JP3639243B2 - ガソリンの製造装置及びガソリンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガソリンの製造現場における設備構成を簡略し得る、ガソリンの製造装置及びガソリンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ガソリンの製造現場としては、例えば図4に示す設備構成を備えたものが知られている。図4において符号1は常圧蒸留装置、2はガソリンの製造装置である。常圧蒸留装置1は、供給された原油を常圧蒸留し、LPGとそれより軽質な留分とナフサ留分と図示しないそれ以外(例えば灯油、軽油、残油)に分離するものである。なお、ガソリンの製造現場においては、特にLPGとナフサ留分とを原料として用いており、これら原料はガソリンの製造装置2に送られてガソリンに製造されるようになっている。
【0003】
常圧蒸留装置1で得られたLPGとそれより軽質な留分は、ガソリンの製造装置2を構成するLPG回収装置3に送られ、LPG留分とそれより軽質な留分に分離される。常圧蒸留装置1で得られたナフサ留分は、ガソリンの製造装置2を構成するナフサ水素化精製装置4に送られる。ナフサ水素化精製装置4は、水素と触媒の存在下に送られてきたナフサ留分を水素化脱硫することにより、接触改質装置の原料に適した精製ナフサ留分とLPGとそれより軽質な留分とを得る。精製ナフサ留分は、ナフサスプリッター5に送られ、軽質ナフサと後述する改質ガソリン基材の原料となる重質ナフサとに分留される。
【0004】
ナフサ水素化精製装置4で得られたLPGとそれより軽質な留分は、前記の常圧蒸留装置1で得られたLPGとそれより軽質な留分とともにLPG回収装置3に送られる。LPG回収装置3において、LPGより軽質な留分は、アミン処理等により硫黄化合物が除去され、水素、メタン等の精製ガス成分として回収され、一方LPG成分はLPG製品タンク6aあるいは中間タンク6bに送られるようになっている。LPG製品タンク6aは、主にLPG回収装置3から送られてきたLPGを受け入れるためのタンクであり、またLPG中間タンク6bは、LPG回収装置3から送られてきたLPGを一時貯留して均質化し、ガソリン基材としてガソリン調製手段に供給するためのタンクである。
【0005】
ナフサスプリッター5で得られた軽質ナフサは、軽質ナフサ中間タンク7aあるいは7bに送られるようになっている。軽質ナフサタンク7aは、主にナフサスプリッター5から送られてきた軽質ナフサを受け入れるためのタンクであり、また軽質ナフサタンク7bは、ナフサスプリッター5から送られてきた軽質ナフサを一時貯留して均質化しガソリン基材としてガソリン調製手段に供給するためのタンクである。
【0006】
ナフサスプリッター5で得られた重質ナフサは、接触改質装置8に送られ、ここで接触改質処理されて改質ガソリン基材とされるようになっている。接触改質装置8は、水素気流中で高温、加圧下で触媒と接触させ、高オクタン価のガソリン基材を得るための装置であり、得られる生成油のオクタン価を調整するための接触改質反応器8aと、この接触改質反応器8aでオクタン価が調整された生成油のリード蒸気圧を左右するLPG留分を分離するためのスタビライザ8bとを備えて構成される。従来のスタビライザ8bでは、リード蒸気圧を後段のスタチックミキサーによる混合過程で調整しており、接触改質工程ではLPG留分の実質的全量を分離して改質ガソリン基材を得るようになっている。分離されたLPGは前記LPGタンクに送られる。
【0007】
接触改質装置8で接触改質処理された改質ガソリン基材は、改質ガソリンタンク9aあるいは9bに送られる。改質ガソリンタンク9aは、主に接触改質装置8から送られてきた改質ガソリン基材を受け入れるためのタンクであり、改質ガソリンタンク9bは、接触改質装置8から送られてきた改質ガソリン基材を一時貯留して均質化しガソリン基材としてガソリン調製手段に供給するためのタンクである。
【0008】
これら各タンク、すなわちLPGタンク6a、6b、軽質ナフサタンク7a、7b、改質ガソリンタンク9a、9bに貯留された各ガソリン基材は、対応するポンプ10a、10b、10cによってスタチックミキサー11に送られ、ここで要求される規格を満足する、すなわち要求されるオクタン価とリード蒸気圧とを有する製品としてのガソリンに製造される。このような各基材、すなわちLPG、軽質ナフサ、改質ガソリン基材からの製品ガソリンへの調製は、得られた製品ガソリンのオクタン価とリード蒸気圧とをオクタン価計測器12とリード蒸気圧計測器13とによってリアルタイムに計測され、得られた結果に基づいて製品ガソリンが規格を満たすように各基材のスタチックミキサー11への供給量(流量)を制御装置14によって制御し、これら基材のブレンド比を変えることによって行っている。
【0009】
なお、ポンプ10a、10b、10cとスタチックミキサー11とを結ぶ配管中には、それぞれ流量計15a、15b、15c、流量制御弁16a、16b、16c等が設けられ、各流量制御弁には弁の開閉度を制御する制御器17a、17b、17cが設けられている。前記オクタン価計測器12とリード蒸気圧計測器13の各計測値に応じて制御装置14によりそれぞれの流量制御弁16a、16b、16cの開閉度を制御することにより各基材が所望する量、スタチックミキサー11に送られ、常時完全混合の条件を確保するようになっている。
スタチックミキサー11の出口側には背圧制御弁19が設けられており、さらにその下流側には製品ガソリンタンク(図示略)が設けられている。そして、スタチックミキサー11でブレンドされて得られた製品としてのガソリンは、製品ガソリンタンクで貯留された後、タンカーやローリーによって出荷されるようになっている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年においては、ガソリンの製造現場においても敷地の有効利用が望まれるようになっており、例えば新規にガソリンの製造装置を建設する場合や、既存の製造装置を改修する場合に、より設備構成を簡略した製造装置とし、敷地の有効利用(改修の場合には敷地の転用)、装置の製造(改修)コスト低減、さらにはメンテナンスの容易化などが要求されるようになってきている。
【0011】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、前記の要求に応えるべく、特に設備構成を簡略化して装置設置面積の縮小化を可能にした、ガソリンの製造装置及びガソリンの製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、既存の装置において、特に大きな占有面積を有する各基材のタンクを低減することが前記課題の解決に有効であるとの考えに至り、これを達成するべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明のガソリンの製造装置では、ナフサ留分を接触改質処理して改質ガソリン基材を得る接触改質手段と、改質ガソリン基材に他のガソリン基材を混合して製品ガソリンを得る混合手段と、製品ガソリンのオクタン価とリード蒸気圧を計測する計測手段とを備え、計測手段の計測値に基づき、前記接触改質手段の運転条件を制御する制御手段を設けたことにより前記課題を解決した。
【0014】
他の本発明のガソリンの製造装置では、原料油から少なくともLPG留分とナフサ留分とを分離する第1分離手段と、ナフサ留分を水素化精製処理して精製ナフサを得る水素化精製手段と、精製ナフサを軽質ナフサと重質ナフサとに分離する第2分離手段と、重質ナフサを接触改質処理して改質ガソリンを得る接触改質反応器と改質ガソリンから軽質留分を分離して改質ガソリン基材を得るスタビライザとを備えた接触改質手段と、改質ガソリン基材に他のガソリン基材として前記軽質ナフサとLPG留分とを混合して製品ガソリンを得る混合手段と、製品ガソリンのオクタン価を計測するオクタン価計測器とリード蒸気圧を計測するリード蒸気圧計測器とを有する計測手段とを備え、計測手段のオクタン価計測器の計測値に基づき接触改質反応器の運転条件を制御する制御手段と、リード蒸気圧計測器の計測値に基づきスタビライザの運転条件を制御する制御手段を備えたことにより前記課題を解決した。
【0015】
また、本発明のガソリンの製造方法では、重質ナフサ留分を接触改質処理して改質ガソリン基材を得る接触改質工程と、改質ガソリン基材に他のガソリン基材を混合して製品ガソリンを得る混合工程と、製品ガソリンのオクタン価とリード蒸気圧を計測する計測工程とを有し、計測工程の計測値に基づき、前記接触改質工程の運転条件を制御することにより前記課題を解決とした。
【0016】
他の本発明のガソリンの製造方法では、原料油から少なくともLPG留分とナフサ留分とを分離する第1の分離工程と、ナフサ留分を水素化精製処理して精製ナフサを得る水添脱硫工程と、精製ナフサを軽質ナフサと重質ナフサとに分離する第2分離工程と、重質ナフサを接触改質処理して改質ガソリン基材を得る接触改質工程とを有し、改質ガソリン基材に他のガソリン基材を混合して製品ガソリンを製造するガソリン製造方法であって、前記製品ガソリンのオクタン価とリード蒸気圧とを計測し、その計測値に基づき接触改質工程の運転条件を制御することにより前記課題を解決した。
【0017】
前記従来のガソリンの製造装置では、得られた製品ガソリンのオクタン価とリード蒸気圧とを計測し、得られた結果に基づいて各基材、すなわちLPG、軽質ナフサ、改質ガソリンの各基材のブレンド比を変えるようにしているため、当然これら各基材については、予め設定された範囲の性状(製品としてのガソリンの規格、すなわちオクタン価およびリード蒸気圧に関係する性状)のものが、製造しようとするガソリンの量に対して不足しないように十分な量がなければならず、したがって予め性状の均質化を確保するべくブレンド用のタンク6b、7b、9bが必要となり、さらには貯留などのため受け入れ用のタンク6a、7a、9aも必要となっている。
【0018】
一方、本発明のガソリンの製造装置及びガソリンの製造方法によれば、ブレンドして得られたガソリンのオクタン価とリード蒸気圧の計測結果に基づき、接触改質装置の運転条件を制御するようにし、これによりここで得られる改質ガソリン基材のオクタン価とリード蒸気圧とを調整するようにしたので、各基材の流量比(ブレンド比)に関係なく得られる製品ガソリンの規格を満足させるように調製することができ、したがって従来必要であった各基材毎にブレンド用タンクと受け入れ用(貯留用)タンクとを備える必要がなくなる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
図1は本発明のガソリンの製造装置の一実施形態例を示す図であり、図1において符号1は原油常圧蒸留装置、20はガソリンの製造装置である。図1に示したガソリンの製造装置20が図4に示したガソリンの製造装置2と異なるところは、主にスタチックミキサーで混合調製された製品としてのガソリンのオクタン価およびリード蒸気圧の計測値に基づき、各基材のブレンド比を調整するのに代えて、接触改質装置8の運転条件を制御するようにした点である。
【0020】
図1に示したガソリンの製造装置20は、図1に示したガソリンの製造装置2と同様にLPG回収装置3とナフサ水素化精製装置4とナフサスプリッター5とを備え、従来とは異なる外部から運転条件が制御可能な接触改質装置28とを備えてなるものである。
LPG回収装置3は、原油常圧蒸留装置1から送られてきたLPGとそれより軽質な留分と、ナフサ水素化精製装置4から送られてきたLPGとそれより軽質な留分とから、従来と同様に、LPGとそれより軽質なガス成分とを回収する装置である。
【0021】
LPG回収装置3で回収されたLPGは、LPG製品タンク6に接続する配管と後述するガソリンを調製するスタチックミキサー11に接続する配管に分岐し、後者の配管には流量計21と流量制御弁22とが設けられ、流量制御弁22にはその弁開閉度を制御する制御器23が設けられている。
ナフサ水素化精製装置4は、送られてきたナフサ留分を水素化し脱硫することにより精製ナフサを得る装置であり、精製ナフサはナフサスプリッター5に送られ、軽質ナフサと重質ナフサとに分留される。
【0022】
接触改質装置28は、ナフサスプリッター5から送られてきた重質ナフサを接触改質処理して改質ガソリン基材を得るもので、それぞれ運転条件が制御可能な改質反応器28aとスタビライザ28bとを備え、改質反応器28aの水素気流中で高温、加圧下で触媒と接触させ、高オクタン価の改質ガソリンを得るとともに、スタビライザ28bにおいて改質ガソリンからLPG留分を除去して改質ガソリン基材を得るための装置である。
【0023】
接触改質反応器28aは、その運転過酷度、具体的には温度などを上げる(過酷度を上げる)ことにより、得られる生成油(改質ガソリン)のオクタン価を上げることができ、逆に下げる(過酷度を下げる)ことにより、得られる生成油(改質ガソリン)のオクタン価を下げることができるようになっている。
図2は、接触改質反応器28aの平均入口温度と、接触改質反応装置28出口の改質ガソリン基材のオクタン価との関係の一例を示すグラフである。図2より、平均入口温度を上げる、すなわち運転過酷度を上げることにより、得られる改質ガソリン基材のオクタン価が上がることが分かる。
【0024】
スタビライザ28bは、接触改質反応器28aから送られてきた生成油に対し、リード蒸気圧の支配因子であるLPG留分を分離除去する装置であり、そのLPG留分の除去度合を制御可能になっている。すなわち、脱ブタン運転や脱プロパン運転などを選択的に行うもので、脱ブタンあるいは脱プロパンの量を制御することにより、得られる改質ガソリン基材のリード蒸気圧を調整できるようになっている。なお、脱ブタン運転では当然脱プロパンもなされるようになっており、したがって脱ブタン運転の方が脱プロパン運転よりリード蒸気圧の低減に高い効果を示すようになっている。
【0025】
このような構成のもとに、得られる改質ガソリン基材のリード蒸気圧が低すぎる場合には、改質ガソリン基材のリード蒸気圧を上げるようにスタビライザ28bの運転モードを脱プロパンとし、あるいはプロパンの一部を残して改質ガソリン基材中に混入させ、得られる改質ガソリン基材のリード蒸気圧を相対的に上げることができるようになっている。一方、得られる改質ガソリン基材のリード蒸気圧が高すぎる場合には、改質ガソリン基材のリード蒸気圧を下げるようにスタビライザ28bの運転モードを脱ブタンとし、プロパンはもちろんブタンを除去する運転とすることにより、得られる改質ガソリン基材のリード蒸気圧を相対的に下げることができるようになっている。
【0026】
図3は、接触改質反応器28aの平均入口温度と、製品ガソリンのリード蒸気圧との関係を示す図であり、接触改質装置28で得られた改質ガソリン基材に軽質ナフサのみを混合し、LPGを加えていない製品ガソリンのリード蒸気圧がスタビライザ28bの運転モードでどのように変化するかを図示している。図3より、脱ブタン運転の方が脱プロパン運転より製品ガソリンのリード蒸気圧の低減に高い効果を示すことが分かる。
【0027】
これらLPG回収装置3、ナフサ水素化精製装置4、ナフサスプリッター5、接触改質装置28で得られた各基材、すなわちLPG、軽質ナフサ、改質ガソリンは、それぞれその出口側に接続された配管を通り、特に本例においては接触改質装置28の出口側(下流側)に接続された配管に合流されるようになっている。なお、各装置3、4、5、28に接続した各配管にはそれぞれ逆止弁(図示せず)が設けられており、逆止弁を流れ出た基材が逆流しないようになっている。
【0028】
接触改質装置28の出口側(下流側)の配管中には、ここで合流された各基材を回分式でなく連続的にブレンドするためのスタチックミキサー11が配設されている。このスタチックミキサー11は、図4に示したスタチックミキサー11と同様のもので、配管によって送られてきて各基材の混合物を攪拌混合し、均質にブレンドするためのものである。
【0029】
スタチックミキサー11の出口側(下流側)に接続された配管には、計測手段を有する。すなわち、ブレンドして得られた製品ガソリンのオクタン価を連続的に計測するオクタン価計測器12とリード蒸気圧を連続的に計測するリード蒸気圧計測器13とが設けられている。これらオクタン価計測器12およびリード蒸気圧計測器13は、スタチックミキサー11から流れ出た製品としてのガソリンを、その流れを止めることなくオクタン価あるいはリード蒸気圧を計測するものである。なお、本発明においてこれら計測器12、13がオクタン価あるいはリード蒸気圧を「連続的に計測する」との意は、「ガソリンの流れを止めることなくこの流れを連続させた状態のままで計測する」との意であり、計測そのものについては連続的でなく断続的に行うものであってもよい。
【0030】
このような計測をなすオクタン価計測器12としては、オンストリームオクタンエンジンが好適に用いられ、またリード蒸気圧計測器13としては、RVP(リード蒸気圧)アナライザが好適に用いられる。なお、これらに代えて、例えばNIR(Near Infrared Spectroscopic Analyzer);近赤外スペクトル分析計)やNMR(Nuclear Magnetic Resonance Analyzer )核磁気共鳴分析計を用いることも可能である。
【0031】
これらオクタン価計測器12およびリード蒸気圧計測器13には、得られた計測値に基づいて接触改質装置28の処理条件を制御する制御装置24が接続されている。この制御装置24には、製品ガソリンに要求されるオクタン価とリード蒸気圧の基準値(所定の範囲をそれぞれ有する)が予め設定されており、オクタン価計測器12で計測されたガソリンのオクタン価と基準値とを比較しその比較に基づいて、接触改質装置28中の接触改質反応器28aの運転条件を変化させ、一方、リード蒸気圧計測器13で計測されたガソリンのリード蒸気圧とその基準値とを比較しその比較に基づいて、接触改質装置28中のスタビライザ28bの運転条件を変化させるよう構成されたものである。
【0032】
すなわち、この制御装置24は、例えばオクタン価計測器12で計測された製品ガソリンのオクタン価が所望する基準値の下限より低い場合には、接触改質反応器28aの運転過酷度、具体的にはその温度(入り口温度)を上げる(過酷度を上げる)ことにより、得られる生成油(改質ガソリン)のオクタン価を上げて目標範囲の下限値以上となるようにし、逆に上限値より高い場合には、温度(入り口温度)を下げる(過酷度を下げる)ことにより得られる生成油(改質ガソリン)のオクタン価を下げて目標範囲の上限値以下となるようにする。
【0033】
また、リード蒸気圧計測器13で計測された製品ガソリンのリード蒸気圧が所望する基準値の下限より低い場合には、スタビライザ28bの運転モードを脱プロパンとし、あるいはプロパンの一部を残して改質ガソリン中に混入させる運転とすることにより、得られる改質ガソリン基材のリード蒸気圧を相対的に上げて目標範囲の下限値以上となるようにし、逆に上限値より高い場合には、スタビライザ28bの運転モードを脱ブタンとし、プロパンはもちろんブタンの量を低減する運転とすることにより得られる改質ガソリン基材のリード蒸気圧を相対的に下げて目標範囲の上限値以下となるようにする。
このようにスタビライザ28bで改質ガソリン基材中のLPG留分の濃度を制御することにより、従来スタビライザで完全に分離していたLPGを、本発明においては一定以上の濃度で含有させることができ、スタビライザの運転エネルギーを節約できる効果がある。また、改質ガソリン基材にLPGを添加しなくてもリード蒸気圧を満足する場合には、スタビライザ28bの運転条件だけで制御することも可能になる。
【0034】
ここで、このような制御装置24による制御は、図2あるいは図3に示したようなデータ、およびこれらデータからの計算値に基づき、計測値が所望範囲から外れた際に直ちに所望範囲に復帰するようにして行われる。
スタチックミキサー11の出口側には背圧制御弁19が設けられており、さらにその下流側には製品ガソリンタンク(図示略)が設けられている。そして、スタチックミキサー11ブレンドされて得られた製品としてのガソリンは、図4に示した従来の場合と同様に、製品ガソリンタンクで貯留された後、タンカーやローリーによって出荷されるようになっている。
【0035】
次に、このようなガソリンの製造装置20によるガソリンの製造方法に基づき、本発明のガソリンの製造方法の一例を説明する。
まず、従来と同様に原油を原油常圧蒸留装置1に供給し、この原油常圧蒸留装置1で原油を常圧蒸留することにより、LPGとそれより軽質な留分とナフサ留分とそれ以外(例えば灯油、軽油、重質軽油)に分離する。
【0036】
続いて、LPGとそれより軽質な留分についてはLPG回収装置3に、またナフサ留分についてはナフサ水素化精製装置4にそれぞれ供給される。ナフサ水素化精製装置4では、送られてきたナフサ留分を水素化脱硫してLPGとそれより軽質な留分と精製ナフサとに分離し、得られたLPGとそれより軽質な留分についてはLPG回収装置3に送り、精製ナフサについてはナフサスプリッター5に送られそこで軽質ナフサと重質ナフサに分留され、重質ナフサついては接触改質装置28に送られる。また、軽質ナフサについては、接触改質装置28の出口側(下流側)に接続された配管に直接流入せしめる。
なお、それぞれの装置おいて、LPGより軽質な留分すなわち、水素、メタンを主成分としたガス成分に関しては分離手段、分離工程、さらには水素化精製工程に供給、回収される水素ガスラインは図面に省略しているが、公知の手段で、供給、分離、回収されるものとする。
【0037】
LPG回収装置3で回収されたLPGについては、LPG製品タンク6に送られる配管とスタチックミキサー11に接続する配管とに分岐し、後者の配管に設けられる流量制御弁22によりスタチックミキサーに供給されるLPG留分の流量が制御される。
【0038】
接触改質装置28に送られてきた重質ナフサについては、前述したようにオクタン価計測器12およびリード蒸気圧計測器13で得られた計測値に基づいて制御をなす制御装置24により、接触改質装置28の処理条件、すなわち接触改質反応器28aの運転条件とスタビライザ28bの運転条件とを制御しつつ処理を行い、改質ガソリン基材を製造する。そして、得られた改質ガソリン基材を、接触改質装置28の出口側(下流側)に接続された配管に流出せしめる。
【0039】
このようにして配管に各基材、すなわちLPG、軽質ナフサ、改質ガソリンを流すと、これらは合流した状態でスタチックミキサー11に流入し、ここで均質にブレンドされて製品としてのガソリンとされる。そして、この製品ガソリンはスタチックミキサー11を出ると、そのオクタン価、リード蒸気圧がオクタン価計測器12、リード蒸気圧計測器13で計測され、得られた計測値が前述したように制御装置24にフィードバックされることにより、接触改質装置28の運転の適正化がなされる。したがって、スタチックミキサー11を出たガソリンはそのオクタン化またはリード蒸気圧が仮に一時的に所望範囲を外れたとしても、これを検知して直ちに接触改質装置28の運転の適正化がなされることから、すぐに所望範囲に復帰し、結果として製品ガソリンはそのオクタン価およびリード蒸気圧が所望範囲内にあるものとなる。
【0040】
このようなガソリンの製造装置20およびこれによるガソリンの製造方法にあっては、ブレンドして得られたガソリンのオクタン価とリード蒸気圧の計測結果に基づき、接触改質装置28の運転条件を制御するようにし、これによりここで得られる改質ガソリンのオクタン価とリード蒸気圧とを調整するようにしたので、各基材の流量比(ブレンド比)を変えることなく得られる製品ガソリンの規格を満足させるように調製することができ、したがって従来のごとく各基材毎にブレンド用タンクと受け入れ用タンクとを備える必要がなくなり、よって例えば図4に示した従来のガソリンの製造装置2におけるタンク6b、7a、7b、9a、9bやこれに付随するポンプ10a、10b、10cなどをなくすことができ、装置の設置に必要とされる敷地の縮小化等を図ることができる。
【0041】
なお、本発明は前記実施形態例に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない限り適宜設計的な変更が可能である。例えば、図1に示したように、LPG回収装置3の出口側(下流側)の配管に、ナフサ水素化精製装置(分離装置)以外から軽質分としてLPG等の添加材を供給するべく、外部からのLPG等供給用としての供給配管を接続し、LPG回収装置3から送られてくるLPGに加えて、外部からのLPG等をスタチックミキサーに送るようにしてもよい。
さらには、LPG回収装置3からのLPGの供給配管を省略して、外部からのアルキルガソリン等の添加剤の供給配管を接続することも可能である。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のガソリンの製造装置及びガソリンの製造方法は、ブレンドして得られたガソリンのオクタン価とリード蒸気圧の計測結果に基づき、接触改質装置の処理条件を制御するようにし、これにより得られる改質ガソリンのオクタン価とリード蒸気圧とを調整するようにしたものであるから、各基材の流量比(ブレンド比)を変えることなく得られる製品ガソリンの規格を満足させるように調製することができ、したがって従来のごとく各基材毎にブレンド用タンクと受け入れ用タンクとを備える必要がなくなり、よって従来のガソリンの製造装置のごとく各基材に対応するタンクやこれに付随するポンプなどをなくすことができる。
【0043】
したがって、装置の設置に必要とされる敷地の縮小化等を図ることができ、これにより新規にガソリンの製造装置を製造する場合や、既存の製造装置を改修する場合に、敷地の有効利用や装置の製造(改修)コスト低減、さらにはメンテナンスの容易化などを可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のガソリンの製造装置の一実施形態例の概略構成を示すフロー図である。
【図2】 接触改質反応器の平均入り口温度と、得られる生成油(改質ガソリン基材)のオクタン価との関係の一例を示すグラフである。
【図3】 接触改質反応器の入り口温度と、改質ガソリン基材に軽質ナフサのみを混合した製品ガソリンのリード蒸気圧との関係において、スタビライザの脱プロパン運転と脱ブタン運転とを比較したグラフである。
【図4】 従来のガソリンの製造装置の一例の概略構成を示すフロー図である。
【符号の説明】
20:ガソリン製造装置、3:LPG回収装置、4:ナフサ水素化精製装置、28:接触改質装置、28a:接触改質反応器(接触改質器)、
28b:スタビライザ、11:スタチックミキサー、12:オクタン価計測器、13:リード蒸気圧計測器、24:制御装置
Claims (9)
- ナフサ留分を接触改質処理して改質ガソリン基材を得る接触改質手段と、改質ガソリン基材に他のガソリン基材を混合して製品ガソリンを得る混合手段と、製品ガソリンのオクタン価とリード蒸気圧を計測する計測手段とを備え、
計測手段の計測値に基づき、前記接触改質手段の運転条件を制御する制御手段を設けたガソリンの製造装置。 - 前記制御手段は、製品ガソリンのオクタン価の計測値に応じて接触改質手段の改質反応条件を制御する請求項1記載のガソリンの製造装置。
- 前記制御手段は、製品ガソリンのリード蒸気圧の計測値に応じて接触改質手段のスタビライザの運転条件を制御する請求項1又は2記載のガソリンの製造装置。
- 原料油から少なくともLPG留分とナフサ留分とを分離する第1分離手段と、ナフサ留分を水素化精製処理して精製ナフサを得る水素化精製手段と、精製ナフサを軽質ナフサと重質ナフサとに分離する第2分離手段と、重質ナフサを接触改質処理して改質ガソリンを得る接触改質反応器と改質ガソリンから軽質留分を分離して改質ガソリン基材を得るスタビライザとを備えた接触改質手段と、改質ガソリン基材に他のガソリン基材として前記軽質ナフサとLPG留分とを混合して製品ガソリンを得る混合手段と、製品ガソリンのオクタン価を計測するオクタン価計測器とリード蒸気圧を計測するリード蒸気圧計測器とを有する計測手段とを備え、
計測手段のオクタン価計測器の計測値に基づき接触改質反応器の運転条件を制御する制御手段と、リード蒸気圧計測器の計測値に基づきスタビライザの運転条件を制御する制御手段を備えたガソリンの製造装置。 - ナフサ留分を接触改質するとともにオクタン価とリード蒸気圧を調整してガソリンを製造するガソリン製造装置であって、
重質ナフサ留分を接触改質処理して改質ガソリンを得る改質反応器と改質ガソリンから軽質留分を分離するスタビライザとを有する接触改質手段と、
改質ガソリン基材に他のガソリン基材を混合して製品ガソリンを得る混合手段と、
製品ガソリンのオクタン価を計測するオクタン価計測器と製品ガソリンのリード蒸気圧を計測するリード蒸気圧計測器とを有する計測手段と、
オクタン価計測器の計測値に基づき改質反応器の運転条件を制御する制御手段とリード蒸気圧計測器の計測値に基づきスタビライザの運転条件を制御する制御手段と、を備えたガソリンの製造装置。 - 重質ナフサ留分を接触改質処理して改質ガソリン基材を得る接触改質工程と、改質ガソリン基材に他のガソリン基材を混合して製品ガソリンを得る混合工程と、製品ガソリンのオクタン価とリード蒸気圧を計測する計測工程とを有し、
計測工程の計測値に基づき、前記接触改質工程の運転条件を制御するガソリンの製造方法。 - 原料油から少なくともLPG留分とナフサ留分とを分離する第1の分離工程と、ナフサ留分を水素化精製処理して精製ナフサを得る水添脱硫工程と、精製ナフサを軽質ナフサと重質ナフサとに分離する第2分離工程と、重質ナフサを接触改質処理して改質ガソリン基材を得る接触改質工程とを有し、改質ガソリン基材に他のガソリン基材を混合して製品ガソリンを製造するガソリン製造方法であって、
前記製品ガソリンのオクタン価とリード蒸気圧とを計測し、その計測値に基づき接触改質工程の運転条件を制御するガソリンの製造方法。 - 前記接触改質工程の運転条件の制御が、製品ガソリンのオクタン価の計測値に応じ、基準値より低い場合は改質反応器の反応温度を上げ、基準値より高い場合は反応温度を下げる運転条件で実施する請求項6又は7記載のガソリンの製造方法。
- 前記接触改質工程の運転条件の制御が、製品ガソリンのリード蒸気圧の計測値に応じ、基準値より低い場合はスタビライザの軽質留分の除去率を下げ、基準値より高い場合は軽質留分の除去率を上げる運転条件で実施する請求項6〜8のいずれかに記載のガソリンの製造方法。
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