JP3635160B2 - 有機色素−親水性樹脂複合体含有化粧料 - Google Patents

有機色素−親水性樹脂複合体含有化粧料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、溶媒、取り分け、水への分散性の良い、有機色素−親水性樹脂複合体を含有する化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術】
化粧料に於いて、有機色素類は、例えばネイルエナメルの様に溶媒中に分散して使用されることが多い。有機色素類の内、有機顔料は表面が疎水性である為、水などの溶媒系では分離することが多く、非水溶媒系で使用されるのが常であった。又、水溶性色素を不溶性塩とした、レーキ化有機色素は有機顔料ほどでは無いがやはり、表面における疎水性の要素があるため、水系溶媒では分離することが少なくなかった。又、ファンデーション等の乳化系では、親水性溶媒と親油性溶媒の一様分散系である為、これら有機色素の位置する部分は極めて環境に左右されやすく、有機色素の極在化に起因する色ムラが出ることが少なくなかった。この様な状況のため、例えば、ネイルエナメルやリップカラーの様に有機色素独特の華やかな色が必要な場合には、オイルゲル系や非水溶媒系などの形態で使用せざるを得ず、又、ファンデーション等の系では無機顔料のみで色出しをせざるを得なかった。
【0003】
その一方、ネイルエナメルに於いては、溶媒と有機溶媒に可溶な被膜形成剤に起因する、爪の黄変や損傷が問題にされるようになり、水系のネールエナメルの開発が試みられるようになったが、有機色素の分散性の向上が大きな課題となっている。
【0004】
又、ファンデーション等の乳化系或いは水系溶媒分散系に於いても、化粧仕上がりの観点から、有機色素の持つ演色性が求められており、有機色素の分散性の向上が大きな課題となっていた。即ち、有機色素を均一に安定性良く水系溶媒或いは乳化系に分散する技術が求められていた。
【0005】
他方、有機色素と親水性樹脂エマルジョンとを混合し、これにアクリル酸、メタアクリル酸及びそれらのアルキルエステルから選ばれる1種乃至は2種以上を加え、重合開始剤を更に加えて重合させ、中和することを特徴とする有機色素−親水性樹脂複合体の製造方法は知られていなかったし、有機色素を親水性樹脂エマルジョンとアクリル酸、メタアクリル酸及びそれらのアルキルエステルから選ばれる1種乃至は2種以上で重合処理してなる、有機色素−親水性樹脂複合体が、優れた水系溶媒分散性を有することは全く知られていなかった。従って、これを含有する化粧料は全く知られていなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこの様な状況を踏まえて為されたものであり、水系溶媒に分散性の良い有機色素組成物を含有する化粧料を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、この様な状況に鑑みて、化粧料に好適な、有機色素を均一に安定性良く水系溶媒或いは乳化系に分散する技術を求めて鋭意研究を重ねた結果、有機色素と親水性樹脂エマルジョンとを混合し、これにアクリル酸、メタアクリル酸及びそれらのアルキルエステルから選ばれる1種乃至は2種以上を加え、重合開始剤を更に加えて重合させ、中和することにより、水系溶媒に分散性の良い、有機色素−親水性樹脂複合体を提供できることを見いだし、発明を完成させるに至った。以下、本発明について、発明の実施の形態を中心に詳細に説明する。
【0008】
【発明の実施の形態】
(1)本発明で用いる親水性樹脂エマルジョン
本発明で持ちいる親水性樹脂エマルジョンとしては、親水性基を有し水に一様に分散又は可溶化するものであれば特段の限定無く用いることが出来、この様な樹脂エマルジョンとしては、ビニルアルコール、アクリル酸、メタアクリル酸等を構成モノマーに有する、重合体又は共重合体が例示できる。この様な親水性樹脂エマルジョンを例示すれば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、アクリル酸−ビニルアルコールコポリマー、メタアクリル酸−ビニルアルコールコポリマー、アクリル酸−メタアクリル酸コポリマー及び/又はこれらのエステルが挙げられる。これらはただ一種を用いても、二種以上を組み合わせて用いても良い。更にこれ以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、アクリロニトリルをコポリマーの成分として含有することが出来る。コポリマーに於いて、ビニルアルコール、アクリル酸、メタアクリル酸の構成割合は5重量%以上が好ましく、より好ましくは10重量%以上であり、更に好ましくは15重量%以上である。以下に、樹脂エマルジョンの作成例を示す。
【0009】
<参考例>
親水性樹脂エマルジョンの作成
攪拌機、還流冷却機、滴下ロート、温度計、窒素導入管を装着した反応器にイソプロピルアルコール50重量部を秤込み、窒素ガスを吹き込み溶存酸素を除去した。滴下ロートより、イソプロピルアルコール30重量部、スチレン15重量部、α−メチルスチレン57重量部、アクリル酸28重量部及びアゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を、攪拌下80℃まで昇温した反応器に滴下した。モノマー滴下終了後2時間80℃で攪拌し、アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部をイソプロピルアルコール10重量部に溶解させた液を滴下した。3時間80℃で攪拌を続けた後、アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部をイソプロピルアルコール10重量部で溶解させた液を滴下し、更に5時間80℃で攪拌を続けた。反応終了後、反応液を室温に戻し、95%アンモニア水を加えて中和し、水300重量部を加え、減圧濃縮し固形分30%の親水性樹脂エマルジョン1を得た。
【0010】
<参考例>
親水性樹脂エマルジョンの作成
攪拌機、還流冷却機、滴下ロート、温度計、窒素導入管を装着した反応器にイソプロピルアルコール50重量部を秤込み、窒素ガスを吹き込み溶存酸素を除去した。滴下ロートより、イソプロピルアルコール30重量部、ビニルアルコール15重量部、ビニルアルコールイソブチルエーテル57重量部、アクリル酸28重量部及びアゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を、攪拌下80℃まで昇温した反応器に滴下した。モノマー滴下終了後2時間80℃で攪拌し、アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部をイソプロピルアルコール10重量部に溶解させた液を滴下した。3時間80℃で攪拌を続けた後、アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部をイソプロピルアルコール10重量部で溶解させた液を滴下し、更に5時間80℃で攪拌を続けた。反応終了後、反応液を室温に戻し、95%アンモニア水を加えて中和し、水300重量部を加え、減圧濃縮し固形分30%の親水性樹脂エマルジョン2を得た。
【0011】
(2)本発明で用いる有機色素
本発明で用いることの出来る有機色素は、一般的に用いられているものであって、水に不溶性乃至は難溶性であれば特段の限定を受けずに用いることが出来る。これらの色素で取り分け好ましいものは、法定色素であり、その中でも赤色226号、赤色201号、赤色106号のレーキ化物、黄色404号のレーキ化物、黄色4号のレーキ化物が好ましい。レーキ化物としては、アルミニウムレーキが好ましい。これらは何れも市販されている。
【0012】
(3)本発明で用いる有機色素−親水性樹脂複合体
本発明で用いる有機色素−親水性樹脂複合体は、有機色素と親水性樹脂エマルジョンとを混合し、これにアクリル酸、メタアクリル酸及びそれらのアルキルエステルから選ばれる1種乃至は2種以上を加え、重合開始剤を更に加えて重合させ、中和することにより得ることが出来る。ここで、重合開始剤は、一般的に乳化重合で用いられるものであれば特段の限定無く用いることが出来、この様な重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム等が例示できる。又、有機色素と親水性樹脂エマルジョンの好ましい割合は、1:1000〜1:10であり、より好ましくは1:500〜1:20であり、更に好ましくは1:250〜1:30である。これらを上記の如く反応性モノマーを反応させながら水性溶媒中コーティングするのが最も好ましい本発明の有機色素−樹脂複合体の製造方法である。水性溶媒の量としては、粘度が出てコーティングが阻害されない量であれば良く、例えば、親水性樹脂エマルジョンに対して1〜10倍量が好ましい。この量は親水性樹脂エマルジョンの種類により異なるので、試行錯誤で決定するのが望ましい。かくして得られた有機色素−親水性樹脂複合体は水性溶媒に対して分散性が優れる上、通常の乳化重合体や有機色素と異なり界面活性剤を用いずに水性溶媒に分散させることが可能である。従って、この有機色素−親水性樹脂複合体は、水性ネイルエナメル、ファンデーション、マスカラ、アイライナー、水性リップカラー等に好適に使用できる。
【0013】
以下に製造例を示して、本発明について詳細に説明するが、本発明がこれら製造例にのみ限定を受けないことは言うまでもない。
【0014】
<製造例1>
赤色226号0.1gと上記参考例の親水性樹脂エマルジョン1を50gとを遊星ボールミルで200r.p.m.4時間処理し、水30重量部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル2重量部加え、窒素置換し、攪拌しながら2−エチルヘキシルアクリレートを50重量部滴下し、75℃に昇温し、過硫酸アンモニウム0.5重量部を水10重量部に溶かして滴下し、70〜75℃で2時間攪拌を続けた。過硫酸アンモニウム0.2重量部を水10重量部に溶かして加え、2時間攪拌し反応を止めて中和し、有機色素−樹脂エマルジョン複合体組成物1を得た。このものは40℃で1週間放置しても沈降も色浮きもしなかった。対照として、同じ赤色226号0.5重量部を水50重量部と親水性樹脂エマルジョン1を30重量部とジエチレングリコールモノブチルエーテル2重量部とを遊星ボールミルで処理したものは、40℃で1週間放置すると、色浮きが著しかった。これより本発明の有機色素−樹脂エマルジョン複合体は分散性に優れることが判る。
【0015】
<製造例2>
赤色226号0.1gと上記参考例の親水性樹脂エマルジョン2を50gとを遊星ボールミルで200r.p.m.4時間処理し、水30重量部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル2重量部加え、窒素置換し、攪拌しながら2−エチルヘキシルアクリレートを50重量部滴下し、75℃に昇温し、過硫酸アンモニウム0.5重量部を水10重量部に溶かして滴下し、70〜75℃で2時間攪拌を続けた。過硫酸アンモニウム0.2重量部を水10重量部に溶かして加え、2時間攪拌し反応を止めて中和し、有機色素−樹脂エマルジョン複合体組成物2を得た。このものは40℃で1週間放置しても沈降も色浮きもしなかった。対照として、同じ赤色226号0.5重量部を水50重量部と親水性樹脂エマルジョン2を30重量部とジエチレングリコールモノブチルエーテル2重量部とを遊星ボールミルで処理したものは、40℃で1週間放置すると、色浮きが著しかった。これより本発明の有機色素−樹脂エマルジョン複合体は分散性に優れることが判る。
【0016】
<製造例3>
製造例1と同様に赤色201号を処理し、有機色素−親水性樹脂複合体組成物3を得た。このものは40℃で1週間放置しても沈降も色浮きもしなかった。対照として、同じ赤色201号0.5重量部を水50重量部と親水性樹脂エマルジョン1を30重量部とジエチレングリコールモノブチルエーテル2重量部とを遊星ボールミルで処理したものは、40℃で1週間放置すると、色浮きが著しかった。これより本発明の有機色素−樹脂エマルジョン複合体は分散性に優れることが判る。
【0017】
<製造例4>
製造例1と同様に赤色106号アルミニウムレーキを処理し、有機色素−親水性樹脂複合体組成物4を得た。このものは40℃で1週間放置しても沈降も色浮きもしなかった。対照として、同じ赤色106号アルミニウムレーキ0.5重量部を水50重量部と親水性樹脂エマルジョン1を30重量部とジエチレングリコールモノブチルエーテル2重量部とを遊星ボールミルで処理したものは、40℃で1週間放置すると、色浮きが著しかった。これより本発明の有機色素−樹脂エマルジョン複合体は分散性に優れることが判る。
【0018】
<製造例5>
製造例1と同様に黄色404号アルミニウムレーキを処理し、有機色素−親水性樹脂複合体組成物5を得た。このものは40℃で1週間放置しても沈降も色浮きもしなかった。対照として、同じ黄色404号アルミニウムレーキ0.5重量部を水50重量部と親水性樹脂エマルジョン1を30重量部とジエチレングリコールモノブチルエーテル2重量部とを遊星ボールミルで処理したものは、40℃で1週間放置すると、色浮きが著しかった。これより本発明の有機色素−樹脂エマルジョン複合体は分散性に優れることが判る。
【0019】
<製造例6>
製造例1と同様に黄色4号アルミニウムレーキを処理し、有機色素−親水性樹脂複合体組成物6を得た。このものは40℃で1週間放置しても沈降も色浮きもしなかった。対照として、同じ黄色4号アルミニウムレーキ0.5重量部を水50重量部と親水性樹脂エマルジョン1を30重量部とジエチレングリコールモノブチルエーテル2重量部とを遊星ボールミルで処理したものは、40℃で1週間放置すると、色浮きが著しかった。これより本発明の有機色素−樹脂エマルジョン複合体は分散性に優れることが判る。
【0020】
<製造例7>
製造例1〜6の有機色素−親水性樹脂複合体1〜6にそれぞれ塩化ナトリウム1%を加え、1ヶ月40℃に放置したが何れも分離を見なかった。電解質を含む溶媒中でも本発明の有機色素−親水性樹脂複合体は優れた分散性を示すことがわかる。
【0021】
(4)本発明の化粧料
本発明の化粧料は上記粉体−樹脂複合体を含有することを特徴とする。粉体−樹脂複合体を化粧料に含有させるには、上記粉体−樹脂複合体組成物の形のまま配合するのが好適である。本発明の化粧料に於ける、粉体−樹脂複合体の好ましい含有量は、0.1〜30重量%であり、より好ましくは0.5〜20重量%であり、更に好ましくは0.5〜15重量%である。本発明の化粧料の種類としては、特段の限定は受けないが、ネイルカラー、ネイルコート、ファンデーション、マスカラ、アイライナーが特に好ましい。これは本発明で用いている粉体−樹脂複合体が、分散性に優れるにも係わらず分散等の為の界面活性剤を含有していないためである。本発明の化粧料に於いては、必須成分である、粉体−樹脂複合体以外に通常化粧料で用いられている任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、ワセリンやマイクロクリスタリンワックス等のような炭化水素類、ホホバ油やゲイロウ等のエステル類、牛脂、オリーブ油等のトリグリセライド類、セタノール、オレイルアルコール等の高級アルコール類、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸、グリセリンや1,3−ブタンジオール等の多価アルコール類、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、エタノール、カーボポール等の増粘剤、防腐剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、色素、粉体類、アセトン等の溶媒類、被膜形成剤等が好ましく例示できる。本発明の化粧料は通常の方法により製造することが出来る。
【0022】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明について詳細に説明するが、本発明がこれら実施例にのみ限定を受けないことは言うまでもない。
【0023】
<実施例1〜3>
下記の処方に従って、サンカムローションを作成した。即ち、処方成分を攪拌可溶化分散してサンカムローションを得た。これらは、何れも40℃で2週間安定であった。本発明の処理を行わなかった有機色素そのものを配合したものは翌日色ムラを起こしていた。
【0024】
【表1】
Figure 0003635160
【0025】
<実施例4〜6>
下記の処方に従って、サンカムローションを作成した。即ち、処方成分を攪拌可溶化分散してサンカムローションを得た。これらは、何れも40℃で2週間安定であった。本発明の処理を行わなかった有機色素そのものを配合したものは翌日色ムラを起こしていた。
【0026】
【表2】
Figure 0003635160
【0027】
<実施例7〜9>
下記処方に従ってファンデーションを作成した。即ち、処方成分を攪拌分散してファンデーションを得た。これらは、何れも40℃で2週間安定であった。本発明の処理を行わなかった有機色素そのものを配合したものは翌日色ムラを起こしていた。
【0028】
【表3】
Figure 0003635160
【0029】
<実施例10〜12>
下記処方に従ってネイルエナメルを作成した。即ち、処方成分を良く混合し、ロールがけしてネイルエナメルを得た。これらは、何れも40℃で2週間安定であった。本発明の処理を行わなかった有機色素そのものを配合したものは翌日色ムラを起こしていた。
【0030】
【表4】
Figure 0003635160
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、水系溶媒に分散性の良い有機色素組成物を含有する化粧料を提供することが可能である。

Claims (3)

  1. 赤色226号、赤色201号、赤色106号のレーキ化物、黄色404号のレーキ化物、黄色4号のレーキ化物から選ばれる、一種乃至は2種以上の有機色素を親水性樹脂エマルジョンとアクリル酸、メタアクリル酸及びそれらのアルキルエステルから選ばれる1種乃至は2種以上で重合処理してなる、有機色素−親水性樹脂複合体を含有する化粧料。
  2. 親水性樹脂エマルジョンの樹脂の構成モノマーが、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、ビニルアルコール、ビニルアルコールアルキルエーテル、ビニルアルコールカルボン酸エステル、スチレン、α−メチルスチレンから選ばれる1種乃至は2種以上である、請求項1記載の有機色素−親水性樹脂複合体を含有する化粧料。
  3. 有機色素と親水性樹脂エマルジョンとを混合し、これにアクリル酸、メタアクリル酸及びそれらのアルキルエステルから選ばれる1種乃至は2種以上を加え、重合開始剤を更に加えて重合させ、中和し得られる、請求項1又は2の何れか一項に記載の有機色素−親水性樹脂複合体を含有する化粧料。
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