JP3639133B2 - 高速細線同軸ケーブル及び高速細線フラット同軸ケーブル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、同軸ケーブル及びフラット同軸ケーブルに関する。更に詳しくは、コンピュータ等の内部配線等に使用されるケーブルで、特に端末加工性を向上させた高速細線同軸ケーブル及び高速細線フラット同軸ケーブルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の技術の進歩により、各種情報機器で取り扱われる信号が高周波化するに伴い、機器内外で使用される同軸ケーブルにも高速信号伝送性が求められるようになってきている。この要求に答える同軸ケーブルとして高速細線同軸ケーブルが上市されている。また、一方では材料費や加工費、加工工数の削減による低コスト競争も一段と激しさを増している。
【0003】
従来の高速細線同軸ケーブルについて、図6を用いて説明する。高速細線同軸ケーブル(9a)は、中心導体(1)の外周に絶縁体(絶縁層)(2)及びスキン層(3)を設けて絶縁体コア(c)とし、この絶縁体コア(c)の外側にドレイン線 (4)を縦添えし、前記絶縁体コア(c)とドレイン線 (4)を囲包するようにアルミポリエステルテープを縦添え若しくは螺旋巻きして外部導体(7)を設け、更にこの外周にジャケット(8)を被覆した構成が一般的である。
【0004】
実際の使用にあたっては、前記高速細線同軸ケーブル(9a)の2〜40本を整列し、フラット化して、例えば図7に示す高速細線フラット同軸ケーブル(10a)とし、コネクタをアセンブリした状態で各種情報機器に組み込まれる。前記高速細線フラット同軸ケーブルは、絶縁層に多孔質四弗化エチレン樹脂テープを用い、凡そ3.8ns/mの信号伝播遅延時間を有している。また端末加工工程で、加工機によりジャケットを一括剥離し、絶縁体コアとドレイン線を露出させコネクタに圧接している。上記Assy方法は半田付けによるAssy方法と比較し加工工数が削減できコストパフォーマンスに優れている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、高速信号伝送性を有する従来型ケーブルの絶縁層は空隙率が高いが為に非常に柔らかく、ドレイン線が絶縁層に食い込んだ状態になっている。そのため、端末加工工程で、加工機によりジャケットを一括剥離すると、絶縁体コアとドレイン線は密着しているため、コネクタへ装着する前に両者を改めて串刃により分離する工程が必要になる。この分離が不十分であると、コネクタ圧接端子への位置決めがうまくいかず圧接不良になるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記従来技術が有する各種問題点を解決するためになされたものであり、従来の高速細線同軸ケーブルと同等の高速信号伝送性を有し、且つ端末加工性を向上させた高速細線同軸ケーブル及び高速細線フラット同軸ケーブルを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
第1の観点として本発明は、中心導体(1)の外周に絶縁体(2)及びスキン層(3)を設けて絶縁体コア(c)とし、この絶縁体コア(c)の外側にドレイン線 (4)を縦添えし、前記絶縁体コア(c)とドレイン線 (4)を囲包するように金属ラミネートテープ、金属蒸着テープ若しくは金属テープからなる導電性テープにて外部導体(7)を形成し、更にこの外部導体(7)の外周にジャケット層(8)を被覆してなる高速細線同軸ケーブルであって、前記ドレイン線 (4)の外周に、導電層(5)を被覆し、ドレイン線 (4)の外径を太らせてドレイン導電体(6)とし、また、前記導電層 (5) の厚さを調整することにより、中心導体 (1) −ドレイン線 (4) 間のピッチをコントロールする高速細線同軸ケーブル(9)を提供する。
【0008】
上記第1の観点の高速細線同軸ケーブル(9)では、ドレイン線(4)の外周に導電層(5)が被覆されて外径が太くなっているドレイン導電体(6)を絶縁体コア(c)の外側に縦添えしているため、ドレイン線(4)(ドレイン導電体(6))が絶縁体コア(c)に食い込むことがない。従って、端末加工工程の加工機でジャケット層(8)を剥離した際には、絶縁体コア(c)とドレイン線(4)とが密着状態で露出することが無くなる。
また、前記ドレイン線(4)外周の導電層(5)の厚さを調整することにより、特性インピーダンスや伝播遅延時間の電気特性を変えることなく中心導体(1) −ドレイン線(4) 間のピッチをコントロールすることができる。なお、導電層(5)の厚さの調整は、例えば導電性テープを用いる場合は、テープ厚さ、ラップ数、或いは巻回し回数等を変えることにより可能である。
【0009】
第2の観点として本発明は、前記ドレイン線 (4)の外周の導電層(5)は、テープ厚さ(t)が0.01mm≦t≦0.06mmの両面金属ラミネートテープ、両面金属蒸着テープ若しくは金属テープからなる導電性テープが低いテープテンションでの巻回しにより形成され、ドレイン線 (4)表面との電気的接触を保ちつつも密着性が低く形成されている高速細線同軸ケーブル(9)を提供する。
【0010】
上記第2の観点の高速細線同軸ケーブル(9)では、上記のように導電層(5)が低いテープテンションでの巻回しによりドレイン線(4)表面との密着性が低く形成されているので、ドレイン線(4)−導電層(5)間で滑り性があり、端末加工工程のジャケット剥離時、ドレイン線の導電層も一括除去できる。なお、低いテープテンションとは、厚さ(t)が0.06mmよりも大きい場合と比較し2割程度のテープテンションを意味する。また、前記ドレイン線(4)の外周に被覆する導電性テープの厚さ(t)を0.01mm≦t≦0.06mmの範囲に限定した理由は、導電性テープの機械的強度、巻回し加工時の作業性、ケーブルの可撓性を考慮してのことであり、実際にはドレイン線(4)と導電層(5)との滑り性を確保する必要性から薄手のものが望ましい。
【0011】
第3の観点として本発明は、前記請求項1または2記載の高速細線同軸ケーブル(9)の複数本を整列してフラット化させた高速細線フラット同軸ケーブル(10)を提供する。
【0012】
上記第3の観点の高速細線フラット同軸ケーブルは、前記高速細線同軸ケーブルの複数本が整列されてフラット化されている。従って、端末加工工程の加工機でジャケット層(8)を剥離した際には、絶縁体コア(c)とドレイン線(4)とが密着状態で露出することが無くなり、適度に分離した状態で露出するため、絶縁体コア(c)とドレイン線(4)の整列が容易に行える。つまり、ジャケット層(8)の剥離後、改めて露出した絶縁体コア(c)とドレイン線(4)とを串刃により分離する工程が不要になり、これにより端末加工性向上、加工工数削減、及びタクトアップが計れる。また両者の分離が不十分で、コネクタ圧接端子への位置決めがうまくいかない場合に発生する圧接不良も防止できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の内容を、図に示す実施の形態により更に詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
図1は本発明の一実施形態の高速細線同軸ケーブルの断面構造図である。図2は本発明の一実施形態の高速細線フラット同軸ケーブルの断面構造図である。図3は本発明の一実施形態の高速細線フラット同軸ケーブルの端末加工後(ジャケット層剥離後)のケーブル端末を示す写真図である。図4は中心導体及びドレイン線の番手変更時の導体間ピッチとケーブル構造図の一例である。また図5は中心導体及びドレイン線の番手変更時の導体間ピッチとケーブル構造図の他の例である。
これらの図において、1は中心導体、2は絶縁体、3はスキン層、4はドレイン線、5は導電層、6はドレイン導電体、7は外部導体、8はジャケット層、9は高速細線同軸ケーブル、10は高速細線フラット同軸ケーブル、cは絶縁体コア、pは中心導体−ドレイン線間ピッチ、p1は導体間ピッチである。
【0014】
−実施の形態1−
本発明の高速細線同軸ケーブルの実施形態1について、図1を用いて説明する。中心導体(1)として外径0.203mmの銀めっき銅合金線を用い、この外周に絶縁体(2)として多孔質四弗化エチレン樹脂(PTFE)テープを0.150mmの厚さで被覆し、その外側にスキン層(3)として合成樹脂テープ巻き層を0.010mmの厚さで設けて絶縁体コア(c)とした。次に前記絶縁体コア(c)の外側に外径0.203mmの銀めっき銅合金線からなるドレイン線(4)に0.109mmの厚さで導電層(5)を被覆したドレイン導電体(以下、導電体と略記する)(6)を縦添えし、次に導電性テープの螺旋巻にて前記絶縁体コア(c)及び導電体(6)を包囲するように外部導体(7)を形成した。更にその外側におよそ0.25mmの厚さで熱可塑性樹脂、例えばPVCのジャケット層(8)を被覆し高速細線同軸ケーブル(9)を製造した。
【0015】
なお、前記導電体(6)の導電層(5)は0.010〜0.200mmの厚さが好ましく、例えばテープ厚さ(t) が0.050mmの両面アルミラミネートポリエステルテープ(アルペットアルミ)の螺旋巻により形成されるが、アルペットアルミ以外にも、他の両面金属ラミネートテープや両面金属蒸着テープ、両面カーボンコートテープ、金属テープ、片面金属ラミネート(蒸着)(カーボンコート)テープの導電面外側二つ折り等を用いても何等差し支えない。またテープ厚さ(t)も0.010〜0.060mmまで可変出来る。また外部導体(7)の導電性テープとしては、例えば厚さ0.015mmのアルミポリエステルテープを導電面下向きで使用するが、前記導電層(5)用の導電性テープを用いても良い。
【0016】
−実施の形態2−
前記実施形態1の導電層(5)の厚さを0.170mmに変える以外は、実施形態1の同軸ケーブルと同一構造として高速細線同軸ケーブル(9)を製造した。
【0017】
−特性試験−
前記実施形態1及び2の同軸ケーブルについて中心導体−ドレイン線間ピッチと電気特性を試験した結果を下記表1に示す。なお、比較形態1は前記実施形態1の導電体(6)の代わりに外径0.203mmの銀めっき銅合金線からなるドレイン線を使用し、他は実施形態1の高速細線同軸ケーブルと同一構造の同軸ケーブルである。
【0018】
【表1】
【0019】
上記表1の結果から明らかなように、導電体(6)の導電層(5)の厚さを変えて作製した本発明の同軸ケーブルでは、従来の同軸ケーブルでは不可能であった中心導体−ドレイン線間のピッチコントロールがなされていることが分かる。また電気特性面で本発明の同軸ケーブルと従来の同軸ケーブルとを比較すると、特性インピーダンス・伝播遅延時間ともに大差無いので、本発明の同軸ケーブルは従来品の優れた電気特性を維持していると言える。
【0020】
−実施の形態3−
本発明の高速細線フラット同軸ケーブルについて、図2を用いて説明する。
前記実施形態1の高速細線同軸ケーブル(9)を1ユニットとし、3ユニットを整列し、融着用の加熱板(図示せず)を用いて融着部を加熱し、ジャケット層の熱可塑性樹脂を軟化,融着させて高速細線フラット同軸ケーブル(10)を製造した。なお、この他の方法としては、紙粘着テープ等で固定する方法もある。また、整列するユニット数は例えば2〜40ユニットが可能である。
【0021】
−ジャケット層の剥離−
本発明の高速細線フラット同軸ケーブル(10)を、上下平刃加工機(図示せず)によりジャケット層 (8) を一括剥離した。その結果、外部導体(7)及びドレイン線(4)外周の導電層(5)も同時に剥離され、絶縁体コア(c)とドレイン線(4)とが適度に分離して露出した。この状態を図3の写真図に示す。
従って、絶縁体コアとドレイン線の整列性が良くなり、端末加工性の向上、加工工数の削減が可能となった。
【0022】
−実施の形態4、5−
本発明の実施形態4、5の高速細線フラット同軸ケーブルについて、図4、図5を用いて説明する。なお、これらのフラット同軸ケーブルは中心導体及びドレイン線の番手を変更し、導体間ピッチとケーブル構造を検討した結果である。
図4のフラット同軸ケーブルは、中心導体−ドレイン線間ピッチ(p)が0.33mmで、導体間ピッチ(p1)が1.0mmタイプで、中心導体,ドレイン線はAWG34で同軸単芯サイズが0.70×1.00mmである。
また図5のフラット同軸ケーブルは、中心導体−ドレイン線間ピッチ(p)が0.25mmで、導体間ピッチ(p1)が0.8mmタイプで、中心導体,ドレイン線はAWG38で同軸単芯サイズが0.60×0.80mmである。
【0023】
【発明の効果】
本発明の高速細線同軸ケーブル及び高速細線フラット同軸ケーブルは、ドレイン線の外周に厚さ( t )が0.01mm≦t≦0.06mmの両面金属ラミネートテープ、両面金属蒸着テープ若しくは金属テープが低いテープテンションでの巻回しにより、例えば0.010〜0.200mmの導電層を被覆した導電体をドレイン導電体として用いているため、端末加工工程のジャケット層剥離時、絶縁体コアとドレイン線の整列性に優れ、これにより加工工数が削減でき、タクトアップが図れ、更にはコネクタ圧接不良が防止できる。更に従来品と同等の優れた電気特性を維持しつつ、中心導体−ドレイン線間及び導体間でピッチコントロールが可能になる。従って、本発明は産業に寄与する効果が極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態の高速細線同軸ケーブルの断面構造図である。
【図2】 本発明の一実施形態の高速細線フラット同軸ケーブルの断面構造図である。
【図3】 本発明の一実施形態の高速細線フラット同軸ケーブルの端末加工後(ジャケット層剥離後)のケーブル端末を示す写真図である。
【図4】 中心導体及びドレイン線の番手変更時の導体間ピッチとケーブル構造図の一例である。
【図5】 中心導体及びドレイン線の番手変更時の導体間ピッチとケーブル構造図の他の例である。
【図6】 従来の高速細線同軸ケーブルの断面構造図である。
【図7】 従来の高速細線フラット同軸ケーブルの断面構造図である。
【符号の説明】
1 中心導体
2 絶縁体
3 スキン層
4 ドレイン線
5 導電層
6 ドレイン導電体
7 外部導体
8 ジャケット層
9 高速細線同軸ケーブル
10 高速細線フラット同軸ケーブル
c 絶縁体コア
p 中心導体−ドレイン線間ピッチ
p1 導体間ピッチ
Claims (3)
- 中心導体(1)の外周に絶縁体(2)及びスキン層(3)を設けて絶縁体コア(c)とし、この絶縁体コア(c)の外側にドレイン線 (4)を縦添えし、前記絶縁体コア(c)とドレイン線 (4)を囲包するように金属ラミネートテープ、金属蒸着テープ若しくは金属テープからなる導電性テープにて外部導体(7)を形成し、更にこの外部導体(7)の外周にジャケット層(8)を被覆してなる高速細線同軸ケーブルであって、
前記ドレイン線 (4)の外周に、導電層(5)を被覆し、ドレイン線 (4)の外径を太らせてドレイン導電体(6)とし、また、前記導電層 (5) の厚さを調整することにより、中心導体 (1) −ドレイン線 (4) 間のピッチをコントロールすることを特徴とする高速細線同軸ケーブル(9)。 - 前記ドレイン線 (4)の外周の導電層(5)は、テープ厚さ(t)が0.01mm≦t≦0.06mmの両面金属ラミネートテープ、両面金属蒸着テープ若しくは金属テープからなる導電性テープが低いテープテンションでの巻回しにより形成され、ドレイン線 (4)表面との電気的接触を保ちつつも密着性が低く形成されていることを特徴とする請求項1記載の高速細線同軸ケーブル(9)。
- 前記請求項1または2記載の高速細線同軸ケーブル(9)の複数本を整列してフラット化させたことを特徴とする高速細線フラット同軸ケーブル(10)。
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