JP3635079B2 - 撮像装置とその光学系 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大気ゆらぎによる分解能劣化がある場合でもこの劣化の影響を抑え、長距離にわたって対象物を、撮像面の位置を変えることなく且つ高分解能の撮像が可能な撮像装置に関している。
【0002】
【従来の技術】
従来の光学装置では、それを構成する光学レンズには、球面収差や各種歪みのないものが用いられており、また補正板は、そのような収差や歪みを補正するために用いられている。
【0003】
また、従来の固定焦点式のカメラでは被写界深度を深くするため、レンズ開口を小さくする必要があるが、この場合、分解能が低下し、低照度の環境下では、撮影が困難になる。
【0004】
また、従来の撮像装置においては、大気ゆらぎのある環境では、撮影中に、結像が揺れるため、分解能の高い画像を撮るのは困難であった。このような画像から、解像度の高い画像を得るには、長時間撮影を行なって多くの画像情報を得てからコンピュータによる画像処理が行なわれているが、これは、そのための装置と時間と手間のかかるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
球面収差や各種歪みのない光学レンズを用いる従来の技術では、固定焦点式のカメラで被写界深度を深くするためには、レンズ開口を小さくする必要があるが、この場合、分解能が低下し、低照度の環境下では、撮影が困難でなる。また、大気ゆらぎのある環境では、解像度の高い画像を得るには、補償光学装置を用いたり、コンピュータによる画像処理装置を用いたりすることが必要であった。
【0006】
この発明は上記に鑑み提案されたもので、被写界深度が高く固定焦点カメラを構成した場合でも解像度の高い明瞭な画像を記録することができ、しかも大気ゆらぎのためにおこる画像の歪みを抑圧できる撮像装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、本来の結像光学系(カメラ等)の前に、特殊な光学系、つまり、光の位相が光軸から開口端に行くほど遅れるかあるいは開口端から光軸に近づくほど遅れる望遠鏡又は波面制御板を置くことによって、従来技術の上記の問題点を克服するものである。即ち、後述のように結像時の光の波面を制御することによって、結像の焦点を深くし、焦点面の光スポットサイズを小さくする。さらに、大気ゆらぎによる分解能劣化が抑制され、長距離にわたって対象物を撮像面の位置を変えることなく、且つ高分解能の撮像が可能になる。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の撮像装置は、結像光学系である第1の光学系と、入射する光波について第1の光学系の前に配置された第2の光学系と、上記の第2の光学系と、第1の光学系とは、予め決められた撮像面に結像する構成とを備え、前記の第2の光学系は、その中心部での焦点距離が無限大で周辺では有限である凹レンズ型の波面制御板で、前記の第2の光学系を通過した光は、光軸からの距離が大きくなるに従って光波の位相がより遅れ、その波面は該光学系を通過後に光軸からの距離が大きくなるに従って曲率がより大きくなり、その結果、結像光の波面の曲率が光軸から開口端に行くほど小さくなる特性をもつことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の光学系は、目あるいは撮像カメラの前に設けられる光学系で、前記の光学系は、その中心部での焦点距離が無限大で周辺では有限である凹レンズ型の形状をもち、該光学系を通過する光の波面の形状を制御する波面制御板であり、前記の波面制御板を通過した光は、光軸からの距離が大きくなるに従って光波の位相がより遅れ、その波面は該光学系を通過後に光軸からの距離が大きくなるに従って曲率がより大きくなり、その結果、結像光の波面の曲率が光軸から開口端に行くほど小さくなる特性をもち、上記の光波の位相の遅れは、上記の目あるいは撮像カメラの被写界深度を深くする程度の遅れである、ことを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
先ず、本発明の概要を以下に示す。本発明では、対象物を撮像する際、結像光学系の前に従来は組み合わされなかった光学系、即ち、光軸から開口端にいくほど位相が遅れ、その結果、結像光の波面の曲率が光軸から開口端に行くほど小さくなるか、あるいは開口端から光軸に近づくほど位相が遅れ、その結果、結像光の波面の曲率が開口端から光軸に行くほど大きくなる特殊な光学系を設ける。
【0011】
ここで、位相の遅れについては、次の様に定義する。まず、与えられたレンズについて、位相が遅れるとは、そのレンズの断面に最も近い断面形状をもった球面収差のないレンズを想定し、このレンズに対して遅れている場合をいう。ここで最も近いとは、その形状の差の面積の累積が最小になることをいう。屈折率に違いがある場合は、その光学的な形状についての比較を行なう。また、光学系について、位相が遅れるとは、光学系を構成するレンズあるいは鏡面体それぞれについて、球面収差のないレンズあるいは鏡面体を想定し、これらのレンズあるいは鏡面体を用いて再構成された光学系を基準に対して、位相が遅れることを言うものとする。
【0012】
上記の結像光学系の前にこのような機能をもつ特殊な光学系を置いた場合、結像レンズから放出される光の波面は、曲率が一定な球面に代って歪んだ球面となる。光軸から開口端にいくほど位相が遅れる場合は、外側が後方に反った形に、逆に開口端から光軸に近づくほど位相が遅れる場合は内側が後方に窪んだ形になり、いずれの場合も波面の曲率は内側ほど大きく外側ほど小さい歪んだ球面となる。
【0013】
光軸から開口端に行くほど位相が遅れるこれらの2つの場合のうち、光軸から開口端に行くほど位相が遅れる光学系を実現するには、例えば、対物レンズは、球面収差のない正常なレンズとし、接眼レンズには適度な負の球面収差をもつ凹レンズを用いる。負の球面収差を持つ凹レンズは、収差のない凹レンズに対してレンズの厚みを周辺にいくに従って増加させ、その結果透過する光の位相が遅れるように形成することによって実現できる。対物レンズに負の球面収差をもたせることによっても同等の効果が得られる。これを形成するための装置は、上記の負の球面収差を持つ凹レンズの場合よりも困難であるが、不可能ではない。また、周辺に行くほど位相が遅れる波面制御板を用いるものはもう一つの方法であり、望遠鏡にとりつけたり直接結像光学系に取り付けたりすることもできる。このような光学系の撮像面には、感光フィルムや感光素子を設けて撮像を行なうものである。
【0014】
ここでは、負の球面収差をもつ凹レンズを接眼レンズとして用いる図1の場合について説明する。この構成では、第1の光学系として結象レンズ4と、第2の光学系として負の球面収差をもつ接眼レンズ3と、第3の光学系として球面収差のない対物レンズ2とを用いている。対象物からの入射光1は対物レンズ2から望遠鏡に入り、負の球面収差をもつ接眼レンズ3から放出され、結像レンズ4を通して結像点5に像を結ぶ。対物レンズ2と負の球面収差をもつ接眼レンズ3とのセットで望遠鏡の機能を発揮する。先ず、図1に示す構成とすることによって、結像の焦点を深くでき、且つ、結像スポットサイズを小さくできるため、大気ゆらぎによる分解能劣化を抑えることができ、また、被写界深度を大きくすることができる、という特徴について、その原理を以下に述べる。
【0015】
図1の光学系の結像について、その概念を図2に示す。図2(A)は遠距離の対象物を見る場合、図2(B)は近距離の対象物を見る場合を示す。この望遠鏡の対物レンズ2からの光線6は負の球面収差をもつ接眼レンズ3を通過した後、結像レンズ4により焦点に集光される。この際、接眼レンズ3の負の球面収差の効果により、歪んだ球面の波面7となり、接眼レンズ3の光軸からより外側の位置を通過する光線ほどより後方に焦点を結び、また、より内側の位置を通過する光線ほどより手前に焦点を結ぶ、即ち焦点が深くなる。一般的に、近距離の対象物の場合ほど遠くに焦点がシフトするが、焦点が深い故に焦点領域は一部重なり、例えば図2の波線8で示した位置を一つの固定焦点カメラの感光面の位置とすると、遠距離から近距離にわたる対象物の撮像が可能である。この時、この撮像面の位置に結像する光線は、遠距離の対象物からの光線は接眼レンズ3の外側を、近距離の対象物からの光線はその内側を通ってこの感光面に集まるという特徴がある。この現象により、本発明の撮像装置の焦点は深くなり、被写体側で長距離にわたる対象物を撮像する際に、撮像装置の撮像面の位置を変えることなく撮像ができるようになる。これに対し、従来の光学系では、図3に示す様に、結像レンズからの光は球面波となり1点の焦点に集まるように構成されている。
【0016】
焦点領域への光の集光状態をさらに詳しく見てみると、以下のことが言える。図3に示す従来の結像の場合では、結像レンズから放出される波面の全域が結像に寄与することはよく知られている。これは全波面からの光が同位相であるからである。一方、図2に示す本発明による結像の場合では、負の球面収差をもつ接眼レンズにより歪んだ球面の波面となることにより全波面の一部の波面、特に図4に示す環状帯のみが同位相となり図2の焦点面8での結像に寄与する。この焦点面への光の結像では、遠距離の対象物からの光では外側の環状帯の部分が結像に寄与し、近距離の対象物からの光では内側の環状帯の部分が結像に寄与する。この様に、それぞれの距離に対応する環状帯が結像に寄与することになる。
【0017】
後に示す理論式に基づくシミュレーションから明らかなように、環状帯の寄与により結像する場合は、従来の光学系の様に波面全体からの寄与の場合よりも、結像時の光強度プロファイルで、主ローブの幅が狭くなり分解能が高くなる。これは、本発明のもう1つの特徴である。
【0018】
次に、より詳しく説明するために、本発明の計算機シミュレーションの方法とその結果を示す。まず、対物レンズ2、接眼レンズ3、結像レンズ4、の焦点距離を各々、f1、f2、f3、とする。対物レンズと接眼レンズの定常間隔をd0(d0=f1−f2)、定常間隔からのシフト量をトとし、接眼レンズの有効径端での球面収差をΔc(負値で与えられる)、接眼レンズ3と結像レンズ4の間隔をd1、と定義する。視野をできるだけ大きくするためd1をできるだけ小さくする必要がある。この条件では、結像レンズの有効半径は接眼レンズの有効半径と等しくなる。
【0019】
結像時の焦点での光強度を正確に計算するにあたり光波面の曲率を用いるのが便利であるので、以下波面の曲率を基に説明する。波面の曲率は曲率半径の逆数であるので、対物レンズ2、接眼レンズ3、結像レンズ4での入射・出射光の波面の曲率は、幾何光学の式より関連づけられる。対象物の距離をLとすると、対物レンズ2への入射光の曲率は1/Lである。このとき、入射光は対象物上の1点から放射された光とする。対物レンズからの出射光の曲率半径(光線が一点に交わる点までの距離)をbとすると曲率は1/bであり、対物レンズ2の入射・出射光に対して、次式が成立する。
【0020】
【数1】
Figure 0003635079
接眼レンズ3及び結像レンズ4での入射・出射光の波面曲率についても、各々のレンズからの出射光の波面の曲率半径をg、hとすると、数1と同様にして次の数2、数3が成立する。
【0021】
【数2】
Figure 0003635079
【0022】
【数3】
Figure 0003635079
数2で、凹レンズの焦点距離は負にして用いるが、ここでは与える値は正とし、式に負符号をつけた。また、d1を十分小さくとれば、g≫d1故、数3より、近似的に、
【0023】
【数4】
Figure 0003635079
となる。数4において数2を用いて1/gを書き変えると、次のようになる。
【0024】
【数5】
Figure 0003635079
接眼レンズ3の球面収差をS(ρ)とすると、f2は球面収差を考慮してf2を改めてf2+S(ρ)とすると、
【0025】
【数6】
Figure 0003635079
となる。ここで、球面収差S(ρ)は、半径ρの波面上から出射される光線の焦点(光軸との交点)の光軸方向のずれの量として定義される。但し、ρは便宜上0から1の間で定義された半径であり、単位のないパラメーターである。長さの単位を持つ半径を別途定義し、これをρaとし、aを接眼レンズの有効半径とすると、
【0026】
【数7】
Figure 0003635079
である。一般に接眼レンズと結像レンズの間隔は小さくして用いるので、結像レンズの有効半径もaとなる。
【0027】
続いて、結像レンズから出射される数5の光の波面の曲率を用いて波面の形を求める。曲率半径h、即ち曲率が1/hの波面の半径ρでの接線の(光軸に直角な面に対する)傾き角をθ(ρ)とすると近似的に次式が成立する。
【0028】
【数8】
Figure 0003635079
数5、数6、数7及び、S(ρ)≪f2、d0=f1−f2の関係を用い、さらにΔは一般にf2、f1、bよりも十分小さいのでΔ≪f2、f1、bとすると、数8は、
【0029】
【数9】
Figure 0003635079
となる。
【0030】
数9は、接眼レンズについて球面収差を設ける場合であるが、対物レンズについて、球面収差を設けることも可能である。この場合は、f1を改めてf1+S(ρ)とする。
【0031】
波面の接線の傾き角がθ(ρ)故、波面の基準面(結像レンズの位置で光軸に直角な面)に対する波面の光軸方向の高さをζ(ρ)とすると、ζ(ρ)は波面の形を表す関数になり、次の様に表わされる。
【0032】
【数10】
Figure 0003635079
【0033】
S(ρ)は高次の関数であるが、なだらかに変化するので、ここでは積分を容易にするため、S(ρ)=Δcρと一次で近似する。球面収差の効果を半径方向に対して一様にするのが理想的で、S(ρ)が線形に近いことが望ましい。単レンズでは球面収差S(ρ)は2次関数的に周辺ほど大きくなってしまうが、複数レンズの組合せ等をして且つレンズの十分内側を有効径として用いれば、設計上も球面収差をこのような条件に合わせることができる。すると数10のζ(ρ)は、
【0034】
【数11】
Figure 0003635079
となる。
【0035】
数11は、距離Lの点から放射された光が入射した場合の結像レンズから出射される光の波面の形が求められることを示している。数11で括弧{ }内第1項は有限距離からの光の入射による曲率、第3項は結像レンズによる曲率を示し、いずれも歪のない波面を生成する。これに対して第2項は球面収差による曲率を示し、波面の歪を発生させる。
【0036】
次に、結像レンズから出射されるζ(ρ)の形の歪んだ球面波によって焦点領域にフォーカスされて生成される光スポットの強度分布を求める。結像レンズの中心を原点とし、光強度を求める焦点領域の点Pの座標を円筒座標で(z,r)(zは光軸方向の距離、rは半径方向の距離〔r=(x2+y21/2〕とすると、Pでの電磁場の振幅u(P)は、軸対称のフレネル積分として、
【0037】
【数12】
Figure 0003635079
と表される。
【0038】
但し、kは波数で、光の波長をλとするとk=2π/λ、J0は0次のベッセル関数である。またc1は積分定数である。P点における光強度I(P)は、
【0039】
【数13】
Figure 0003635079
として求まる。積分定数c1は、
【数14】
Figure 0003635079
より定まる。
【0040】
本発明での結像による焦点領域の光強度を数12、数13によって計算した結果を図5(A)、図5(B)に示す。図5は高さ方向(S軸)に光強度を示し、横方向は、光軸に垂直方向(R軸)の距離と、光軸に沿った方向(Z軸)の距離を示す。図5の計算においては、f1=20cm、f2=5cm、f3=5cm、a=1.25cm、Δ=0、Δc=−600μm、波長λ=0.5μm、を仮定し、対象物までの距離を図5(A)でL=1km、あるいは、図5(B)でL=100mについて計算している。この場合、望遠鏡の倍率はf1/f2=4であるので、対物レンズの開口径は5cmである。
【0041】
比較のため、従来の光学系を用いた撮像方式(1つの凸レンズ系の焦点で画像をとる方式)での結像による焦点領域の光強度を計算した結果を図6に示す。図6の座標軸は図5と同様である。図5、図6ともにZ軸の500μmの範囲で結像の様子を示している。図6は、図5と同じ条件にするため同じ波長で口径5cm、f1=20cmの望遠レンズを用い、L=1km、として計算したものである。対象物までの距離Lが短くなった場合は、焦点位置は奥へ移動するが、焦点の深さはほとんど変わらない。
【0042】
図5(A)、(B)の結果は、図6によるものより焦点が深いことを示している。また図5(A)L=1kmの場合と図5(B)L=100mの場合とで5.06cm付近に共通の結像領域が存在していることがわかる。また図5(B)を図6と比較すると、図5(B)では広範囲で焦点での光スポットのサイズ(各ピークの半値幅)が小さくなっている。焦点での光スポットのサイズが小さくなるのは、前述のようにフレネル積分の環状帯の効果によって焦点での光強度プロファイルの主ローブの幅が通常の回折限界より狭くなる故である。この時サイドローブは大きくなるが、シミュレーションや実験によって撮像に影響ないことが明らかになっている。環状帯の開口では円形開口の場合より開口のフーリエ変換による光強度パターンの主ローブ幅が狭くなることが光学で知られているが、結像が高分解能(回折限界以内)になることは類似の現象として理解できる。
【0043】
さらに、開口端から光軸に近づくほど位相が遅れる凸レンズ系の場合も同様にして扱うことができる。この場合は、球面収差S(ρ)が開口端(ρ=1)で0、光軸上(ρ=0)で最大値となるようにし、中心部で波面の曲率は最大で、開口端で曲率が最小になるようにすることにより、図5と同様の効果を得ることができる。
【0044】
以上のことから、本発明の撮像装置では、長距離にわたって撮像面の位置を変えなくても高分解での撮像が可能であることが明らかである。
【0045】
次に、本発明の撮像装置では、大気ゆらぎの影響を小さくできることを説明する。数12は伝搬路である大気のゆらぎがない場合の式である。大気ゆらぎのある場合は、軸対称でなくなる。u(ρ)の振幅部をFとし、位相部を指数expで表すことにし、光学系により固定された位相をヨ、大気ゆらぎによって変動する位相をSとすると、次の数15で表わせる。
【0046】
【数15】
Figure 0003635079
ただし、*印は複素共役を意味する。
【0047】
ここで、変動する位相(S'−S")は光波面上の2点間の位相差である。また、結像レンズ面の光波面は光線を戻して対物レンズ面に投影することができるので、入射開口面での2点間の位相差に相当する。
【0048】
数15を基に大気ゆらぎの影響を考える。位相差(S'−S")はランダムに変動するので、一般的なガウス分布の変動を仮定し、変動量(標準偏差)をσとする。数15で変動部分は(S'−S")を含むexpの部分だけである。この部分を除いた変動しない部分をI0(P)とすると、強度変動の平均値<I(P)>は位相変動がガウス分布のため数学的に簡単な式となり、
【0049】
【数16】
Figure 0003635079
と表される。
【0050】
σ2は開口面内における2点間の距離の5/3乗、つまりρ5/3の平均に比例するので、ほぼその面積に比例することになる。従って、数16より強度変動は面積に近い値の指数関数として変動することになり、大きく変動する。一方、ゆらぎのない場合の光強度は、フレネル積分の原理から積分する開口の面積に比例する。以上のことから、本発明による方式では光強度はフレネル積分の実効面積が全開口から環状帯になる分、面積に比例して小さくなる。しかし、強度変動は面積に近い値の指数関数に比例するので、面積に比例する以上の割合で変動値は小さくなる。このような原理で大気ゆらぎの影響が小さくなる。
【0051】
次に、本発明のもう一つの特徴である、結像光学系の前に波面制御板を置く場合について説明する。波面制御板についても光軸から開口端にいくほど位相が遅れるかあるいは開口端から光軸に近づくほど位相が遅れる機能をもたせる。ここでは例として、光軸から開口端にいくほど位相が遅れる場合について説明する。説明を簡単にするために、この機能をもった波面制御板を、上記の負の球面収差をもった凹レンズと等価なものとして考えることにする。凹レンズの焦点距離をfとし、球面収差をもつので半径ρに対してfが変化することから改めてf(ρ)と定義し、対象物までの距離をL、凹レンズから放出される光波面の曲率を(1/b)とすると、
【0052】
【数17】
Figure 0003635079
と表される。また、結像レンズの焦点距離をfc、結像点の距離をq(結像の光波面の曲率は1/q)とすると、結像レンズには数17による曲率1/bの光波面が入射するので、
【0053】
【数18】
Figure 0003635079
レンズの基本状態を考えるため、簡単に対象物の距離を無限遠、L=∞とすると、次のようになる。
【0054】
【数19】
Figure 0003635079
数19の右辺の第1項は波面制御板の影響による曲率、第2項は結像レンズそのものよる曲率に相当し、結像の光波面の曲率は両者の和であることを示している。
【0055】
ここでは、等価的に結像レンズで同じ機能を持たせる、即ち曲率1/qが球面収差S(ρ)をもつ焦点距離fcのレンズによる波面の曲率と同じとすると、
【0056】
【数20】
Figure 0003635079
と表されるので、この時の波面制御板の条件を求めてみる。数19と数20とfc≫S(ρ)の関係より、
【0057】
【数21】
Figure 0003635079
となる。
【0058】
数21の右辺は長焦点の場合は、非常に小さな値となる。従って、波面制御板を凹レンズと等価とした場合には、極端に小さな曲率(即ち極端に大きな焦点距離)で且つ球面収差を持ったものにしなければならない。例えば、開口径端ρ=1での球面収差S(ρ)の値Δcを図5を求めた時と同じにΔc=−600μmとし、結像レンズの焦点距離fcをfc=20cmとすると、数21より開口径端での等価的な焦点距離は67mとなる。中心部(ρ=0)では曲率0(焦点距離=∞)である。結像レンズの焦点距離fcが短い場合は、fc 2に反比例して波面の曲率は大きくなり、等価的な焦点距離は短くなる。
【0059】
また、開口端から光軸に近づくほど位相が遅れる位相制御板の場合も同様にして理論的に扱うことができる。この場合は上述の場合と逆で、球面収差S(ρ)が開口端(ρ=1)で0、光軸上(ρ=0)で最大値となるように定め、球面収差を持った凸レンズと等価にして考えることができる。中心部で波面の曲率は最小ではあるが値は小さいので非常に長い焦点距離に相当し、開口端では曲率=0(焦点距離=∞)になる。
【0060】
以上の説明は、対物レンズ、接眼レンズ、結像レンズと全てレンズを用いた光学系について説明したが、これと等価な光学系は、この他に凹面鏡やそれに等価な光学素子を用いて構成することができることは明らかである。
【0061】
結像光学系である第1の光学系の前に波面を操作する光学系を置く形態についてその原理を説明したが、結像光学系の代りに肉眼を置いた場合でも原理は同様である。このため、本発明は、肉眼で見る場合にも適用できるものである。
【0062】
【発明の効果】
以上述べたように本発明の撮像装置あるいはその光学装置では、結像の焦点を深く且つ結像スポットサイズを小さくすることができ、また、大気ゆらぎによる分解能劣化を抑えることができるので、長距離にわたって対象物を撮像面の位置を変えることなく且つ高分解能での撮像が可能である。このような特徴は、運動している対象物に対しても有効である。従って、本発明は、望遠カメラを含む各種のカメラ、広いレンジの計測やモニタ等へ幅広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を説明するための模式図である。
【図2】本発明の実施の形態を説明するための模式図で、(A)は遠距離の対象物を見る場合、(B)は近距離の対象物を見る場合を示す。
【図3】従来の光学系の形態を示す図である。
【図4】本発明の特徴が生じる原因を説明するための模式図である。
【図5】本発明の撮像装置による結像状態を示す図である。
【図6】従来の撮像装置による結像状態を示す図である。
【符号の説明】
1 入射光
2 対物レンズ
3 接眼レンズ
4 結像レンズ
5 結像点
6 光線
7 歪んだ球面の波面
8 撮像面の位置
9 凸レンズ
10 波面
11 開口面
12 環状帯

Claims (2)

  1. 結像光学系である第1の光学系と、
    入射する光波について第1の光学系の前に配置された第2の光学系と、
    上記の第2の光学系と、第1の光学系とは、予め決められた撮像面に結像する構成とを備え、
    前記の第2の光学系は、その中心部での焦点距離が無限大で周辺では有限である凹レンズ型の波面制御板で、前記の第2の光学系を通過した光は、光軸からの距離が大きくなるに従って光波の位相がより遅れ、その波面は該光学系を通過後に光軸からの距離が大きくなるに従って曲率がより大きくなり、その結果、結像光の波面の曲率が光軸から開口端に行くほど小さくなる特性をもつことを特徴とする撮像装置。
  2. 目あるいは撮像カメラの前に設けられる光学系で、
    前記の光学系は、その中心部での焦点距離が無限大で周辺では有限である凹レンズ型の形状をもち、該光学系を通過する光の波面の形状を制御する波面制御板であり、
    前記の波面制御板を通過した光は、光軸からの距離が大きくなるに従って光波の位相がより遅れ、その波面は該光学系を通過後に光軸からの距離が大きくなるに従って曲率がより大きくなり、
    その結果、結像光の波面の曲率が光軸から開口端に行くほど小さくなる特性をもち、
    上記の光波の位相の遅れは、上記の目あるいは撮像カメラの被写界深度を深くする程度の遅れである、
    ことを特徴とする光学系。
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