JP3637462B2 - 静電像現像用キャリアおよびその製造方法、現像剤並びに画像形成方法 - Google Patents

静電像現像用キャリアおよびその製造方法、現像剤並びに画像形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において静電像の現像に用いられる静電像現像用キャリアおよびその製造方法、現像剤並びに画像形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、静電像を利用した画像形成方法としては、トナーとキャリアとから構成されるいわゆる二成分現像剤により磁気ブラシを形成させ、これにより、静電潜像担持体上に形成された静電潜像を現像して顕像化させる方法が広く利用されている。
このような二成分現像剤を構成するキャリアとしては、鉄粉やフェライトなどの磁性体粒子よりなるものが用いられており、さらにそのような磁性体粒子の表面に適宜の樹脂による被覆樹脂層を形成してなる樹脂被覆キャリアも用いられている。このような樹脂被覆キャリアによれば、被覆樹脂層により、好適な帯電性を発揮させることができると共に、トナーの一部がキャリア粒子の表面に融着するいわゆるスペントトナーの発生を有効に防止することができ、現像剤に大きな耐久性が得られる。
【0003】
また、キャリアとして軽金属フェライトよりなる磁性体粒子を用いることが提案されている。この軽金属フェライトは、いわゆる軽金属の酸化物を成分とするフェライトであって、その比重が小さいために軽量であり、キャリアとして用いた場合に、大きな耐久性を有し、長い使用寿命が得られる。
【0004】
而して、軽金属フェライトよりなる磁性体粒子は、一般に、酸化鉄と軽金属の酸化物との混合物を焼成することにより製造されるが、従来の軽金属フェライトよりなるキャリアは、これを静電潜像の現像のためにトナーと攪拌混合する帯電行程において、安定した帯電状態が得られるまでの間に、一旦、帯電電位が過大の過剰帯電状態となる現象が生じ、その後に電位が低下して安定帯電状態となるため、短時間のうちにトナーに安定な帯電状態を得ることができず、その結果、安定な現像を達成することができない場合があることが判明した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、現像のための攪拌混合による帯電行程において過剰帯電状態となる現象が生ずることがなく、従って短時間のうちにトナーに安定した帯電状態を実現することのできる静電像現像用キャリアを提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、当該キャリアによる静電像現像剤を提供することおよびそのような静電像現像剤による画像形成方法を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、当該キャリアを確実にかつ有利に製造することのできるキャリアの製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の静電像現像用キャリアは、Fe 2 3 で示される鉄酸化物の成分と、Li、KおよびRbから選択されるアルカリ金属の酸化物、並びに、Be、MgおよびCaから選択されるアルカリ土類金属の酸化物からなる金属元素の酸化物の成分とよりなり、当該金属元素の酸化物の成分の割合をaモル%、鉄酸化物の成分の割合をbモル%とするとき、a+b=100、a=5〜50である軽金属フェライトの磁性体粒子よりなり、
当該軽金属フェライトにマグネタイト相が0.1〜10重量%の割合で含有されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の静電像現像剤は、上記のキャリアとトナーとからなることを特徴とする。
また、本発明の画像形成方法は、上記静電像現像剤により形成された磁気ブラシにより、静電潜像担持体に担持された静電潜像を顕像化する工程を有すること特徴とする。
【0009】
本発明の静電像現像用キャリアの製造方法は、酸化鉄と、Li、KおよびRbから選択されるアルカリ金属の酸化物と、Be、MgおよびCaから選択されるアルカリ土類金属の酸化物とを含有し、更にリン系物質を2重量%以下含有する原料混合物を還元性条件下で1150〜1300℃の温度で焼成することにより、上記の軽金属フェライトよりなる磁性体粒子を得る工程を有することを特徴とする。
【0010】
【作用】
本発明の静電像現像用キャリアは、それを構成する磁性体粒子が軽金属フェライトよりなり、しかもこの軽金属フェライトには特定の割合でマグネタイト相が含有されていることにより、当該磁性体粒子において適度の電気伝導性が確保され、そのため、トナーと共に構成される二成分現像剤が現像のために攪拌混合される帯電行程において、発生した静電気が磁性体粒子において速やかに移動するために一時的に帯電量が過剰となる現象が抑制され、従ってトナーに直ちに安定した帯電状態が実現されるので、磁気ブラシ方式によって静電潜像担持体上の静電潜像を顕像化することにより、良好な可視画像を形成することができる。
【0011】
本発明の静電像現像用キャリアの製造方法によれば、特定の温度条件で焼成を行うため、組織中にマグネタイト相が所要の割合で分散した状態で軽金属フェライトが生成されるため、目的とする磁性体粒子を確実にかつ容易に製造することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
〔キャリアの磁性体粒子〕
本発明において、キャリアは、Fe 2 3 成分と、式(X 2 O)〔Xは1価の金属元素を示す。〕で示される金属元素の酸化物および式(ZO)〔Zは2価の金属元素を示す。〕で示される金属元素の酸化物からなる金属酸化物成分とよりなる軽金属フェライトの磁性体粒子よりなり、しかも特定の割合でマグネタイト相、すなわち式FeO・Fe2 3 で表される四酸化三鉄の相が、微小粒子の状態で軽金属フェライトの組織中に存在するものである。
【0013】
具体的に説明すると、この軽金属フェライトは、Fe2 3 で示される鉄酸化物の成分と、周期律表IA族またはIIA族のアルカリ金属の酸化物およびアルカリ土類金属の酸化物からなる金属元素の酸化物(以下「軽金属酸化物」という。)の成分とを含有してなるものである。
式中のXはリチウム、カリウムおよびルビジウムから選ばれた少なくとも1種であり、Zはベリリウム、マグネシウムおよびカルシウムから選ばれた少なくとも1種である。特にLiO2 およびMgOを成分として含有する軽金属フェライトであることが好ましい。
【0014】
この軽金属フェライトにおいて、上記の軽金属酸化物成分の割合は、全金属酸化物に対して5〜50モル%であることが好ましく、特に10〜45モル%であることが好ましい。軽金属酸化物成分の割合が5モル%以下である場合には、磁性体粒子の比重が大きいものとなるため軽量のキャリアを得ることが困難となる。一方、その割合が50モル%を超える場合には、鉄酸化物成分の相対的割合が小さくなるために、キャリアとして必要な磁気特性を得ることが困難となり、良好な磁気ブラシを形成することができないために優れた画像を形成することが困難となる。
【0015】
本発明において、当該軽金属フェライトには、0.1〜10重量%のマグネタイト相が含有されていることが必要である。このマグネタイト相の含有割合が過小の場合には、当該磁性体粒子よりなるキャリアは、トナーと攪拌混合する帯電行程において過剰帯電状態となる現象が生ずるため、トナーの帯電量が次第に増加する傾向となり、その結果、画像濃度が低下するため、本発明の目的を達成することができない。一方、マグネタイト相の含有割合が過大の場合には、当該磁性体粒子によるキャリアにおいては、電荷のリークが大きいために帯電性が低下し、帯電量が少ないトナーの割合が増加する結果、現像により得られる可視画像はカブリ濃度が高いものとなる。
【0016】
上記の軽金属フェライトは、鉄の酸化物などの鉄元素の化合物、および軽金属酸化物などの既述の軽金属元素の化合物であって、焼成処理によって当該金属元素の酸化物を生成するものを主原料物質として用い、これに必要に応じて他の添加物を混合して得られる原料混合物を、適宜の温度に焼成処理する方法によって製造することができる。
【0017】
軽金属酸化物成分を生成させるための原料としては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸リチウム、硫化リチウムなどの酸素酸塩、ハロゲン化物、リチアキ石などの軽金属元素を含有する鉱物、その他を用いることができる。これらは2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0018】
焼成処理に供される原料混合物には、リン系物質が添加されているこれにより、機械的強度の大きい磁性体粒子が得られる。このようなリン系物質の具体例としては、例えば黄リン、赤リン、白リン、黒リン、紫リン、金属リン、リン酸化物などを挙げることができる。リン系物質は、焼成処理に付される原料混合物全体において2重量%以下の割合とされることが好ましく、特に1重量%以下であることが更に好ましい。この割合が2重量%を超える場合には、得られるキャリアは、その磁気特性が劣ったものとなり、また比重が大きいものとなるおそれがある。
【0019】
原料混合物には、更に磁性体粒子の電気的特性または帯電特性を調整するための成分となる物質、あるいは焼成促進剤を添加することができる。このような添加剤の具体例としては、V2 5 、As2 3 、Bi2 3 、Sb2 3 、PbO2 、CuO、B2 3 、SiO2 、およびCs、Nbなどの稀土類元素の化合物並びにCuSO4 、CuCl2 などの化合物がある。これらの添加量は1重量%以下であることが好ましい。
【0020】
本発明のキャリアを製造するためには、次のような方法を用いることが好ましい。
(1)用いる原料物質を、各別に、あるいは混合して、例えばボールミルなどにより粉砕する。
この粉砕による物質の粒子径は特に限定されるものではないが、例えば数平均一次粒子径が0.1〜10μm、好ましくは0.5〜5μmとなる範囲である。数平均一次粒子径は、例えばレーザー式光散乱方式による粒径測定器によって求めることができる。
(2)必要な原料物質のすべてを含有する原料混合物に水溶性高分子物質および水を添加して分散処理することによりスラリーを調製し、このスラリーを噴霧乾燥することにより、必要な原料物質が分散された状態で水溶性高分子物質により結着されてなる粒子体を形成する。
【0021】
(3)このようにして得られる焼成用原料粉体を焼成処理する。この焼成処理の温度は1150〜1300℃の範囲とされることが必要である。
焼成処理の温度がこの範囲内であることにより、焼成処理がいわば不均一または一部不完全なものとなり、その結果、生成する軽金属フェライトの組織中にマグネタイト相が微小粒子状に残留した状態を得ることができる。
一方、焼成処理の温度が高い場合には、マグネタイト相が更に酸化されて均一なあるいは完全な焼成が行われるためにマグネタイト相が消失してしまい、得られるものは均一な軽金属フェライトとなる。なお、焼成処理の温度が低い場合には、軽金属フェライトを良好に生成することができない。
【0022】
焼成処理は還元性条件下で実施することが好ましい。この還元性条件下では、主原料物質の一つである鉄酸化物Fe2 3 が一部還元されるためにFeO構造のものが生成され、マグネタイト相が確実に生成されることとなる。
【0023】
還元性条件を実現するためには、焼成処理系に還元剤を共存させる手段を利用することができる。ここに還元剤としては、例えばカーボンブラックなどの専用の還元剤を用いることができる。
しかしながら、既述の例のように、焼成用原料物質を調製するために水溶性高分子物質が用いられている場合には、当該水溶性高分子物質が焼成処理工程において燃焼することによって還元作用が発揮されるので、当該水溶性高分子物質による還元作用によっても必要な還元性条件が実現されない場合に、他の還元剤を添加すればよい。
【0024】
本発明のキャリアを形成する軽金属フェライトは、1000Oe(エルステッド)の磁場における磁化の強さ(σ1K)が35〜100emu/gであることが好ましく、より好ましくは45〜80emu/gである。
この値が35emu/gより小さい場合には、得られるキャリアは、現像スリーブに対する磁気束縛力が過小となるためにキャリアがトナーと共に静電潜像担持体に付着するキャリア付着現象が発生したり、現像スリーブ上に形成される磁気ブラシの高さが不十分となるために高い画像濃度の良好な可視画像の形成が困難となる。一方、当該磁化の強さが100emu/gより大きい場合には、磁気ブラシが堅いものとなるために、一旦画像部に付着したトナーが掃き除かれてしまういわゆるスカベージョン現象が生じやすく、その結果、現像スリーブの長さ方向に伸びる線画が消失しやすくなる。
【0025】
また、当該軽金属フェライトは、保磁力が100Oe以下であることが好ましく、より好ましくは50Oe以下である。保磁力が100Oeより大きい磁性体による場合には、キャリアはそれ自体の凝集力が過大となるため、トナーとの混合性が低いものとなり、あるいは内部に固定磁石を備えてなる現像スリーブ上において磁気束縛力が過大な状態となってキャリアが強く保持されてしまうため、現像剤としての搬送性が大きく低下して画像ムラの原因となる。
【0026】
以上の磁気特性についての測定は、例えば横河電気社製の「直流磁化特性自動記録装置 3257−35型」により行うことができる。
【0027】
軽金属フェライトよりなる磁性体粒子は、その電気抵抗値が1×107 〜1×1013Ω・cmであることが好ましい。電気抵抗値が1×107 Ω・cmより小さい場合には、静電潜像担持体の表面からキャリア粒子へ電荷の注入が生じてキャリア付着が生じやすく、一方1×1013Ω・cmより大きい場合には、高濃度の画像を得ることが困難となる。
電気抵抗値の測定は、常温常湿環境下において2つの電極板間に、常温常湿環境下で調湿された試料粉末を厚さ約3mmで挟み込み、100Vの直流電圧を印加して30秒間が経過した後の電流値を測定し、算出することができる。
【0028】
磁性体粒子は、その平均粒径が20〜300μmであることが好ましく、特に30〜200μmであることが好ましい。平均粒径が30μmより小さい場合には、静電潜像担持体に対するキャリア付着現象が生じやすく、一方300μmより大きい場合には、現像スリーブ上に形成される磁気ブラシの密度が小さくなるために良好な可視画像の形成が困難となる。
ここに、平均粒径は、湿式分散器を備えてなるレーザー回折式粒度分布測定装置「HELOS」(シンパテック社製)により測定される体積基準の平均粒径を意味する。
【0029】
上記の磁性体粒子は、そのままキャリアとして用いることも可能であるが、当該磁性体粒子を芯材粒子としてその表面に被覆樹脂層が形成されたものがキャリアとして好ましく用いられる。
【0030】
当該被覆樹脂層を構成する樹脂としては、公知の適当な樹脂を用いることができる。その具体例としては、例えばポリエチレンなどのオレフィン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化アルキル(メタ)アクリレート系共重合体などのフッ素樹脂、ポリメチルシリコーン、ポリジメチルシリコーン、ポリフェニルシリコーンなどのシリコーン樹脂、ポリスチレン、ポリクロルスチレン、ポリメチルスチレンなどのスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリラウリルアクリレート、ポリラウリルメタクリレート、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリブチルメタクリレート、ポリブチルアクリレートなどのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン系樹脂、ロジン変性樹脂、ポリアミド樹脂、その他を用いることができる。これらは組み合わせて使用してもよい。これらのうち、特に好ましいものは、オレフィン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂である。
【0031】
被覆樹脂層の付着量は、磁性体粒子に対して0.01〜15重量%の範囲内であることが好ましく、特に0.05〜10重量%であることが好ましい。
この割合が過小の場合には、被覆樹脂層の膜厚が過小となるために磁性体粒子の表面の一部が露出した状態となる結果、当該被覆樹脂層による安定した帯電性能を得ることができず、一方、過大の場合には、被覆樹脂層の膜厚が過大となるために被覆樹脂層が剥離する現象が生じ易くなる。
【0032】
磁性体粒子に対して被覆樹脂層を形成する方法としては、湿式法では浸漬法、スプレードライ法、流動化ベッド塗布法などを挙げることができ、乾式法では被覆樹脂層のための樹脂相を形成する材料として樹脂微粒子を用い、これを機械的衝撃力によって磁性体粒子に付着させて成膜する乾式機械的衝撃法などを挙げることができる。
【0033】
特に好ましい被覆樹脂層の形成方法は、磁性体粒子の表面に予め重合触媒を担持させておき、これを利用してエチレンなどの単量体を当該磁性体粒子の表面で重合させることにより重合体層を形成する表面重合被覆法であり、例えば特開昭60−106808号公報などに記載されている。
この表面重合被覆法によれば、磁性体粒子の表面に対する密着性がきわめて高い状態の被覆樹脂層が形成されるため、得られるキャリアは安定した帯電特性を有すると共に優れた耐久性を有するものとなる。
【0034】
この表面重合被覆法に用いられる単量体としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、オクテン、シクロペンテン、シクロペンタジエンなどの脂肪族炭化水素系単量体が用いられる。また、他のビニル系単量体を用いることも可能である。特に単量体としてエチレンを用い、ポリエチレンよりなる被覆樹脂層を形成することが好ましい。
【0035】
軽金属フェライトにおいて、マグネタイト相の含有割合の測定は、例えばX線回折を利用して行うことができる。
具体的には、マグネタイトと、マグネタイト相を有しないフェライトとの緊密な混合物を調製し、当該混合物それ自体のX線回折の程度を、特定のピーク強度のラインを用いて測定する作業を、マグネタイトの割合が既知の量で僅かづつ異なる多数の混合物について繰り返し、これにより、マグネタイトの含有割合の変化に伴ってX線回折の程度の変化を示す絶対的な検量線を作成しておき、この絶対的な検量線に従って、マグネタイト相の含有割合を求めればよい。
【0036】
軽金属フェライトにおいて、マグネタイト相は軽金属フェライト相の組織中に微小粒子状に存在する。その個々の大きさは特に限定されるものではないが、球換算による直径が1〜10μm程度であることが好ましい。
この球換算粒子径は、得られた軽金属フェライト中に存在するマグネタイトのみで形成された相をエネルギー分散型元素分析装置により面分析することによって個々のマグネタイト相の占める面積割合を算出し、この数値から求めることができる。
【0037】
〔トナー〕
上記の磁性体粒子よりなるキャリアは、適宜のトナーと混合されて二成分現像剤が構成される。ここに、トナーは特に限定されるものではないが、少なくとも結着樹脂と着色材とを含有してなる着色粒子により構成されるものが用いられ、特に無機微粉末などがトナー粉末に添加混合されたものが好ましい。
【0038】
トナーの結着樹脂は特に限定されるものではないが、スチレン−アクリル系重合体、ポリエステル樹脂など公知の樹脂を好ましく用いることができる。
トナーの粒子体中には、結着樹脂の他に、ポリプロピレンなどの定着改良剤、種々の公知の荷電制御剤、その他の添加剤を含有させることもできる。
【0039】
トナーに用いられる着色材としては、例えば黒トナーのためにはカーボンブラック、ニグロシン染料などが使用され、イエロー、マゼンタ、シアントナーに必要な顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー68、C.I.ピグメントレッド48−3、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド212、C.I.ピグメントレッド57−1、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー81、C.I.ピグメントイエロー154などを好適に用いることができる。
【0040】
トナー粉末には、適宜の無機微粒子および/または有機微粒子を添加混合することができる。
ここに無機微粉末としては、帯電性の付与能力および流動性の点から、表面がシランカップリング剤やチタンカップリング剤などによって疎水化処理されたシリカ微粉末、チタニア微粉末などが好ましく用いられる。この無機微粉末としては、数平均一次粒径が5〜100nmのものが好ましい。
また、有機微粒子としては例えばポリメチルメタクリレートよりなる、数平均一次粒径が5〜100nmのものが好ましく用いられる。
【0041】
以上の二成分現像剤が現像に供される静電潜像は、いずれの静電潜像担持体に形成されたものであってもよく、例えばセレン感光体、アモルファスシリコン感光体、積層型有機感光体などが好適に使用される。
【0042】
以上の二成分現像剤は、磁気ブラシ方式による静電潜像の現像に供されることにより可視画像が形成され、その際にその特性が十分に発揮される。
現像方式は、磁気ブラシ方式であれば特に限定されるものではない。具体的には、例えば内部に固定磁石を備えてなる回転式現像スリーブを有する現像器を用い、この現像スリーブの外周面上に、攪拌混合により帯電された現像剤が供給されて薄層状とされ、これが、間隙を介して現像スリーブが静電潜像担持体と対向する現像領域に搬送され、磁石の磁力の作用を受けて形成された現像剤の磁気ブラシが現像領域において静電潜像担持体の表面に接触することにより、当該静電潜像担持体上に担持された静電潜像に従ってトナーが付着し、これにより顕像化される方式が好ましい。
【0043】
以上の現像方式において、現像スリーブ上の現像剤の薄層の厚さは、現像領域で0.1〜8mm、特に0.4〜5mmであることが好ましい。現像領域における現像スリーブと静電潜像担持体との離間距離は、例えば0.15〜7mmであり、好ましくは0.2〜4mmである。
【0044】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお「部」は重量部を示す。
【0045】
〔磁性体粒子の製造〕
下記表1に示す割合に従って各原料物質を秤量し、その合計に対して0.5重量%の赤リンを添加してボールミルにより粉砕しながら混合し、得られた混合物を、当該混合物に対して2重量%の割合でポリビニルアルコール(PVA)を含有する水中に添加して分散し、原料物質の各々の数平均一次粒子径が2μm以下となるまで粉砕処理してスラリーを調製した。そして、このスラリーを噴霧乾燥装置によって造粒乾燥して焼成用原料粉体を得た。
次に不活性ガスが充填された焼成炉に当該焼成用原料粉体を投入し、密閉系において各焼成温度で焼成処理することにより、体積平均粒径が65μmの4種の磁性体粒子を得た。これらを「粒子1」〜「粒子4」とする。
なお、粒子3は、主原料物質に還元剤であるカーボンブラック(表1において「CB」と記す)を1重量%添加した場合、粒子4は、還元剤であるカーボンブラック1重量%と、添加剤であるV2 5 を0.5重量%添加した場合に得られたものである。
表1にこれら各粒子の原材料と焼成条件等を示す。
【0046】
上記のようにして得られた磁性体粒子の各々についてX線回折によって測定されたマグネタイト相(「Fe34 」と記す。)の含有割合および磁気特性を示す。ここに、磁化の強さは1000Oeの磁場における値である。
【0047】
【表1】
Figure 0003637462
【0048】
〔キャリアの製造〕
脱水ヘキサン500ミリリットルと、乾燥した上記の各磁性体粒子450gとをオートクレーブ中に入れて攪拌し、次いで2.0ミリモルのチーグラー・ナッタ触媒を添加して攪拌を行い、磁性体粒子の表面に触媒物質を担持させた。
その後、オートクレーブの内圧を6.0kg/cm2 Gとし、温度90℃でエチレンガスを連続的に供給して45分間反応させることにより、磁性体粒子の表面においてエチレンの重合を行い、もって磁性体粒子の表面にポリエチレンよりなる被覆樹脂層が磁性体粒子に対して5重量%となる割合で形成されてなるキャリアを製造した。
【0049】
〔トナーの製造〕
スチレン−アクリル系重合体100部、低分子量ポリプロピレン8部およびカーボンブラック8部を混合、溶融、混練、粉砕および分級することによりトナー粉末を得、これに疎水性シリカ微粉末0.8部を混合することにより、体積平均粒径が8.7μmのトナーを製造した。
【0050】
〔現像剤の調製〕
上記キャリアの各々と、トナーとを混合することにより、トナー濃度が6重量%の二成分現像剤を調製した。
【0051】
〔実写テスト〕
積層型有機感光体を搭載してなる電子複写機「U−BIX 3035」(コニカ社製)の改造機であって、現像領域の間隙の大きさを0.8mm、現像領域における現像剤の薄層の厚みを1.2mmとした接触型現像方式による現像器を備えたものを用い、当該現像器に上記の現像剤の各々を充填し、温度10℃、相対湿度10%の低温低湿度雰囲気下において10万回にわたって画像を形成することにより実写テストを行った。
ここに、原稿として、A4サイズで画素率が1%のものを用いた。このような低い画素率の原稿を用いた理由は、現像剤におけるトナーの消費を少ない状況とするためである。
そして、テストの初期および終期における可視画像の画像濃度およびカブリ濃度を調べた。
結果は表2に示すとおりである。
【0052】
【表2】
Figure 0003637462
【0053】
表2の結果から、本発明のキャリアによれば、マグネタイト相を全く含有しない比較例2に係る磁性体粒子6からなるものに比して、多数回の画像形成において画像濃度の変動が非常に少なく、また多数回にわたる可視画像の形成においてもカブリ濃度の上昇が小さいことが理解される。
一方、磁性体粒子6によるキャリアによれば、磁性体粒子中にマグネタイト相が含有されないために、トナーと攪拌混合する帯電行程において過剰帯電状態となる現象が生じてトナーの帯電量が次第に増加する傾向となり、その結果、画像濃度が低下することが理解される
また、比較例1の結果から、マグネタイト相の含有割合が過大の場合には、テストの終期においてカブリ濃度が相当に大きくなることが理解される。これは、当該磁性体粒子によるキャリアにおいては、電荷のリークが大きいために帯電性が低下する結果、帯電量が少ないトナーの割合が増加するからである。
【0054】
【発明の効果】
本発明の静電像現像用キャリアによれば、それを構成する磁性体粒子が軽金属フェライトよりなり、しかもこの軽金属フェライトには特定の割合でマグネタイト相が含有されていることにより、当該磁性体粒子において適度の電気伝導性が確保され、そのため、トナーと共に構成される二成分現像剤が現像のために攪拌混合される帯電行程において、発生した静電気が磁性体粒子において速やかに移動するために一時的に帯電量が過剰となる現象が抑制され、従ってトナーに直ちに安定した帯電状態が実現されるので、磁気ブラシ方式による現像方法によって静電潜像担持体上の静電潜像を顕像化することにより、良好な可視画像を形成することができる。
【0055】
また、本発明の静電像現像用キャリアの製造方法によれば、特定の温度条件で焼成を行うため、組織中にマグネタイト相が所要の割合で分散した状態で軽金属フェライトが生成されるため、目的とする磁性体粒子を確実にかつ容易に製造することができる。

Claims (4)

  1. Fe23で示される鉄酸化物の成分と、Li、KおよびRbから選択されるアルカリ金属の酸化物、並びに、Be、MgおよびCaから選択されるアルカリ土類金属の酸化物からなる金属元素の酸化物の成分とよりなり、更にリン系物質を2重量%以下含有する原料混合物を還元性条件下で焼成することにより作製された、当該金属元素の酸化物の成分の割合をaモル%、鉄酸化物の成分の割合をbモル%とするとき、a+b=100、a=5〜50である軽金属フェライトの磁性体粒子よりなり、
    当該軽金属フェライトにマグネタイト相が0.1〜10重量%の割合で含有されていることを特徴とする静電像現像用キャリア。
  2. 請求項1に記載のキャリアと、トナーとからなることを特徴とする静電像現像剤。
  3. 請求項2に記載の静電像現像剤により形成された磁気ブラシにより、静電潜像担持体に担持された静電潜像を顕像化する工程を有することを特徴とする画像形成方法。
  4. 酸化鉄と、Li、KおよびRbから選択されるアルカリ金属の酸化物と、Be、MgおよびCaから選択されるアルカリ土類金属の酸化物とを含有し、更にリン系物質を2重量%以下含有する原料混合物を還元性条件下で1150〜1300℃の温度で焼成することにより、請求項1に記載の軽金属フェライトよりなる磁性体粒子を得る工程を有することを特徴とする静電像現像用キャリアの製造方法。
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