JP3637932B2 - 液晶組成物および液晶表示素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示用の液晶組成物およびこれを用いる液晶表示素子に関する。さらに詳しくは、アクティブマトリックス(AM)方式の液晶表示用のネマチック液晶組成物およびこれを用いる液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の情報機器、特に携帯用端末機器の発達に伴い、従来のCRT並みの表示容量と表示品位をもち、小型、薄型、かつ低消費電力の表示素子に対する要求が高くなってきている。その中でもTFT(薄膜トランジスタ−)などのアクティブマトリックスLCD(AM−LCD)はカラ−化、高精細化が進み、フラットパネルディスプレイの本命として期待されている。しかしながら、ディスプレイとして現在最も普及しているCRTに比べ精細さ、応答性、画面サイズなどが大きく劣っている。そこで駆動回路、スイッチング素子、カラーフィルターなどAM−LCDを構成するさまざまな要素について活発な研究が行われている。
液晶材料については、シアノ基を有する化合物はAM−LCD素子における信頼性を低下させるため、代わりにフッ素原子を有する化合物のみで構成されたAM−LCD用液晶組成物の例が最近報告されている。
【0003】
しかしながら、あいにくこれら公報に記載されているフッ素原子を有する化合物のみで構成された液晶組成物にもなおいくつかの問題がある。多くの場合、フッ素原子を有する化合物で構成された液晶組成物はシアノ基を有する化合物で構成された液晶組成物に比べて低いプレチルト角を示す傾向が有り、低温にてスメクチック相或いは結晶相を示しがちである。また、非常に低いしきい値電圧を実現することも困難である。
加えて、フッ素原子を有する化合物から構成された液晶組成物は多くの場合に逆ドメイン現象(リバースチルトドメイン)を示す。この原因の一つとして、シアノ基を有する化合物から構成された液晶組成物に比べてこれらのフッ素原子を有する化合物から構成された液晶組成物が比較的小さなプレチルト角を有することが挙げられる。
【0004】
現在、このAM方式に使われる液晶材料に求められている課題としては、高信頼性を得る為に比抵抗値が高いこと(1×1013Ωcm以上であること)、ネマチック相温度領域が広いこと(−30℃〜80℃の温度域でネマチック相であること)、高速応答性を得る為に粘性が低いこと(30mPa・s以下であること)、3.3V単一駆動を可能にする為にしきい値電圧が低いこと(1.7V以下であること)また逆ドメイン現象(リバースチルトドメイン)が全く見られないこと(その為には液晶組成物のプレチルト角が4度以上であること)などが挙げられる。
【0005】
しかしながら、今までAM−LCD用液晶組成物としては種々検討されているが、本発明の目的とするすべての課題を満足する液晶組成物の調整は困難であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は高い比抵抗値を保ちながら、広いネマチック相温度領域そして高いプレチルト角を有する液晶組成物およびこれを用いた高コントラスト、高信頼性かつ逆ドメイン現象(リバースチルトドメイン)が全く見られない非常に優れた液晶表示素子を提供することを目的とする。
これらの課題を解決すべく、本発明者らは種々の化合物を用いた液晶組成物を鋭意検討した結果、AM方式に使用する場合にこの目的を達成できる液晶組成物を見い出した。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は下記(1)および(2)の構成を有する。
(1)第一成分として一般式(I)で表される化合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物を2〜10重量%、第二成分として一般式(II)で表される化合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物を5〜20重量%、第三成分として一般式(III )で表される化合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物を20〜40重量%、第四成分として一般式(IV)で表される化合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物を5〜25重量%、第五成分として一般式(V)で表される化合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物を5〜25重量%、第六成分として一般式(VI−a)または(VI−b)で表される化合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物を10〜25重量%それぞれ含有することを特徴とする液晶組成物。
ただし、第一成分は、一般式(I)
【化8】
(式中、R1 およびR2 はそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基を示す。)
で表される化合物であり、
第二成分は、一般式(II)
【化9】
(式中、R3 は炭素数1〜10のアルキル基を示し、Aはシクロヘキサン環またはベンゼン環を示す。)
で表される化合物であり、
第三成分は、一般式(III )
【化10】
(式中、R4 は炭素数1〜10のアルキル基を示し、X1 はHまたはFを示す。)
で表される化合物であり、
第四成分は、一般式(IV)
【化11】
(式中、R5 は炭素数1〜10のアルキル基を示す。)
で表される化合物であり、
第五成分は、一般式(V)
【化12】
(式中、R6 は炭素数1〜10のアルキル基を示し、Bはシクロヘキサン環またはベンゼン環を示す。)
で表される化合物であり、
第六成分は、一般式(VI−a)
【化13】
(式中、R7 は炭素数1〜10のアルキル基を示す。)
で表される化合物または一般式(VI−b)
【化14】
(式中、R8 は炭素数1〜10のアルキル基を示す。)
で表される化合物である。
(2)前記1項に記載の液晶組成物を用いることを特徴とする液晶表示素子。
【0008】
次に、本発明を詳細に説明する。フッ素原子を有する化合物は一般にシアノ基を有する化合物よりも低いプレチルト角を有している。それにもかかわらず、本発明者らは異なる構造のフッ素化合物の間に大きなプレチルト角の相違があることを見いだした。フッ素化合物がシアノ化合物のプレチルト角に近づくことができることを示しているいくつかの例を表1に示す。
【0009】
各化合物共に下記に示されるベ−ス液晶組成物(Mix.X)に各々30重量%添加して混合物を調整し、プレチルト角を測定した。
【0010】
ベ−ス液晶組成物(Mix.X)
【0011】
【化15】
【0012】
液晶セルには表面にポリイミド系樹脂(PSI−A−4104、チッソ(株)製)を塗布し硬化させた後、平行ラビング処理を施したセルギャップ20μmの透明電極付きガラス板を使用した。またプレチルト角はクリスタルローテーション法にて測定した。
【0013】
【表1】
【0014】
表1に使用した化合物の構造式を以下に示す。
【0015】
【化16】
【0016】
次に、本発明の液晶組成物を構成する各成分の化合物について説明する。第一成分を構成する一般式(I)で表される化合物は非常に大きいプレチルト角、低い粘性を有し、かつ比抵抗値が高い化合物である。この第一成分を他の液晶化合物または液晶組成物に加えることにより、液晶組成物のプレチルト角を高くすることができる。
これらの化合物は、本発明において高信頼性、高速応答性および逆ドメイン現象を防止するのに重要な役割を担う。本発明の一般式(I)で表される化合物として好ましい物は、R1 およびR2 がそれぞれ独立に炭素数1〜7のアルキル基で表される化合物である。
【0017】
第二成分を構成する一般式(II)で表される化合物は非常に大きいプレチルト角、高いNI相転移温度を有し、かつ比較的比抵抗値が高い化合物である。この第二成分を他の液晶化合物または液晶組成物に加えることにより、液晶組成物のプレチルト角、NI相転移温度を高くすることができる。これらの化合物は、本発明において逆ドメイン現象を防止するのに重要な役割を担う。
本発明の一般式(II)で表される化合物として好ましい物は、R3 が炭素数1〜7のアルキル基、Aがシクロヘキサン環で表される化合物である。
【0018】
第三成分を構成する一般式(III )で表される化合物は非常に大きいプレチルト角、比較的大きい正の誘電異方性(Δε)並びに屈折率異方性(Δn)を有し、かつ比抵抗値が高い化合物である。この第三成分を他の液晶化合物または液晶組成物に加えることにより、液晶組成物のプレチルト角を高くすることができ、しきい値電圧を低くすることができる。
また、第一成分或いは第二成分である一般式(I)あるいは(II)の化合物と組み合わせることにより、Δnを任意に調整することもできる。これらの化合物は、本発明において高信頼性および逆ドメイン現象を防止するのに重要な役割を担う。本発明の一般式(III )で表される化合物として好ましい物は、R4 が炭素数1〜7のアルキル基、X1 がHまたはFで表される化合物である。
【0019】
第四成分を構成する一般式(IV)で表される化合物は、比較的大きいプレチルト角並びに正の誘電異方性を有し、かつ比抵抗値が高い化合物である。この第四成分を他の液晶化合物または液晶組成物に加えることにより、液晶組成物のしきい値電圧を低くすることができる。これらの化合物は、本発明において高信頼性、逆ドメイン防止および3.3V単一駆動を実現するのに重要な役割を担う。本発明の一般式(IV)で表される化合物として好ましい物は、R5 が炭素数1〜7のアルキル基で表される化合物である。
【0020】
第五成分を構成する一般式(V)で表される化合物は非常に大きい正の誘電異方性を有し、かつ比抵抗値が高い化合物である。この第五成分を他の液晶化合物または液晶組成物に加えることにより、液晶組成物のしきい値電圧を低くすることができる。これらの化合物は、本発明において高信頼性及び3.3V単一駆動を実現するのに重要な役割を担う。本発明の一般式(V)で表される化合物として好ましい物は、R6 が炭素数1〜7のアルキル基、Bがシクロヘキサン環またはベンゼン環で表される化合物である。
【0021】
第六成分を構成する一般式(VI−a)または(VI−b)で表される化合物は大きな正の誘電異方性を有し、かつ比抵抗値が高い化合物である。この第六成分を他の液晶化合物または液晶組成物に加えることにより、液晶組成物のしきい値電圧を低下することができる。これらの化合物は、本発明において高信頼性及び3.3V単一駆動を実現するのに重要な役割を担う。本発明の一般式(VI−a)または(VI−b)で表される化合物として好ましい物は、R7 およびR8 が炭素数1〜7のアルキル基で表される化合物である。
【0022】
本発明の液晶組成物における第一成分の一般式(I)で表される化合物の混合割合は、液晶組成物の全重量に対して2〜10%が好ましい。混合割合が2重量%未満だと本発明の課題であるプレチルト角を高くすることができず、粘性を低くすることもできない。また混合割合が10重量%を超えると得られる液晶組成物のしきい値電圧が高くなったりして好ましくない。
【0023】
第二成分の一般式(II)で表される化合物の混合割合は、液晶組成物の全重量に対して5〜20%が好ましい。混合割合が5重量%未満だと本発明の課題であるプレチルト角を高くすることができない。また混合割合が20重量%を超えると得られる液晶組成物のしきい値電圧が高くなったりして好ましくない。
【0024】
第三成分の一般式(III )で表される化合物の混合割合は、液晶組成物の全重量に対して20〜40%が好ましい。混合割合が20重量%未満だと本発明の課題であるプレチルト角を高くすることができない。また混合割合が40重量%を超えると得られる液晶組成物の粘性が高くなったりして好ましくない。
【0025】
第四成分の一般式(IV)で表される化合物の混合割合は、液晶組成物の全重量に対して5〜25%が好ましい。混合割合が5重量%未満だと本発明の課題であるプレチルト角を高くすることができず、しきい値電圧を低くすることもできない。また混合割合が25重量%を超えると得られる液晶組成物の粘性が高くなったりして好ましくない。
【0026】
第五成分の一般式(V)で表される化合物の混合割合は、液晶組成物の全重量に対して5〜25%が好ましい。混合割合が5重量%未満だと本発明の課題であるしきい値電圧を低くすることができない。また混合割合が25重量%を超えると得られる液晶組成物の粘性が高くなったりして好ましくない。
【0027】
第六成分の一般式(VI−a)または(VI−b)で表される化合物の混合割合は、液晶組成物の全重量に対して10〜25%が好ましい。混合割合が10重量%未満だと本発明の課題であるしきい値電圧を低くすることができない。また混合割合が25重量%を超えると得られる液晶組成物の粘性が高くなったりして好ましくない。
【0028】
本発明の液晶組成物には使用する液晶表示素子の目的に応じて、得られる液晶組成物のしきい値電圧、ネマチック相温度範囲、Δn、粘性などを調整する目的で上述した一般式(I)〜(VI−b)で表される化合物以外の他の化合物を本発明の目的を害さない範囲で適当量含有することができる。
【0029】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。またこれらの例における組成は全て重量%で示される。略号は下記の意味を有するものとする:
SN スメクチック−ネマチック相転移温度(℃)
NI ネマチック−等方相転移温度(℃)
η20 20℃の粘度(mPa・s)
Vth 25℃のしきい値電圧(V)
Δn 25℃の屈折率異方性(λ;589nm)
ρ 25℃の比抵抗値(Ωcm)
θp 25℃のプレチルト角(度)
【0030】
実施例1
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【0031】
から成る液晶組成物は次のパラメ−タ−;
SN <−30℃
NI 83.0℃
η20 24.6mPa・s
Vth 1.62V
Δn 0.093
ρ 1.2×1013Ωcm
θp 4.6度
を有し、また逆ドメイン現象も見られず、AM−LCDに十分適している。
【0032】
比較例1
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【0033】
から成る液晶組成物は次のパラメ−タ−;
SN <−30℃
NI 83.1℃
η20 27.8mPa・s
Vth 1.54V
Δn 0.086
ρ 2.7×1013Ωcm
θp 3.3度
を有し、逆ドメイン現象が見られた。
【0034】
実施例2
【化40】
【化41】
【化42】
【化43】
【化44】
【化45】
【化46】
【化47】
【化48】
【化49】
【化50】
【化51】
【化52】
【化53】
【0035】
から成る液晶組成物は次のパラメ−タ−;
SN <−30℃
NI 82.7℃
η20 23.9mPa・s
Vth 1.62V
Δn 0.091
ρ 1.2×1013Ωcm
θp 4.4度
を有し、また逆ドメイン現象もみられず、AM−LCDに十分適している。
【0036】
実施例3
【化54】
【化55】
【化56】
【化57】
【化58】
【化59】
【化60】
【化61】
【化62】
【化63】
【化64】
【化65】
【化66】
【化67】
【化68】
【0037】
から成る液晶組成物は次のパラメ−タ−;
SN <−30℃
NI 90.4℃
η20 25.9mPa・s
Vth 1.64V
Δn 0.092
ρ 1.2×1013Ωcm
θp 4.3度
を有し、そして下記のパラメ−タ−;
ねじれ角 90°
セル厚 5μm
ピッチ 81μm
d×Δn 0.46
を有するAM−LCD表示素子は20℃にて61msecの応答時間を示し、また逆ドメイン現象も見られず、AM−LCDに十分適している。
【0038】
【発明の効果】
実施例で示したように、本発明によって高いプレチルト角、広い温度範囲にてネマチック相を有し、かつ高比抵抗の液晶組成物が得られ、これにより逆ドメイン現象も見られず、高信頼性のAM方式の液晶表示素子を提供することが可能になった。
Claims (2)
- 第一成分として一般式(I)で表される化合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物を2〜10重量%、第二成分として一般式(II)で表される化合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物を5〜20重量%、第三成分として一般式(III )で表される化合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物を20〜40重量%、第四成分として一般式(IV)で表される化合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物を5〜25重量%、第五成分として一般式(V)で表される化合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物を5〜25重量%、第六成分として一般式(VI−a)または(VI−b)で表される化合物からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物を10〜25重量%それぞれ含有することを特徴とする液晶組成物。
ただし、第一成分は、一般式(I)
で表される化合物であり、
第二成分は、一般式(II)
で表される化合物であり、
第三成分は、一般式(III )
で表される化合物であり、
第四成分は、一般式(IV)
で表される化合物であり、
第五成分は、一般式(V)
で表される化合物であり、
第六成分は、一般式(VI−a)
で表される化合物または一般式(VI−b)
で表される化合物である。 - 請求項1に記載の液晶組成物を用いることを特徴とする液晶表示素子。
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1995
- 1995-10-26 JP JP30204195A patent/JP3637932B2/ja not_active Expired - Lifetime
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