JP3638069B2 - カソード防食システムにおける防食レベルの評価方法 - Google Patents

カソード防食システムにおける防食レベルの評価方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、地下に埋設されたパイプラインのカソード防食システムにおける防食レベルの評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
地下に埋設されたパイプラインのカソード防食システムにおいて、その防食レベルの評価を行うために、このパイプラインの近傍に鋼製プローブを埋設して前記パイプラインと電気的に結線すると共に、更に飽和硫酸銅電極を埋設してこの電極と前記鋼製プローブとを結線し、鋼製プローブとパイプライン間の回線を遮断したときに得られる鋼製プローブの分極電位を計測することにより、鋼製プローブに出入りする電流の密度、つまり電流の向きと大きさを検知してカソード防食システムの維持管理を行う方法が公知である。
【0003】
図8は、カソード防食システムにおいて、鋼製プローブを用いて管対地電位を測定する方法の説明図であって,1はパイプライン、2は鋼製プローブ、3は飽和硫酸銅電極、4はパイプライン1と鋼製プローブ2とを結ぶ回線5内に挿入された電流計、6はON、OFFスイッチ、7はプローブ2と電極3間とを結ぶ回線8に挿入された電位計、9はカソード防食用直流電極、10は陽極、11は犠牲陽極、12はレコーダーである。
【0004】
しかして、上記システムにあっては、ON、OFFスイッチ6を用いて例えば10〜20秒毎に0.6〜1.0秒間プローブ2とパイプライン1との間に流れる電流を遮断し、そのときの電位、電流の経時変化をレコーダー12に記録し、これによりIR降下分が上乗せになっている管対地電位、分極電位、電流密度を同時に求めて、これらの値から防食レベルの評価を行っている。図9のグラフは、このようにして求めたときのレコーダー12の出力である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記方法によると、次のような問題がある。
▲1▼レコーダー12に出力していることから、内蔵ローパスフィルターの作用により、あるがままの(全周波数帯域のデータを収録していない)ON、OFF電位とプローブ電流波形を把握することができない。
▲2▼防食管理上、OFF電位とプローブ直流・交流電流密度の値は重要であるが、従来の技術では、OFF電位をOFF後、どの時点でとっているのか、また、特にどの周波数においてブローブ交流電流密度の値が大きかったのかを把握することができない。
▲3▼ON、OFF電位、プローブ直流・交流電流の時間瞬時値のデータをセーブしていないために、測定時間平均値を求めるなどの数値計算ができない。
【0006】
本発明の課題は、あるがままのON、OFF電位とプローブ電流波形をセーブすること、どの周波数においてON、OFF電位とプローブ直流・交流電流値が大きいかを検知できるようにすること、ON、OFF電位、プローブ直流・交流の測定時間平均の数値計算を行うことができるようにすることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決する方法について鋭意研究を行った結果、上記の課題を次の方法を用いることにより、すべて解決できることが判った。
1.カソード防食されたパイプラインに接近して埋設された鋼製プローブと飽和硫酸銅電 極間を夫々結線すると共に、前記カソード防食を維持した状態で前記鋼製プローブと飽 和硫酸銅電極間のON、OFF電位及び鋼製プローブとパイプライン間のプローブ電流 を、0.1msのデータサンプリング間隔で一旦記録手段に取り込み、この記録手段に 取り込んだデータをコンピュータを用いて数値解析することにより、ON、OFF電位 、プローブ電流の周波数解析、周波数別の値のレベル解析を行い、これらの所見から防 食レベルを評価する方法。
【0008】
2.ON、OFF電位及び、プローブ電流の値をOFF前後において記録手段に取り込む前記1記載のカソード防食システムにおける防食レベルの評価方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1において、1はパイプライン、2は鋼製プローブ、3は飽和硫酸銅電極、4はパイプライン1とプローブ2間を結ぶ回線5内に挿入された電流計、6はON、OFFスイッチ、7はプローブ2と電極3間を結ぶ回線8に挿入された電流計である。なお、図1において、カソード防食用直流電源及び陽極及び犠牲陽極は省略してある。13はカソード防食モニターであって、このモニター13にはデータ収録用のICカード(記録手段)(85MB)14が内蔵されていて、ON、OFF電位、プローブ電流をセーブする。そして、数値解析を行う場合には、このICカード14をパソコン15にセットして行う。
以下、パソコン15を用いて行うデータの取得と、この数値解析について説明する。
【0010】
[カソード防食データ測定・解析]
図2に示すように、常にプローブ2〜パイプライン1間がONからOFFになった時点の前後を計測する。一般にON時間はOFF時間よりも非常に長く、基本的にON時間8.5s(秒)、OFF時間1.5sで1周期を10sとしている。例えば測定時間が2分であれば、12周期(サイクル)繰り返していることになる。基本的にOFF前時間とOFF後時間は1sとする。OFF前時間とOFF後時間の範囲内は、ON電位、OFF電位、プローブ電流の値をできるだけ細かく取るために(あるがままの状態を把握するために)0.1ms毎にサンプリングする。したがって、ON電位、OFF電位、プローブ電流の各データ数は120000個もの膨大な数となる。
【0011】
1)ON電位の表示
設定されたOFF前時間の範囲内で、計測器へのON電位の表示と計算(最大値、最小値、平均値)を行う。経験的にON電位の表示と計算は、OFF前0.3sから0.2sの間が最適である(図3参照)。したがって、1サイクルでこの0.1sの間を0.1ms毎にサンプリングしてるので、サンプリング総数は1000となり、この1000データの中の最大値、最小値、平均値を表示することになる。
【0012】
2)OFF電位の表示
設定されたOFF後時間の範囲内で、計測器へのOFF電位の表示と計算を行う。理論的にはOFF電位は、OFF直後にIR(主に防食電流と土壌抵抗)を差し引いたプローブの電位であるが、経験的にOFF直後は異常な電気信号が入ることが多いので、OFF後0.2sから0.3s後の間で評価する。上記ON電位の計算と全く同じくなり、1サイクルで1000データの中の最大値、最小値、平均値を表示することになる。
【0013】
3)プローブ電流の表示
プローブ電流は、ON状態で評価するものなので、上記ON電位の計測と同じである。
上記ON、OFF電位、プローブ電流の表示は、OFF前時間、OFF後時間の範囲内であれば任意に設定することができる。
【0014】
[ソフトと出力]
例えば、測定条件を下記のようにする(最も標準的である)。
ON時間 : 8.5s
OFF時間 : 1.5s
1サイクル : 10s
測定時間 : 120s
OFF前時間 : 1s
OFF後時間 : 1s
ON電位表示計測範囲 : OFF前0.3〜0.2s
OFF電位表示計測範囲: OFF後0.2〜0.3s
データサンプリング間隔: 0.1ms
【0015】
すると出力は、OFF前時間とOFF後時間が同じであるために、プローブ2〜パイプライン1間のOFF時を対象として、図4の実施例が示すように12サイクル得られるようになる。各サイクルが不連続であるのは、実際には連続測定を行っているからである。図4の右側には、設定された範囲内でのON、OFF電位、プローブ電流の最大値、最小値、平均値が表示されている。
【0016】
サンプリング間隔を0.1msとしているのは、以下の2つの理由による。
▲1▼プローブとパイプが結線状態にある時、ON電位、プローブ電流の原波形を把握することにより、もし大きな電位、電流変動があれば周波数解析を行うことにより、変動原因の特定ができることと、更にプローブ電流の周波数解析により防食状況のチェックができる。図5は、ON電位の原波形の説明図、図6はON電位の周波数解析をFFT(高速フーリエ変換)によりスペクトル表示したものである。50Hzにスペクトルの最大がみられ、このような場合には高圧架空送電線の電磁誘導のパイプラインへの影響が予測される。ON電位と同時にとられたプローブ電流のうち、腐食に関係するのは低周波数成分である。
本件では、0.1msでとられた原波形をベースにFFTによるフィルタ処理を行い25Hz、50Hz、100Hz、200Hz及び500Hzの各成分の電流の平均値を計算表示することにした。図7はその実施例を示したものである。
【0017】
▲2▼プローブのOFF電位は、時間間隔を密にしてとられた原波形をベースに決定されなければならないが、そのために0.1msのサンプリングが必要になる。
【0018】
数値解析を行った結果、以下のカソード防食管理基準に照らし合わせて基準を満たしていなければ、パイプラインのカソード電位を下げる措置や、低接地物をパイプラインに接続することにより(パイプラインに電磁誘導電圧が発生し、交流腐食がもたらされることが予測される場合)、交流電圧の低減の措置をとる。
【0019】
[プローブを用いたカソード防食管理基準]
1.パイプラインに交流電圧が発生していない状態
(a)プローブOFF電位が−1.0V vs. Cu/CuSO4 (飽和硫酸銅電極基準)よりも卑
(b)プローブ流入電流密度が0.010mA/cm2 以上
のいずれか一方が満たされれば防食が達成される。
【0020】
2.パイプラインに交流電圧が発生している状態
プローブOFF電位、プローブ流入電流密度、プローブ交流電流密度との関係については必ずしも明確ではないが、プローブ交流電流密度が5mA/cm2 より小さいと、プローブ腐食速度が0.01mm/y以下に抑制されることは知られている。
【0021】
そこで、パイプラインに交流電圧が発生している状態の防食管理基準は、1.を満たし、かつプローブ交流電流密度が5mA/cm2 より小さいこととする。
【0022】
【発明の効果】
本発明によると、カソード防食システムのレベル評価に関し、次の効果を奏する。
1.ON、OFF電位、プローブ電流の値を例えば0.1ms間隔でブローブ〜パイプライン間OFF前後(例えば2秒)で取り込んでいるので、フィルターをかけないあるがままの波形を把握することができる。
【0023】
2.ON電位、プローブ電流の周波数解析が可能となり、周波数別の値のレベルの把握が可能となる。例えば50Hz成分のレベルが高いことが判れば、腐食原因の特定も可能になる。
3.測定時間平均値等の算出、ヒストグラムの作成等の数値解析処理が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の説明図。
【図2】ON電位、OFF電位及びプローブ電流の説明図。
【図3】ON、OFF電位の表示と計算の説明図。
【図4】ON、OFF電位、プローブ電流の最大値、最小値、平均値の説明図。
【図5】ON電位の原波形の説明図。
【図6】ON電位の周波数解析結果の説明図。
【図7】プローブ電流の原波形と周波数別の解析結果の説明図。
【図8】カソード防食システムの説明図。
【図9】カソード防食データの説明図。
【符号の説明】
1 パイプライン
2 鋼製プローブ
3 飽和硫酸銅電極
4 電流計
5、8 回線
6 ON、OFFスイッチ
7 電流計
13 カソード防食モニター
14 ICカード
15 コンピュータ(パソコン)

Claims (2)

  1. カソード防食されたパイプラインに接近して埋設された鋼製プローブと飽和硫酸銅電極間を夫々結線すると共に、前記カソード防食を維持した状態で前記鋼製プローブと飽和硫酸銅電極間のON、OFF電位及び鋼製プローブとパイプライン間のプローブ電流を、0.1 m sのデータサンプリング間隔で一旦記録手段に取り込み、この記録手段に取り込んだデータをコンピュータを用いて数値解析することにより、ON、OFF電位、プローブ電流の周波数解析、周波数別の値のレベル解析を行い、これらの所見から防食レベルを評価する方法。
  2. ON、OFF電位及び、プローブ電流の値をOFF前後において記録手段に取り込む請求項1記載のカソード防食システムにおける防食レベルの評価方法。
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