体のMWセンサ1に対する相対的な移動方向及び相対的な移動速度を計測して物体の相対的な移動距離を検知するものである。また、この物体判定部38は、この検知した物体の相対的な移動距離に基づいて検知エリア内の物体が検知すべき物体であるか否かを判別し、物体が検知すべきもの(人体など)である場合にのみ物体検知信号を発信するようになっている。
【0032】
具体的には、センサ1から物体までの相対距離を算出していき、この相対距離が、予め設定された値よりも大きいときにのみ物体判定部38から物体検知信号が発信(発報)されるようになっている。
【0033】
以下に、物体移動方向の認識処理動作について説明する。
【0034】
各コンパレータ36,37から受けた2種類のIF信号波形の矩形波A,Bを比較し、これらIF信号波形同士の相対的な位相進み度合いを認識することによって、検知エリア内の物体がMWセンサ1に近づく方向に移動しているか遠ざかる方向に移動しているかを判別するようになっている。そして、2つのIF信号波形のうち周波数の低いマイクロ波の反射波により得られたIF信号波形が周波数の高いマイクロ波の反射波により得られたIF信号波形よりも進んでいる場合には検知エリア内の物体がMWセンサ1に近づく方向に移動していると判別する。一方、周波数の高いマイクロ波の反射波により得られたIF信号波形が周波数の低いマイクロ波の反射波により得られたIF信号波形よりも進んでいる場合には検知エリア内の物体がMWセンサ1から遠ざかる方向に移動していると判別するようになっている。以下、この判別動作について詳述する。
【0035】
今、各コンパレータ36,37から受けた2種類のIF信号波形の矩形波が図3に示す波形A,Bの状態であったとする。そして、これら波形のXNOR波形(図3の最下段の波形)を成形する。そして、このXNOR波形のHiとLoとの切り換わり時であって、HiからLoに切り換わる時点(例えば図3に矢印I,IIを付した時点)における各IF信号の矩形波A,Bの値を検知する。図3の場合、このHiからLoへの切り換わる時点(矢印I,IIを付した2つのそれぞれの時点)では、矩形波BがLoである場合には矩形波AはLoからHiに切り換わるタイミング(矢印II)であり、矩形波BがHiである場合には矩形波AはHiからLoに切り換わるタイミング(矢印I)である。この状態が検出されることで、周波数の低いマイクロ波によるIF信号波形の矩形波Aが周波数の高いマイクロ波によるIF信号波形の矩形波Bよりも位相が進んでいることが認識できる。この場合、検知エリア内の物体がMWセンサ1に近づく方向に移動していると判別する。尚、この場合のXNOR波形がHiからLoに切り換わる時点では、常に、矩形波BはLoまたはHiの状態が継続し、矩形波AはHiからLoまたはLoからHiへ切り換わるタイミングとなっているので、これらの矩形波A,Bのうちの何れかの状態を検出することにより検知エリア内の物体がMWセンサ1に近づく方向に移動していると判別することもできる。
【0036】
一方、各コンパレータ36,37から受けた2種類のIF信号波形の矩形波が図4に示す波形A,Bである場合、これら波形のXNOR波形は図4の最下段のようになる。そして、このXNOR波形のHiとLoとの切り換わり時であって、HiからLoに切り換わる時点(例えば図4に矢印III,IVを付した時点)における各IF信号の矩形波A,Bの値を検知する。図4の場合、このHiからLoへの切り換わる時点(矢印III,IVを付した2つのそれぞれの時点)では、矩形波AがLoである場合には矩形波BはLoからHiに切り換わるタイミング(矢印IV)であり、矩形波AがHiである場合には矩形波BはHiからLoに切り換わるタイミング(矢印III)である。この状態が検出されることで、周波数の高いマイクロ波によるIF信号波形の矩形波Bが周波数の高いマイクロ波によるIF信号波形の矩形波Aよりも位相が進んでいることが認識できる。この場合、検知エリア内の物体がMWセンサ1から遠ざかる方向に移動していると判別する。尚、この場合のXNOR波形がHiからLoに切り換わる時点では、常に、矩形波AはLoまたはHiの状態が継続し、矩形波BはHiからLoまたはLoからHiへ切り換わるタイミングとなっているので、これらの矩形波A,Bのうちの何れかの状態を検出することにより検知エリア内の物体がMWセンサ1から遠ざかる方向に移動していると判別することもできる。
【0037】
一方、物体の移動速度を計測するためには、単位時間毎にセンサ1から物体までの相対距離Rを求める必要がある。以下に、本形態においてこの相対距離Rを求めるための式を示す。
【0038】
fd=2v・f0/c …(2)
n=fd・t …(3)
R=v・t=fd・c・t/2f0=c・n/2f0 …(4)
(R:物体までの相対距離、fd:ドップラ周波数、v:ターゲット速度、f0:RF周波数、c:光速、n:ドップラ信号カウント数)
具体的に、例えば、RF周波数を10.5GHzとし、1秒間に+10回、−5回カウントした(物体が近づいた場合のカウントを+、遠ざかった場合のカウントを−としてドップラ信号をカウントしていく)場合の物体の移動距離は以下のようにして求められる。
【0039】
R=3×108×(10−5)/(2×10.5×109)=7.1(cm)
以上のようにして、検知エリア内に存在する物体の移動方向及び移動速度を計測し、MWセンサ1に対する物体の相対的な移動距離を検知する。そして、例えば、物体が1秒間に50cm以上移動した場合にのみ、その物体は検知すべき物体(侵入者の人体)であると判定し、この場合、物体判定部38は物体検知信号を発信する。つまり、草木が風によって揺れている場合には、1秒間に50cm以上移動することはない。つまり、1秒間に50cm以上移動しない物体は検知不要な物体であると判断し、この場合には物体検知信号を発信しないようにしている。尚、本形態の場合、検知物体が、検知対象とすべき人体(侵入者)であるのか、非検知対象とすべき草木等であるのかの判定としては、時間的要件を必要とせず、単に物体の移動距離のみによって判定するようにしてもよい。
【0040】
以上説明したように、本形態によっても、検知物体が、検知対象とすべき人体(侵入者)であるのか、非検知対象とすべき草木であるのかを、物体の移動距離を認識することによって判別して、検知対象とすべき物体である場合にのみ物体判定部38が物体検知信号を発信するようになっている。このため、誤報を回避することができ、信頼性の高いMWセンサ1を提供することができる。
【0041】
−その他の実施形態−
上述した各実施形態では、周波数の異なる2種類のマイクロ波を利用して検知物体までの距離を計測するようにしたMWセンサ1について説明した。本発明はこれに限らず、周波数の異なる3種類以上のマイクロ波を利用して検知物体までの距離を計測するようにしてもよい。
【0042】
また、上記各実施形態では、非検知対象物として草木を例に掲げて説明した。これに限らず、風によりブラインドやカーテンが揺れている状況や、換気用のファンが回転している状況においても、これらを非検知対象物として認識することが可能である。
【0043】
更に、本発明によれば、地震や大型車両の通過などによってMWセンサ1自身が振動してしまって、検知エリア内の物体との間の相対位置が移動する状況においても、検知物体が、検知対象とすべき人体(侵入者)であるのか、非検知対象とすべき草木等であるのかを良好に判定することが可能である。
【0044】
また、本発明のMWセンサ1は防犯センサ以外の用途にも適用可能である。
【0045】
【発明の効果】
以上のように、本発明では、センサから物体までの相対距離を計測し、一定の範囲を越えて移動している物体のみを、検知すべき物体であると判定し、それ以外のものに対しては検知すべきでない物体であると判定するようにしている。このため、例えば、検知エリア内において風により草木やブラインドやカーテンが揺れている状況や、換気用のファンが回転している状況であっても、これらをターゲットとして検知することはなく、必要な物体のみを正確に検知することができる。その結果、誤報を回避することができ、信頼性の高いMWセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係るMWセンサの回路構成を示す図である。
【図2】第1実施形態において、人体がセンサに徐々に近づいてくる場合と草木が風によって揺れている場合とにおけるIF信号の位相差変化の一例をそれぞれ示す図である。
【図3】物体がセンサに近づく状態において各コンパレータから受けた2種類のIF信号波形の矩形波及びそれらのXNOR波形を示す図である。
【図4】物体がセンサから遠ざかる状態において各コンパレータから受けた2種類のIF信号波形の矩形波及びそれらのXNOR波形を示す図である。
【図5】従来例における各IF信号及びそれにより得られた矩形波を示す図である。
【符号の説明】
1 マイクロウエーブセンサ
38 物体判定部(物体判定手段)

Claims (3)

  1. 検知エリアに向けて周波数の異なる複数のマイクロ波を送信し、この検知エリア内に物体が存在する場合に、上記各マイクロ波が物体で反射されてドップラ効果により変調した各反射波を受信し、これら反射波とその送信波とをミキシングした後のIF信号同士の位相差により物体までの相対距離を計測するマイクロウエーブセンサにおいて、
    上記物体が、検知エリア内の一定の範囲内でのみ移動しているか否かを判別し、一定の範囲内で移動しているに過ぎない場合にはその物体を非検知対象と判定し、一定の範囲を越えて移動している場合にはその物体を検知対象と判定する物体判定手段を備えていることを特徴とするマイクロウエーブセンサ。
  2. 上記請求項1記載のマイクロウエーブセンサにおいて、
    物体判定手段は、上記各反射波に基づいて検知エリア内に存在する物体までの相対距離の単位時間当たりの変化量を計測することによって、物体が一定の範囲内でのみ移動しているか否かを判別し、その変化量が所定量未満であるときには、その物体を、一定の範囲内で移動しているに過ぎない非検知対象であると判定し、その変化量が所定量以上であるときには、その物体を、一定の範囲を越えて移動している検知対象であると判定することを特徴とするマイクロウエーブセンサ。
  3. 上記請求項1記載のマイクロウエーブセンサにおいて、
    物体判定手段は、上記各反射波に基づいて検知エリア内に存在する物体の相対的な移動距離を計測することによって、物体が一定の範囲内でのみ移動しているか否かを判別し、その相対的な移動距離が所定値未満であるときには、その物体を、一定の範囲内で移動しているに過ぎない非検知対象であると判定し、その相対的な移動距離が所定値以上であるときには、その物体を、一定の範囲を越えて移動している検知対象であると判定することを特徴とするマイクロウエーブセンサ。
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