JP3638752B2 - 樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリアセタール樹脂、熱可塑性ポリウレタンおよび末端に水酸基を有する特定の重合体を含有する樹脂組成物、並びに該樹脂組成物からなる成形品に関する。本発明の樹脂組成物は、引張強伸度、常温および低温での耐衝撃性などの力学的性能;耐摩耗性;成形加工性などに優れており、各種成形品の素材として有用である。
【0002】
【従来の技術】
ポリアセタール樹脂は、引張強伸度、電気的性質、耐薬品性、耐熱性等に優れるエンジニアリング樹脂として広く利用されている。ただし、ポリアセタール樹脂は耐衝撃性に劣り、そのため、耐衝撃性の改良方法としてゴム成分を配合する技術が知られている。ポリアセタール樹脂は極性が高いために、ポリアセタール樹脂のマトリックス中にゴム成分が微分散し耐衝撃性を効果的に発現することができるように、ゴム成分としては高極性の熱可塑性ポリウレタンなどが使用されている。しかし、ポリアセタール樹脂に熱可塑性ポリウレタンを配合した樹脂組成物においても、低温での耐衝撃性等においてまだ改良すべき点がある。
【0003】
一方、ポリアセタール樹脂の低温での耐衝撃性、耐候性等の改良のために、スチレン系ブロック共重合体を添加する試みがなされている。しかし、一般には、スチレン系ブロック共重合体が微分散せず、樹脂組成物を成形品にした場合、表層剥離が激しく、引張伸度の低下が著しい。
【0004】
また、ポリアセタール樹脂に、該ポリアセタール樹脂の微結晶融点以下の軟化点および−120℃〜+30℃の二次転移温度を有するエラストマーと、熱可塑性ポリウレタンとを配合してなる成形用組成物が、良好な耐衝撃性を有することが知られている(特公昭63−26138号公報)。しかしながら、該成形用組成物では、ポリアセタール樹脂に由来する引張強伸度の性能の低下が大きく、さらに、用途に応じては耐衝撃性が不足することがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、ポリアセタール樹脂および熱可塑性ポリウレタンを含有する樹脂組成物において、引張強伸度および常温での耐衝撃性に優れるのみならず、低温での耐衝撃性が改善された樹脂組成物を提供することにある。
本発明の第2の目的は、上記の特長が効果的に活用された成形品を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の目的を達成するべく検討した結果、ポリアセタール樹脂および熱可塑性ポリウレタンの組成物に、さらに特定の化学構造を有する重合体を配合することによって、引張強伸度および常温での耐衝撃性に優れるのみならず、低温での耐衝撃性が高度に改善されることを見いだし、さらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は第1に、
(1)熱可塑性ポリウレタン(A);分子主鎖が、主として、水素添加されていてもよい共役ジエン化合物単位(I)および芳香族ビニル化合物単位(II)からなり、単位(I)/単位(II)のモル比が10/90〜90/10の範囲内であり、かつ分子主鎖の末端に水酸基を有する重合体(B);およびポリアセタール樹脂(C)を含有し(ただし、熱可塑性ポリウレタン(A)の少なくとも一部および重合体(B)の少なくとも一部は、該重合体(B)の末端の水酸基の位置で該熱可塑性ポリウレタン(A)と化学反応して形成されうるブロック共重合体(D)の形で存在していてもよい)、
(2)上記(A)、(B)および(C)の合計重量に基づいて、(A)の割合が2.5〜90重量%であり、(B)の割合が2.5〜90重量%であり、(C)の割合が5〜95重量%である、
ことを特徴とする樹脂組成物である。
【0008】
また、本発明は第2に、上記樹脂組成物からなる成形品である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において熱可塑性ポリウレタン(A)は、例えば、高分子ジオール、有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤をウレタン化反応させて得ることができる。
【0010】
高分子ジオールとしては、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエステルポリカーボネートジオールなどのエステル系高分子ジオールが好ましい。高分子ジオールの数平均分子量は、1,500〜6,000であるのが好ましく、2,000〜6,000であるのがより好ましい。なお、本明細書でいう高分子ジオールの数平均分子量は、いずれもJIS K1577に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量である。
【0011】
上記ポリエステルジオールは、例えば常法に従って、ジカルボン酸またはそのエステル、無水物などのエステル形成性誘導体と低分子ジオールとを、直接エステル化反応もしくはエステル交換反応に付すことにより得られる。
ポリエステルジオールの製造原料として用いられるジカルボン酸としては、例えば、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン教、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸などの炭素数5〜12の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸などの芳香族ジカルボン酸などを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることかできる。これらのなかでも、炭素数が5〜12の脂肪族ジカルボン酸を使用するのが好ましく、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などを使用するのがより好ましい。
ポリエステルジオールの製造原料として用いられる低分子ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどの脂環式ジオールなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0012】
上記したポリカーボネートジオールは、例えば、低分子ジオールとジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネートなどのカーボネート化合物との反応により得られる。ポリカーボネートジオールの製造原料である低分子ジオールとしては、ポリエステルジオールの製造原料として先に例示した低分子ジオールを用いることができる。また、ジアルキルカーボネートとしてはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどを、アルキレンカーボネートとしてはエチレンカーボネートなどを、ジアリールカーボネートとしてはジフェニルカーボネートなどを挙げることができる。
【0013】
上記したポリエステルポリカーボネートジオールは、例えば、低分子ジオール、ジカルボン酸およびカーボネート化合物を同時に反応させることにより得られる。あるいは、ポリエステルポリカーボネートジオールは、予め上記した方法によりポリエステルジオールおよびポリカーボネートジオールをそれぞれ合成し、次いでそれらをカーボネート化合物と反応させるか、またはジオールおよびジカルボン酸と反応させることによって得られる。
【0014】
熱可塑性ポリウレタン(A)の製造に用いられる有機ジイソシアネートの種類は特に制限されず、通常の熱可塑性ポリウレタンの製造に従来から用いられている有機ジイソシアネートのいずれもが使用できるが、分子量500以下の芳香族、脂環式または脂肪族ジイソシアネートを、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用するのが好ましい。有機ジイソシアネートの好適な例としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらのなかでも、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを用いるのが好ましい。また、トリフェニルメタントリイソシアネートなどの3官能以上のポリイソシアネートを、必要に応じて少量用いることもできる。
【0015】
熱可塑性ポリウレタン(A)の製造に用いられる鎖伸長剤の種類は特に制限されず、通常の熱可塑性ポリウレタンの製造に従来から用いられている鎖伸長剤のいずれもが使用できるが、イソシアネート基(−NCO)と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上(好ましくは2個)有する分子量300以下の低分子化合物を用いるのが好ましい。該低分子化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、ビス−(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコールなどのジオール類;ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンまたはその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらのなかでも、炭素数2〜10の脂肪族ジオールを用いるのが好ましく、1,4−ブタンジオールを用いるのがより好ましい。鎖伸長剤の使用量は特に制限されず、ポリウレタンに付与すべき硬度などに応じて適宜選択することができるが、通常は、高分子ジオール1モル当たり、0.1〜10モルの割合で使用するのが好ましく、0.3〜7モルの割合で使用するのがより好ましい。
【0016】
熱可塑性ポリウレタン(A)の製造に当たっては、上記の高分子ジオール、有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤を、下記の数式;
【0017】
【数2】
0.9≦b/(a+c)≦1.1
【0018】
(式中、aは高分子ジオールのモル数を表し、bは有機ジイソシアネートのモル数を表し、cは鎖伸長剤のモル数を表す)
【0019】
を満足する割合で反応させることが好ましい。高分子ジオール、有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤を、上記数式を満足する割合で反応させて得られた熱可塑性ポリウレタンを用いることにより、力学的性能、耐摩耗性および成形加工性がより優れた樹脂組成物が得られる。
【0020】
熱可塑性ポリウレタン(A)の製造方法は特に制限されず、上記の高分子ジオール、有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤を使用し、公知のウレタン化反応技術を利用して、プレポリマー法、ワンショット法等の任意の方法で製造することができる。そのうちでも、溶剤の実質的な不存在下に溶融重合することが好ましく、特に多軸スクリュー型押出機を用いて連続溶融重合することが好ましい。
【0021】
なお、上記の高分子ジオール、有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤を用いて熱可塑性ポリウレタン(A)を製造するに当たって、ウレタン化反応に対して触媒活性を有するスズ系ウレタン化触媒を使用してもよい。スズ系ウレタン化触媒を使用すると、ポリウレタンの分子量が速やかに増大し、各種物性がより良好なポリウレタンを得るうえで有効である。スズ系ウレタン化触媒としては、例えば、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレートなどのジアルキルスズジアシレート;ジブチルスズビス(3−メルカプトプロピオン酸エトキシブチルエステル)塩などのジアルキルスズビスメルカプトカルボン酸エステル塩などを挙げることができる。スズ系ウレタン化触媒を使用する場合、その使用量は、ポリウレタンの重量(すなわち、ポリウレタンの製造に用いる高分子ジオール、有機ジイソシアネート、鎖伸長剤などの反応性原料化合物の全重量)に対して、スズ原子換算で0.5〜15ppmであるのが好ましい。
【0022】
熱可塑性ポリウレタン(A)の対数粘度は、n−ブチルアミンを0.05モル/リットル含有するN,N−ジメチルホルムアミド溶液に、熱可塑性ポリウレタンを濃度0.5g/dlになるように溶解し、30℃で測定したときに、0.5〜2.0dl/gであることが、力学的性能、耐摩耗性、非粘着性などにおいて良好な樹脂組成物が得られることから好ましい。この観点において、該対数粘度は0.8〜1.9dl/gであることがより好ましい。
【0023】
本発明に用いられる末端に水酸基を有する重合体(B)は、その分子主鎖が、主として、水素添加されていてもよい共役ジエン化合物単位(I)および芳香族ビニル化合物単位(II)から構成される。
【0024】
重合体(B)を構成する水素添加されていてもよい共役ジエン化合物単位(I)は、共役ジエン化合物から誘導される単位または該単位が水素添加された形の単位である。該共役ジエン化合物としては、例えば、イソプレン、1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどを挙げることができ、これらのなかでもイソプレンが好ましい。単位(I)は、重合体(B)中に1種または2種以上を含ませることができる。重合体(B)の主鎖中に存在する単位(I)における炭素−炭素二重結合は少なくとも部分的に水素添加されていることが、耐熱劣化性および耐候性などが優れた樹脂組成物が得られる点において好ましい。この観点において、単位(I)における炭素−炭素二重結合の50%以上が水素添加されている(すなわち、不飽和度が50%以下である)のがより好ましく、80%以上が水素添加されている(すなわち、不飽和度が20%以下である)のが特に好ましい。
重合体(B)を構成する芳香族ビニル化合物単位(II)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどの芳香族ビニル化合物から誘導される単位を挙げることができ、これらのなかでもスチレンから誘導される単位が好ましい。単位(II)は、重合体(B)中に1種または2種以上を含ませることができる。
【0025】
単位(I)/単位(II)のモル比は、重合体(B)とポリアセタール樹脂(C)との相溶性が良好となり、力学的性能、耐摩耗性などに優れた樹脂組成物が得られることから、10/90〜90/10の範囲内である。この観点において、単位(I)/単位(II)のモル比は20/80〜70/30の範囲内であるのがより好ましい。
重合体(B)の主鎖中における単位(I)および単位(II)の配列は、ランダム状、ブロック状およびテーパーブロック状のいずれの形態になっていてもよいが、得られる樹脂組成物の相溶性が一層良好であり、力学的性能、成形加工性などがより優れているという点において、各単位がそれぞれブロック状に配列しているのが好ましい。すなわち、重合体(B)は、主として単位(I)からなる重合体ブロックと、主として芳香族ビニル化合物単位(II)からなる重合体ブロックとをそれぞれ少なくとも1個ずつ含有しているブロック共重合体の主鎖構造を有していることが好ましい。
【0026】
重合体(B)は、主鎖末端に水酸基を含有している必要がある。重合体(B)の水酸基含有量は、1分子当たりの平均値において0.5〜2個であるのが好ましく、0.8〜1.5個であるのがより好ましい。末端に水酸基を全く有していないものは、熱可塑性ポリウレタン(A)との親和性およびポリアセタール樹脂(C)との親和性が不足し、これらの樹脂組成物において十分に微分散することができず、その結果、引張強度、耐衝撃性、耐摩耗性などが不十分となる。
【0027】
重合体(B)の数平均分子量は、力学的性能、成形性等におけるバランスに優れた樹脂組成物が得られる点から、1,000〜300,000の範囲内であるのが好ましく、5,000〜150,000の範囲内であるのがより好ましい。重合体(B)の主鎖が、主として単位(I)からなる少なくとも1個の重合体ブロックと、主として単位(II)からなる少なくとも1個の重合体ブロックとを有するブロック共重合体の構造を有する場合、主として単位(I)からなる重合体ブロックの数平均分子量は100〜270,000の範囲内であるのが好ましく、10,000〜200,000の範囲内であるのがより好ましい。また、その場合、単位(II)からなる重合体ブロックの数平均分子量は100〜270,000の範囲内であるのが好ましく、3,000〜150,000の範囲内であるのがより好ましい。
【0028】
重合体(B)の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、ブチルリチウムなどの有機アルカリ金属触媒を用いるアニオンリビング重合などにより共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを主体とするモノマーを付加共重合して、主として、水素添加されていない共役ジエン化合物単位および芳香族ビニル化合物単位(II)からなるリビングポリマーを得、その重合活性末端をエチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドで処理して主鎖末端に水酸基を導入した後、さらに、所望に応じて、公知の方法を用いて該共役ジエン化合物単位を水素添加することにより、重合体(B)を得ることができる。
上記のように、共役ジエン化合物単位(I)は部分水添または完全水添されていることが好ましい。共役ジエン化合物単位の水素添加反応には、触媒として均一系触媒または不均一系触媒を用いることができる。均一系触媒としては、例えば、有機遷移金属触媒(ニッケルアセチルアセトナート、コバルトアセチルアセトナート、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト等)とアルミニウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属などの金属のアルキル化合物との組み合わせによるチーグラー触媒などを挙げることができる。これらの触媒は、共役ジエン化合物単位中に含まれる炭素−炭素二重結合に対して0.01〜0.1モル%の割合で用いられるのが好ましい。水素添加反応は、通常、常温〜160℃の温度、常圧〜50kg/cm2の水素圧下で行われ、約1〜50時間で終了する。
【0029】
なお、本発明の樹脂組成物においては、熱可塑性ポリウレタン(A)の少なくとも一部および末端に水酸基を有する重合体(B)の少なくとも一部は、該重合体(B)の末端の水酸基の位置で該熱可塑性ポリウレタン(A)と化学反応して形成されうるブロック共重合体の形で存在していてもよい。該ブロック共重合体は、熱可塑性ポリウレタン(A)からなる重合体ブロックと、重合体(B)からなる重合体ブロックとを有するブロック共重合体(D)である。
【0030】
本発明に用いられるポリアセタール樹脂(C)は、オキシメチレン基を主たる構成単位とする高分子化合物で、ポリオキシメチレンホモポリマー、オキシメチレン基以外に他の構成単位を少量含有するコポリマー、ターポリマー、ブロックコポリマーのいずれであってもよい。また、分子鎖が線状のみならず分岐構造、架橋構造を有するものであってもよい。
【0031】
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性ポリウレタン(A)、末端に水酸基を有する重合体(B)およびポリアセタール樹脂(C)の合計重量に基づいて、熱可塑性ポリウレタン(A)を2.5〜90重量%、末端に水酸基を有する重合体(B)を2.5〜90重量%、ポリアセタール樹脂(C)を5〜95重量%の割合で、それぞれ含有している。なお、本発明においては、上記ブロック共重合体(D)の分子中に組み込まれている熱可塑性ポリウレタン(A)のブロックおよび重合体(B)のブロックの重量は、それぞれ、熱可塑性ポリウレタン(A)の重量および重合体(B)の重量に加入する。
【0032】
熱可塑性ポリウレタン(A)の含有率が2.5重量%未満の場合には、得られる樹脂組成物における常温での耐衝撃性および引張伸度が不足し好ましくない。熱可塑性ポリウレタン(A)の含有率が90重量%を越える場合には、得られる樹脂組成物の弾性率の低下が著しく好ましくない。末端に水酸基を有する重合体(B)の含有率が2.5重量%未満の場合には、得られる樹脂組成物の耐衝撃性の改良効果、特に低温時での耐衝撃性の改良効果が不足し好ましくない。末端に水酸基を有する重合体(B)の含有率が90重量%を越える場合には、得られる樹脂組成物の弾性率の低下が著しく好ましくない。ポリアセタール樹脂(C)の含有率が5重量%未満の場合には、得られる樹脂組成物の引張強度等が不足し好ましくない。また、ポリアセタール樹脂(C)の含有率が95重量%を越える場合には、得られる樹脂組成物の耐衝撃性が不足し好ましくない。
引張強伸度、常温および低温での耐衝撃性等の力学的性能などにおける総合性能が特に優れた樹脂組成物が得られる点から、熱可塑性ポリウレタン(A)、末端に水酸基を有する重合体(B)およびポリアセタール樹脂(C)の合計重量に基づいて、(A)の含有率が2.5〜47.5重量%であり、(B)の含有率が2.5〜47.5重量%であり、かつ(C)の含有率が50〜95重量%であることが好ましい。また、同様の点から、(A)/(B)の重量比が2/8〜8/2であることが好ましい。
【0033】
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性ポリウレタン(A)、末端に水酸基を有する重合体(B)およびポリアセタール樹脂(C)を必須の成分として含有するが、所望により、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲内の量において、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、可塑剤等の各種添加剤;タルク、マイカ、炭酸カルシウムなどのフィラー;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン類、ポリスチレン、HIPS等のポリスチレン類、PPE、各種TPE等の重合体が、さらに含有されていてもよい。
【0034】
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性ポリウレタン(A)、末端に水酸基を有する重合体(B)、ポリアセタール樹脂(C)および、所望により他の成分を混合することによって製造することができる(ただし、(A)の一部および(B)の一部はブロック共重合体(D)の形態で混合に使用してもよい)。混合方法としては、公知の樹脂組成物の製造のために使用される方法に準じて、種々の方法を採用することができ、また各成分の混合順序も特に限定されるものではない。ただし、引張強伸度、常温および低温での耐衝撃性等の力学的性能などが特に優れた樹脂組成物を再現性よく得ることができる点から、各成分を溶融条件下に混練する方法が好ましく、熱可塑性ポリウレタン(A)と末端に水酸基を有する重合体(B)とを溶融混練し、次いでポリアセタール樹脂(C)を溶融混練する方法、または、一部がブロック共重合体(D)の形で存在する熱可塑性ポリウレタン(A)および重合体(B)を用いて、該熱可塑性ポリウレタン(A)、該重合体(B)およびポリアセタール樹脂(C)を溶融混練する方法がより好ましい。なお、各成分の混合においては、通常用いられるような縦型あるいは水平型の混合機を用いることが可能である。これらの溶融混練の温度は、特に限定されるものではなく、各成分の溶融温度、分解温度等を考慮して適宜設定することができるが、通常、100〜270℃の範囲内が好ましい。
なお、熱可塑性ポリウレタン(A)を、溶剤の実質的な不存在下に多軸スクリュー型押出機を用いて連続溶融重合法で製造する場合、末端に水酸基を有する重合体(B)およびポリアセタール樹脂(C)を該押出機中に供給することによって、本発明の樹脂組成物を製造することもできる。この方法においても、上記と同様に、熱可塑性ポリウレタン(A)またはその原料化合物(モノマーおよびプレポリマー)と末端に水酸基を有する重合体(B)との溶融混練が先行し、その後にポリアセタール樹脂(C)が混練されるように、重合体(B)および樹脂(C)の供給位置を定めるのが好ましい。
【0035】
本発明の樹脂組成物においては、ブロック共重合体(D)の分子中に組み込まれていない熱可塑性ポリウレタン(A)(以下、「真の熱可塑性ポリウレタン(A’)」と称する)は、常温での耐衝撃性および引張強伸度を高める作用があるが、多すぎると弾性率を低下させる傾向がある。ブロック共重合体(D)の分子中に組み込まれていない重合体(B)(以下、「真の重合体(B’)」と称する)は、耐衝撃性、特には低温での耐衝撃性、を向上させる作用があるが、多すぎると弾性率を低下させる傾向がある。ポリアセタール樹脂(C)は、前記のように、引張強伸度等を向上させる作用があるが、多すぎると耐衝撃性を低下させる。また、ブロック共重合体(D)は、耐衝撃性を向上させる作用があるが、多すぎると溶融流動性を低下させる傾向があり、成形性の低下につながる。ブロック共重合体(D)は、真の熱可塑性ポリウレタン(A’)と真の重合体(B’)とを、ポリアセタール樹脂(C)の存在下または不存在下に、加熱条件下で接触させた場合に生成するので、本発明の樹脂組成物を製造するための混合操作においては、あえて別途製造したブロック共重合体(D)を使用することは必要ではないが、熱可塑性ポリウレタン(A)および重合体(B)としてそれらの一部がブロック共重合体(D)の形で存在するものを用いる場合には、上記のような諸特性を総合的に考慮すると、真の熱可塑性ポリウレタン(A’)、真の重合体(B’)、ポリアセタール樹脂(C)およびブロック共重合体(D)は、これらの使用量の和に基づいて、(A’)が2〜90重量%を占め、(B’)が2〜90重量%を占め、(C)が5〜95重量%を占め、かつ(D)が1〜60重量%を占めるような割合で使用することがより好ましく、(A’)が2〜46.5重量%を占め、(B’)が2〜46.5重量%を占め、(C)が50〜95重量%を占め、かつ(D)が1〜46重量%を占めるような割合で使用することがさらに好ましい。また、上記のような諸特性の点から、真の熱可塑性ポリウレタン(A’)、真の重合体(B’)およびブロック共重合体(D)のそれぞれの使用量は、(A’)/(B’)の重量比が2/8〜8/2となり、かつ[(A’)と(B’)の合計]/(D)の重量比が4/6〜9/1となるような条件をさらに満足することが好ましい。事前に別途製造したブロック共重合体(D)を、真の熱可塑性ポリウレタン(A’)、真の重合体(B’)およびポリアセタール樹脂(C)とともに使用して本発明の樹脂組成物を製造する場合には、該ブロック共重合体(D)の有する重合体ブロックの構造を、使用した真の熱可塑性ポリウレタン(A’)および/または真の重合体(B’)とは異なるものとすることもできる。
【0036】
なお、ブロック共重合体(D)は、真の熱可塑性ポリウレタン(A’)と真の重合体(B’)とを溶融混練条件下で反応させるか、または溶液中で加熱反応させる方法、真の熱可塑性ポリウレタン(A’)を与えるモノマーまたはプレポリマーを真の重合体(B’)の存在下でウレタン化反応(重合)させる方法などによって製造することができる。これらの反応によれば、通常、ブロック共重合体(D)が真の熱可塑性ポリウレタン(A’)と真の重合体(B’)との組成物の形で得られるので、この組成物を精製操作に付することなく、そのまま本発明の樹脂組成物の製造に使用することができる。また、上記の反応によって得られた組成物から、真の熱可塑性ポリウレタン(A’)をジメチルホルムアミドなどの該ポリウレタンに対する良溶媒で抽出除去し、真の重合体(B’)をシクロヘキサンなどの該重合体に対する良溶媒で抽出除去することなどによって、ブロック共重合体(D)の純度を高めることができるので、このようにして得られたブロック共重合体(D)を本発明の樹脂組成物の製造に使用してもよい。
【0037】
本発明の樹脂組成物は、熱溶融成形および加熱加工が可能であり、射出成形、押出成形、ブロー成形、カレンダー成形、注型成形などの任意の成形方法により成形・加工が可能である。このようにして得られる本発明の樹脂組成物からなる成形品は、フィルム状、シート状、チューブ状、三次元形状等の任意の形状の物品を包含する。該成形品は、自動車部品、家電部品、コンピュータ部品、機械部品、パッキン、ガスケット、ホースなどの広範な各種用途に供することができる。
【0038】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0039】
なお実施例において、樹脂組成物の引張強伸度、耐衝撃性、成形品の表面状態および相溶性は、以下の方法により測定または評価した。
【0040】
[引張破断強伸度] 樹脂組成物を射出成形することにより得たダンベル片を用い、JIS K7311に準拠して、引張強度および引張伸度を測定した。
【0041】
[耐衝撃性] 樹脂組成物を射出成形することにより得たIZOD(アイゾット)試験片(モールドノッチ付き)を用い、IZOD耐衝撃試験を25℃および−20℃の2点で行った。
【0042】
[成形品の表面状態] 樹脂組成物を射出成形することにより得たダンベル片の試験片の表面状態を肉眼で観察し、表面に剥離が生じているかどうかの観点で表面状態の良否を評価した。
【0043】
[相溶性] 上記ダンベル片の試験片を冷却条件下に破断して形成された破断面をジメチルホルムアミドでエッチングした後、破断面の中心部付近の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することによって分散粒子の状態を評価し、平均分散粒径を測定した。
【0044】
参考例1(高分子ジオールの合成)
3−メチル−1,5−ペンタンジオール1420gおよびアジピン酸1460gを反応器に仕込み、常圧下に窒素ガスを系内に通じながら、約220℃で、生成する水を系外に留去しながらエステル化反応を行った。生成したポリエステルジオールの酸価が0.3以下になった時点で、真空ポンプにより徐々に真空度を上げて反応を完結させた。得られたポリエステルジオール(以下、PMPAと称する)の数平均分子量は3,500であった。
【0045】
参考例2(熱可塑性ポリウレタンの合成)
参考例1で製造したPMPA、1,4−ブタンジオール(BD)および4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を、PMPA/BD/MDIのモル比が1/3.13/4.13となる割合で、かつこれらの総量が300g/分になるように、定量ポンプにより、同方向に回転する2軸押出機(30mmφ、L/D=36、シリンダー温度:75〜260℃)に連続的に供給して連続溶融重合を行った。得られたポリウレタンの溶融物をストランド状で水中に連続的に押出し、ペレタイザーでペレットに切断し、80℃で20時間除湿乾燥することにより、熱可塑性ポリウレタン(以下、TPU−1と称する)を得た。
【0046】
参考例3(末端に水酸基を有する重合体の合成)
スチレンモノマーをn−ブチルリチウムを開始剤として用いてシクロヘキサン中でアニオン重合させた後、イソプレンモノマーを添加してリビングブロックポリマーを製造した。さらに、重合活性末端に対して10倍モル量のエチレンオキシドを添加し、次いでメタノールを添加して反応停止させた。このようにして、分子末端に水酸基を有するポリスチレン−ポリイソプレンジブロック共重合体を得た。
この末端に水酸基を有するポリスチレン−ポリイソプレンジブロック共重合体をシクロヘキサンに溶解した後、ラネーニッケル触媒を加え、50kg/cm2の水素圧下、150℃で水素添加反応させることにより、分子主鎖末端に水酸基を有するポリスチレン−ポリイソプレンジブロック共重合体の水添物(以下、SEP−OHと称する)を得た。
該SEP−OHについて、スチレン単位からなる重合体ブロックの数平均分子量は10,000であり、主として水素添加されたイソプレン単位からなる重合体ブロックの数平均分子量は21,000であり、スチレン単位/イソプレン単位(水素添加された単位と水素添加されなかった単位との合計)のモル比は25/75であり、水酸基含有量は1分子当たりの平均値で0.89個であり、イソプレン単位の炭素−炭素二重結合における水素添加率は97%であった。
【0047】
参考例4(末端に水酸基を有しない重合体の合成)
リビングブロックポリマー製造後、エチレンオキシドを添加することなくメタノールで反応停止させた以外は参考例3と同様にして、反応操作および処理操作を行うことにより、末端に水酸基を有しないポリスチレン−ポリイソプレンジブロック共重合体の水添物(以下、SEPと称する)を得た。
【0048】
参考例5(熱可塑性ポリウレタンと末端に水酸基を有する重合体とからのブロック共重合体の合成)
参考例2で製造したTPU−1と参考例3で製造したSEP−OHとを、TPU−1/SEP−OHの重量比が50/50となる割合でペレットブレンドした後、混合ペレットを2軸押出機(シリンダー温度:220℃)中で溶融混練した。得られた溶融混練物を粉砕機で粉砕し、微粉末状にした。この粉末状物にジメチルホルムアミドを添加し、室温下で10時間撹拌することによって未反応のTPU−1を抽出した後、固形物を濾別した。次いで、得られた粉末状の固形物にシクロヘキサンを添加し、100℃の温度で10時間撹拌することによって未反応のSEP−OHを抽出した後、得られた固形物を濾別し、乾燥した。ゲルパーミエーションクロマトグラム等により、得られた粉末状の固形物は、TPU−1に相当する重合体ブロックとSEP−OHに相当する重合体ブロック(水酸基は喪失)とを有するブロック共重合体(以下、SEP−TPUと称する)であることが判明した。
なお、上記の溶融混練物を基準とするSEP−TPUの生成割合は43重量%であった。
【0049】
実施例1
参考例2と同様にして2軸押出機を用いて連続溶融重合を行うことにより熱可塑性ポリウレタン(以下、TPU−2と称する)を生成させるとともに、さらに、該2軸押出機中を流れるTPU−2に対して、まず参考例3で得られた末端に水酸基を有する重合体SEP−OHが混練され、次いでポリアセタール樹脂(デュポン社製デルリン100P(以下、POMと称する))が約200℃で混練されるように、SEP−OHおよびPOMをそれぞれ2軸押出機の所定の位置に供給した。なお、TPU−2/SEP−OH/POMの重量比は15/15/70となるように供給量を設定した。得られた樹脂組成物の溶融物を、押出機からストランド状で水中に連続的に押出し、ペレタイザーでペレットに切断し、80℃で20時間除湿乾燥することにより、樹脂組成物(以下、樹脂組成物−1と称する)を得た。
得られた樹脂組成物−1について射出成形を行い、得られた成形品を各種評価に供した。得られた評価結果を下記表1に示す。
【0050】
実施例2
参考例2で得たTPU−1、参考例3で製造したSEP−OHおよびPOMを、TPU−1/SEP−OH/POMの重量比が15/15/70となる割合でペレットブレンドした後、ペレット混合物を2軸押出機に供給して約200℃で溶融混練した。得られた樹脂組成物の溶融物を、押出機からストランド状で水中に連続的に押出し、ペレタイザーでペレットに切断し、80℃で20時間除湿乾燥することにより、樹脂組成物(以下、樹脂組成物−2と称する)を得た。
得られた樹脂組成物−2について射出成形を行い、得られた成形品を各種評価に供した。得られた評価結果を下記表1に示す。
【0051】
実施例3
参考例2で得たTPU−1と参考例3で製造したSEP−OHとを、TPU−1/SEP−OHの重量比が15/15となる割合でペレットブレンドした後、混合ペレットを2軸押出機(シリンダー温度:70〜260℃)中で溶融混練し、TPU−1とSEP−OHとの溶融混練物を得た。得られた溶融混練物を押出機からストランド状で水中に連続的に押出し、ペレタイザーでペレットに切断し、80℃で20時間除湿乾燥した。
このペレット状の溶融混練物とPOMとを、溶融混練物/POMの重量比が30/70となる割合で2軸押出機に供給し、約200℃の温度で溶融混練した。得られた樹脂組成物の溶融物を、押出機からストランド状で水中に連続的に押出し、ペレタイザーでペレットに切断し、80℃で20時間除湿乾燥することにより、樹脂組成物(以下、樹脂組成物−3と称する)を得た。
得られた樹脂組成物−3について射出成形を行い、得られた成形品を各種評価に供した。得られた評価結果を下記表1に示す。
【0052】
実施例4
参考例5と同様にして2軸押出機を用いてTPU−1とSEP−OHとを溶融混練した後、押出し切断して得られたペレット状の組成物(含有されるTPU−1/SEP−OH/SEP−TPUの重量比:4/4/6)の14重量部を、POMの70重量部、TPU−1の8重量部およびSEP−OHの8重量部とペレットブレンドした。得られたペレット混合物(TPU−1/SEP−OH/POM/SEP−TPUの重量比:12/12/70/6)を2軸押出機に供給し、約200℃で溶融混練した。得られた樹脂組成物の溶融物を、押出機からストランド状で水中に連続的に押出し、ペレタイザーでペレットに切断し、80℃で20時間除湿乾燥することにより、樹脂組成物(以下、樹脂組成物−4と称する)を得た。
得られた樹脂組成物−4について射出成形を行い、得られた成形品を各種評価に供した。得られた評価結果を下記表1に示す。
【0053】
実施例5
参考例5で得られたSEP−TPUの6重量部を、POMの70重量部、TPU−1の12重量部およびSEP−OHの12重量部とペレットブレンドし、得られたペレット混合物を2軸押出機に供給し、約200℃で溶融混練した。得られた樹脂組成物の溶融物を、押出機からストランド状で水中に連続的に押出し、ペレタイザーでペレットに切断し、80℃で20時間除湿乾燥することにより、樹脂組成物(以下、樹脂組成物−5と称する)を得た。
得られた樹脂組成物−5について射出成形を行い、得られた成形品を各種評価に供した。得られた評価結果を下記表1に示す。
【0054】
比較例1
SEP−OHの代わりにそれと同重量のSEPを用いた以外は実施例3と同様にして処理を行い、対応する樹脂組成物(以下、樹脂組成物−6と称する)を得た。得られた樹脂組成物−6について射出成形を行い、得られた成形品を各種評価に供した。得られた評価結果を下記表1に示す。
【0055】
比較例2
溶融混練物/POMの重量比を30/70から2/98に変更した以外は実施例3と同様にして処理を行い、対応する樹脂組成物(以下、樹脂組成物−7と称する)を得た。得られた樹脂組成物−7について射出成形を行い、得られた成形品を各種評価に供した。得られた評価結果を下記表1に示す。
【0056】
比較例3
POMをそのまま射出成形し、得られた成形品を各種評価に供した。得られた評価結果を下記表1に示す。
【0057】
比較例4
SEP−OHを全く使用せず、TPU−1およびPOMのみをTPU−1/POMの重量比が15/70となる割合で使用した以外は実施例2と同様にして処理を行い、樹脂組成物(以下、樹脂組成物−8と称する)を得た。得られた樹脂組成物−8について射出成形を行い、得られた成形品を各種評価に供した。得られた評価結果を下記表1に示す。
【0058】
比較例5
TPU−1を全く使用せず、SEP−OHおよびPOMのみをSEP−OH/POMの重量比が15/70となる割合で使用した以外は実施例2と同様にして処理を行い、樹脂組成物(以下、樹脂組成物−9と称する)を得た。得られた樹脂組成物−9について射出成形を行い、得られた成形品を各種評価に供した。得られた評価結果を下記表1に示す。
【0059】
【表1】
Figure 0003638752
【0060】
上記の表1から、実施例1〜5で得られた本発明に従う樹脂組成物は、引張強伸度、常温および低温での耐衝撃性ならびに成形加工性のすべてにおいて優れていることがわかる。それに対して、末端に水酸基を有する重合体(B)の代わりに末端に水酸基を有しない以外は同一構造の重合体を用いた場合(比較例1)では、引張強度、耐衝撃性、成形加工性等が不十分であり;熱可塑性ポリウレタン(A)および末端に水酸基を有する重合体(B)を微量しか含有しないか、または全く含有しない場合(比較例2および3)には、常温および低温での耐衝撃性が不十分であり;末端に水酸基を有する重合体(B)を含有しない場合(比較例4)には、耐衝撃性、特に低温での耐衝撃性、が不十分であり;また、熱可塑性ポリウレタン(A)を含有しない場合(比較例5)には、引張伸度、常温での耐衝撃性および成形加工性が不十分であることがわかる。なお、本発明に従う樹脂組成物のなかでも、熱可塑性ポリウレタン(A)と末端に水酸基を有する重合体(B)とを溶融混練した後にポリアセタール樹脂(C)を溶融混練した場合(実施例1および3)、並びに熱可塑性ポリウレタン(A)および重合体(B)として、それらの一部がブロック共重合体(D)の形で存在するものを使用して、これをポリアセタール樹脂(C)と溶融混練した場合(実施例4および5)には、引張伸度、常温および低温での耐衝撃性等が特に優れることがわかる。
【0061】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は、引張強伸度、常温および低温での耐衝撃性ならびに成形加工性に優れる。また、本発明の成形品では、これらの優れた性質が有効に発揮される。

Claims (8)

  1. (1)熱可塑性ポリウレタン(A);分子主鎖が、主として、水素添加されていてもよい共役ジエン化合物単位(I)および芳香族ビニル化合物単位(II)からなり、単位(I)/単位(II)のモル比が10/90〜90/10の範囲内であり、かつ分子主鎖の末端に水酸基を有する重合体(B);およびポリアセタール樹脂(C)を含有し(ただし、熱可塑性ポリウレタン(A)の少なくとも一部および重合体(B)の少なくとも一部は、該重合体(B)の末端の水酸基の位置で該熱可塑性ポリウレタン(A)と化学反応して形成されうるブロック共重合体(D)の形で存在していてもよい)、
    (2)上記(A)、(B)および(C)の合計重量に基づいて、(A)の割合が2.5〜90重量%であり、(B)の割合が2.5〜90重量%であり、(C)の割合が5〜95重量%である、
    ことを特徴とする樹脂組成物。
  2. 熱可塑性ポリウレタン(A)、末端に水酸基を有する重合体(B)およびポリアセタール樹脂(C)を溶融条件下に混練して得られる請求項1記載の樹脂組成物。
  3. 熱可塑性ポリウレタン(A)と末端に水酸基を有する重合体(B)とを溶融混練し、次いでポリアセタール樹脂(C)を溶融混練して得られる請求項2記載の樹脂組成物。
  4. 使用する熱可塑性ポリウレタン(A)の一部および末端に水酸基を有する重合体(B)の一部がブロック共重合体(D)の形である請求項2または3に記載の樹脂組成物。
  5. 末端に水酸基を有する重合体(B)の水酸基含有量が、1分子当たりの平均値において0.5〜2個である請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6. 末端に水酸基を有する重合体(B)が、主として単位(I)からなる重合体ブロックと、主として芳香族ビニル化合物単位(II)からなる重合体ブロックとをそれぞれ少なくとも1個ずつ含有しているブロック共重合体の主鎖構造を有している請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  7. 熱可塑性ポリウレタン(A)が、数平均分子量1,500〜6,000の高分子ジオール、有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤を、下記数式;
    Figure 0003638752
    (式中、aは高分子ジオールのモル数を表し、bは有機ジイソシアネートのモル数を表し、cは鎖伸長剤のモル数を表す)
    を満足する割合で反応させて得られた熱可塑性ポリウレタンである請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる成形品。
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