JP3637512B2 - フローティングスラブの施工方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば鉄道の軌道等を構成するときに用いて好適なフローティングスラブの施工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、鉄道の軌道等を構成するに際して、周辺に振動や騒音が及ぶのを防ぐため、コンクリート製の路盤(基盤)上にコイルバネ等の振動吸収体を設置し、この振動吸収体でコンクリート製のスラブを支持したフローティングスラブ構造が開発・実用化されつつある。
このようなフローティングスラブ構造においては、スラブ上に鉄道の軌道等を敷設することにより、鉄道の通過時の上下振動を振動吸収体で吸収し、路盤に振動が伝播するのを防止するようになっている。
【0003】
しかしながら、振動吸収体を路盤上に設置した構造においては、水平方向の外力が作用した場合にこれら振動吸収体によってスラブに水平方向の振動が励起されることがある。このような水平方向の外力は、通常の列車通過時をはじめ、列車の制動時,また軌道の曲線部を通過するときの列車の遠心力によっても発生する。これ以外にも、通常の軌道構造とフローティングスラブ構造との継ぎ目においては列車が乗り移るときにも水平方向の外力が作用する。また、地震発生時においては、振動吸収体によって励起されるスラブの水平振動が、地動よりも増幅されてしまう。
【0004】
このようにして、スラブに水平方向の振動が励起された場合、この振動による変位が過大であると、そもそも上下振動を吸収することを目的としているコイルバネ等の振動吸収体では水平方向の剛性が不足してスラブを支持しきれないことも考えられる。
【0005】
その対策として、従来より、路盤に上方に突出する柱状の凸部を設け、スラブ側には凸部に対応した位置に凹部を形成し、この凸部と凹部とによって、路盤上でのスラブの水平方向の変位を拘束するストッパ機能を果たす構成としたものがある。
この構成においては、地震発生時や列車等、スラブが水平方向に過大に変位した時のみストッパ機能を発揮させ、通常時の列車の通過や制動時のレベルの水平外力では、スラブと路盤との間で振動が伝播しないよう、凸部と凹部との間に所定寸法のクリアランスが形成されている。
【0006】
そして、上記凸部と凹部を備えたフローティングスラブの施工に際しては、路盤を形成した後、路盤上にコイルバネ等の振動吸収体をプレストレスを導入した状態で設置し、この後にスラブを形成し、最後に振動吸収体のプレストレスを解放することによってスラブをジャッキアップしてフローティング支持するようにしている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような従来のフローティングスラブ構造およびその施工方法には、以下のような問題が存在する。
まず、凸部と凹部との間にクリアランスを確保するために仕切り板を用いなければならず、この仕切り板の設置、およびジャッキアップ前の除去等の作業に余計な手間がかかるという問題がある。さらに、スラブのジャッキアップ時に、凸部と凹部とが接触してしまい、スラブをジャッキアップできなくなってしまうこともある。
【0008】
また、水平方向の外力が作用してスラブが過大に変位してスラブの凹部が凸部に当たったときに、その衝撃により凸部が損壊するのを防ぐため、この凸部の断面積を大きくする等して強度を確保しなければならず、これがコストの増大を招いている。
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、施工を容易かつ円滑に行うことができるフローティングスラブの施工方法を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項に係る発明は、定められた位置にその断面寸法が上方にいくに従い漸次小さくなる凸部を有してなるコンクリート製の基盤を構築した後、該基盤上に、プレストレスを導入した振動吸収体を配設し、この後に、前記凸部に対応した形状の穴または凹部を有してなるコンクリート製のスラブを構築し、しかる後に前記振動吸収体のプレストレスを解放することによって、前記スラブをジャッキアップすることを特徴としている。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るフローティングスラブ構造およびその施工方法の実施の形態の一例を、図1ないし図8を参照して説明する。ここでは、本発明に係るフローティングスラブ構造およびその施工方法を、例えば鉄道の軌道に適用する場合の例を用いて説明する。
【0014】
図1に示すように、鉄道用の軌道1は、コンクリート製の路盤(基盤)2と、路盤2上に配設された複数のコイルバネ(振動吸収体)3と、これらコイルバネ3上にフローティング支持されたコンクリート製のスラブ4とから概略構成されており、このスラブ4上にレール5が敷設された構成となっている。
【0015】
路盤2の上面には、その両側と中央部とに、それぞれ前記コイルバネ3が等間隔毎に設置されている。また、路盤2の周縁部には、上方に立ち上がる壁部6が勾配を付けて形成されている。
【0016】
さらにこの路盤2の上面には、上方に突出する複数の凸部7が、その中心部に沿って等間隔毎に形成されている。図2に示すように、各凸部7は、平面視矩形の略角錐台形をなしており、下方から上方にいくに従いその断面積が漸次小さくなるよう形成されている。そして、四方の各側面には段部8が形成されており、この段部8に緩衝材10が配設されている。
【0017】
緩衝材10は、上端部が凸部7の上面にボルト固定されたベースプレート11と、このベースプレート11と凸部7の段部8との間に介装されたクリアランス調整用のライナープレート12と、ベースプレート11に一体に取り付けられた防振ゴム13とから構成され、この防振ゴム13の表面が、凸部7の各下部側面7aに連続するようになっている。
【0018】
図1(b)に示したように、前記スラブ4の下面には、各コイルバネ3に対応する位置に穴15が形成されており、この穴15内に図示しないアンカーや支持プレート等が設けられてコイルバネ3の上部を受けるようになっている。
【0019】
図2に示したように、このスラブ4には、各凸部7に対応した位置に、上下に貫通する穴16が形成されている。穴16は、凸部7に対応した形状を有しており、平面視矩形あるいは円形で、その断面寸法が下方から上方にいくに従い漸次小さくなる構成となっている。なお、この穴16の大きさは、凸部7の上面とスラブ4の上面とを同レベルとしたときに、各面において、凸部7の各側面と、穴16の内側面との間に、所定のクリアランスC(例えば20mm程度)が形成されるよう設定されている。
【0020】
図1に示したように、このような構成の軌道1では、コイルバネ3,3,…によって、スラブ4が路盤2から所定寸法持ち上げられてフローティング支持された構成となっており、レール5上を列車等が通過したときに生じる上下方向の振動をコイルバネ3で吸収して、路盤2側に伝播する振動を抑えるようになっている。
また、通常の列車の通過等により、スラブ4に水平方向の外力が作用してこれが変位しても、図2に示した凸部7と穴16との間に形成されたクリアランスCにより、スラブ4の穴16が凸部7に接触・衝突することはなく、スラブ4から振動を伝播しないようになっている。そして、地震等によってスラブ4が過大に変位(例えば50mm程度)した場合には、スラブ4に形成された穴16の内側面が、路盤2の凸部7の側面に衝突することによって、その変位が抑制され、ストッパ機能を果たすようになっている。このときに、凸部7の各側面には緩衝材10が配設されているので、凸部7と穴16との衝突時の衝撃が吸収されるようになっている。
【0021】
次に、上記構成からなる軌道1の施工方法について説明するが、その施工方法は、基本的には従来と同様である。
まず、図3に示したように、路盤2を所定形状に形成する。このときに、凸部7についても同時に形成し、段部8には緩衝材10を取り付けておく。
次いで、路盤2の全面(凸部7も含む)に、この後に打設するコンクリートが路盤2に付着するのを防ぐ剥離シート(図示なし)を敷く。
続いて、予めプレストレスを導入したコイルバネ3,3,…(図1参照)を路盤2上の所定位置に設置する。
そして、この後、スラブ4を形成するためのコンクリートを打設する(図3に示した状態)。このコンクリートが硬化して所定の強度を発現した後に、各コイルバネ3のプレストレスを解放する。すると、図1および図2に示したように、各コイルバネ3が伸長し、スラブ4がジャッキアップされてフローティング支持された状態となる。
しかる後には、スラブ4上にレール5を敷設することによって、軌道1の施工が完了する。
【0022】
上述したように、フローティングスラブ構造の軌道1およびその施工方法では、軌道1が、路盤2と、コイルバネ3を介してフローティング支持されたスラブ4とから構成され、路盤2の上面には凸部7が形成され、スラブ4には穴16が形成され、これら凸部7と穴16とが、それぞれその断面寸法が上方にいくに従い漸次小さくなる構成とされている。そして、このような軌道1を構築するには、凸部7を有した路盤2を構築した後、プレストレスを導入したコイルバネ3を路盤2上に配設し、この後に、穴16を有したスラブ4を構築し、しかる後にコイルバネ3のプレストレスを解放することによってスラブ4をジャッキアップするようにした。
このようにして、凸部7と穴16を、それぞれその断面寸法が上方にいくに従い漸次小さくなる形状とすることによって、スラブ4をジャッキアップするときに、凸部7と穴16とが干渉してジャッキアップできなくなるといった問題が生じることなく、円滑に施工を行うことができる。また、スラブ4に穴16を形成するときには、既に形成した路盤2の凸部7を型として用いることができ、しかも、この後にスラブ4をジャッキアップすることによって凸部7と穴16との間にクリアランスを自動的に確保することができる。したがって、従来のようにクリアランス確保のための仕切り板等を用いる必要がなく、施工の容易化を図ることが可能となる。
【0023】
また、路盤2側の凸部7には、緩衝材10が配設された構成となっている。これにより、スラブ4に水平方向の外力が作用してこれが過大に変位したときに、凸部7にスラブ4が衝突する際の衝撃を吸収することができる。したがって、凸部7の強度を従来よりも落とすことができるので、凸部7の小型化を図ることが可能となり、コスト低減を図ることができる。
【0024】
さらに、緩衝材10には、クリアランス調整用のライナープレート12が配設されている。このライナープレート12の厚さを調整することによって、穴16と緩衝材10とのクリアランスCを調整することができる。もちろん、ライナープレート12が不要であれば、これを配設する必要はない。また、このクリアランスCと、ライナープレート12とによって、防振ゴム13の取り替えも容易に行うことが可能である。
【0025】
なお、上記実施の形態において、緩衝材10の構成については、スラブ4が過大に変位したときに凸部7とスラブ4とが衝突する際の衝撃を吸収することができるのであれば、上記以外であってもよい。
例えば、図4に示すように、防振ゴム21を略半球状とし、その断面積が凸部7からこれと対向する穴16側の先端部にいくに従い、漸次小さくなる構成としてもよい。このような防振ゴム21を備えることにより、スラブ4が水平方向に過大に変位した場合、図4(a)に示したように、スラブ4の穴16が防振ゴム21に接触し始める初期の段階では防振ゴム21で発揮する減衰力は小さく、図4(b)に示したように、スラブ4の変位が大きくなるにしたがい、防振ゴム21による減衰力が非線形の二次曲線的に増大する。これにより、例えば大地震の発生時等にスラブ4が大きく変位しても、防振ゴム21で大きな減衰力を発揮することにより、スラブ4と凸部7とが直接衝突するのを防止することができる。また、このように断面積が漸次変化する防振ゴム21は、略半球状に限るものではなく、図5(a)に示す防振ゴム22のように、略円錐状あるいは角錐状としたり、図5(b)に示す防振ゴム23のように、略円錐台形あるいは角錐台形としたり、さらには図5(c)に示す防振ゴム24のように、略円錐状あるいは角錐状の複数の突起24aを備えた形状等、他の形状を採用することも可能である。
【0026】
また、緩衝材の他の例として、バネ常数の異なる複数種のものを組み合わせる構成としてもよい。このような構成の緩衝材としては、例えば、図6(a)に示すように、防振ゴム25を、バネ常数の異なるゴム25a,25b,25cを、凸部7側から穴16側に向けてバネ常数が漸次小さくなるように積層したものがある。このような防振ゴム25によれば、図6(b)に示すように、スラブ4の水平方向の変位量が小さいときには、バネ常数が最も小さいゴム25aのみが変形して変位を減少し、スラブ4の変位量が大きくなるに従い、ゴム25b,25cが順次変形し、発揮する減衰力が非線形的に大きくなる。これによっても、上記と同様の効果を奏することが可能である。
これ以外にも、図7に示すように、防振ゴム26を、バネ常数の異なる複数種のゴム26a,26b,26cを組み合わせた構成とし、バネ常数の小さなゴム26aから、バネ常数の大きなゴム26cに向けて、その高さが漸次小さくなるようにしてもよい。このような防振ゴム26によっても、スラブ4の水平方向の変位量が小さいときには、バネ常数が最も小さいゴム26aのみが変形して減衰力を発揮し、スラブ4の変位量が大きくなるに従い、ゴム26b,26cも順次変形し、発揮する減衰力が非線形的に大きくなる。
【0027】
なお、上記した防振ゴム13,21,22,23,24,25,26を備えた緩衝材10は、凸部7側に備えなくとも、穴16側に備える構成としてもよい。
【0028】
また、緩衝材のさらに他の例として、図8に示すようなものもある。この緩衝材28は、凸部7側と穴16側とに、それぞれベース29,30が取り付けられ、これらベース29,30間に、粘弾性体31が介装された構成となっている。そして、ベース29,30の先端部は、これらベース29,30を結ぶ方向に対して斜めに形成されており、スラブ4が水平方向に変位すると、粘弾性体31はベース29,30間で斜めに変形して、その変位を減衰するようになっている。また、ベース29,30の先端部の両端には突起32,32が形成されており、大地震などによりスラブ4が大きく変位したときには、ベース29側の突起32,32と、ベース30側の突起32,32とが接触して、ストッパ機能を果たすようになっている。このような構成の緩衝材28によっても、上記実施の形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0029】
また、上記実施の形態において、スラブ4には、上下に貫通する穴16を形成する構成としたが、これを、スラブ4の下面に、上面には貫通しない凹部を形成し、この凹部に凸部7を収める構成としてもよい。
【0030】
さらに、緩衝材10,28に、防振ゴム13,21,22,23,24,25,26、あるいは粘弾性体31を用いる構成としたが、スラブ4の水平方向の変位を減衰することができるのであれば、これ以外にも油圧ダンパー等、他の減衰機構を用いるようにしてもよい。
【0031】
加えて、上記実施の形態において、本発明に係るフローティングスラブ構造およびその施工方法を用いて、鉄道用の軌道1を構成する例を用いたが、その用途は鉄道に限定するものではなく、例えば高速道路や橋梁等の道路等にも用いることが可能である。さらには、一般のビルの機械室などにおいて、フローティング支持したスラブ4上に各種装置等を設置したり、またスラブ4上に建物等を構築してこれを免震構造とすることも可能である。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項に係るフローティングスラブの施工方法によれば、断面寸法が上方にいくに従い漸次小さくなる凸部を有する基盤を構築した後、プレストレスを導入した振動吸収体を基盤上に配設し、この後に、穴または凹部を有するスラブを構築し、しかる後に振動吸収体のプレストレスを解放することによってスラブをジャッキアップする構成となっている。このようにして、凸部と穴または凹部を、それぞれその断面寸法が上方にいくに従い漸次小さくなるよう形成しておくことによって、スラブを形成した後にこれをジャッキアップするときに、凹部と凸部とが緩衝してジャッキアップできなくなるといった問題が生じることなく、円滑に施工を行うことができる。また、スラブに穴または凹部を形成するときには、既に形成した基盤の凸部を型として用いることができ、しかも、この後にスラブをジャッキアップすることによってクリアランスを自動的に確保することができる。したがって、従来のようにクリアランス確保のための仕切り板等を用いる必要がなく、施工の容易化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るフローティングスラブ構造を適用した軌道の一例を示す平面図および側断面図である。
【図2】 同軌道の要部を示す平面図および側断面図である。
【図3】 同軌道の施工途中の状態を示す図であって、スラブをジャッキアップする前の状態を示す側断面図である。
【図4】 同軌道に備える緩衝材の他の一例を示す側断面図である。
【図5】 同軌道に備える緩衝材のさらに他の一例を示す側断面図である。
【図6】 同軌道に備える緩衝材のさらに他の一例を示す側断面図である。
【図7】 同軌道に備える緩衝材のさらに他の一例を示す側断面図である。
【図8】 同軌道に備える緩衝材のさらに他の一例を示す側断面図である。
【符号の説明】
2 路盤(基盤)
3 コイルバネ(振動吸収体)
4 スラブ
7 凸部
10,28 緩衝材
16 穴
C クリアランス

Claims (1)

  1. 定められた位置にその断面寸法が上方にいくに従い漸次小さくなる凸部を有してなるコンクリート製の基盤を構築した後、該基盤上に、プレストレスを導入した振動吸収体を配設し、この後に、前記凸部に対応した形状の穴または凹部を有してなるコンクリート製のスラブを構築し、しかる後に前記振動吸収体のプレストレスを解放することによって、前記スラブをジャッキアップすることを特徴とするフローティングスラブの施工方法。
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