JP3635438B2 - ホットカーペット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホットカーペットに関し、さらに詳細には、防滑剤のフォーム加工における乾燥工程時のクラック発生、ホットカーペット製造時の加熱プレス離型性及びフォーム層のプレス圧縮回復性、長期折り畳み収納時におけるフォーム面同士の耐湿熱ブロッキング性及びフォーム層折れ部分の耐屈曲性、長期敷設時に起こりうる塩化ビニルクッションフロア、フローリングとの耐湿熱ブロッキング性、床用ワックス、家庭用洗剤に含まれる皮膜物質との耐接着性等、種々の問題点を解決した、防滑用組成物を基材に塗布したホットカーペットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来からホットカーペットは、防滑処理をしていないので、人が上を歩くことによる敷設後の移動・ズレ、また特に掃除機によるめくれや移動・ズレ等が問題になっている。
【0003】
しかし最近では、この移動・ズレを解消するために、両面粘着テープでの固定やホットカーペット裏面への合成樹脂のドット加工、また樹脂フィルムを貼付したものが登場してきている。この中で最も好ましい方法としては、ホットカーペット裏面への樹脂加工である。粘着テープによる固定は、埃による粘着性のダウン、床への粘着成分の転写、剥離・敷設の繰り返しが困難であること、またドット加工では十分な防滑性が得られないこと、更に樹脂フィルムの貼付ではコスト高であることと断熱性に乏しいためである。
【0004】
樹脂加工の中でも、特にラテックスコンパウンドを使用する場合は、比較的安価で簡単に加工することができる。即ち、ホットカーペット裏面にラテックスフォーム層を形成させると、防滑性だけでなく、断熱性、吸音性、クッション性に優れたものを得ることができる。ラテックスフォーム層の形状については、コスト、防滑性及びその他の物性のバランスに応じて平面、筋引き(凹凸)、ドット状を選択できる。
【0005】
またプレス離型性、耐塩ビブロッキング性、フォーム面同士の耐ブロッキング性等の改善は、従来は硫黄架橋やマイクロカプセルによる熱発泡を行っていた。
しかしながら、上述した従来のラテックスコンパウンドでは、臭気や圧縮回復性、防滑性が良くなく、ホットカーペット用防滑剤として前記要求物性の全てを満たすことができなかった。
【0006】
すなわち、フォーム加工時の乾燥工程に発生するクラック、ホットカーペット製造時の熱プレスによるフォームの変形・型離れ性、屋内倉庫貯蔵時のフォーム面同士のブロッキング、床へ敷設後の床とのブロッキング、シーズンオフ収納時におけるフォーム面同士のブロッキング、折り畳んだ折れ部分の割れ発生等の問題があった。
【0007】
この中でクラックに関しては、乾燥温度のダウン、低Tg・低モジュラスラテックスのブレンドで解決は可能である。しかし、ホットカーペットの製造では、電熱線をニードルパンチ不織布(ホットカーペット表面材)とフォーム層を付与したニードルパンチ不織布(ホットカーペット裏面材)とで、サンドイッチ状に熱プレス(150℃、1kg/cm2、90秒)するため、通常のラテックスフォームでは、脱型時にプレスに粘着し、無理に剥すとフォーム層で材破する場合もある。更にフォーム層が圧縮によりエンボスされ、元の形状に回復しないことが多い。この場合の解決法としては、硫黄による加硫が非常に効果的だが、用途がホットカーペットだけに、臭気及び毒性の面からも加硫は不可能である。またかかる過酷な条件下では、架橋や充填剤の添加等のみでは、解決が不可能であり、ラテックス組成そのものを改良する必要がある。
【0008】
フォーム加工したホットカーペットを、フォーム面を合わせて折り畳んだ状態、また更に、その上に他の収納物を積み重ね圧力を加えた状態で、長期間収納・保管すると、ラテックスフォーム面同士でブロッキングが発生し、最悪のケースでは再剥離時に材破する場合がある。この傾向は保管場所が高温多湿である程顕著である。
【0009】
この解決策としては、フォーム面を加熱により再キュアするか剥離剤を塗布すれば良いのだが、現実には無理である。また同時に収納時、長期に渡って折り畳んだ状態でいるため、折れ目に割れが生じることがある。
【0010】
この現象については、フォーム乾燥工程時のクラックと同様、低Tg・低モジュラスラテックスをブレンドすることで解決できるが、ブロッキングとは相反する傾向であることに留意しなければならない。
【0011】
ホットカーペット用防滑組成物に関して最も重大な問題は、床材とのブロッキング、または接着等のトラブルである。特に、塩化ビニルのクッションフロアとの接着、ブロッキングは必ずといって起こり得る。場合によってはフローリングともブロッキング、接着が生じるケースもある。これらは、通常の場合では殆ど起こり得ないが、結露が生じたり、また何らかの理由で、フォーム面と床との間に水が介在した場合に起こる。
【0012】
塩化ビニルの場合は、ホットカーペットの熱で可塑剤がブリードするために起こり、通常のラテックスではTgに関係なく、剥離時に必ずといって良い程、フォーム層は材破する。同様の現象で床用ワックスやつや出し洗剤の様に、皮膜成分を含有する液状物質が半乾きの状態でホットカーペットを敷設すると、フォームと床が容易に接着し、無理に剥すとフォーム層で材破する。
【0013】
ワックスには、皮膜成分の他に溶剤も含まれているので、改善策として、耐溶剤性の良好なNBRをブレンドし、亜鉛華の添加で皮膜強度をアップするなどの手段を採ることができる。しかし、NBRは、耐熱性、特に耐候性が非常に劣るので、ホットカーペットの防滑剤としては、不適当である。
【0014】
以上のように、従来は、上記問題点を改善するラテックス組成物を塗工したホットカーペットは知られていない。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来の技術的課題を解決し、しかも優れた防滑性、防音性、クッション性、断熱性と美観を有する防滑組成物を塗工したホットカーペットを提供することを目的とする。
【0016】
即ち本発明は、特定の組成の防滑剤を使用することにより、ホットカーペット製造時の加熱プレス離型性、プレス圧縮回復性、ホットカーペット折り畳み長期収納時における防滑面同士の耐湿熱ブロッキング性、またホットカーペット敷設時における塩化ビニル製クッションフロア、フローリングとの耐湿熱接着性または耐湿熱ブロッキング性、皮膜強度(耐摩耗性)、また床ワックス等の皮膜物質との耐接着性、更には、フォーム加工における乾燥工程時に発生するクラック、長期折り畳み収納時に生じるフォーム層折れ部分の割れ、即ち耐屈曲性等の問題を解決したホットカーペットを提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、高分子量のMBR系合成樹脂ラテックス、低分子量の合成樹脂ラテックス、水性ポリウレタン樹脂、保水剤、架橋剤、充填剤等を含む防滑用組成物を使用すれば、課題が解決できることを発見し、本発明を完成させるにいたった。
【0018】
すなわち本発明は、ゲル分率95%以上で粒子径が0.05以上0.2μm未満のMBR系合成樹脂ラテックス(A)25〜94重量%とゲル分率95%以上で粒子径が0.2〜0.4μm未満のMBR系合成樹脂ラテックス(B)5〜74重量%と水性ポリウレタン樹脂(C)1〜20重量%とを含み、さらに固形分換算で該ラテックス(A)と該ラテックス(B)と該水性ポリウレタン樹脂(C)の合計100重量部に対し、保水剤(D)0.05〜5重量%と、MBR系合成樹脂のカルボキシル基に対し1〜5倍当量のエポキシ基を有するエポキシ架橋剤(E)とを含有してなる防滑用組成物を基材に塗工してなるホットカーペットに関するものであり、好ましくは防滑用組成物に使用する水性ポリウレタン樹脂のゲル分率が80%以上であること、また好ましくは防滑用組成物が、さらに固形分換算でMBR系合成樹脂ラテックス100重量部に対し、充填剤を200重量%未満含有してなるホットカーペットに関するものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明のMBR系合成樹脂ラテックスは、ゲル分率95%以上で粒子径が0.05以上0.2μm未満のMBR系合成樹脂ラテックス(A)とゲル分率95%以上で粒子径が0.2〜0.4μm未満のMBR系合成樹脂ラテックス(B)とからなる。
【0020】
本発明のMBR系合成樹脂ラテックスにおけるゲル分率とは、2cm(縦)×2cm(横)×0.5cm(厚み)のラテックスフィルムを、トルエン/アセトン:1/1の混合溶媒中に25℃で24時間浸漬し、フィルムの不溶分を完全乾燥させたときの重量を不溶分重量とすると、(不溶分重量)/(元のラテックスフィルムの重量)×100の(%)値をいう。
【0021】
本発明のMBR系合成樹脂ラテックスは、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、エチレン系不飽和ジカルボン酸単量体及び脂肪族共役ジエン単量体を主成分として用いた、メタクリル酸エステルー脂肪族共役ジエン単量体系ラテックス、特に(メタ)アクリル酸メチルーブタジエン系ラテックスである。その他にスチレン−ブタジエン系ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン系ラテックス、エチレン−酢酸ビニル系エマルジョン、酢酸ビニルエマルジョン、クロロプレン、イソプレン、ポリブタジエンエマルジョン、アクリルエマルジョン、ウレタンエマルジョン、ポリエステルエマルジョン等をブレンドしても構わないが、各種物性のバランス面から、MBR系ラテックスを単独で使用した方が好ましい。脂肪族共役ジエン系単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロル−1,3−ブタジエンなどが挙げられるが、これらの内、1,3−ブタジエンが好ましい。この脂肪族共役ジエン系単量体の使用量は、特に制限されないが、45〜70重量%の範囲で用いるのが好ましい。脂肪族共役ジエンが45重量%以下では、フォーム面同士の自己湿熱ブロッキングは良好となるが、加工時のクラックが多く、また折り畳み時の耐屈曲性が劣り、更には塩化ビニルと湿熱ブロッキングし易くなる。また70重量%以上では、皮膜強度が弱くなることおよび粘着性が増すので好ましくない。(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルヒドロキシエチルアクリレート、アミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート等が挙げられる。これらの単量体のうち、メタクリル酸メチルが最も好ましい。これらの単量体の使用量は、27〜55重量%の範囲で用いるのが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルが27重量%以下では耐候性が劣り、また55重量%以上では耐可塑剤性が劣る。
【0022】
エチレン系不飽和ジカルボン酸単量体としては、例えば、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられる。これらの単量体に各ジカルボン酸のハーフエステルやメタアクリル酸やアクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸を併用しても良いが、不飽和ジカルボン酸のみ使用した方が耐熱性の点で好ましい。これらのジカルボン酸単量体の使用量は0.5〜3重量%の範囲が好ましい。0.5重量%以下ではコンパウンド安定性及び機会的安定性が著しく悪化し、3重量%以上では、架橋剤との反応点が多く皮膜強度の点では有利であるが、加工時のクラック、耐熱性においてはマイナス要因となる。
【0023】
本発明のMBR系合成樹脂ラテックスは、上記の単量体の他に、これらの単量体と共重合可能な単量体を共重合成分として使用することができる。共重合可能な単量体としては、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、メタアクリロニトリル、アクリロニトリル、アクリル酸エステル等が挙げられる。これらの共重合可能な単量体の1種又は2種以上を用いることができる。
【0024】
また湿熱ブロッキング性を改善するために、ラテックス粒子の内部架橋剤を使用することができる。内部架橋剤としては、例えばN−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタアクリルアミド、グリシジルメタアクリレート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタアクリレート、ジアセトンアクリルアミド等を挙げることができる。これらの内部架橋剤を共重合しても何等問題ないが、フォーム加工時のクラック及び風合いの変化に注意が必要である。
【0025】
本発明のMBR系合成樹脂ラテックスに使用する重合開始剤としては例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩系開始剤、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物、過酸化水素等使用できる。重合開始剤の使用量は、単量体混合物の0.03〜2.5重量%で、好ましくは0.05〜1.0重量%である。また、乳化重合を促進させるために、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、グルコース、ホルムアルデヒド、L−アスコルビン酸、ナトリウムスルホキシレート等の還元剤、グリシン、アラニン、エチレンジアミン四酢酸アンモニウム塩等キレート剤を併用することもできる。
【0026】
乳化重合に使用する乳化剤としては、例えば脂肪酸石鹸、ロジン酸石鹸、アルキルスルホン酸塩、ジアルキルアリールスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩等のアニオン性乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン乳化剤が挙げられる。アニオン系またはノニオン系乳化剤のいずれか単独または両者の組み合わせて使用することができ、またノニオン系とアニオン系のいずれかを複数用いこれらをさらに併用することもでき、さらにノニオン系、アニオン系反応性乳化剤の使用することができる。いずれの場合も機械的にも化学的にも安定なラテックスが得られれば、その使用法は何等限定されるものではない。また乳化剤の使用量は、通常、単量体混合物の0.2〜5重量%であり、特に0.5〜3重量%の範囲が好ましい。乳化剤の使用量が0.2重量%未満では、共重合体の製造時に凝集物が発生するなど、重合安定性が悪くなり、一方5重量%を越えると得られる共重合体ラテックスの平均粒子径が小さくなり、フォームバッキング剤調製時の充填剤の分散性及び調製後の粘度に経時変化を生じさせる。
【0027】
本発明のホットカーペットに使用する2種類のMBR系合成樹脂ラテックスは、前記の単量体組成をベースとするが、特定のゲル分率にするためには、重合時に連鎖移動剤及び重合停止剤等の分子量調整剤または重合率調整剤を適宜使用することができる。
【0028】
本発明は粒子径が0.2〜0.4μm未満のゲル分率95%以上のMBR系合成樹脂ラテックスを使用することにより、ホットカーペットフォーム加工時における樹脂組成物のクラック、加工後長期収納時における耐屈曲性を改善することができる。必要に応じて連鎖移動剤、重合停止剤、シードラテックス及び塩基性物質を使用してゲル分率及び粒子径を調整することができる。
【0029】
また0.05〜0.2μm未満のゲル分率95%以上のMBR系合成樹脂ラテックスを使用することにより、種々のブロッキング、皮膜強度、反発弾性(圧縮回復性)等を改善することができる。これらの改善には、高分子量で且つブタジエンの架橋による三次元構造が重要なので、特に上記連鎖移動剤及び重合停止剤を必要とせず、使用しても非常に少量であることが必要である。
【0030】
連鎖移動剤としては、通常の重合で使用されるものを使用することができる。例えばt−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン等のメルカプタン類、テルピノーレン、t−テルピネン、α−メチルスチレンダイマー、エチルキサントゲンジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンスルフィド、アミノフェニルスルフィド等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することもできる。連鎖移動剤の使用量は、各連鎖移動剤の連鎖移動定数により全く異なる。例えばt−ドデシルメルカプタンを例に挙げると、単量体混合物の1.0重量%以下、好ましくは0.3重量%以下である。
【0031】
また重合停止剤としては、例えば、ハイドロキノン(フェノール)系、アミン系、硫黄系、硫酸ヒドロキシルアミン、アンモニア、苛性ソーダ、苛性カリ等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。その使用量は重合停止剤の種類及び単量体との反応性比により全く異なるが、例えば硫酸ヒドロキシルアミンを例に挙げると、単量体混合物の5.0重量%以下、好ましくは3.0重量%以下であり、重合率98%以上を確認した後に加えるのが好ましい。この理由は、ゲル分率95%以上のMBR系合成樹脂ラテックスでは、重合率98%以上でないと、高分子量且つブタジエンの三次元架橋による高ゲル分率のものが得られないからである。またゲル分率95%未満のMBR系合成樹脂ラテックスでは、塩化ビニル床材やフォーム面同志で湿熱ブロッキングしやすいからである。
【0032】
本発明の防滑用組成物において、ゲル分率95%以上のMBR系合成樹脂ラテックスでは連鎖移動剤、重合停止剤を添加しなくてもよく、また逆に併用しても良い。つまり、方法如何を問わず、結果的に本発明のMBR系合成樹脂ラテックスは、特定のゲル分率のものが得られればよく、その重合率は、95%以上の任意の(%)値でもよい。
【0033】
本発明のMBR系合成樹脂組成物の製造方法については、従来公知の方法を用いることができる。例えば、単量体混合物100重量部に対して、水100〜300重量部と乳化剤、連鎖移動剤、重合開始剤等を上記した範囲内の量で使用し、5〜90℃の温度で5〜30時間乳化重合すればよい。必要とあらば、任意の重合率にて停止剤を添加し、反応を完結すればよい。
【0034】
またラテックスの粒子径調整についても、同様に公知の方法で、重合乳化剤、シードラテックス、苛性ソーダ、アンモニア、苛性カリ等の塩基性物質を用いて重合速度または粒子径を調整すれば良い。また、後述する水性ポリウレタン樹脂をシードとして、一方のMBR系合成樹脂ラテックス単量体混合物をコアーシェル重合し、得られた2層粒子を他方のMBR系合成樹脂ラテックスをブレンドしても良い。
【0035】
本発明で使用するMBR系合成樹脂ラテックスは、前記の単量体組成をベースとするが、ゲル分率が95%以上及び粒子径が0.05以上0.2μm未満になるように分子量及び粒子径を調整したMBR系合成樹脂ラテックス(A)とゲル分率が95%以上及び粒子径が0.2〜0.4μmになるように分子量及び粒子径を調整したMBR系合成樹脂ラテックス(B)を、重量比で25〜94:5〜74の範囲で混合したものである。
【0036】
高ゲル分率小−中粒子径MBR系ラテックス(A)の比率が多い程加工時のクラック、折り畳み時の割れには不利になるが、他の前記した物性面では有利になり、逆に高ゲル分率大粒子径MBR系ラテックス(B)の比率が多くなると、自己ブロッキング、床材とのブロッキングを起こし易くなり、更に熱プレス時の型離れ性、圧縮回復性が不良となる。また防滑組成物の系のpHも重要で、pH7以上、好ましくはpH9以上で高ゲル分率大粒子径MBR系ラテックス(B)は膨潤するのでクラックに有利となり、造膜後の皮膜強度が増大するので、種々のブロッキングにも有利となる。
【0037】
また、本発明のMBR系合成樹脂ラテックスは、脂肪族共役ジエン45〜70重量%、(メタ)アクリル酸エステル27〜55重量%、エチレン系不飽和ジカルボン酸0.5〜3重量%及びその他共重合重合可能なエチレン性不飽和単量体を、水性媒体中で共重合してなるものが好ましい。また脂肪族共役ジエンの含有量が多い程皮膜強度、フォーム面同士の耐湿熱ブロッキング性及びフローリングとの耐湿熱ブロッキング性が劣り、(メタ)アクリル酸エステル単量体が多くなると塩ビとの耐湿熱ブロッキング性、耐屈曲性、耐クラック性、圧縮回復性(反発弾性)等が劣る。
【0038】
本発明の防滑用組成物では、上記合成樹脂ラテックスに、水性ポリウレタン樹脂を加えることが必要である。
本発明で用いることができる水性ポリウレタン樹脂は、重量平均分子量が約1万以上、好ましくは5万以上であるが、メチルエチルケトンを溶媒としたゲル分率が80%以上であることが望ましい。
【0039】
本発明の水性ポリウレタン樹脂のゲル分率とは、2cm(縦×2cm(横)×0.05cm(厚み)のウレタンフィルムをメチルエチルケトン溶媒中に、25℃で24時間浸漬し、フィルムの不溶分を完全乾燥させ、(不溶分重量)/(元のフィルム重量)×100の(%)値を言う。
【0040】
本発明で使用する水性ポリウレタン樹脂は、下記の様な方法により得ることができ、末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのエマルジョンを使用することもできる。
【0041】
即ち、▲1▼活性水素含有化合物、及び親水基含有化合物と、ポリイソシアネートを反応させて得られた親水性基含有ポリウレタン樹脂の有機溶剤溶液叉は有機溶剤分散液に、必要に応じて中和剤を含む水溶液を混合してエマルジョンを得る方法、▲2▼活性水素含有化合物、及び親水基含有化合物と、ポリイソシアネートを反応させて得られた親水性基含有末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに、中和剤を含む水溶液と混合するか、または予めプレポリマー中に中和剤を加えた後水を混合して水に分散させた後、ポリアミンと反応させてエマルジョンを得る方法、▲3▼活性水素含有化合物、及び親水基含有化合物と、ポリイソシアネートを反応させて得られた親水性基含有末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに、中和剤及びポリアミンを含む水溶液と混合するか、または予めプレポリマー中に中和剤を加えた後ポリアミンを含む水溶液と混合してエマルジョンを得る方法である。
【0042】
本発明で用いる水性ウレタン樹脂の分子量としては、床剤との非粘着性及び反発弾性を考慮して、高分子量のものが好ましい。
本発明の水性ウレタン樹脂に用いられるポリイソシアネートとしては例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2´−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3´−ジメチル−4,4´−ビフェニレンジイソシアネート、3,3´−ジメトキシ−4,4´−ビフェニレンジイソシアネート、3,3´−ジクロロ−4,4´−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3´−ジメチル−4,4´ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0043】
活性水素含有化合物とは、平均分子量が300〜10000、好ましくは500〜5000の分子内に2個以上の活性水素を有する化合物をいい、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリチオエーテルポリオール等が挙げられる。また分子量が300以下のものでは例えば、ポリエステルポリオールの原料として用いたグリコール成分;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ペンタエリスリトール等のポリヒドロキシ化合物、エチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3´−ジメチル−4,4´−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,2−プロパンジアミン、ヒドラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアミン化合物が挙げられる。
【0044】
ポリエステルポリオールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、(分子量300〜6000)、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン、及びそれらのアルキレノキシド付加体等のグリコール成分とコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3´−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p´−ジカルボン酸及びこれらのジカルボン酸の無水物あるいはエステル形成誘導体、;p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体等の酸成分とから脱水縮合反応によって得られるポリエステル、この他にもε−カプロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合反応によって得られるポリエステル及びこれらの共重合ポリエステルが挙げられる。
【0045】
ポリエーテルとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、蔗糖、アコニット糖、トリメリット酸、ヘミメリット酸、燐酸、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリイソプロパノールアミン、ピロガロール、ジヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフタール酸、1,2,3−プロパントリシオール等の活性水素原子を少なくとも2個有する化合物の1種または2種以上を開始剤としてエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレン等の単量体の1種または2種以上を常法により付加重合したものが挙げられる。
【0046】
ポリカーボネートポリオールとしては例えば、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール等のグリコールとジフェニルカーボネート、ホスゲンとの反応によって得られる化合物等が挙げられる。
【0047】
本発明の水性ウレタン樹脂は、分子中親水基を有するポリウレタン樹脂のエマルジョンであり、親水基含有化合物を上記活性水素含有化合物及びポリイソシアネートと反応させて得ることができる。
【0048】
親水基含有化合物としては、分子内に少なくとも1個以上の活性水素を有し、カルボン酸の塩、スルホン酸の塩、カルボン酸基、スルホン酸基等の官能基を含有するイオン性を有する化合物、あるいは分子内に少なくとも1個以上の活性水素原子を有し、且つエチレンオキシドの繰り返し単位からなる基、エチレンオキシドの繰り返し単位とその他のアルキレンオキシドの繰り返し単位からなる基を含有するノニオン性の化合物が挙げられる。
【0049】
かかる親水基含有化合物としては、具体的に例えば、2−オキシエタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、スルホ安息香酸、スルホコハク酸、5−スルホコハク酸、5−スルホイソフタル酸、スルファニル酸、1,3−フェニレンジアミン−4,6−ジスルホン酸、2,4−ジアミノトルエン−5−スルホン酸のスルホン酸含有化合物及びこれらの誘導体またはこれらを共重合して得られるポリエステルポリオール;2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸、ジオキシマレイン酸、2,6−ジオキシ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸等のカルボン酸含有化合物及びこれらの誘導体またはこれらを共重合して得られるポリエステルポリオール;エチレンオキシドの繰り返し単位を少なくとも30%以上含有し、ポリマー中に少なくとも1個以上の活性水素を含有する分子量300〜20000のポリオキシエチレングリコールまたはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体グリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシブチレン共重合体グリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシアルキレン共重合体グリコール叉はそのモノアルキルエーテル等のノニオン基含有化合物叉は共重合して得られるポリエステルポリエーテルポリオール等が挙げられ、これら単独もしくは2種以上を組み合わせて使用される。 本発明で用いられる水性ウレタン樹脂を製造するに際して、分子内に結合した親水基の含有量は、親水性基がカルボキシル基、スルホン酸基等のイオン性基の場合は、最終的に得られるウレタン樹脂固形分100重量部当たり少なくとも0.005〜0.2当量有することが好ましい。
【0050】
またノニオン性の化合物を使用する場合は、最終的に得られるウレタン樹脂固形分100重量部当たり少なくとも20重量部以下、特に10重量部以下が好ましい。
【0051】
本発明に係わるポリウレタン樹脂エマルジョン及び末端ポリイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、従来公知の方法で製造される。
即ち例えば前記ポリイソシアネートと活性水素含有化合物(親水性基含有化合物も含む)を20〜120℃、好ましくは30〜100℃の条件下にて反応させることにより製造される。この場合、イソシアネート基と活性水素基の当量比は、ポリウレタン樹脂の場合は、0.8:1〜1.2:1の比率で、また末端ポリイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの場合は、1.1:1〜3:1、好ましくは1.2:1〜2:1の比率で用いるのが好ましい。
【0052】
本発明の水性ウレタン樹脂に使用する中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アンモニア等が挙げられる。中和剤の添加時期は、親水基含有不飽和単量体の重合前、中、後、あるいは、ウレタン化反応中、後のいずれでも良い。
【0053】
本発明の水性ウレタン樹脂に使用するポリアミンとしては例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン,4,4´−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3´−ジメチル−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、アミノプロピルエタノールアミン、アミノヘキシルエタノールアミン、アミノエチルプロパノールアミン、アミノプロピルプロパノールアミン、アミノヘキシルプロパノールアミン等のポリアミン類;ピペラジン類;酸ヒドラジド類等が挙げられ、これらを単独または併用しても良い。
【0054】
本発明のベース樹脂は、上記組成の分子量1万以上、好ましくは5万以上の、また更に好ましくはゲル分率が80%以上の水性ポリウレタン樹脂と粒径の異なる2種類の高ゲル分率MBR系ラテックスが、それぞれ固形分比で、1〜20重量%、5〜94重量%、5〜94重量%の範囲からなるもので、その形態は3成分ブレンド系、またはMBRとMBR−ウレタン2層構造粒子の2成分ブレンド系のどちらでも良い。
【0055】
水性ポリウレタン樹脂(C)の比率が多くなる程、フォーム面同士の耐湿熱ブロッキング、クラック、圧縮回復性には有利になるが、折り畳み時の割れ、ホットプレス離型性、塩ビ耐湿熱ブロッキング性には不利になる。
【0056】
本発明の防滑用組成物では、上記合成樹脂ラテックスに、保水剤及びエポキシ架橋剤を加えることが必要である。
本発明に使用する保水剤としては、例えば、セルロース、スターチ等の天然多糖類系、アルカリ可溶型の合成樹脂エマルジョン系等が挙げられるが、エマルジョン系は腐敗しにくく、目的に応じてポリマー組成、分子量、官能基の種類、導入量を調整でき、また会合型保水剤も簡単に得ることができるので、好ましくは、アルカリ可溶型の合成樹脂エマルジョン系保水剤、更に好ましくは、アルカリ可溶の合成樹脂エマルジョン系会合型保水剤である。
【0057】
本発明に使用する合成樹脂エマルジョン系会合型保水剤は、主にエチレン系不飽和カルボン酸、アクリル酸エステル系単量体、メタアクリル酸エステル系単量体からなる。エチレン系不飽和カルボン酸単量体としては例えば、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、ジカルボン酸のハーフエステルやメタアクリル酸、アクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸等で、単量体の30〜90重量%の範囲での使用が好ましい。
【0058】
メタアクリル酸エステル系及びアクリル酸エステル系単量体としては、例えば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸プロピル、ヒドロキシエチルメタアクリレートメタアクリル酸−2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ラウリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アミノエチルメタアクリレート、ジメチルアミノエチルメタアクリレート、ジエチルアミノエチルメタアクリレート、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルヒドロキシエチルアクリレートアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート等が挙げられる。
【0059】
この他、共重合可能な単量体を挙げると、アクリルアミド、メタアクリルアミド、スチレン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、メタアクリロニトリル、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロル−1,3−ブタジエン等であり、その他適当な共重合可能な単量体の1種又は2種以上共重合体成分として含有しても良い。
【0060】
また内部架橋剤として、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタアクリルアミド、グリシジルメタアクリレート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジアセトンアクリルアミド等を共重合しても何等問題ない。
【0061】
本発明に使用する保水剤は上記単量体を組成とし、会合型且つ高分子量で高保水性であることが望ましい。
本発明に使用するアルカリ可溶型アクリルエマルジョン系保水剤の使用量の範囲は、好ましくはMBR系合成樹脂ラテックスと水性ウレタン樹脂の合計固形分の0.05〜5重量%、更に好ましくは0.2〜2重量%である。0.2以下では保水効果が少ないため、内部応力が残存し、クラックが発生し易くなり、逆に2重量%以上では、床材及びフォーム面同志で湿熱ブロッキングし易くなり、また系の粘度が高くなりすぎ、更に乾燥不足によるブロッキングも生じる。
【0062】
また防滑組成物の系のpHは、7未満では保水剤が溶解または膨潤せず、またエポキシ架橋剤とも反応しにくいので、湿熱ブロッキングに悪影響を及ぼすので会合型保水剤を完全溶解するためにも7以上、好ましくは9以上にすることが好ましい。
【0063】
本発明に使用するエポキシ架橋剤は、エポキシ当量の多いもの、できれば架橋剤1モル当たり最低3モル以上のエポキシ基を含有する架橋剤が好ましい。エポキシ架橋剤の添加量は、防滑組成物中のカルボキシル基の1.0〜5.0倍当量が最も好ましい。1.0倍以下では、架橋速度が遅く、また架橋せずに失活する場合があるため、皮膜強度が弱くなり物性面で不利になる。逆に5.0倍以上では、架橋しなかった余分の架橋剤が空気中の水分を吸収し易くなるためブロッキング面で不利になる。つまり、1.0〜5.0倍当量以外ではフォーム面同士の湿熱ブロッキングや床材との湿熱ブロッキングを起こし易い。
【0064】
本発明の防滑用組成物には、その他充填剤、発砲剤、増粘剤を添加することができる。
充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシュウム、炭酸マグネシュウム、硫酸バリウム、重質炭酸カルシュウム、タルク、クレー、シリカ、カーボンブラック、酸化チタン等が挙げられる。その他の無機添加剤を添加しても良く、更にこれらを併用しても構わない。これらのうち水酸化アルミニウムが好ましく、0〜150重量%の範囲で使用する。水酸化アルミニウム150重量%以上では、著しく皮膜強度を低下させ、折り畳時に割れ易くなるが、それ以下では添加量と共に乾燥時のクラックが少なくなること、床とのブロッキング、フォーム面同士のブロッキングに有利になる。
【0065】
発泡剤は、ステアリン酸アモニウム及びジアルキルスルホコハク酸塩が好ましいが、何等限定するものではない。
増粘剤としては、例えば、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸アンモニウム、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシルプロポキシルメチルセルロース、ポバール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、澱粉、酸化澱粉等が挙げられ、これらを単独または複数併用しても良いが、また上記会合型保水剤を増粘剤として使用しても良くまた他のものを1または2種類以上併用しても良い。
【0066】
本発明の防滑用組成物の他の添加剤としては、例えば、有機顔料、無機顔料、キレート剤、分散剤、酸化防止剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、起泡剤、整泡剤、撥水・撥油剤、感熱ゲル化剤、難燃剤、酸化亜鉛、硫黄、加硫促進剤、圧縮回復剤、消泡剤、殺菌剤、防腐剤、湿潤剤等を挙げることができる。かかる添加剤の選択、添加量、添加順序等は、ラテックス組成物の製造条件、作業性、安定性、更に加工適性、塗布量等を考慮して、適宜に決定されれば良い。しかし固形分については、フォームの成型性、乾燥性、またクラックにも僅かであるが影響を及ぼすので、50〜80重量%の範囲が好適である。
【0067】
このようにして得られたホットカーペット防滑用組成物は、任意の発泡倍率で基材である不織布(フェルト)表面に、種々の形状のドクターナイフ(歯形または適当な形)により塗布し乾燥する事により、種々の形状に加工される。このフォーム加工した不織布とホットカーペット上面になる不織布との間に、電熱線がサンドウイッチした状態で、150℃、1kg/cm2の圧力で90秒間ホットプレスする事により、裏面に優れた防滑性を有するフォーム層を形成したホットカーペットが得られる。
【0068】
本発明の基材としては、上記不織布の他に、例えばポリエステル、ナイロン、アクリル、レーヨン、ポリプロピレン、ビニロン等の繊維、更にホットメルト系繊維からなる不織布が挙げられ、スパンボンド等とニードルパンチしても良い。
【0069】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例中における部及び%は特に断らない限り、重量基準である。
【0070】
実施例における各種の試験方法は、下記の通りである。
(1)プレス離型性及び圧縮回復性
フォーム加工したホットカーペットを150℃で90秒間、1kg/cm2の圧力下でプレスし、プレス圧を除いた後プレス面に並行に不織布を引きずり出す。この時の抵抗はプレス離型性を示し抵抗が大きい程、離型性が悪いことを表す。同時に、プレスにより変形したフォームが1時間以内にもとの形状に回復するかを、目視により確認する。
(2)フォーム面同士の耐湿熱ブロッキング性(促進試験法)
フォーム加工したホットカーペットを水に浸漬し、充分に水をフォーム内にしみ込ませたものを二つ折りにし、フォーム面同士を重ね、一定の荷重をかけ、高温雰囲気下、一定時間放置する。冷却後、フォーム面を剥離し、材破するか否かで判断する。
(3)塩化ビニル・フローリングとの耐湿熱ブロッキング性(促進試験法)
フォーム加工したホットカーペットを水に浸漬し、充分に水をフォーム内にしみ込ませ、フォーム面と塩ビまたはフローリングの面を合わせ、一定の荷重をかけ、高温雰囲気下、一定時間放置する。冷却後、フォーム面を剥離し、材破するか否かで判断する。
(4)ワックス・つや出し洗剤との耐ブロッキング性
フローリング上にワックスを塗布し、半乾き状態(指紋が付く程度)で、フォーム面と合わせ、一定の荷重をかけ 高温雰囲気下、一定時間放置する。冷却後、フォーム面を剥離し、材破するか否かで判断する。
(5)クラックの確認
フォームを凹凸状(筋引き)に加工し、190℃、5分の乾燥を行い、クラックの発生を目視により確認する。但し乾燥機の風はフォーム面に垂直に当て、風量は、最大で行う。
(6)耐屈曲性
凹凸フォーム面が両外側になるよう(不織布側を合わせる)に、ホットカーペットを二つ折りにし一定の荷重を6ヶ月間掛けた状態で放置する。6ヶ月後に凹凸フォームの折れ部分にクラックが発生しているか否かを目視にて確認する。
【0071】
実施例1〜15
表1及び表2に記載のとおりの配合組成のカルボキシル変性MMA−ブタジエン系合成ゴムラテックス(A)、(B)及び水性ポリウレタン樹脂(C)の全固形分100重量部に対して、ポリジメチルシロキサンNBAー1[大日本インキ化学工業(株)製]0.5部、発泡剤DC100A[サンノプコ(株)製]2部、酸化防止剤マ−クLX−802[旭電化工業(株)製]0.5部及び表1及び表2に示す種々の添加物[乾燥水酸化アルミ:日本軽金属(株)製B−53を所定量添加、混合して、ラテックス組成物を調製した。このラテックス組成物にアルカリ可溶性会合型保水剤TA−96、エポキシ架橋剤CR5L[大日本インキ化学工業(株)製]、適当量の増粘剤アロンA20P[東亜合成化学工業(株)製]を添加し、粘度を15000cps(ブルックフィールド型、4号ローター、12rpm、25℃)、固形分50〜70%に調製した。実施例の各配合及びラテックス組成を表1〜表5に示す。
このラテックス組成物を3倍発泡し、ホットカーペット裏面(ポリエステル不織布)に凹凸状ドクターナイフにて塗布し、190℃の温度の熱風乾燥機内で5分間加熱乾燥し、凹凸フォームを付与したホットカーペット裏面を得た。
このフォーム加工したホットカーペット裏面について、(1)〜(5)の方法によって各物性を測定した。結果を表6及び表7に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
【表5】
【0077】
【表6】
【0078】
【表7】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
比較例1〜15
表8〜表12に記載のとおりの配合組成のカルボキシル変性MMA−ブタジエン系合成ゴムラテックス(A)、(B)及び水性ポリウレタン樹脂(C)の全固形分100重量部に対して、ポリジメチルシロキサンNBAー1[大日本インキ化学工業(株)製]0.5部、発泡剤DC100A[サンノプコ(株)製]2部、酸化防止剤マ−クLX−802[旭電化工業(株)製]0.5部及び表1及び表2に示す種々の添加物[乾燥水酸化アルミ:日本軽金属(株)製B−53を所定量添加、混合して、ラテックス組成物を調製した。このラテックス組成物にアルカリ可溶性会合型保水剤TA−96、エポキシ架橋剤CR5L[大日本インキ化学工業(株)製]、適当量の増粘剤アロンA20P[東亜合成化学工業(株)製]を添加し、粘度を15000cps(ブルックフィールド型、4号ローター、12rpm、25℃)、固形分50〜70%に調製した。実施例の各配合及びラテックス組成を表8〜表12に示す。
【0084】
このラテックス組成物を3倍発泡し、ホットカーペット裏面(ポリエステル不織布)に凹凸状ドクターナイフにて塗布し、190℃の温度の熱風乾燥機内で5分間加熱乾燥し、凹凸フォームを付与したホットカーペット裏面を得た。
【0085】
このフォーム加工したホットカーペット裏面について、(1)〜(5)の方法によって各物性を測定した。結果を表13及び表14に示す。
【0086】
【表8】
【0087】
【表9】
【0088】
【表10】
【0089】
【表11】
【0090】
【表12】
【0091】
【表13】
【0092】
【表14】
【0093】
表1〜表5に示す実施例1〜15では、表6及び表7の結果のごとく、物性項目中に△または×が一つも無く、全ての物性を満足する組成物が得られた。
表8〜表12までの比較例の結果は、表13及び表14に示した。
【0094】
表8に示す比較例1〜3は、MBR(A)、(B)の両方または一方のゲル分率が95%未満の場合で、表13の結果より、ホットプレス離型性、フォーム面同士の耐ブロッキング性及び塩ビ床材との耐ブロッキング性の点が劣っていた。
【0095】
表9に示す比較例4〜6は、MBR(A)、(B)の両方の粒子径が0.05〜0.2μm未満、または0.2〜0.4μm未満の場合で、表13の結果より、両方の粒子径が0.05〜0.2μm未満の時は、クラック及び耐屈曲性が劣り、0.2〜0.4μm未満の時は、塩ビ床材との耐ブロッキング性及びフォーム面同士の耐ブロッキング性が劣っていた。
【0096】
表10に示す比較例7〜8は、MBR(A)、(B)の含有範囲がそれぞれ25〜94重量%、5〜74重量%以外の場合で、表13の結果より、それぞれホットプレス離型性及び各耐ブロッキング性、耐屈曲性及びクラックの点で劣っていた。
【0097】
表10及び表11に示す比較例9〜10は、水性ポリウレタン樹脂(C)の添加量が、請求項1記載の範囲未満または以上の場合で、表14の結果より、未満の場合は、ホットプレス離型性及び塩ビ床材との耐ブロッキング性が劣っていた。
【0098】
表11に示す比較例11〜12は、エポキシ架橋剤の添加量が請求項1記載の範囲未満または以上の場合で、表14の結果より、未満の場合はクラック及び防滑性以外の全ての物性で劣り、以上の場合は過剰なエポキシ成分がマイナスの要因となり、また架橋速度が速すぎる事により、各種耐ブロッキング性及びクラックの点で劣っていた。
【0099】
表12に示す比較例13〜15は、保水剤の添加量が請求項1記載の範囲未満または以上の場合で、表14の結果より、未満の場合は保水性が悪いためクラックの点で劣り、以上の場合はクラック及び防滑性以外の全ての点で劣っていた。
【0100】
【発明の効果】
本発明のホットカーペットは、防滑用ラテックス組成物が含有するMBR系合成樹脂ラテックス(A)、(B)が、その高分子量、ブタジエンの三次元架橋構造及びカルボキシル基とのエポキシ架橋故に高ゲル分率を有し、耐可塑剤性、耐溶剤性、耐水性、圧縮回復性、皮膜強度、反発弾性、非粘着性、ドライタッチ感等に非常に優れており、これにエポキシ硬化剤を併用すると、ホットカーペット用防滑剤としての要求物性、即ち、防滑性、ホットカーペット製造時のホットプレス離型性、フォームの圧縮回復性、塩化ビニルクッションフロア・フローリングとの耐湿熱ブロッキング性、床ワックス・皮膜形成タイプつや出し洗剤の半乾き状態での耐ブロッキング性・耐接着性に非常に優れ、また水性ポリウレタン樹脂(C)をブレンドすることにより、収納時によるフォーム面同士の耐湿熱ブロッキング性が非常に優れる。
【0101】
更に、高ゲル分率大粒子径MBR系合成樹脂ラテックス(B)及び水性ポリウレタン樹脂(C)をブレンドすることと保水剤の添加により、防滑剤加工時のクラック発生を大幅に改善でき、この防滑用組成物をもちいて防滑フォーム加工を行うことにより、クラックの無い上記物性全てを満足するホットカーペットが得られる。
Claims (4)
- ゲル分率95%以上で平均粒子径が0.05以上0.2μm未満のMBR系合成樹脂ラテックス(A)25〜94重量%と平均粒子径が0.2〜0.4μmでゲル分率95%以上のMBR系合成樹脂ラテックス(B)5〜74重量%と水性ポリウレタン樹脂(C)1〜20重量%とを含み、さらに固形分換算で該ラテックス(A)と該ラテックス(B)と該水性ポリウレタン樹脂(C)との合計100重量部に対し、保水剤(D)0.05〜5重量%と、組成物中のカルボキシル基の1〜5倍当量のエポキシ基を有するエポキシ架橋剤(E)とを含んでなる防滑用組成物を基材に塗工してなるホットカーペット。
- 該水性ポリウレタン樹脂のゲル分率が80%以上であることを特徴とする請求項1記載のホットカーペット。
- 防滑用組成物が、さらに固形分換算で全MBR系合成樹脂ラテックス100重量部に対し、充填剤を200重量%未満含有してなることを特徴とする請求項1又は2記載のホットカーペット。
- 防滑用組成物のpHが、7以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のホットカーペット。
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